説明

中継装置および通信方法

【課題】ネットワークの輻輳を回避しつつ小サイズのデータの送信待ち時間を減らす。
【解決手段】スケジューラは、中継装置にデータを送信してから応答を受信するまでの時間であるラウンドトリップタイム(RTT)を測定し、測定したRTTに基づいて送信タイミング時間を算出する算出部と、を備え、送信データが検出されると、検出された送信データのサイズが所定値以下である場合、送信データが検出されてからの時間が、送信タイミング時間を経過した後に、送信データを送信部に出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中継装置および中継装置間のデータの通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ホストと入出力(IO)装置間の通信路を延長装置を用いて延長することで、ホストとIO装置間の物理的距離を延長することが行われている。
図1に示すようなチャネル延長システム11において、ホスト12とチャネル延長装置13は、チャネルインタフェースで接続し、チャネル延長装置13とチャネル延長装置14はネットワーク16を介して接続し、チャネル延長装置14とIO装置15は、チャネルインタフェースで接続している。
【0003】
チャネル延長装置13、14を介して接続されたホスト12とIO装置15間のデータ転送において、チャネル延長装置13、14間では、コネクション指向型トランスポートプロトコルにより通信を行う。
【0004】
コネクション指向型トランスポートプロトコルでは、一般的に転送効率向上アルゴリズムを用いている。例えば、Transmission Control Protocol (TCP)においては、Nagleアルゴリズムや遅延確認応答(Delay ACK)アルゴリズムが用いられる。
【0005】
Nagleアルゴリズムにおいては、データ送信を下記のいずれかのタイミングで行う。
(1)送信データのサイズがMaximum Segment Size(MSS)以上になった。あるいは、
(2)前回送信したデータの確認応答を受信した。あるいは、
(3)送信データの検出から一定時間(例えば、200ミリ秒)経過した。
【0006】
すなわち、MSS以下のデータを1個送信する場合、送信は一定時間待たされることになる。
一般的に転送効率向上アルゴリズムの“一定時間”、すなわち送信待ち時間は、ネットワークの遅延より大きく設定されている。例えば、TCPのNagleアルゴリズムでの送信待ち時間は200ミリ秒が一般的なのに対して、ネットワークの遅延は実用レベル(日本国内)で最大でも50ミリ秒である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−129487号公報
【特許文献2】特開2000−278320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ホストとIO装置間のデータの送受信において、データサイズがMSS以下の小サイズデータと、MSS以上の大サイズデータとが混在している。
例えば、IO装置をテープ装置とすると、テープ装置へのデータの書き込みを行う場合、テープデータの書き込みの前後で制御用のコマンドやステータスがホストとIO装置間送信される。
【0009】
チャネル延長装置間で、制御用コマンドを転送する際、制御用コマンドはMSS以下のサイズになる。また、IO装置は処理が完了するたびにステータスをホストに応答する。ステータスをチャネル延長装置間で転送する場合も該ステータスのデータサイズはMSS以下となる。
【0010】
チャネル延長装置間のデータ通信において、Nagleアルゴリズムのような既存の転送効率向上アルゴリズムを使用すると、小サイズのデータを送信する際に必要以上の遅れが発生するという問題があった。それにより、チャネル延長システム全体の転送性能低下につながるという問題があった。
【0011】
また、転送効率向上アルゴリズムを用いない場合、送信間隔が0になるため、少サイズのデータがネットワーク上に頻発しネットワークの輻輳が発生してしまうという問題、データが細切れに送信される可能性があるため、大きいサイズのデータを送信する際の転送効率が下がるという問題があった。
【0012】
本発明の課題は、ネットワークの輻輳を回避しつつ小サイズのデータの送信待ち時間を減らすことが可能な装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
実施の形態の中継装置は、第1の処理装置と第2の処理装置とを接続し、ネットワークを介して他の中継装置と接続する中継装置であって、前記他の中継装置への送信データの送信タイミングを制御するスケジューラと、前記送信データを前記他の中継装置に送信する送信部と、前記他の中継装置にデータを送信してから応答を受信するまでの時間であるラウンドトリップタイム(RTT)を測定し、測定したRTTに基づいて送信タイミング時間を算出する算出部と、を備える。
【0014】
前記スケジューラは、前記送信データが検出されると、検出された送信データのサイズが所定値以下である場合、前記送信データが検出されてからの時間が、前記送信タイミング時間を経過した後に、前記送信データを前記送信部に出力する。
【発明の効果】
【0015】
実施の形態の中継装置によれば、ネットワークの輻輳を回避しつつ小サイズのデータの送信待ち時間を減らすことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】従来のチャネル延長システムの構成図である。
【図2】実施の形態に係るチャネル延長システムの構成図である。
【図3】実施の形態に係るチャネル延長装置の構成図である。
【図4】実施の形態に係るトランスポートプロトコル処理部の構成図である。
【図5】グローバルテーブルの例である。
【図6】RTT記録テーブルの例である。
【図7】実施の形態に係るRTT計測パケットの送信処理のフローチャートである。
【図8】実施の形態に係るRTT算出処理のフローチャートである。
【図9】実施の形態に係る送信処理のフローチャートである。
【図10】従来技術および実施の形態のデータ書き込みのシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら実施の形態について説明する。
図2は、実施の形態に係るチャネル延長システムの構成図である。
チャネル延長システム101は、ホスト102、チャネル延長装置103、104、および入出力(IO)装置105を備える。
【0018】
ホスト102およびIO装置105は、処理装置の一例である。
チャネル延長装置103、104は、中継装置の一例である。
ホスト102は、IO装置105へのデータの入出力要求を行う情報処理装置である。
【0019】
ホスト102は、延長装置103とチャネルインタフェースで接続している。チャネルインタフェースは、例えば、電気チャネル(Block Multiplexer Channel (BMC))や光チャネル(Optical Channel LINK (OCLINK))である。
【0020】
チャネル延長装置103は、ホスト102に対して擬似IO装置として動作する。チャネル延長装置103は、チャネル延長装置104とネットワーク106を介して接続している。ネットワーク106は、例えば、Local Area Network(LAN)やWide Area Network (WAN)である。
【0021】
チャネル延長装置103、104間はInternet Protocol(IP)接続により接続され、 チャネル延長装置103、104は、送信先のチャネル延長装置へのデータ送達を保証するためコネクション指向型トランスポートプロトコルを用いた通信を行う。
【0022】
チャネル延長装置104は、IO装置105とチャネルインタフェースで接続している。チャネル延長装置104は、IO装置105に対して擬似ホストとして動作する。
チャネル延長装置103、104は、ホスト102とIO装置105間のデータを中継する。
【0023】
IO装置105は、ホスト102からのデータの入力およびホスト102へのデータの出力を行う。IO装置105は、例えば、テープ装置、磁気ディスク装置、またはプリンタ等である。
【0024】
図3は、実施の形態に係るチャネル延長装置の構成図である。
チャネル延長装置201は、チャネルインタフェース送受信部202、データ変換部203、トランスポートプロトコル処理部204、IPプロトコル処理部205、およびネットワーク送受信部206を備える。
【0025】
なお、チャネル延長装置201は、図2のチャネル延長装置103、104に対応する。
チャネルインタフェース送受信部202は、データ変換部203から受信したデータをホスト102またはIO装置105に送信、およびホスト102またはIO装置105から受信したデータをデータ変換部203に送信する。
【0026】
データ変換部203は、チャネルインタフェースとネットワーク間のプロトコルの変換を行う。データ変換部203は、チャネルインタフェース送受信部202またはトランスポートプロトコル処理部204からデータを受信し、プロトコル変換を行い、トランスポートプロトコル処理部204またはチャネルインタフェース送受信部202に変換したデータを送信する。
【0027】
トランスポートプロトコル処理部204は、往復遅延時間(Round Trip Time:RTT)の計測やRTTに基づいたデータの送信タイミングの制御などを行う。RTTは、送信先にデータを送ってから、該送信先からの確認応答(ACK)を受信するまでにかかる時間である。
【0028】
実施の形態において、RTTを用いる理由は下記のとおりである。
RTTは、コネクション指向型プロトコルにおいて、送信相手へのデータ送達確認に最低限必要な時間である。RTTより小さい時間でデータを送信するということは、冗長したデータを送信する行為となり、限りあるネットワーク資源の浪費となる。よって、これを回避することはネットワーク輻輳回避につながる。
【0029】
またRTTは、送信相手の距離に依存(詳細には機器性能にも依存)して変化する値である。送信相手との距離が遠ければRTTは大きくなり、反対に近ければRTTは小さくなる。送信タイミングをRTT分あけて送信できれば、送信相手の場所にあわせた送信タイミングの最適化につながる。
【0030】
上記事項を考慮し、実施の形態において、ネットワークの輻輳を極力回避しつつ、小サイズのデータ送信タイミングを最適にする方法としてRTTに基づいたデータ送信タイミングを採用している。
【0031】
トランスポートプロトコル処理部204は、データ変換部203からデータを受信してIPプロトコル処理部205へ送信、またはIPプロトコル処理部205からデータを受信してデータ変換部203へ送信する。
【0032】
IPプロトコル処理部205は、送信データに対してIPヘッダを付加、または受信データに対してIPヘッダの削除を行う。IPプロトコル処理部205は、トランスポートプロトコル処理部204からデータを受信し、該データにIPヘッダを付加してネットワーク送受信部206へ送信、またはネットワーク送受信部206からデータを受信し、該データからIPヘッダを削除してトランスポートプロトコル処理部204へ送信する。
【0033】
ネットワーク送受信部206は、IPプロトコル処理部205から入力されたデータをネットワーク106を介して接続している対向するチャネル延長装置に送信、または対向するチャネル延長装置からデータを受信してIPプロトコル処理部205に出力する。
【0034】
図3の実線矢印はホスト102またはIO装置105からデータを受信した際のデータの処理ルートを示し、点線矢印はホスト102またはIO装置105へデータを送信する際のデータの処理ルートを示す。
【0035】
図4は、実施の形態に係るトランスポートプロトコル処理部の構成図である。
トランスポートプロトコル処理部204は、送信バッファ211、格納部212、送信スケジューラ213、データ送信部214、データ受信部215、RTT算出部216、受信バッファ217、およびRTT計測パケット送信部218を備える。
【0036】
送信バッファ211は、データ変換部203から受信した送信データを一時的に格納するバッファである。
格納部212は、各種データを格納する記憶手段である。格納部212は、例えば、Random Access Memory(RAM)が用いられる。格納部212は、グローバルテーブル219を格納している。グローバルテーブル219には、許容RTT値および平均RTT値が記述されている。なお、グローバルテーブル219の詳細については後述する。
【0037】
送信スケジューラ213は、データサイズに基づいたデータ送信、および平均RTT値に基づいたタイミングによるデータ送信を行う。送信スケジューラ213は、スケジューラバッファ220を備える。送信スケジューラ213は、送信バッファ211からデータを読み出し、スケジューラバッファ220に格納する。送信スケジューラ213は、適宜、スケジューラバッファ220のデータをデータ送信部214に出力する。
【0038】
データ送信部214は、送信スケジューラ213、RTT算出部216、またはRTT計測パケット送信部218から入力されたデータをIPプロトコル処理部205に出力する。
【0039】
データ受信部215は、IPプロトコル処理部205からデータを受信し、該データをRTT算出部216または受信バッファ217に出力する。データ受信部215は、受信したデータがRTT計測パケットの場合はRTT算出部216に出力し、受信したデータがホスト102またはIO装置105へのデータの場合は受信バッファ217に出力する。
【0040】
RTT算出部216は、RTT記録テーブル221を有する。RTT算出部216は、RTTを測定し、RTT記録テーブル221に記述する。RTT算出部216は、RTTの平均値を算出し、平均RTT値をグローバルテーブル219に記述する。
【0041】
受信バッファ217は、データ受信部215から受信した受信データを一時的に格納するバッファである。
RTT計測パケット送信部218は、RTTを計測するためのパケット(RTT計測パケット)をデータ送信部214に出力する。
【0042】
図5は、グローバルテーブルの例である。
グローバルテーブル219には、許容RTT値および平均RTT値が記述される。なお、RTT値の単位はミリ秒としている。
【0043】
許容RTT値は、平均RTT値を算出する際に使用するRTT測定値の最大値を示す。許容RTT値は、例えばネットワークのキャリアにより保証されるRTTを許容RTT値とすることができる。また、一時的なネットワークの輻輳が発生していると経験的に判断されるRTTを許容RTT値とすることもできる。
【0044】
平均RTT値は、所定数のRTTの平均値である。なお、平均RTT値の算出の詳細については後述する。
例えば、図5のグローバルテーブル219において、許容RTT値は60(ミリ秒)、平均RTT値は20(ミリ秒)である。
【0045】
図6は、RTT記録テーブルの例である。
RTT記録テーブル221には、複数のRTT測定値とRTT測定値格納域No.が記述されている。
【0046】
RTT測定値は、RTT算出部216で測定されたRTTである。
図6においては、10個のRTT測定値が記述されており、各RTT測定値の記述箇所にはNo.0からNo.9までの番号が割り当てられている。
【0047】
例えば、図6において、RTT測定値No.0のRTT測定値は20(ミリ秒)である。
RTT測定値格納域No.は、次に測定したRTTを書き込む場所を示す。すなわち、未書き込みのRTT測定値No.もしくは最古のRTT測定値No.を示している。
【0048】
実施の形態において、RTT測定値格納域No.は0から9の値をとり、9でラップアラウンドして0に戻る。
例えば、図6において、RTT測定値格納域No.は1であるので、次に測定されたRTT測定値は、RTT測定値No.1の箇所に上書きされる。
【0049】
次に、RTTの測定および管理について説明する。
先ず、RTTを測定するためのRTT計測パケットの送信処理について説明する。
図7は、実施の形態に係るRTT計測パケットの送信処理のフローチャートである。
【0050】
ステップS501において、RTT計測パケット送信部218は、RTT計測パケット送信契機タイマを起動する。なお、RTT計測パケット送信契機タイマは、RTT計測パケット送信部218に備えられている。RTT計測パケット送信契機タイマは、所定時間(例えば、10秒)で満了する。
【0051】
ステップS502において、RTT計測パケット送信部218は、RTT計測パケット送信契機タイマが満了したかチェックする。RTT計測パケット送信契機タイマが満了した場合、制御はステップS503に進み、RTT計測パケット送信契機タイマが満了していない場合、制御はステップS502に戻る。なお、RTT計測パケット送信契機タイマは満了後、リセットされ、再度、所定時間で満了する。
【0052】
ステップS503において、RTT計測パケット送信部218は、RTT計測パケットをデータ送信部214に送信する。RTT計測パケットには、送信時の時刻や計測パケットを送信した延長装置を識別するための識別子が含まれている。RTT計測パケットは、データ送信部214からIPプロトコル処理部205に出力され、さらにネットワーク送受信部206を経由してネットワーク16を介して接続されたチャネル延長装置に送信される。
【0053】
RTTはネットワークの中継経路やネットワーク内の中継装置により変動するので、実施の形態の延長装置204は、定期的にRTT計測パケットを送信してRTTを測定し、その時々のRTTを採用している。
【0054】
次に、RTTの測定および平均の算出について説明する。
図8は、実施の形態に係るRTT算出処理のフローチャートである。
ステップS601において、RTT算出部216は、RTT計測パケットを受信する。
【0055】
ステップS602において、RTT算出部216は、受信したRTT計測パケットが自身が送信したパケットであるか否か、すなわち受信したRTT計測パケットが過去に自身が自身と接続する他の延長装置に送信し、該他の延長装置から折り返されたパケットであるか否か判定する。受信したRTT計測パケットが自身が送信したパケットである場合、制御はステップS604に進み、自身が送信したパケットでない場合、制御はステップS603に進む。受信したRTT計測パケットが自身が送信したパケットであるか否かは、RTT計測パケット内に記述された識別子により判定する。
【0056】
ステップS603において、RTT算出部216は、受信したRTT計測パケットを発信元、すなわち対向のチャネル延長装置へ折り返す。
ステップS604において、RTT算出部216は、RTT計測パケット内に記述された時刻と現時刻との差分を算出し、該差分をRTT測定値とする。
【0057】
ステップS605において、RTT算出部216は、グローバルテーブル219を参照し、許容RTT値を読み出す。
ステップS606において、RTT算出部216は、RTT測定値が許容RTTより大きいか否か判定する。RTT測定値が許容RTTより大きい場合、処理を終了し、RTT測定値が許容RTTより大きくない場合、制御はステップS607に進む。
【0058】
ステップS607において、RTT算出部216は、RTT記録テーブル221に記録されたRTT測定値の数が閾値以上であるか否か判定する。実施の形態において、閾値は10としている。RTT測定値の数が閾値以上である場合、制御はステップS608に進み、閾値未満である場合、制御はステップS609に進む。
【0059】
ステップS608において、RTT算出部216は、RTT記録テーブル221に記録されたRTT測定値のうち、最古のRTT測定値を削除する。
ステップS609において、RTT算出部216は、ステップS604で算出したRTT測定値をRTT記録テーブル221に書き込む。
【0060】
ステップS610において、RTT算出部216は、RTT記録テーブル221に記録されたRTT測定値の平均値を算出し、該平均値をRTT平均値としてグローバルテーブル219に書き込む。
【0061】
図9は、実施の形態に係る送信処理のフローチャートである。
ステップS701において、送信スケジューラ213は、送信バッファ211に送信データがあるか否かチェックする。送信データがある場合は、制御はステップS703に進み、送信データがない場合は、制御はステップS702に進む。
【0062】
ステップS702において、送信スケジューラ213は、スケジューラバッファ220が空であるか否かチェックする。スケジューラバッファ220が空である場合、ステップS701に戻り、スケジューラバッファ220が空でない場合、制御はステップS706に進む。
【0063】
ステップS703において、送信スケジューラ213は、スケジューラバッファ220が空であるか否かチェックする。スケジューラバッファ220が空である場合、ステップS704に進み、スケジューラバッファ220が空でない場合、制御はステップS705に進む。
【0064】
ステップS704において、送信スケジューラ213は、グローバルテーブル219を参照し、RTT平均値を読み出す。そして、送信スケジューラ213は、送信契機タイマを起動し、送信契機タイマの満了時間をRTT平均値にセットする。それにより、送信契機タイマは、起動してからRTT平均値経過すると、満了する。なお、送信契機タイマは、送信スケジューラ213に備えられている。
【0065】
ステップS705において、送信スケジューラ213は、送信バッファ211の送信データをスケジューラバッファ220に格納する。
ステップS706において、送信スケジューラ213は、スケジューラバッファ220に格納されているデータのサイズがMaximum Segment Size(MSS)以上であるか判定する。スケジューラバッファ220のデータのサイズがMSS以上の場合、制御はステップS708に進み、MSS未満の場合、制御はステップS707に進む。なお、MSSは、TCPにおけるデータの送信単位(セグメント)の最大値である。
【0066】
ステップS707において、送信スケジューラ213は、スケジューラバッファ220に格納されているデータのうち、MSS分のデータをデータ送信部214に出力する。
ステップS708において、送信スケジューラ213は、確認応答を受信しているか否か判定する。確認応答を受信している場合、制御はステップS710に進み、確認応答を受信していない場合、制御はステップS709に進む。
【0067】
なお、確認応答は、スケジューラバッファ220が空になる前の前回送信したデータに対する応答である。
ステップS709において、送信スケジューラ213は、送信契機タイマが満了したかチェックする。送信契機タイマが満了した場合、制御はステップS710に進み、送信契機タイマが満了していない場合、制御はステップS701に戻る。
【0068】
ステップS710において、送信スケジューラ213は、スケジューラバッファ220に格納されている全データをデータ送信部214に出力する。
【0069】
図10は、従来技術および実施の形態のデータ書き込みのシーケンス図である。
図10の左側は従来のデータ書き込みのシーケンス図であり、右側は実施の形態のデータ書き込みのシーケンス図である。
【0070】
図10は、ホストからIO装置へデータを書き込んだ場合のシーケンスを示している。
ここで、IO装置15、105はテープ装置としている。
従来技術において、先ず、ホスト12はチャネル延長装置13に制御コマンドを送信し(ステップS801)、チャネル延長装置13はチャネル延長装置14に制御コマンドを送信し(ステップS802)、チャネル延長装置14はIO装置15に制御コマンドを送信する(ステップS803)。
【0071】
IO装置15は、制御コマンドに対する応答、すなわちステータス(例えば、書き込み準備OK)をチャネル延長装置14に送信し(ステップS804)、チャネル延長装置14はチャネル延長装置12にステータスを送信し(ステップS805)、チャネル延長装置13はホスト12にステータスを送信する(ステップS806)。
【0072】
ホスト12はチャネル延長装置13にテープデータを送信し(ステップS807)、チャネル延長装置13はチャネル延長装置14にテープデータを送信し(ステップS808)、チャネル延長装置14はIO装置15にテープデータを送信する(ステップS809)。そして、IO装置15はテープデータを書き込む。
【0073】
IO装置15は、書き込み完了後、書き込みを完了した旨をステータスとして、チャネル延長装置14に送信し(ステップS810)、チャネル延長装置14はチャネル延長装置12にステータスを送信し(ステップS811)、チャネル延長装置13はホスト12にステータスを送信する(ステップS812)。
【0074】
実施の形態において、先ず、ホスト102はチャネル延長装置103に制御コマンドを送信し(ステップS901)、チャネル延長装置13はチャネル延長装置104に制御コマンドを送信し(ステップS902)、チャネル延長装置104はIO装置105に制御コマンドを送信する(ステップS903)。
【0075】
IO装置105は、制御コマンドに対する応答、すなわちステータス(例えば、書き込み準備OK)をチャネル延長装置104に送信し(ステップS904)、チャネル延長装置104はチャネル延長装置102にステータスを送信し(ステップS905)、チャネル延長装置103はホスト102にステータスを送信する(ステップS906)。
【0076】
ホスト102はチャネル延長装置103にテープデータを送信し(ステップS907)、チャネル延長装置13はチャネル延長装置104にテープデータを送信し(ステップS908)、チャネル延長装置104はIO装置105にテープデータを送信する(ステップS909)。そして、IO装置105はテープデータを書き込む。
【0077】
IO装置105は、書き込み完了後、書き込みを完了した旨をステータスとして、チャネル延長装置104に送信し(ステップS910)、チャネル延長装置104はチャネル延長装置102にステータスを送信し(ステップS911)、チャネル延長装置103はホスト102にステータスを送信する(ステップS912)。
【0078】
図10においては、制御コマンドおよびステータスのサイズはMSS以下であり、テープデータのサイズはMSSより大きいとする。
図10の従来技術において、チャネル延長装置13、14間の通信は、Nagleアルゴリズムを用いている。
【0079】
したがって、従来技術の*で示されているステップS802での制御コマンドの送信およびステップS805、S811でのステータスの送信において、制御コマンドまたはステータスの検出から送信まで200ミリ秒要する。
【0080】
対して、実施の形態の**で示されているステップS902での制御コマンドの送信およびステップS905、S911でのステータスの送信において、制御コマンドまたはステータスの検出から送信までの待ち時間は平均RTT値で済む。
【0081】
通常、RTTは、日本国内では最大でも50ミリ秒程度なので、平均RTT値は、200ミリ秒よりも小さくなる。
したがって、実施の形態においては、チャネル延長装置間で送信される制御コマンドおよびステータスの送信待ち時間が従来技術に比べて短縮される。それにより、全体のデータの書き込み処理の時間は短縮される。
【0082】
実施の形態のチャネル延長装置によれば、延長装置間の小サイズデータの送信待ち時間が減少するため、ホストからIO装置へのデータ書き込み時間は短縮される。
実施の形態のチャネル延長装置によれば、RTTに基づいた送信スケジュール制御を行うことで小サイズデータの送信間隔を短縮できる。特に小サイズデータと大サイズデータが混在する場合に大サイズデータの転送効率を維持しつつ小サイズのデータ送信間隔を最適に保つことができる。その結果、一連のデータ転送を高速に行うことが可能となる。
【0083】
また、実施の形態のチャネル延長装置によれば、RTTを定期的に測定して平均RTT値を算出し、RTT平均値をその時点での最適な送信タイミングとして送信の制御を行っている。それにより、ネットワーク輻輳により一時的に遅延が大きくなったとしても、RTT平均値は過敏に変化しないので安定した転送性能を維持することが可能となる。
【0084】
また、実施の形態のチャネル延長装置によれば、測定したRTTを許容値と比較し、許容値より大きいRTTをRTT平均値の算出に用いない機能を有している。それにより、チャネル延長装置間に点在するネットワーク機器の問題等で突発的かつ一時的に大きな遅延が発生しても、RTT平均値は変化しないので転送性能を損なうことがなくなる。
【0085】
以上の効果により、チャネル延長装置を介したホストコンピュータ−IO装置間のリモート転送において、制御コマンド・ステータスのような小サイズデータとテープデータ・印字データのような大サイズデータが混在しても、小サイズデータの送信待ち時間の効率低下を抑えることができ、システム全体の通信性能を向上できる。
【符号の説明】
【0086】
11 チャネル延長システム
12 ホスト
13、14 チャネル延長装置
15 IO装置
16 ネットワーク
101 チャネル延長システム
102 ホスト
103、104 チャネル延長装置
105 IO装置
106 ネットワーク
201 チャネル延長装置
202 チャネルインタフェース送受信部
203 データ変換部
204 トランスポートプロトコル処理部
205 IPプロトコル処理部
206 ネットワーク送受信部
211 送信バッファ
212 格納部
213 送信スケジューラ
214 データ送信部
215 データ受信部
216 RTT算出部
217 受信バッファ
218 RTT計測パケット送信部
219 グローバルテーブル
220 スケジューラバッファ
221 RTT記録テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の処理装置と第2の処理装置とを接続し、ネットワークを介して他の中継装置と接続する中継装置であって、
前記他の中継装置への送信データの送信タイミングを制御するスケジューラと、
前記送信データを前記他の中継装置に送信する送信部と、
前記他の中継装置にデータを送信してから応答を受信するまでの時間であるラウンドトリップタイム(RTT)を測定し、測定したRTTに基づいて送信タイミング時間を算出する算出部と、
を備え、
前記スケジューラは、
前記送信データが検出されると、検出された送信データのサイズが所定値以下である場合、
前記送信データが検出されてからの時間が、前記送信タイミング時間を経過した後に、前記送信データを前記送信部に出力することを特徴とする中継装置。
【請求項2】
前記所定値は、トランスミッションコントロールプロトコルにおける最大セグメントサイズであることを特徴とする請求項1記載の中継装置。
【請求項3】
前記算出部は、測定された複数のRTTの平均値を前記送信タイミング時間として算出することを特長とする請求項1または2記載の中継装置。
【請求項4】
前記算出部は、定期的にRTTを測定することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の中継装置。
【請求項5】
前記算出部は、前記測定したRTTが許容値より大きい場合、前記測定したRTTを前記送信タイミング時間の算出に用いないことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の中継装置。
【請求項6】
第1の処理装置と第2の処理装置とを接続し、ネットワークを介して他の中継装置と接続する中継装置の通信方法であって、
前記他の中継装置にデータを送信してから応答を受信するまでの時間であるラウンドトリップタイム(RTT)を測定し、
測定したRTTに基づいて送信タイミング時間を算出し、
前記送信データが検出されると、検出された送信データのサイズが所定値以下である場合、前記送信データが検出されてからの時間が、前記送信タイミング時間を経過した後に、前記送信データを前記送信部に出力することを特徴とする通信方法。
【請求項7】
前記所定値は、トランスミッションコントロールプロトコルにおける最大セグメントサイズであることを特徴とする請求項6記載の通信方法。
【請求項8】
前記送信タイミング時間を算出する処理において、測定された複数のRTTの平均値を前記送信タイミング時間として算出することを特長とする請求項6または7記載の通信方法。
【請求項9】
定期的にRTTを測定することをさらに行うことを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項に記載の通信方法。
【請求項10】
前記測定したRTTが許容値より大きい場合、前記測定したRTTを前記送信タイミング時間の算出に用いないことを特徴とする請求項6乃至9のいずれか1項に記載の通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−134645(P2012−134645A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283361(P2010−283361)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】