説明

中空体及び中空体の製造方法

【課題】
中空本体を構成する中空本体用シートと、逆止弁を構成する逆止弁用シートを1枚の成形シートで形成し、別の製造工程による逆止弁の製造工程を不要とした中空体を提供する。
【解決手段】
中空体1は、合成樹脂製の一対の成形シート11,21とからなる。成形シート11,21は、中空本体用シート13,23と、これの接続部14,24に接続された逆止弁用シート15,25とからなる。一対の逆止弁用シート15,25は、重ねられ、接続部14,24を除く周縁が気密に熱溶着されて逆止弁3を構成している。一対の中空本体用シート13,23は、接続部14,24を介して折り返され、逆止弁3を内側に挟み込むようにして重ねられ、接続部14,24を除く周縁が気密に熱溶着され、中空本体2を構成している。接続部14,24は、空気注入口38を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気を注入することにより膨張する合成樹脂シートによって形成された中空体であって、特殊な構造の逆止弁を備えた中空体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の 、空気を注入することにより膨張する合成樹脂シートによって形成された中空体は、中空本体と逆止弁とで構成されている。中空本体は、熱融着性を有する一対の合成樹脂製の成形シートを重ね合わせ、周縁を気密に熱溶着して形成される。逆止弁は、同じく熱融着性を有する合成樹脂シートによって形成され、前記成形シートの空気注入口に配置され、一対の成形シートに挟み込まれ、上記した熱溶着による中空本体形成時に取り付けられている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】実公平7−38772号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の中空体は、中空本体とは別に逆止弁を形成しなければならないので、製造工程が複雑で、安価に製造することができないという問題点があった。また、別個に製造した逆止弁を中空本体用シートに正確に位置決めすることが難しく、製造に手間が掛かるという問題点もあった。また、逆止弁は、気密に熱溶着されて中空本体に取り付けられるが、熱溶着部の剥離による空気漏れが発生する可能性があるという問題点があった。さらに、逆止弁は、先部が中空本体から突出するため、中空体の美観を損なうという問題点があった。また、逆止弁は、後部が中空本体内に配置され、中空本体内の気圧により空気流通部が塞がれ、空気漏れを少なくしているが、細長く形成されているので、中空本体内の気圧を受けて空気の漏れを防ぐ効果があまり期待できないという問題点があった。
【0004】
本願発明は、上記問題点に鑑み案出したものであって、中空本体を構成する中空本体用シートと、逆止弁を構成する逆止弁用シートを1枚の成形シートで形成し、別の製造装置による逆止弁の製造工程を不要とすると共に、空気漏れを少なくし、逆止弁が突出して美観を損なうということがない中空体及びその中空体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願請求項1に係る中空体は、上記目的を達成するため、下記の構成を備えている。
(イ)熱融着性を有する合成樹脂製の一対の成形シートとからなること。
(ロ)成形シートは、中空本体用シートと、中空本体用シートの接続部に接続された逆止弁用シートとで構成されていること。
(ハ)逆止弁用シートは、幅狭の首部シートと、首部シートの後端に設けられた幅広の拡大部シートとからなり、首部シートの先端が中空本体用シートの接続部に接続されていること。
(二)一対の逆止弁用シートは、重ねられ、接続部を除く周縁が気密に熱溶着されて、幅狭の首部と幅広の拡大部とが形成され、逆止弁を構成していること。
(ホ)逆止弁は、少なくとも一方の拡大部シートに空気流通用の切れ目が形成されていること。
(ヘ)一対の中空本体用シートは、前記接続部を介して折り返され、前記逆止弁を内側に挟み込むようにして重ねられ、接続部を除く周縁が気密に熱溶着され、中空本体を構成していること。
(ト)中空本体用シートと逆止弁用シートとの接続部は、中空本体の周縁に位置し、空気注入口を構成すること。
【0006】
本願請求項2に係る中空体の製造方法は、上記目的を達成するため、下記の工程を備えている。
(イ)熱融着性を有する合成樹脂製の一対の成形シートの一方に空気流通用の切れ目を形成する第1の工程。
(ロ)前記一対の成形シートを重ね合わせる第2の工程。
(ハ)前記一対の成形シートを気密に熱溶着して、先端が開放された幅狭の首部と、首部の後端に連接され、前記切れ目が配置された幅広の拡大部とからなる逆止弁を形成する第3の工程。
(ニ)逆止弁を内側に挟み込むようにして、逆止弁の首部の先端を中心にして一対の成形シートを折り返して重ね合わせる第4の工程。
(ホ)逆止弁の首部の先端を周縁に位置させ、首部の先端を除き且つ逆止弁を囲むようにして前記一対の成形シートの周縁を気密に熱溶着して中空本体を成形する第5の工程。
【発明の効果】
【0007】
本願発明に係る中空体及び中空体の製造方法は、中空本体用シートと、中空本体用シートの接続部に接続された逆止弁用シートとからなる一対の成形シートの一方の逆止弁用シートに空気流通用切れ目を形成し、一対の成形シートを重ね合わせ、一対の逆止弁用シートの周縁を気密に熱溶着して逆止弁を形成した後、一対の中空本体用シートを折り返して逆止弁を一対の中空本体用シートの内側に配置せしめ、一対の中空本体用シートの周縁を気密に熱溶着して中空本体を形成することによって製造されるので、逆止弁を別の製造工程(装置)で製造する必要がなく、安価に製造することができるという効果がある。
【0008】
本願発明に係る中空体及び中空体の製造方法は、別個に製造した逆止弁を中空本体用シートに位置決めする必要がないので、製造に手間が掛からないという効果がある。また、逆止弁と中空本体が最初から接続されている形の一枚の成形シートによって形成されているので、逆止弁を気密に熱溶着して中空本体に取り付ける煩わしさがないという効果がある。さらにまた、熱溶着部の剥離により逆止弁と中空本体との間に隙間が発生し、空気漏れの原因となるといったことがないという効果がある。
【0009】
本願発明に係る中空体及び本願発明に係る中空体の製造方法により製造される中空体は、逆止弁と中空本体の接続部が中空体の周縁に位置し、接続部が中空体の空気注入口となるので、従来のように、逆止弁の先部が中空本体から突出することがなく、中空体の美観を損なうことがないという効果がある。本願発明に係る中空体及び本願発明に係る中空体の製造方法により製造される中空体は、ストロー等の空気注入管を空気注入口に差し込み、空気注入管から空気を注入すると、空気が逆止弁の首部、拡大部を経て切れ目から中空本体内に流れ込み、中空本体を膨張させる。空気注入管を空気注入口から引き抜くと、中空本体内の気圧により逆止弁が圧迫される。切れ目が設けられた拡大部が首部より面積が大きいため受ける内圧が大きく、中空本体内の空気が切れ目から漏れることが極めて少ないという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本願発明に係る中空体及び中空体の製造方法の一つの実施の形態を図1乃至図8に基づいて説明する。図1は、空気を注入した中空体の全体斜視図である。図2は、図1の断面図である。図3は、空気を注入する前の断面図である。図4は、第1の製造工程を説明する説明図である。図5は、第2、第3の製造工程を説明する説明図である。図6は、第4、第5の製造工程を説明する説明図である。図7は、第6の製造工程を説明する説明図である。図8は、中空体の展開図である。図9は、溶着方法を説明する斜視図である。図10は、従来の溶着方法を説明する斜視図である。
【0011】
図1に示すように、中空体1は、熱融着性を有する合成樹脂製の一対の成形シート11,21とからなる。図8に示すように、成形シート11,21は、中空本体用シート13,23と、中空本体用シート13,23の接続部14,24に接続された逆止弁用シート15,25とで構成されている。逆止弁用シート15,25は、幅狭の首部シート16,26と、首部シート16,26の後端33,33に設けられた幅広の拡大部シート17,27とからなり、首部シート16,26の先端32,32が中空本体用シート13,23の接続部14,24に接続されている。
【0012】
一対の逆止弁用シート15,25は、重ねられ、接続部14,24を除く周縁が気密に熱溶着されて、図1に示すように、幅狭の首部31と幅広の拡大部35とが形成され、逆止弁3を構成している。逆止弁3は、少なくとも一方の拡大部シート17に空気流通用の切れ目12が形成されている。一対の中空本体用シート13,23は、前記接続部14,24を介して折り返され、前記逆止弁3を内側に挟み込むようにして重ねられ、接続部14,24を除く周縁が気密に熱溶着され、中空本体2を構成している。中空本体用シート13,23と逆止弁用シート15,25との接続部14,24は、中空本体2の周縁に位置し、空気注入口38を構成する。
【0013】
中空体1の製造方法は、下記の工程を備えている。図4に示すように、第1の工程は、熱融着性を有する合成樹脂製の一対の成形シート11,21の一方11に空気流通用の切れ目12を形成する。図5に示すように、第2の工程は、前記一対の成形シート11,21を重ね合わせる。第3の工程は、前記一対の成形シート11,21を気密に熱溶着して、先端32が開放された幅狭の首部31と、首部31の後端33に連接され、前記切れ目12が配置された幅広の拡大部35とからなる逆止弁3を形成する。図6に示すように、第4の工程は、逆止弁3を内側に挟み込むようにして、逆止弁3の首部31の先端32を中心にして一対の成形シート11,21を折り返して重ね合わせる。第5の工程は、逆止弁3の首部31の先端32を周縁に位置させ、首部31の先端32を除き且つ逆止弁3を囲むようにして前記一対の成形シート11,21の周縁を気密に熱溶着して中空本体2を成形する。
【0014】
中空体1及び中空体1の製造方法は、中空本体用シート13,23と、中空本体用シート13,23の接続部14,24に接続された逆止弁用シート15,25とからなる一対の成形シート11,21の一方の逆止弁用シート15に空気流通用切れ目12を形成し、一対の成形シート11,21を重ね合わせ、一対の逆止弁用シート15,25の周縁を気密に熱溶着して逆止弁3を形成した後、一対の中空本体用シート13,23を折り返して逆止弁3を一対の中空本体用シート13,23の内側に配置せしめ、一対の中空本体用シート13,23の周縁を気密に熱溶着して中空本体2を形成することによって製造されるので、逆止弁3を別の製造工程(装置)で製造する必要がなく、安価に製造することができる。
【0015】
中空体1及び中空体1の製造方法は、別個に製造した逆止弁を中空本体用シートに位置決めする必要がないので、製造に手間が掛からない。また、逆止弁3と中空本体2が最初から接続されている形の一枚の成形シート11,21によって形成されているので、逆止弁を気密に熱溶着して中空本体に取り付ける煩わしさがない。さらにまた、熱溶着部の剥離により逆止弁と中空本体との間に隙間が発生し、空気漏れの原因となるといったことがない。
【0016】
中空体1は、逆止弁3と中空本体2の接続部14,24が中空体1の周縁に位置し、接続部14,24が中空体1の空気注入口38となるので、従来のように、逆止弁の先部が中空本体から突出することがなく、中空体の美観を損なうことがない。中空体1は、接続部14,24が中空体1の周縁に位置するので空気注入口38を見つけにくい構造となっており、成形シート11,21を有色不透明にすると、逆止弁3が見えなくなるので、どのように空気を注入したかわからない空気注入膨張体とすることができる。図3に示すように、中空体1は、ストロー等の空気注入管5を空気注入口38に差し込み、空気注入管5から空気を注入すると、空気が逆止弁3の首部31、拡大部35を経て切れ目12から中空本体2内に流れ込み、中空本体2を膨張させる。図2に示すように、空気注入管5を空気注入口38から引き抜くと、中空本体2内の気圧により逆止弁3が圧迫される。切れ目12が設けられた拡大部35が首部31より面積が大きいため受ける内圧が大きく、中空本体2内の空気が切れ目12から漏れることが極めて少ない。
【0017】
さらに中空体について図1乃至図9に基づいて詳細に説明する。図1に示すように、中空体1は、中空本体2と逆止弁3とからなる。中空体1は、以下のようにして製造される。図4に示すように、第1の工程において、一対の成形シート11,21の内の一方の成形シート11に空気流通用の切れ目12を形成する。成形シート11,21は、加熱による溶融によって他のシートと接着することができる熱融着性を有するものであって、塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂素材によって形成されている。なお、本実施の形態では、成形シート11,21は、透過性を有する素材で形成されている。切れ目12の位置は、逆止弁3の位置となるように、成形シート11の下方に形成される。
【0018】
図5(a)に示すように、第2の工程において、前記一対の成形シート11,21を重ね合わせる。第3の工程において、前記一対の成形シート11,21を気密に熱溶着して、先端32が開放された幅狭の首部31と、首部31の後端33に連接され、前記切れ目12が配置された幅広の拡大部35とからなる逆止弁3を形成する。熱溶着は、ヒートシール、高周波ウェルダー等によって気密に行われる。
【0019】
即ち、幅狭の首部31は、一対の溶着部36,37によって形成される。溶着部36の後端と溶着部37の後端は、溶着部39の両端に連接されている。溶着部39によって、首部31より幅の広い略矩形状の気嚢部となる拡大部35が形成される。前記切れ目12は、拡大部35に位置しており、溶着部36,37の延伸方向に対して略45度の斜めにカットされている。この拡大部35と首部31によって中空本体2の逆止弁3を形成する。拡大部35の形状は、略矩形状に形成されているが、特にこの形状に限定されるものではない。
【0020】
溶着部36の先端と溶着部37の先端の間は開放されており、この開放された部分(以下、開放部)38が首部31の先端32の開放部であって、空気注入口となる。溶着部36の先端には、溶着部36と略直角の溶着部40が連接されている。同様に溶着部37の先端には、溶着部37と略直角の溶着部41が連接されている。溶着部40,41は、成形シート11,21の短手方向両端まで延びている。溶着部40,36,39,37,41は、熱溶着により薄くなって切り離し易くなっており、図5(b)示すように、切り離すことによって、上半部分(逆止弁3が接続されている部分)45と下半部分(逆止弁3が接続されていない部分)46に分離することができる。本願発明において、溶着部40,41は、必ずしも必要ではなく、鋏等の切断手段で溶着部40,41に相当する部分を切り離しても構わない。
【0021】
図6(a)に示すように、第4の工程において、上半部分(逆止弁3が接続されている部分)45において、逆止弁3を内側に挟み込むようにして、逆止弁3の首部31の先端(空気注入口)32を中心にして、一対の成形シート11,21を折り返して重ね合わせる。逆止弁3の首部31の先端32が周縁に位置することになる。
【0022】
図6(b)に示すように、第5の工程において、首部31の先端32を除き且つ逆止弁3を囲むようにして前記一対の成形シート11,21の周縁を気密に熱溶着して中空本体2を成形する。中空本体2は、溶着部50によって、子ぐま等の所定形状の意匠の輪郭を描くように気密に溶着されて形成されているが、特にこの形状に限定されないことは言うまでもない。当該溶着部50は、前記逆止弁3を囲むようにして、溶着部50の一端は、前記溶着部36の先端に連接され、溶着部50の他端は前記溶着部37の先端に連接されている。図7に示すように、溶着部50は、熱溶着により薄くなって切り離し易くなっており、第6の工程おいて、溶着部50を切り離すことによって、中空体1を成形シート11,12から分離することができる。
【0023】
上記製造工程によって製造された中空体1は、上記したように、熱融着性を有する合成樹脂製の一対の成形シート11,21とからなっている。中空体1を展開すると、図8に示すように、成形シート11は、中空本体用シート13と、中空本体用シート13の接続部14に接続された逆止弁用シート15とで構成されている。逆止弁用シート15は、幅狭の首部シート16と、首部シート16の後端33に設けられた、首部シート16より幅が広い幅広の拡大部シート17とからなる。逆止弁用シート15は、首部シート16の先端32が中空本体用シート13の接続部14に接続されている。
【0024】
成形シート21は、中空本体用シート23と、中空本体用シート23の接続部24に接続された逆止弁用シート25とで構成されている。逆止弁用シート25は、幅狭の首部シート26と、首部シート26の後端33に設けられた、首部シート26より幅が広い幅広の拡大部シート27とからなる。逆止弁用シート25は、首部シート26の先端32が中空本体用シート23の接続部24に接続されている。
【0025】
一対の逆止弁用シート15,25は、重ねられ、接続部14,24を除く周縁が気密に熱溶着されて、図5(b)に示すように、首部シート16,26によって幅狭の首部31が形成され、拡大部シート17,27によって幅広の拡大部35が形成される。逆止弁3は、この首部31と拡大部35によって構成されている。なお、逆止弁3は、少なくとも一方の拡大部シート17に空気流通用の切れ目12が形成されている。
【0026】
一対の中空本体用シート13,23は、前記接続部14,24を介して折り返され、前記逆止弁3を内側に挟み込むようにして重ねられ、接続部14,24を除く周縁が気密に熱溶着され、中空本体2を構成している。中空本体用シート13,23と逆止弁用シート15,25との接続部14,24は、中空本体2の周縁に位置し、空気注入口38を構成することになる。なお、接続部14,24は、首部31の先端32と同じ部分である。
【0027】
中空体1は、図3に示すように、逆止弁3の空気注入口38からストロー等の空気注入管5を差し込み、空気注入管5を介して空気を注入する。注入された空気は、逆止弁3の首部31、拡大部35を経て、切れ目12から中空本体2内に流入する。図2に示すように、中空本体2は、膨張する。空気注入管5を空気注入口38から引き抜くと、中空本体2内の内圧により、逆止弁3が圧潰し、拡大部シート17と27及び首部シート16と26が互いに圧接して、切れ目12から中空本体2内の空気が逆流して漏れることがない。特に、切れ目12は、逆止弁3の拡大部35に設けられており、拡大部35が中空本体2の内圧を強く受けるので、完全に塞がれ、ここからの空気の流出を防ぐことになる。
【0028】
従来の熱溶着は、図10に示すように、型刃56が略直角(成形シートと略平行)の溶着型55によって行われている。当該溶着型55の型刃56を成形シート11,21に押し付けると、型刃56が成形シート11,21を溶融しながら溶融塊を型刃56の両側に押し出して溶着玉57を形成する場合がある。この溶着玉57は、溶着部の内側であって、成形シート11と成形シート21の間に形成される。この溶着玉57の存在により、成形シート11と成形シート21の間に隙間58が生じる。
【0029】
この従来の溶着型55を用いて、逆止弁3を形成した場合、前述したように、拡大部シート17と拡大部シート27の間及び首部シート16と首部シート26の間に溶着玉57が形成されて隙間58が発生することがある。上記したように、逆止弁3は、中空本体2の内圧により圧潰し、拡大部シート17と27及び首部シート16と26が互いに圧接するものであるが、上記したように溶着玉57が存在すると、内圧が加わっても拡大部シート17と拡大部シート27及び首部シート16と首部シート26が圧接せずに、隙間58を塞ぐことができないので空気が漏れる可能性がある。
【0030】
本実施の形態で説明してきた熱溶着は、図9に示すように、型刃52が略45度(成形シートに対して略45度)傾斜している溶着型51によって行っている。当該溶着型51の型刃52を成形シート11,21に押し付けると、型刃52が成形シート11,21を溶融しながら溶融塊を型刃52の外側(傾斜面と反対側)に押し出して溶着玉53を形成するが、溶着部の内側(傾斜面側)であって、成形シート11と成形シート21の間には溶着玉を形成しない。従って溶着型51による溶着では、成形シート11と成形シート21の間に隙間が生じない。
【0031】
この溶着型51を用いて、逆止弁3を形成しているので、前述したように、拡大部シート17と拡大部シート27の間及び首部シート16と首部シート26の間に溶着玉が形成されず隙間が発生しない。逆止弁3は、中空本体2の内圧により圧潰し、拡大部シート17と27及び首部シート16と26が互いに圧接するものであり、上記したように溶着玉が存在しないので、内圧が加わることにより拡大部シート17と拡大部シート27及び首部シート16と首部シート26が圧接し、空気の漏れる可能性が極めて少ない構造となっている。
【0032】
上記実施の形態では、中空本体2は、動物玩具形状に形成されているが、この形状に限定されものではなく、人形玩具形状、自動車玩具形状、飛行機玩具形状等の種々の形状に変更可能である。また、中空体1は、成形シート11,21が透過性を有する素材で形成されているため、中空本体2内の逆止弁3を視ることができる。逆止弁3は、拡大部35が略矩形状に形成されているが、円形状、星形状、動物状等、様々な形にすることができる。さらに中空本体2及び逆止弁3は、これらの外観形状に合わせて印刷しておくことも可能である。なお、逆止弁3に、企業の宣伝・広告を印刷しておけば、中空体1をプレミアム商品として利用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本願発明に係る中空体は、人形玩具、動物玩具、風船、飛行船、凧等の玩具として利用するのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】空気を注入した中空体の全体斜視図である。
【図2】図1の断面図である。
【図3】空気を注入する前の断面図である。
【図4】第1の製造工程を説明する説明図である。
【図5】第2、第3の製造工程を説明する説明図である。
【図6】第4、第5の製造工程を説明する説明図である。
【図7】第6の製造工程を説明する説明図である。
【図8】第6の製造工程を説明する説明図である。
【図9】溶着方法を説明する斜視図である。
【図10】従来の溶着方法を説明する斜視図である。
【符号の説明】
【0035】
1 中空体
2 中空本体
3 逆止弁
5 空気注入管
11 成形シート
12 切れ目
13 中空本体用シート
14 接続部
15 逆止弁用シート
16 首部シート
17 拡大部シート
21 成形シート
23 中空本体用シート
24 接続部
25 逆止弁用シート
26 首部シート
27 拡大部シート
31 首部
32 先端
33 後端
35 拡大部
36 溶着部
37 溶着部
38 開放部(空気注入口)
39 溶着部
40 溶着部
41 溶着部
45 上半部分
46 下半部分
50 溶着部
51 溶着型
52 型刃
53 溶着玉
55 溶着型
56 型刃
57 溶着玉
58 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の要件を備えたことを特徴とする中空体。
(イ)熱融着性を有する合成樹脂製の一対の成形シートとからなること。
(ロ)成形シートは、中空本体用シートと、中空本体用シートの接続部に接続された逆止弁用シートとで構成されていること。
(ハ)逆止弁用シートは、幅狭の首部シートと、首部シートの後端に設けられた幅広の拡大部シートとからなり、首部シートの先端が中空本体用シートの接続部に接続されていること。
(二)一対の逆止弁用シートは、重ねられ、接続部を除く周縁が気密に熱溶着されて、幅狭の首部と幅広の拡大部とが形成され、逆止弁を構成していること。
(ホ)逆止弁は、少なくとも一方の拡大部シートに空気流通用の切れ目が形成されていること。
(ヘ)一対の中空本体用シートは、前記接続部を介して折り返され、前記逆止弁を内側に挟み込むようにして重ねられ、接続部を除く周縁が気密に熱溶着され、中空本体を構成していること。
(ト)中空本体用シートと逆止弁用シートとの接続部は、中空本体の周縁に位置し、空気注入口を構成すること。
【請求項2】
下記の工程からなることを特徴とする中空体の製造方法。
(イ)熱融着性を有する合成樹脂製の一対の成形シートの一方に空気流通用の切れ目を形成する第1の工程。
(ロ)前記一対の成形シートを重ね合わせる第2の工程。
(ハ)前記一対の成形シートを気密に熱溶着して、先端が開放された幅狭の首部と、首部の後端に連接され、前記切れ目が配置された幅広の拡大部とからなる逆止弁を形成する第3の工程。
(ニ)逆止弁を内側に挟み込むようにして、逆止弁の首部の先端を中心にして一対の成形シートを折り返して重ね合わせる第4の工程。
(ホ)逆止弁の首部の先端を周縁に位置させ、首部の先端を除き且つ逆止弁を囲むようにして前記一対の成形シートの周縁を気密に熱溶着して中空本体を成形する第5の工程。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2008−95886(P2008−95886A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−279930(P2006−279930)
【出願日】平成18年10月13日(2006.10.13)
【出願人】(391039977)株式会社ダイシン (1)
【Fターム(参考)】