説明

乗員判別装置、及び、乗員判別方法

【課題】シートに着座した大人と、補助シートを用いて着座した子供を常時正確に判別することのできる乗員判別装置、及び、乗員判別方法を提供する。
【解決手段】乗員を含むシート1B上の対象物の距離画像データを取得する距離画像センサ4を設ける。距離画像センサ4で取得した距離画像データを基に、対象物全体の体積に対する乗員の上肢領域の体積比率を求める上肢比率算出手段30を設ける。上肢比率算出手段30で算出した比率が閾値以上の場合に大人であるものと判別し、算出した比率が閾値よりも小さい場合に補助シートに着座した子供であるものと判別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両のシートに着座した乗員を判別する乗員判別装置、及び、乗員判別方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のシートを斜め上方から三次元画像として撮影し、その撮影データを解析することによって、シートに着座した乗員が大人であるのか、補助シート(ブースタシート)に着座した子供であるのかを判別する乗員判別装置が案出されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この乗員判別装置は、三次元画像データを基にしてシートボトムが検出されているか否かを調べ、シートボトムが検出されていない場合に、乗員が着座しているものと判定し、さらに、下肢領域が閾値以上に高い位置にある場合には、シート上の乗員は補助シートに着座した子供であるものと判別し、下肢領域が閾値よりも低い位置にある場合には、シート上の乗員は大人であるものと判別する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2004−503759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、この従来の乗員判別装置は、下肢領域の高さと閾値とを比較して、大人と補助シートに着座した子供を判別するようにしているため、シート自体が上下に高さ調整可能である場合や、大人がシート上で正座をしたり、座布団を引いてシートに着座したりしている場合に、補助シートに着座している子供と誤判別される可能性が考えられる。
【0006】
そこでこの発明は、シートに着座した大人と、補助シートを用いて着座した子供を常時正確に判別することのできる乗員判別装置、及び、乗員判別方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、シート(例えば、実施形態のシート1B)に着座した乗員が、大人であるのか、補助シート(例えば、実施形態の補助シート8)を用いて着座した子供であるのかを判別する乗員判別装置において、乗員を含むシート上の対象物の距離画像データを取得する距離画像センサ(例えば、実施形態の距離画像センサ4)と、前記対象物の距離画像データを基に、当該対象物の全体の体積に対する乗員の上肢領域の体積の比率を求める上肢比率算出手段(例えば、実施形態の上肢比率算出手段30)と、この上肢比率算出手段で算出した比率が閾値以上の場合に大人であるものと判別し、前記算出した比率が閾値よりも小さい場合に補助シートに着座した子供であるものと判別する判別手段(例えば、実施形態の判別手段31)と、を備えていることを特徴とするものである。
子供が補助シートを用いて着座しているときには、下肢領域の体積は補助シートによって見かけ上(計測上)増大し、上肢領域の体積は実際の子供の体積となる。このため、子供が補助シートを用いて着座しているときには、対象物の全体の体積に対する乗員の上肢領域の体積の比率が閾値よりも小さくなり、大人がシートに着座しているときには、
対象物の全体の体積に対する乗員の上肢領域の体積の比率が閾値以上になる。したがって、対象物の全体の体積に対する乗員の上肢領域の体積の比率を閾値と比較することにより、補助シートを用いて着座した子供と、シートに着座した大人が正確に判別される。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る乗員判別装置において、前記上肢比率算出手段は、前記対象物の距離画像データを、前記シートの前後方向、左右方向、上下方向を軸とした直交座標画像に変換し、その直交座標画像を前記シートの前後方向と上下方向を含む平面に投影した平面投影二値画像に変換し、その平面投影二値画像を基に乗員の腰位置分離線(例えば、実施形態の腰位置分離線L)を求め、その腰位置分離線よりも上方側を乗員の上肢領域として、前記対象物の全体の体積と乗員の上肢領域の体積の比率を算出することを特徴とするものである。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項2に係る乗員判別装置において、前記上肢比率算出手段は、前記平面投影二値画像に細線化処理を行い、細線化処理によって得られた画像の上端部の点と前端部の点を結ぶ傾斜直線(例えば、実施形態の傾斜直線n)の傾斜角度(例えば、実施形態の傾斜角度θ)を求め、ここで求められた傾斜角度が所定角度の範囲内であれば、前記傾斜直線からの離間距離が最も大きい細線化処理線(例えば、実施形態の細線化処理線m)上の点と前記傾斜直線とを最短で結ぶ直線を前記腰位置分離線とし、前記傾斜角度が所定角度の範囲から外れる場合には、前記傾斜直線の中点と直交する直線を前記腰位置分離線とすることを特徴とするものである。
乗員がシートに正規姿勢で深く腰掛けているときには、傾斜直線の傾斜角度は所定角度の範囲内となり、乗員がシート上で正座しているときのように腰位置が極端に高い場合や、腰位置を前方に大きくずらして着座している場合には、傾斜直線の傾斜角度は所定角度の範囲から外れることになる。このため、傾斜直線の傾斜角度が所定角度の範囲内の場合には、傾斜直線から細線化処理線までの距離が最も大きい点と傾斜直線とを最短で結ぶ直線が乗員のほぼ腰位置を通ることになり、傾斜直線の傾斜角度が所定角度の範囲から外れる場合には、傾斜直線の中点と直交する直線が乗員のほぼ腰位置を通ることになる。
【0010】
請求項4に係る発明は、シートに着座した乗員が、大人であるのか、補助シートを用いて着座した子供であるのかを判別する乗員判別方法において、乗員を含むシート上の対象物の距離画像データを距離画像センサによって取得し、前記対象物の距離画像データを基に、当該対象物の全体の体積に対する乗員の上肢領域の体積の比率を求め、ここで求めた比率が閾値以上の場合に大人であるものと判別し、前記比率が閾値よりも小さい場合に補助シートに着座した子供であるものと判別することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、シート上の対象物の距離画像データを基に、対象物全体の体積に対する乗員の上肢領域の体積の比率を求め、その比率が閾値以上の場合に大人であるものと判別し、その比率が閾値よりも小さい場合に補助シートに着座した子供であるものと判別するようにしているため、シート自体が高さ調整可能なものである場合や、大人がシート上で正座をしたり、座布団を引いてシートに着座したりしている場合であっても、シートに着座した大人と、補助シートを用いて着座した子供を常時正確に判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の一実施形態の乗員判別装置を採用した車両の車室内の斜視図である。
【図2】この発明の一実施形態の乗員判別装置の概略構成図である。
【図3】この発明の一実施形態の乗員判別装置の画像処理の一部のイメージを示す図である。
【図4】子供の着座する補助シートの斜視図である。
【図5】シートに着座した大人と、シートに着座した子供と、補助シートを用いてシートに着座した子供の全体体積と上肢比率の関係を示す統計図である。
【図6】この発明の一実施形態の乗員判別装置の制御装置の処理を説明するフローチャートである。
【図7】この発明の一実施形態の乗員判別装置の制御装置の上肢比率算出処理を説明するフローチャートである。
【図8】この発明の一実施形態の乗員判別装置の画像処理の過程で得られた平面投影二値画像を示す図である。
【図9】この発明の一実施形態の乗員判別装置の画像処理の過程で平面投影二値画像に細線化処理を行って得られた図である。
【図10】この発明の一実施形態の乗員判別装置の画像処理の過程で平面投影二値画像に腰位置分離線を入れた図である。
【図11】この発明の一実施形態の乗員判別装置による上肢に対する体積算出のイメージを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、この実施形態の乗員判別装置10を採用した車両の車室内を示す図であり、同図中1A,1Bは、運転席側と助手席側のシート、2は、前席前方に配置されたインストルメントパネル、3は,インストルメントパネル2内の助手席前方位置に配置されたエアバッグモジュールである。また、4は、運転席と助手席の間の天井部に助手席側に向けて設置された単眼式の距離画像センサであり、5は、距離画像センサ4の検出信号を受けて乗員判別を行い、衝撃の入力時に、乗員判別の結果に応じてエアバッグモジュール3の作動を制御する制御装置である。制御装置5によるエアバッグモジュール3の作動制御は、例えば、空席の場合に非作動とし、大人が着席している場合には通常作動、子供が着席している場合には弱い展開力での作動、若しくは、非作動とする。
この実施形態の乗員判別装置10は、距離画像センサ4と制御装置5を主要な要素として構成され、距離画像センサ4で取得した距離画像データに対して各種の画像処理を行い、その画像処理の結果に基づいて、助手席に着座する乗員を判別する。
【0014】
図2は、乗員判別装置10の概略構成を示す図である。
この実施形態の距離画像センサ4は、照射された光が対象物で反射し戻ってくるまでの時間を計測し、その時間を基にして対象物までの距離を求めるTOF(time of flight)方式のセンサを採用している。
距離画像センサ4は、発光部6が、近赤外線LED11と、近赤外線LED11を所定周波数でパルス発光させる駆動回路12と、近赤外線LED11の光を散乱させて対象物に照射する散乱板13と、によって構成され、受光部7が、対象物で反射した光を集光する集光レンズ15と、ノイズ光を除去するフィルター16と、フィルター16を透過した光のエネルギーを電荷として蓄積し電圧信号に変換するCCD撮像素子17と、によって構成されている。そして、距離画像センサ4は、発光部6と受光部7が処理部19によって制御され、処理部19内の距離画像生成部19Aと輝度画像生成部19Bが発光パルスと受光パルスの位相のずれを基にして距離画像データと輝度画像データを生成するようになっている。
距離画像センサ4の処理部19で生成された距離画像データと輝度画像データは制御装置5に出力される。
【0015】
制御装置5は、距離画像センサ4から入力された距離画像データを、シート1Bの前後方向(T方向)、左右方向(B方向)、上下方向(H方向)を軸とした直交座標画像に変換する直交座標変換部20と、直交座標画像をシート1Bの前後方向と上下方向を含む平面に投影した平面投影二値画像に変換する二値画像変換部21とを備えている。
図3は、直交座標変換部20での処理の一例のイメージを示したものである。
直交座標変換部20では、距離画像センサ4で取得した距離画像データをシート1Bを中心とした直交座標内の細分化した立方体空間(voxel)にあてはめ、対象物の表面形状を数値化する。二値画像変換部21では、直交座標変換部20で得られた対象物の表面形状をシート1Bの側方から見える平面に投影した二値画像に変換し、その後の画像処理に備えるようにしている。
【0016】
また、制御装置5は、直交座標画像と平面投影二値画像からそれぞれシート1B部分を除去するシート除去処理部23と、シート1B部分を除去した直交座標画像からシート1B上の対象物の体積を算出する体積算出部24と、シート1Bを除去した平面投影二値画像から後述する腰位置分離線Lを抽出する腰位置分離線抽出部26と、対象物の全体の体積に対する乗員の上肢領域の体積の比率(以下、「上肢比率」と呼ぶ。)を求める比率演算部27と、を備えている。この実施形態では、上述した直交座標変換部20、二値画像変換部21、シート除去処理部23、体積算出部24、腰位置分離線抽出部26、比率演算部27によって上肢比率算出手段30が構成されている。
【0017】
制御装置5は、さらに二値画像変換部21、体積算出部24、比率演算部27からそれぞれ信号を受けて乗員を判別する判別手段31と、判別手段31の判別結果に基づいてエアバッグモジュール3の作動を制御する駆動制御手段32と、を備えている。
この実施形態の判別手段31は、直交座標変換部20と二値画像変換部21で得られた画像データを基にして空席状態(シート1B上に乗員が存在するかしないか)を判別し、体積算出部24で得られた結果に基づいて乗員が子供であるか否かを判別する。
【0018】
ただし、算出した体積が閾値よりも小さい場合には、乗員が子供であるものと判別できるが、子供が補助シート8(図4参照)を用いて着座している場合には、算出した体積が閾値以上となる状況も起こり得るため、算出した体積が閾値以上であっても、必ずしも大人であるものと判別することはできない。ここで想定する補助シート8は、ある程度背丈のある幼児が用いる図4に示すような所謂ブースターシートであり、このようなタイプの補助シート8を用いる場合には、背もたれが無く座面部8aがかさ上げされる(下半身の容積が増大して検出される)ことになるため、体積のみでは正確な判定が難しい。
このため、判別手段31は、体積算出部24の算出結果から子供でないと判定された場合であっても、比率演算部27で算出した上肢比率が閾値以上であるか否かをさらに判定し、上肢比率が閾値以上である場合には大人であるものと判別し、上肢比率が閾値に満たない場合には、補助シート8に着座した子供であるものと判別する。
【0019】
図5は、シート1Bに着座した大人と、シート1Bに着座した子供と、補助シート8を用いてシート1Bに着座した子供の全体体積と上肢比率の関係を示す統計図である。
同図に示すように、シート1Bに着座した大人と、補助シート8を用いてシート1Bに着座した子供は、いずれも全体体積がある程度以上に大きく、全体体積だけでは両者を明確に判別することが難しいが、さらにこれらの集合に対して、上肢比率の大小を比較することによって両者を明確に判別することができる。
【0020】
なお、エアバッグモジュール3の作動を制御する駆動制御手段32は車両の衝突時に衝突センサ9が作動したときに、判別手段31の判別結果を反映させてエアバッグモジュール3の駆動を制御する。
【0021】
つづいて、制御装置5の処理の概要を図6のフローチャートに沿って説明する。
最初に、ステップS101において、距離画像センサ4から距離画像と輝度画像のデータを受け取り、ステップS102において、距離画像をT軸,B軸,H軸を持つ直交座標画像に変換する。次に、ステップS103において、直交座標画像を平面投影二値画像に変換し、つづくステップS104において、直交座標画像と平面投影二値画像を基にしてシート1B上が空席であるか否かを判定する。このときYesの場合には、「乗員なし」と判定し、Noの場合には、ステップS105へと進む。
【0022】
ステップS105では、直交座標画像と平面投影二値画像に対してシート除去処理を行い、つづくステップS106において、シート1Bを除去した直交座標画像を基にして対象物全体の体積を算出する。ステップS107においては、対象物全体の体積が閾値以下であるか否かを判定し、ここでYesの場合には、シート1Bに着座している乗員は「子供」と判別し、Noの場合には、ステップS108の上肢比率算出処理へと進む。上肢比率算出処理の詳細について後に説明する。
ステップS108で乗員の上肢比率の算出が行われた後には、次のステップS109において、上肢比率が閾値以上であるか否かを判定し、ここでYesの場合には、大人と判別し、Noの場合には、補助シート8を用いた子供と判別する。
【0023】
図7は、図6のステップS108の上肢比率算出処理の詳細を示すフローチャートである。
この上肢比率算出処理では、最初のステップS201において、平面投影二値画像に対して細線化処理を行う。図8は、細線化処理を行う前の平面投影二値画像を示し、図9は、細線化処理を行った後の画像を示している。
ステップS202においては、図9に示すように、細線化処理によって得られた画像(以下、「細線化処理線m」と呼ぶ。)の上端部(H方向の端部)の点と前端部(T方向の端部)の点を結ぶ傾斜直線nのT軸に対する傾斜角度θを算出する。
【0024】
つづく、ステップS203においては、傾斜角度θが所定角度の範囲内の角度であるか否かを判定し、ここでYesの場合には、ステップS204に進み、Noの場合には、ステップS205に進む。
傾斜直線nの傾斜角度θが所定角度の範囲内でステップS204に進んだ場合には、傾斜直線nからの離間距離が最も大きい細線化処理線m上の点pと傾斜直線nとを最短で結ぶ直線を腰位置分離線Lとする。
一方、傾斜直線nの傾斜角度θが所定角度の範囲から外れステップS205に進んだ場合には、傾斜直線nの中点と直交する直線を腰位置分離線Lとする。
【0025】
ここで、傾斜直線nの傾斜角度θに応じて腰位置分離線Lの求め方が異なるのは、乗員、特に、大人の着座姿勢が通常と大きく異なるときや、座布団等の敷物があるときを考慮したものである。即ち、乗員がシート1B上に正規姿勢で深く腰掛けているときには、傾斜直線nの傾斜角度θが所定角度の範囲内となり、傾斜直線nからの離間距離が最も大きい点がほぼ乗員の腰位置となるが、乗員がシート1B上で正座しているときのように腰位置が極端に高い場合や、腰位置を前方に大きくずらして着座している場合には、傾斜直線nの傾斜角度θが所定角度の範囲から外れ、傾斜直線nの中点と直交する直線上に乗員の腰位置がくるようになる。したがって、上記のステップS204,S205によって対象物の腰位置分離線mをほぼ正確に求めることができる。
【0026】
図10は、ステップS204やS205で求めた腰位置分離線Lを入れた平面投影二値画像である。このように腰位置分離線Lを入れることにより、対象物を上肢領域と下肢領域とに分離することができる。
最後のステップS206においては、腰位置分離線Lを直交座標画像に反映させて、図11のイメージ図に示すように乗員の上肢領域の体積を求め、対象物全体の体積に対する上肢領域の体積の比率(上肢比率)を算出する。
【0027】
以上のように、この乗員判別装置10においては、距離画像センサ4で取得したシート1B上の対象物の距離画像データを基にして制御装置5によって対象物の上肢比率を求め、上肢比率が閾値以上の場合に乗員が大人であるものと判別し、上肢比率が閾値よりも小さい場合に乗員が補助シート8を用いて着座した子供であるものと判別するため、シート1B自体が高さ調整可能な場合や、大人がシート1B上で正座をしたり、座布団を引いてシート1Bに着座したりしている場合であっても、シート1Bに着座した大人と、補助シート8を用いて着座した子供を常時正確に判別することができる。
【0028】
また、この乗員判別装置10においては、平面投影二値画像に細線化処理を行い、細線化処理線mの上端部の点と前端部の点を結ぶ傾斜直線nの傾斜角度θを求め、傾斜角度θが所定角度の範囲内の場合には、傾斜直線nからの離間距離が最も大きい細線化処理線m上の点pと傾斜直線nとを最短で結ぶ直線を腰位置分離線Lとして上肢比率を算出し、傾斜角度θが所定角度の範囲から外れる場合には、傾斜直線nの中点と直交する直線を腰位置分離線Lとして上肢比率を算出するため、乗員がシート1B上に正規姿勢で深く腰掛けている場合はもとより、乗員が正座するときや座布団を敷いて座るときのように腰位置が極端に高い場合や、腰位置を前方に大きくずらして着座している場合であっても、上肢比率をほぼ正確に算出することができる。
【0029】
なお、この発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0030】
1B…シート
4…距離画像センサ
8…補助シート
10…乗員判別装置
30…上肢比率算出手段
31…判別手段
L…腰位置分離線
m…細線化処理線
n…傾斜直線
θ…傾斜角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートに着座した乗員が、大人であるのか、補助シートを用いて着座した子供であるのかを判別する乗員判別装置において、
乗員を含むシート上の対象物の距離画像データを取得する距離画像センサと、
前記対象物の距離画像データを基に、当該対象物の全体の体積に対する乗員の上肢領域の体積の比率を求める上肢比率算出手段と、
この上肢比率算出手段で算出した比率が閾値以上の場合に大人であるものと判別し、前記算出した比率が閾値よりも小さい場合に補助シートに着座した子供であるものと判別する判別手段と、を備えていることを特徴とする乗員判別装置。
【請求項2】
前記上肢比率算出手段は、
前記対象物の距離画像データを、前記シートの前後方向、左右方向、上下方向を軸とした直交座標画像に変換し、
その直交座標画像を前記シートの前後方向と上下方向を含む平面に投影した平面投影二値画像に変換し、
その平面投影二値画像を基に乗員の腰位置分離線を求め、その腰位置分離線よりも上方側を乗員の上肢領域として、前記対象物の全体の体積と乗員の上肢領域の体積の比率を算出することを特徴とする請求項1に記載の乗員判別装置。
【請求項3】
前記上肢比率算出手段は、
前記平面投影二値画像に細線化処理を行い、
細線化処理によって得られた画像の上端部の点と前端部の点を結ぶ傾斜直線の傾斜角度を求め、
ここで求められた傾斜角度が所定角度の範囲内であれば、前記傾斜直線からの離間距離が最も大きい細線化処理線上の点と前記傾斜直線とを最短で結ぶ直線を前記腰位置分離線とし、
前記傾斜角度が所定角度の範囲から外れる場合には、前記傾斜直線の中点と直交する直線を前記腰位置分離線とすることを特徴とする請求項2に記載の乗員判別装置。
【請求項4】
シートに着座した乗員が、大人であるのか、補助シートを用いて着座した子供であるのかを判別する乗員判別方法において、
乗員を含むシート上の対象物の距離画像データを距離画像センサによって取得し、
前記対象物の距離画像データを基に、当該対象物の全体の体積に対する乗員の上肢領域の体積の比率を求め、
ここで求めた比率が閾値以上の場合に大人であるものと判別し、前記比率が閾値よりも小さい場合に補助シートに着座した子供であるものと判別することを特徴とする乗員判別方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図9】
image rotate

【図8】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2012−127810(P2012−127810A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−279649(P2010−279649)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】