中性エンドペプチダーゼ阻害剤及びしわ抑制剤
【課題】優れた中性エンドペプチダーゼ活性阻害作用を有する中性エンドペプチダーゼ阻害剤及びしわ抑制剤を提供することを課題とする。
【解決手段】イタチガヤ(Pogonatherum crinitum (Thunb) Kunth)の抽出物を有効成分として含有する中性エンドペプチダーゼ阻害剤及びしわ抑制剤。
【解決手段】イタチガヤ(Pogonatherum crinitum (Thunb) Kunth)の抽出物を有効成分として含有する中性エンドペプチダーゼ阻害剤及びしわ抑制剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中性エンドペプチダーゼ阻害剤及びしわ抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚が老化することにより生じる外観変化の代表例としては、しわ、たるみの発生、はりの減少などがある。かかるしわ、たるみの発生、はりの減少などの皮膚の形態的変化に対して、例えばコラーゲンを配合した化粧料が用いられているが、充分なしわ発生等の防止効果は得られていない。
しわなどの発生については、特に紫外線との関連性が強いとされており、紫外線照射により生じた皮膚の老化を光老化と称して、種々研究されている。このような背景から、しわ形成抑制効果を謳ったしわ抑制剤や化粧料等が提案されているが、効果等の面で十分とは言い難く、しわ抑制効果を有する素材のさらなる探索が望まれている。
【0003】
近年、中性エンドペプチターゼ活性を阻害する物質が、老化によって生じる皮膚のしわ、たるみ等の症状を改善する作用を有することが報告されている(特許文献1参照)。しかしながら、従来知られている中性エンドペプチダーゼ阻害剤は活性阻害効果が十分とはいえない等の問題点を有していた。そのため、新たな中性エンドペプチダーゼ阻害剤が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−10948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は優れた中性エンドペプチダーゼ活性阻害作用を有する中性エンドペプチダーゼ阻害剤及びしわ抑制剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は上記課題に鑑み、鋭意検討を行った。その結果、イタチガヤ(Pogonatherum crinitum (Thunb) Kunth)の抽出物が、高い中性エンドペプチダーゼ阻害活性を有することを見出した。本発明はこの知見に基づいて完成するに至ったものである。
【0007】
本発明は、イタチガヤ(Pogonatherum crinitum (Thunb) Kunth)の抽出物を有効成分として含有する中性エンドペプチダーゼ阻害剤を提供するものである。
また、本発明は、イタチガヤ(Pogonatherum crinitum (Thunb) Kunth)の抽出物を有効成分として含有するしわ抑制剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、優れた活性阻害効果を奏する中性エンドペプチダーゼ阻害剤を提供することができる。また、本発明によれば、優れた中性エンドペプチダーゼ活性阻害効果を有するしわ抑制剤を提供することができる。
イタチガヤは生薬の原料として長年使用されてきている植物である。したがって、本発明により、安全性の高い中性エンドペプチダーゼ阻害剤及びしわ抑制剤が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について、その好ましい実施態様の基づき詳細に説明する。
イタチガヤは、イネ科イタチガヤ属に属する植物で、学名はポゴナテルム クリニツム (ツユンブ) クンス(Pogonatherum crinitum (Thunb) Kunth)である。イタチガヤは別名、金糸草(キンシソウ)とも呼ばれ、生薬名は筆仔草(ヒツシソウ)とも呼ばれる。イタチガヤは従来から生薬として用いられているが、イタチガヤの抽出物が中性エンドペプチダーゼ阻害活性を有することは全く知られていない。
【0010】
本発明におけるイタチガヤの抽出物は、イタチガヤの任意の部位、例えば、全草、根などから抽出することができるが、全草から抽出するのが好ましい。
本発明において、イタチガヤの抽出物の調製に、上記植物の各部位をそのまま、又は乾燥粉砕して用いることもできるが、その水蒸気蒸留物又は圧搾物を用いることもでき、これらは精油等より精製したものを用いることもでき、また、市販品を用いることもできる。上記植物の部位又はその水蒸気蒸留物若しくは圧搾物は、いずれかを単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0011】
本発明において、イタチガヤの抽出物を得る方法は特に限定されず、適当な溶媒を用いた常法の抽出方法によって調製することができる。
抽出に用いる溶媒としては、植物成分の抽出に通常用いられるもの、例えば水;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;プロピレングリコール、ブチレングリコール等の多価アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等の鎖状及び環状エーテル類;ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類;スクワラン、ヘキサン、シクロヘキサン、石油エーテル等の炭化水素類;トルエン等の芳香族炭化水素類;ポリエチレングリコール等のポリエーテル類;及びピリジン類等が挙げられ、これら2種以上混合溶媒であってもよい。本発明において、抽出に用いる溶媒は水性アルコールが好ましく、90質量%以上の水性アルコールがより好ましく、95質量%以上の水性アルコールがさらに好ましく、95質量%以上のエタノールが特に好ましい。
また、抽出条件も通常の条件を適用でき、例えば抽出物が抽出される材料を3〜100℃で数時間〜数週間浸漬又は加熱還流するのが好ましく、室温付近の温度で1日〜6週間浸漬するのが特に好ましい。
また、本発明におけるイタチガヤの抽出物は、市販の抽出物であってもよい。
【0012】
本発明の中性エンドぺプチダーゼ阻害剤及びしわ抑制剤の有効成分は、上記のように抽出されたイタチガヤの抽出物そのものであってもよいし、上記のように抽出されたイタチガヤの抽出物をさらに適当な分離手段、例えばゲル濾過カラムクロマトグラフィー等のカラムクロマトグラフィーや精密蒸留等により分画したものであってもよい。また、本発明の中性エンドペプチダーゼ阻害剤及びしわ抑制剤の有効成分は、前記抽出物を希釈、濃縮又は凍結乾燥した後、粉末又はペースト状にしたものであってもよい。すなわち、本発明におけるイタチガヤの抽出物には、前記抽出方法で得られた各種溶剤抽出液の他、その希釈液、濃縮液や乾燥末等も含まれる。
【0013】
本発明の中性エンドペプチダーゼ阻害剤は、イタチガヤの抽出物そのものであってもよいし、さらに他の成分を含んでいてもよい。他の成分の例として、酸化チタン、炭酸カルシウム、精製水、乳糖、デンプン、アルコール、界面活性剤、油性物質、保湿剤、皮膚老化防止剤、美白剤、高分子化合物、防腐剤、増粘剤、乳化剤、薬効成分、紛体、紫外線吸収剤、色素、香料、乳化安定剤、pH調整剤等が挙げられる。本発明の中性エンドペプチダーゼ阻害剤に含まれるイタチガヤの抽出物の量に特に制限はないが、前記抽出物が固形分換算で0.00001〜50重量%含まれるのが好ましく、0.001〜10重量%含まれるのが特に好ましい。
【0014】
本発明の中性エンドペプチダーゼ阻害剤の剤形に特に制限はなく、用途に応じて皮膚外用剤、経口剤、注射剤等の剤形をとることができる。
【0015】
前述のように、中性エンドペプチダーゼ活性を阻害する物質は、老化によって生じる皮膚のしわ、たるみ等の症状を改善する作用を有することが知られている。後述の実施例で実証しているように、イタチガヤの抽出物を有効成分として含有する本発明の中性エンドペプチダーゼ阻害剤は優れた中性エンドペプチダーゼ活性阻害作用を有する。そのため、前記イタチガヤの抽出物を有効成分として含有する本発明のしわ抑制剤は、中性エンドペプチダーゼ活性を阻害し、老化によって生じる皮膚のしわ形成を抑制することができる。
【0016】
本発明のしわ抑制剤は、イタチガヤの抽出物そのものであってもよいし、さらに他の成分を含んでいてもよい。他の成分の例として、酸化チタン、炭酸カルシウム、精製水、乳糖、デンプン、アルコール、界面活性剤、油性物質、保湿剤、皮膚老化防止剤、美白剤、高分子化合物、防腐剤、増粘剤、乳化剤、薬効成分、紛体、紫外線吸収剤、色素、香料、乳化安定剤、pH調整剤等が挙げられる。本発明のしわ抑制剤に含まれるイタチガヤの抽出物の量に特に制限はないが、前記抽出物が固形分換算で0.00001〜50重量%含まれるのが好ましく、0.001〜10重量%含まれるのが特に好ましい。
【0017】
本発明のしわ抑制剤の剤形に特に制限はなく、用途に応じて皮膚外用剤、経口剤、注射剤等の剤形をとることができるが、皮膚外用剤の剤形をとることが好ましい。本発明のしわ抑制剤を皮膚外用剤として皮膚に直接塗布することで、老化によって生じる皮膚のしわ、たるみ等の症状を予防したり改善したりすることができる。前記皮膚外用剤は、医薬品、医薬部外品及び化粧料でありうるが、通常は医薬部外品や化粧料として用いられる。
【0018】
本発明のしわ抑制剤を皮膚外用剤とする場合には、水溶液系、可溶化系、乳化系、粉末系、ゲル系、軟膏系、クリーム、水−油2層系、水−油−粉末3層系など、幅広い形態を取りうる。
【0019】
本発明のしわ抑制剤を皮膚外用剤として使用する場合の使用量は、有効成分であるイタチガヤの抽出物の含有量により異なるが、例えばクリーム状、軟膏状の場合、皮膚面1cm2当たり〜1〜20mg、液状製剤の場合1〜20mg使用するのが好ましい。
【実施例】
【0020】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0021】
製造例1 イタチガヤ抽出液の調製
イタチガヤ(全草)(金糸草、新和物産より入手)40gに95%エタノール水溶液400mLを加え、常温で35日間浸漬した。これを桐山漏斗でろ過し、ろ液をイタチガヤ抽出液とした。この抽出液を濃縮したところ、その固形分は1.58gであり、抽出液の固形分濃度は0.45%(w/v)であった。
【0022】
実施例 中性エンドペプチダーゼ活性抑制試験
Cell System社より市販されている正常ヒト線維芽細胞を、10%牛胎児血清を含むDME培地で継体培養し、以下の試験に供した。試験方法は、The Journal of Biological Chemistry, 266(34), 23041−23047(1991)に記載の方法を参照した。
【0023】
ラバーポリスマンを用いてシャーレから剥がした細胞を、リン酸緩衝食塩水中に浮遊させ、低速の遠心分離器を使って細胞を集めた後、同生理食塩水で3回洗浄した。得られた細胞を0.1% Triton X−100/0.2M Tris−HClバッファー(pH 8.0)に浮遊させ、超音波粉砕し、これをヒト線維芽細由来酵素液とした。
ヒト線維芽細由来由来酵素液100μLに、蒸発残分0.5%(w/v)に調整した前記イタチガヤ抽出液(評価サンプル)を2.0μL又は0.6μL、中性エンドペプチダーゼ基質(10mMグルタリル−Ala−Ala−Phe−4−メトキシ−β−ナフチルアミン)を2.0μL添加し、37℃にて1時間インキュベートした。これにより、ヒト線維芽細胞由来酵素液に含まれる中性エンドペプチダーゼ(NEP)が基質をAla−Phe間で切断してNEP分解産物を生じる。その後、ホスホラミドン(Phosphoramidon)を最終濃度1μMとなるように添加して反応を停止させた。
続いて、反応系にロイシンアミノペプチダーゼ(Leucine aminopeptidase)を最終濃度が0.50mU/mLとなるように添加し、37℃で1時間インキュベートした。これにより、NEP分解産物がロイシンアミノペプチダーゼによってさらに切断され、4−メトキシ−2−ナフチルアミンを生じる。生じた4−メトキシ−2−ナフチルアミンの蛍光強度を、蛍光分光光度計を用いて、励起波長340nm、蛍光波長425nmにて測定した。
コントロールとして、上記反応系において、評価サンプルの代わりに95%エタノール水溶液を2μL又は0.6μL加え、同様の操作を行った。
得られた測定値をもとに、以下の式から評価サンプルの中性エンドペプチダーゼ活性阻害率を求めた。
中性エンドペプチダーゼ活性阻害率(%)=100−{(評価サンプル添加時の4−メトキシ−2−ナフチルアミン量)/(コントロール添加時の4−メトキシ−2−ナフチルアミン量)}×100
結果を表1に示す。
【0024】
【表1】
【0025】
表1からイタチガヤの抽出物が優れた中性エンドペプチダーゼ活性阻害効果を有することがわかり、イタチガヤの抽出物を有効成分として含有する本発明の中性エンドペプチダーゼ阻害剤が優れた中性エンドペプチダーゼ活性阻害効果を有することが示された。
前述のように、中性エンドペプチダーゼ活性を阻害すると、皮膚のしわ、たるみ等の症状が抑制されることが知られている。したがって、表1の結果から、イタチガヤの抽出物を有効成分として含有する本発明のしわ抑制剤が優れたしわ抑制作用を有することがわかる。
【0026】
(処方例)
本発明のしわ抑制剤の形態の例として、下記に示す組成のローション、クリーム、パック剤を常法により各々調製した。
【0027】
1.皮膚老化改善用ローションの調製
下記Aの成分を混合した溶液Aを調製する。これとは別に、下記Bの成分を混合した溶液Bを調製する。溶液Aに溶液Bを添加して均一に撹拌混合し、ローションを得る。
(組成) (配合:質量%)
A ポリオキシエチレン硬化ひまし油 0.8
エタノール 30.0
B イタチガヤ抽出物 1.0
ドデシル硫酸ナトリウム 0.12
ドデシルメチルアミンオキシド 0.18
イソプロピルアルコール 15.0
ベンジルアルコール 15.0
グリセリン 2.0
精製水 バランス
【0028】
2.皮膚老化改善用クリームの調製
下記Aの成分を混合した溶液Aを調製する。これとは別に、下記Bの成分を混合した溶液Bを調製する。溶液Aに溶液Bを添加して均一に撹拌混合し、乳化後、冷却して、クリームを得る。
(組成) (配合:質量%)
A 流動パラフィン 10.0
スクワラン 7.0
ホホバ油 3.0
固形パラフィン 3.0
ポリオキシエチレンセチルエーテル 2.0
ソルビタンセスキオレエート 1.0
水酸化カリウム 0.1
B イタチガヤ抽出物 1.0
グリセリン 3.0
エチルパラベン 0.1
精製水 バランス
【0029】
3.皮膚老化改善用パック剤の調製
下記の組成のパック剤を常法により調製する。
(組成) (配合:質量%)
イタチガヤ抽出物 3.0
ポリビニルアルコール 20.0
グリセリン 5.0
エタノール 16.0
香料 微量
色素 微量
精製水 バランス
【技術分野】
【0001】
本発明は、中性エンドペプチダーゼ阻害剤及びしわ抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚が老化することにより生じる外観変化の代表例としては、しわ、たるみの発生、はりの減少などがある。かかるしわ、たるみの発生、はりの減少などの皮膚の形態的変化に対して、例えばコラーゲンを配合した化粧料が用いられているが、充分なしわ発生等の防止効果は得られていない。
しわなどの発生については、特に紫外線との関連性が強いとされており、紫外線照射により生じた皮膚の老化を光老化と称して、種々研究されている。このような背景から、しわ形成抑制効果を謳ったしわ抑制剤や化粧料等が提案されているが、効果等の面で十分とは言い難く、しわ抑制効果を有する素材のさらなる探索が望まれている。
【0003】
近年、中性エンドペプチターゼ活性を阻害する物質が、老化によって生じる皮膚のしわ、たるみ等の症状を改善する作用を有することが報告されている(特許文献1参照)。しかしながら、従来知られている中性エンドペプチダーゼ阻害剤は活性阻害効果が十分とはいえない等の問題点を有していた。そのため、新たな中性エンドペプチダーゼ阻害剤が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−10948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は優れた中性エンドペプチダーゼ活性阻害作用を有する中性エンドペプチダーゼ阻害剤及びしわ抑制剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は上記課題に鑑み、鋭意検討を行った。その結果、イタチガヤ(Pogonatherum crinitum (Thunb) Kunth)の抽出物が、高い中性エンドペプチダーゼ阻害活性を有することを見出した。本発明はこの知見に基づいて完成するに至ったものである。
【0007】
本発明は、イタチガヤ(Pogonatherum crinitum (Thunb) Kunth)の抽出物を有効成分として含有する中性エンドペプチダーゼ阻害剤を提供するものである。
また、本発明は、イタチガヤ(Pogonatherum crinitum (Thunb) Kunth)の抽出物を有効成分として含有するしわ抑制剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、優れた活性阻害効果を奏する中性エンドペプチダーゼ阻害剤を提供することができる。また、本発明によれば、優れた中性エンドペプチダーゼ活性阻害効果を有するしわ抑制剤を提供することができる。
イタチガヤは生薬の原料として長年使用されてきている植物である。したがって、本発明により、安全性の高い中性エンドペプチダーゼ阻害剤及びしわ抑制剤が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について、その好ましい実施態様の基づき詳細に説明する。
イタチガヤは、イネ科イタチガヤ属に属する植物で、学名はポゴナテルム クリニツム (ツユンブ) クンス(Pogonatherum crinitum (Thunb) Kunth)である。イタチガヤは別名、金糸草(キンシソウ)とも呼ばれ、生薬名は筆仔草(ヒツシソウ)とも呼ばれる。イタチガヤは従来から生薬として用いられているが、イタチガヤの抽出物が中性エンドペプチダーゼ阻害活性を有することは全く知られていない。
【0010】
本発明におけるイタチガヤの抽出物は、イタチガヤの任意の部位、例えば、全草、根などから抽出することができるが、全草から抽出するのが好ましい。
本発明において、イタチガヤの抽出物の調製に、上記植物の各部位をそのまま、又は乾燥粉砕して用いることもできるが、その水蒸気蒸留物又は圧搾物を用いることもでき、これらは精油等より精製したものを用いることもでき、また、市販品を用いることもできる。上記植物の部位又はその水蒸気蒸留物若しくは圧搾物は、いずれかを単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0011】
本発明において、イタチガヤの抽出物を得る方法は特に限定されず、適当な溶媒を用いた常法の抽出方法によって調製することができる。
抽出に用いる溶媒としては、植物成分の抽出に通常用いられるもの、例えば水;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;プロピレングリコール、ブチレングリコール等の多価アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等の鎖状及び環状エーテル類;ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類;スクワラン、ヘキサン、シクロヘキサン、石油エーテル等の炭化水素類;トルエン等の芳香族炭化水素類;ポリエチレングリコール等のポリエーテル類;及びピリジン類等が挙げられ、これら2種以上混合溶媒であってもよい。本発明において、抽出に用いる溶媒は水性アルコールが好ましく、90質量%以上の水性アルコールがより好ましく、95質量%以上の水性アルコールがさらに好ましく、95質量%以上のエタノールが特に好ましい。
また、抽出条件も通常の条件を適用でき、例えば抽出物が抽出される材料を3〜100℃で数時間〜数週間浸漬又は加熱還流するのが好ましく、室温付近の温度で1日〜6週間浸漬するのが特に好ましい。
また、本発明におけるイタチガヤの抽出物は、市販の抽出物であってもよい。
【0012】
本発明の中性エンドぺプチダーゼ阻害剤及びしわ抑制剤の有効成分は、上記のように抽出されたイタチガヤの抽出物そのものであってもよいし、上記のように抽出されたイタチガヤの抽出物をさらに適当な分離手段、例えばゲル濾過カラムクロマトグラフィー等のカラムクロマトグラフィーや精密蒸留等により分画したものであってもよい。また、本発明の中性エンドペプチダーゼ阻害剤及びしわ抑制剤の有効成分は、前記抽出物を希釈、濃縮又は凍結乾燥した後、粉末又はペースト状にしたものであってもよい。すなわち、本発明におけるイタチガヤの抽出物には、前記抽出方法で得られた各種溶剤抽出液の他、その希釈液、濃縮液や乾燥末等も含まれる。
【0013】
本発明の中性エンドペプチダーゼ阻害剤は、イタチガヤの抽出物そのものであってもよいし、さらに他の成分を含んでいてもよい。他の成分の例として、酸化チタン、炭酸カルシウム、精製水、乳糖、デンプン、アルコール、界面活性剤、油性物質、保湿剤、皮膚老化防止剤、美白剤、高分子化合物、防腐剤、増粘剤、乳化剤、薬効成分、紛体、紫外線吸収剤、色素、香料、乳化安定剤、pH調整剤等が挙げられる。本発明の中性エンドペプチダーゼ阻害剤に含まれるイタチガヤの抽出物の量に特に制限はないが、前記抽出物が固形分換算で0.00001〜50重量%含まれるのが好ましく、0.001〜10重量%含まれるのが特に好ましい。
【0014】
本発明の中性エンドペプチダーゼ阻害剤の剤形に特に制限はなく、用途に応じて皮膚外用剤、経口剤、注射剤等の剤形をとることができる。
【0015】
前述のように、中性エンドペプチダーゼ活性を阻害する物質は、老化によって生じる皮膚のしわ、たるみ等の症状を改善する作用を有することが知られている。後述の実施例で実証しているように、イタチガヤの抽出物を有効成分として含有する本発明の中性エンドペプチダーゼ阻害剤は優れた中性エンドペプチダーゼ活性阻害作用を有する。そのため、前記イタチガヤの抽出物を有効成分として含有する本発明のしわ抑制剤は、中性エンドペプチダーゼ活性を阻害し、老化によって生じる皮膚のしわ形成を抑制することができる。
【0016】
本発明のしわ抑制剤は、イタチガヤの抽出物そのものであってもよいし、さらに他の成分を含んでいてもよい。他の成分の例として、酸化チタン、炭酸カルシウム、精製水、乳糖、デンプン、アルコール、界面活性剤、油性物質、保湿剤、皮膚老化防止剤、美白剤、高分子化合物、防腐剤、増粘剤、乳化剤、薬効成分、紛体、紫外線吸収剤、色素、香料、乳化安定剤、pH調整剤等が挙げられる。本発明のしわ抑制剤に含まれるイタチガヤの抽出物の量に特に制限はないが、前記抽出物が固形分換算で0.00001〜50重量%含まれるのが好ましく、0.001〜10重量%含まれるのが特に好ましい。
【0017】
本発明のしわ抑制剤の剤形に特に制限はなく、用途に応じて皮膚外用剤、経口剤、注射剤等の剤形をとることができるが、皮膚外用剤の剤形をとることが好ましい。本発明のしわ抑制剤を皮膚外用剤として皮膚に直接塗布することで、老化によって生じる皮膚のしわ、たるみ等の症状を予防したり改善したりすることができる。前記皮膚外用剤は、医薬品、医薬部外品及び化粧料でありうるが、通常は医薬部外品や化粧料として用いられる。
【0018】
本発明のしわ抑制剤を皮膚外用剤とする場合には、水溶液系、可溶化系、乳化系、粉末系、ゲル系、軟膏系、クリーム、水−油2層系、水−油−粉末3層系など、幅広い形態を取りうる。
【0019】
本発明のしわ抑制剤を皮膚外用剤として使用する場合の使用量は、有効成分であるイタチガヤの抽出物の含有量により異なるが、例えばクリーム状、軟膏状の場合、皮膚面1cm2当たり〜1〜20mg、液状製剤の場合1〜20mg使用するのが好ましい。
【実施例】
【0020】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0021】
製造例1 イタチガヤ抽出液の調製
イタチガヤ(全草)(金糸草、新和物産より入手)40gに95%エタノール水溶液400mLを加え、常温で35日間浸漬した。これを桐山漏斗でろ過し、ろ液をイタチガヤ抽出液とした。この抽出液を濃縮したところ、その固形分は1.58gであり、抽出液の固形分濃度は0.45%(w/v)であった。
【0022】
実施例 中性エンドペプチダーゼ活性抑制試験
Cell System社より市販されている正常ヒト線維芽細胞を、10%牛胎児血清を含むDME培地で継体培養し、以下の試験に供した。試験方法は、The Journal of Biological Chemistry, 266(34), 23041−23047(1991)に記載の方法を参照した。
【0023】
ラバーポリスマンを用いてシャーレから剥がした細胞を、リン酸緩衝食塩水中に浮遊させ、低速の遠心分離器を使って細胞を集めた後、同生理食塩水で3回洗浄した。得られた細胞を0.1% Triton X−100/0.2M Tris−HClバッファー(pH 8.0)に浮遊させ、超音波粉砕し、これをヒト線維芽細由来酵素液とした。
ヒト線維芽細由来由来酵素液100μLに、蒸発残分0.5%(w/v)に調整した前記イタチガヤ抽出液(評価サンプル)を2.0μL又は0.6μL、中性エンドペプチダーゼ基質(10mMグルタリル−Ala−Ala−Phe−4−メトキシ−β−ナフチルアミン)を2.0μL添加し、37℃にて1時間インキュベートした。これにより、ヒト線維芽細胞由来酵素液に含まれる中性エンドペプチダーゼ(NEP)が基質をAla−Phe間で切断してNEP分解産物を生じる。その後、ホスホラミドン(Phosphoramidon)を最終濃度1μMとなるように添加して反応を停止させた。
続いて、反応系にロイシンアミノペプチダーゼ(Leucine aminopeptidase)を最終濃度が0.50mU/mLとなるように添加し、37℃で1時間インキュベートした。これにより、NEP分解産物がロイシンアミノペプチダーゼによってさらに切断され、4−メトキシ−2−ナフチルアミンを生じる。生じた4−メトキシ−2−ナフチルアミンの蛍光強度を、蛍光分光光度計を用いて、励起波長340nm、蛍光波長425nmにて測定した。
コントロールとして、上記反応系において、評価サンプルの代わりに95%エタノール水溶液を2μL又は0.6μL加え、同様の操作を行った。
得られた測定値をもとに、以下の式から評価サンプルの中性エンドペプチダーゼ活性阻害率を求めた。
中性エンドペプチダーゼ活性阻害率(%)=100−{(評価サンプル添加時の4−メトキシ−2−ナフチルアミン量)/(コントロール添加時の4−メトキシ−2−ナフチルアミン量)}×100
結果を表1に示す。
【0024】
【表1】
【0025】
表1からイタチガヤの抽出物が優れた中性エンドペプチダーゼ活性阻害効果を有することがわかり、イタチガヤの抽出物を有効成分として含有する本発明の中性エンドペプチダーゼ阻害剤が優れた中性エンドペプチダーゼ活性阻害効果を有することが示された。
前述のように、中性エンドペプチダーゼ活性を阻害すると、皮膚のしわ、たるみ等の症状が抑制されることが知られている。したがって、表1の結果から、イタチガヤの抽出物を有効成分として含有する本発明のしわ抑制剤が優れたしわ抑制作用を有することがわかる。
【0026】
(処方例)
本発明のしわ抑制剤の形態の例として、下記に示す組成のローション、クリーム、パック剤を常法により各々調製した。
【0027】
1.皮膚老化改善用ローションの調製
下記Aの成分を混合した溶液Aを調製する。これとは別に、下記Bの成分を混合した溶液Bを調製する。溶液Aに溶液Bを添加して均一に撹拌混合し、ローションを得る。
(組成) (配合:質量%)
A ポリオキシエチレン硬化ひまし油 0.8
エタノール 30.0
B イタチガヤ抽出物 1.0
ドデシル硫酸ナトリウム 0.12
ドデシルメチルアミンオキシド 0.18
イソプロピルアルコール 15.0
ベンジルアルコール 15.0
グリセリン 2.0
精製水 バランス
【0028】
2.皮膚老化改善用クリームの調製
下記Aの成分を混合した溶液Aを調製する。これとは別に、下記Bの成分を混合した溶液Bを調製する。溶液Aに溶液Bを添加して均一に撹拌混合し、乳化後、冷却して、クリームを得る。
(組成) (配合:質量%)
A 流動パラフィン 10.0
スクワラン 7.0
ホホバ油 3.0
固形パラフィン 3.0
ポリオキシエチレンセチルエーテル 2.0
ソルビタンセスキオレエート 1.0
水酸化カリウム 0.1
B イタチガヤ抽出物 1.0
グリセリン 3.0
エチルパラベン 0.1
精製水 バランス
【0029】
3.皮膚老化改善用パック剤の調製
下記の組成のパック剤を常法により調製する。
(組成) (配合:質量%)
イタチガヤ抽出物 3.0
ポリビニルアルコール 20.0
グリセリン 5.0
エタノール 16.0
香料 微量
色素 微量
精製水 バランス
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イタチガヤ(Pogonatherum crinitum (Thunb) Kunth)の抽出物を有効成分として含有する中性エンドペプチダーゼ阻害剤。
【請求項2】
イタチガヤ(Pogonatherum crinitum (Thunb) Kunth)の抽出物を有効成分として含有するしわ抑制剤。
【請求項1】
イタチガヤ(Pogonatherum crinitum (Thunb) Kunth)の抽出物を有効成分として含有する中性エンドペプチダーゼ阻害剤。
【請求項2】
イタチガヤ(Pogonatherum crinitum (Thunb) Kunth)の抽出物を有効成分として含有するしわ抑制剤。
【公開番号】特開2011−190212(P2011−190212A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−57552(P2010−57552)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】
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