説明

中空エンジンバルブの製造方法

【課題】金属ナトリウムを内部に容易に封入することができる中空エンジンバルブの製造方法を提供する。
【解決手段】中実丸棒21に対して鍛造加工を行って、中空孔22cを有する半完成品22を成形し、中空孔22c内に金属ナトリウムNを入れた後、当該中空孔22cを仮蓋23で封止し、この状態の半完成品22に対して、ネッキング加工を順次行って、金属ナトリウムNが封入された半完成品24を成形し、この半完成品24における仮蓋23の部分が除去されるように、中空孔24cを切断して、その開口端を軸端封止部材12で封止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属ナトリウムを内部に封入した中空エンジンバルブの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エンジンバルブの中には、エンジンの高出力化及び高性能化に伴って、その内部を中空に形成すると共に、この中空部内に冷媒用の金属ナトリウムを封入したものが種々提供されている。これにより、中実のエンジンバルブと比べて、軽量化が図られると共に、封入された金属ナトリウムの働きにより、熱伝導性の向上が図られるようになっている。このような、従来の中空エンジンバルブの製造方法は、例えば、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−102917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の製造方法では、弁傘部及び中空軸部を成形した後、これらの内部に形成された中空孔内に、金属ナトリウムを封入するようにしている。しかしながら、中空軸部は小径に形成されているため、その中空孔の内径も非常に小径となっている。このため、従来の製造方法において、金属ナトリウムを中空孔内に封入する場合には、固体の金属ナトリウムを押出成形して棒状にした後、この棒状の金属ナトリウムを細長い中空孔内に挿入しなくてはならず、金属ナトリウムの封入作業性の低下を招いていた。
【0005】
従って、本発明は上記課題を解決するものであって、金属ナトリウムを内部に容易に封入することができる中空エンジンバルブの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明に係る中空エンジンバルブの製造方法は、
金属ナトリウムを内部に封入した中空エンジンバルブの製造方法において、
中実丸棒に対して鍛造加工を行って、有底の第1中空孔を有する第1半完成品を成形し、
前記第1中空孔内に金属ナトリウムを入れた後、当該第1中空孔を仮蓋で封止し、
前記仮蓋により金属ナトリウムが封入された前記第1半完成品に対して、前記第1中空孔の長さ及び前記仮蓋の長さが段階的に長くなると共に、前記第1中空孔の内径及び前記仮蓋の外径が段階的に縮径するように、ネッキング加工を順次行って、金属ナトリウムが封入された第2中空孔を有する第2半完成品を成形し、
前記第2半完成品における前記仮蓋の部分が除去されるように、前記第2中空孔を切断し、
切断により形成された前記第2中空孔の開口端を、軸端封止部材で封止する
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
従って、本発明に係る中空エンジンバルブの製造方法によれば、中実丸棒の鍛造加工後、即ち、第1半完成品のネッキング加工前において、内径が大きな状態の第1中空孔内に金属ナトリウムを入れることにより、当該金属ナトリウムを中空エンジンバルブの内部に容易に封入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施例に係る中空エンジンバルブの製造方法を順に示した図である。
【図2】本発明の他の実施例に係る中空エンジンバルブの製造方法を順に示した図である。
【図3】中空エンジンバルブの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る中空エンジンバルブの製造方法について、図面を用いて詳細に説明する。
【実施例】
【0010】
先ず、図3に示すように、本発明に係る製造方法によって製造される中空エンジンバルブ1は、車両等のエンジンにおいて、吸気バルブまたは排気バルブとして使用されるものであって、中空軸状の弁傘部材11及び軸状の軸端封止部材12から構成されている。なお、弁傘部材11と軸端封止部材12とは、互いの軸端間で接合されている。
【0011】
更に、弁傘部材11は、傘形形状の弁傘部11a及び中空軸状の中空軸部11bを有しており、弁傘部材11の内部には、中空孔11cが、弁傘部11aと中空軸部11bとに亘って、当該弁傘部11a及び中空軸部11bの形状に沿うように形成されている。そして、中空孔11c内には、冷媒用の金属ナトリウムNが封入されている。
【0012】
次に、中空エンジンバルブ1の製造方法について、図1(a)〜(e)を用いて詳細に説明する。
【0013】
先ず、図1(a)に示すように、所定の長さ及び外径に加工された中実丸棒21を準備する。
【0014】
次いで、図1(b)に示すように、中実丸棒21に対して、複数回の鍛造加工を順次行うことにより、半完成品(第1半完成品)22を成形する。これにより、半完成品22には、弁傘部22a、中空軸部22b、中空孔(第1中空孔)22cが形成されることになる。
【0015】
そして、図1(c)に示すように、半完成品22における有底の中空孔22c内に、金属ナトリウムNを注入した後、この中空孔22cの開口端に、円柱状の仮蓋23を接合する。これにより、半完成品22内への金属ナトリウムNの封入が完了したことになる。
【0016】
次いで、図1(d)に示すように、金属ナトリウムNが封入された半完成品22に対して、複数回のネッキング加工(絞り加工)を順次行うことにより、半完成品(第2半完成品)24を成形する。
【0017】
このとき、半完成品22の中空軸部22b、中空孔22c、仮蓋23の長さが、段階的に長くなると共に、半完成品22の中空軸部22b及び仮蓋23の外径や、半完成品22の中空孔22cの内径が、段階的に縮径されて、中空軸部22bの肉厚も段階的に厚くなり、最終的に、金属ナトリウムNが封入された状態で、半完成品24の弁傘部24a、中空軸部24b、中空孔(第2中空孔)24cが成形される。
【0018】
そして、図1(e)に示すように、半完成品24に対して、ネッキング加工された仮蓋23の部分が除去されるように、中空軸部22bを切断することにより、金属ナトリウムNが収容された状態の弁傘部材11が形成される。
【0019】
次いで、図1(f)に示すように、金属ナトリウムNが収容された弁傘部材11に対して、その中空軸部11bの開口端に軸端封止部材12を接合することにより、完成品としての中空エンジンバルブ1が形成される。
【0020】
従って、本発明に係る製造方法によれば、中実丸棒21を鍛造加工した後、即ち、半完成品22をネッキング加工する前において、半完成品22における内径が大きな状態の中空孔22c内に、金属ナトリウムNを注入することにより、当該金属ナトリウムNを中空エンジンバルブ1の内部に容易に封入することができる。
【0021】
なお、上述したように、図1(a)〜(f)に示した製造方法では、中実丸棒21から弁傘部材11を成形するようにしたが、図2(a)〜(e)に示すように、パイプ材31から弁傘部材11を成形するようにしても構わない。
【0022】
そこで、図2(a)に示すように、所定の長さ、外径、内径に加工されたパイプ材31を用意する。
【0023】
次いで、図2(b)に示すように、パイプ材31内に、棒状の金属ナトリウムNを挿入した後、当該パイプ材31の両側開口端内に、パイプ端封止部材32a,32bを接合する。これにより、パイプ材31内への金属ナトリウムNの封入が完了したことになる。
【0024】
そして、図2(c)に示すように、金属ナトリウムNが封入されたパイプ材31に対して、据え込み鍛造装置41を用いて、鍛造加工を行う。
【0025】
即ち、パイプ材31の一端を固定部41aに取り付ける一方、パイプ材31の他端を可動部41bに取り付けた後、当該パイプ材31の一端側を、高周波コイル等の加熱手段41cにより加熱する。更に、このように、パイプ材31の一端側を加熱した状態で、可動部41bを固定部41a側に押し出して、パイプ材31に圧縮荷重を与える。これにより、パイプ材31の加熱された部分が、径方向外側に膨出することになり、パイプ材31の一端側には、膨出部31aが成形される。
【0026】
次いで、図2(d)に示すように、膨出部31aが成形されたパイプ材31に対して、鍛造金型42を用いて、鍛造加工を行う。即ち、パイプ材31を、その膨出部31aがダイ42aの凹部に収まるように、当該ダイ42aに装着し、膨出部31aをパンチ42bにより押圧する。なお、図2(d)に示したパイプ材31においては、軸心の左側半分を鍛造加工前の状態とし、軸心の右側半分を鍛造加工後の状態としている。
【0027】
これにより、パイプ材31においては、その膨出部31aのみが径方向外側に押し潰されるように変形するので、結果的に、図2(e)に示すような、金属ナトリウムNが封入された状態の弁傘部材11が成形される。
【0028】
従って、金属ナトリウムNを挿入したパイプ材31に対して、鍛造加工を行うことにより、金属ナトリウムNを中空エンジンバルブ1の内部に容易に封入することができる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、製造工程の簡略化を図るようにした中空エンジンバルブの製造方法に適用可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 中空エンジンバルブ
11 弁傘部材
11a 弁傘部
11b 中空軸部
11c 中空孔
12 軸端封止部材
21 中実丸棒
22,24 半完成品
22a,24a 弁傘部
22b,24b 中空軸部
22c,24c 中空孔
23 仮蓋
31 パイプ材
31a 膨出部
32 パイプ端封止部材
41 据え込み鍛造装置
41a 固定部
41b 可動部
41c 加熱手段
42 鍛造金型
42a ダイ
42b パンチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ナトリウムを内部に封入した中空エンジンバルブの製造方法において、
中実丸棒に対して鍛造加工を行って、有底の第1中空孔を有する第1半完成品を成形し、
前記第1中空孔内に金属ナトリウムを入れた後、当該第1中空孔を仮蓋で封止し、
前記仮蓋により金属ナトリウムが封入された前記第1半完成品に対して、前記第1中空孔の長さ及び前記仮蓋の長さが段階的に長くなると共に、前記第1中空孔の内径及び前記仮蓋の外径が段階的に縮径するように、ネッキング加工を順次行って、金属ナトリウムが封入された第2中空孔を有する第2半完成品を成形し、
前記第2半完成品における前記仮蓋の部分が除去されるように、前記第2中空孔を切断し、
切断により形成された前記第2中空孔の開口端を、軸端封止部材で封止する
ことを特徴とする中空エンジンバルブの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−125790(P2012−125790A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278830(P2010−278830)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【出願人】(508282203)株式会社 吉村カンパニー (14)
【Fターム(参考)】