説明

串刺し装置

【課題】 面倒で熟練の要する串刺し作業を自動的に安産かつ信頼性高く行うことができ、作業者への負担を軽減することができる串刺し装置を提供する。
【解決手段】 串刺し装置1の串刺し機構20が、電動モータ21の回転を串2に側方から作用する可動要素12の往復運動に変換する機構と、電動モータ21の回転を揺動アーム24の揺動運動に変換すると共に、揺動アーム24の揺動運動を串2の後端を軸方向に押し出す押出要素27の往復運動に変換する機構と、を含んで構成され、串収容部10内の串2を1本ずつ可動要素12の往復運動を利用して順に取り出すと共に、この串2の後端を、押出要素27の往復運動を利用して押し出すことにより、串刺し部30において串刺し処理を行う。可動要素12の往復運動に対して所定以上の負荷が生じたときに、可動要素12に電動モータの駆動力を伝達させないようにした駆動力吸収機構が備えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品その他の物品(串刺し対象物)に串を刺すことができる串刺し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食材等に串を刺した状態で提供される食品(例えば、焼き鳥、団子等の串刺し食品)は多種多様に存在するが、かかる串刺し作業は、見た目には単純な作業ではあるが、実際には、串が容易には抜けないように或いは串刺しされた隣接する食材間に隙間ができないように(或いは隙間が容易に変化しないように)、串刺し対象物に対して波打たせながら串刺しをする必要があるなど、熟練を要する作業である。
【0003】
また、多数の串刺し作業を行う必要があるため、長時間に亘って繰り返して同一作業を慎重に行う必要があり、作業者には、非常に厳しい作業を強いることとなっていた。
【0004】
このようなことから、例えば、特許文献1には、特許文献1の図1に示されるように、串を収容するホッパー1から順次1本ずつ串を供給し、串押出機15(エアシリンダなど)の出力シャフト15aの往復運動を利用して、串の後端を押し出すことで、串先端側にセットされた団子類食品に対して串刺しを行うようにしたものが記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−136266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の串刺し装置は、エアシリンダを利用するものであるため、例えば、エア供給源のない場所では串刺し処理を行うことができない。
【0007】
また、エアシリンダを利用しているため、エア供給のためのエアコンプレッサの駆動の騒音やエア解放時における騒音の問題なども生じるおそれがある。
【0008】
また、ホッパー1内に連続して整列されている最下位の串だけに串押出機15の出力シャフト15aを当接させて押し出す構成であるため、例えば、太さの異なる串に変更する場合には、太さの異なる串毎に微妙な位置調整が必要になるなど、調整が煩雑で難しいといったことも想定される。
【0009】
また、経験の少ない者でも、面倒で熟練の要する串刺し作業を、安全に、そして同じ品質で繰り返し行うことができる串刺し装置を提供することができれば、生産性の向上、コストの低減等にも貢献することができ、望ましいものである。
【0010】
本発明は、かかる実情に鑑みなされたもので、簡単かつ低コストな構成でありながら、面倒で熟練の要する串刺し作業を自動的に安産かつ信頼性高く行うことができ、以って作業者への負担を軽減することができると共に、熟練を必要としないため作業効率の向上を図ることができると共にコスト低減にも貢献可能な串刺し装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このため、本発明に係る串刺し装置は、
複数の串を収容する串収容部と、
串収容部から供給される串の後端を、串刺し対象に向けて押し出す串刺し機構と、
串刺し対象を載置するトレイと、トレイに応して設けられる押付要素と、が備えられた串刺し部と、
を含んで構成される串刺し装置であって、
前記串刺し機構が、
一の電動モータの回転を串に側方から作用する可動要素の往復運動に変換する機構と、
前記電動モータの回転を揺動アームの揺動運動に変換すると共に、揺動アームの揺動運動を串の後端を軸方向に押し出す押出要素の往復運動に変換する機構と、
を含んで構成され、
前記串収容部において1列に整列された串を1本ずつ、前記可動要素の往復運動を利用して順に取り出すと共に、
この取り出された串の後端を、前記押出要素の往復運動を利用して串刺し部方向へ押し出すことにより、前記串刺し部においてトレイと押付要素との間に保持されている串刺し対象に串を刺す串刺し処理を行うものにおいて、
前記可動要素の往復運動に対して所定以上の負荷が生じたときに、前記可動要素に、前記電動モータの駆動力を伝達させないようにした駆動力吸収機構が備えられたことを特徴とする。
【0012】
本発明において、前記駆動力吸収機構は、前記可動要素に前記電動モータからの駆動力を伝えるための係合ピンを、前記可動要素に設けられる往復運動方向に長い長穴に係合させた構成を有し、
往路或いは復路の一方において、移動する係合ピンに、前記長穴の移動方向下流端部が当接するように前記可動要素が弾性スプリングにより弾性付勢力されている一方で、
往路或いは復路の他方において、移動する係合ピンと、当該係合ピンに前記電動モータからの駆動力を伝達するリンク部材と、が相対移動可能に構成されると共に、当該係合ピンと、前記リンク部材と、の間に、前記弾性スプリングとは別の弾性スプリングが介装されていることを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡単かつ低コストな構成でありながら、面倒で熟練の要する串刺し作業を自動的に安産かつ信頼性高く行うことができ、以って作業者への負担を軽減することができると共に、熟練を必要としないため作業効率の向上を図ることができると共にコスト低減にも貢献可能な串刺し装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態に係る串刺し装置の全体を示す斜視図である。
【図2】同上実施の形態の串刺し装置の串刺し機構の内部構造を示す上面図である。
【図3】同上実施の形態の串刺し装置の串刺し機構の内部構造を示す右側面図である。
【図4】同上実施の形態の串刺し装置の串刺し機構の内部構造を示す正面図である。
【図5】同上実施の形態の串刺し装置の串刺し機構の可動プレート駆動リンク(本発明に係るリンク部材の一例)を拡大して示す上面図。
【図6】同上実施の形態の串刺し装置の串刺し部の構造を説明するための側面図である。
【図7】同上実施の形態の串刺し装置の串刺し機構の構造を説明するための側面図である。
【図8】同上実施の形態の串刺し装置に利用される着脱可能なトレイの構成例を示す斜視図である。
【図9】同上実施の形態の串刺し装置に利用される着脱可能なトレイを串刺し方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の一例を示す実施の形態について、添付の図面を参照しつつ説明する。なお、以下で説明する実施の形態により、本発明が限定されるものではない。
【0016】
本実施の形態に係る串刺し装置1は、図1に示すように、串収容部10と、串刺し機構20と、串刺し部30と、を含んで構成され、串収容部10に収容されている複数の串2を一本ずつ搬出し、搬出された串2の後端を串刺し機構20により押し出すことで、串刺し部30においてトレイ31上に載置され上蓋32の押付要素35により押し付けられて保持されている串刺し対象物(食品など:図示せず)に串2を刺すことができるように構成されている。
【0017】
串刺しされた串刺し対象物(食品など)は、串2を刺された後、作業者により上蓋32が開けられてトレイ31から取り出される。
【0018】
作業者は、完成品を取り出した後、次に串刺しすべき串刺し対象物(食品など)をトレイ31の上にセットして、次回の串刺し処理に備えるようになっている。
【0019】
本実施の形態に係る串刺し装置1の串刺し機構20は、図2に示すように、電動モータ21にクランクアーム22が取り付けられて回転駆動される。クランクアーム22の先端にはリンク23の一端が枢軸23Aを介して回動自在に取り付けられていると共に、リンク23の他端は、揺動支点25廻りに揺動自在な揺動アーム24に枢軸24Aを介して回動自在に取り付けられている。
【0020】
このため、電動モータ21が、図2において反時計回りに回転すると、これに連動してクランクアーム22が反時計回りに回転する。そして、このクランクアーム22に連結されているリンク23に連結される揺動アーム24は、電動モータ21が1回転する間に、揺動支点25廻りを1往復運動(揺動)されるようになっている。
【0021】
なお、図2のA点が、揺動アーム24の揺動の開始点(初期位置、原位置)であり、図2のB点が揺動中間点であり、図2のC点が揺動の最大ストローク(振幅)点(位置)である。
【0022】
揺動アーム24の揺動支点25(基端側)の反対側(先端側或いは揺動側)は、U字状切欠(長穴)26を介して串刺し用ブロック27に連結されている。串刺し用ブロック27は、本発明に係る押出要素の一例に相当する。
【0023】
串刺し用ブロック27は、リニアガイド28によって、図2において左右方向に直動自在に支持されている。
【0024】
このような構成により、揺動アーム24が揺動支点25廻りに揺動されると、それに応じて、串刺し用ブロック27には、リニアガイド28に沿った方向(図2の左右方向)に関する往復運動動力が作用されることになる。すなわち、U字状切欠(長穴)26により揺動アーム24を長手方向に滑らせることによって、串刺し用ブロック27には、リニアガイド28に沿った方向(図2の左右方向)に関する動力が作用され、串刺し用ブロック27は、リニアガイド28に沿って、図2の左右方向に往復直線運動されることになる。
ここで、図2のA点が、串刺し用ブロック27の往復直線運動開始位置(初期位置、原位置)であり、図2のB点が往復直線運動中間点であり、図2のC点が往復直線運動の最大ストローク位置である。
【0025】
より詳細には、揺動アーム24により駆動される串刺し用ブロック27は、リニアガイド28に沿って図2のA点から図2右方に移動を開始し、図2のB点付近においてリニアガイド28に沿ってセットされている串2の後端を押圧して、図2のC点にて串刺し処理を終了した後、再び、図2のB点を経由してA点まで戻るように動作される。
【0026】
このように、本実施の形態に係る串刺し装置1の串刺し機構20は、電動モータ21が1回転する毎に、揺動アーム24延いては串刺し用ブロック27が一往複運動するように構成され、この串刺し用ブロック27の一往復運動の往路にて、串刺し用ブロック27は、串2を図2中右方向の串刺し部30へ押し出し、復路にて原位置(初期位置)へ復帰されるように構成されている。
【0027】
続いて、串2の供給について説明する。
串2は、串収容部10に多数収容されているが、先端の尖った部分(串刺し対象物に刺される側)が、串刺し部30を向いて収容されている(図2や図4等参照)。
【0028】
図3に示すように、串2は、重力を利用して、串収容部10内の整列部11に1本ずつ送られて、ここで一例に整列される。
【0029】
整列部11の下端には、串2の整列方向と交差する方向に、可動要素の一例である可動プレート12が配設され、最下位の串2の下方への移動が当該可動プレート12の上面に支持されることで規制されている。
【0030】
可動プレート12は、図3の左右方向(図2の上下方向)に移動可能に、図2に示されるリニアガイド12Dやサイド支持レール12E等により支持されている。
【0031】
そして、可動プレート12には、長穴12Bを介して、係合ピン13が係合(連結)されていると共に、この係合ピン13には、可動プレート駆動リンク14が連結されている。
【0032】
可動プレート駆動リンク14は、図2、図3に示すように、一端(基端)が連結ピン15Aを介して揺動プレート15に連結されている一方で、他端(先端)が係合ピン13を介して可動プレート12に連結されている。
【0033】
なお、前記揺動プレート15は、揺動支点25及び連結ピン15Bを介して揺動アーム24に略一体的に取り付けられており、揺動アーム24と連動して揺動支点25廻りに揺動されるようになっている。
【0034】
前記可動プレート駆動リンク14の一端(基端)が連結される連結ピン15Aは、揺動支点25から所定にオフセットして取り付けられているため、揺動アーム24及び揺動プレート15の揺動運動により、連結ピン15Aは揺動支点25廻りに揺動されることになる(図2の揺動範囲Xを参照)。
【0035】
このため、連結ピン15Aに連結されている可動プレート駆動リンク14延いては係合ピン13は、図2において上下方向に往復運動されることになる。
【0036】
すなわち、電動モータ21が1回転する毎に、揺動アーム24及び連結ピン15Aが一往複するように揺動され、これに同期して、可動プレート駆動リンク14延いては係合ピン13が図2中上下方向に往復運動されて、可動プレート12に対して往復運動のための動力を伝達するようになっている。
【0037】
ここで、可動プレート12は、電源オフの状態や揺動アーム24が初期位置(図2のA)にあるときには、弾性スプリング12Cにより、図3に示す往復運動の初期位置(原位置)S1に弾性付勢されている。
【0038】
なお、図7に示すように、弾性スプリング12Cの一端は、装置本体フレーム(固定)側に取り付けられ、他端が可動プレート12から立設されているピン12Fに取り付けられている。弾性スプリング12C、ピン12Fは、図7に直交する方向における可動プレート12の両端付近のそれぞれに設けることができる。
【0039】
この初期位置(原位置)S1にあるとき、係合ピン13は可動プレート12の長穴12Bの図2上端に当接した状態となっている。
したがって、この状態で、例えば作業者が外部から、可動プレート12を図3中右方向(図2中上方)に押し動かすと、係合ピン13が長穴12Bの下端に至るまで、可動プレート12はスプリング12Cの弾性力に抗して移動できるようになっている。
【0040】
この初期状態では、串2を1本だけ収容可能な串収容部12Aは空の状態(図7等の状態を参照)であり、揺動アーム24の揺動開始と同時に、可動プレート駆動リンク14及び係合ピン13が図3中右方向(図2中上方向)に移動され、係合ピン13に係合する長穴12Bを介して、可動プレート12は図3に示す往復運動の最大ストローク位置S2へ向けて移動される。
【0041】
可動プレート12が図3の往復運動の最大ストローク位置S2へ到達すると、串収容部12Aと、串収容部10内の整列部11の下端開口部と、が図2平面に直交する方向から見たときに重なる(一致する)ため、串収容部10内の整列部11の最下位の串2が串収容部12Aに落とし込まれる(図3等参照)。
【0042】
なお、可動プレート12の裏面(図3において可動プレート12の下側)には、固定プレート16が配設されているため、串収容部12Aに落とし込まれた串2は、それ以上落下することはなく、固定プレート16の上で串収容部12A内に収容維持されるようになっている。
【0043】
その後、可動プレート12は往復運動の往路へと移行するが、可動プレート12は、串2を串収容部12A内に収容維持した状態で、図3に示した初期位置(原位置)S1へ戻されることになる。
【0044】
なお、弾性スプリング12Cにより初期位置方向に弾性付勢されている可動プレート12は、係合ピン13の駆動により移動されるのではなく、可動プレート駆動リンク14を介して初期位置(原位置)S1へ徐々に移動される係合ピン13を、長穴12Bの上端に当接させながら、弾性スプリング12Cの弾性力により初期位置(原位置)S1へ戻されるようになっている。
【0045】
このような構成とすれば、可動プレート12が何らかの原因で初期位置(原位置)S1へ戻ることができないような場合でも、可動プレート駆動リンク14からの駆動力を受ける係合ピン13が長穴12B内において初期位置(原位置)S1側へ移動することができるため、無理な負荷が、係合ピン13、可動プレート12、可動プレート駆動リンク14、揺動アーム24に作用してこれらに損傷等が生じることが防止される。
【0046】
往復運動の初期位置(原位置)S1には、固定プレート16に貫通部16Aが設けられているため、固定プレート16の貫通部16Aと、串収容部12Aと、が図2平面に直交する方向から見たときに重なる(一致する)こととなって、串収容部12Aに収容されていた串2が、貫通部16Aを通過して、串刺し機構20の串刺し初期位置(V字溝)20Aに落下供給されるようになっている。
【0047】
そして、この串刺し機構20の串刺し初期位置(V字溝)20Aに供給された串2は、図4のA点(往復直線運動開始点、初期位置、原位置)から、図4のB点(往復直線運動中間点)を通過して、図4のC点(往復直線運動の最大ストローク位置)まで、リニアガイド28に沿って往復移動される串刺し用ブロック27により、その後端部が、図4のB点付近にて押圧開始され、図4のC点まで押されることで、串刺し部30のトレイ31上に支持されている串刺し対象物(食品など)に刺されることになる。
【0048】
ここで、串刺し部30に関して説明する。
作業者は、串刺し作業開始前の段取り時或いは既に串刺し処理を実行中において前回の串刺し処理完了後に、上蓋32をハンドル33を利用して枢軸34廻りに回動して開放する(図6等参照)。
【0049】
作業者が上蓋32を開ける際には、図2、図3、図4に示したレバー36が従動するように構成され、この開動作によりレバー36が図3中時計方向に回転され、前回の串刺し処理完了後の串2の後端側を持ち上げて、作業者が串刺し処理完了後の串2を取り出し易くしている。
【0050】
なお。前回の串刺し処理完了後には、制御部(図示せず)により電動モータ21への電力供給が停止されると共に、前回の串刺し処理完了を知らせるブザーを鳴動させたり、警告灯を点灯させるなどして、作業者に前回の串刺し処理が完了したことを報知するようになっている。
【0051】
また、この串刺し作業開始前の段取り時或いは前回の串刺し処理完了時には、電動モータ21のクランクアーム22、串収容部10の可動プレート12、串刺し機構20の揺動アーム24、串刺し用ブロック27などの可動部は初期位置(原位置)に戻されている。
【0052】
作業者により上蓋32が開けられ、串刺し作業開始後の最初の1回目、或いは作業者が串刺し処理完了後の串2を取り出した後、作業者は、トレイ31の上に、次回の串刺し処理のための串刺し対象物(食品など)をセットする。
【0053】
串刺し対象物(食品など)のセット完了後、作業者は、上蓋32を枢軸34廻りに回動して閉じ状態にする。なお、上蓋32を閉じることで、トレイ31に載置された串刺し対象物(食品など)は、上蓋32に略一体的に取り付けられてトレイ31の串刺し対象物の収容部の形状に対応した形状を有する35により、トレイ31に押し付けられて保持されることで、串刺し力に対抗することになる。
【0054】
この上蓋32を閉じる動作に応じて、例えばリミットスイッチが起動され、電動モータ21への電力供給が開始される。なお、串刺し処理の途中で、上蓋32が開けられた場合には、電動モータ21は非常停止されるように構成することができる。
【0055】
制御部(図示せず)では、所定回転速度で電動モータ21を図2中反時計回りに1回転させる。回転速度は、要求される生産速度などに応じて適宜に設定可能とすることができる。
【0056】
この電動モータ21の1回転の間に、揺動アーム24の揺動が1往復(図2のA→B→C→B→A)されると共に、可動プレート12が1往復直線運動(図3のS1→S2→S1)される。
【0057】
可動プレート12は、上述したように、往復直線運動の初期位置(原位置)S1(図3参照)から最大ストローク位置S2(図3参照)へ進み、ここで新たな串2を串収容部12A内に収容した後、往復直線運動の初期位置(原位置)S1に戻り、ここで、固定プレート16の貫通部16Aを介して、串収容部12Aから、前記新たな串2を串刺し機構20の串刺し初期位置(V字溝)20Aに供給する。
【0058】
串刺し機構20の串刺し初期位置(V字溝)20Aに供給された串2は、揺動アーム24の一往復運動(揺動)の往路の途中延いては串刺し用ブロック27の一往復運動の往路の途中において、串刺し用ブロック27と当接され、後端を押されて串刺し部30側へ押し出され、トレイ31の上にセットされている串刺し対象物(食品など)を、串刺し用ブロック27の最大ストローク位置(往路終了点)まで刺し通す(図2、図4参照)。
【0059】
その後、串刺し用ブロック27は、一往復運動の往路へ移行するが、それにより、串2の後端から離れ、串刺し用ブロック27のみが原位置(初期位置)へ戻され、串2は、トレイ31の上にセットされている串刺し対象物(食品など)に刺されたまま残ることになる。
【0060】
これにより串刺し処理は完了し、既述したように、ブザーが鳴動したり、警告灯が点灯するなどして、作業者に串刺し処理が完了したことが報知される。
作業者は、上蓋32を開けて串2を取り出して、次の串刺し処理の準備を行う。
【0061】
以上のような動作を繰り返すことで、作業者は、連続的に、簡単かつ安全に、一定品質の串刺し処理を行うことができる。
【0062】
このように、本実施の形態に係る串刺し装置によれば、簡単かつ低コストな構成でありながら、面倒で熟練の要する串刺し作業を信頼性高く自動的に行うことができるので、作業者への負担を軽減することができると共に、熟練を必要としないため作業効率を向上できると共に高品質な串刺し処理を提供することができる。
【0063】
なお、本実施の形態に係る串刺し装置では、電動モータ21と、これに連結されるクランク機構を含むリンク機構を介して、串刺し処理を行わせるため、エアコンプレッサ等のエア供給源のない場所でも、良好に串刺し処理を行うことができる。
【0064】
また、本実施の形態では、電動モータ21と、これに連結されるクランク機構を含むリンク機構を介して、串刺し処理を行う構成を採用し、比較的大きな串刺し力を発生させて串刺し処理(動作)を行うことができるようにしたので、比較的柔軟なものから凍ったものまで良好に串刺しを行うことができる。すなわち、本実施の形態に係る串刺し装置によれば、強力な串刺し力を達成しながら、低騒音で消費電力も少ない経済的な串刺し装置を提供することができる。
【0065】
なお、本実施の形態では、例えば、串刺し処理の実行中に、可動プレート12が初期位置(原位置)S1にて、可動プレート12の串収容部12Aと、固定プレート16の貫通部16Aと、の相対位置が図2平面から見て重畳(一致)したときに、例えば、何らかの要因で、串2が、可動プレート12の串収容部12Aから、固定プレート16の貫通部16Aを介して、刺し機構20の串刺し初期位置20Aに円滑に落下できずに、次の串2を取るために最大ストローク位置S2へ移動を開始した可動プレート12の串収容部12Aと、固定プレート16の貫通部16Aと、の双方に跨って挟まれてしまうといった現象の発生が想定される。
【0066】
また、串2に限らず、何らかの異物が入り込んで、可動プレート12の串収容部12Aと、固定プレート16の貫通部16Aと、の双方に跨って挟まれてしまうといった現象の発生も想定される。
【0067】
このような現象が発生した場合、可動プレート12延いてはこれを長穴12Bを介して駆動している係合ピン13、可動プレート駆動リンク14、連結ピン15A、揺動プレート15等に過大な負荷が作用して、各部に変形や損傷等が生じて故障の原因となるおそれがある。特に、串2や異物が固い場合には、損傷の程度は大きくなる。
【0068】
このため、本実施の形態においては、可動プレート駆動リンク14を、図3や図5に拡大して示すように、駆動(連結ピン15A)側と略一体的に構成される駆動側要素14Aと、被駆動(係合ピン13)側と略一体的に構成される被駆動側要素14Bと、を可動プレート駆動リンク14の長手方向に関して相対移動可能に連結すると共に、駆動側要素14Aと、被駆動側要素14Bと、を弾性スプリング14C等を介して連結した構成とした。
なお、本実施の形態に係る可動プレート駆動リンク14が、本発明に係るリンク部材の一例に相当する。
【0069】
すなわち、駆動側要素14A側の連結ピン15Aと、被駆動側要素14B側の係合ピン13と、を相対的に接近させる力が作用する場合(係合ピン13を図5中下方に移動させて初期位置S1へ復帰させる際)には、駆動側要素14Aと略一体の位置調整ナット14Eと、被駆動側要素14Bと、が当接して、駆動側要素14A側の連結ピン15Aと、被駆動側要素14B側の係合ピン13と、が所定以上に接近することが規制される。
【0070】
なお、この場合には、上述したように、可動プレート12が何らかの原因で初期位置(原位置)S1へ戻ることができないような場合でも、駆動力を受ける係合ピン13が長穴12B内において初期位置(原位置)S1側へ移動することができるため、無理な負荷が、係合ピン13、可動プレート12、可動プレート駆動リンク14、揺動アーム24に作用してこれらに損傷等が生じることを確実に防止することができる。
かかる機構が、可動要素(可動プレート12)の復路(原位置へ戻る際)における、本発明に係る駆動力吸収機構の一部を構成する。
【0071】
この一方、駆動側要素14A側の連結ピン15Aと、被駆動側要素14B側の係合ピン13と、を相対的に離間させる力が作用する場合(係合ピン13を図5中上方に移動させて最大ストローク位置S2へ移動させる際)には、駆動側要素14Aと略一体のスプリング支持エンド14Dと、被駆動側要素14Bと、の間に介装されるスプリング14Cを縮めるような力が作用するようになっている。
【0072】
このため、可動プレート12を最大ストローク位置S2へ移動する場合において、串や異物が、可動プレート12の串収容部12Aと、固定プレート16の貫通部16Aと、の双方に跨って挟まれてしまったような場合には、駆動側要素14A側の連結ピン15Aは、弾性スプリング14Cを圧縮することで、被駆動側要素14B(係合ピン13)側から独立して動くことができるので、無理な負荷が、係合ピン13、可動プレート12、可動プレート駆動リンク14、揺動アーム24に作用してこれらに損傷等が生じることを確実に防止することができる。
かかる機構が、可動要素(可動プレート12)の往路(原位置から最大ストローク位置へ向かう最)における、本発明に係る駆動力吸収機構の一部を構成する。
なお、可動要素(可動プレート12)の初期位置と最大ストローク位置の設定の仕方によっては、可動要素(可動プレート12)の往路に係る駆動力吸収機構を復路の駆動力吸収機構として利用し、復路に係る駆動力吸収機構を往路の駆動力吸収機構として利用するように、往路と復路の駆動力吸収機構を適宜に入れ替えて構成することも可能である。
【0073】
従って、本実施の形態によれば、所定以上の負荷が、可動プレート12延いてはこれを駆動している係合ピン13、可動プレート駆動リンク14、連結ピン15A、揺動プレート15等に作用して、各部に変形や損傷等が生じて故障の原因となるおそれを確実に回避することができる。
【0074】
すなわち、本実施の形態に係る串刺し装置1は、可動プレート12が何らかの原因により固着などして移動できない或いは移動し難い状態の場合において、作業者が上蓋32を閉めて電動モータ21の回転駆動が開始されたような場合であっても、所定以上の負荷が作用したときには、可動プレート12と、これを駆動している係合ピン13と、が相対移動できるように構成したので、可動プレート12、係合ピン13、可動プレート駆動リンク14、連結ピン15A、揺動プレート15等に大きな力が作用し、各部に変形や損傷等が生じて故障の原因となるといったおそれを確実に回避することができ、以って信頼性の高い串刺し装置の実現に貢献することができる。
【0075】
なお、トレイ31は、串刺し対象物(食品など)の種類、サイズ、形状、1本の串に刺すべき個数、串の種類、形状、サイズなどに応じて、装置本端に対して交換(着脱)可能に取り付けられる。
【0076】
このようなトレイ31の着脱機構としては、実用新案登録第3173953号公報に記載されている着脱機構を採用することができる。
【0077】
詳細には、図8に示すように、装置本体側に取り付けられる下側アタッチメント200の内側のコ字状底部201には、その取り付けの際にトレイ31の下側に開口されている位置決め穴330と係合して相対的な位置決めを行うための位置決めピン220が立設されている。
【0078】
更に、下側アタッチメント200の内側のコ字状底部201には、トレイ31を磁気吸着するための磁石230が取り付けられている。磁石230は、例えば接着剤などにより取り付けることができる。
【0079】
トレイ31は、例えば、ポリウレタン製で、その下面には、薄板状の磁性体320が略一体的に取り付けられている。
【0080】
磁性体320は、鉄系金属とすることができるが、食品等を扱うような場合で洗浄が必要で耐腐食性が要求される場合には、磁性を有するステンレス材料(フェライト系ステンレス)であるSUS430などを採用することができる。
【0081】
また、トレイ31は、凹状収容部311にセットされる串刺し対象物(食品など)の種類などに応じてその素材は適宜に選定することができ、ポリウレタン製に限らず、テフロン(登録商標)製その他の樹脂製、或いはアルミその他の金属製などとすることができる。なお、符号312、313は、串刺し処理の際に、串2が通過するための切欠きである。
【0082】
ここで、本実施の形態においては、トレイ31は、磁石230による磁気吸着力により下側アタッチメント200に吸着支持されるが、磁力の弱い磁石では下側アタッチメント200からトレイ31が脱落してしまうおそれがある。
【0083】
このため、従来は、磁石を強力なものとしていたが、磁力が大きくすると、作業者の手の力では簡単にはトレイ31を下側アタッチメント200から取り外すことができなくなってしまうといった問題があった。
【0084】
本実施の形態では、このようなことから、磁石230として異方性磁石を採用し、図9に示すように、磁化容易軸が、串刺し部30のトレイ取り付け部120の上面に対してほぼ直交する方向となるようにして、この方向における磁気吸着力(磁力)のみが大きくなるように構成した。
【0085】
また、下側アタッチメント200に固定される磁石230の上面と、トレイ31(磁性体320)の下面と、を密着させてしまうと、両者を分離するには大きな力が必要となるため、本実施の形態では、下側アタッチメント200に固定される磁石230の上面と、トレイ31(磁性体320)の下面と、が当接することがないように、図9に示すように、所定隙間をもって取り付けるように構成されている。
【0086】
具体的には、下側アタッチメント200のコ字状の立ち上がり部202の先端が、トレイ31(磁性体320)の下面と当接するように、立ち上がり部202の高さが、磁石230の高さより、所定に高く、例えば、0.2mm〜1mm程度高くなるように設定されている。すなわち、所定隙間は、例えば、0.2mm〜1mm程度とされる。
【0087】
これにより、下側アタッチメント200に固定される磁石230の上面と、トレイ31(磁性体320)の下面と、が密着することが防止される。すなわち、前記所定間隙の大きさを適宜に設定しておくことで、トレイ31に対する磁石230による磁気吸着力を、交換時、メンテナンス時、清掃時などにおいてトレイ31を取り外す際に作業者にとって適切な大きさに調整することができるようになっている。
【0088】
このように、本実施の形態では、異方性磁石を採用したので磁石230の磁気吸着力を取り付け部120の上面に対してほぼ直交する方向に対して大きくできるため、トレイ31が下側アタッチメント200から不用意に脱落するようなことを防止するのに十分な磁気吸着力を得ることができる一方で、それ以外の方向への磁気吸着力は比較的小さくできると共に、磁石230の上面と、トレイ31(磁性体320)の下面と、が密着しないように所定間隙を設けた構成としたので、交換時、メンテナンス時、清掃時などにおいて、作業者はトレイ31の串の長手方向と略直交する方向における一端側を支点(図9参照)として、他端側を、図9中矢印Xの方向に回転させながら持ち上げるといった操作を行うことで、比較的小さな力で容易にトレイ31を下側アタッチメント200から取り外すことができる。
【0089】
また、本実施の形態では、位置決めピン220と、これに係合する位置決め穴330と、を設け、これらにより、トレイ31と下側アタッチメント200の当接面内での位置決めを行わせるようにしたので、トレイ31を、下側アタッチメント200延いては装置本体に対して正確に位置決めされた状態で取り付けることができる。
【0090】
更に、本実施の形態では、位置決めピン220と、位置決め穴330と、を係合させることにより、トレイ31が下側アタッチメント200との当接面内で所定以上に移動することが禁止されるようにしたので、トレイ31に対して横方向からの力(串刺し力)が作用した場合でも、その力に対して、位置決めピン220と位置決め穴330との係合部が抵抗することができるになるたり、磁石230の磁気吸着力(トレイ31と下側アタッチメント200とを密着させる磁気吸着力)に対して大きく影響することが防止され、以ってトレイ31が下側アタッチメント200から不用意に脱落するようなことを確実に防止することができる。
【0091】
このように、本実施の形態に係るトレイの着脱機構によれば、簡単かつ低コストな構成でありながら、作業者が容易に装置本体に対してトレイを着脱することができるようにして、交換作業等における作業者への負担を軽減すると共に、トレイの清掃、消毒作業も容易となって衛生面においても高いレベルを維持することに貢献可能となる。
【0092】
なお、本実施の形態では、上蓋32を閉じることで、押付要素35により、トレイ31に載置された串刺し対象物(食品など)をトレイ31に押し付け保持することで、串刺し力に対抗するようになっているが、トレイ31の串刺し対象物(食品など)の収容部の底部の凹凸形状や、これに対応して形成されている押付要素35の下面の凹凸形状を食材に合わせて適宜の形状とすることができる。
【0093】
以上で説明した実施の形態は、本発明を説明するための例示に過ぎず、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々変更を加え得ることは可能である。
【符号の説明】
【0094】
1 串刺し装置
2 串
10 串収容部
11 整列部
12 可動プレート(本発明に係る可動要素に相当)
12A 串収容部
12B 長穴(本発明に係る駆動力吸収機構の一部を構成する)
12C 弾性スプリング(本発明に係る駆動力吸収機構の一部を構成する)
13 係合ピン
14 可動プレート駆動リンク(本発明に係るリンク部材に相当)
14A 駆動側要素(本発明に係る駆動力吸収機構の一部を構成する)
14B 被駆動側要素(本発明に係る駆動力吸収機構の一部を構成する)
14C 弾性スプリング(本発明に係る駆動力吸収機構の一部を構成する)
14D スプリング支持エンド
14E 位置調整ナット
15 揺動プレート
15A 連結ピン
16 固定プレート
16A 貫通部
20 串刺し機構
20A 初期位置(V字溝)
21 電動モータ
22 クランクアーム
23 リンク
24 揺動アーム
25 揺動支点
27 串刺し用ブロック
28 リニアガイド
30 串刺し部
31 トレイ
32 上蓋
35 押付要素


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の串を収容する串収容部と、
串収容部から供給される串の後端を、串刺し対象に向けて押し出す串刺し機構と、
串刺し対象を載置するトレイと、トレイに応して設けられる押付要素と、が備えられた串刺し部と、
を含んで構成される串刺し装置であって、
前記串刺し機構が、
一の電動モータの回転を串に側方から作用する可動要素の往復運動に変換する機構と、
前記電動モータの回転を揺動アームの揺動運動に変換すると共に、揺動アームの揺動運動を串の後端を軸方向に押し出す押出要素の往復運動に変換する機構と、
を含んで構成され、
前記串収容部において1列に整列列された串を1本ずつ、前記可動要素の往復運動を利用して順に取り出すと共に、
この取り出された串の後端を、前記押出要素の往復運動を利用して串刺し部方向へ押し出すことにより、前記串刺し部においてトレイと押付要素との間に保持されている串刺し対象に串を刺す串刺し処理を行うものにおいて、
前記可動要素の往復運動に対して所定以上の負荷が生じたときに、前記可動要素に、前記電動モータの駆動力を伝達させないようにした駆動力吸収機構が備えられたことを特徴とする串刺し装置。
【請求項2】
前記駆動力吸収機構は、前記可動要素に前記電動モータからの駆動力を伝えるための係合ピンを、前記可動要素に設けられる往復運動方向に長い長穴に係合させた構成を有し、
往路或いは復路の一方において、移動する係合ピンに、前記長穴の移動方向下流端部が当接するように前記可動要素が弾性スプリングにより弾性付勢力されている一方で、
往路或いは復路の他方において、移動する係合ピンと、当該係合ピンに前記電動モータからの駆動力を伝達するリンク部材と、が相対移動可能に構成されると共に、当該係合ピンと、前記リンク部材と、の間に、前記弾性スプリングとは別の弾性スプリングが介装されていることを特徴とする請求項1に記載の串刺し装置。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図1】
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【公開番号】特開2012−213398(P2012−213398A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2012−125828(P2012−125828)
【出願日】平成24年6月1日(2012.6.1)
【出願人】(511307306)コジマ技研工業有限会社 (2)
【Fターム(参考)】