説明

中間車輪駆動車椅子、特に昇降型車椅子

【課題】 ばねにエネルギーを蓄積することで、中間車輪の負担を軽減して、比較的に高い障害物でも容易に乗り越えられるようにする。
【解決手段】 中間車輪駆動車椅子は、ヒンジ(17)により、互いに回動可能に連結された前部(13)と後部(15)から成る車輪フレーム(11)を持っている。少なくとも1つの前輪(23)、2つの中間車輪(21)、少なくとも1つの補助車輪(25)が設けられる。補助車輪(25)は、前輪(23)と中間車輪(21)との間にあって、かつ、これらの車輪の走行面(27)から距離を置いて配置されることが重要である。障害物(43)を乗り越えるときに、ガス・スプリング(17)は、前輪(23)と補助車輪(25)の両方により偏倚され、また、車椅子がさらに進行すると、再び解放される。これにより、障害物を乗り越えることが容易となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒンジにより回動可能に連結され、かつ、ばねの力に逆らって互いに旋回できる前部と後部から成る車輪フレーム(wheel frame)と、少なくとも1つの前輪、2つの中間車輪、少なくとも1つの後輪、少なくとも1つの補助車輪とを持つ中間車輪駆動車椅子、特に昇降型車椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
ここ数年、「中間車輪駆動車椅子」は、狭いスペース、例えばエレベータ内で、ぐるりと回転させることのできる車椅子の潜在的購入者向けの発明品となってきた。すぐその場で方向転換するためには、車椅子の使用者は、中間車輪が互いに反対方向に回転するようにのみ、そのコントロール機構を操作しなければならない。使用者のほぼ全体の体重がこれらの中間車輪にかかるように、車輪フレーム上に、これらの中間車輪を配置している。これらの前輪と後輪は、車椅子の方向転換を妨げてはならない。このような理由で、前輪と後輪は、通常、キャスタ(US−B−5 964 473(特許文献1))の形式を取っている。この種のいくつかの車椅子では、後輪のみ(US−B−5 944 131(特許文献2))が、あるいは前輪のみ(US−B−5 904 214(特許文献3))がキャスタである。これらの後輪と前輪はそれぞれ、通常、より高い所に位置づけられて、これらの後輪と前輪が、平らな床に接触しないようにしている。後輪と前輪が床に接触すれば、車椅子の方向転換がいくらか妨げられることになろう。
【0003】
車椅子使用者の実際の課題は、障害物、例えば縁石を乗り越えることである。中間車輪駆動無しの車椅子では、障害物をさらに容易に乗り越えられるようにするために、すでに相補形車輪または補助車輪の使用が提案された。例えば、AT−B−384 187(特許文献4)は、駆動される前輪を持つ車椅子を開示している。この車輪フレームの後部には、2つの相補形車輪が位置づけられており、また、それらの相補形車輪に対応づけられる進み側補助車輪と追い側補助車輪が、二腕サポート上に位置づけられている。この車椅子は、中間車輪駆動車椅子と対照的に、すぐその場で方向転換することができない。EP−A−1 118 531(特許文献5)は、4つの車輪または車輪対が前後に位置づけられている車と、障害物を容易に乗り越えられる複雑なレバー・システムを開示している。この車も、すぐその場で方向転換することができない。
【0004】
車輪の直径が大きければ大きいほど、それだけ容易にその車輪が障害物を乗り越えることができる。よって、例えば、前に引用されたAT−B−384 167(特許文献4)による車椅子は、直径が比較的に大きい前輪を持っている。しかしながら、これは、この車椅子がすぐその場で方向転換できないという、前にすでに述べた欠点を持っている。このような欠点を減らし、なおかつ、比較的に大きい障害物を乗り越えることができるように、US−B−5 964 473(特許文献1)は、図1〜図8を参照すると、補助車輪と組み合わせて、比較的に小さい前輪を使用することを提案している。これらの補助車輪は、前輪よりもいくらか高い位置にあり、それゆえ、床とは接触していない。これらの補助車輪が障害物に遭遇すると、車輪フレームの前部が持ち上げられて、タイプROSTAのばねの力に逆らって、後部に対して回転する。これは、障害物をさらに容易に乗り越えられるように前輪を上げ、さらに中間車輪も、障害物に容易に上がれるように負荷が軽減される。車椅子のさらなる動きで、前輪が床から持ち上げられ、かつ、中間車輪が、一部、障害物を乗り越えたときに、前に車輪フレームの前部の持上げたときにばねに蓄積されたエネルギーにより、前部が初期位置に戻る。これにより、さらに障害物を乗り越えることが容易となる。しかしながら、補助車輪とヒンジとの間のレバーアームが比較的に長いことが不利であり、そこで、障害物が、比較的に小さい回転しかもたらさず、それゆえ、このばねに蓄積されるエネルギーが比較的に小さくなる。このような欠点は、回転時に、後輪が床と接触するときだけ、このばねにエネルギーの蓄積が始まるという事実から、強められる。さらに、タイプROSTAのばねの急勾配のばね特性も不利である。それゆえ、そのような車椅子では、比較的に小さい障害物しか乗り越えることができない。
【0005】
【特許文献1】US−B−5 964 473
【特許文献2】US−B−5 944 131
【特許文献3】US−B−5 904 214
【特許文献4】AT−B−384 187
【特許文献5】EP−A−1 118 531
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
それゆえ、本発明の目的は、さらに大きい障害物も乗り越えられるようにする車椅子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明により、目的が、補助車輪が前輪と中間車輪との間にあって、かつ、これらの車輪の走行面から距離を置いて配置されている、初めに述べられた種類の車椅子を用いることで達成される。よって、車輪フレームの前部を車輪フレームの後部に連結するヒンジと、補助車輪との間のレバーアームを比較的に短くして、障害物を乗り越えるときに、比較的に大きな運動が行われるようにしている。よって、ばねには、比較的にたくさんのエネルギーが蓄積される。この全回転を使用して、エネルギーを蓄積するので有利である。なぜなら、最初に後輪を地面に降ろしてはならないからであり、このことは、今日に至るまで事実である。
【0008】
この補助車輪は、これらの中間車輪に結合されるか、あるいは、それとは別に駆動されてもよい。これにより、さらに障害物を乗り越えることが容易となる。
【0009】
平坦なばね特性を持つばねは特に有利である。この点では、ガス・スプリングが特に適している。なぜなら、ガス・スプリングでは、このばねを偏倚させる力が、この距離全体にわたって、ほぼ一定にとどまるからである。これは、長い距離にわたってエネルギーを蓄積させることで、障害物を乗り越えるときに、これらの中間車輪は、ほぼ一定の力で、さらに長い時間にわたって負荷が軽減される。それゆえ、これらの中間車輪は比較的に大きい障害物でも乗り越えることができる。
【0010】
補助車輪の軸線は、中間車輪の軸線の近くに配置されてもよい。補助車輪の軸線の距離が、前輪の軸線と中間車輪の軸線との間の距離の約3分の1であることは有利である。この補助車輪は高さが調整できることが望ましい。これにより、車椅子の使用者の体重に応じて、高さを調整することができる。
【0011】
この車椅子は、好ましくは、側方に互いに距離を置いて位置づけられた2つの補助車輪を持っている。
【0012】
本発明の一実施態様では、車輪フレームの前部と後部は、中間車輪と後輪との間の領域内のヒンジによって回動可能に連結されている。ただ1つの前輪および/または補助車輪を持つことも可能であるが、2つの前輪と2つの補助車輪を持つことが有利である。2つの後輪を提供することも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、図面を参照して、本発明の一実施形態を説明する。
【0014】
図1と図2は、中間車輪駆動昇降型車椅子を開示している。1つまたは複数の電動機(モータ)が駆動手段として役立っている。車輪フレーム11は、ヒンジ17により回動可能に連結されている前部13と後部15から成っている。後輪24を持つ後部15は、ばね19、好ましくは、ガス・スプリングの力に逆らって反時計回りに回転できる。前部13に位置づけられているものは、中間車輪21、前輪23、補助車輪25である。補助車輪25は、前輪23と中間車輪21との間にあって、走行面27から垂直方向に距離を置いて位置づけられている。それぞれの補助車輪25の軸線29は、水平方向に、中間車輪21の軸線31の近くに位置づけられている。この距離は、好ましくは、前輪23の軸線と中間車輪21の軸線31との間の距離の約3分の1である。それぞれの前輪23の両側には、ウエッジ35(図2には示されてない)がある。ウエッジではなくて、さらに他の補助車輪または相補形車輪を使用してもよいが、これは、前述のようにUS−B−5 964 473において図1〜図8を参照して、すでに述べられた通りである。
【0015】
前部13に連結されているものは、図示される実施形態では昇降機構である座席装置37である。しかし、座席装置37は、車椅子の通常の座席の形であってもよい。図面に見えるものは、フットレスト39と背もたれサポート41である。
【0016】
障害物43を乗り越えるときに、障害物が充分高い場合には、まず最初に、ウエッジ35が障害物と接触して前部13を上げ、それにより、ガス・スプリング19を圧縮する。前輪23が障害物43の上に移動するときに、さらなる圧縮が起る。最後に、補助車輪25が障害物43に接触すると、ヒンジ17の周りに、前部13の比較的強い回転が起って、ガス・スプリング19をさらに圧縮させ、それゆえ、障害物を乗り越えるときに、長い距離にわたって、中間車輪21の負荷を軽減する。中間車輪21が一部、障害物を乗り越えたときに、前に、車輪フレーム11の前部13を持ち上げたときに上記ばねに蓄積されたエネルギーにより、前部13が初期位置に戻り、したがって、これにより、障害物を乗り越えることが容易となる。それゆえ、この駆動力は、比較的に高い障害物43も乗り越えるのに充分である。すでに初めに述べられたように、補助車輪を中間車輪に結合させるか、あるいは、補助車輪を別に駆動させることは有利である。
【0017】
以下のように要約することができる。中間車輪駆動車椅子は、ヒンジ17により、互いに回動可能に連結された前部13と後部15から成る車輪フレーム11を持っている。少なくとも1つの前輪23、2つの中間車輪21、少なくとも1つの補助車輪25が設けられている。補助車輪25は、前輪23と中間車輪21との間にあって、かつ、これらの車輪の走行面27から距離を置いて配置されることが重要である。障害物43を乗り越えるときに、ガス・スプリング17は、前輪23と補助車輪25の両方により偏倚され、また、車椅子がさらに進行すると、解放される。これにより、障害物を乗り越えることが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】昇降型車椅子の側面図である。
【図2】昇降型車椅子の正面図である。
【符号の説明】
【0019】
11 車輪フレーム、13 前部、15 後部、17 ヒンジ、19 ばね(ガス・スプリング)、21 中間車輪、23 前輪、24 後輪、25 補助車輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒンジ(17)により回動可能に連結され、かつ、ばね(19)の力に逆らって互いに旋回できる前部(13)と後部(15)から成る車輪フレーム(11)と、
少なくとも1つの前輪(23)、2つの中間車輪(21)、少なくとも1つの後輪(24)、少なくとも1つの補助車輪(25)と、
を持つ中間車輪駆動車椅子、特に昇降型車椅子であって、
前記補助車輪(25)が、前記前輪(23)と前記中間車輪(21)との間にあって、かつ、これらの車輪の走行面(27)から距離を置いて配置されることを特徴とする車椅子。
【請求項2】
前記補助車輪(25)が前記中間車輪(21)の駆動手段に結合されていることを特徴とする請求項1に記載の車椅子。
【請求項3】
前記補助車輪(25)の軸線(29)が、水平方向に前記中間車輪(21)の軸線(31)の近くに配置されることを特徴とする請求項1または2に記載の車椅子。
【請求項4】
前記中間車輪(21)の前記軸線(31)を起点として、前記補助車輪の前記軸線(29)の水平距離が、前記前輪(23)の距離の約3分の1であることを特徴とする請求項4に記載の車椅子。
【請求項5】
前記補助車輪(25)が高さ調整可能であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車椅子。
【請求項6】
前記ばね(19)が平坦なばね特性を持っていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の車椅子。
【請求項7】
前記ばね(19)がガス・スプリングであることを特徴とする請求項6に記載の車椅子。
【請求項8】
前記車輪フレーム(11)の前記前部(13)と前記後部(15)が、前記中間車輪(21)と前記後輪(24)との間の領域内の前記ヒンジ(17)により、回動可能に連結されていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1つに記載の車椅子。
【請求項9】
2つの前輪(23)が提供されることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1つに記載の車椅子。
【請求項10】
2つの後輪が提供されることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1つに記載の車椅子。
【請求項11】
2つの補助車輪が提供されることを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1つに記載の車椅子。
【請求項12】
前記前輪(23)の両側には、ウエッジ(35)、旋回可能な脚部、あるいは、援助形または相補形の車輪が提供されることを特徴とする請求項1ないし12のいずれか1つに記載の車椅子。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−532157(P2007−532157A)
【公表日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−506632(P2007−506632)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【国際出願番号】PCT/CH2005/000182
【国際公開番号】WO2005/097033
【国際公開日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(504094280)レボ・アーゲー,ヴォーレン (2)
【Fターム(参考)】