説明

並列振動分光法による高スループットのスクリーニング

広帯域フーリエ変換赤外(FTIR)分光法によって複数サンプル中の分子相互作用を同時アッセイするための方法および装置が開示される。サンプルは、複数ウェルのプレートおよび赤外光を導く光学構造、例えば、プリズム(図1)を含むサンプルホルダー(130)中に置かれる。様々な実施形態は、サンプル・ウェルと光学構造の間の異なる構造的な関係を含む。フーリエ解析による複数の波長の走査は、赤外光に適合性のある固体材料内に配置された多数のサンプル・ウェルと併用される。詳細には、非常に大規模の測定デバイスおよびそれを使用するためのシステムが、半導体加工に用いられるリソグラフィーおよび他の技術から作製される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2002年11月22日出願の米国仮出願第60/428,241号の優先権を主張するものであり、その全体は参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
本発明は、全体に、全内部反射および関連する技術を用いて、複数サンプルの迅速なスペクトルアッセイを行うための方法および装置に関し、詳細には、多数の化学反応を同時に光学的に研究する方法およびサンプルホルダーに関する。
【背景技術】
【0003】
実際に生物医科学のあらゆる領域において、化学的および生物学的相互作用に関与する特定のアナライトの存在、構造、および機能を測定する必要がある。必要性は、生物化学的な経路の位置付けを行い、疾病との相関付けが行われる基礎的な科学研究所から、患者が診療に関するアナライトのレベルについて定例的に監視される診療所の診断までの範囲に至る。他の領域には、医薬研究、軍事用途、獣医学、食物、環境用途が含まれる。これらのすべての場合において、特定のアナライトまたはアナライトの群の存在、量、構造活性の関係を測定する必要がある。
【0004】
この必要性を満足するために多くの方法が開発された。方法は、酵素関連の免疫吸着剤アッセイ(enzyme-linked immunosorbent assay)(ELISA)、放射線免疫アッセイ(RIA)、多くの蛍光アッセイ、質量スペクトル法、比色アッセイ、ゲル電気泳動、ならびに多くのさらに特殊な方法を含む。アッセイ技術の大部分は、標識の化学的付着、または試験されるサンプルの精製と増幅などの特殊な調製を必要とする。一般に、2個または複数の分子間の相互作用は相互作用に関する検出可能な信号によって監視される。典型的に、対象の配位子または非配位子に共役する標識は信号を発生する。物理的または化学的効果は検出可能な信号を生成する。信号は、放射能、蛍光、化学蛍光、リン光、酵素活性を含むことができる。分光測光、放射線分析、または光学的追跡法を用いて多くの標識を検出することができる。
【0005】
残念ながら多くの場合、特別のアッセイに必要な分子1個またはすべてに標識を付けることは困難であり、不可能でさえある。標識の存在は、分子相互作用を妨害し、さもなければ、立体効果を含む多くの理由から、2個の分子の間の分子認識が機能しないことがある。さらに、これらの標識手段はどれも相互作用の性質を正確に測定することができない。例えば、受容体への活性部位結合は非活性部位結合と区別することができず、したがって、本検出方法からは機能的な情報は得られない。標識の必要がなく、かつ機能的な情報を生成する相互作用の検出方法は、上述の手段に多くの改善をもたらすであろう。
【0006】
検出技術は商業的に非常に重要である。生物医学産業は、タンパク質-タンパク質相互作用、薬物-タンパク質相互反応、小分子結合、酵素反応を評価し、かつ、他の対象化合物を評価する上で、様々な水ベースまたは流体ベースの生理系の試験に依存している。理想的には、技術は特殊な抗体などの高度に特殊なプローブを必要とすべきではない。アッセイは分子の天然の特性を測定することによって動作すべきであり、結合事象を検出するために追加の標識または追跡子を必要としないであろう。多くの用途において、複雑な生物化学的経路を精密に計画することができ、または極めて少量かつ多数の化合物が薬物スクリーニング実験計画に使用できるように、アッセイは最小化され、サンプルは並列に取り扱われるべきである。多くの用途において、正確な動力学および構造-活性関係をほとんど同時に得ることができるように、アッセイは複数な一連の反応を実時間で監視しなければならない。
【0007】
振動分光法は、この分野の制約を克服し、分子相互作用について多くの情報を明らかにすることのできる、十分確立された非破壊分析手段である。赤外分光法は、一般に0.770-1000ミクロン(12,900-10cm-1)の電磁気放射の吸収に関連し、分子種の振動転移に見られる程度のエネルギーを現す。組成物および構造でのこれらのモードの位置、幅、強度の変化は分子種の識別を可能にする。赤外分光法の1つの利点は、実際に任意の状態の、実際に任意のサンプルを、別の標識を使用することなく研究できることである。液体、溶液、ペースト、粉、フィルム、繊維、気体、表面を、サンプリング技術の適正な選択によって検査することができる。Modern Infrared Spectroscopy(Wiley and Sons)Chichester(1996)、およびBiological application of Infrared Spectroscopy(Wiley and Sons)Chichester 1997においてB.Stuartによって論じられたように、タンパク質、ペプチド、リピド、生物膜、炭水化物、薬物、食物、および植物と動物組織の両方などの生物系が、赤外分光法によって特徴付けられた。
【0008】
高解像度の赤外分光計が入手可能であることによって、細胞循環研究(例えば、H.-Y.Holman、M.C.Martin、E.A.Blakely、K.Bjornstad、W.R.McKinney、Biolpolmers(Biospectroscopy)2000、57、329-335)、タンパク質-タンパク質相互作用(例えば、R.Barbucci、A.Magnani、C.Roncolini、S.Silvestri、Biopolymers、1991、31、827-834)、重合研究(例えば、P.K.Aldridge、J.J.Kelley、J.B.Callis、D.H.Burns、Anal.Chem.、1993、65、3581-3583)、および固体相有機反応(例えば、B.Yan、J.B.Fell、G.Kumaravel、J.Org.Chem.、1996、61、7467-7472)を含む、化学的および生物学的相互作用の時分割研究がもたらされた。伝統的に、これらの研究は、従来の赤外分光計に使用される検出器が1個であることから、1回に1個の測定に制限されていた。自動サンプラーが紹介され、これは、光路をサンプルの上に動かすか、またはコンピュータ制御装置を用いて、多数のサンプルを順序よく光路中に動かすかのいずれかであった。例えば、PIKE Technologies Inc. of Madison、Wisconsin(ホームページはoptics.bruker.com/pages/products/BIO/hts-xt.htmである)によって販売されている装置を参照されたい。しかし、データ収集はほとんど直列のままであり、動力学的研究は、多数の反応には不可能ではなくても、厄介である。
【0009】
また、1個のサンプルの直列的な研究は、R.Beer、Remote sensing by Fourier transform spectrometry(Chemical Analysis v.120)1992、Wiley and Sons、New Yorkが述べたように、遠隔検知用に赤外スペクトル像を用いる焦平面アレイなどの検出器アレイによって対処された。また、スペクトル像は植物および動物組織、ポリマー分解、ポリマー液晶の像研究のために、赤外顕微鏡の使用と結びつけられた(例えば、米国特許第5,377,003号およびその中の参照文献、およびB.Foster、American Laboratory 1997、February、21-29、およびP.J.Treado、M.D.Morris、Applied Spectroscopy Reviews 1994、29(I)、1-38を参照されたい)。これらの単一サンプル手順は、空間的な相互関係を明らかにするスペクトル情報(例えば、スペクトル像)の収集を意図する。より最近、複数サンプルからの並列赤外分光法が行われたが、組合せ研究において多数の化学製品のスクリーニングを高い出力で得るのに特に有利である。例えば、国際公開第WO 98/15813号は、「単一サンプル」の高解像度像の触媒反応監視および他の用途のための並列検出赤外分光法の使用について述べている(http//www.spectraldimensions.comを参照されたい。)。この特許出願は主として透過モードでの測定を記載しているが、残念ながら実現性のある装置を作製するのに必要な情報に欠ける。例えば、透過測定のためのサンプルホルダーの議論と形状は、サンプルをどのようにサンプルアレイに移動するかの説明がない。ロボットがサンプルアレイを充填し、次いで人間が赤外線透過性「頂部」でアレイを「キャップする」という提示された仮定は、自動の高スループットのスクリーニング環境には実際的でない。したがって、ここに記載された装置は、最善でも「単一サンプル」の高解像度像に制限されるように思われる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
残念ながら、これらの装置は感度および/または速度の制約を受ける。1つの理由は、サンプル数が増加すると、実際の単一のサイズが減少することである。短時間にサンプルと相互作用して意味のある信号を発生することのできる光子の数が劇的に減少し、一般に感度と速度の両方が制約を受ける。この問題を解決することは、新しい発見領域を開拓し、非常に小さな多数のサンプルを迅速にアッセイすることを必要とする、急成長している結合化学の分野に特に重要であろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の実施形態は、複数サンプルのより高いスループットの分析を提供し、それらの天然環境における分子の実時間アッセイを可能にする。複数のウェット・サンプルは、分子相互作用を探査するための広帯域赤外線源と、広帯域光源からの広帯域赤外線の変調器と、各サンプル・ウェルとの光学界面を有する複数のウェットウェル型サンプルホルダーと(ここで、光学界面は、変調された広帯域赤外線をサンプルホルダーの赤外線透過表面とサンプルとの間の少なくとも1個の界面表面へ導き、内部反射および続いて変更された光の射出を可能にする)、変更された光を検出するための赤外線検出器と、赤外線検出器からのデータを分析するためのコンピュータとを含む並列振動分光法によって分析される。
【0012】
他の実施形態は、複数のウェット・サンプルにおける分子相互作用を並列振動分光法によって同時アッセイするのに適した、半導体基板と、流体を受容するための少なくとも96個のウェルのアレイとを含むサンプルホルダーを提供する。ここで、少なくとも1個のプリズム状形態は、各ウェルに対して光学的に結合するとともに、前記プリズム状形態と光学的に結合した各ウェルの中に展延する内部反射要素に対して光学的に結合しており、ウェルの内部に内部反射を提供する。さらに他の実施形態は、並列振動分光法によって複数のウェット・サンプル中の分子相互作用を同時アッセイするためのサンプルホルダーの製造方法を提供し、前記ホルダーは、半導体基板と、基板中のウェルのアレイと、各ウェルの中へ展延する少なくとも1個の内部反射要素とを含み、前記方法は、少なくとも96個のウェルの二次元アレイを形成するための半導体基板の繰り返し異方性湿式エッチングを含み、各プリズム状形態は、約(例えば正確に)5〜約(例えば正確に)100ミクロンの平均幅、約(例えば正確に)10〜約(例えば正確に)10000ミクロンの平均高さを有する。実施形態において、平均幅は、約(例えば正確に)10〜75ミクロン、約(例えば正確に)10〜60、および約(例えば正確に)20〜50ミクロンとすることができる。実施形態において、平均高さは、約(例えば正確に)25〜約(例えば正確に)500ミクロン、または約(例えば正確に)50〜約(例えば正確に)250ミクロンとすることさえできる。
【0013】
さらに他の実施形態は、並列振動分光法によって複数のウェット・サンプルの分子相互作用を同時アッセイするためのサンプルホルダーであって、少なくとも96個のサンプル・ウェルのアレイを保持するための基板を含み、各サンプル・ウェルのためのプリズム状構造(プリズム状構造は波長5〜10ミクロンの広帯域赤外光に対して透明な材料を含む)は、その広さより少なくとも2倍高く、光が光学的に高密度の材料に全内部反射の臨界角度を超える入射角度で入ることを可能にする。
【0014】
さらに他の実施形態は、細胞活性上の化学化合物の効果を検出する手段、または望ましい遺伝子操作をインビトロで検出するための手段であって、5ナノメートルよりも長い波長を有する広帯域赤外線源と、新陳代謝する細胞を定温に保持し維持する少なくとも16個のウェル(各ウェルは細胞と接触している赤外線透過性の少なくとも1個の表面を有する)を有する、ウェット細胞サンプルの温度制御されたホルダーと、表面に接触している細胞の層に浸透する広帯域赤外線を、赤外線透過表面に全体の内部反射の臨界角度を超える入射角度で導くための1個または複数のプリズム状構造と、反射された光を収集する赤外像検出器とを含む。
【0015】
さらに他の実施形態は、溶液中の一組の生体分子に係わる反応を監視するためのスループットの高い方法であって、アレイ表面の個々の固定化位置で、生体分子の組を異なる生体分子種でアレイ表面上に固定化または合成することを含み、アレイ表面は5ミクロンよりも長い波長の赤外線に対して透明であり、各固定化位置は、溶液に少なくとも1ミクロン浸透する5ミクロンよりも長い波長の赤外光を全内部反射の臨界角度を超える入射角度でアレイ表面へ導くプリズム状構造と光学的に接触し、アレイ表面を5ナノメートルよりも長い波長の広帯域赤外線で照射し、各固定化位置から反射した広帯域光スペクトルを収集し、フーリエ変換を用いて固定化位置の複数の吸収値を計算する。
【0016】
さらに他の実施形態は、複数の赤外源とパラボラ反射器を組み合わせて高強度の光を発生させ、1個または複数のプリズム状構造を用いて光を複数のサンプル上に導く。
【0017】
さらに他の実施形態は、分子相互作用の広いスペクトル分析を同時に行うために可視光と赤外光を組み合わせる。それらの相互作用は、蛍光、化学蛍光、およびタンパク質の芳香族残基に見出されるものなど、より高いエネルギーのパイ電子の化学部位の吸収に伴う短波長の相互作用を含む。
【0018】
さらに他の実施形態は、光信号発生前の1個または複数の結合反応によって、プローブ光の1/2波の時間内に、生物化学的な光目標の集束による信号の発生を高める。
【0019】
さらに他の実施形態は、膜タンパク質系と相互作用する化学物質の薬剤発見技術の能力を高め、細胞表面での生体分子の全内部反射の減衰は、膜タンパク質に関連する事象に焦点を合わせるために、2ミクロンを超える波長の赤外光と、探査される表面で固定化された無傷の細胞またはミクロソームを有する、ウェット・サンプルを用いて達成される。
【0020】
さらに他の実施形態は、個人の疾病状態への傾向または個人の疾病状態を識別する方法であって、本明細書に述べた装置を用いて個人の生物的試料のスペクトルフィンガープリントを得るステップと、ステップ(a)のスペクトルフィンガープリントを、正常なスペクトルまたは正常なスペクトルの範囲を示す参照と比較して差を得るステップと、差を予測した差と比較して臨床的なまたは予測的な結論付けを行うステップとを含む。
【0021】
さらに他の実施形態は、少なくとも1種の流体サンプルにおける分子結合事象を検出する方法であって、流体サンプルをpH勾配の存在下で電場勾配に露出すること、流体サンプルを広いバンド幅の変調された赤外光で照射すること、少なくともサンプルを通る透過または内部反射によって得た赤外線を広帯域の赤外線検出器で検出してデータを生成させること、データをコンピュータで分析して結合事象を検出することとを含む。さらに他の実施形態において、流体サンプルは、毛細管内で電場とpH勾配に露出されるタンパク質サンプルである。
【0022】
さらに他の実施形態は、実時間の等電点電気泳動の超スペクトル分析用装置を提供し、広帯域赤外線源と、広帯域赤外線の変調器と、広帯域赤外線源から生成された赤外光を入射させる流体サンプルホルダーと、流体サンプル保持チャンバーを射出する赤外光を検出する赤外線検出器と、赤外線検出器からのデータを分析するコンピュータとを含む。広帯域赤外線光は、透過モードでサンプルホルダーを通過することができる。広帯域赤外線光は、反射した光が射出する前に内部反射を起す。流体サンプルホルダーは一次元の毛細管を有することができる。流体サンプルホルダーは、複数のサンプル滴定プレートの形態とすることができ、サンプルは空気に露出することができる。さらに、少なくとも2個のサンプルは2種の異なるpH範囲内で同時に試験することができる。また、赤外線検出器は焦平面アレイ検出器とすることができる。
【0023】
他の実施形態は、少なくとも一度に1個のサンプルを標準的な滴定プレートから流体サンプルホルダーへ移動するためのプログラム可能な流体移動機構、および少なくとも一度に1個のサンプルを流体サンプルホルダーから質量分光計へ移動するためのプログラム可能な流体移動機構からなる群から選択される移動機構を提供する。
【0024】
他の実施形態は、並列振動分光法によって複数のウェット・サンプル中の分子相互作用の同時アッセイを行うためのサンプルホルダーを提供し、少なくとも3個のサンプルユニットのアレイを保持する基板を含み、各ユニットは、赤外線透過性の少なくとも1個の表面を有する毛細管供給されるサンプル・ウェルと、少なくとも1個のサンプル注入口と、少なくとも1個のサンプル取り外し口と、各口をサンプル・ウェルに接続するための毛細管とを含む。さらに、各サンプル・ウェルの少なくとも1個の透明領域は、ハロゲン化アルカリ塩、CaF2、BaF2、ZnSe、Ge、Si、薄いポリエチレン、AMTIRおよびKRS-5からなる群から選択される1個または複数の赤外線透過性の材料を含むことができる。さらに、サンプルホルダーのサンプルアレイはリソグラフィーおよび標準的な半導体加工技術を用いて微小製作することができる。サンプルホルダーは、プラスチック、ガラス、ワックス、ポリマー、金属またはエラストマーからなる群から選択される赤外線に対して不透明な物質をさらに含み、少なくとも96個のサンプルユニットを含むことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
発明者らは、複数サンプルの分光法の問題をシステム全体から研究し、サンプル当たりに処理される光量が、多くの小さなサンプルを同時にアッセイ際の主な制約であることを認識した。すなわち、多数のサンプルを並列に分光分析するには、各サンプルに関する並列の情報を同時に得るため、非常に高い全光の流れを必要とする。このシステムの障害は、(i)パラボラ光学系と複数の光源とにより出発光の量を増加させたこと、(ii)広範囲のスペクトル光とフーリエ解析を使用する高帯域幅のシステムを利用して、はるかに高い光束と、その結果としての情報の流れを可能にすること、(iii)多くのサンプル数を可能にしながらも、光のスループットを大きく増加させるプリズム状構造と代替のサンプル形態との発見、(iv)半導体加工技術によって大量生産することのできる小型サンプルホルダーの発見、(v)雑音対信号を向上させるために信号エネルギーの使用をさらに最適化する生物化学および細胞集束技術の発見によって対処された。これらの発見の各々は、以下にさらに詳細に述べるように、単一または組合せで、性能の向上に貢献し、より多数のサンプルの分光法アッセイの使用を容易にする。
【0026】
複数サンプルアッセイのための広帯域システム
本発明の実施形態は、複数の波長の光スペクトルを用いて、複数サンプルのアレイから吸収および/または透過スペクトルを同時に測定する。従来の多くの技術とは対照的に、本発明の実施形態の高い帯域幅システムは、はるかに多くの全光の使用、および狭い光濾過を必要としない個々の波長の実時間検出のために、フーリエ変換解析と組み合わせてスペクトル領域全体を用いる。他の分光法システムのほとんどは、バンドパス濾波によって、または回折格子の使用および波長の選択によって光源からの光の大部分を廃棄する。高帯域幅およびフーリエ解析は、プリズム状構造と小さなサイズであるが多くのサンプル数のアッセイ目標を組み合わせる上で特に望ましい。
【0027】
本発明の実施形態に用いられるフーリエ変換法は、既知であり、1995年5月16日にBuontempo等に発行された米国特許第5,416,325号に例示されているように、分光法および全内部反射に使用された。この特許の内容、特に低い光強度の信号の雑音対信号比を最大にする方法は、参照によりその全体が援用されている。また、1998年7月7日にHortonへ発行された米国特許第5,777,736号、1993年10月19日にWolfman等へ発行された米国特許第5,254,858号、1983年5月10日にGilbyへ発行された米国特許第4,382,656号、1980年12月23日にWinstonへ発行された米国特許第4,240,692号、1978年12月19日にRabl等に発行された米国特許第4,130,107号、1994年11月1日にNormandin等に発行された米国特許第5,361,160号の内容は、特に参照により援用されているフーリエ変換分光法法の使用の詳細を提供し、当業者には既知の技術を記述している。
【0028】
光源からの光は変調され、この目的のために、光ビームを管理するための集束および/またはビーム操縦光学系を有する光通路内に干渉計を使用することが好ましい。管理されたビームは各サンプルに同時に接触(反射または透過によって)し、次いで、検出器へ導かれる。これは二次元検出器が好ましい。検出器はデータをサンプルから同時に収集し、貯蔵および処理のためにデータをコンピュータへ移動する。
【0029】
干渉計は光源側に配置してプローブ光がサンプルに接触する前に遮ることができ、または検出器側に置いてサンプルと検出器の間の光を遮ることができる。いずれの実施形態においても、干渉計は検出器で検出する前に光を変調する。赤外光を用いる実施形態では、できる限り多くのビーム通路を制御環境に置いて水吸収による誤差を制限しなければならない。サンプルを取り囲む環境中の水蒸気および二酸化炭素の量を制御することは、安定な基準線を達成するために非常に望ましい。温度、湿度、または光ビームが測定中に通過する媒体の化学的含有物の変動は、スペクトルを制御不能に変化させ得る。それらの変化は背景の数学的減算を複雑にし、それを困難にさせ、および/または信頼性を損なう。好ましい実施形態において、赤外ビームがサンプルへの通路およびサンプルからの通路を通過する途中の空間に、乾燥窒素ガスが加えられる。
【0030】
代表的な装置
本発明の実施形態による反射モード装置の例は図1に提供されており、光源、検出器、光源と検出器の間のいくつかの部品を示す。光源105からの光はビーム分配器110を通過し、干渉計ミラー115によってスペクトルフィルター120へ反射される。スペクトルフィルター120からの光は、集束およびビーム操縦光学系125によってサンプルホルダー130の底部へ集束する。次いで、光は1回または複数回の通過で各サンプルと相互作用し、次いでサンプルホルダー130の外へ反射され、光学系135によって赤外カメラ140へ集束する。図1に示したこのシステムの実施形態は、(1)赤外線源、(2)放射を変調するデバイス、(3)サンプルホルダー、(4)赤外検出器、(5)スペクトルデータを収集し、処理し、示すコンピュータの5個の構成要素を含む。
【0031】
本発明の一実施形態による透過モードの装置を図2に示す。ここで、光源205からの放射は、ビーム分配器210を通過し、干渉計215によってスペクトルフィルター220へ反射される。スペクトルフィルター220からの光は集束光学系225によってサンプルホルダー230の底部へ集束し、ホルダー230内のサンプルアレイの各要素は同時に照射される。放射はサンプルを通過し、次いで光学系235によって集束して赤外カメラ240へ入射する。
【0032】
透過モードのサンプルホルダー
透過測定は、光源からの光をサンプルおよび検出器を通過させることによって行われ、一般に反射測定用に用いられるものとは異なるサンプルホルダーが必要である。溶液ベースの赤外透過測定は、一般に短い通路長の透過セルまたは流通セルを必要とする。両方の構成において、サンプルを通る光路長は水性溶液において長さ約5〜10ミクロンなどの短い距離に制限される。サンプルは、サンプルを拘束し、通路長を固定するように設計された、薄いガスケット(Teflon)によって分離された2個の赤外透過窓の間に挟むことができる。類似のサンプルホルダーが存在し、サンプルは、光の出入りが可能な赤外線に対して透明の側壁を有する管を通って流れる。どちらの構成も複数のサンプルから同時に赤外吸収スペクトルを得ることは不可能である。したがって、並列の複数の透過測定の問題は、(i)赤外ビーム中のすべてのサンプルの分離、(ii)必要な短い通路長の制御、(iii)溶媒蒸発の低減が必要なことであると言える。
【0033】
これらの問題は、図3に例示したように並列のサンプルホルダーの発見によって首尾よく対処された。このサンプルホルダーは、これらの問題を軽減するいくつかの特徴を有する。第1に、ホルダーは光がサンプルを通過することのできる赤外線透過性の領域を含む。これらの赤外線透過性のサンプリング領域はホルダー全体を赤外線透過性の媒体から構成することによって、または一連の赤外線透過性の窓を不透明な母材に一体化することによって作製することができる。第2に、サンプルホルダーは、図3に見られるように特定のサンプル注入口を含む。各サンプルの位置は、反応物、溶媒等の混合を可能にするいくつかのサンプル注入口を有することができる。最終的に、サンプル注入口はマイクロチャンネルによって赤外サンプリング領域に接続しており、口からサンプリング領域へ毛細管作用によってサンプルが動くことを可能にする。毛細管によって供給される短い通路長のサンプリング領域は、サンプルを通るビーム通路の制限および溶媒蒸発を低減するのに必要な絶縁に適するように修正することができる。
【0034】
さらに具体的に、図3aは赤外線透過性の材料から作られた3個のサンプリングユニットを有するサンプルホルダー300を示す。最も左のユニットに見ることができるように、サンプル注入/取り出し口310はサンプルまたはサンプル流の添加または除去のために使用され、毛細管微小チャンネル320を通ってサンプリング領域330へ流れ、次いでサンプル注入/取り出し口340を出る。図3bに示したサンプルホルダー350は不透明な母材領域360をさらに含む。
【0035】
これらのサンプルホルダーの赤外線透過性の領域は、ハロゲン化アルカリ塩(KBrまたはNaCl)、CaF2、BaF2、ZnSe、Ge、Si、薄いポリエチレン、またはAMTIRおよびKRS-5などの特殊な赤外材料など1種または複数の赤外線透過性の材料とすることができる。SiおよびGeなどの材料を使用することによって、サンプルアレイ全体をリソグラフィーおよび標準的な半導体加工技術を用いて微小加工することができる。不透明な母材はプラスチック、ガラス、ワックス、ポリマー、エラストマー等などの低コスト材料から作ることができる。
【0036】
内部反射モードのサンプルホルダーおよび構成要素
以下で詳細に述べるように、光を最適な効果へ導く新しいプリズム状構造を使用することによって、複数サンプルのより優れた減衰全内部反射を提供するさらに他の実施形態が発見された。これらのいくつかの発見に脈絡を付けるために、どのように減衰した全内部反射分光法が動作するかの概要を、どのようにこの手順に関連するいくつかの発見が使用されるかの説明と併せて提供する。この情報に基づいて、当業者であれば、特定のサンプル構成について提示された実施形態をさらに最適化することができよう。
【0037】
本発明の多くの実施形態は、非常に強い赤外吸収体である水などのサンプルの減衰した全内部反射分光法を用いる。これらの実施形態において、光学セルに入るエネルギーのビームは、入射光がサンプル/サンプルホルダーの界面に衝突する角度が臨界角度よりも大きいとき、サンプルと光学セルの間の界面で全内部反射を起す。臨界角度は材料依存性があり、Snellの法則に基づく。角度はサンプルと光学セルの屈折率によって定まる。この角度は、本発明の実施形態によるプリズム状構造の寸法と配置に特に重要である。これは、光が臨界角度で、またはそれを超えて流体サンプル表面に衝突するとき、表皮(skimming)(消失する)波が発生するからである。この表皮波はサンプルと光学セルの間の界面に近接してサンプルと反応し、次いでセルを出る。
【0038】
発見された、以下に説明するプリズム状構造は、プローブ光を臨界角度と等しいか(さらに好ましくは)臨界角度よりも大きな角度で界面に入射させるために、サンプル/サンプル収容器の界面に入るようにプローブ光を制御する寸法と配置に設定される。一実施形態において、プリズム状構造は、プローブ光スペクトルビームがサンプル/収容器の界面にビームスペクトルの中間波長の光で測定された臨界角度の2度以内に入るように制御する。他の実施形態において、光ビームは臨界角度の0〜2、0〜5、0〜15、0〜30、0〜45、5〜10、5〜15、5〜30、15〜45度、または臨界角度よりも0〜45度大きな角度で入るように制御される。他の実施形態において、プリズム状透明構造は、反射損失を最小にするため、プローブ光スペクトルビームが固体媒体に対してより垂直な角度で固体媒体に入るように導く寸法と配置にされる。
【0039】
サンプルの中へのプローブ光スペクトルビームの浸透は短く、典型的に入射光の波長程度(式1)である。これは測定中にサンプルの通路長または容積を制御し測定する必要性をなくす。この特徴は、より便利で安価な複数サンプルアレイの使用を可能にし、より低い精度で探査ビームおよび検出器と光学的に連絡させることができる。吸収の大きな厚さ1mm以上のサンプルをこの構成で測定することができる。
【数1】

【0040】
それらの光学セルは個々の結晶に作製することができ、赤外測定には例えばシリコン、ゲルマニウム、セレン化亜鉛、AMTIR、KRS-5などの赤外線透過性の材料から作ることが好ましい。
【0041】
減衰した全内部反射の使用は、他者によって展開され、装置を作製するために有用な様々な構成要素が入手可能である。しかし、一般にそれらの装置は単一サンプルの使用に厳密に制限されてきた。多くの生物学的サンプルの高いスループット分析のためには、次に論じるように、プリズム状構造は本明細書で詳細にする他の特徴と組み合わせられる。
【0042】
高いサンプルスループットのためのプリズム設計
発明者達はいくつかのプリズム設計、デバイス、および多数のサンプルを並列に全内部反射アッセイする能力を大きく向上させるその使用方法を発見した。一般に、注意深く寸法を定めた光デバイスのプリズム特性を選択して、プローブ光(反射測定のためにサンプル界面に接触する光)はサンプルの界面に適切な角度で入るように制御される。本発明の実施形態は、プローブ光が同時に複数のサンプル・ウェル界面に異なる位置で入るデバイスを提供する。さらに、デバイスは、各サンプルの中へ入るほぼ同じ入射光角度(すなわち、10度以内、好ましくは5度以内、さらに好ましくは2度以内、好ましくは標準偏差の1度以内)を維持する。入射角度はアレイ全体にわたって臨界角度よりも大きいことが好ましい。
【0043】
減衰した全内部反射測定用の3種類の有利なサンプルホルダーが発見された。第1の種類は、すべてのサンプルに対して大きな共通のプリズム状デバイスとして働く大きな光学デバイスの光接触によって、複数サンプルに実質上等しい光学処理を維持する。大きな光学デバイスは光を導いて各サンプルに同時に出入りさせる。好ましい実施形態において、大きな光デバイスの外部表面は、図4に見えるように、臨界角度と等しいかそれを超える入射角度で光をサンプル・ウェルの中へ導くような寸法にされる。
【0044】
図4は減衰した全反射サンプルホルダー410の作製されたアレイの使用を示す。アレイ410は、流体、特に水性液体、または固体サンプルを保持することの可能なサンプル・ウェルからなる。光学界面プリズム状デバイス430はアレイ410の底部に接触し、外部からの赤外線ビーム440を内部反射に適した条件下でサンプルとの界面に導くことが可能である。図4に示した構成において、赤外線ビーム440は透明なプリズム状デバイス430の表面に入射し、ホルダー410の中へ入射する。赤外線は、点線で描いたように、サンプル・ウェル420および他のサンプル・ウェルと相互作用し、次いでサンプルホルダー410から反射して出る。
【0045】
好ましい実施形態において、大きなプリズム状デバイス430は装置光学系に固定された部分であり、アレイ410は分離可能であり、サンプルの加工および機械から操縦して取り出すことが可能である。一実施形態において、アレイ410は赤外線透過性の材料を含み、再使用される。可視光を使用する他の実施形態において、アレイ410は安価なプラスチックなどの可視光に透明な材料を含み、廃棄可能である。好ましいサンプルアレイデバイスは、特に96個のウェルまたは96個のウェルの複数、384個、1536個、3072個のウェルなどの微小滴定プレートである。アレイの好ましいサイズは長さが約108ミリメートル、幅が約75ミリメートルである。一実施形態において、サンプルアレイは少なくとも96個のウェルを有する通常の微小滴定プレートに使用されるロボットによって処理される。
【0046】
発見された構造および本明細書で説明する特徴に従って、様々な形状と寸法を使用することができる。例えば、図5は、サンプルとサンプルに接触している510の透明材料の間の表面で光ビームが臨界角度を満足するかまたは超えるように、プローブ光ビーム(光ビーム530を参照)を曲げてアレイに入射させる、湾曲した表面を有する大きなプリズム状半球520と接触するサンプルアレイ510を示している。
【0047】
図4および5で例示したように、これらの図で420と520で示した透明なプリズム材料は、おのおのサンプルホルダーに使用する材料と同じにすることができる。これらの図に示したプリズムまたは半球形状は、特に有利であるが、他の形状を用いることもできる。図4および5の実施形態において、透明なプリズム材料はサンプルホルダーの平坦な底部に接触し、典型的に平行な光ビームを導いて、再現性良く異なるサンプル表面へ入射させる。
【0048】
反射/透過効率は光と光学媒体の間の入射角度に強く依存する。垂直な入射は最大の透過と最小の反射をもたらす。したがって、図4および5に示したものなどの光学構造を加えることによって、光は光学的に高密度の材料に垂直に近い入射で入ることが可能になり、反射損失が減少しサンプルへの光スループットが増加する。透過効率は、光学構造に広帯域の反射防止コーティングを加えることによってさらに向上させることができる。
【0049】
プリズム状または半球状の光学系(図中構造430および520)は装置に残ることができ、サンプルホルダーを取り外して交換することが可能である。サンプルホルダーの平坦な底部とプリズム状または半球状の光学系の間の界面は完全ではない、すなわち、不均一さのために僅かな空気の空隙があり得ることを意味する。この空隙はさらに反射損失のある位置を表す。これを克服するには、指数整合性流体を使用して空隙が充填される。流体の屈折率は2種の材料の屈折率の間にある数値を有し、さらに好ましくは2種の固体相屈折率の間の中間(平均値の20%以内)であることが最も有利である。
【0050】
第2の種類の幾何形状構成は、複数の位置に光ビームを導いて、サンプルホルダーから反射して出る前に各サンプルと相互作用させる、各サンプル表面に隣接する分離したプリズム部を使用する。この第2の種類によるプリズム状サンプルアレイは図6に図示されている。アレイ610はウェル620および壁630を有する。壁630は不透明であることが有利である。最も左端のサンプルの下部の光学部640は、光ビーム650が入り、出る前に下部サンプル表面660で2度反射することが可能である。
【0051】
典型的に、サンプル・ウェルの下部表面はサンプルとの減衰した全内部反射を確立し、隣接する光学部(サンプルに接触する表面と連続しても、分離してもよい)はプリズム状である。この場合、下部表面は理想的には高いアスペクト比を有する、すなわち、長い長さと短い厚さを有するプリズムである。アスペクト比は1.5、2、3、4、5、7、8、または10さえ超えることが好ましい。プリズムは、上述の理由で、光が垂直に近い入射角度で入ることを可能にする。光は光ファイバーと同じように、プリズムの上部および下部表面の間に捕捉される。
【0052】
幾何形状構成の第3の種類において、多重内部反射要素が光学表面からサンプル・ウェルの中へ突出し、プリズム状光学表面が光学表面に形成される。多重内部反射要素の代表的なアレイが図7に示されている。図7の左側のサンプル・ウェル700に見られるように、光ビーム710は下部光学表面のプリズム状光学表面720へ入射し、多重内部反射要素730の中を伝播して登り、放射は、下部光学表面上のプリズム表面からビーム740として出る前にサンプルと複数の位置で相互作用する。
【0053】
3種類の幾何形状構成の組合せを作ることができ、当業者には様々な寸法が認識されよう。
【0054】
内部反射を有する複数のサンプルの保持具幾何形状
このように今まで説明した多くの実施形態は、光学系に露出させた複数のサンプルとの複数の光相互作用を通常の光学系内で取り扱うために使用される光学系を用いる。個々の球内および個々の光伝導性ファイバー内の内部反射に基づく新しいサンプリング様式を展開するさらに他の設計が発見された。一実施形態において、各球および/または各ファイバーは個々のサンプルを表す。球の大きな集合は懸濁体中で同時に使用することができ、ファイバーの集合を大規模のサンプリングに使用することができる。
【0055】
図13で近接アッセイを例示したように、内部反射は球の中で行うことができる。この図は、周囲の溶液よりも大きな屈折率を有する、赤外線透過性の媒体から作られた球を示す。この組合せは、従来の近接アッセイ(シンチレーション近接アッセイSPAなど)の特質を内部反射幾何形状のスペクトル識別に結びつける。図13は、意図された近接アッセイの概要図を示す。この実施形態において、赤外線透過性の高い屈折率の媒体から作られた球1310は、溶液中のタンパク質または他のアナライトと特別に結合することのできる、抗体などの生物学的な捕捉層(示していない)で被覆される。複数の球は溶液中で混合され、望ましい検体を捕捉される。アナライトの捕捉に続いて、球は、例えば赤外線透過性の光ファイバー1320の末端もしくはその中で固定化され、または赤外線1330を透過する管もしくは構造の中で固定化され、放射は光源からパイプを下がって球の中を伝播し、そこで反射して光パイプを上って戻り、検出される。球は前述のように内部反射サンプリングを可能にする。
【0056】
球捕捉アッセイは、懸濁体中の粒子の拡散を改善することによって、大きな固体表面上に固定化された結合相手よりも、多くの場合結合反応のためのより自然な環境およびより好ましい結合速度を提供する。さらに、ビーズは前述のように内部反射サンプリングを可能にする。さらに、捕捉技術と結びついて、小さなサイズは、類似のまたは異なる生物学的捕捉表面で被覆することのできる複数の球の使用を可能にする。この制御された多様性は特定のアナライトの識別および/または特定の球との相互作用を可能にする。
【0057】
また、溶液から球を固定化するのに使用される捕捉技術によって球の間の区別をするために、球のサイズを制御することができる。固定化した球は、一実施形態の最も自然な条件で、その元の結合溶液中のアッセイを行うことができる。他の実施形態において、球は洗浄され、次いで捕捉される。さらに他の実施形態において、球はファイバーまたは管のアレイから作られたフィルター上に固定化される。管(図13に示した管1320)、ファイバー、または他の構造などの整合性光パイプに対する球のサイズ(図13の球1310)によって、特定の球の種類を対応する光パイプで捕捉することが可能になる。これは、それぞれ異なるコーティングを含む、異なるサイズの球で使用するのに特に有利である。これらのパイプの他の末端は、超スペクトル像で同時に像形成することのできる共通の収集点まで束ねることができる。一実施形態において、ファイバーが用いられ、内部反射測定用の特定サイズの球を収容するために各末端をカップに入れる。
【0058】
一実施形態において、光パイプの断面寸法は、光パイプが導波器のように働くことを可能にする。導波器の寸法は、光パイプを降下して伝播することのできる赤外波長の範囲を制御する。言い換えれば、導波器の遮断波長よりも長い波長を有する赤外線は、光パイプの中を伝播することができない。したがって、異なる光パイプを使用して、光パイプの寸法によって画定される、異なる赤外スペクトル領域をサンプリングすることができる。球のサイズは捕捉の目的のために光パイプと整合されるので、異なるサイズの球が異なるそれぞれの赤外スペクトル領域でのサンプリングに関与することができる。他の実施形態において、異なる光学的バンドパス特性の材料を含む光パイプが使用される。当業者であれば、どのようにして光パイプおよび/または管および/または他の構造の材料と寸法を変化させて、最適な波長の透過の特定の組合せを達成できるかを容易に認識することができよう。
【0059】
内部反射はファイバーで行うことができる。ファイバーは結合反応に関与する1個または複数の分子で被覆することができ、球について述べたものと同様に使用することができる。赤外線透過性のファイバーは多くの様々な技術によって被覆することができる。各ファイバーの寸法を制御して内部反射を高めることができる。さらに、ファイバーはファイバー束の末端での超スペクトル像を使用して複数のサンプルを同時に測定するために束ねることができる。同じサイズの考え、材料の考えおよびファイバーで得ることのできる導波器の性質はこの幾何形状に適用される。
【0060】
図14は、ファイバー1430が抗体1420で被覆された被覆ファイバーの実施形態を示す。光ビーム1410は多重内部反射を行い、超スペクトル像形成によって分析される。ファイバーは複数のアッセイデバイスの中へ束ねることができる。さらに、1個以上の複数ファイバーアッセイデバイスを逐次的にまたは同時に光学系および超スペクトル像形成で使用することができる。図15は、複数のファイバー光学サンプリングデバイス1520が複数のサンプル1510からスペクトル情報を同時に収集する代表的例を示す。赤外光学系1530は、超スペクトル検出装置1540によって同時に測定するために、光をファイバーの中および外へ通す。
【0061】
さらに有利な特徴
放射源のスペクトル濾波
意図している用途の大部分は、5〜16.5ミクロン(1ミクロン=10-6メートル)、または2000〜600cm-1の範囲の波長のスペクトル情報を蓄積する必要がある。赤外源は可視から遠赤外の広い波長範囲にわたる放射を放出し、本発明の実施形態は様々な波長を使用する。望ましいスペクトル窓の外側の赤外波長はサンプルの加熱によって測定に悪い影響を与えることがある。すなわち、制御されない加熱は背景(基準線信号)の移動を招き、測定の雑音対信号比を低下させる。したがって、放射源からの赤外線を対象帯域幅に制限するために、スペクトルフィルターを含み、放射源から発生するが測定には必要のない他の放射を遮断することが好ましい。
【0062】
それらの遮断は、小さな面積のサンプルのために光の強度を増加する(高密度出力の用途)とき特に価値がある。赤外フィルターは、赤外線透過性の基板上の特殊な材料(金属および半導体)薄膜の堆積によって作製することができる。薄膜層は、光学界面の透過と反射係数を変化させて、フィルターの通過を許される放射の帯域を制限する。一般的な概論は、http://www.ocli.com/pdf_files/products/gen_info_infrared_filters.pdfまたはO.S.Heavens Optical Properties of Thin Solid Films、1991、Dover Press、New Yorkの多くの光学情報源に見出すことができる。
【0063】
性能向上のための偏光フィルター
本発明の有利な実施形態は、偏光フィルターを用いて全内部反射スペクトルから追加の情報を得るために、偏光特性を開発する。一実施形態において、線形偏光フィルターが検出器前のビーム通路に置かれ、それによって、検出器に入る赤外線を或る好ましい偏光に制限する。典型的に、背景に対して配向された薄膜サンプルの信号を高めるために、偏光は反射面、または反射面に垂直に偏光された放射のいずれかが可能なように調整される。任意選択的に光弾性体変調器を使用して、左と右の円偏光状態の間の偏光を一般に10Hz〜10MHz、好ましくは100Hz〜1MHz、さらに好ましくは1KHz〜100KHzの周波数に急速に修正することができる。検出器は左対右の円偏光された赤外線の吸収差を測定する。この微分偏光はキラリティなどの立体化学情報の検出を提供する。一実施形態において、微分偏光は鏡像間の区別を可能にする。
【0064】
変調
フーリエ変換と組み合わせた変調は、信号と分析の時間を向上させるのに特に強力である。光源からの光は干渉計で変調することが好ましい。好ましい干渉計はMichelson干渉計である。多数の他の干渉計設計が存在し、適している。1つまたは複数の実施形態において、原理的に、光路差を生成する任意の干渉計が役に立つであろう。
【0065】
カメラ速度およびスペクトル解像度
多くの研究所ベースの中間赤外像形成分光計は、放射がサンプルと相互作用する前に、Michelson干渉計を使用して赤外線を変調する。しばしばMichelson干渉計は市販のFT-IR分光計にそのシステムの「光源」として使用される。Michelson干渉計は、2個の分割光源の構成要素間の光路差を発生させるために可動ミラーシステムを使用する。2ビーム干渉計のスペクトル解像度は干渉計中の全体的な光路差および検出器が読み取られる光路差の数(測定されるミラーの位置の数)に基づく。各光路差からのデータは数学的(例えばフーリエ)変換アルゴリズムおよびコンピュータを援用して吸収スペクトルに変換される。
【0066】
2ビームシステムは非常に広い帯域幅(25,000〜13cm-1)、および非常に高い解像度(〜0.005cm-1)が可能であり、本発明の実施形態に有用であるので特別に説明する。1個または両方のミラーを動かす必要性は、測定される事象の動力学がミラーの速度と同じ時間の程度であるとき、時間に敏感な分析を複雑にする。言い換えれば、データはミラー通路の1つの長さを掃引するのに必要な時間で平均化され、速度と解像度は逆の相関がある。或る2ビーム干渉計はステップ-走査形態を用い、干渉計は段階的に固定光路差に進み、その通路長の周辺で少量の走査(小さなミラーの動き)を行う。
【0067】
アレイからデータを得るのに必要な時間が増加するので、像形成システムへの影響は大きい。アレイ速度は一般にサイズと共に大きくなり、より小さなアレイはより速く、単一ピクセル検出器(FT-IR分光計に見られる)は一般にMHzの周波数で動作する。典型的な64×64ピクセルのHg-Cd-Teアレイは420Hzの最大フレーム速度を有し、特別のアレイは〜1KHzで動作が可能である。像は各光路差(ミラー位置)で取得しなければならず、スペクトル解像度は測定される異なるミラー位置の数に依存するので、より高い解像度は像形成の意味でより長い時間にも解釈される。
【0068】
速度の問題をさらに複雑にするのは、多くの化学的および生物学的反応が多数のスペクトルを必要とし、データ処理の前に雑音低減のために平均化しなければならないことである。典型的なタンパク質実験は、例えば、平滑化、誘導、曲線当てはめ等などの1種または複数のアルゴリズムで数学的に処理するために、100個またはそれを超えるスペクトルの組合せを必要とするであろう。本発明の実施形態はアレイ中の各サンプルから迅速な複数のスペクトルを提供し、システムの性能を向上させ、良好なサンプルスループットを提供する。
【0069】
内部標準での修正
水性溶液中の赤外測定を行うとき、雑音に最も大きく寄与するものの1つは、背景(基準線)の移動である。この問題は背景(基準線)測定を行い、次いでその測定値を後続のスペクトルの参照に使用することによって対処される。多くの場合、貯蔵された基準線スペクトルは後続のスペクトルから差し引かれる。典型的に基準線は温度の変化、または湿度への変化、二酸化炭素含有量等などの大気条件の変化によって変化するであろう。これらの変化は不十分な減算、または背景効果の過剰補償として現れる。移動の問題は、希釈された分子濃度の測定で深刻であり、基準線の雑音が溶液中の分子からの望ましい信号を凌駕する。
【0070】
問題を緩和する1つの方法は、各実験前または背景が変化する度に、新しい基準線を取ることである。長い反応において、背景は頻繁に変化し得るので多くの新しい基準線測定が必要である。この増加した雑音の問題を訂正するには2つの方法が望ましい。
【0071】
修正の一方法は光に不安定な基を使用して化学反応を誘起し、誘起時間によって背景測定の時期を合わせることである。例えば、新しい基準線は各誘起事象前に測定することができる。各誘起事象後に得られるスペクトルを加えることは、基準線の変化のより少ないスペクトルを生成する。
【0072】
他の方法は、1個または複数の参照サンプルをサンプルアレイ内の1個または複数のサンプル・ウェルの中に置き、ウェルから得られるスペクトルをアレイ中の他のサンプルの基準線として使用することである。例えば、96個のウェルプレート中の1個のウェルに他のすべてのウェルと類似しているが試験分子を含まない溶液を充填する。このウェルから収集したスペクトルを基準線(参照)スペクトルとして使用する。プレート中の他の95個のサンプルから収集したスペクトルを参照ウェルからの基準線スペクトルと参照する。この方法は、サンプルアレイ中の1個または複数のウェルを背景変化の参照として用いるために、並列データ取得の集合数を用いる。この補正手順は、分または時間などの長い反応時間にわたって複数のスペクトルを取得するのに特に価値がある。
【0073】
増加した速度または感度のビニング(binning)
赤外焦平面アレイの速度の遅さは、この種の装置におけるデータ取得速度の主な制約要因である。スペクトル像形成の並列の性質はスペクトル平均化の速度を切り下げ、焦平面アレイの速度の遅さを補償する。一般に、赤外検出器の視野の中の各サンプルからの放射は、検出器上の1個以上のピクセルに衝撃を与える。所与のサンプルについてのすべてのそれらのピクセルからの強度データを組み合わせることによって、スペクトル平均化について上述したのと同じように、複数の単一検出器からの測定値を平均化することが可能になる。例えば、100個のスペクトルの平均化からの典型的なデータの組は、16ピクセルをビニングすることによって6走査で得ることができる。
【0074】
ビニングは、サンプルアレイのサイズが焦平面アレイのサイズよりも小さいサンプルのアレイで特に効果的である。64×64要素の焦平面アレイを用いる典型的な384サンプルアレイ(16×24サンプル)は、約5×2=10ピクセルを各サンプル点に置くであろう。10ピクセルのビニングは必要な走査を10分の一に低減する。従来のFT-IR分光計は、4cm-1の解像度(1.58cm/sのミラー速度)で100スペクトルを取得するのに76秒必要であろう。検出器を焦平面アレイに交換し、同じ10ピクセルをビニングすると、この取得時間は7.6秒に短縮するであろう。
【0075】
一般に、真の像で動作する真の像形成システムはこのようなビニングを展開することができない。本明細書に述べる並列アレイシステムとは異なり、これらのシステムは空間解像度を高めるためにアレイ中の各ピクセルを必要とする。したがって、ここで述べるビニング方法はそれに関連する技術で必要なことに反する。すなわち、スペクトル平均化の取得速度の向上は並列データ取得に特定され、高い空間解像度を必要とされる場合には使用できない。好ましい実施形態は、データを収集するときにビニングを組み込み、ビニングしない機械より少なくとも10倍速い。サンプルアレイが焦平面アレイよりも多くの要素を有する場合、タイリング(tiling)を用いるならば、すなわち、複数の像を互いに繋ぎ合わせることによって、やはりビニングを用いることができる。
【0076】
検出器
これらの目的のための並列赤外分光計は、5〜17ミクロンの波長範囲の中間赤外線に敏感な検出器を持たなければならない。これらの検出器は、Hg-Cd-Te、DTGS、サーモパイルなどの材料、量子ウェル赤外光検出器(QWIP)、ならびに多くの冷却および非冷却ボロメーターを含む。像形成または並列分光計において、これらの検出器は直線(1×128、1×256等)または矩形アレイ(64×64、128×128、4×256等)のいずれかで見られる。検出器および読み取り電子機器は赤外カメラの構成要素を形成する。カメラは、標準的なパーソナルコンピュータ上の数学的変換アルゴリズムを用いて入って来る放射をスペクトル像に変換する。
【0077】
サンプルホルダーおよび赤外用の溶媒
多数の化学的および生物学的反応が、水性または中間赤外線を良く吸収する有機溶媒中で起きる。例えば、中間赤外スペクトル領域の強い吸収は、一般に水性溶液の中で光路長を5〜10ミクロンに制限する。従来の一度に一回の分光計はこれらの環境でスペクトルを得るために典型的に3つの手法を用いる。それらは、短い通路長すなわち通過セル、全内部反射、および溶媒蒸発を含む。各手法は赤外線透過性のサンプルホルダー、または少なくとも透明なホルダーの領域の必要性によって制約を受ける。本明細書に述べる多くの実施形態はこの問題を(従来技術に比べて)サンプルサイズの縮小化、および多数のサンプルの同時アッセイによって対処する。
【0078】
赤外光源および集束
本発明の実施形態は、光と対象分子に見出される化学結合電子との相互作用によって得られる診断信号を提供する。診断信号は検出された光信号に相当する電子衝撃から生成する。したがって、良好な雑音(不規則な電子的背景信号)対信号比は、測定時間が短くなると処理された光の量(および光から得られる電気信号)がより小さくなるので、迅速な測定値を得るために重要である。赤外光は、望ましいスペクトル処理が一般に4000〜400cm-1(2.5〜25ミクロン)1で画定される光スペクトルの中間赤外領域で分子の基本振動共鳴を伴う、多くの実施形態に用いられる。生物学的化合物の大部分は1800〜600cm-1(5.5〜16.7ミクロン)に制限される。
【0079】
赤外領域のプローブ光を発生するためには、「グローバー(glowbar)」(SiCなどの熱い材料)などの黒体放射源、サンプルまたは場の固有の熱放射、または太陽赤外線から典型的に使用される。好ましい光源は、単一グローバー(シリコンカーバイド棒)、Nernst発光体(希土類酸化物の円筒)、または白熱線を含む。光源は、典型的に出力〜50〜100W、およびビーム直径〜4cm、またはビーム出力密度〜4W/cm2を有することができる。この出力密度は光学系を小さなサンプルに焦点を合わせることによって高めることができ、アパーチャーを光源とサンプルの間に置くときに低下させることができる。この出力密度は、ビーム通路中の単一サンプル、またはビームが特定の点に集束することのできる小さな面積のサンプルを含む従来の赤外実験には許容される。数百個の小さなサンプルが同時に測定されるときに存在する大面積のサンプリング環境において、有効面積を拡大するためにビームを広げることは、サンプルの各位置での出力密度を低下させる。したがって、より大きなサンプルの拡大した面積に有利な出力密度を維持するために、赤外光源の出力を増加することが望ましい。
【0080】
一実施形態において、スペクトルは生物学および化学工業で通常使用される「標準的な」微小滴定プレート形態から同時に集められる。これらのプレートは96個、384個、768個、1536個、3072個、4608個、6144個または他の数のサンプル・ウェルのアレイを保持することができる。滴定プレート形態のサンプルホルダーの関連する面積は、約80cm2であり、各サンプル位置で同じ4W/cm2を生成するのに〜350Wの光源強度が必要である。この出力は任意のアパーチャーを収容するため、またはビーム通路の光学損失のために、任意選択的に増加することができる。光源強度を増加させるために、より大きなグローバーまたはNernst光源を有利に使用することができ、それによって、光源のより大きな表面積がより多くの放射をもたらす。替わりに、縦に並べた複数のより低強度の光源を使用することができる。後者の実施形態において、パラボラ状ミラーを用いていくつかの光源からの光を集め、サンプルの方向に視準することができる。後者のいくつかの実施形態を図8に示す。図8aおよび8bに示したより低強度の3個の光源810は、それぞれ集団でまたは並列に配置することができ、これらの図で光線830で示したように、パラボラ反射器820は放射された光を平行に導くことが可能である。
【0081】
装置の性能を高めるための生物化学的および細胞的集束
本明細書に述べる減衰した全内部反射法は、プローブ光からサンプルへの表皮(消失する場)波の近似に依存する。サンプルの容積を、探査部分(表面波で可能)と探査されない部分(波へ測定可能に影響を及ぼすには本質的にあまりにも遠い)に機能的に分離する、生物化学的集束および細胞的集束技術が発見された。両方の集束技術において、目標を表皮波の存在するサンプル容積の一部に物理的に濃縮することによって、測定を向上させるためのより高い雑音対信号が得られる。
【0082】
生物化学的集束において、分子は溶液から引き出され、より小さな容積に濃縮され、表面波へ露出される。濃縮ステップは、例えば、生物化学的相互作用層によって、または例えば以下に述べる等電点電気泳動などの活性工程によって行うことができる。前者の代表的実施形態を図9に示す。図9は、光学表面910を示し、その上に表面結合配位子920が固定化される。表面結合配位子920は次にスペーサー配位子930に付着し、次いで捕捉配位子940に付着する。典型的に液体媒体全体に存在するアナライト950は、捕捉配位子940に結合する。アナライト950の捕捉層への結合は、より多くのアナライトを表面波の届く範囲内に集め、したがって信号へのアナライトの影響を高める。
【0083】
図9に示したサンプルアレイの各要素は、望ましい生物化学的相互作用に微調整された類似のまたは異なる相互作用層を有する。それらの表面結合層は多くの生物センサー設計に使用され、診断用途に非常に一般的である。結合層は典型的に層を表面に結合する配位子、様々なスペーサーすなわち結合層、および抗体などの捕捉配位子またはタンパク質を含む。表面の種類に応じて、表面結合用の異なる配位子を選択することができる。シリコンに結合する配位子は、例えばポリエチレンに結合する配位子とは一般に異なる。例えば、Sluka等に発行された米国特許第5,851,840号、Hammenに発行された米国特許第5,240,602号は、配位子全体について、また、分子をシリコン表面に結合する方法を記載している。捕捉配位子の使用はよく知られており、例えば、Blackburn等に発行された米国特許第6,264,825号、Ebersole等に発行された第5,658,732号、Jaeger等に発行された第5,498,551号その他多数に記載されている。
【0084】
細胞的集束において、細胞の表面または内部で優先的に起きる分子相互作用は、細胞のサイズに整合するまたはそれを超えるように選択した、サンプルの表面波領域内に位置するプローブ光波長を用いて探査される。この実施形態において、細胞は表皮波が作られるサンプル表面に接着する。表皮波を発生するプローブ光の平均波長は、少なくとも5ミクロンであることが好ましく、さらに好ましくは少なくとも7.5ミクロンであり、或る実施形態において10ミクロンを超え、15ミクロンさえも超える。細胞の厚さ(サンプル表面上に平坦に横たえたとき)はプローブ光の平均波長の2倍を超えないことが好ましく、プローブ光の平均波長を超えないことがさらに好ましい。表面波は固体の透明媒体から遠く展延するのに十分長く、培養媒体の大部分を覆うには十分長くないので、細胞内および細部表面の分子構造の優先的検出が可能である。
【0085】
他の実施形態において、サンプル表面近くに発生する分子の事象と遠くに起きるものとの間を区別するために2種類のプローブ光が使用される。1つの光は他よりも長い波長を有し、より浸透的な表面波を発生する。例えば、分子と表面に付着している細胞膜表面のデータを得るのに、波長600ナノメートルの探査可視光を使用することができる。同時にまたは異なる時間に、分子と典型的に光学表面から10倍遠い細胞膜表面の情報を得るために、6000ナノメートルのプローブ光を使用することができる。
【0086】
等電点電気泳動からの分子情報
本発明の実施形態に有用な非常に望ましい生物化学的集束技術は、電気泳動、および特に等電点電気泳動である。本明細書に述べる材料と方法は、等電点電気泳動からの、ならびに他の生物化学的分離技術からの等電点によって分離された分子の、分子的な詳細を監視するのに使用することができる。実施形態は、特別に分離された分子およびそれらの結合相手との相互作用の識別を可能にする情報を提供する。これらの実施形態は、分子の次元の違う複雑さを実時間で明らかにすることによって、従来の電気泳動分離技術よりも大きな利点を提供する。例えば、その天然の環境における複雑なタンパク質混合物を電気泳動によって、さらに好ましくは等電点電気泳動によって分離し、他の物質で標識を加えることなく分析することができる。
【0087】
等電点電気泳動の実時間の超スペクトル分析装置は、電源と、流体サンプルホルダーの内容物に接触する少なくとも2個の電極と、広帯域赤外線の光源と、広帯域赤外線の変調器と、流体サンプル保持チャンバーから出る赤外線を検出するための赤外線検出器と、赤外線検出器からのデータを分析するコンピュータとを含むことが有利である。等電点電気泳動の好ましい実施形態において、使用中に、1種または複数の両性電解質を含む水性溶液は電極によって確立された電圧勾配に露出され、pH勾配を形成する。例えば、サンプルは保持チャンバーに入る溶液中に混合することができ、あるいは、別の時間に1個または複数の孔を経由して加えることができる。分子間相互作用の分光法的研究に望ましいであろうように、2種またはそれ以上のサンプルを同時にまたは異なる時間に保持チャンバーに加えることができる。
【0088】
例えば、サンプルホルダーは、当技術分野に知られている直線状の一次元毛細管、または二次元毛細管、または容器とすることができる。感度を高めるのに有用な他の実施形態において、ホルダーは、分光探査に露出された小さな容積と、探査される容積から離れた大きな容積を有する部分を好ましくはその中間に有する。望ましい実施形態において、ホルダーは、小さな探査される容積と両側の大きな容積を備える水時計に似ており、探査の前に等電点電気泳動によって分子を濃縮させる。サンプル容積は、全サンプル容積に対して0.1、0.03、0.01、0.003、0.001、0.0003、0.0001、0.00005またはより小さいことが有利であり、等電点電気泳動は望ましい分子種の全量の少なくとも10%、25%、50%、60%、または90%以上をサンプリング容積に濃縮することが好ましい。したがって、分析手順自体の間に、少なくとも5、10、25、50、100、250、1000、2000倍またはそれを超えて濃縮することのできる分子からスペクトルを得ることができる。他の実施形態において、サンプルホルダーは、ネジ、膜、スクリーン、またはその内部に固定化される他の形の物質などの部分を含み、或る種類の分子種を固定化し、三次元での分光法分析を容易にする。
【0089】
装置は焦平面アレイ検出器を利用して平面に配置された材料、および複数のサンプルを同時に検出することができる。複数のサンプルは、例えば本明細書に述べる赤外線透過性の通常のホルダー内に配置することができる。ゲルなどの支持体の必要性を省くことによって、本発明のこの実施形態は分光法分析の前および後の両方で流体の自動取り扱いが可能になる。例えば、微小滴定プレートをサンプリングし、本明細書で述べる光学的特徴を有する微小滴定プレート自体を直接使用することができる。等電点電気泳動濃縮および分析の後、分析された材料は選択的に(すなわちより精製された形で)または非選択的に(サンプル全体)質量分光法分析などのさらなる分析へ取り出すことができる。(a)分子濃縮、(b)分子相互作用、(c)等電点電気泳動分離を同時に構成し、ならびに高いスループットの複数サンプル分析ができるので、それらの実施形態によって多くのデータを取得できることは容易に認識されよう。
【0090】
望ましい実施形態において、混合物中のタンパク質をその等電点によって分離するのに高解像度の等電点電気泳動が用いられる。導光光学系での超スペクトル赤外像形成は、集束させたタンパク質の同時的な全列監視を可能にする。一般に、溶液中のタンパク質は、赤外線透過性の材料から作られた狭い毛細管の中へ導入され、電場が印加される。電場に誘起されたタンパク質がタンパク質の自然の等電点で鋭い帯の中へ動くことは、超スペクトルカメラで監視される。光は透過モードまたは内部反射サンプリングモードを用いて処理され使用することができる。
【0091】
本発明のこの実施形態のいかなる理論にも拘束されることは望まないが、印加された電場の影響下における分子の超スペクトル像形成は、ゲル(またはその他)支持体および着色の必要性と欠点を克服する。すなわち、等電点電気泳動に用いられるゲルなどの支持体は、電場が消されたときに拡散を防ぐために必要であり、タンパク質の帯を視認化するための着色が可能になる。タンパク質の帯は、典型的に着色の前に停止される電場の存在なしに着色され分析される。電場がないと、タンパク質の帯はタンパク質が拡散するに伴って不鮮明になる。ゲルの存在はタンパク質の拡散を制限する。タンパク質を着色する必要性を省くことによって、ゲルはもはや必要ではない。望ましい実施形態において、より鋭い帯、ゲルからの自由度、および他の標識、および実時間の検出が可能である。
【0092】
実施形態のさらに他の利点は、赤外振動スペクトルが、タンパク質と他の分子との相互作用などのタンパク質についての豊富な情報を提供することである。例えば、結合した、または結合していないタンパク質は異なる等電点を有し、したがって泳動中に明瞭な帯を示す。標識のない全列検出は実時間で結合事象の監視を可能にし、これは結合動力学についての正確な情報を提供することができる。多くの場合結合は一時的であり、電場を連続的に印加することによって、結合したタンパク質が非結合タンパク質へ戻る量の変化を監視することが可能である。したがって、結合と分離の動力学をインシトゥーに測定することができる。さらに、新しい製品を製造するために、1種または複数の基質と酵素との結合を実時間で監視することができる。充填しない1種または複数の基質を列の媒体に存在させることができ、他の化学反応によって導入することができ、または物理的に列空間に加えることができる。列空間中の1つの位置に集束させた酵素または他の触媒は、見ることのできるまたは間接的に分光法的に推論(タンパク質の配座移動によるものなど)することのできる、短命または長命の製品を生成することができる。一実施形態において、基質自体は、可視光および/または紫外光であり、配座の移動を起し、または分子または列空間内に集束した大きな分子錯体中の物質を放出する。
【0093】
本明細書で述べるように、実施形態は、より高い解像度の研究のために、機能的なパラメーターに結びついた物理的分離パラメーターによって、分子および分子錯体の識別を可能にする。新しい分子のパラメーターの検出は、特に赤外領域の超スペクトル像形成を実時間天然タンパク質の相互作用と組み合わせることによって可能である。例として、変化したアミノ酸を有するが一般に電荷の影響を受けない、突然変異したタンパク質は、サイズまたは電荷に依存する分離技術によっては解決されないであろう。しかし、タンパク質中の配座の変化に影響を与える任意のそれらの突然変異はこの技術によって解決することができる。この新しい構造的に静止した突然変異は、新しく成長しているプロテオミクス(proteomics)の分野に非常に重要であり、本発明の実施形態は多数のタンパク質変化が作られるプロテオミクスの大規模な分析を意図している。超スペクトル像形成で配座変化を直接アッセイすることによって、複数のサンプルの迅速な実時間分析が可能になる。
【0094】
その天然環境におけるタンパク質の配座移動および他の現象を検出できることによって、高解像度の分離と、他の診断試験では容易に見出せなかった迅速な反応アッセイとを結びつけることが可能になる。さらに、超スペクトル像形成を用いて、複数のタンパク質を同じ帯または点内に存在するものさえ、先進のスペクトル加工手段を使用して解きほぐすことができる。このようにして、スペクトルフィンガープリントは「2D」分離の第二の次元データを形成する。特別の利点は、振動スペクトルを捕捉する間、タンパク質をその等電点に保持することができ、したがって、その天然環境におけるタンパク質のスペクトルが確保されることである。したがって、実施形態は、豊富なスペクトル情報へ検出が広がることによって、屈折率、紫外線吸収、蛍光、および化学蛍光などの帯域を検出する単純な検出方法に属する従来技術よりも改善される。一実施形態において、等電点電気泳動などの一次元的な手順は、類似の等電点でのデータなど、データの第二次元(赤外スペクトルフィンガープリント)を提供することによって、重なり合うタンパク質を分離する二次元のゲル電気泳動と同じになる。
【0095】
図16は超スペクトル像形成が、等電点分離チャンバー1620に導入されたサンプル1610からの溶質の位置、動き、結合分子の詳細を明らかにする実施形態を示している。帯1625はチャンバー1620中に等電点電気泳動によって形成される。赤外光学系および検出器1630は同時に帯1625の像を形成し信号パターン1640を発生する。信号パターンは、グラフ1650に描いたように、そのときに起きるスペクトル変化を測定するのに使用される。超スペクトル測定を実時間で実施する能力は、高密度の粘性の高いまたはゲル状の母材に依存しない、新しい種類の等電点電気泳動を可能にする。例えば、複数のサンプルをアッセイするために、中心電極の周囲に輪環を備える半球レンズ構造で複雑な二次元パターンを作ることができる。システムは溶質の逆の流れ、結合相手、または常に更新することのできる基質と組み合わせることができ、または集束したサンプルを定期的なまたは他の変動する濃度に露出して、酵素基質を含む他の基質の構造的なスペクトルへの効果を測定する。この実施形態は、試験化合物が酵素分子または巨大分子錯体との反応中に消費される場合に薬剤を発見するのに特に有用である。
【0096】
半導体加工技術による製造
本発明の一実施形態において、多くのサンプルを同時アッセイするための小さなアレイは半導体基板から調製される。それらの全内部反射アレイは半導体産業に見られる標準的なリソグラフィー加工で作製することができる。例えば、シリコンまたはゲルマニウムとフォトレジストの異方性湿式エッチングを用いてシリコン基板上にプリズム状構成を形成することができよう。
【0097】
適切な製造技術は、例えば、Sethi等に発行された米国特許第4,891,120号、および他のさらに最近の米国特許第6,331,439号、第6,306,272号、第6,245,227号、第6,210,986号、第6,180,536号、第6,176,962号、第6,158,712号、第6,093,330号、第6,033,628号、第5,980,704号、第5,872,010号、第5,858,804号、第5,585,069号、第5,194,133号に記載されている。また、1997年8月19日Kaltenbach等に発行された米国特許第5,658,413号に記載されているように、レーザアブレーション技術をこれらのデバイスを作製するのに用いることができる。良い全般的な概要は、Silicon Micromachining(Cambridge Studies in Semiconductor Physics and Microelectronic Engineering,7)、M.Elwenspoek、H.V.Hansen、Cambridge University Press(Cambridge)、1999に見出すことができる。
【0098】
この実施形態の例示として、図10に示した64個のウェル型サンプルアレイは以下の手順で作られる。標準的なフォトリソグラフィーを用いて、配向されたシリコン基板上に図11に示したエッチングマスク用のパターンを移す。次いで、真空蒸着を用いてエッチングマスクを作製する。エッチングマスクは窒化物の薄膜であるが、酸化物などの他の材料を使用することができる。窒化物は深い溝を形成するために使用される長時間のエッチング用に好ましい。この例において、図11に示したシリコンパターンは54.7度の角度でエッチングされ、プリズム状溝と窪みを形成する。シリコンはKOHでエッチングされるが、他の異方性エッチング剤も同様に使用することができる。この点で、下部のプリズム状表面が形成される。次にサンプル・ウェルをプラスチックの中に形成し、次いでエッチングされたシリコン構成要素の頂部面にウェーハ結合する。図10の上部図に示した完成されたサンプルホルダーは、より狭い底部1020を備える64個のウェル開口1010を有する。図12の側面図は、シリコンの下部部分1210とプラスチックサンプル・ウェル1220の上部部分を示す。ガラスまたは金属など多くの材料をサンプル・ウェルに使用することができる。任意選択的に、多重内部反射要素などの縦構造をエッチング(反応性イオンエッチング)または異方性湿式エッチングのいずれかで形成することができる。有利な実施形態において、少なくとも96個のウェル、384個のウェル、1024個のウェル、5,000個のウェル、10,000個のウェル、25,000個のウェル、50,000個のウェル、100,000個のウェル、250,000個のウェル、500,000個のウェル、および1,000,000個を超えるウェルのより大きなアレイを形成するのに、フォトリソグラフィー技術が用いられる。
【0099】
内部要素は全内部反射測定に非常に有用であり、様々な方法によって作製することができる。一実施形態は、プラスチックなどのポリマーまたはタンパク質の1個または複数のポリマーの列を各サンプル・ウェルの内部表面に結合させることによって、その中に全内部反射要素を備えるサンプルの大規模アレイを作製する製造方法である。この実施形態は、可視光を用いる測定において特に有用である。多くのポリマーは(例えば)400〜800ナノメートルを良く吸収せず、この実施形態に有用である。全内部反射測定は蛍光プローブを用いて実施することができ、この実施形態に特に有用である。ポリマー化した列の光学特性は修正することができ、装置は近赤外、近紫外、遠赤外、または超紫外でも使用することができる。
【0100】
内部反射要素を作製するのに使用されるポリマーは、広さ0.5〜100ミクロンの棒の形であることが好ましく、さらに好ましくは1〜50ミクロンの広さ、さらに好ましくは2〜25ミクロンの広さである。棒の長さは、幅(平均測定値)の少なくとも2倍であることが好ましく、3倍がさらに好ましく、5倍および10倍を超えることがさらに好ましい。棒は少なくとも使用される光に部分的に透明であり、天然製品、合成製品とすることができ、または分析の前または間にポリマー化することもできる。多くのプラスチックが知られているが、タンパク質などの天然材料を使用することができる。熱安定性のあるポリペプチドを使用することが好ましい。入手可能な材料は、エラスチン-、コラーゲン-、ケラチン-、絹型のタンパク質などの天然タンパク質を含み、スルフォロブスソルファタリクス(Sulfolobus solfataricus)およびサームスアクアチクス(Thermus aquaticus)などの好熱性細菌から誘導されたタンパク質(プロテアーゼ(proteaeses)、DNAポリメラーゼ(polymeraeses)、リパーゼ(lipases)などの代謝酵素は特に有用である)が好ましく、米国特許出願第609,716号および第114,618号に記載された合成タンパク質ポリマー、特に絹型タンパク質、SLPブロック(SLPFまたはFCB-SLPIII(フィブロネクチン(fibronectin))、SLPL(ラミニン(laminin))、SLPC(シスチン(cystine))、SLP3、SLP4、SELP(エラスチン(elastin))で設計されたタンパク質、およびSLPブロックで設計されたぺプチドおよびDonofrio等に発行された米国特許第5,723,588号に記載された他の材料がさらに好ましい。ポリペプチドは天然、化学合成、または突然変異および融合製品などの修飾された形を含んで、また、熱的に誘起された分解または変性に対する修飾、例えばポリエチレングリコールとの結合(pegylation)を含んで、組み換えタンパク質とすることができる。タンパク質はサンプル・ウェルの中でポリマー化することができ、または、共役または非共役結合技術によってこれらの表面に付着させることができる。
【0101】
特に好ましい実施形態において、サンプルアレイ中のサンプルは、光学的におよび/または物理的に半導体基盤に結合され、その基盤から少なくとも10ミクロンの長さ離れて展延する寸法を有する、内部プリズム状構造を備えて製造される。表面から離れて展延する長さは、幅の少なくとも1.5倍であることが好ましく、少なくとも2倍、3倍、5倍、および少なくとも10倍でさえあることがさらに好ましい。
【0102】
超広帯域システム:可視光および赤外光を含む
本発明のさらに他の実施形態において、サンプル上の減衰した全内部反射分光法は赤外および可視光の両方で行われる。赤外および可視光を含む単一広帯域ビームは干渉計で変調して使用することができる。代りに、赤外光は本明細書に記載したようにして使用することができ、別の可視光源ビームを追加でサンプルホルダー上に集束することができる。後者の場合、通常のプリズム状構造は赤外および可視光ビームの両方に使用することができる。2個のビームは異なる角度でプリズム状構造へ導き、波長による光の異なる曲がりに適応させることができる。
【0103】
一実施形態において、赤外測定に使用されるものなどの回転ミラー干渉計は、より短い波長の光に必要なミラー回転速度を高めるために修正される。光変調技術の将来の進歩は、適切な変調を発生させるより便利な代わりの方法を提供するであろうが、本発明の実施形態に意図されている。
【0104】
本明細書に述べる赤外技術と組み合わせて、蛍光、リン光、時分割(time resolved)蛍光、および/または化学蛍光を用いることができる。さらに分子および代謝情報を明らかにするために、薬剤発見方法はそれらの追加の情報を有利に利用することができる。追加の情報は、サンプル中の試験化合物の効果が非常に複雑で、複数の化学的相互作用を試験する必要のある生物化学および細胞研究に特に役に立つ。例えば、細胞はルシフェリンおよびルシフェラーゼを現すように遺伝子的に加工され、生物化学的経路から光を発生し、新しい先導的な薬剤を試験する複数のサンプル・ウェルのプローブとして使用することができる。試験化合物からの効果は可視光信号として検出することができる。赤外反射および可視光信号の両方を同時に監視することによって、試験化合物の細胞表面への化学的結合を監視することができ、生物化学的加工の時間および効果を監視することができる。それらの一実施形態において、プリズムデバイスは赤外反射測定のサンプルアレイの下に用いることができ、可視光像形成検出器はサンプルアレイの上に置いてアレイから得られる光の位置と強度を監視することができる。検出された可視光信号および反射分光信号は処理され比較されて、各サンプルに属する情報を発生する。
【0105】
時期に合わせた添加
他の実施形態において、反応を制御する試験物質または化学物質は光活性化からサンプル・ウェルの中で入手可能になる。例えば、化合物または化合物の組は、光に感受性のある不安定な化学結合に作用する紫外光によって放出される。例えば、有利なことに、サンプル収容器の壁上に試験化合物が存在し、光活性可能な事象によって放出される。この実施形態は、各個々のサンプル・ウェルが非常に小さい(典型的に容積が10マイクロリットル未満、2、1、0.1、または0.01マイクロリットル未満)、小さなサイズの非常に大きなサンプル微小アッセイに特に有用である。この実施形態における光活性化化学反応の使用は、所定の時間で非常に小さな容積の試験物質を投与しなければならない問題を軽減する。この実施形態に適した光感受性化学物質は既知である。1998年8月25日および1998年2月3日にそれぞれMagda等に発行された米国特許第5,798,491号および第5,714,328号、およびKeanaとCaiのJ.Org.Chem.、55:3640-3647(1990)における概論は代表例を提供する。実際には、分子の組合せライブラリーが形成され、ライブラリーの部分が他の分子の光に不安定な結合によって結合する。試験分子は紫外放射によって遊離される。
【0106】
一実施形態は、以下のような時期に合わせた添加方法のために、本明細書に述べるサンプルホルダーを使用する。サンプル・ウェルの表面は、少なくとも1個の下部表面と1個または複数の上部表面の2種類の表面コーティングに分割される。下部表面は全内部反射に用いられるプローブ光が到達する範囲である。下方のプリズム状構造に接触している下部表面はプローブ光の少なくとも1波長の距離だけ上方へ展延することが好ましい。上部表面はプローブ光の消失性波によって顕著な光相互作用を行うには遠すぎる。有利な実施形態における上部表面は、所定の時間にサンプル溶液に加えられることの望ましい試験物質または他の活性物質をそれに付着して有する。すなわち、試験期間の初めには、試験物質または他の活性剤(化合物または粒子)は壁の上部領域に固定化され、実質上プローブ光(サンプルホルダーの底に接触する)の到達範囲外である。試験が開始されると、固定化された物質が放出され、それらの効果が測定される。固定化された物質は、例えば、壁への結合の光触媒開裂、超音波処理、空気の変化、電子放電、または磁場によって放出することができる。放出された物質はサンプル流体に溶解または懸濁し、細胞およびそこに見出される他の分子などの成分と相互作用することができる。時間放出された物質の効果は、可視光、紫外光、または赤外光を用いて全内部反射分光法によって検出することができる。
【0107】
定義
実施形態および付属の請求項の理解を助けるため、以下の定義を提供する。
【0108】
用語「分子相互作用」は、少なくとも2個の分子間の結合および触媒相互作用を含んで、任意の相互作用を意味する。結合相互作用は、例えば、抗体結合部位と抗原間の結合、膜タンパク質とタンパク質に結合するエフェクターの間など、タンパク質と配位子間の結合、細胞膜受容体に結合して作用することのできる化学物質の添加で生じる細胞内変化によって間接的に測定される相互作用、細胞膜受容体に結合するエフェクターへの結合(それによってエフェクターが受容体へ結合するのを防ぐ)、および他の分子または細胞処理に検出可能ないくつかの変化をもたらす分子の細胞内侵入を含む。
【0109】
用語「ウェット・サンプル」は、流体中にあるサンプルを意味する。流体は水、緩衝塩水、血液、間質性流体、汗、尿等などの水性サンプルとすることができるが、キシレン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ヘキサン、トリグリセリド、アルコール等など非水性とすることもできる。いくつかの結合反応および触媒反応は、すべての有機(非水性)相を用いて研究され、それらの化学反応は水性化学反応と同様に利用することができる。また、水和表面上の結合分子が揮発性分子に結合することのできる気相反応も含むことができる。固定化受容体の濃度または固定化受容体への結合、または全内部反射を行う材料の表面上の他の結合物質は、ウェルの表面が一般に水和しているので、用語「ウェット・サンプル」に含まれる。
【0110】
用語「広帯域赤外線」は、スペクトルを測定するのに適した複数の波長を意味する。一般に、少なくとも3種類、さらに好ましくは5種類、さらに好ましくは多数の識別可能な波長が放射に含まれる。帯域幅は少なくとも0.5ミクロン、さらに好ましくは少なくとも1ミクロン、さらに好ましくは少なくとも2、または少なくとも4ミクロンでさえある。
【0111】
用語「光学界面」は、1個または複数のサンプル・ウェルまたは位置に入射するプローブ光などの光、または1個または複数のサンプル・ウェルまたは位置から出る修正された光を導く、所定の固体構造を有することを意味する。典型的に光学界面は、大表面のプリズム部分、またはサンプルホルダーまたは光源などの他の光学構造に隣接または近接して配置された別の光学構造などの赤外線透過表面である。光学界面は、例えばそこを通過する光に影響を与えて、光学界面または他の光デバイス中の多重内部反射を増加させる。光学界面は、その屈折率、寸法、および/または入射光または出射光に関する表面角度などの1種または複数の特性によって光に影響を与える。
【0112】
用語「サンプル・ウェル」は、サンプルを保持する赤外線透過性の材料上に画定可能な表面、または容積を意味する。サンプル・ウェルは、底部表面だけが赤外線透過性の96個のウェルの微小滴定プレートとすることができる。サンプル・ウェルは半導体チップ表面からエッチングされたアレイの中の位置に対応する三次元領域とすることができる。サンプル・ウェルは固定化された物質を有する表面とすることができる。壁のない平坦な表面は、表面の固定化物質から上方へ展延する化学結合によってやはりサンプル・ウェルのアレイを形成することができる。例えば、アレイ中のタンパク質、細胞または他の吸湿性材料などの結合相手を固定化することによって、平坦な疎水性表面を調製することができる。各結合相手は、例えば、より大きな疎水性(撥水性)場の上の吸湿性点として固定化される。表面に水性溶液を接触させると、点に付着するが点の間の空間には付着しない個々の水滴が得られる。各点はウェルを形成する。
【0113】
第1部品と第2部品の間の用語「光学的接触」は、1つの部品を離れる(その部品の反射または通過の後に)光が続いて他の部品の表面に入る、または反射するように、2つの部品が直接接触して配置され、またはスペーサーによって分離されることを意味する。或る場合には、光学的接触は2つの部品表面の間の物理的接触によって促進される。(屈折)率整合性流体、ゲル、または柔らかい材料またはペーストを部品の間に挿入して、それらの間のあらゆる空隙を充填し、反射損失を制限することができる。指数整合物質は使用される放射に透明であり、光学構成要素に整合する屈折率を有する。
【0114】
用語「プリズム状」は、光学的測定に使用される光を、光が目標表面の垂直に近い角度で表面に入るように、目標の透明な媒体の表面に対して曲げることを意味する。光に透明なプリズムは、プリズムを目標の近くまたは接触させ、適切な角度および配置を選択することによってプリズムのように使用することができる。
【0115】
透明な光学構造に関して、用語「プリズムで導く」は、光学構造が、そこを通る光の通路を1個または複数の制御された表面の角度によって変更することを意味する。当業者であれば良く認識するであろうように、プリズムは広帯域の光を異なる周波数に分割すること、広帯域の光をより対域幅に結合することの両方のために用いられ、それを通る光の方向を変更する。
【0116】
用語「プリズム状形態」は、それによって光が1個または複数の光学構造の2つの表面をプリズムで光を導くように通過する光学形態を意味する。
【0117】
用語「内部反射要素」は、エッチングされた半導体チップの微小構造、サンプル・ウェルの中に突出する光パイプまたはチャンネル、またはサンプルとの接触が起きる界面で全内部反射を行う、サンプルに接触している表面などの透明な光学構造を意味する。
【0118】
無論、当業者であれば、本明細書を読み取った後に本明細書に述べた本発明の特徴の他の組合せを容易に決定することができ、これらは請求される発明の精神および範囲に含まれる。上記の参照は特にその全体を参照により援用され、当業者に知られた技術を示している。2002年12月22日に出願された優先権資料米国特許出願第60/428,241号、および2003年2月14日に出願された米国特許出願第10/366,464号は特に参照により援用されている。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】一実施形態による減衰した全反射の反射測定に使用される光学系の概要を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態による透過測定のための像形成分光計の概要図である。
【図3】本発明の実施形態による透過測定のための代表的なサンプルホルダーを示す図である。
【図4】一実施形態による減衰した全反射のためのプリズム状デバイスを示す図である。
【図5】一実施形態による減衰した全反射のための半球状表面を示す図である。
【図6】一実施形態による減衰した全反射サンプリングアッセイを示す図である。
【図7】一実施形態による多重内部反射サンプリングアッセイを示す図である。
【図8】図8aは、一実施形態による並列プローブ光の量を増加させるための複数の赤外光源とミラーの組合せを示す図である。図8bは、一実施形態による並列プローブ光の量を増加させるための複数の赤外光源とミラーの組合せを示す図である。
【図9】一実施形態による平行な減衰した全反射のための特定生物(biospecific)捕捉層を示す図である。
【図10】シリコンの湿式エッチングおよびサンプル・ウェルを加えることによって調製された64個のウェルのマイクロアレイを示す図である。
【図11】64個のウェルのマイクロアレイを作製するフォトリソグラフィーに使用されるエッチングマスクを示す図である。
【図12】シリコンの湿式エッチングによって調製された64個のウェルのマイクロアレイの断面を示す図である。
【図13】球状近接アッセイ(spherical proximity assay)の一実施形態を示す図である。
【図14】一実施形態による代表的なファイバー光学サンプリングデバイスを示す図である。
【図15】通常の超スペクトル検出装置と一緒に使用される複数のファイバー光学サンプリングデバイスを示す図である。
【図16】等電点電気泳動分離と超スペクトル像同時形成の使用を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)分子相互作用を探査するための広帯域赤外線源と、
(b)(a)からの広帯域赤外線の変調器と、
(c)各サンプル・ウェルとの光学界面を有する複数のウェル型サンプルホルダーであって、前記光学界面が、変調された広帯域赤外線をサンプルホルダーの赤外線透過表面とサンプルとの間の少なくとも1つの界面表面に導き、内部反射およびそれに続く変更された光の射出を可能にする、サンプルホルダーと、
(d)変更された光を検出するための赤外線検出器と、
(e)赤外線検出器からのデータを解析するコンピュータとを含む、並列振動分光法によって複数のウェット・サンプル中の分子相互作用を同時にアッセイする装置。
【請求項2】
前記複数のサンプルのホルターにおける各サンプル位置が、プリズム状の赤外線透過光導波器の光学構造と光学的な接触を保ち、プローブ光が複数のサンプルにほぼ垂直に入射し、相互作用し、次いで出ることを可能にする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記赤外光導波器の光学構造がプリズム状または半球状である請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記サンプルホルダー中の各サンプルが、サンプルホルダーのプリズム状部分と光学的な連絡を保ち、プリズム状部分の壁が探査光を導いてサンプルの中に入射させ、プリズム部分の上部および下部面の間の光を捕捉させる請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記サンプルホルダーのプリズム状部分が、水平軸平均幅の少なくとも2倍の縦軸平均高さを有する請求項4に記載の装置。
【請求項6】
少なくとも1つの多重内部反射要素が、変調された放射線が内部反射要素を射出する前に、サンプルと複数の位置で相互作用するように各サンプル・ウェルに突出する請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記サンプルホルダーが半導体基板を含む請求項6に記載の装置。
【請求項8】
(a)半導体基板と、
(b)少なくとも1個のプリズム状形態が各ウェルと光学的に結合する、流体を受容するための少なくとも96個のウェルのアレイと、
(c)プリズム状形態に光学的に結合し、ウェル内の内部反射を提供する、各ウェルの中に展延する内部反射要素とを含む、並列振動分光法によって複数のウェット・サンプル中の分子相互作用を同時にアッセイするのに適したサンプルホルダー。
【請求項9】
前記プリズム状形態が少なくとも20ミクロン幅と100ミクロン高さの寸法を有する請求項8に記載のサンプルホルダー。
【請求項10】
前記プリズム状形態がサンプル容積の内部にある請求項8に記載のサンプルホルダー。
【請求項11】
並列振動分光法によって複数のウェット・サンプル中の分子相互作用を同時にアッセイするためのサンプルホルダーを製造する方法であって、前記ホルダーが、半導体基板と、基板中のウェルのアレイと、各ウェルの中へ展延する少なくとも1個の内部反射要素とを含み、
前記方法が、少なくとも96個のウェルの二次元アレイを形成するために半導体基板の繰り返し異方性湿式エッチングを行うことを含み、各プリズム状形態が、5〜100ミクロンの平均幅と10〜10000ミクロンの平均高さを有する方法。
【請求項12】
(a)少なくとも96個のサンプル・ウェルのアレイを保持する基板と、
(b)各サンプル・ウェルのためのプリズム状構造であって、前記プリズム状構造が、5〜10ミクロンの波長を有する広帯域の赤外光に対して透明であり、その高さが幅の少なくとも2倍であり、光が全内部反射の臨界角度を超える入射角度で光学的に高密度の材料に入射することが可能な材料を含むプリズム状構造とを含む、並列振動分光法によって複数のウェット・サンプル中の分子相互作用を同時にアッセイするためのサンプルホルダー。
【請求項13】
各ウェルがその頂部に開口を有し、ウェルのプリズム状構造が下部にあってウェルの底部に接触している請求項12に記載のサンプルホルダー。
【請求項14】
各ウェルが内部プリズム状構造を有する請求項13に記載のサンプルホルダー。
【請求項15】
前記内部プリズム状構造がウェルの底部に付着する請求項14に記載のサンプルホルダー。
【請求項16】
(a)5ナノメートルよりも長い波長を有する広帯域の赤外線源と、
(b)一定温度で代謝細胞を保持し維持する、少なくとも16個のウェルを有する温度制御された、ウェット細胞サンプルのホルダーであって、各ウェルが、細胞と接触している赤外線透過性の少なくとも1個の表面を有するサンプルホルダーと、
(c)前記表面に接触している細胞の層に浸透する広帯域赤外線を、全内部反射の臨界角度を超える入射角度で赤外線透過表面に導くための1個または複数のプリズム状構造と、
(c)反射された光を集める赤外像形成検出器とを含む、細胞活性への化学化合物の効果を検出し、または望ましい遺伝子操作をインビトロで検出するための器具。
【請求項17】
前記ウェット細胞サンプルホルダーが、少なくとも96個のウェルを有し、微小滴定プレートと互換性があるような寸法にされている請求項16に記載の器具。
【請求項18】
反射された光を赤外像形成検出器によって収集する前またはその間に、1種または複数の薬剤を分配するためのコンピュータ制御薬剤添加装置をさらに含む請求項16に記載の器具。
【請求項19】
前記赤外線が10ナノメートルよりも長い波長を有する請求項16に記載の器具。
【請求項20】
各ウェルがウェルの容積に展延する内部プリズム状構造を有する請求項16に記載の器具。
【請求項21】
前記内部プリズム状構造が、ウェルの底部に付着している請求項20に記載の器具。
【請求項22】
前記赤外像形成検出器が各サンプルから同時にスペクトルを集め、集めた信号をフーリエ変換解析によって処理する請求項16に記載の器具。
【請求項23】
(a)アレイ表面上の生体分子の組をアレイ表面の個々の固定化位置で異なる種類の生体分子で固定化または合成するステップであって、前記アレイ表面が、5ミクロンよりも長い波長の赤外線に対して透明であり、各固定化位置が、溶液に少なくとも1ミクロン浸透する5ミクロンよりも長い波長の赤外光を、全内部反射の臨界角度を超える入射角度でアレイ表面中に導くプリズム状構造と光学的に接触しているステップと、
(b)アレイ表面を5ナノメートルよりも長い波長の広帯域赤外線で照射するステップと、
(c)各固定化された位置から反射された広帯域光スペクトルを集めるステップと、
(d)固定化された位置の複数の吸収値をフーリエ変換を用いて計算するステップとを含む、溶液中の一組の生体分子が関与する反応のスペクトル品質を調査するための高スループットの方法。
【請求項24】
ステップ(a)が、少なくとも1個の特定生物捕捉ステップをさらに含み、アレイ表面上の少なくとも1個の表面結合配位子が、溶液中の1個または複数の分子と結合し、ステップ(b)の前に表面の2ミクロン以内に結合した生体分子の濃度を増加させる請求項23に記載の高スループット方法。
【請求項25】
前記監視された反応が、アレイ表面上の1個または複数の表面結合配位子および溶液中の1個または複数の分子間の結合反応であり、各固定化された位置から反射された広帯域光スペクトルが結合反応中に集められる請求項23に記載の高スループット方法。
【請求項26】
各固定化された位置が、内部プリズム状構造を有し、内部プリズム状構造がステップ(b)で照射される請求項23に記載の高スループット方法。
【請求項27】
少なくとも1個の較正サンプルからの少なくとも1個の広帯域スペクトルを用いて、他のサンプルから得られた信号を基準線ドリフトの修正を行うために調整する請求項23に記載の高スループット方法。
【請求項28】
少なくとも3個のサンプルユニットのアレイを保持するための基板を含む、並列振動分光法によって複数のウェット・サンプル中の分子相互作用を同時にアッセイするためのサンプルホルダーであって、各ユニットが、
(a)赤外線透明性の少なくとも1個の表面を有する毛細管供給サンプル・ウェルと、
(b)少なくとも1個のサンプル注入口と、
(c)少なくとも1個のサンプル取り出し口と、各口をサンプル・ウェルに接続する毛細管とを含む、ホルダー。
【請求項29】
前記各サンプル・ウェルの少なくとも1個の透明な領域が、ハロゲン化アルカリ塩、CaF2、BaF2、ZnSe、Ge、Si、薄いポリエチレン、AMTIR、KRS-5からなる群から選択される赤外線透過性の1種または複数の材料を含む請求項28に記載のサンプルホルダー。
【請求項30】
サンプルアレイ全体がリソグラフィーおよび標準的な半導体加工技術を用いて微細加工される請求項29に記載のサンプルホルダー。
【請求項31】
プラスチック、ガラス、ワックス、ポリヤー(polyer)、金属またはエラストマーからなる群から選択される赤外線に対して不透明な物質をさらに含む請求項28に記載のサンプルホルダー。
【請求項32】
少なくとも96個のサンプルユニットを含む請求項28に記載のサンプルホルダー。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)分子相互作用を探査するための広帯域赤外線源と、
(b)(a)からの広帯域赤外線の変調器と、
(c)各サンプル・ウェルとの界面を備える複数のウェル型サンプルのホルダーであって、前記光学界面が、変調された広帯域赤外線をサンプルホルダーの赤外線透過表面と各サンプル・ウェルとの間の少なくとも1つの界面表面に導き、内部反射およびそれに続く変更された光の射出を可能にする、ホルダーと、
(d)変更された光を検出するための赤外線検出器と、
(e)赤外線検出器からのデータを解析するコンピュータとを含む、並列振動分光法によって複数のウェット・サンプル中の分子相互作用を同時にアッセイする装置。
【請求項2】
前記複数のサンプルのホルターにおける各サンプル・ウェルが、共通の赤外線透過光導波器の光学構造と光学的な接触を保ち、プローブ光が複数のサンプルにほぼ垂直に入射し、相互作用し、次いで出ることを可能にする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記赤外光導波器の光学構造がプリズム状または半球状である請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記サンプルホルダー中の各サンプルが、サンプルホルダーのプリズム状部分と光学的な連絡を保ち、プリズム状部分の壁が探査光を導いてサンプルの中に入射させ、プリズム部分の上部および下部面の間の光を捕捉させる請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記サンプルホルダーのプリズム状部分が、水平軸平均幅の少なくとも2倍の縦軸平均高さを有する請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記光学界面は、変調された放射線が内部反射要素を射出する前に、サンプルと複数の位置で相互作用するように各サンプル・ウェルに突出する少なくとも1つの多重内部反射要素を備える請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記サンプルホルダーが半導体基板を含む請求項6に記載の装置。
【請求項8】
(a)半導体基板と、
(b)少なくとも1個のプリズム状形態が各ウェルと光学的に結合する、流体を受容するためのウェルのアレイと、
(c)前記ウェル内の内部反射を提供する、各ウェルと接触する内部反射要素とを含む、並列振動分光法によって複数のウェット・サンプル中の分子相互作用を同時にアッセイするのに適したサンプルホルダー。
【請求項9】
前記プリズム状形態が少なくとも20ミクロン幅と100ミクロン高さの寸法を有する請求項8に記載のサンプルホルダー。
【請求項10】
前記内部反射要素は、サンプル容積の内部に突出している請求項8に記載のサンプルホルダー。
【請求項11】
並列振動分光法によって複数のサンプル中の分子相互作用を同時にアッセイするためのサンプルホルダーを製造する方法であって、前記ホルダーが、半導体基板と、基板中のウェルのアレイと、各ウェルの中へ展延する少なくとも1個の内部反射要素とを含み、
前記方法が、ウェルの二次元アレイを形成するために半導体基板の繰り返しエッチングを行うことを含み、各内部反射要素が、5〜100ミクロンの平均幅と10〜10000ミクロンの平均高さを有する方法。
【請求項12】
(a)ウェルのアレイと、
(b)各サンプル・ウェルと接触するプリズム状構造であって、前記プリズム状構造が、5〜10ミクロンの波長を有する広帯域の赤外光に対して透明であり、その高さが幅の少なくとも2倍であり、光が全内部反射の臨界角度を超える入射角度で光学的に高密度の材料に入射することが可能な材料を含むプリズム状構造とを含む、並列振動分光法によって複数のウェット・サンプル中の分子相互作用を同時にアッセイするためのサンプルホルダー。
【請求項13】
各サンプル・ウェルがその頂部に開口を有し、前記プリズム状構造が前記サンプル・ウェル内にあり、前期サンプル・ウェル頂部の下方にあり、およびウェルの底部に接触している請求項12に記載のサンプルホルダー。
【請求項14】
各サンプル・ウェルは、サンプル・ウェル内に突出する内部プリズム状構造を有する請求項13に記載のサンプルホルダー。
【請求項15】
(a)5ナノメートルよりも長い波長を有する広帯域の赤外線源と、
(b)湿潤環境において一定温度で代謝細胞を保持し維持する、少なくとも16個のウェルを有する温度制御された、ウェット細胞サンプルホルダーであって、各ウェルが、細胞と光学的に接触している赤外線透過性の少なくとも1個の表面を有するサンプルホルダーと、
(c)前記表面に接触している細胞の層に浸透する広帯域赤外線を、全内部反射の臨界角度を超える入射角度で赤外線透過表面に導くための1個または複数のプリズム状構造を有する、各サンプル・ウェルとの光学界面と、
(c)反射された光を集める赤外像形成検出器とを含む、細胞活性への化学化合物の効果を検出し、または望ましい遺伝子操作をインビトロで検出するための器具。
【請求項16】
前記ウェット細胞サンプルホルダーが、少なくとも96個のウェルを有し、微小滴定プレートと互換性があるような寸法にされている請求項15に記載の器具。
【請求項17】
反射された光を赤外像形成検出器によって収集する前またはその間に、1種または複数の薬剤を分配するためのコンピュータ制御薬剤添加装置をさらに含む請求項16に記載の器具。
【請求項18】
前記赤外線が10ナノメートルよりも長い波長を有する請求項15に記載の器具。
【請求項19】
各ウェルがウェルの容積に突出する複数の内部反射要素を有する請求項15に記載の器具。
【請求項20】
前記複数の内部反射要素が、ウェルの底部に接触している請求項19に記載の器具。
【請求項21】
前記赤外像形成検出器が各サンプルから同時にスペクトルを集め、集めた信号をフーリエ変換解析によって処理する請求項15に記載の器具。
【請求項22】
(a)アレイ表面において異なる種類の生体分子を個別的な固定化位置とした、アレイ表面上の一組の生体分子を取得するステップであって、前記アレイ表面が、5ミクロンよりも長い波長の赤外線に対して透明であり、各固定化位置が、溶液に少なくとも1ミクロン浸透する5ミクロンよりも長い波長の赤外光を、全内部反射の臨界角度を超える入射角度でアレイ表面中に導くプリズム状構造と光学的に接触している、ステップと、
(b)アレイ表面を5ナノメートルよりも長い波長の広帯域赤外線で照射するステップと、
(c)各固定化された位置から反射された広帯域光スペクトルを集めるステップと、
(d)固定化された位置の複数の吸収値をフーリエ変換を用いて計算するステップとを含む、溶液中の生体分子を調査するための方法。
【請求項23】
ステップ(a)が、少なくとも1個の特定生物捕捉ステップをさらに含み、アレイ表面上の少なくとも1個の表面結合配位子が、溶液中の1個または複数の分子と結合し、ステップ(b)の前に表面の2ミクロン以内に結合した生体分子の濃度を増加させる請求項22に記載の高スループット方法。
【請求項24】
前記監視された反応が、アレイ表面上の1個または複数の表面結合配位子および溶液中の1個または複数の分子間の結合反応であり、各固定化された位置から反射された広帯域光スペクトルが結合反応中に集められる請求項22に記載の高スループット方法。
【請求項25】
各固定化された位置が、内部プリズム状構造を有し、内部プリズム状構造がステップ(b)で照射される請求項24に記載の高スループット方法。
【請求項26】
少なくとも1個の較正サンプルからの少なくとも1個の広帯域スペクトルを用いて、基準線ドリフトを修正するために、他のサンプルから得られた信号を調整する請求項24に記載の高スループット方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2006−507504(P2006−507504A)
【公表日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−555601(P2004−555601)
【出願日】平成15年11月21日(2003.11.21)
【国際出願番号】PCT/US2003/037387
【国際公開番号】WO2004/048929
【国際公開日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
TEFLON
【出願人】(505187563)ソルス バイオシステムズ インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】