説明

中継器

【課題】端末機器の障害信号が受信機に送信されている場合であっても、端末機器の火災信号を受信機に送信することができる、中継器を提供すること。
【解決手段】有線式中継器40は、感知器10等から受信した信号を受信機50に移報するための信号出力部44と、信号出力部44を制御する制御部46とを備え、制御部46は、火災信号を受信した場合に、当該火災信号の受信機50に対する移報を、信号出力部44を第1移報状態にすることにより行い、障害信号を受信した場合に、当該障害信号の受信機50に対する移報を、信号出力部44を第2移報状態にすることにより行い、当該有線式中継器40が障害信号の受信機50に対する移報を行っている場合に、火災信号を受信した場合には、信号出力部44を第2移報状態から通常状態に復旧させた後、当該火災信号の受信機50に対する移報を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中継器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、様々な種類の端末機器を用いて火災発生を報知する防災システムが利用されている。図10は、従来の防災システム101の概略図である。図10に示すように、この防災システム101は、建物の各階層において、火災が検知された場合に火災を報知する火災信号を送信する有線式感知器110及び無線式感知器120と、押しボタンが操作された場合に火災信号を送信する発信機130と、無線式感知器120から受信した火災信号を受信機150に中継する中継器140と、有線式感知器110、発信機130、又は中継器140から信号線102を介して火災信号を受信する受信機150とを備えて構成されている。また、この信号線102は、A線102a、C線102b、及びL線102cを含んで構成されている。A線102aは、発信機130と中継器140とを相互に接続し、中継器140と受信機150とを相互に接続している。また、A線102aは、建物の各階層毎に設けられた発信機130に渡り接続されている。一方、C線102b及びL線102cは、発信機130と有線式感知器110とを相互に接続し、有線式感知器110と中継器140とを相互に接続し、及び中継器140と受信機150とを相互に接続している。なお、A線102aとC線102bとの間、及びL線102cとC線102bとの間には、受信機150から所定の電圧が印加されている。また、L線102c及びC線102bの終端には図示しない終端器(例えば抵抗器)が接続されており、受信機は、電気的に終端器の接続の有無を判断することで(例えば、前述のL線102cから終端器を介してC線102bに流れる電流が所定範囲にあるか否かを判断することで)、L線102c及びC線102bが断線しているか否かの確認を行っている。
【0003】
このような防災システム101の構成においては、端末機器の火災信号を受信機150に送信する方法としては、例えば、端末機器が、当該端末機器と接続された信号線102を短絡させることにより、当該端末機器の火災信号を受信機150に送信する。具体的には、発信機130の火災信号の場合には、当該発信機130が、当該発信機130と接続されたA線102a、C線102b、及びL線102cを短絡させることによりA線102a及びL線102cからC線102bに向けて電流が流れるようにし、その電流を受信機150に検知させることにより、当該発信機130の火災信号を受信機150に送信する。また、有線式感知器110の火災信号の場合には、当該有線式感知器110が、当該有線感知器と接続されたC線102b及びL線102cを短絡させることにより、当該有線式感知器110の火災信号を受信機150に送信する。また、無線式感知器120の火災信号の場合には、中継器140が、無線式感知器120から火災信号を受信した後に、当該中継器140と接続されたC線102b及びL線102cを短絡させることによりL線102cからC線102bに向けて電流が流れるようにし、その電流を受信機150に検知させることにより、当該有線式感知器110の火災信号を受信機150に送信する。
【0004】
また、上記端末機器に障害が生じた場合には、当該端末機器から障害を報知する障害信号が送信される。このような端末機器の障害信号が受信機150に送信される方法としては、例えば、当該端末機器が、接続された信号線102を終端器と電気的に切り離し、受信機に終端器がないと認識させることで、当該端末機器の障害信号が受信機150に送信される。具体的には、無線式感知器120の障害信号の場合には、中継器140が、無線式感知器120から障害信号を受信した後に、当該中継器140と接続されたC線102b及びL線102cの一部をリレー等により切り離すことによって、当該C線102b及びL線102cと接続された終端器を電気的に切り離し、当該無線式感知器120の障害信号を受信機150に送信する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平08−185590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来の防止システムにおいては、端末機器の火災信号を受信機150に送信することに関して改善の余地があった。例えば、中継器140が無線式感知器120から障害信号を受信している場合において、当該中継器140よりも下流側(受信機150から離れた位置)に配置された有線式感知器110が火災を感知した場合には、当該有線式感知器110が、当該有線式感知器110と接続されたC線102b及びL線102cを短絡させるが、中継器140と接続されたC線102b及びL線102cが断線状態であるので、当該無線式感知器120の障害信号が受信機150に継続して送信される。したがって、この場合には有線式感知器110の火災信号が受信機150に送信されないので、このことが火災の早期発見を阻害する要因となる可能性があった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、端末機器の障害信号が受信機に送信されている場合であっても、端末機器の火災信号を受信機に送信することができる、中継器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の中継器は、無線端末から受信した信号を受信機に中継する中継器であって、前記無線端末から受信した信号を前記受信機に移報するための移報手段であって、通常状態、第1移報状態、及び当該第1移報状態とは併存できない第2移報状態に切り替え可能な移報手段と、前記移報手段を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、火災を報知する火災信号を前記無線端末から受信した場合に、当該受信した火災信号の前記受信機に対する移報を、前記移報手段を前記第1移報状態にすることにより行い、前記無線端末の障害を報知する障害信号を当該無線端末から受信した場合に、当該受信した障害信号の前記受信機に対する移報を、前記移報手段を前記第2移報状態にすることにより行い、当該中継器が前記障害信号の前記受信機に対する移報を行っている場合において、前記火災信号を前記無線端末から受信した場合には、前記移報手段を前記第2移報状態から前記通常状態に復旧させた後、当該受信した火災信号の前記受信機に対する移報を行う。
【0009】
また、請求項2に記載の中継器は、請求項1に記載の中継器において、前記制御手段は、当該中継器が前記火災信号の移報を前記受信機に対して行っている場合において、火災復旧を報知する火災復旧信号を前記無線端末から受信し、かつ前記障害信号を前記無線端末から受信している場合には、前記移報手段を前記第1移報状態から前記通常状態に復旧させた後、当該受信した障害信号の前記受信機に対する移報を行う。
【0010】
また、請求項3に記載の中継器は、請求項1又は2に記載の中継器において、前記無線端末から受信した信号を受信機に中継する中継器であって、当該中継器と前記受信機とを相互に接続する信号線の接続を、前記通常状態、前記第1移報状態、及び前記第2移報状態に切り替えることにより、前記無線端末から受信した信号を前記受信機に出力するための信号出力手段と、前記信号出力手段を制御する制御手段とを備え、前記通常状態は、前記信号線が導通可能な状態であり、前記第1移報状態は、前記信号線が短絡した状態であり、前記第2移報状態は、前記信号線が断線した状態である。
【0011】
また、請求項4に記載の中継器は、請求項1から3のいずれか一項に記載の中継器において、前記無線端末を一意に識別する識別情報を含む前記火災信号を、前記無線端末から受信した場合に、当該火災信号から前記識別情報を取得する識別情報取得手段と、前記識別情報と、前記火災信号の移報方法を特定するための移報方法情報と、を相互に関連付けて格納する移報方法情報格納手段とを備え、前記識別情報取得手段にて取得した識別情報に基づいて、前記移報方法情報格納手段から移報方法情報を取得し、当該取得した移報方法情報に基づいて、前記火災信号の前記受信機に対する移報を行う。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の中継器によれば、制御手段は、当該中継器が障害信号の受信機に対する移報を行っている場合において、火災信号を無線端末から受信した場合には、移報手段を第2移報状態から通常状態に復旧させた後、当該受信した火災信号の受信機に対する移報を行うので、無線端末の障害に左右されることなく、当該受信した火災信号の受信機に対する移報を行うことができ、火災信号の受信機に対する移報の確実性を高めることができる。
【0013】
また、請求項2に記載の中継器によれば、制御手段は、当該中継器が火災信号の移報を受信機に対して行っている場合において、火災復旧信号を無線端末から受信し、かつ障害信号を無線端末から受信している場合には、移報手段を第1移報状態から通常状態に復旧させた後、当該受信した障害信号の受信機に対する移報を行うので、火災信号の移報が行われており、かつ障害信号を受信している場合であって、火災信号の移報が停止した場合でも、この障害信号の受信機に対する移報を行うことができ、障害信号の受信機に対する移報の確実性を高めることができる。
【0014】
また、請求項3に記載の中継器によれば、当該中継器は、当該中継器と受信機とを相互に接続する信号線の接続を、通常状態、第1移報状態、及び第2移報状態に切り替えることにより、無線端末から受信した信号を受信機に出力するための信号出力手段と、信号出力手段を制御する制御手段とを備え、通常状態は、信号線が導通可能な状態であり、第1移報状態は、信号線が短絡した状態であり、第2移報状態は、信号線が断線した状態であるので、無線端末に障害が生じている場合であって、無線端末が発報した場合でも、信号出力手段によって、信号線を断線させた状態から当該信号線を断線させる前の状態に復旧させた後に、信号線を短絡させることにより、当該受信した火災信号を受信機に出力することができ、当該受信した火災信号の受信機に対する移報の確実性を高めることができる。さらに、無線端末の発報が停止した場合において、無線端末に障害が生じている場合でも、信号出力手段によって、信号線を短絡させた状態から当該信号線を短絡させる前の状態に復旧させた後に、信号線を断線させることにより、当該受信している障害信号を受信機に出力することができ、当該受信した障害信号の受信機に対する移報の確実性を高めることができる。
【0015】
また、請求項4に記載の中継器によれば、当該中継器は、識別情報取得手段にて取得した識別情報に基づいて、移報方法情報格納手段から移報方法情報を取得し、当該取得した移報方法情報に基づいて、火災信号の受信機に対する移報を行うので、無線端末に応じた火災信号の移報を行うことができ、火災の位置を容易に特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】火災報知システムの構成を示す概略図である。
【図2】受信機と有線式中継器との信号線の接続状況を示す概要図である。
【図3】発信機の電気的構成を概念的に示すブロック図である。
【図4】無線式中継器の電気的構成を概念的に示すブロック図である。
【図5】有線式中継器の電気的構成を概念的に示すブロック図である。
【図6】信号出力部の各端子の接続状況を示す概略図である。
【図7】移報方法テーブルに格納される情報の内容を例示した表である。
【図8】感知器、発信機、無線式中継器、及び有線式中継器が実行する中継処理の流れを示したフローチャートである。
【図9】中継処理のフローチャートである。
【図10】従来の防災システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る中継器の実施の形態を詳細に説明する。最初に、この中継器を備えて構成された火災報知システムの全体構成を説明し、次に、この中継器の構成を説明し、火災報知システムを構成する各機器が実行する中継処理の流れについて説明し、この中継器の中継処理について説明し、最後に本実施の形態に対する変形例について説明する。ただし、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。なお、実施の形態に係る中継器の設置対象や適用対象は任意であるが、以下では、オフィスビルの屋内に設置された中継器であって、無線信号によって中継を行う無線式中継器と、有線信号によって中継を行う有線式中継器とのうち、有線式中継器に適用した場合を例として説明を行う。
【0018】
〔実施の形態〕
(構成−火災報知システム)
図1は火災報知システムの構成を示す概略図である。図1に示すように、火災報知システム1は、感知器10、発信機20、無線式中継器30、有線式中継器40、及び受信機50を備えて構成されている。感知器10、発信機20、無線式中継器30、及び有線式中継器40は、建物の各階における天井や壁に配置されている。このうち、感知器10と発信機20は、それぞれ法定の設置間隔を満たすように、各階毎に1台又は複数台が配置されている。無線式中継器30は、各階において、中継対象となる感知器10及び発信機20と、有線式中継器40との相互間に配置されている。有線式中継器40は、各階に1台配置されている。受信機50は、建物に1台配置されており、例えば建物の管理人室に設置されている。また、これら有線式中継器40及び受信機50は、信号線2及び電源線3により接続されている。
【0019】
ここで、感知器10又は発信機20は、火災を報知する火災信号、火災からの復旧を報知する火災復旧信号、当該感知器10の障害を報知する障害信号、又は当該感知器10の障害からの復旧を報知する障害復旧信号を送信する無線端末である。無線式中継器30は、感知器10又は発信機20から火災信号、火災復旧信号、障害信号、又は障害復旧信号を受信し、当該受信した火災信号、火災復旧信号、障害信号、又は障害復旧信号を有線式中継器40に中継するものである。有線式中継器40は、感知器10、発信機20及び/又は無線式中継器30から送信された火災信号、火災復旧信号、障害信号、又は障害復旧信号を受信し、当該受信した火災信号又は障害信号を信号線2を介して受信機50に出力する中継器である。受信機50は、有線式中継器40から信号線2を介して入力された情報に基づき、警報表示や警報音の出力等の各種処理を実行したり、電源線3を介して有線式中継器40への電力供給を行うものである。
【0020】
次に、信号線2を介した各端末機器の接続形態について説明する。本実施の形態において、火災報知システム1は、いわゆるP型1級又はP型2級の火災報知システムとして構成されている。図2は、信号線2の接続状況を示す概要図である。この図2に示すように、信号線2は、A線2a、C線2b、及びL線2cを含んで構成されており、これらA線2a、C線2b、及びL線2cは、有線式中継器40及び受信機50を相互に接続する。また、A線2aは、建物の各階毎に設けられた有線式中継器40に渡り接続されている(図示省略)。A線2aとC線2b(以下「A−C線」2dという)は、有線式中継器40にて受信された発信機20の火災信号を受信機50に向けて送信する線である。また、L線2cとC線2b(以下「L−C線」2eという)は、有線式中継器40にて受信された感知器10の火災信号又は障害信号を送信する線であり、発信機20の火災信号又は障害信号を送信する線でもある。各系統(ここでは、建物の各階毎)のL−C線2eにおける終端には、図示しない終端抵抗が設けられている。
【0021】
(構成−火災報知システム−感知器)
次に、感知器10の構成について説明する。感知器10は、センサ部、無線送信部、及び電源部を備えて構成されている(図示省略)。センサ部は、温度や煙濃度等を検知するための検知手段である。無線送信部は、火災信号、火災復旧信号、障害信号、又は障害復旧信号を送信する無線送信手段である。この無線送信部は、例えば、図示しない火災判断部によって、センサ部における温度や煙濃度の検知結果をもとに、この検知結果が閾値よりも高いと判断された場合に、無線送信部は火災信号を送信する。また、当該火災信号が送信された後、図示しない火災判断部によって、検知結果が閾値よりも低いと判断された場合に、無線送信部は火災復旧信号を送信する。また、この無線送信部は、例えば、図示しない障害判断部によって、公知の電圧測定手段(図示省略)を用いて測定した当該感知器10の電源部の出力電圧の結果をもとに、この出力電圧の結果が閾値よりも低いと判断された場合に、無線送信部は障害信号を送信する。また、当該障害信号が送信された後、図示しない障害判断部によって、出力電圧の結果が閾値よりも高いと判断された場合に、無線送信部は障害復旧信号を送信する(後述する発信機20の無線送信部23についても同様)。また、この無線送信部は、例えば、感知器10が備える公知の記憶手段(図示省略)に予め記憶された情報であって、当該感知器10を一意に識別する識別情報を火災信号又は障害信号に含めて送信する(後述する発信機20の無線送信部23についても同様)。ここで、公知の記憶手段に記憶される識別情報としては、例えば感知器10のアドレス番号又はシリアル番号を用いることができる(後述する発信機20の識別情報についても同様)。電源部は、感知器10の各部に電力を供給する電力供給手段であり、例えば公知の乾電池や充電池を備えて構成される(後述する発信機20の電源部25、及び無線式中継器30の電源部34についても同様)。
【0022】
(構成−火災報知システム−発信機)
次に、発信機20の構成について説明する。図3は発信機20の電気的構成を示したブロック図である。図3に示すように、発信機20は、押しボタン部21、テストスイッチ部22、無線送信部23、表示部24、電源部25、制御部26、及び記憶部27を備えて構成されている。なお、電源部25の構成については上述の感知器10における電源部と同様であるので、特記する部分を除き説明を省略する。
【0023】
押しボタン部21は、ユーザによる火災信号の送信の有無を受け付ける操作手段である。また、テストスイッチ部22は、ユーザによる当該発信機20の機能試験を行うための試験信号の送信の有無を受け付ける試験操作手段である。
【0024】
無線送信部23は、火災信号、火災復旧信号、障害信号、障害復旧信号、又は試験信号を送信する無線送信手段であり、例えばユーザによって押しボタン部21が押し下げられた場合に火災信号を送信し、ユーザによって押しボタン部21が押し下げられる前の状態に復旧された場合に火災復旧信号を送信する。
【0025】
表示部24は、発信機20に関する情報を表示するための表示手段であり、例えば公知のLEDランプ、蛍光ランプ等を備えて構成される。
【0026】
制御部26は、発信機20の各部を制御する制御手段であり、具体的には、CPU、当該CPU上で解釈実行される各種のプログラム(OSなどの基本制御プログラムや、OS上で起動され特定機能を実現するアプリケーションプログラムを含む)、及びプログラムや各種のデータを格納するためのRAMの如き内部メモリを備えて構成される(後述する無線式中継器30の制御部35、及び有線式中継器40の制御部46についても同様)。
【0027】
記憶部27は、当該発信機20を一意に識別する識別情報等を記憶する記憶手段である。この記憶部27は、書き換え可能な記録媒体を用いて構成され、例えばフラッシュメモリ等の不揮発性記録媒体を用いることができる(後述する無線式中継器30の記憶部36、有線式中継器40の記憶部47についても同様)。
【0028】
(構成−火災報知システム−無線式中継器)
次に、無線式中継器30の構成について説明する。図4は無線式中継器30の電気的構成を示したブロック図である。図4に示すように、無線式中継器30は、操作部31、表示部32、無線通信部33、電源部34、制御部35、及び記憶部36を備えている。なお、電源部34の構成については上述の感知器10における電源部と同様であり、制御部35の構成については上述の発信機20における制御部26と同様であるので、特記する部分を除き説明を省略する。
【0029】
操作部31は、無線式中継器30に対する操作入力を受け付ける操作手段であり、例えばスイッチやタッチパネル等の公知の操作手段を用いて構成される(後述する有線式中継器40の操作部41についても同様)。
【0030】
表示部32は、無線式中継器40に関する情報を表示するための表示手段であり、例えば公知の7セグメントディスプレイや液晶ディスプレイ等を備えて構成される(後述する有線式中継器40の表示部42についても同様)。
【0031】
無線通信部33は、火災信号、火災復旧信号、障害信号、又は障害復旧信号の受信及び送信を行う無線通信手段である。この無線通信部33は、例えば無線信号の受信回路及び送信回路(いずれも図示せず)を備え、受信回路を介して感知器10又は発信機20から送信された火災信号、火災復旧信号、障害信号、又は障害復旧信号の受信を行い、送信回路を介して有線式中継器40への火災信号、火災復旧信号、障害信号、又は障害復旧信号の送信を行う。なお、無線通信部33の火災信号、火災復旧信号、障害信号、又は障害復旧信号の受信方法は任意であり、例えば、電源部34の電力消費を抑えるために、無線通信部33は火災信号、火災復旧信号、障害信号、又は障害復旧信号を間欠受信してもよい。
【0032】
記憶部36は、制御部35による制御に必要なプログラム及び各種のデータを記憶する記憶手段である(後述する有線式中継器40の記憶部47についても同様)。
【0033】
(構成−火災報知システム−有線式中継器)
次に、有線式中継器40の構成について説明する。図5は、有線式中継器40の電気的構成を概念的に示すブロック図である。図5に示すように、有線式中継器40は、操作部41、表示部42、無線受信部43、信号出力部44、電源回路部45、制御部46、及び記憶部47を備えている。なお、操作部41及び表示部42の構成については上述の無線式中継器30における操作部31及び表示部32と同様であるので、特記する部分を除き説明を省略する。
【0034】
無線受信部43は、火災信号、火災復旧信号、障害信号、又は障害復旧信号の受信を行う無線受信手段である。この無線受信部43は、火災信号、火災復旧信号、障害信号、又は障害復旧信号の受信回路(図示せず)を備え、受信回路を介して感知器10、発信機20及び/又は無線式中継器30から送信された火災信号、火災復旧信号、障害信号、又は障害復旧信号の受信を行う。
【0035】
信号出力部44は、感知器10、発信機20及び/又は無線式中継器30から受信した火災信号又は障害信号を受信機50に出力する信号出力手段である。この信号出力部44は、A−C出力部44a及びL−C出力部44bを備えて構成されている。A−C出力部44aは、A−C線2dを介して、発信機20及び/又は無線式中継器30から受信した火災信号を受信機50に出力するA−C出力手段である。L−C出力部44bは、L−C線2eを介して、感知器10及び/又は無線式中継器30から受信した火災信号又は障害信号を受信機50に出力したり、発信機20及び/又は無線式中継器30から受信した火災信号又は障害信号を受信機50に出力するL−C出力手段である。
【0036】
図6は、信号出力部44の各端子の接続状況を示す概略図である。図6に示すように、信号出力部44は、A線出力端子2a1、A線入力端子2a2、C線出力端子2b1、C線入力端子2b2、L線出力端子2c1、及びL線入力端子2c2を備えて構成されている。これらA線出力端子2a1、C線出力端子2b1、及びL線出力端子2c1は、火災信号又は障害信号を受信機50に出力するためのものであり、受信機50側とは逆側(有線式中継器40を挟んで受信機50側と反対に位置する側)のA線2a、C線2b、及びL線2cと各々接続されている。また、これらA線入力端子2a2、C線入力端子2b2、及びL線入力端子2c2は、火災信号又は障害信号を受信機50に入力するためのものであり、受信機50側のA線2a、C線2b、及びL線2cと各々接続されている。
【0037】
L線出力端子2c1とL線入力端子2c2とを接続するL線2cには、当該L線2cの接続切替のためのリレー2fが設けられている。また、L線出力端子2c1とL線入力端子2c2とを接続するL線2cとC線出力端子2b1とC線入力端子2b2とを接続するC線2bとの間には、これらL線2c及びC線2bの接続切替のためのリレー2gが設けられている。このリレー2gは、リレー2fよりも受信機50側に配置されている。また、A線出力端子2a1とA線入力端子2a2とを接続するA線2aとL線出力端子2c1とL線入力端子2c2とを接続するL線2cとの間には、これらA線2a及びC線2bの接続切替のためのリレー2hが設けられている。
【0038】
ここで、この信号出力部44が火災信号又は障害信号を受信機50に対して出力する方法としては、例えば、信号出力部44が、有線式中継器40と接続された信号線2を導通可能にさせたり、短絡させたり、あるいは断線させることにより、感知器10又は発信機20の火災信号又は障害信号を受信機50に送信する。具体的には、信号出力部44が通常動作を行う場合には、L−C出力部44bは、L−C線2eが導通可能になるように、L線2cをリレー2fにより接続させる。また、信号出力部44が感知器10の火災信号を受信機50に対して出力する場合には、L−C出力部44bは、L−C線2eが短絡するように、当該L−C線2eをリレー2gにより接続させる。また、信号出力部44が発信機20の火災信号を受信機50に対して出力する場合には、A−C出力部44aは、A−C線2dが短絡するように、当該A−C線2dをリレー2hにより接続させると共に、L−C出力部44bは、L−C線2eが短絡するように、当該L−C線2eを公知のリレー2gにより接続させる。また、信号出力部44が感知器10又は発信機20の障害信号を受信機50に対して出力する場合には、L−C出力部44bは、L−C線2eが断線するように、L線2cをリレー2fにより切り離す。なお、実際には、火災信号を出力する前に障害信号を出力しているために、障害信号の出力を解除してから火災信号を出力する必要がある等、より複雑な制御が行われる場合があるが、この点については後述する。また、以下、「断線」とは、A線2a、C線2b、又はL線2cのいずれかを、有線式中継器40の信号出力部44の内部において、受信機50に近い側と遠い側に切り離すことを意味する。このことにより、終端器を受信機50から電気的に切り離し、障害信号を受信機50に送信する。また、断線を「復旧」させるとは、受信機50に近い側と遠い側に切り離したA線2a、C線2b、又はL線2cを、切り離す前の接続状態に戻すことを意味する。このことにより、終端器を受信機50に電気的に接続し、障害信号を受信機50に送信する。
【0039】
電源回路部45は、電源線3を介して受信機50から供給された電力を有線式中継器40の各部に供給する(なお、電源回路部45から有線式中継器40の各部に対する電力供給線の図示は省略する)。
【0040】
制御部46は、有線式中継器40の各部を制御する制御手段である。この制御部46は、機能概念的に識別情報取得部46aを備えている。識別情報取得部46aは、有線式中継器40が感知器10又は発信機20から火災信号又は障害信号を受信した場合に、当該火災信号又は障害信号から前記識別情報を取得する識別情報取得手段である。なお、この制御部46によって実行される処理の詳細については後述する。
【0041】
記憶部47は、制御部46が信号出力部44によって、火災信号又は障害信号を受信機50に送信する際に参照するための移報方法テーブル47aを備えている。図7は移報方法テーブル47aに格納される情報の内容を例示した表である。図7に示すように、移報方法テーブル47aには、テーブル項目「無線端末ID」、「種別」、及び「移報方法」に対応する情報が相互に関連付けて格納される。項目「無線端末ID」に対応して格納される情報は、感知器10又は発信機20を一意に識別する識別情報であり、例えば感知器10又は発信機20のアドレス番号(図7では「0101」、「0102」、「0103」等)が格納される。項目「種別」に対応して格納される情報は、機器の種別を特定する種別情報であり、例えば「感知器」、「発信機」等が格納される。項目「移報方法」に対応して格納される情報は、感知器10又は発信機20の火災信号の移報方法を特定するための移報方法情報であり、例えば「L−C線短絡」、「L−C線、及びA−C線短絡」等が格納される。
【0042】
(構成−火災報知システム−受信機)
次に、受信機50の構成について説明する。この受信機50としては、例えば公知の防災受信機を用いることができる。
【0043】
(火災報知システムを構成する各機器が実行する中継処理について)
次に、火災報知システム1を構成する各機器が実行する中継処理について説明する。図1に示すように、建物の3階に感知器10、発信機20、無線式中継器30、及び有線式中継器40が設置されている場合を例に挙げて説明する。図8は、感知器10、発信機20、無線式中継器30、及び有線式中継器40が実行する中継処理の流れを示したフローチャートである(なお、無線式中継器30の動作の図示は省略する)。なお、以下の説明では、「ステップ」を「S」と略記する。また、有線式中継器40のステップを「SA」、感知器10のステップを「SB」、及び発信機20のステップを「SC」と略記する。また、有線式中継器40の動作中に発生したイベントは、制御部46によって記憶部47に記録されるものとする。
【0044】
図8に示すように、発信機20に障害が生じたことによって、当該発信機20の無線送信部23が障害信号を送信した場合(SC1)、有線式中継器40の無線受信部43は、発信機20及び/又は無線式中継器30から障害信号を受信し(SA1)、信号出力部44は、当該受信された障害信号の移報を受信機50に対して行う(SA2)。なお、発信機20の無線送信部23は、当該発信機20の障害が復旧するまで障害信号を継続してまたは断続的に送信する(以下、後述するSA5の火災信号についても同様とする)。
【0045】
次に、感知器10のセンサ部にて火災が検知されたことによって、当該感知器10の無線送信部が火災信号を送信した場合(SB1)、有線式中継器40の無線受信部43は、感知器10及び/又は無線式中継器30から火災信号を受信する(SA3)。次いで、有線式中継器40の信号出力部44が、SA2の障害信号の移報を行っている状態から当該障害信号の移報を行う前の状態に復旧させた場合、すなわち障害信号の移報を停止した場合(SA4)、当該有線式中継器40の信号出力部44は、SA3にて受信した火災信号の移報を受信機50に対して行う(SA5)。
【0046】
続いて、感知器10のセンサ部にて火災が検知されなくなったことによって、当該感知器10の無線送信部が火災復旧信号を送信した場合(SB2)、有線式中継器40の無線受信部43は、感知器10及び/又は無線式中継器30から火災復旧信号を受信する(SA6)。これにより、有線式中継器40の信号出力部44が、SA5の火災信号の移報を行っている状態から当該火災信号の移報を行う前の状態に復旧させる、すなわち火災信号の移報を停止する(SA7)。ここで、SA1の処理以降、有線式中継器40の無線受信部43は、発信機20から障害信号を継続して受信している。そのため、SA7の処理後、当該有線式中継器40の信号出力部44は、障害信号の移報を受信機50に対して行う(SA8)。
【0047】
次いで、発信機20の障害が復旧したことによって、当該発信機20の無線送信部23が障害復旧信号を送信した場合(SC2)、有線式中継器40の無線受信部43は、発信機20及び/又は無線式中継器30から障害復旧信号を受信し(SA9)、信号出力部44は、SA8の障害信号の移報を停止する(SA10)。
【0048】
(中継処理)
次に、有線式中継器40によって実行される中継処理を、図8に示すSA1〜SA10の中継処理の流れと関連づけて説明する。図9は中継処理のフローチャートである。この中継処理の実行タイミングは任意で、例えば有線式中継器40の操作部41を介して中継処理を実行する旨の操作入力がされた場合に実行される。また、有線式中継器40と受信機50とを接続する信号線2は導通可能な状態であるものとする。なお、この信号線2が導通可能な状態は、特許請求の範囲における通常状態に対応するものである。
【0049】
図9に示すように、最初に、制御部46は無線受信部43が感知器10又は発信機20から障害信号を受信したか否かを判定する(SD1)。その結果、無線受信部43が発信機20から障害信号を受信したと判定された場合(SA1)(SD1、Yes)、制御部46は信号出力部44によって信号線2を断線させる(SA2)(SD2)。具体的には、制御部46はL−C出力部44bによってL−C線2eを断線させる。なお、この信号線2が断線した状態は、特許請求の範囲における第2移報状態に対応するものである。なお、制御部46は表示部42によってL−C線2eが断線状態である旨を表示させてもよい。これにより、ユーザに対して信号線2が断線状態であることを報知することができる(後述するSD5の短絡状態についても同様)。
【0050】
次に、制御部46は無線受信部43が感知器10又は発信機20から火災信号を受信したか否かを判定する(SD3)。その結果、無線受信部43が感知器10から火災信号を受信したと判定された場合(SA3)(SD3、Yes)、制御部46は信号出力部44によって信号線2を断線させた状態から信号線2を断線させる前の状態に復旧させる(SA4)(SD4)。その後、無線受信部43にて受信された火災信号から、識別情報取得部46aが感知器10の識別情報を取得した後に、制御部46は移報方法テーブル47aを参照し、当該識別情報取得部46aにて取得された識別情報に応じて、信号出力部44によって信号線2を短絡させる(SA5)(SD5)。具体的には、制御部46はL−C出力部44bによってL−C線2eを断線させた状態から導通可能な状態へ復旧させた後、L−C出力部44bによってL−C線2eを短絡させる。これにより、感知器10又は発信機20の障害に左右されることなく、無線受信部43にて受信した火災信号の受信機50に対する移報を行うことができ、火災信号の受信機50に対する移報の確実性を高めることができる。また、移報方法テーブル47aから取得した移報方法情報に基づいて、火災信号の受信機50に対する移報を行うので、感知器10又は発信機20に応じた火災信号の移報を行うことができる。なお、この信号線2が短絡した状態は、特許請求の範囲における第1移報状態に対応するものである。
【0051】
続いて、制御部46は感知器10又は発信機20から無線受信部43が障害復旧信号を受信したか否かを判定する(SD6)。その結果、無線受信部43が感知器10又は発信機20から障害復旧信号を受信したと判定された場合(SD6、Yes)、制御部46はSD1の直前に戻る。
【0052】
一方、無線受信部43が感知器10又は発信機20から障害復旧信号を受信したと判定されなかった場合(SD6、No)、制御部46は無線受信部43が感知器10又は発信機20から火災復旧信号を受信したか否かを判定する(SD7)。
【0053】
その結果、無線受信部43が感知器10から火災復旧信号を受信したと判定されなかった場合(SD7、No)、制御部46はSD6の直前に戻る。
【0054】
一方、無線受信部43が感知器10から火災復旧信号を受信したと判定された場合(SA6)(SD7、Yes)、制御部46は信号出力部44によって信号線2を短絡させた状態から信号線2を短絡させる前の状態に復旧させる(SA7)(SD8)。ここで、SD2の処理以降、無線受信部43が発信機20から障害信号を継続して受信していることから、制御部46は信号出力部44によって信号線2を断線させる(SA8)(SD9)。具体的には、制御部46はL−C出力部44bによってL−C線2eを短絡状態から導通可能な状態へ復旧させた後、L−C出力部44bによってL−C線2eを断線させる。これにより、火災信号の受信機50に対する移報が停止した場合でも、この障害信号の受信機50に対する移報を行うことができるので、障害信号の受信機50に対する移報の確実性を高めることができる。
【0055】
続いて、無線受信部43が感知器10又は発信機20から火災信号を受信したと判定されなかった場合(SD3、No)、あるいは、SD9にて信号線2が断線した状態になった場合、制御部46は無線受信部43が感知器10又は発信機20から障害復旧信号を受信したか否かを判定する(SD10)。その結果、無線受信部43が感知器10又は発信機20から障害復旧信号を受信したと判定されなかった場合(SD10、No)、制御部46はSD3の直前に戻る。
【0056】
一方、無線受信部43が発信機20から障害復旧信号を受信したと判定された場合(SA9)(SD10、Yes)、制御部46は信号出力部44によって信号線2を断線させた状態から断線させる前の状態に復旧させて(SA10)(SD11)、SD1の直前に戻る。具体的には、制御部46はL−C出力部44bによってL−C線2eを断線状態から導通可能な状態へ復旧させる。
【0057】
一方で、無線受信部43が感知器10又は発信機20から障害信号を受信したと判定されなかった場合(SD1、No)、制御部46は無線受信部43が感知器10又は発信機20から火災信号を受信したか否かを判定する(SD12)。その結果、無線受信部43が感知器10又は発信機20から火災信号を受信したと判定されなかった場合(SD12、No)、制御部46はSD1の直前に戻る。
【0058】
一方、無線受信部43が感知器10又は発信機20から火災信号を受信したと判定された場合(SD12、Yes)、制御部46は信号出力部44によって信号線2を短絡させる(SD13)。
【0059】
次いで、制御部46は無線受信部43が感知器10又は発信機20から火災復旧信号を受信したか否かを監視する(SD14)。ここで、無線受信部43が感知器10又は発信機20から火災復旧信号を受信すると(SD14、Yes)、制御部46は信号出力部44によって信号線2を短絡させた状態から短絡させる前の状態に復旧させて(SD15)、SD1の直前に戻る。
【0060】
(効果)
このように実施の形態によれば、制御部46は、有線式中継器40が障害信号の受信機50に対する移報を行っている場合において、火災信号を感知器10又は発信機20から受信した場合には、信号出力部44を第2移報状態から通常状態に復旧させた後、当該受信した火災信号の受信機50に対する移報を行うので、感知器10又は発信機20の障害に左右されることなく、無線受信部43にて受信した火災信号の受信機50に対する移報を行うことができ、火災信号の受信機50に対する移報の確実性を高めることができる。
【0061】
また、制御部46は、当該有線式中継器40が火災信号の移報を受信機50に対して行っている場合において、火災復旧信号を感知器10又は発信機20から受信し、かつ障害信号を感知器10又は発信機20から受信している場合には、信号出力部44を第1移報状態から通常状態に復旧させた後、当該受信した障害信号の受信機50に対する移報を行うので、火災信号の移報が行われており、かつ障害信号を受信している場合であって、火災信号の移報が停止した場合でも、この障害信号の受信機50に対する移報を行うことができ、障害信号の受信機50に対する移報の確実性を高めることができる。
【0062】
また、有線式中継器40は、有線式中継器40と受信機50とを相互に接続する信号線2の接続を、通常状態、第1移報状態、及び第2移報状態に切り替えることにより、感知器10又は発信機20から受信した信号を受信機50に出力するための信号出力部44と、信号出力部44を制御する制御部46とを備え、通常状態は、信号線2が導通可能な状態であり、第1移報状態は、信号線2が短絡した状態であり、第2移報状態は、信号線2が断線した状態であるので、感知器10又は発信機20に障害が生じている場合であって、感知器10又は発信機20が発報した場合でも、信号出力部44によって、信号線2を断線させた状態から当該信号線2を断線させる前の状態に復旧させた後に、信号線2を短絡させることにより、当該受信した火災信号を受信機50に出力することができ、当該受信した火災信号の受信機50に対する移報の確実性を高めることができる。さらに、感知器10又は発信機20の発報が停止した場合において、感知器10又は発信機20に障害が生じている場合でも、信号出力部44によって、信号線2を短絡させた状態から当該信号線2を短絡させる前の状態に復旧させた後に、信号線2を断線させることにより、当該受信している障害信号を受信機50に出力することができ、当該受信した障害信号の受信機50に対する移報の確実性を高めることができる。
【0063】
また、有線式中継器40は、識別情報取得部46aにて取得した識別情報に基づいて、移報方法テーブル47aから移報方法情報を取得し、当該取得した移報方法情報に基づいて、火災信号の受信機50に対する移報を行うので、感知器10又は発信機20に応じた火災信号の移報を行うことができ、火災の位置を容易に特定することができる。
【0064】
〔実施の形態に対する変形例〕
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0065】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、前記した内容に限定されるものではなく、本発明によって、前記に記載されていない課題を解決したり、前記に記載されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。
【0066】
(分散や統合について)
上述した火災報知システム1の各電気的構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各部の分散又は統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散又は統合して構成できる。
【0067】
(感知器について)
上述した実施の形態では、感知器10の無線送信部は、火災信号、火災復旧信号、障害信号、又は障害復旧信号を送信すると説明したが、これに限られない。例えば、この無線送信部は、当該感知器の動作状況を監視するために、当該感知器10の識別情報を定期的に送信してもよい(なお、発信機20の無線送信部23についても同様)。この場合には、有線式中継器40の無線受信部43が識別情報を定期的に受信しなくなったと判定された場合に、制御部46は信号出力部44によって信号線を断線させてもよい。
【0068】
また、感知器10の無線送信部が障害信号を送信する場合として、図示しない障害判断部によって、公知の電圧測定手段(図示省略)を用いて測定した当該感知器10の電源部の出力電圧の結果をもとに、この出力電圧の結果が閾値よりも低いと判断された場合と説明したが、これに限られない。例えば、感知器10の無線送信部が障害信号を送信する場合とは、感知器10の検知部の故障等の当該感知器10の機器障害が発生した場合や、図示しない障害判断部によって、センサ部から出力される信号をもとにセンサ部の異常が判断された場合であってもよい(なお、発信機20の無線送信部23についても同様)。また、復旧の判断についても同様であり、感知器10の無線送信部が復旧信号を送信する場合とは、図示しない障害判断部によって、センサ部から出力される信号をもとにセンサ部の復旧が判断された場合であってもよい(なお、発信機20の無線送信部23についても同様)。
【0069】
(有線式中継器について)
上述した実施の形態では、信号出力部44は、A−C出力部44a及びL−C出力部44bを備えて構成されていると説明したが、例えば図1の建物の1階のような無線端末が感知器10だけの火災報知システム1の場合には、有線式中継器40と受信機50とを接続する信号線2のうちA線2aが不要となる。よって、この場合には、信号出力部44はL−C出力部44bのみを備えて構成されてもよい。
【0070】
(火災報知システムを構成する各機器が実行する中継処理について)
上述した実施の形態では、発信機20に障害が生じたことによって、当該発信機20の無線送信部23が障害信号を送信した後に、感知器10のセンサ部にて火災が検知されたことによって、当該感知器10の無線送信部が火災信号を送信した場合についての中継処理について説明したが、これに限られない。例えば、感知器10に障害が生じたことによって、当該感知器10の無線送信部が障害信号を送信した後に、発信機20の押しボタン部21が押し下げられたことによって、当該発信機20の無線送信部23が火災信号を送信した場合についての中継処理であっても、実施の形態と同様に扱われる。
【符号の説明】
【0071】
1 火災報知システム
2、102 信号線
2a、102a A線
2a1 A線出力端子
2a2 A線入力端子
2b、102b C線
2b1 C線出力端子
2b2 C線入力端子
2c、102c L線
2c1 L線出力端子
2c2 L線入力端子
2d A−C線
2e L−C線
2f リレー
2g リレー
2h リレー
3 電源線
10 感知器
20、130 発信機
21 押しボタン部
22 テストスイッチ部
23 無線送信部
24、32、42 表示部
25、34 電源部
26、35、46 制御部
27、36、47 記憶部
30 無線式中継器
31、41 操作部
33 無線通信部
40 有線式中継器
43 無線受信部
44 信号出力部
44a A−C出力部
44b L−C出力部
45 電源回路部
46a 識別情報取得部
47a 移報方法テーブル
50、150 受信機
101 防災システム
110 有線式感知器
120 無線式感知器
140 中継器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線端末から受信した信号を受信機に中継する中継器であって、
前記無線端末から受信した信号を前記受信機に移報するための移報手段であって、通常状態、第1移報状態、及び当該第1移報状態とは併存できない第2移報状態に切り替え可能な移報手段と、
前記移報手段を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、
火災を報知する火災信号を前記無線端末から受信した場合に、当該受信した火災信号の前記受信機に対する移報を、前記移報手段を前記第1移報状態にすることにより行い、
前記無線端末の障害を報知する障害信号を当該無線端末から受信した場合に、当該受信した障害信号の前記受信機に対する移報を、前記移報手段を前記第2移報状態にすることにより行い、
当該中継器が前記障害信号の前記受信機に対する移報を行っている場合において、前記火災信号を前記無線端末から受信した場合には、前記移報手段を前記第2移報状態から前記通常状態に復旧させた後、当該受信した火災信号の前記受信機に対する移報を行う、
中継器。
【請求項2】
前記制御手段は、
当該中継器が前記火災信号の移報を前記受信機に対して行っている場合において、火災復旧を報知する火災復旧信号を前記無線端末から受信し、かつ前記障害信号を前記無線端末から受信している場合には、
前記移報手段を前記第1移報状態から前記通常状態に復旧させた後、当該受信した障害信号の前記受信機に対する移報を行う、
請求項1に記載の中継器。
【請求項3】
前記無線端末から受信した信号を受信機に中継する中継器であって、
当該中継器と前記受信機とを相互に接続する信号線の接続を、前記通常状態、前記第1移報状態、及び前記第2移報状態に切り替えることにより、前記無線端末から受信した信号を前記受信機に出力するための信号出力手段と、
前記信号出力手段を制御する制御手段とを備え、
前記通常状態は、前記信号線が導通可能な状態であり、
前記第1移報状態は、前記信号線が短絡した状態であり、
前記第2移報状態は、前記信号線が断線した状態である、
請求項1又は2に記載の中継器。
【請求項4】
前記無線端末を一意に識別する識別情報を含む前記火災信号を、前記無線端末から受信した場合に、当該火災信号から前記識別情報を取得する識別情報取得手段と、
前記識別情報と、前記火災信号の移報方法を特定するための移報方法情報と、を相互に関連付けて格納する移報方法情報格納手段とを備え、
前記識別情報取得手段にて取得した識別情報に基づいて、前記移報方法情報格納手段から移報方法情報を取得し、当該取得した移報方法情報に基づいて、前記火災信号の前記受信機に対する移報を行う、
請求項1から3のいずれか一項に記載の中継器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−48454(P2012−48454A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−189395(P2010−189395)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(000003403)ホーチキ株式会社 (792)
【Fターム(参考)】