説明

中型多孔性炭素の製造方法、中型多孔性炭素、担持触媒および燃料電池

【課題】中型多孔性炭素の製造方法、中型多孔性炭素、担持触媒および燃料電池を提供すること。
【解決手段】(a)炭素前駆体、酸及び溶媒を混合して炭素前駆体混合物を得る工程と、 (b)中型多孔性シリカに炭素前駆体混合物を含浸し、これに100〜2000Wパワーのマイクロウェーブを照射して、800〜1300℃で炭化処理を実施して中型多孔性シリカ−炭素複合体を形成する工程と、(c)中型多孔性シリカ−炭素複合体から中型多孔性シリカを除去する工程と、を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中型多孔性炭素の製造方法、中型多孔性炭素、担持触媒および燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池用電極に含まれ、電気化学反応を促進する触媒は非常に重要であるので、それら触媒の活性を向上させようとする多様な試みが行われている。触媒の活性は、触媒の反応表面積が大きくなるほど向上するので、触媒の粒径を減らして反応表面積を大きくし、電極に均一に分布させねばならない。このためには、触媒担体も広い表面積を有する必要があるので、これについての研究が活発に行われている。
【0003】
燃料電池用触媒担体には、多孔性から導出される広い表面積だけでなく、電子の流れの通路の役割を担うための電気伝導性も要求される。このような触媒担体として、活性弾、または炭素ブラックとして知られている非結晶質微細多孔性の炭素粉末が広く使用される。
【0004】
ところが、このような非結晶質微細多孔性の炭素粉末は、微細気孔の相互連結が不十分であると知られている。それで、従来の直接メタノール燃料電池で、非結晶質微細多孔性の炭素粉末を担体として使用した担持触媒は、金属粒子自体を触媒として使用した場合に比べて、反応性がはるかに低下する。
【0005】
しかし、金属粒子自体を触媒として使用する場合には、多量の触媒を使用するようになって、電極製造コストが上昇するので、直接燃料電池のコストが上昇する。したがって、触媒反応性をさらに向上させうる担持触媒の開発が切実に要求されている実情である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、炭化処理時間を画期的に短縮させつつ、面抵抗に優れた中型多孔性炭素を製造することが可能な、新規かつ改良された中型多孔性炭素の製造方法、中型多孔性炭素、担持触媒および燃料電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、(a)炭素前駆体、酸及び溶媒を混合して炭素前駆体混合物を得る工程と、(b)中型多孔性シリカに炭素前駆体混合物を含浸し、これに100〜2000Wパワーのマイクロウェーブを照射して、800〜1300℃で炭化処理を実施して中型多孔性シリカ−炭素複合体を形成する工程と、(c)中型多孔性シリカ−炭素複合体から中型多孔性シリカを除去する工程と、を含むことを特徴とする、中型多孔性炭素の製造方法が提供される。
【0008】
マイクロウェーブの照射時間は、1〜180分であるとしてもよい。
【0009】
マイクロウェーブの炭化処理は、非酸化の環境下で実施するとしてもよい。
【0010】
炭素前駆体は、炭水化物類、フルフリルアルコール、ジビニルベンゼン、フェノール−ホルムアルデヒド、レソルシノール−ホルムアルデヒド、フェナントレン、アントラセンからなる群から選択された一つ以上であるとしてもよい。
【0011】
酸は、硫酸、硝酸、リン酸及びp−トルエン硫酸からなる群から選択された一つ以上であるとしてもよい。
【0012】
溶媒は、水、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、ブタノール、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、テトラヒドロフラン、テトラブチルアセテート、n−ブチルアセテート、m−クレゾール、トルエン、エチレングリコール、γ−ブチロラクトン、ヘキサフルオロイソプロパノールからなる群から選択された一つ以上であるとしてもよい。
【0013】
炭素前駆体の含量は、炭素前駆体混合物100質量部に対して5〜15質量部であり、
酸の含量は、炭素前駆体混合物100質量部に対して10〜35質量部であり、溶媒の含量は、炭素前駆体混合物100質量部に対して55〜80質量部であるとしてもよい。
【0014】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、上記の方法によって製造された中型気孔を有していることを特徴とする、中型多孔性炭素が提供される。
【0015】
中型気孔の平均直径は2〜10nmであり、比表面積は、300〜2000m/gであり、面抵抗は、75.4kgf/cmの気圧環境下において20〜200mΩ/cmであるとしてもよい。
【0016】
CuK−α特性のX線波長1.541Åに対するブラッグ2θ角の主ピークは、少なくても0.5〜2°であるとしてもよい。
【0017】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、上記に記載の方法によって製造された中型気孔を有している中型多孔性炭素と、中型多孔性炭素に担持された金属触媒粒子と、を含むことを特徴とする、担持触媒が提供される。
【0018】
金属触媒粒子の含量は、担持触媒100質量部を基準として40〜80質量部であるとしてもよい。
【0019】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、カソード、アノード及びカソードとアノードとの間に配された電解質を含む燃料電池において、カソード及びアノードのうち少なくとも何れか一つが、上記に記載の方法によって製造された中型気孔を有している中型多孔性炭素と、中型多孔性炭素に担持された金属触媒粒子と、を含む担持触媒を含有することを特徴とする、燃料電池が提供される。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように本発明によれば、炭化処理時間を画期的に短縮させつつ、面抵抗に優れた中型多孔性炭素を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0022】
本発明は、中型多孔性炭素を合成する過程で、炭素前駆体をシリカ鋳型内でマイクロウェーブを利用して炭化して、炭化処理時間を画期的に短縮させる。
【0023】
本発明で使用される「マイクロウェーブ」とは、通常、1cm〜1mの波長に相応する30GHz〜300MHzの振動数を有する電子スペクトルの領域を称し、また、極超短波とも称する。レーダ波長を干渉しないために、家庭用または産業用マイクロウェーブ加熱器を、12.2cm(2.45GHz)または33.3cm(918MHz)で作動させる必要がある。したがって、本発明の望ましい具現例でマイクロウェーブは、特にこのような波長を称する。本発明の方法に通常的なマイクロウェーブ装備を利用できる。
【0024】
本発明の一実施例では、最大2kWの出力及び2.45gHzの周波数で作動されるマイクロウェーブ装備を使用する。
【0025】
図1は、本発明の一実施例に係る中型多孔性炭素の形成過程を模式的に示す図面である。
【0026】
図1に示すように、まず、構造化された中型多孔性シリカ、あるいはOMS(ordered mesoporous silica)鋳型物質に炭素前駆体を導入し、これをマイクロウェーブ炭化処理を実施して、OMS−炭素複合体を形成する。ここで構造化されたOMSは、気孔が規則的に配列されており、2°以下のXRDピークが表される特性のOMSを言う。
【0027】
次いで、OMS−炭素複合体から構造化されたOMSを除去して構造化された中型多孔性炭素(Ordered
Mesoporous Carbon:OMC)を得ることができる。
【0028】
以下、図2を参照して、本実施形態に係る中型多孔性炭素の製造方法をさらに詳細に説明する。
【0029】
まず、炭素前駆体、酸及び溶媒を混合して炭素前駆体混合物を得る。
【0030】
炭素前駆体としては、スクロースを含む炭水化物類、フルフリルアルコール、ジビニルベンゼン、フェノール−ホルムアルデヒド、レソルシノール−ホルムアルデヒド、芳香族化合物、例えば、フェナントレン、アントラセンなどを使用できる。そして、酸としては、有機酸及び無機酸、何れも可能である。例えば、硫酸、硝酸、燐酸、パラトルエン酸(p−トルエン酸)などがある。
【0031】
溶媒としては、炭素前駆体を均一に分散させうるものであれば、何れも使用可能であり、その具体的な例として、水、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、ブタノール、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、テトラヒドロフラン、テトラブチルアセテート、n−ブチルアセテート、m−クレゾール、トルエン、エチレングリコール、γ−ブチロラクトン、ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)などがあり、これらは、単独または組合わせで使用されうる。
【0032】
炭素前駆体混合物で炭素前駆体の含量は、炭素前駆体混合物100質量部に対して5〜15質量部であることが望ましい。もし、炭素前駆体の含量が5質量部未満であれば、中型多孔性炭素がよく形成されず、炭素前駆体の含量が15質量部を超えれば、溶媒によく溶解されず、製造し難く、粒子間の凝集が増加して、その表面積が小さくなる。
【0033】
前駆体混合物で酸の含量は、炭素前駆体混合物100質量部に対して10〜35質量部であることが望ましい。もし、炭素前駆体混合物で酸の含量が10質量部未満であれば、中型多孔性炭素体の生成を促進させる効果が微々であり、逆に、酸の含量が35質量部を超えれば、OMSの外部でも炭素物質の生成を促進させて、構造度が低下するという短所がある。
【0034】
また、炭素前駆体混合物で溶媒の含量は、炭素前駆体混合物100質量部に対して55〜80質量部であることが望ましい。もし、前駆体混合物で溶媒の含量が55質量部未満であれば、前駆体を十分に溶解できず、溶媒の含量が80質量部を超であれば、粒子間の凝集が上昇するという問題がある。
【0035】
特に、炭素前駆体と酸との質量比が1:2.5〜1:3.5であることが望ましく、1:2.7〜1:3.3であることがさらに望ましい。炭素前駆体と酸との質量比が、範囲以内であれば、炭素前駆体と酸とが調和して作用して、本実施形態の中型多孔性炭素を円滑に製造できる。
【0036】
そして、このように製造した前駆体混合物をOMSに含浸させ、これを乾燥、熱処理及びマイクロウェーブを用いて炭化処理して、OMS−炭素複合体を形成する。
【0037】
OMSとしては、一次元気孔が微細孔などで相互連結された構造を有する分子体物質であって、特別に制限されるものではない。ただし、三次元連結構造を有する分子体物質として、立方構造を有するMCM−48、他の立方構造を有するSBA−1、六方構造を有するSBA−15、気孔が不規則に三次元に連結された構造を有するKIT−1、MSU−1などが望ましく、その他にも、一次元気孔が微細孔で相互連結された構造を有する多様な種類の中型多孔性分子体物質を含む多様な種類の分子体物質が望ましい。
【0038】
前駆体混合物に含浸させるOMSの含量は、炭素前駆体混合物100質量部に対して5〜15質量部であるとしてもよい。OMSの含量が5質量部未満である場合には、相対的に前駆体混合物の量が多過ぎて、含浸後、粒子間の凝集現象が上昇して、表面積が小さくなり、OMSの含量が15質量部を超える場合には、相対的な前駆体の含量が少なく、シリカ気孔の内部に炭素構造を十分に形成させ得ないという問題点がある。
【0039】
含浸温度は、特別に制限されるものではないが、常温で実施するとしてもよい。
【0040】
含浸以後に、必要に応じて含浸された混合物を乾燥させうる。このとき、乾燥温度は、特に限定されるものではないが、常温でもよく、迅速な乾燥のために、減圧雰囲気で乾燥させうる。
【0041】
前述した熱処理は、50〜250℃の温度で行うことができる。もし、熱処理温度が50℃より低ければ、中型多孔性炭素の組織が良好に形成されず、もし、熱処理温度が250℃より高ければ、生成される中型多孔性炭素の均一度が低下しうる。または、熱処理は、第一次熱処理及び第2次熱処理の2工程でなってもよい。例えば、第一次熱処理は、約50〜約150℃の温度で行われ、第2次熱処理は、約150〜約250℃の温度で行われ得る。このような熱処理を通じて中型多孔性炭素の組織が形成され、また液体溶媒などが完全に除去される。
【0042】
熱処理された結果物は、直ぐに炭化させてもよいが、以上の過程を2回〜10回繰り返すとしてもよい。すなわち、で熱処理した結果物に、で製造した前駆体混合物を含浸させる。その後、と同じ方法で熱処理を行う。以上の繰り返し過程をさらに繰り返してもよく、次の炭化工程に移っても良い。繰り返さずに直ぐに炭化させる場合、OMS気孔の内部に炭素構造を完全に形成させ得ないという短所があり、10回を超えて繰り返せば、繰り返しによる効果が飽和されるため不要である。
【0043】
以上のように熱処理した結果物を炭化させて、炭素に構造化させる。すなわち、鋳型の役割を行うOMS内に含浸された炭素前駆体は、炭化過程により黒鉛化されつつ構造化される。炭化は、熱処理の結果物をマイクロウェーブを照射して800〜1300℃の温度で加熱することによって行われる。
【0044】
本実施形態で、マイクロウェーブのパワーは、100〜2000Wであり、特に、400〜1200Wとすることができ、500〜800Wとしてもよい。そして、マイクロウェーブの照射時間は、1〜180分であり、特に5〜60分とすることもできる。もし、マイクロウェーブのパワーが100W未満であれば、炭化が十分に行われず、炭素の骨格が正常に形成されず、2000Wを超えれば、シリカ鋳型の骨格が破壊されて、シリカ鋳型の除去後に炭素の構造的な均一性が崩れうる。
【0045】
マイクロウェーブの照射時間は、1分未満であれば、炭化が良好に行われないので、炭素の骨格が良好に形成されず、180分を超えれば、シリカ鋳型の骨格が破壊されて、最終的な炭素の構造的な均一性が低下しかねない。
【0046】
もし、炭化温度が800℃より低い場合には、完全な炭化が行われないので、構造化が不完全であり、炭化温度が1300℃を超える場合には、炭素の熱的分解が行われるか、または鋳型の役割を行うシリカの構造が変形され得る。
【0047】
炭化は、非酸化の雰囲気あるいは環境下で行われることが望ましい。非酸化の環境は、真空環境、窒素環境及び不活性ガス環境のから選択されうる。
【0048】
その後、前述した過程によって得たOMS−炭素複合体からOMSを選択的に溶解させうる溶媒を利用して、OMSを除去する。
【0049】
OMSを選択的に溶解させうる溶媒は、例えば、フッ酸(HF)水溶液または水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液などを含む。ここで、フッ酸水溶液の濃度は、5〜47質量%であり、水酸化ナトリウム水溶液の濃度は、5〜30質量%である。
【0050】
OMSは、アルカリ溶融または炭酸塩融解などによって可溶性の珪酸塩となり、HFと反応して浸食されやすいSiFを形成すると知られている。OMSを除去することによって、中型多孔性炭素を分離できる。
【0051】
本実施形態によって得た中型多孔性炭素は、気孔が規則的に配列されている特性を有している構造化された中型多孔性炭素タイプでありうる。
【0052】
本実施形態で使用された中型多孔性炭素は、微細気孔のみを有している従来の非晶質型微細多孔性の炭素粉末とは異なり、微細孔だけでなく、中間細孔を適正割合で保有する。ここで、IUPACの定義によると、微細孔とは、一般的に約2nm以下の直径を有する細孔を意味し、中間細孔とは、2〜50nmの直径を有する細孔を意味する。
【0053】
中型多孔性炭素で中型気孔の平均直径が2〜10nmであり、比表面積が200〜2000m/gであり、面抵抗が20〜200mΩ/cmである。本実施形態の中型多孔性炭素の面抵抗は、4ポイントプローブ方式によって75.4±3.0kgf/cmの圧力条件で測定したものであって、既存の中型多孔性炭素に比べて面抵抗が非常に減少したものである。
【0054】
本実施形態の中型多孔性複合体で、中型気孔の平均直径が2nm未満であれば、供給される燃料物質の拡散が円滑でなく、触媒の活性に制限があり、中型気孔の平均直径が10nmを超えれば、触媒製造時に触媒粒子が大きくなる傾向にあって、触媒の効率が低下して望ましくない。
【0055】
また、中型多孔性炭素複合体の比表面積が200m/g未満であれば、担持される金属粒子の分散度が上がり難く、2000m/gを超えれば、微細気孔が多すぎて燃料の拡散特性が低下し、触媒の効率が低下して望ましくない。
【0056】
本実施形態の中型多孔性炭素は、細孔が規則的に配列された構造を有するので、X−線回折分析でCuK−α特性のX線波長1.541Åに対するブラッグ2θ角の主ピークが、少なくても0.5〜2°である。
【0057】
前述したように製造された本実施形態の中型多孔性炭素は、触媒担体として使用できるが、このような触媒担体を採用した担持触媒について説明すれば、次の通りである。
【0058】
本実施形態の担持触媒は、前述した中型多孔性炭素と、中型多孔性炭素に分散されて担持されている金属触媒粒子と、を含む。金属触媒粒子は、中型多孔性炭素の表面及び気孔内に分散されて分布する。
【0059】
本実施形態の担持触媒に使用できる金属触媒としては、特別な制限はないが、具体的な例としては、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、セレン(Se)、スズ(Sn)、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、タングステン(W)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、ロジウム(Rh)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、またはこれらの混合物などがある。
【0060】
適切な触媒金属は、本実施形態の担持触媒を適用させようとする具体的な反応によって異なって選択されうる。また、触媒金属は、単一金属または2つ以上の金属の合金でありうる。
【0061】
具体的な例としては、本実施形態の担持触媒がPAFC(Phosphoric Acid Fuel Cell)、PEMFC(Proton Exchange Membrane Fuel Cell)のような燃料電池のカソードまたはアノードの触媒層に使用される場合に、触媒金属として一般的に白金が使用されうる。さらに他の具体的な例としては、本実施形態の担持触媒がDMFCのアノードの触媒層に使用される場合に、触媒金属として一般的にPt−Ru合金が使用されうる。この場合に、Pt−Ruの原子比は、典型的に約0.5:1〜約2:1でありうる。さらに他の具体的な例としては、本実施形態の担持触媒が、DMFC(Direct Methanol Fuel Cell)のカソードの触媒層に使用される場合に、触媒金属として一般的にPtが使用されうる。
【0062】
金属触媒粒子の平均粒径が小さ過ぎれば、触媒反応を促進させ得ない可能性があり、大き過ぎれば、全体触媒粒子の反応表面積が小さくなって、活性が低下しうる。このような点を考慮して、金属触媒粒子の平均粒径は、約1nm〜約5nmとすることができる。
【0063】
担持触媒中の金属触媒粒子の含量が少なすぎれば、燃料電池への適用が不可能になり、多すぎれば、経済的にも不利であり、触媒粒径が大きくなり得る。このような点を考慮して、担持触媒中の金属触媒粒子の含量は、担持触媒の総質量100質量部を基準として、40〜80質量部である。
【0064】
本実施形態の担持触媒を製造するために、公知の多様な担持触媒の製造方法が使用されうる。その代表的な例としては、本実施形態の担持触媒は、担体に触媒金属前駆体の溶液を含浸させた後、触媒金属前駆体の還元方法によって製造され得る。このような方法は、各種の文献に詳細に開示されているので、ここではその詳細な説明を省略する。
【0065】
以下では、本実施形態の燃料電池を詳細に説明する。
【0066】
本実施形態の燃料電池は、カソード、アノード及びカソードとアノードとの間に介在された電解質膜を備えるが、このとき、カソード及びアノードのうち少なくとも一つが、前述した本実施形態の担持触媒を含有している。
【0067】
本実施形態の燃料電池は、具体的な例としては、PAFC、PEMFCまたはDMFCとして具現され得る。このような燃料電池の構造及び製造方法は、特別に限定されず、具体的な例が各種文献に詳細に開示されているので、ここではその詳細な説明を省略する。
【0068】
以下、本実施形態を下記の具体的な実施例を挙げて説明するが、本発明が下記実施例にのみ限定されるものではない。
【0069】
(中型多孔性炭素の製造)
(実施例1)
スクロース2.3g及び硫酸0.25gを水6.6mLに完全に溶解させて、均一な炭素前駆体混合物を製造した。炭素前駆体混合物を質量比で二等分して、そのうち60質量%をOMSの一種であるSBA−151gに含浸させた。のように含浸させたSBA−15を常温のフードで30分間乾燥させた後、160℃の温度で2時間乾燥させた。
【0070】
乾燥させた結果物に残りの40質量%を含浸させた後、の同様に乾燥させた。
乾燥された試料を常温まで冷却させ、それを窒素雰囲気下で570Wのマイクロウェーブを1時間照射して、約900℃に加熱して炭化処理を実施した。のように炭化処理された結果物をHF、水及びエタノールの混合溶液に入れて攪拌する過程を繰り返して、SBA−15を除去して中型多孔性炭素を製造した。
【0071】
(実施例2)
570Wパワーのマイクロウェーブの代わりに500Wパワーのマイクロウェーブを使用したことを除いては、実施例1と同じ方法によって炭化処理を実施して中型多孔性炭素を製造した。
【0072】
(実施例3)
570Wパワーのマイクロウェーブの代わりに850Wパワーのマイクロウェーブを使用したことを除いては、実施例1と同じ方法によって炭化処理を実施して中型多孔性炭素を製造した。
【0073】
(実施例4)
570Wパワーのマイクロウェーブの代わりに1180Wパワーのマイクロウェーブを使用したことを除いては、実施例1と同じ方法によって炭化処理を実施して中型多孔性炭素を製造した。
【0074】
(実施例5)
マイクロウェーブの照射によって約1200℃で炭化処理が実施されたことを除いては、実施例1と同じ方法によって実施して中型多孔性炭素を実施した。
【0075】
(比較例1)
マイクロウェーブを用いた炭化処理の代わりに、乾燥された試料を常温まで冷却させ、1時間徐々に200℃まで昇温させた後、6時間維持した。その後、4時間徐々に900℃まで昇温させ、2時間維持して炭化処理を実施したことを除いては、実施例1と同じ方法によって実施して中型多孔性炭素を製造した。
【0076】
(比較例2)
570Wパワーのマイクロウェーブの代わりに、2050Wパワーのマイクロウェーブを使用したことを除いては、実施例1と同じ方法によって炭化処理を実施して中型多孔性炭素を製造した。
【0077】
(比較例3)
マイクロウェーブの照射によって約1500℃で炭化処理が実施されたことを除いては、実施例1と同じ方法によって実施して中型多孔性炭素を実施した。
【0078】
実施例1及び比較例1によって製造された中型多孔性炭素のX線回折分析結果を図3に示した。図3から、マイクロウェーブ炭化工程を通じて合成した中型多孔性炭素が、一般的な電気炉を利用した炭化工程を通じて製造した中型多孔性炭素と同じレベルの構造的な均一性を表すこと確認される。
【0079】
図4及び図5は、実施例1及び比較例1によって製造された中型多孔性炭素の窒素吸脱着の曲線を示した図面であり、これを参照すれば、実施例1及び比較例1によって製造された中型多孔性炭素のBET表面積の分析結果が分かる。
【0080】
図4及び図5を参照すると、実施例1と比較例1によって製造された中型多孔性炭素が、類似したBET表面積及び気孔のサイズを有することが確認される。
【0081】
また、実施例1及び比較例1によって製造された中型多孔性炭素の面抵抗測定結果を図6に示した。ここで、面抵抗特性は、下記の方法によって測定した。
【0082】
実施例1及び比較例1で、面抵抗は、4ポイントプローブ方式で測定した。実施例1及び比較例1の中型多孔性炭素50mgを面抵抗測定器(チャンミンテク、CMTシリーズ)に入れて、圧力を75.4kgf/cm及び150.7kgf/cmで加えつつ、それぞれの場合に対して面抵抗を測定した。面抵抗測定器は、被測定物質を収容するチャンバの底部に、電圧を測定できる一対の電極及び電流を測定できる一対の電極(したがって、電極は総4個)が設けられている。
【0083】
図6に示すように、実施例1の中型多孔性炭素は、比較例1の場合に比べて、面抵抗が顕著に低下するということが分かった。
【0084】
図7には、実施例2〜実施例4及び比較例2によって製造された中型多孔性炭素において、マイクロウェーブのパワーを変化させて得た中型多孔性炭素のXRD回折分析結果を共に表した。
【0085】
図7に示すように、炭化工程で照射するマイクロウェーブのパワーが強すぎれば、最終的に得られる炭素の規則性が低下するということが分かった。
【0086】
図8には、実施例1、実施例5及び比較例3によって製造された中型多孔性炭素において、炭化温度を変化させて得た中型多孔性炭素のXRD回折分析結果を共に表した。
【0087】
図8に示すように、炭化温度が高すぎれば、最終的に得られる炭素の規則性が低下するということが分かった。
【0088】
実施例1及び比較例1において、表面積、気孔体積、気孔直径を下記表1に表した。
【表1】

【0089】
表1から実施例1及び比較例1で得られた試料は、非常に大きな表面積を有しており、気孔の直径がほぼ同じであり、中型気孔に該当するということが分かり、このような物性を有する中型多孔性の炭素担体は、燃料電池の触媒担体や電極材料自体として利用され得た。
【0090】
(担持触媒及び燃料電池の製造)
(実施例6)
実施例1によって得た中型多孔性炭素0.5gをビニルバックに入れた後、HPtCl0.9616gを1.5mlのアセトンに溶解させた。溶液を、中型多孔性炭素の入っているビニルバックに入れて混合した。
【0091】
混合溶液を空気中で4時間乾燥させた後、るつぼに移した後、60℃の乾燥器内で一晩中乾燥させた。次いで、窒素が流れる電気炉の中にるつぼを入れて、窒素を10分間流した後、流れるガスを水素に切り換えた。そして、温度を常温から200℃まで昇温させて2時間一定に維持しつつ、中型多孔性炭素に担持されたPt塩を還元させた。ガスをさらに窒素に切り換えた後、温度を350℃まで5℃/分の速度で昇温させた後、5時間維持してから常温まで徐々に冷却させた。その後、さらにHPtCl
0.9616gを1.5mlのアセトンに溶解させた溶液を再度含浸させた後、さらに還元過程を経て、Ptの担持濃度が60質量%である担持触媒を得た。
【0092】
担持触媒を、イソプロピルアルコールにNafion 115(Dufont社製)を分散させた溶液に分散させてスラリーを製造した後、スプレー工程によって炭素電極上にコーティングし、触媒のコーティング濃度は、Pt含量を基準に3mg/cmにした。次いで、電極成形体をローリングマシンに通過させて、触媒層と炭素紙との接着力を向上させてカソードを製造した。一方、アノード電極としては、常用のPtRuブラック触媒を使用して製造されたアノード電極を使用し、これらを利用して単位電池を製造した。
【0093】
(比較例4)
中型多孔性炭素の製造の実施例1の中型多孔性炭素の代わりに、比較例1で製造した結果物に対して、実施例6と同じ方法でPtを担持させて担持触媒及び燃料電池を製造した。でそれぞれ製造された単位電池に対して、2Mメタノール及び過量の空気を流しつつ、50℃で性能を測定した。その結果、実施例6で製造した燃料電池が、比較例4の燃料電池に比べて効率が向上したということが分かった。
【0094】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、本発明は、燃料電池に関連した技術分野に好適に適用され得る。に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の一実施例に係る中型多孔性炭素の形成過程を模式的に示す図面である。
【図2】同実施形態に係る中型多孔性炭素の製造過程を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施例1及び比較例1によって製造された中型多孔性炭素のX線回折分析結果を示すグラフである。
【図4】本発明の実施例1及び比較例1によって製造された中型多孔性炭素の窒素吸脱着曲線を示す図面である。
【図5】本発明の実施例1及び比較例1によって製造された中型多孔性炭素の窒素吸脱着曲線を示す図面である。
【図6】本発明の実施例1及び比較例1によって製造された中型多孔性炭素の面抵抗の測定結果を示すグラフである。
【図7】本発明の実施例2〜実施例4及び比較例2によって製造された中型多孔性炭素において、マイクロウェーブのパワーを変化して得た中型多孔性炭素のXRD回折分析結果を示すグラフである。
【図8】本発明の実施例1、5及び比較例3によって製造された中型多孔性炭素において、炭化温度を変化して得た中型多孔性炭素のXRD回折分析結果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)炭素前駆体、酸及び溶媒を混合して炭素前駆体混合物を得る工程と、
(b)中型多孔性シリカに前記炭素前駆体混合物を含浸し、これに100〜2000Wパワーのマイクロウェーブを照射し、800〜1300℃で炭化処理を実施して中型多孔性シリカ−炭素複合体を形成する工程と、
(c)前記中型多孔性シリカ−炭素複合体から中型多孔性シリカを除去する工程と、を含むことを特徴とする、中型多孔性炭素の製造方法。
【請求項2】
前記マイクロウェーブの照射時間は、1〜180分であることを特徴とする、請求項1に記載の中型多孔性炭素の製造方法。
【請求項3】
前記マイクロウェーブの炭化処理は、非酸化の環境下で実施することを特徴とする、請求項1に記載の中型多孔性炭素の製造方法。
【請求項4】
前記炭素前駆体は、 炭水化物類、フルフリルアルコール、ジビニルベンゼン、フェノール−ホルムアルデヒド、レソルシノール−ホルムアルデヒド、フェナントレン、アントラセンからなる群から選択された一つ以上であることを特徴とする、請求項1に記載の中型多孔性炭素の製造方法。
【請求項5】
前記酸は、硫酸、硝酸、リン酸及びp−トルエン硫酸からなる群から選択された一つ以上の酸であることを特徴とする、請求項1に記載の中型多孔性炭素の製造方法。
【請求項6】
前記溶媒は、水、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、ブタノール、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、テトラヒドロフラン、テトラブチルアセテート、n−ブチルアセテート、m−クレゾール、トルエン、エチレングリコール、γ−ブチロラクトン、ヘキサフルオロイソプロパノールからなる群から選択された一つ以上の溶媒であることを特徴とする、請求項1に記載の中型多孔性炭素の製造方法。
【請求項7】
前記炭素前駆体の含量は、炭素前駆体混合物100質量部に対して5〜15質量部であり、
前記酸の含量は、炭素前駆体混合物100質量部に対して10〜35質量部であり、
前記溶媒の含量は、炭素前駆体混合物100質量部に対して55〜80質量部であることを特徴とする、請求項1に記載の中型多孔性炭素の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のうち何れか1項に記載の方法によって製造された中型気孔を有していることを特徴とする、中型多孔性炭素。
【請求項9】
中型気孔の平均直径は2〜10nmであり、
比表面積は、300〜2000m/gであり、面抵抗は、75.4kgf/cmの気圧環境下において20〜200mΩ/cmであることを特徴とする、請求項8に記載の中型多孔性炭素。
【請求項10】
CuK−α特性のX線波長1.541Åに対するブラッグ2θ角の主ピークは、少なくても0.5〜2°であることを特徴とする、請求項8に記載の中型多孔性炭素。
【請求項11】
請求項1〜請求項7のうち何れか1項に記載の方法によって製造された中型気孔を有している中型多孔性炭素と、前記中型多孔性炭素に担持された金属触媒粒子と、を含むことを特徴とする、担持触媒。
【請求項12】
前記金属触媒粒子の含量は、前記担持触媒100質量部を基準として40〜80質量部であることを特徴とする、請求項11に記載の担持触媒。
【請求項13】
カソード、アノード及び前記カソードとアノードとの間に配された電解質を含む燃料電池において、
前記カソード及びアノードのうち少なくとも何れか一つが、
請求項1〜請求項7のうち何れか1項に記載の方法によって製造された中型気孔を有している中型多孔性炭素と、前記中型多孔性炭素に担持された金属触媒粒子と、を含む担持触媒を含有することを特徴とする、燃料電池。





【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図1】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−137755(P2007−137755A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−155429(P2006−155429)
【出願日】平成18年6月2日(2006.6.2)
【出願人】(590002817)三星エスディアイ株式会社 (2,784)
【Fターム(参考)】