説明

両面粘着シートおよびその製造方法

【課題】水性の粘着剤組成物を用いて再剥離性に優れた両面粘着シートを製造する方法および該方法により得られた両面粘着シートを提供する。
【解決手段】基材としての不織布4の両面4A,4Bに粘着剤層1,2を有する両面粘着シート200を製造する方法が提供される。その方法は、次の条件:30℃における粘度が0.1〜3Pa・sである;および、固形分が50〜70質量%である;をいずれも満たすエマルジョン型粘着剤組成物を用意する工程を含む。また、上記不織布4の少なくとも一方の面(例えば第二面4B)に上記粘着剤組成物を直接塗布して粘着剤層(例えば第二粘着剤層2)を形成する工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エマルジョン型の粘着(感圧接着ともいう。以下同じ。)剤組成物を用いて形成された粘着剤層が不織布基材に支持された両面粘着シートとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
不織布の両面に粘着剤層が設けられた構成の両面接着型の粘着シート(両面粘着シート)は、作業性がよく接着の信頼性の高い接合手段として、家電製品から自動車、OA機器等の各種産業分野において広く利用されている。
近年、省資源等の観点から、製品に使用されているリサイクル可能な部品については、使用後に製品を分解して該部品またはその構成素材を再利用(リサイクル)することが多くなってきている。両面粘着シートを用いて他部品と接合された部品またはその構成素材を再利用するにあたっては、通常、まず両面粘着シートによる接合部を引き剥がして再利用対象の部品(リサイクル用部品)から他部品を分離し、その後、該部品から両面粘着シート単体を分離(再剥離)するという手順をとる。このとき、初期の部品引き剥がし(分解)工程において両面粘着シートが不織布の内部で厚み方向に引き裂かれる態様の破壊(層間破壊)を起こしたり、上記部品引き剥がし後あるいは両面粘着シート単体の分離後に粘着剤の一部が部品表面に残留(糊残り)したりすると、かかる残渣を部品表面から取り除く作業によってリサイクル工程の効率が著しく低下してしまう。かかる事象の改善(再剥離性の向上)に関する技術文献として特許文献1〜3が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−143856号公報
【特許文献2】特開2001−152111号公報
【特許文献3】特開2000−265140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、これまで両面粘着シートの製造において粘着剤層の形成に用いられる粘着剤組成物としては、有機溶剤に粘着剤構成成分(ポリマー等)を溶解させた溶剤型の組成物が主流であった。しかし近年では、環境への配慮、両面粘着シートから放散する揮発性有機化合物(Volatile Organic Compounds;VOC)量の低減等の観点から、粘着剤構成成分が水に分散した態様の水分散型(水性)粘着剤組成物の使用が好まれる傾向にある。
しかし、水性粘着剤組成物を用いた両面粘着シートは、溶剤型の粘着剤組成物を用いた両面粘着シートに比べて再剥離性が不足しがちな(部品表面に両面粘着シートの残渣が残りやすい)傾向にあった。このことが、両面粘着シート(特に、リサイクル用部品に貼り付けて使用される両面粘着シート)の分野において、溶剤型の粘着剤組成物から水性粘着剤組成物への転換を妨げる一因ともなっていた。
【0005】
本発明は、水性の粘着剤組成物を用いて再剥離性に優れた両面粘着シートを製造する方法を提供することを一つの目的とする。本発明の他の一つの目的は、かかる方法により得られた両面粘着シートの提供である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
不織布等の基材上に粘着剤層を設ける手法の代表例として、基材に粘着剤組成物を直接塗布する方法(直接塗布法。以下、単に「直接法」ともいう。)と、剥離可能な表面(剥離面、例えば剥離ライナーの表面)上に保持された粘着剤層(典型的には、該表面に粘着剤組成物を塗布することにより予め形成された粘着剤層)を基材に貼り合せて該粘着剤層を基材に転写する方法(転写法)とが挙げられる。部品引き剥がし後の表面に両面粘着シートの残渣が付着する上記事象を防止するためには、不織布(基材)によく含浸させた状態で粘着剤層を設けることが有利であり、液状の粘着剤組成物を不織布に直接塗布する直接法においては該組成物を不織布によく浸み込ませることが好ましい。
しかし、一般に水性(例えばエマルジョン型)の粘着剤組成物は、溶剤型の粘着剤組成物に比べて不織布への浸み込み性に劣る。その主な要因として、水性粘着剤組成物の表面張力が溶剤型に比べて高いことが挙げられる。
【0007】
本発明者は、エマルジョン型粘着剤組成物の性状と、該組成物を用いてなる両面粘着シートの引き剥がし時における挙動との関係を詳細に検討した。その結果、特定の条件を満たすエマルジョン型粘着剤組成物を用いた直接法によれば上記課題を解決し得ることを見出して本発明を完成した。
【0008】
本発明によると、基材としての不織布の両面に粘着剤層を有する両面粘着シートを製造する方法が提供される。その方法は、次の条件:30℃における粘度が凡そ0.1〜3Pa・sである;および、固形分が凡そ50〜70質量%である;をいずれも満たすエマルジョン型粘着剤組成物を用意する工程を含む。また、前記不織布の少なくとも一方の面に前記粘着剤組成物を直接塗布して粘着剤層を形成する工程を含む。
【0009】
かかる方法によると、上記のように低粘度の粘着剤組成物を直接塗布するので、該組成物が不織布に十分よく浸み込んだ状態で粘着剤層を形成することができる。ここで、粘着剤組成物の低粘度化を重視するあまり該組成物の固形分を低くしすぎると、基材として不織布(多孔質体)を用いる関係上、該組成物を乾燥させる際に気泡が多く発生して粘着剤層の表面状態(平滑性)が損なわれやすくなる。かかる気泡の発生は両面粘着シートの性能(粘着特性、外観品質等)を低下させる要因となり得る。本発明の方法によると、低粘度であり且つ高固形分の粘着剤組成物を使用するので、他の性能への影響を抑えつつ、改善された再剥離性を示す(例えば、後述する層間破壊試験において層間破壊しにくい、換言すれば粘着剤層と被着体との界面で剥離しやすい)両面粘着シートを製造することができる。また、上記方法は水分散型(エマルジョン型)の粘着剤組成物を用いるので環境衛生上好ましい。
【0010】
なお、ここでいう「不織布」は、主として粘着テープその他の粘着シート(感圧接着シート)の分野において使用される粘着シート用不織布を指す概念であって、典型的には一般的な抄紙機を用いて作製されるような不織布(いわゆる「紙」と称されることもある。)をいう。
【0011】
ここに開示される両面粘着シート製造方法は、剥離面上に予め形成された転写用粘着剤層を前記不織布の第一面に積層することにより該第一面に第一粘着剤層(転写法による粘着剤層)を形成する工程と、該第一粘着剤層が形成された前記不織布の第二面に前記粘着剤組成物を直接塗布して第二粘着剤層(直接法による粘着剤層)を形成する工程と、を包含する態様で好ましく実施され得る。かかる製造方法(転写−直接法式)は、種々の不織布を用いた両面粘着シートの製造に適用されて、良好な生産性を実現し得る。例えば、セルロース系材料を主体とする不織布を用いた両面粘着シートの製造に好適である。
【0012】
上記剥離面上の転写用粘着剤層は、前記剥離面にエマルジョン型粘着剤組成物を塗布することにより好ましく形成され得る。剥離面に塗布される粘着剤組成物としては、30℃における粘度が凡そ5Pa・s以上のものを好ましく使用し得る。すなわち、ここに開示される方法は、30℃における粘度が凡そ5Pa・s以上(典型的には凡そ5〜25Pa・s)である粘着剤組成物を前記剥離面に塗布して該剥離面上に前記転写用粘着剤層を形成する工程をさらに含むことができる。このように、直接法には低粘度の粘着剤組成物を用いる一方、剥離面に塗布される粘着剤組成物にはより高粘度のものを用いることにより、直接法においては不織布によく含浸した(再剥離性のよい)第二粘着剤層を形成することができ、且つ、転写法においては均一性のよい第一粘着剤層を形成することができる。
【0013】
ここに開示される方法における不織布としては、厚みが凡そ40μm〜100μmのものを好ましく用いることができる。本発明の方法は、このようにある程度の厚みを有する不織布を用いた両面粘着シートの製造にも好ましく適用されて、再剥離性に優れた両面粘着シートを形成し得る。上記不織布の坪量は、凡そ15g/m以上(例えば凡そ15〜30g/m)であることが好ましい。また、上記不織布の引張強度は、該不織布の流れ方向および幅方向のいずれについても凡そ10〜50N/15mm以上であることが好ましい。上記厚み、坪量、流れ方向および幅方向の引張強度の全てを満たす不織布の使用が特に好ましい。かかる不織布によると、より再剥離性の良い(例えば、後述する層間破壊試験において層間破壊しにくい、換言すれば粘着剤層と被着体との界面で剥離しやすい)両面粘着シートが実現され得る。
【0014】
なお、不織布に直接塗布される粘着剤組成物(直接塗布用粘着剤組成物)としては、アクリル系ポリマーを主体とするエマルジョン型の粘着剤組成物(例えば、エマルジョン重合により得られた粘着剤組成物)を好ましく採用することができる。また、剥離面に塗布する粘着剤組成物(転写用粘着剤組成物)としては、上記直接塗布用粘着剤組成物と同一のまたは異なるアクリル系ポリマーを主体とするエマルジョン型の粘着剤組成物を好ましく採用することができる。
【0015】
本発明によると、また、ここに開示されるいずれかの方法により製造された両面粘着シートが提供される。この粘着シートは、上述のように再剥離性に優れることから、リサイクル用部品に貼り付けられる用途(例えば、リサイクル用部品に他のリサイクル用部品または消耗部品を固定する用途)に好適である。
【0016】
本発明によると、また、基材たる不織布の第一面および第二面に、それぞれ第一および第二の粘着剤層を有する両面粘着シートが提供される。その粘着シートを構成する不織布は、以下の特性:
(A)坪量が15g/m以上である;
(B)流れ方向および幅方向のいずれについても引張強度が10〜50N/15mm以上である;および、
(C)厚みが40μm〜100μmである;
の全てを満たす。そして、上記両面粘着シートは、該両面粘着シートの第一および第二の粘着剤層に二枚のアルミニウム板を貼り合わせ、60℃で24時間保存した後に10m/分の速度でT型剥離を行った場合において、該両面粘着シートの面積のうち粘着剤層とアルミニウム板との界面で剥離する面積の割合(以下、これを「界面破壊度」ということもある。)が50%以上であることを特徴とする。
【0017】
かかる両面粘着シートは、上述のように再剥離性(すなわち、層間破壊の形態ではなく粘着剤層と被着体との界面で剥離する性能)に優れることから、リサイクル用部品に貼り付けられる用途(例えば、リサイクル用部品に他のリサイクル用部品または消耗部品を固定する用途)に好適である。前記不織布の嵩密度が凡そ0.2〜0.4g/mの範囲にあることが更に好ましい。前記第一および第二の粘着剤層は、同一のまたは異なるエマルジョン型粘着剤組成物から形成されたものであることが好ましい。
【0018】
ここに開示される両面粘着シートは、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂)に対する粘着力(対ABS粘着力)が、前記第一および第二の粘着剤層のいずれについても10N/20mm以上のものであり得る。このように高い粘着力を示し、且つ再剥離性に優れた両面粘着シートは、リサイクル用部品の固定その他の用途に特に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】両面粘着シートの代表的な構成例を模式的に示す断面図である。
【図2】両面粘着シートの他の代表的な構成例を模式的に示す断面図である。
【図3】一実施形態に係る両面粘着シート製造方法を模式的に示す説明図である。
【図4】図3のIV−IV線断面図である。
【図5】図3のV−V線断面図である。
【図6】層間破壊試験の方法を示す説明図である。
【図7】層間破壊試験の方法を示す説明図である。
【図8】層間破壊試験の方法を示す説明図である。
【図9】層間破壊試験の方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0021】
本発明の方法を適用して製造される両面粘着シート(テープ状等の長尺状の形態であり得る。)は、例えば、図1または図2に示される断面構造を有するものであり得る。
図1に示す両面粘着シート100は、基材としての不織布4の両面4A,4Bに粘着剤層1,2が設けられ、それらの粘着剤層1,2の上に、少なくとも該粘着剤層側が剥離面となっている剥離ライナー3,5がそれぞれ配置された構成を有する。ここで、粘着剤層1,2のうち少なくとも一方は、不織布4に粘着剤組成物を直接塗布して乾燥させる直接法により形成された粘着剤層である。好ましい一態様では、不織布4の第一面4Aに設けられた第一粘着剤層1は転写法により形成され、第二面4Bに設けられた第二粘着剤層2は直接法により形成されたものである。上記転写法は、例えば、剥離ライナー3の剥離面3Aに粘着剤組成物を塗布して乾燥させることにより該剥離面3A上に粘着剤層1を形成し、その剥離ライナー(転写用支持体)3上に保持された粘着剤層(転写用粘着剤層)1を不織布4の第一面4Aに貼り合わせる(粘着剤層1を不織布4に転写する)態様で好ましく実施され得る。かかる転写法に用いた剥離ライナー3は、そのまま第一粘着剤層1を保護する用途に利用することができる。その後、不織布4の第二面4Bに粘着剤組成物を直接塗布して乾燥させることにより第二粘着剤層2を形成し、第二粘着剤層2に剥離ライナー5を積層することにより、図1に示す構成の両面粘着シート100が製造され得る。
【0022】
図2に示す両面粘着シート200は、第一粘着剤層1上に配置された剥離ライナー3が両面剥離性の(すなわち、両面が剥離面となっている)剥離ライナーであり、第二粘着剤層2を覆う剥離ライナー5を有しない点を除いては、図1に示す両面粘着シート100と同様に構成されている。この種の両面粘着シート200は、該粘着シート200を巻回することにより第二粘着剤層2を剥離ライナー3の裏側(背面側)の剥離面3Bに当接させて、該第二粘着剤層2もまた剥離ライナー3によって保護された構成とすることができる。例えば、剥離ライナー3上に予め形成された粘着剤層(転写用粘着剤層)1を不織布4の第一面4Aに貼り合わせた後、不織布4の第二面4Bに粘着剤組成物を直接塗布して乾燥させることにより第二粘着剤層2を形成し、これをロール状に巻回して第二粘着剤層2の上面2Aを剥離ライナー3の裏面に当接させることにより、両粘着剤層1,2が剥離ライナー3で保護された形態の両面粘着シート200とすることができる。
なお、図1および図2では図解の便宜のため粘着剤層1,2と不織布4との界面を直線で表しているが、実際には粘着剤層1,2の下部(不織布側)はそれぞれ不織布4に含浸している。
【0023】
ここに開示される方法を適用して図2に示す構成の両面粘着シート200を製造する好適な一形態につき、図面を参照しつつ説明する。
図3に示す両面粘着シート製造装置20は、第一塗工部30および第二塗工部40と、これらの塗工部30,40を経由して剥離ライナー3を走行させる巻出ロール21および巻取ロール22と、第一塗工部30から第二塗工部40に向かう剥離ライナー3に対して不織布(基材)4を供給する基材ロール23とを備える。剥離ライナー3としては、その両面が剥離面として構成されたもの、すなわち両面剥離性の剥離ライナーが用いられる。
【0024】
巻出ロール21から送り出される剥離ライナー3は、まず第一塗工部30に導入される。この第一塗工部30は、上流側から順に、剥離ライナー3に粘着剤組成物を塗布するコーター32と、その塗布された組成物を乾燥させる乾燥機34とを備える。かかる構成の第一塗工部30により、剥離ライナー3の一方の剥離面3Aに第一粘着剤層1を形成する(図4参照)。上記粘着剤組成物(転写用粘着剤組成物)としては、例えば、後述する粘度の水性エマルジョン型粘着剤組成物を好ましく用いることができる。
次に、基材ロール23から送り出された不織布4の一方の面4Aを、剥離ライナー3上に形成された第一粘着剤層1の上面1A(粘着剤組成物の塗布時における外側面)に、圧着ロール24により貼り合わせる。このようにして不織布4の第一面4Aに第一粘着剤層1が設けられる(転写法)。
【0025】
第一粘着剤層1および不織布4が積層された剥離ライナー3(図5参照)は、次いで第二塗工部40に導入される。第二塗工部40は、上流側から順に、不織布4の他方の面4Bに粘着剤組成物を直接塗布するコーター42と、その塗布された組成物を乾燥させる乾燥機44とを備える。上記粘着剤組成物(直接塗布用粘着剤組成物)としては、所定の粘度および固形分を満たすエマルジョン型粘着剤組成物を使用する。かかる構成の第二塗工部40により、不織布4の第二面4Bに第二粘着剤層2を形成する(直接法)。
【0026】
このようにして形成された積層体(図2参照)を、剥離ライナー3の他方の剥離面3Bが第二粘着剤層2の上面2Aに当接するようにしてロール状に巻き取る。これにより、両面に粘着剤層1,2を有する不織布4が剥離ライナー3を介してロール状に巻かれた形態の両面粘着シート(製品)200が得られる。
なお、図3には第二粘着剤層2を内側にして両面粘着シートを巻き取る例を示しているが、第二粘着剤層2を外側にして上記積層体を巻き取ってもよい。
【0027】
ここに開示される技術では、上記直接法において不織布に直接塗布する粘着剤組成物(直接塗布用粘着剤組成物)として、水性エマルジョン型の粘着剤組成物であって、30℃における粘度(以下、単に「粘度」ということもある。)が凡そ0.1〜3Pa・sであり、且つ固形分(不揮発分)が凡そ50〜70質量%である組成物を使用する。このことによって、他の性能や生産性への影響を抑えつつ、改善された再剥離性を示す両面粘着シートを製造することができる。
【0028】
ここで、上記粘着剤組成物の30℃における粘度とは、試料(測定対象たる粘着剤組成物)温度30±5℃において、BH型粘度計を用いて回転数20rpmの条件で測定した粘度をいう。該測定に使用するローターは、試料の粘度に応じて適正な種類(番号)のものを選択する。粘度0.1〜3Pa・sの範囲では、通常、No.2またはNo.3のローターを使用して測定を行うことが適当である。
また、上記粘着剤組成物の固形分とは、試料全体に対する、該試料を130℃に120分間加熱した後における残分の質量割合をいう。
【0029】
上記直接法に使用する粘着剤組成物(直接塗布用粘着剤組成物)の粘度が高すぎると、基材(ここでは不織布)への浸み込み性が不足し、粘着剤層を基材によく含浸させて形成することで再剥離性を向上させるという本発明の効果が実現され難くなる。粘度が凡そ2Pa・s以下(例えば凡そ0.5〜2Pa・s)の直接塗布用粘着剤組成物を用いることにより、より高度な再剥離性を示す両面粘着シートが製造され得る。該組成物の粘度を凡そ1.5Pa・s以下(例えば凡そ0.5〜1.5Pa・s)とすることにより、さらに良好な結果が実現され得る。高固形分(例えば凡そ55〜70質量%)の組成物を用意(購入、製造等)しやすいという観点から、粘度が凡そ0.5Pa・s以上の直接塗布用粘着剤組成物を好ましく使用することができる。
【0030】
直接塗布用粘着剤組成物の固形分が低すぎると、不織布に塗布した粘着剤組成物を乾燥させる際に気泡が多く発生して粘着剤層表面の平滑性が損なわれやすくなる。また、使用する粘着剤組成物の固形分が低くなると、該粘着剤組成物の乾燥により多くの時間やエネルギーを要するため、両面粘着シートの生産性が低下する。基材として厚みのある(例えば、厚さ40μm以上の)不織布を用いる場合には粘着剤層の厚みも大きくなる傾向にあるため、固形分の高い粘着剤組成物を用いることによる効果が特によく発揮され得る。低粘度の組成物を用意(購入、製造等)しやすいという観点から、固形分が凡そ50〜65質量%(例えば凡そ55〜65質量%)の粘着剤組成物が好ましい。
【0031】
ここに開示される技術における直接塗布用粘着剤組成物としては、上述した粘度および固形分を満たす種々のエマルジョン型粘着剤組成物を適宜採用し得る。例えば、粘着成分として機能し得るアクリル系、ポリエステル系、ウレタン系、ポリエーテル系、ゴム系、シリコーン系、ポリアミド系、フッ素系等の各種ポリマー(粘着性ポリマー)が水に分散したエマルジョン型粘着剤組成物を使用することができる。なかでもアクリル系エマルジョン型粘着剤組成物の使用が好ましい。
低粘度かつ高固形分のエマルジョン型粘着剤組成物を構成するためには、上記エマルジョンを構成する粘着性ポリマー粒子の平均粒子径が大きいことが有利であり、粒度分布は広いことが有利である。例えば、上記粘着性ポリマー粒子の平均粒子径(メジアン径)が、Beckman Coulter製の粒度分布測定装置、型式「LS 13 320」を用いたレーザー回折散乱法による測定値として凡そ0.1μm〜0.8μm(好ましくは0.2μm〜0.5μm)である粘着剤組成物が好ましい。また、上記粘着性ポリマー粒子の粒度分布の標準偏差が0.1〜0.5である粘着剤組成物が好ましい。
【0032】
不織布の一方の面また、上記転写法に使用する粘着剤組成物は特に限定されず、例えば、直接塗布用粘着剤組成物と同様の各種ポリマーが水に分散したエマルジョン型粘着剤組成物(好ましくはアクリル系エマルジョン型粘着剤組成物)を用いることができる。この転写用粘着剤組成物の粘度は、剥離面上に粘着剤層(転写用粘着剤層)を適切に形成し得る程度であればよい。一般に剥離面は高撥水性であることから、該剥離面に塗布される転写用粘着剤組成物はある程度の高粘度であることが好ましい。例えば、粘度(直接法に用いられる粘着剤組成物の粘度と同様にして測定される粘度をいう。)が凡そ3Pa・s以上(より好ましくは凡そ5Pa・s以上)の転写用粘着剤組成物を好ましく使用し得る。また、該組成物の粘度は凡そ25Pa・s以下(より好ましくは凡そ20Pa・s以下)であることが好ましい。転写用粘着剤組成物の粘度が低すぎると、ハジキにより粘着剤層に孔が生じたり厚さが不均一になったりすることがあり得る。一方、転写用粘着剤組成物の粘度が高すぎると塗工性が低下することがある。転写用粘着剤組成物の固形分は、例えば凡そ30〜70質量%(好ましくは凡そ40〜65質量%)であり得る。直接塗布用粘着剤組成物と同様に、固形分が凡そ50〜70質量%(例えば凡そ50〜65質量%、より好ましくは凡そ55〜65質量%)の転写用粘着剤組成物を好ましく使用し得る。
【0033】
転写用粘着剤組成物と直接塗布用粘着剤組成物とは、粘着剤層形成成分(固形分)の組成が同一であってもよく異なってもよい。例えば、粘着剤層形成成分の組成が同一であって粘度のみが互いに異なる転写用粘着剤組成物および直接塗布用粘着剤組成物を好ましく用いることができる。
粘着剤組成物の粘度は、公知の増粘剤、希釈剤(水等の溶媒であり得る。)等を用いて調整することができる。また、pHによって粘度が変化する粘着剤組成物では、その性質を利用して粘度を調製してもよい。例えば、酸性基を有するモノマーを共重合してなるアクリル系ポリマーを主体とする粘着剤組成物では、中和の程度(アンモニア水等の中和剤の添加量)によって粘度を調整することができる。
【0034】
ここに開示される技術における不織布(基材)としては、両面粘着シートの分野において周知ないし慣用の不織布またはその他の不織布を好ましく用いることができる。例えば、木材パルプ、綿、麻(例えばマニラ麻)等の天然繊維から構成される不織布;ポリエステル繊維、レーヨン、ビニロン、アセテート繊維、ポリビニルアルコール(PVA)繊維、ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維、ポリウレタン繊維等の化学繊維(合成繊維)から構成される不織布;材質の異なる二種以上の繊維を併用して構成された不織布;等を使用可能である。
【0035】
本発明にとり好ましい不織布として、セルロース系繊維(天然繊維およびレーヨン等の再生繊維を包含する。典型的には天然繊維)を主構成繊維とする不織布が挙げられる。かかる繊維組成の不織布は、強度と適度な柔軟性とを兼ね備えたものであり得る。したがって、かかる不織布を基材に用いることにより、再剥離性ならびに他の粘着特性(例えば耐反撥性)に優れた両面粘着シートが実現され得る。不織布構成繊維に占めるセルロース系繊維の割合は、典型的には凡そ50質量%以上であり、好ましくは凡そ70質量%以上、より好ましくは凡そ85質量%以上である。ここに開示される発明の好ましい一態様では、上記不織布として、構成繊維が実質的にセルロース系繊維(例えば麻100%)からなる不織布を使用する。
【0036】
上記不織布には、ビスコース、デンプン、PVA、ポリアクリルアミド等の樹脂(バインダ)による加工(典型的には含浸処理)が施されていてもよい。不織布の強度(例えば引張強さ)等の観点から、所謂ビスコース加工(ビスコース含浸加工)が施された不織布を好ましく採用し得る。なお、ここでいう「ビスコース」の概念には、不織布(特に、両面粘着シートの基材として利用される不織布)の分野において、バインダまたは紙力増強剤として用いられるビスコース系材料が含まれる。上記分野において所謂ビスコース加工(ビスコース含浸加工)に使用されるビスコース系材料は、ここでいうビスコースの概念に包含される典型例である。
【0037】
上記不織布としては、厚みが凡そ40μm以上(典型的には凡そ40μm〜100μm、好ましくは凡そ50μm〜85μm)のものを好ましく用いることができる。従来の両面粘着シート製造方法では、このように厚みのある不織布の内部によく含浸させて粘着剤層を設けることが困難であったため、かかる不織布を基材に用いてなる両面粘着シートは不織布部分で破壊(層間破壊)したり粘着剤層の一部が被着体表面に残留(糊残り)したりしやすかった。本発明の方法は、上記のように比較的厚みのある不織布を用いた両面粘着シートの製造にも好ましく適用されて、該不織布によりよく含浸された粘着剤層を有する(再剥離性に優れた)両面粘着シートを形成するものであり得る。したがって、かかる厚みを有する不織布を用いた両面粘着シートの製造においては、本発明の適用効果がよりよく発揮され得る。このように厚みを有する不織布は、より薄い不織布に比べて全般に千切れにくい。したがって、かかる不織布を用いてなる両面粘着シートは、例えば、分解後の部品から両面粘着シート単体を分離する(剥がす)際の作業性のよいものとなり得る。
【0038】
特に限定するものではないが、ここに開示される技術における不織布としては、坪量が凡そ15g/m以上(典型的には凡そ15〜30g/m)のものを好ましく採用し得る。坪量が凡そ15〜20g/mの不織布を用いることにより、より高レベルの再剥離性が実現され得る。上記不織布の嵩密度(坪量を厚さで除して算出され得る。)は、例えば凡そ0.2〜0.4g/m程度であり得る。かかる嵩密度の不織布は、該不織布によく含浸させて粘着剤層を形成するのに特に適している。
【0039】
両面粘着シートを再剥離する際に千切れにくく剥がしやすい(例えば、該両面粘着シートの一端を持って分解後の部品表面から引き剥がす場合に、途中で千切れることなく他端まで続いて剥がすことができる)等の観点から、強度の高い不織布を基材に用いることが好ましい。例えば、後述する実施例に記載の引張強さが、縦方向(MD)および横方向(TD)のいずれについても10N/15mm以上であることが好ましく、凡そ15N/15mm以上であることがより好ましい。引張強さの上限は特に限定されないが、コストや曲面接着性等の観点から、通常は、MDおよびTDの引張強さがいずれも凡そ50N/15mm以下のものを好ましく採用し得る。例えば、MDおよびTDの引張強さがいずれも凡そ10〜50N/15mm(より好ましくは凡そ15〜50N/15mm)である不織布を基材に用いてなる両面粘着シートが好ましい。上記厚み、坪量、MDおよびTDの引張強さの全てを満たす不織布の使用が特に好ましい。かかる不織布の両面に粘着剤層を有する両面粘着シートは、ここに開示される好ましい界面破壊度を実現するものとなり得る。より好ましい形態では、上記界面破壊度に加えて、ここに開示される好ましい対ABS粘着力を実現するものとなり得る。
【0040】
剥離ライナーとしては、両面粘着シートの分野において周知ないし慣用のものを適宜選択して用いることができる。例えば、基材の表面に剥離処理が施された構成の剥離ライナーを好適に用いることができる。この種の剥離ライナーを構成する基材(剥離処理対象)としては、各種の樹脂フィルム類、紙類、布類、ゴムシート類、発泡体シート類、金属箔、これらの複合体(例えば、紙の両面にオレフィン樹脂がラミネートされた積層構造のシート)等を適宜選択して用いることができる。上記剥離処理は、公知または慣用の剥離処理剤(例えば、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系等の剥離処理剤)を用いて常法により行うことができる。また、オレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリエチレン/ポリプロピレン混合物)、フッ素系ポリマー(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン)等の低接着性の基材を、該基材の表面に剥離処理を施すことなく剥離ライナーとして用いてもよい。あるいは、かかる低接着性の基材に剥離処理を施したものを用いてもよい。
【0041】
粘着剤組成物の塗布は、例えば、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター等の、公知ないし慣用のコーターを用いて行うことができる。特に限定するものではないが、粘着剤組成物の塗布量は、乾燥後において(すなわち固形分基準で)例えば凡そ20μm〜150μm(典型的には凡そ40μm〜100μm)の粘着剤層が形成される程度の量とすることができる。
架橋反応の促進、製造効率向上等の観点から、粘着剤組成物の乾燥は加熱下で行うことが好ましい。被塗布物(多孔質基材または工程ライナー)の材質にもよるが、通常は例えば凡そ40℃〜120℃程度の乾燥温度を好ましく採用することができる。
【0042】
ここに開示される技術において好ましく使用される粘着剤組成物として、アクリル系ポリマーを主体とし(すなわち、該粘着剤組成物に含まれる不揮発分(固形分)に占めるアクリル系ポリマーの質量割合が50質量%を超える割合であり)、該アクリル系ポリマーが水に分散した形態の水性エマルジョン型粘着剤組成物が例示される。
上記アクリル系ポリマーは、アルキル(メタ)アクリレート、すなわちアルキルアルコールの(メタ)アクリル酸エステルを主モノマー(主構成単量体)とするモノマー原料を重合(典型的にはエマルジョン重合)してなる重合体であり得る。該モノマー原料を構成するアルキル(メタ)アクリレートとしては、炭素原子数2〜20(より好ましくは4〜10)のアルキルアルコールの(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。該アルキルアルコールにおけるアルキル基の具体例としては、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、イソオクチル基、イソノニル基、イソデシル基等が挙げられる。特に好ましいアルキル(メタ)アクリレートとしてブチル(メタ)アクリレートおよび2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートが例示される。
【0043】
上記モノマー原料は、主モノマーとしてのアルキル(メタ)アクリレートに加えて、任意成分としてその他のモノマー(共重合成分)を含有することができる。当該「その他のモノマー」は、ここで使用するアルキル(メタ)アクリレートと共重合可能な種々のモノマーから選択される一種または二種以上であり得る。例えば、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、アミド基、エポキシ基およびアルコキシシリル基等からなる群から選択される一種または二種以上の官能基を有するエチレン性不飽和単量体(官能基含有モノマー)を使用することができる。なかでもアクリル酸および/またはメタクリル酸の使用が好ましい。上記官能基含有モノマーは、主モノマーたるアルキル(メタ)アクリレートとともにモノマー原料の構成成分として用いられて、該モノマー原料から得られるアクリル系ポリマーに架橋点を導入するのに役立ち得る。上記官能基含有モノマーの種類およびその含有割合(共重合割合)は、使用する架橋剤の種類およびその量、架橋反応の種類、所望する架橋の程度(架橋密度)等を考慮して適宜設定することができる。
【0044】
本発明の方法に使用する粘着剤組成物は、上記のようなモノマー原料をエマルジョン重合に付して得られたものであり得る。上記エマルジョン重合の態様は特に限定されず、従来公知の一般的な乳化重合と同様の態様により、例えば公知の各種モノマー供給方法、重合条件(重合温度、重合時間、重合圧力等)、使用材料(重合開始剤、界面活性剤等)を適宜採用して行うことができる。例えば、モノマー供給方法としては、全モノマー原料を一度に重合容器に供給する一括仕込み方式、連続供給方式、分割供給方式等のいずれも採用可能である。モノマー原料の一部または全部をあらかじめ水と混合して乳化し、その乳化液を反応容器内に供給してもよい。粒度分布の広いエマルジョンを得るためには連続供給方式または分割供給方式が有利であり、なかでも連続供給方式の採用が好ましい。例えば、モノマー原料の全部をあらかじめ水と混合して乳化した乳化液を、2〜8時間(好ましくは3〜5時間)程度かけて反応容器内に連続的に供給するとよい。
上記エマルジョン重合の結果物(中和や増粘等の操作を行う前のアクリル系ポリマーエマルジョン)の固形分は凡そ50〜70質量%であることが好ましい。また、上記アクリル系ポリマーエマルジョンの粘度が凡そ0.05〜1Pa・s(好ましくは凡そ0.05〜0.5Pa・s、例えば凡そ0.05〜0.3Pa・s)程度であることが好ましい。かかるアクリル系ポリマーエマルジョンを用いることにより、高固形分かつ低粘度のアクリル系エマルジョン型粘着剤組成物を容易に調製することができる。
【0045】
重合温度としては、例えば20〜100℃(典型的には40〜80℃)程度の温度を採用することができる。重合開始剤としては、アゾ系開始剤、過酸化物系開始剤、レドックス系開始剤等が例示されるが、これらに限定されない。重合開始剤の使用量は、モノマー原料100質量部に対して、例えば0.005〜1質量部程度とすることができる。
エマルジョン重合に用いる乳化剤(界面活性剤)としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム等のアニオン系乳化剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等のノニオン系乳化剤;等を使用できる。かかる乳化剤は、一種のみを単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。乳化剤の使用量は、モノマー原料100質量部に対して例えば凡そ0.2〜10質量部程度(好ましくは0.5〜5質量部程度)とすることができる。
【0046】
上記重合には、必要に応じて、従来公知の各種の連鎖移動剤(分子量調節剤あるいは重合度調節剤としても把握され得る。)を使用することができる。かかる連鎖移動剤は、例えば、ドデシルメルカプタン(ドデカンチオール)、グリシジルメルカプタン、2−メルカプトエタノール等のメルカプタン類から選択される一種または二種以上であり得る。なかでもドデカンチオールの使用が好ましい。連鎖移動剤の使用量は、モノマー原料100質量部に対して例えば凡そ0.001〜0.5質量部程度とすることができる。この使用量が凡そ0.02〜0.05質量部程度であってもよい。
【0047】
ここに開示される方法に使用される粘着剤組成物(好ましくはアクリル系水性エマルジョン型粘着剤組成物)には、必要に応じて一般的な架橋剤、例えばカルボジイミド系架橋剤、ヒドラジン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤、シランカップリング剤等から選択される架橋剤が配合されていてもよい。これらの架橋剤は単独でまたは二種以上を組み合わせて使用し得る。
【0048】
上記粘着剤組成物には粘着付与剤が配合されていてもよい。かかる粘着付与剤としては、例えば、ロジン系樹脂、ロジン誘導体樹脂、石油系樹脂、テルペン系樹脂、フェノール系樹脂、ケトン系樹脂等の各種粘着付与剤樹脂から選択される一種または二種以上を用いることができる。粘着付与剤の配合割合は、不揮発分(固形分)換算として、ポリマー成分(例えば、アクリル系水性エマルジョン型粘着剤組成物ではアクリル系ポリマー)100質量部に対して例えば凡そ50質量部以下とすることができる。通常は、上記配合割合を凡そ30質量部以下とすることが適当である。粘着付与剤含有量の下限は特に限定されないが、通常はポリマー成分100質量部に対して凡そ1質量部以上とすることにより良好な結果が得られる。
このような粘着付与剤は、一種のみを単独で使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。かかる粘着付与剤が水に分散された水分散液(粘着付与剤エマルジョン)の形態であって、かつ、有機溶剤を実質的に含有しない粘着付与剤エマルジョンの使用が特に好ましい。かかる粘着付与剤エマルジョンを配合してなる粘着剤組成物の固形分を高くするために、固形分の高い(例えば50質量%以上、典型的には50〜70質量%の)粘着付与剤エマルジョンを好ましく使用することができる。
【0049】
粘着付与剤の市販品(水性媒体に分散した形態のものを含む。)としては、荒川化学工業株式会社製品の商品名「スーパーエステルE−865」、「スーパーエステルE−865NT」、「スーパーエステルE−650」、「スーパーエステルE−786−60」、「タマノルE−100」、「タマノルE−200」、「タマノル803L」、「ペンセルD−160」、「ペンセルKK」;ヤスハラケミカル株式会社製品の商品名「YSポリスターS」、「YSポリスターT」、「マイティエースG」;等が例示されるが、これらに限定されない。高温環境下における凝集力を高める等の観点から、例えば軟化点が凡そ140℃以上(典型的には140〜180℃)の粘着付与剤を好ましく採用し得る。
【0050】
上記粘着剤組成物は、pH調整および/または粘度調整等の目的で使用される酸または塩基(アンモニア水等)を含有し得る。該組成物に含有され得る他の任意成分としては、粘度調整剤(増粘剤、希釈剤等)、レベリング剤、可塑剤、充填剤、顔料、染料等の着色剤、安定剤、防腐剤、老化防止剤等の、水性粘着剤組成物の分野において一般的な各種の添加剤が例示される。このような各種添加剤については、従来公知のものを常法により使用することができ、特に本発明を特徴づけるものではないので、詳細な説明は省略する。
【0051】
ここに開示される技術によると、界面破壊度50%以上(より好ましくは60%以上、さらに好ましくは75%以上)を実現する両面粘着シートが提供される。好ましい一態様に係る両面粘着シートでは、上記界面破壊度が実質的に100%である。この界面破壊度は、両面粘着シートの第一および第二の粘着剤層に二枚のアルミニウム板を貼り合わせ、60℃で24時間保存した後に10m/分の速度でT型剥離を行う層間破壊試験によって把握され得る。
【0052】
上記層間破壊試験につき、図面を参照しつつ、より詳しく説明する。すなわち、図6に示すように、両面粘着シート10を15mm×15mmのサイズにカットし、その第一粘着剤層11および第二粘着剤層12にそれぞれ厚さ0.1mm、幅20mm、長さ100mmのアルミニウム板16,17を貼り合わせて試験片19を作製する。その試験片19を60℃で24時間保存した後、常温まで除冷する。次いで、図7,8に示すように、アルミニウム板16,17の両端を掴んで10m/分程度(典型的には、10±2m/分)の剥離速度でT型剥離を行う。ここで、図7は両面粘着シート10が第二粘着剤層12とアルミニウム板17との界面で剥離する様子を示し、図8は両面粘着シート10が層間破壊する様子を示している。このようにして二枚のアルミニウム板16,17を剥離した(引き剥がした)後、使用した両面粘着シート10の状態を目視により観察し、粘着剤層とアルミニウム板との界面で剥離している面積の割合(界面破壊度)を求める。例えば図9に示すように、第二粘着剤層に貼り付けたアルミニウム板17に、上記T型剥離後において、第二粘着剤層との界面で剥離した部分10Aと両面粘着シート10が層間破壊した部分10Bとが存在する場合、界面で剥離した部分10Aが両面粘着シート10の貼付面積(15mm×15mm)に占める面積の割合を算出することにより、界面破壊度を求めることができる。
【0053】
ここに開示される技術により提供される両面粘着シート(ここに開示される方法により製造される両面粘着シートであり得る。)の好ましい一態様では、該両面粘着シートが、以下の粘着特性:
(I).後述する実施例に記載の方法で行われる粘着力試験において、前記第一および第二の粘着剤層のいずれについても対ABS粘着力が凡そ10N/20mm以上(より好ましくは凡そ11N/20mm以上、さらに好ましくは凡そ12N/20mm以上)である;
(II).後述する実施例に記載の方法で行われる保持力試験において、500gの荷重を付与して80℃の環境下に1時間放置しても試験片が落下しない;および、
(III).後述する実施例に記載の方法で行われる耐反撥性試験において、試験片端部の浮き高さが5mm未満である;
のうちの少なくとも一つを満たす。少なくとも上記特性(I)を満たすことが好ましい。上記特性(I)〜(III)のうち二つ以上を満たすことがさらに好ましく、全てを満たすことが特に好ましい。ここに開示される技術の好適な態様によると、このように、高い粘着特性(例えば、強い粘着力)を示し、且つ再剥離性に優れた両面粘着シートが実現され得る。
【0054】
上記好ましい界面破壊度(より好ましくは、さらに上記好ましい粘着特性、例えば対ABS粘着力)を実現する両面粘着シートは、例えば、上述した好ましい厚み、坪量、MDおよびTDの引張強度を満たす不織布を基材に用いて、ここに開示されるいずれかの製造方法を適用することにより、好適に製造され得る。
【0055】
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明において「部」および「%」は、特に断りがない限り質量基準である。
【0056】
また、以下の説明において、粘度および固形分はそれぞれ次のようにして測定した。
[粘度]
ウォーターバスを用いて試料温度を30±5℃に調整し、TOKIMEC社製のBH型粘度計を用いて回転数20rpmにおける粘度を測定した。
[固形分]
アルミニウム製のカップに試料約1gを入れ、130℃に120分間乾燥した後における残分の質量割合を算出した。
【0057】
両面粘着シートの作製に使用した粘着剤組成物は、それぞれ次のようにして作製した。
[粘着剤組成物A1]
冷却管、窒素導入管、温度計および攪拌機を備えた反応容器に、重合開始剤としての2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ハイドレート(和光純薬工業株式会社製品、商品名「VA−057」を使用した。)0.1部およびイオン交換水32部を投入し、窒素ガスを導入しながら1時間攪拌した。これを60℃に保ち、ここにブチルアクリレート29部、2−エチルヘキシルアクリレート67部、アクリル酸1.4部、メタクリル酸2.4部、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製品、商品名「KBM−503」を使用した。)0.02部、ドデカンチオール(連鎖移動剤)0.033部およびポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム(乳化剤)2部をイオン交換水34部に添加して乳化した混合物(すなわち、モノマー原料のエマルジョン)を4時間かけて徐々に滴下して乳化重合反応を進行させた。モノマー原料エマルジョンの滴下終了後、さらに3時間同温度に保持して熟成させた。このようにしてアクリル系ポリマーのエマルジョン(エマルジョンE1)を得た。エマルジョンE1の粘度は0.19Pa・sであった(No.2ローターを使用して測定)。また、エマルジョンE1に含まれるアクリル系ポリマーの質量平均分子量は71.1×10であった。該アクリル系ポリマーの酢酸エチル不溶分(ゲル分率)は48%であった。また、エマルジョンE1の平均粒子径(Beckman Coulter製の粒度分布測定装置、型式「LS 13 320」を用いて測定したメジアン径)は0.267μmであった。
【0058】
エマルジョンE1に10%アンモニウム水を添加してpH6.0に調整した(エマルジョンE2)。このエマルジョンE2の粘度は0.12Pa・sであり(No.2ローター使用)、固形分は57.8%であった。
このエマルジョンE2に対し、該エマルジョンに含まれるアクリル系ポリマー100部当たり、粘着付与剤(荒川化学工業株式会社製品、商品名「スーパーエステルE−865NT」、軟化点160℃の重合ロジン系樹脂のエマルジョン)を固形分基準で20部、増粘剤(東亞合成株式会社製品、商品名「アロンB−500」)を固形分基準で0.38部、10%アンモニア水をアンモニア(NH)基準で0.1部添加して、粘着剤組成物A1を調製した。この組成物A1の粘度は1.1Pa・sであり(No.3ローター使用)、固形分は56.0%であった。
【0059】
[粘着剤組成物A2]
増粘剤の添加量を固形分基準で0.5部に変更した点以外は組成物A1と同様にして、粘着剤組成物A2を調製した。この組成物A2の粘度は1.8Pa・sであり(No.3ローター使用)、固形分は56.1%であった。
【0060】
[粘着剤組成物A3]
増粘剤の添加量を固形分基準で0.58部に変更した点以外は組成物A1と同様にして、粘着剤組成物A3を調製した。この組成物A3の粘度は2.6Pa・sであり(No.3ローター使用)、固形分は56.0%であった。
【0061】
[粘着剤組成物A4]
増粘剤の添加量を固形分基準で1部に変更した点以外は組成物A1と同様にして、粘着剤組成物A4を調製した。この組成物A4の粘度は10Pa・sであり(No.4ローター使用)、固形分は55.9%であった。
これら粘着剤組成物A1〜A4の性状を表1にまとめて示す。
【0062】
【表1】

【0063】
以下の例において使用した不織布は次のとおりである。
不織布B1:日本大昭和板紙株式会社製、麻100%からなりビスコース含浸加工が施された不織布、商品名「F−18」。
不織布B2:日本大昭和板紙株式会社製、麻100%からなりビスコース含浸加工が施された不織布、商品名「F−23」。
不織布B3:日本大昭和板紙株式会社製、麻100%からなる不織布、商品名「SY−23」。
これら不織布B1〜B3の組成および性状を表2に示す。
【0064】
【表2】

【0065】
なお、各不織布の引張強さは次のようにして測定した。すなわち、不織布の流れ方向が長手方向と一致するようにして該不織布を幅15mmの帯状にカットしたものを試験片とし、該試験片を引張試験機にセットして(チャック間距離180mm)、JIS P 8113に準じて当該不織布の縦方向(流れ方向、MD)の引張強さ[N/15mm]を測定した。また、不織布の幅方向が長手方向と一致するようにして該不織布を幅15mmの帯状にカットした試験片につき、同様にして当該不織布の横方向(TD)の引張強さ[N/15mm]を測定した。また、各不織布の縦方向(MD)および横方向(TD)の伸びについてもJIS P 8113に準じて測定を行った。
【0066】
これらの粘着剤組成物および不織布を用いて両面粘着シートを作製した。
<例1>
両面にポリエチレン樹脂がラミネートされた上質紙をシリコーン系剥離剤で処理してなる剥離ライナーを二枚用意した。そのうち一枚の剥離ライナーに粘着剤組成物A4を塗布し、100℃で2分間乾燥させて、該剥離ライナー上に厚さ約60μmの粘着剤層を形成した。この粘着剤層付き剥離ライナーを、基材としての不織布B1の第一面に貼り合わせることにより、該第一面に転写法による粘着剤層(第一粘着剤層)を設けた。上記貼り合わせの後、上記剥離ライナー(転写シート)は引き続き第一粘着剤層の保護に使用した。
次いで、乾燥膜厚が60μmとなる量の粘着剤組成物A1を上記不織布の第二面に塗布し、100℃で2分間乾燥させて、該第二面に直接法による粘着剤層(第二粘着剤層)を形成した。この第二粘着剤層に二枚目の上記剥離ライナーを積層した。このようにして例1に係る両面粘着シートを得た。
【0067】
<例2,例3>
直接法による第二粘着剤層の形成に使用する粘着剤組成物(直接塗布用粘着剤組成物)として、組成物A1に代えてA2(例2)またはA3(例3)を使用した。その他の点については例1と同様にして、例2および例3に係る両面粘着シートを作製した。
【0068】
<例4〜6>
基材として不織布B1に代えてB2を用いた点以外は例1〜3とそれぞれ同様にして、例4〜6に係る両面粘着シートを作製した。すなわち、例4では直接塗布用粘着剤組成物として組成物A1を用い、例5ではA2を、例6ではA3を使用した。
【0069】
<例7〜9>
基材として不織布B1に代えてB3を用いた点以外は例1〜3とそれぞれ同様にして、例7〜9に係る両面粘着シートを作製した。すなわち、例7では直接塗布用粘着剤組成物として組成物A1を用い、例8ではA2を、例9ではA3を使用した。
【0070】
<例10〜12>
基材として不織布B1(例10)、B2(例11)またはB3(例12)を用い、直接塗布用粘着剤組成物としてはいずれも組成物A4を使用した。その他の点については例1と同様にして、例10〜12に係る両面粘着シートを作製した。
【0071】
得られた両面粘着シートを50℃の環境下に3日間保持したものを評価サンプルとして、以下の評価試験を行った。その結果を、各例に係る両面粘着シートの概略構成(使用した不織布の種類、各面に粘着剤層を形成するために用いた粘着剤組成物の粘度)とともに表3に示す。なお、上記粘着剤層付き剥離ライナーを不織布に貼り合わせることなく該粘着剤層に二枚目の剥離ライナーを積層したものを50℃の環境下に3日間保持した後、上記粘着剤層から採取した粘着剤サンプルの酢酸エチル不溶分(ゲル分率)を測定したところ、42.0%であった。
【0072】
[層間破壊試験]
上記で説明した方法により層間破壊試験を行った。すなわち、両面粘着シートを15mm×15mmのサイズにカットし、第一粘着剤層および第二粘着剤層にそれぞれ厚さ0.1mm、幅20mm、長さ100mmのアルミニウム板を貼り合わせて試験片を作製した。該試験片を60℃で24時間保存した後、常温まで除冷し、上記アルミニウム板の両端を手で持って10m/分程度の速度で手によりT型剥離を行った。このようにして二枚のアルミニウム板を剥離した(引き剥がした)後、使用した両面粘着シートの状態を目視により観察し、粘着剤層とアルミニウム板との界面で剥離している面積の割合(界面破壊度)を求めた。
【0073】
[糊残り]
両面粘着シートの第二粘着剤層(直接法により形成された粘着剤層)を覆う剥離ライナーを剥がし、厚さ25μmのPETフィルムに貼り付けて裏打ちした。その裏打ちされた粘着シートを幅20mm、長さ100mmのサイズにカットして試験片を作製した。次いで、第一粘着剤層(転写法により形成された粘着剤層)を覆う剥離ライナーを剥がし、被着体としてのABS板(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂板)に上記試験片を貼り合わせた。これを60℃の環境下に14日間保持した後、該試験片を1000mm/分程度の剥離速度で180°方向に手で引き剥がし、ABS板表面への糊残りの有無を目視にて確認した。
【0074】
【表3】

【0075】
表3に示されるように、基材として厚み40μm以上の(より具体的には、厚み60μm〜85μmの)不織布B1〜B3を用い、直接塗布用粘着剤組成物として粘度10Pa・sの組成物を用いた例10〜12では、上記層間破壊試験において、使用した両面粘着シートの全面積が層間破壊した(界面破壊度0%)。すなわち、これらの例では、使用した両面粘着シートの全面積で、引き剥がされたアルミニウム板の双方に粘着シートの残渣が付着していた。また、例10〜12に係る両面粘着シートでは、上記糊残り試験においても被着体(ABS板)表面に糊残りが認められた。
【0076】
これに対して、直接塗布用粘着剤組成物として粘度3Pa・s以下(より具体的には0.5〜3Pa・s)の組成物を用いた例1〜9では、いずれも、例10〜12に比べて再剥離性が顕著に上昇した。すなわち、これら例1〜9に係る両面粘着シートでは、いずれも、層間破壊試験においていずれも50%またはそれ以上の界面破壊度が達成され、ABS板への糊残りも認められなかった。また、不織布B2またはB3を用いた例4〜9では、直接塗布用粘着剤組成物の粘度が0.5〜3Pa・sの範囲でより低くなるにつれて界面破壊度がさらに上昇する傾向が認められた。いずれの不織布を用いた場合にも、直接塗布用粘着剤組成物として粘度0.5〜2Pa・sの組成物A1,A2を用いた例では70%以上の界面破壊度が達成され、粘度0.5〜1Pa・sの組成物A1を用いた例ではさらに高い(75%以上の)界面破壊度が達成された。同じ粘度の直接塗布用粘着剤組成物を用いた例同士の比較では、ビスコース加工により含浸性が高められた不織布B1,B2を用いることにより、不織布B3を用いた例に対して界面破壊度の上昇(再剥離性の向上)がみられた。ビスコース加工が施され且つ坪量が15〜20g/mの不織布B1を用いた例1〜3では、特に良好な結果が得られた。
【0077】
例1〜12に係る両面粘着シート(評価サンプル)につき、さらに以下の評価試験を行った。その結果を、各例に係る両面粘着シートの概略構成とともに表4に示す。
【0078】
[粘着力]
両面粘着シートの一方の面(第一粘着剤層または第二粘着剤層)を覆う剥離ライナーを剥がし、厚さ25μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに貼り付けて裏打ちした。その裏打ちされた粘着シートを幅20mm、長さ100mmのサイズにカットして試験片を作製した。該試験片の他方の面を覆う剥離ライナーを剥がし、被着体としてのABS板に上記試験片を、2kgのローラを1往復させて圧着した。これを23℃に30分間放置した後、JIS Z0237に準じて、温度23℃、相対湿度50%の測定環境下、引張試験機を使用して引張速度300mm/分の条件で180°引きはがし粘着力(N/20mm幅)を測定した。
【0079】
[保持力]
両面粘着シートの一方の面(第一粘着剤層または第二粘着剤層)を覆う剥離ライナーを剥がし、厚さ25μmのPETフィルムに貼り付けて裏打ちした。その裏打ちされた粘着シートを幅10mm、長さ100mmのサイズにカットして試験片を作製した。該試験片の他方の面を覆う剥離ライナーを剥がし、被着体としてのフェノール樹脂板に上記試験片を、幅10mm、長さ20mmの接着面積にて、2kgのローラを1往復させて圧着した。このフェノール樹脂板を80℃の環境下に垂下して30分間放置した後、試験片の自由端に500gの荷重を付与し、JIS Z0237に準じて、該荷重が付与された状態で80℃の環境下に1時間放置した後における試験片のずれの大きさ(距離)を測定した。
【0080】
[耐反撥性]
両面粘着シートの第二粘着剤層(直接法により形成された粘着剤層)を覆う剥離ライナーを剥がし、これを厚さ0.5mm、幅10mm、長さ90mmのアルミニウム板に貼り合わせて試験片を作製した。その試験片の長手方向をφ50mmの丸棒に沿わせて弧状に曲げた後、第一粘着剤層(転写法により形成された粘着剤層)を覆う剥離ライナーを剥がし、ラミネータを用いてポリプロピレン板に圧着した。これを23℃の環境下に24時間放置し、次いで70℃で2時間加熱した後に、ポリプロピレン板表面から浮きあがった試験片端部の高さ(mm)を測定した。測定は3つの試験片を用いて行い(すなわちn=3)、それらの平均値を算出した。
【0081】
【表4】

【0082】
表4に示されるように、例1〜9に係る両面粘着シートはいずれも、例10〜12にかかる両面粘着シートと概ね同等の良好な粘着性能(粘着力、保持力、耐反撥性)を示すものであった。なお、耐反撥性に関しては、粘度0.5〜3Pa・sの範囲では、より低粘度の組成物を用いることにより耐反撥性がさらに向上する傾向がみられた。この結果は、直接塗布用組成物の低粘度化による基材含浸性の向上に関連するものと推察される。
【符号の説明】
【0083】
1 第一粘着剤層(粘着剤層)
2 第二粘着剤層(粘着剤層)
3 剥離ライナー
5 剥離ライナー
4 不織布
20 両面粘着シート製造装置
21 巻出ロール
22 巻取ロール
23 基材ロール
100,200 両面粘着シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材たる不織布の両面に粘着剤層を有する両面粘着シートを製造する方法であって:
30℃における粘度が0.1〜3Pa・sであり且つ固形分が50〜70質量%であるエマルジョン型粘着剤組成物を用意する工程;および、
前記不織布の少なくとも一方の面に前記粘着剤組成物を直接塗布して粘着剤層を形成する工程;
を包含する、両面粘着シート製造方法。
【請求項2】
剥離面上に予め形成された転写用粘着剤層を前記不織布の第一面に積層することにより該第一面に第一粘着剤層を形成する工程をさらに含み、該第一粘着剤層形成工程の後に前記不織布の第二面に前記粘着剤組成物を直接塗布して第二粘着剤層を形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
30℃における粘度が5〜25Pa・sであるエマルジョン型粘着剤組成物を前記剥離面に塗布して該剥離面上に前記転写用粘着剤層を形成する工程をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記不織布として、以下の特性:
(A)坪量が15g/m以上である;
(B)流れ方向および幅方向のいずれについても引張強度が10〜50N/15mm以上である;および、
(C)厚みが40μm〜100μmである;
の全てを満たす不織布を使用する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の方法により製造された、両面粘着シート。
【請求項6】
基材たる不織布の第一面および第二面に、それぞれ第一および第二の粘着剤層を有する両面粘着シートであって、
前記不織布は、以下の特性:
(A)坪量が15g/m以上である;
(B)流れ方向および幅方向のいずれについても引張強度が10〜50N/15mm以上である;および、
(C)厚みが40μm〜100μmである;
の全てを満たし、かつ、
前記両面粘着シートの第一および第二の粘着剤層に二枚のアルミニウム板を貼り合わせ、60℃で24時間保存した後に10m/分の速度でT型剥離を行った場合において、該両面粘着シートの面積のうち50%以上が粘着剤層とアルミニウム板との界面で剥離する、両面粘着シート。
【請求項7】
前記不織布の嵩密度が0.2〜0.4g/mである、請求項6に記載の両面粘着シート。
【請求項8】
前記両面粘着シートの対ABS粘着力が、前記第一および第二の粘着剤層のいずれについても10N/20mm以上である、請求項6または7に記載の両面粘着シート。
【請求項9】
前記第一および第二の粘着剤層は、エマルジョン型粘着剤組成物から形成されたものである、請求項6から8のいずれか一項に記載の両面粘着シート。
【請求項10】
リサイクル用部品に貼り付けて用いられる、請求項5から9のいずれか一項に記載の両面粘着シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−46909(P2011−46909A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−207770(P2009−207770)
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】