説明

中空成形品を成形する金型装置および中空成形品の成形方法

【課題】中空成形品での成形工程の位置決めを必要とする3箇所以上の複数の位置に、正確にスライド型を位置決めすることが可能となる中空成形品を成形する金型装置および中空成形品の成形方法を提供する。
【解決手段】中空成形品を成形する金型装置において、第一の金型および/または第二の金型であるスライド型を駆動すると共に該スライド型の位置を制御する駆動制御機構を有し、
該駆動制御機構によって前記中空成形品の成形での該スライド型の位置決めを必要とする3箇所以上の複数の位置で、該スライド型の位置決めを可能に構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空成形品を成形する金型装置および中空成形品の成形方法に関し、特に、成膜面を含む中空成形品を成形する金型装置および中空成形品の成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来において、ダイスライドインジェクションにより、中空成形品を成形することはよく知られている。
例えば、特許文献1では、一対の雄型と雌型から各分割体を成形(一次成形)し、一方の金型をスライドさせて各分割体を対向させた後、溶融樹脂で互いに溶着(2次成形)して中空成形品を成形する方法が提案されている。
この方法は、図6(a)に示すように、単一のスプール112を有する固定型102と、該固定型102に沿って2つの位置に移動されるスライド型103と、該スライド型103に型合わせされる可動型104が備えられている。
上記スライド型103には、中空成形品を成形するための雄型115と雌型116が設けられると共に、上記した2つの位置において固定型102のスプルー112に連続するサブスプルー113、114が設けられている。
また、可動型104には、上記スライド型103の雄型115と雌型116に対向する雌型117と雄型118が設けられている。
このような金型により、つぎのようにして中空成形品が成形される。
まず、これら互いに対向する雄型115、118と雌型116、117との間に形成される一対のキャビティ119、120内に溶融樹脂を注入して、各分割体131、132を形成する。
次いで、一方の金型103を、図6(a)に示されるスライド用シリンダ109が最も伸長した下方位置から、図6(b)に示されるスライド用シリンダ109が最も収縮した上方位置までスライドさせて、スライド型103と可動型104を型合わせする。
このようにして、上記の各分割体131、132を互いに対向させて突き合わせた後、その突き合わせ面131a、132aの周囲に溶融樹脂を射出して各分割体131、132を互いに溶着することにより、中空成形品が成形される。
【0003】
また、特許文献2には、中空成形品である燈体を成形するに際し、蒸着工程を含むダイスライドインジェクションを用いる成形方法が提案されている。
この方法は、図7に示すように、可動金型201と、真空蒸着装置205が設けられた固定金型202とが備えられている。ここではこのような金型を用いて、つぎのような中空成形品である燈体203の成形工程が組まれている。
すなわち、燈体203およびレンズ部204を成形する一次の工程と、燈体203およびレンズ部204を突き合わせて一体化する二次の射出工程との間に、燈体203の内側に反射面214を真空蒸着により形成する蒸着工程が設けられる。
これにより、反射面214のある燈体203が成形される。
【特許文献1】特公平02−38377号公報
【特許文献2】特開2004−338328号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ダイスライドインジェクションにおいては、各工程間を移動するスライド型を、中空成形品を作製するための各工程において位置決めすることが必要となる。
上記従来例である特許文献1のものでは、スライド用シリンダ109が最も伸長した下方位置と、シリンダが最も収縮した上方位置との2つの位置で、スライド型が位置決めされるように構成されている。
すなわち、互いに対向する雄型と雌型とによるキャビティ内に溶融樹脂を注入して各分割体を形成する工程においては、スライド用シリンダ109が最も伸長した下方位置で位置決めされるように構成されている。
また、スライド型と可動型が型合わせされ、各分割体がその突き合わせ面で溶着され、中空成形品が成形される工程においては、スライド用シリンダ109が最も収縮した上方位置で位置決めされるように構成されている。
【0005】
しかしながら、例えば、特許文献2のように、一次の工程と二次の工程との間に、蒸着工程が設けられ、位置決めが3箇所必要となる場合には、特許文献1のように2つの位置でだけしか位置決めすることができない手段は適用することはできない。
したがって、このような場合にも、所定位置に正確にスライド型を位置決めすることが可能となる機構が求められていた。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑み、成形工程での位置決めを必要とする3箇所以上の複数の位置で、正確にスライド型を位置決めすることが可能となる中空成形品を成形する金型装置および中空成形品の成形方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題を解決するため、つぎのように構成した中空成形品を成形する金型装置および中空成形品の成形方法を提供する。
本発明においては、成形品の分割体を成形する為の成形部を有する第一の金型と、同じく成形品の分割体を成形する為の成形部を有する第二の金型により、前記各々の成形部で成形品の分割体を成形した後、
前記第一の金型および/または第二の金型をスライドさせて前記分割体の突き合せ面を突き合せて、前記突き合わせ面に樹脂を注入することによって中空成形品を成形する金型装置を、つぎのように構成したことを特徴としている。
すなわち、本発明の金型装置は、前記スライドさせる前記第一の金型および/または第二の金型であるスライド型を駆動すると共に該スライド型の位置を制御する駆動制御機構を有している。
そして、前記駆動制御機構は、前記中空成形品の成形での該スライド型の位置決めを必要とする3箇所以上の複数の位置で、該スライド型の位置決めが可能に構成されていることを特徴としている。
また、本発明の金型装置は、前記駆動制御機構は、前記スライド型に固定されたスライダーと、該スライダー移動させるボールネジと、ボールネジを回転駆動するサーボモータと、サーボモータの駆動を制御する手段と、を備えていることを特徴としている。
また、本発明の金型装置は、前記第一の金型は固定型であり、前記第二の金型は型開きの際前記固定型から離れる方向に型開閉装置によって駆動する可動型上に設けられているスライド型であることを特徴としている。
また、本発明の金型装置は、前記第一の金型は前記可動型であり、前記第二の金型は前記固定型上に設けられているスライド型であることを特徴としている。
また、本発明の金型装置は、前記固定型および/または可動型において、スライド型が設けられている固定型および/または可動型との対向面に、前記スライド型の位置決めとなるガイドポストが形成されていることを特徴とする。
また、本発明の金型装置は、前記サーボモータの駆動を制御する手段は、前記可動型を駆動する型開閉装置からの信号によって前記サーボモータへの給電を制御する給電制御装置を備えることを特徴とする。
また、本発明の金型装置は、前記サーボモータの駆動を制御する手段は、前記スライド型に取り付けられたスケールと、該スライド型が設けられている前記固定型および/または可動型に取り付けられたエンコーダを備えていることを特徴としている。
そして、前記スライド型に取り付けられたスケールの位置を前記エンコーダにより検出し、該検出による信号を前記サーボモータにフィードバックすることにより、前記スライド型の位置決めをすることを特徴としている。
また、本発明の金型装置は、前記エンコーダは、断熱材を介して、前記スライド型が設けられている前記固定型および/または可動型に取り付けられていることを特徴としている。
また、本発明においては、成形品の分割体を成形する為の成形部を有する第一の金型と、同じく成形品の分割体を成形する為の成形部を有する第二の金型により、前記各々の成形部で成形品の分割体を成形した後、
前記第一の金型および/または第二の金型をスライドさせて前記分割体の突き合せ面を突き合せて、前記突き合わせ面に樹脂を注入することによって中空成形品を成形する成形方法を、つぎのように構成したことを特徴としている。
すなわち、前記スライドさせる前記第一の金型および/または第二の金型であるスライド型を駆動すると共に該スライド型の位置を制御する駆動制御機構によって、
前記中空成形品の成形での該スライド型の位置決めを必要とする3箇所以上の複数の位置で、前記スライド型の位置決めを行い、中空成形品を成形することを特徴としている。
また、本発明の中空成形品の成形方法においては、前記位置決めを必要とする位置として、第1の位置決め位置〜第3の位置決め位置を備え、この順に位置決めが行われるように設定したことを特徴としている。
すなわち、前記第1の位置決め位置で、一次成形を行い、前記第2の位置決め位置で、成膜を行い、前記第3の位置決め位置で、二次成形を行い、中空成形品を成形することを特徴としている。
また、本発明の中空成形品の成形方法においては、前記第一の金型は固定型であり、前記第二の金型は型開きの際前記固定型から離れる方向に駆動する可動型上に設けられているスライド型であることを特徴としている。
また、本発明の中空成形品の成形方法においては、前記第一の金型は前記可動型であり、前記第二の金型は前記固定型上に設けられているスライド型であることを特徴としている。
また、本発明の中空成形品の成形方法においては、前記スライド型に取り付けられたスケールの位置を、前記スライド型が設けられている前記固定型および/または可動型に取り付けられたエンコーダによって検出する。
そして、このエンコーダにより出力された信号を前記サーボモータにフィードバックするようにしたことを特徴としている。
また、本発明の中空成形品の成形方法においては、前記スライド型が設けられている固定型および/または可動型との対向面および前記スライド型にはガイドポストおよびガイド穴が形成され、
前記駆動制御機構は、サーボモータを有し、予め設定された送り量をサーボモータを回転させることによって、前記一次成形、成膜および二次成形における前記スライド型の位置決めを行ない、
型閉時、ガイドポストがガイド穴によって案内される前に前記サーボモータへの給電を停止して前記スライド型の位置の補正を行ない、中空成形品を成形することを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、成形工程での位置決めを必要とする3箇所以上の複数の位置で、正確にスライド型を位置決めすることが可能となる中空成形品を成形する金型装置および中空成形品の成形方法を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明を実施するための最良の形態を、以下の実施例により説明する。
【実施例】
【0010】
以下、本発明の実施例における中空成形品の成形用金型を用いた中空成形品の成形方法について説明する。
図1に、本実施例における中空成形品成形用の金型による一次成形工程を説明する図を示す。
図2に、本実施例における中空成形品成形用の金型による成膜工程を説明する図を示す。図3に、本実施例における中空成形品成形用の金型による二次成形工程を説明する図を示す。
これらの各図において、(a)は、固定型を取り外した状態の金型左側面から見た概略図であり、(b)は、金型の上方から見た概略図である。各図左側(成膜装置4側)から金型を操作するように構成されている。
【0011】
図1において、1は第一の金型であり型開きの時、その位置が固定されて動かない固定型である。
2は型開きの時前記固定型から離れる方向に可動する可動型である。
3は成形品の分割体を形成する為の成形部を備えた第二の金型であり、後述するスライド機構により、固定型1に対してスライドするスライド型である。
可動型2は、本実施例においては第二の金型であるスライド型3とともに型開閉機構(不図示)によって、固定型に対して右方向(紙面下方向)へ型開するようになっている。
固定型1には、成膜装置4、固定型本体成形部5、固定型レンズ成形部6が、直線状に等間隔に設けられている。
さらに、これらは射出成形機に連結され、固定型本体成形部5及び固定型レンズ成形部6に樹脂を供給するスプルー50が設けられている。
【0012】
本実施例では、可動型2には、スライド型3が設けられており、このスライド型3をスライドさせるための駆動機構が構成されている。
スライド型3は、固定型1の固定型本体成形部5に対応するスライド型本体成形部10と、固定型レンズ成形部6に対応するスライド型レンズ成形部11からなる。
スライド型レンズ成形部11は、固定型と一対になってレンズ部を成形するキャビティ49を有している。
また、スライド型本体成形部10は、固定型と一対になって本体部を成形するキャビティ41を有している。
本実施例においては、可動型2にスライド型を設けるように構成したが、固定型1の方にスライド型を設けるようにしてもよい。
その場合は、第一の金型は可動型であり、第二の金型は固定型上に設けられているスライド型となる。また両方にスライド型を設けるようにしてもよい。
前記駆動機構は、サーボモータ9の回転によってボールネジ7が回転する。
ボールネジの回転量はエンコーダ(不図示)によって検出されその信号は制御装置(不図示)へ入力される。
ボールネジ7にはスライダー8が螺合しておりスライダー8はスライド型3に固定されている。
従って、ボールネジ7の回転によりスライド型3を移動することができる。
本実施例では、ボールネジの回転で送り量を測定している。予め制御装置に入力しておいた送り量と、エンコーダによって検出されたボールネジの回転量との偏差によってスライド型の位置決めを行なう。
しかし、ボールネジは熱による影響を受け易く、熱によりその長さが変化してしまう。
そのため、予め設定しておいた送り量に対応する位置と、実際位置決めされる位置が常に変化してしまう。
成形時、固定型の成形部とスライド型の成形部の位置が少しでもずれた状態で位置決めされると射出成形品のバリ、肉厚不良等の成形不良の要因となってしまう。
また、蒸着時においても位置ずれが起こると蒸着位置がずれ、不良の要因となってしまう。これを防ぐために本実施例においては、送り量の補正を行なっている。この補正方法について次に述べる。
【0013】
スライド型および固定型のパーティングライン上には、スライド型位置決めのためのガイドポスト52およびガイド穴51(図5)を備えている。
ガイド穴51は挿入口がテーパ状になっており多少位置がずれてガイドポスト52が挿入されてもスムーズにガイド穴51に嵌合されるようになっている。
完全に挿入された時、ガイド穴51のテーパ部と嵌合されるようにガイドポスト52にもテーパ部が設けられている。
本実施例においては、スライド型にガイド穴51が4箇所あけられ、位置決めするべき固定型の対向面にガイド穴51に対向する位置にガイドポスト52が10箇所設けられている。
スライド型にガイドポストを取り付け、固定型にガイド穴を設けるようにしてもよい。
ガイドポスト52がガイド穴51によって案内される前に、型開閉装置から給電制御装置に信号が送られる。
その信号によって給電制御装置はサーボモータへの給電を停止するための信号を出力し、サーボモータのロックが解かれ、スライド型は可動自在となった状態でガイドポスト52がガイド穴51へ挿入される。
型開閉装置から給電制御装置に信号を送信するタイミングは、型閉の衝撃によるスライド型の振動を極力押えるため、ガイドポストの先端部がガイド穴に挿入される直前であったほうがよい。
このガイドポストによる位置決めによって固定型とスライド型の位置が正確に位置決めされる。サーボモータへの給電が停止されているため、この位置が予め制御装置に入力しておいた送り量に対応する位置として補正されることになる。
型開時には、型開閉装置により型開終了時に給電制御装置に信号が送られ、その信号によって給電制御装置はサーボモータへの給電を開始するための信号を出力しサーボモータへの給電が開始される。
本実施例においては型開終了時に給電制御装置に信号を送るように設定されているが、型開開始時に信号を送るように設定しても良い。
【0014】
スライド型3の位置決めは、スライド型に取り付けたスケール13の位置を、可動型2に断熱板(不図示)を介して取り付けたリニアエンコーダ12によって検出することによって行なってもよい。
すなわち、このリニアエンコーダ12に検出された結果に基づいて検出信号が出力され、この信号をサーボモータ9へフィードバックすることによって行う。
また、リニアエンコーダ12と可動型2の間には熱対策として断熱板を設けてもよく、これにより熱による影響を防ぐことができる。
【0015】
つぎに、中空成形品の成形方法について説明する。
まず、一次成形工程について説明する。
図1に示すように、サーボモータ9を駆動し、ボールネジ7によって一次成形工程の成形部である金型中央部にスライド型3を位置決めする。
この位置決めは、前述したように予め制御装置に入力しておいた送り量と、エンコーダによって検出されたボールネジの回転量との偏差によって第1の位置決め位置である一次成形工程のポジションに位置決めされる。
そして、型開閉装置により可動型2を固定型1側に移動させて固定型1にスライド型3を型合わせする。
この時、ガイドポスト52がガイド穴51へ挿入される直前に、型開閉装置から給電制御装置に信号が送られる。
その信号によって給電制御装置はサーボモータへの給電を停止するための信号を出力し、サーボモータのロックが解かれ、スライド型は可動自在となった状態でガイドポスト52がガイド穴51へ挿入される。
これによって固定型とスライド型の位置が正確に位置決めされる。サーボモータへの給電が停止されているため、この位置が予め制御装置に入力しておいた送り量に対応する位置として補正される。
このようにして高精度に型合わせされた後、型締めする。
【0016】
以上が図1に示された状態であり、固定型1とスライド型3の間にはキャビティ41、49が形成される。
この状態において、固定型1に取り付けられた射出成形機から溶融樹脂を射出する。
溶融樹脂は固定型のスプルー50を通ってキャビティ41、49に充填される。このようにして、成形品の分割体である本体部31、レンズ部32がそれぞれ形成される(図4参照)。
型開閉装置により可動型2を紙面下方向へ移動させることによってスライド型3と固定型1を離して型開きする。
これにより本体部31はスライド型3に残り、固定型1より離型される。一方、レンズ部32の方は固定型1内に残り、スライド型3より離型される。
型開終了時に給電制御装置に信号が送られ、その信号によって給電制御装置はサーボモータへの給電を開始するための信号を出力しサーボモータへの給電が開始される。
【0017】
つぎに、成膜工程について説明する。
図2に示されるように、サーボモータ9を駆動し、ボールネジ7によって成膜工程の成形部である金型手前部(紙面左側)にスライド型3を位置決めする。
この位置決めは、予め制御装置に入力しておいた送り量と、エンコーダによって検出されたボールネジの回転量との偏差によって第2の位置決め位置である成膜工程のポジションに高精度に位置決めされるように構成されている。
そして、型開閉装置により可動型2を固定型1側に移動させて成膜装置内にスライド型本体成形部を設置する。
この時、ガイドポスト52がガイド穴51へ挿入される直前に、型開閉装置から給電制御装置に信号が送られる。
その信号によって給電制御装置はサーボモータへの給電を停止するための信号を出力し、サーボモータのロックが解かれ、スライド型は可動自在となった状態でガイドポスト52がガイド穴51へ挿入される。
これによって固定型とスライド型の位置が正確に位置決めされる。サーボモータへの給電が停止されているため、この位置が予め制御装置に入力しておいた送り量に対応する位置として補正される。
以上が図2に示された状態であり、スライド型3に残った本体部31が成膜装置内にセットされる。
本実施例において、成膜装置は通常使われている成膜装置を使用しているため詳細な説明は省略するが、概ねつぎのようにして成膜される。
成膜に際しては、成膜装置内を真空ポンプ(不図示)によって真空にし、ターゲットの表面に高エネルギー粒子を衝突させターゲットの原子を放出させ、本体部31の内面に膜をつけるスパッタリング法を用いて本体部内面に成膜する。
型開閉装置により可動型2を紙面下方向へ移動させることによってスライド型3と成膜装置を離して型開きする。
型開終了時に給電制御装置に信号が送られ、その信号によって給電制御装置はサーボモータへの給電を開始するための信号を出力しサーボモータへの給電が開始される。
【0018】
つぎに、二次成形工程について説明する。
図3に示されているように、サーボモータ9を駆動し、ボールネジ7によって2次成形工程の成形部である金型奥部(紙面右側)にスライド型3を位置決めする。
この位置決めは、予め制御装置に入力しておいた送り量と、エンコーダによって検出されたボールネジの回転量との偏差によって第3の位置決め位置である2次成形工程のポジションに高精度に位置決めされるように構成されている。
そして、型開閉装置により可動型2を固定型1側に移動させて固定型1にスライド型3を型合わせする。
この時、ガイドポスト52がガイド穴51へ挿入される直前に、型開閉装置から給電制御装置に信号が送られる。
その信号によって給電制御装置はサーボモータへの給電を停止するための信号を出力し、サーボモータのロックが解かれ、スライド型は可動自在となった状態でガイドポスト52がガイド穴51へ挿入される。
これによって固定型とスライド型の位置が正確に位置決めされる。サーボモータへの給電が停止されているため、この位置が予め制御装置に入力しておいた送り量に対応する位置として補正される。
このように高精度に型合わせされた後、型締めする。
【0019】
以上が図3に示された状態であり、スライド型3上の成膜された本体部31と、固定型1に残されたレンズ部32の突合せ面35、36が互いに突き合わされる。
この突き合わせ部の周囲には、溝33による空間が形成される。この空間に射出成形機から射出された溶融樹脂がスプルーを介して充填される。
そして、その空間部の樹脂によって、本体部、レンズ部が互いに溶着される。
空間部に充填された樹脂の冷却固化後、再び型開閉装置によって固定型1と可動型2の型開きをすることによって、スライド型3と固定型1が離間される。
そして、本体部31、レンズ部32が突き合わせ溶着され、一つの中空成形品として完成される。
【0020】
型開閉装置により可動型2を紙面下方向へ移動させることによってスライド型3と固定型1を離して型開きする。
これにより中空成形品が取り出される。
図4に、以上のようにして完成された中空成形品の一例を示す。
図4において、本実施例の中空成形品は本体部31とレンズ部32とから構成されている。
このようにして、中空成形品を取り外した後、図1に示されているように、型開終了時に給電制御装置に信号が送られ、その信号によって給電制御装置はサーボモータへの給電を開始するための信号を出力しサーボモータへの給電が開始される。
再びサーボモータ9を駆動し、ボールネジ7によって一次成形工程のポジションである金型中央部にスライド型3を位置決めし、再び次の成形品の成形工程へと移行する。
【0021】
本実施例によれば、サーボモータとボールネジを使用することによって、スピードの制御ができることから、低振動、低騒音のもとで、スムーズな動き出しや停止が可能となる。
また、ガイドポストを用いて型合せする際、サーボモータの給電を停止することで予め設定された送り量に対応する位置を補正することができるため、一連の成形工程を繰り返すことにより、中空成形品を連続的に成形することができる。しかも、その成形工程の自動化も容易であり、中空成形品の量産化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施例における中空成形品成形用の金型による一次成形工程を説明する図。
【図2】本発明の実施例における中空成形品成形用の金型による成膜工程を説明する図。
【図3】本発明の実施例における中空成形品成形用の金型による二次成形工程を説明する図。
【図4】本発明の成形用金型を用いて成形された成形品の一例を示す図。
【図5】ガイドポストを説明する図。
【図6】従来例である特許文献1におけるダイスライドインジェクションでの中空成形品の成形方法を説明する図。
【図7】従来例である特許文献2におけるダイスライドインジェクションでの中空成形品の成形方法を説明する図。
【符号の説明】
【0023】
1:固定型
2:可動型
3:スライド型
4:成膜装置
5:固定型本体成形部
6:固定型レンズ成形部
7:ボールネジ
8:スライダー
9:サーボモータ
10:スライド型本体成形部
11:スライド型レンズ成形部
12:リニアエンコーダ
13:スケール
31:本体部
32:レンズ部
41:キャビティ
49:キャビティ
50:スプルー
51:ガイド穴
52:ガイドポスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形品の分割体を成形する為の成形部を有する第一の金型と、同じく成形品の分割体を成形する為の成形部を有する第二の金型により、前記各々の成形部で成形品の分割体を成形した後、
前記第一の金型および/または第二の金型をスライドさせて前記分割体の突き合せ面を突き合せて、前記突き合わせ面に樹脂を注入することによって中空成形品を成形する金型装置であって、
前記スライドさせる前記第一の金型および/または第二の金型であるスライド型を駆動すると共に該スライド型の位置を制御する駆動制御機構を有し、
前記駆動制御機構は、前記中空成形品の成形での該スライド型の位置決めを必要とする3箇所以上の複数の位置で、該スライド型の位置決めが可能に構成されていることを特徴とする金型装置。
【請求項2】
前記駆動制御機構は、前記スライド型に固定されたスライダーと、該スライダー移動させるボールネジと、該ボールネジを回転駆動するサーボモータと、該サーボモータの駆動を制御する手段と、を備えていることを特徴とする請求項1に記載の金型装置。
【請求項3】
前記第一の金型は固定型であり、前記第二の金型は型開きの際前記固定型から離れる方向に型開閉装置によって駆動する可動型上に設けられているスライド型であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の金型装置。
【請求項4】
前記第一の金型は前記可動型であり、前記第二の金型は前記固定型上に設けられているスライド型であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の金型装置。
【請求項5】
前記固定型および/または可動型において、スライド型が設けられている固定型および/または可動型との対向面に、
前記スライド型の位置決めとなるガイドポストが形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の金型装置。
【請求項6】
前記サーボモータの駆動を制御する手段は、
前記可動型を駆動する型開閉装置からの信号によって前記サーボモータへの給電を制御する給電制御装置を備えることを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項に記載の金型装置。
【請求項7】
前記サーボモータの駆動を制御する手段は、前記スライド型に取り付けられたスケールと、該スライド型が設けられている前記固定型および/または可動型に取り付けられたエンコーダを備え、
前記スライド型に取り付けられたスケールの位置を前記エンコーダにより検出し、該検出による信号を前記サーボモータにフィードバックすることにより、
前記スライド型の位置決めをすることを特徴とする請求項3乃至6のいずれか1項に記載の金型装置。
【請求項8】
前記エンコーダは、断熱材を介して、前記スライド型が設けられている前記固定 型および/または可動型に取り付けられていることを特徴とする請求項7に記載の金型装置。
【請求項9】
成形品の分割体を成形する為の成形部を有する第一の金型と、同じく成形品の分割体を成形する為の成形部を有する第二の金型により、前記各々の成形部で成形品の分割体を成形した後、
前記第一の金型および/または第二の金型をスライドさせて前記分割体の突き合せ面を突き合せて、前記突き合わせ面に樹脂を注入することによって中空成形品を成形する成形方法であって、
前記スライドさせる前記第一の金型および/または第二の金型であるスライド型を駆動すると共に該スライド型の位置を制御する駆動制御機構によって、
前記中空成形品の成形での該スライド型の位置決めを必要とする3箇所以上の複数の位置で、前記スライド型の位置決めを行い、
中空成形品を成形することを特徴とする中空成形品の成形方法。
【請求項10】
前記位置決めを必要とする位置として、第1の位置決め位置〜第3の位置決め位置を備え、この順に位置決めが行われるように設定され、
前記第1の位置決め位置で、一次成形を行い、
前記第2の位置決め位置で、成膜を行い、
前記第3の位置決め位置で、二次成形を行い、
中空成形品を成形することを特徴とする請求項9に記載の中空成形品の成形方法。
【請求項11】
前記第一の金型は固定型であり、前記第二の金型は型開きの際前記固定型から離れる方向に駆動する可動型上に設けられているスライド型であることを特徴とする請求項8または請求項10に記載の中空成形品の成形方法。
【請求項12】
前記第一の金型は前記可動型であり、前記第二の金型は前記固定型上に設けられているスライド型であることを特徴とする請求項9または請求項10に記載の中空成形品の成形方法。
【請求項13】
前記スライド型に取り付けられたスケールの位置を、前記スライド型が設けられている前記固定型および/または可動型に取り付けられたエンコーダによって検出し、
前記エンコーダからの信号を、前記サーボモータにフィードバックすることによって前記スライド型を位置決めし、中空成形品を成形することを特徴とする請求項11または請求項12に記載の中空成形品の成形方法。
【請求項14】
前記スライド型が設けられている固定型および/または可動型との対向面および前記スライド型にはガイドポストおよびガイド穴が形成され、
前記駆動制御機構は、サーボモータを有し、予め設定された送り量をサーボモータを回転させることによって、前記一次成形、成膜および二次成形における前記スライド型の位置決めを行ない、
型閉時、ガイドポストがガイド穴によって案内される前に前記サーボモータへの給電を停止して前記スライド型の位置の補正を行ない、中空成形品を成形することを特徴とする請求項11または請求項12に記載の中空成形品の成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−112118(P2007−112118A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−238455(P2006−238455)
【出願日】平成18年9月4日(2006.9.4)
【出願人】(303017727)イガリモールド株式会社 (4)
【Fターム(参考)】