説明

乗客コンベアハンドレールの検査装置、乗客コンベアハンドレールの検査方法及び乗客コンベアハンドレールの検査プログラム

【課題】抗張体の周囲をも含めて劣化を判断することが可能な乗客コンベアハンドレールの検査装置を提供する。
【解決手段】乗客コンベアのハンドレールを透写することによって生成された透写画像に基づいてハンドレールを検査する乗客コンベアハンドレールの検査装置であって、輝度を示す情報を各画素として生成された透写画像を取得する画像データ入力部21と、輝度と色とが対応付けられた色変換テーブルに基づき、透写画像を構成する各画素を色の情報に変換して色付け画像を生成する色付け処理部25と、色付け画像を構成する各画素の色に基づいてハンドレールの劣化を判断する劣化判定部28とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗客コンベアハンドレールの検査装置、乗客コンベアハンドレールの検査方法及び乗客コンベアハンドレールの検査プログラムに関し、特にハンドレールの内部劣化を診断するため放射線を使った装置の画像処理に関する。
【背景技術】
【0002】
エスカレータ等の乗客コンベアにおいては、乗客が乗るステップが円環状に連結されて回転駆動される。そして乗客の転倒防止のため、乗客が手をそえるためのハンドレールが設けられ、ステップと連動して回転駆動される。このハンドレールは複数の部品で構成されており、表面はウレタンやゴム等の樹脂材のカバーであり、内部には強度を維持するための抗張体と呼ばれる部品が設けられている。
【0003】
上記抗張体としては、スチールコードが複数並べて使用されているものがある。このスチールコードが破断したり撚れたりするとハンドレールの強度が低下するため、ハンドレールの点検ではスチールコードが正常な状態かを検査する必要がある。ハンドレールの点検装置としては、放射線発生器と蛍光部とを備え、ハンドレールを透写することによって生成される透写画像に基づいて点検を行う装置が知られている。
【0004】
上述した透写画像に基づく点検装置としては、ハンドレールを挟み込むように放射線発生器と蛍光部とを配置した上でハンドレールに放射線を照射し、ハンドレールを透過した放射線を受光して発光する蛍光部を撮影することにより透写画像を生成する装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示された装置を用いることにより、蛍光部に映し出される透視画像を目視で観察して移動手摺りの異常を見つけ出すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−048683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された技術においては、透写画像を人が見て良否を判断するため定量的に判定できず判定結果にばらつきが発生する不都合や、また移動手摺り内に埋設されているスチールコード自体の状態は映し出されるが、スチールコード周囲のゴムなどの状態は分からないという不都合があった。
【0007】
本発明は上記問題点を鑑みてなされたものであり、抗張体の周囲をも含めて劣化を判断することが可能であり、且つ劣化の判断が容易である乗客コンベアハンドレールの検査装置、乗客コンベアハンドレールの検査方法及び乗客コンベアハンドレールの検査プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の一態様は、乗客コンベアのハンドレールを透写することによって生成された透写画像に基づき、前記ハンドレールを検査する乗客コンベアハンドレールの検査装置であって、輝度を示す情報を各画素として生成された前記透写画像を取得する画像取得部と、輝度と色とが対応付けられた色変換テーブルに基づき、前記取得された透写画像を構成する各画素を色の情報に変換して色付け画像を生成する色変換部と、前記生成された色付け画像を構成する各画素の色に基づいて前記ハンドレールの劣化を判断する劣化判断部とを含むことを特徴とする。これにより、抗張体の周囲をも含めて劣化を判断することが可能であり、且つ劣化の判断が容易である乗客コンベアハンドレールの検査装置を提供することができる。
【0009】
また、前記劣化判断部は、新たに生成された前記色付け画像と、既に前記ハンドレールの劣化判断の対象とした色付画像とを比較し、その差異に基づいて前記ハンドレールの劣化を判断することが好ましい。これにより、経時的な劣化を判断することができる。
【0010】
また、前記生成された色付け画像を、前記比較の対象とするために記憶する記憶部を含むことが好ましい。これにより、上述した経時的な劣化の判断のための画像を容易に取得することができる。
【0011】
また、前記取得された透写画像において前記ハンドレールに含まれる抗張体を認識する抗張体認識部と、前記認識された抗張体の輝度に基づいて前記透写画像全体の輝度を調整する輝度調整部とを含み、前記色変換部は、輝度の調整された前記透写画像に基づいて前記色付け画像を生成することが好ましい。これにより、撮影条件の差異等による画像間の輝度の誤差を打ち消すことができる。
【0012】
また、前記抗張体認識部は、前記生成された透写画像において輝度の低い部分を前記抗張体として認識することが好ましい。これにより、容易に抗張体を認識することができる。
【0013】
また、前記抗張体認識部は、予め定められた前記抗張体の配列パターンに基づいて前記抗張体を認識することが好ましい。これにより、容易に抗張体を認識することができる。
【0014】
また、前記取得された透写画像において前記ハンドレールに含まれる抗張体を認識して前記抗張体の劣化を判断する抗張体劣化判断部を含むことが好ましい。これにより、抗張体そのものの劣化をも判断し、総合的な劣化の判定が可能となる。
【0015】
また、前記生成された色付け画像を表示するための表示情報を前記生成された色付け画像に基づいて生成して出力する表示処理部を含むことが好ましい。これにより、ユーザに透写画像を視認させることができる。
【0016】
また、本発明の他の態様は、乗客コンベアのハンドレールを透写することによって生成された透写画像に基づき、前記ハンドレールを検査する乗客コンベアハンドレールの検査方法であって、輝度を示す情報を各画素として生成された前記透写画像を取得して記憶媒体に記憶し、輝度と色とが対応付けられた色変換テーブルに基づき、前記取得された透写画像を構成する各画素を色の情報に変換して色付け画像を生成して記憶媒体に記憶し、前記生成された色付け画像を構成する各画素の色に基づいて前記ハンドレールの劣化を判断し、判断結果を示す情報を出力することを特徴とする。
【0017】
また、本発明の他の態様は、乗客コンベアのハンドレールを透写することによって生成された透写画像に基づき、前記ハンドレールを検査する乗客コンベアハンドレールの検査プログラムであって、輝度を示す情報を各画素として生成された前記透写画像を取得して記憶媒体に記憶するステップと、輝度と色とが対応付けられた色変換テーブルに基づき、前記取得された透写画像を構成する各画素を色の情報に変換して色付け画像を生成して記憶媒体に記憶するステップと、前記生成された色付け画像を構成する各画素の色に基づいて前記ハンドレールの劣化を判断し、判断結果を示す情報を出力するステップとを情報処理装置に実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、抗張体の周囲をも含めて劣化を判断することが可能であり、且つ劣化の判断が容易である乗客コンベアハンドレールの検査装置、乗客コンベアハンドレールの検査方法及び乗客コンベアハンドレールの検査プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の本実施形態に係る乗客コンベアハンドレール検査装置の全体構成を模式的に示す図である。
【図2】本発明の本実施形態に係るPCのハードウェア構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の本実施形態に係るPCの機能構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の本実施形態に係るPCの動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の本実施形態に係る色変換テーブルを示す図である。
【図6】本発明の本実施形態に係る色付け画像を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図を用いて詳細に説明する。本実施形態においては、検査対象のハンドレールをX線撮影し、X線撮影によって生成された画像について、画像の輝度に応じた色付けを行うことにより、画像の確認を容易化するハンドレール検査装置について説明する。
【0021】
図1は、本実施形態に係るハンドレール検査装置の構成及びハンドレール2との配置関係を模式的に示す図である。図1に示すように、本実施形態に係るハンドレール検査装置には、放射線発生器1、受光器3、ビデオキャプチャー4、PC(Personal Computer)5及び距離計測用光学マウス6を含む。また、受光器3は、シンチレーター3a、反射板3b及びカメラ3cを含む。
【0022】
放射線発生器1は、ハンドレール2を透写するための放射線をハンドレール2に照射するための構成であり、本実施形態においてはX線源が用いられる。この放射線発生器1と受光器3とでハンドレール2を挟み込むようにセットする。そして、放射線発生器1及び受光器3のセットと、ハンドレール2とを相対的に移動させることにより、ハンドレール2を全体にわたって検査する。
【0023】
尚、放射線発生器1及び受光器3のセットと、ハンドレール2とを相対的に移動させる際は、放射線基1及び受光器3のセットをハンドレール2に対して移動させても良いし、放射線発生器1及び受光器3のセットに対してハンドレール2を移動させても良い。
【0024】
受光器3においては、ハンドレール2を介して放射線発生器1と対向するようにシンチレーター3aが配置されている。放射線発生器1が照射したX線は、ハンドレール2を透過してシンチレーター3aに到達する。シンチレーター3aはX線を受けて発光する。シンチレーター3aの発光によって生じた光は、反射板3bによって反射されてカメラ3cに導かれる。これにより、カメラ3cによってハンドレール2の透写画像が撮影され、受光器3において透写画像が生成される。
【0025】
ビデオキャプチャー4は、受光器3によって生成された透写画像をデジタル変換し、透写画像のデジタルデータ(以降、デジタル画像データとする)を生成する。ビデオキャプチャー4が生成したデジタル画像データは、PC5に入力されて格納される。これにより、シンチレーター3aの発光強度、即ち輝度を示す情報が各画素として生成された透写画像のデジタル画像データが生成され、PC5に格納される。
【0026】
距離計測用光学マウス6は、放射線発生器1及び受光器3のセットと、ハンドレール2との相対的な移動に応じてハンドレール2表面を読み取り、読み取り結果をPC5に入力する。これにより、PC5は、距離測定用光学マウス6による読み取り結果を取得して記憶媒体に格納し、その読み取り結果に応じて、放射線発生器1及び受光器3のセットと、ハンドレール2との相対的な移動距離を認識する。
【0027】
このようにしてPC5に格納された情報に基づき、本実施形態に係るハンドレール2の検査のための処理がPC5において実行される。ここで、PC5のハードウェア構成について、図2を参照して説明する。図2に示すように、本実施形態に係るPC5は、一般的なサーバやPC等と同様の構成を含む。即ち、本実施形態に係るPC5は、CPU(Central Processing Unit)10、RAM(Random Access Memory)20、ROM(Read Only Memory)30、HDD(Hard Disk Drive)40及びI/F50がバス80を介して接続されている。また、I/F50にはLCD(Liquid Crystal Display)60及び操作部70が接続されている。
【0028】
CPU10は演算手段であり、PC5全体の動作を制御する。RAM20は、情報の高速な読み書きが可能な揮発性の記憶媒体であり、CPU10が情報を処理する際の作業領域として用いられる。ROM30は、読み出し専用の不揮発性記憶媒体であり、ファームウェア等のプログラムが格納されている。HDD40は、情報の読み書きが可能な不揮発性の記憶媒体であり、OS(Operating System)や各種の制御プログラム、アプリケーション・プログラム等が格納される。
【0029】
I/F50は、バス80と各種のハードウェアやネットワーク等を接続し制御する。LCD60は、ユーザがPC5の状態を確認するための視覚的ユーザインタフェースである。操作部70は、キーボードやマウス、タッチパネル、各種のボタン等、ユーザがPC5に情報を入力するためのユーザインタフェースである。
【0030】
このようなハードウェア構成において、ROM30やHDD40若しくは図示しない光学ディスク等の記憶媒体に格納されたプログラムがRAM20に読み出され、CPU10の制御に従って動作することにより、ソフトウェア制御部が構成される。このようにして構成されたソフトウェア制御部と、ハードウェアとの組み合わせによって、本実施形態に係るPC5の機能を実現する機能ブロックが構成される。
【0031】
次に、本実施形態に係るPC5の機能構成について、図3を参照して説明する。図3に示すように、本実施形態に係るPC5は、ハンドレール検査装置としての機能として、画像データ入力部21、スチールコード劣化判定部22、スチールコードパターン認識部23、画像輝度計算部24、色付け処理部25、画像比較部26、画像データベース27、劣化判定部28及び総合劣化判定部29を含む。
【0032】
図3に示す各機能は、夫々の機能を実現するためのプログラムに従って演算を行うCPU10や、HDD40のような記憶装置並びに専用の集積回路等によって実現される。以下、図3に示すPC5の各機能による処理について、図4のフローチャートを参照して説明する。まず、画像データ入力部21が画像取得部として機能することにより、PC5に格納されたデジタル画像データが画像データ入力部21によって読み込まれる。
【0033】
画像データ入力部21によってデジタル画像データが読み込まれると、スチールコードパターン認識部23が、デジタル画像データのうちスチールコードの部分を認識し、画像輝度計算部24が、スチールコードの部分の輝度に基づいて画像全体の輝度を補正することによって正規化する(S401)。即ち、スチールコードパターン認識部23が抗張体認識部として機能すると共に、画像輝度計算部24が、輝度調整部として機能する。
【0034】
本実施形態において、放射線発生器1が照射するX線はスチールコードの部分を透過しない。そのため、デジタル画像データにおけるスチールコードの部分は輝度が最も低い部分である。本実施形態に係る画像輝度計算部24は、スチールコードの部分の輝度でデジタル画像データ全体の輝度を除算し、輝度を一定の基準に補正する。これにより、異なるデジタル画像データ同士の輝度を比較することが可能となる。
【0035】
具体的には、異なるデジタル画像データは、撮影条件の違いや、デジタル画像変換時の変換条件の違い等により、輝度のスケールが異なる可能性がある。これに対して、スチールコードの部分の輝度が最も低く、いずれの画像においても同一であるという条件のものと、上述したような輝度計算を行うことにより、異なるデジタル画像同士を比較することが可能となる。
【0036】
尚、デジタル画像データにおいてスチールコードが写っている部分の識別を容易化するため、スチールコードパターン認識部23は、正しい配列のスチールコードのパターンを記憶しており、そのパターンに従ってスチールコードの部分を認識する。この他、上述したように、スチールコードの部分は輝度の低い部分であるため、スチールコードパターン認識部23は、デジタル画像データにおいて輝度の低い部分をスチールコードの部分として認識しても良い。上記輝度の低い部分の判定方法としては、輝度が所定の閾値以下である部分を抽出する方法や、スケール上の最低輝度である部分を抽出する方法等がある。
【0037】
画像輝度計算部24によって画像データの輝度が正規化されると、次に、色付け処理部25が、デジタル画像データを構成する各画素を、輝度に応じた色に変換する色付け処理を行う(S402)。即ち、色付け処理部25が色変換部として機能する。図5は、色付け処理部25が色付け処理に際して参照する色変換テーブルを示す図である。図5に示すように、色変換テーブルにおいては、正規化後の輝度の範囲が何段階かに区切られており、夫々の範囲と色とが対応付けられている。色付け処理部25は、図5に示す色変換テーブルを参照することにより、正規化後のデジタル画像データを構成する各画素を色の情報に変換し、色付け画像を生成する。
【0038】
このような、色変換テーブルに基づく各画素の輝度に応じた色情報への変換が本実施形態に係る要旨の1つである。以下、色変換処理の意義について説明する。一般的にハンドレール2内部のスチールコードは周囲をゴムで固定されている。このゴムが劣化するスチールコードの拘束が緩むとスチールコード同士が接触し、そのスチールコード間で摩耗が発生し、摩耗が進行することによってスチールコードの断線へ至ることが知られている。これを事前に回避するためには、ゴムの劣化を把握することが効果的である。
【0039】
ゴムが劣化すると、X線の透過量が変化し、結果として生成される画像データにおいて劣化部分に対応する部分の輝度が変化する。例えば、特定の部分で厚みが薄くなっていると薄い部分の透過量が増え、結果的にその部分の輝度が高くなる。従って、前回測定の結果比較して輝度が高くなった部分がどの程度増加したかを調べれば、ゴムの劣化状態を判断することができる。
【0040】
図6は、色付け処理が施されたデジタル画像データPの例を示す図である。図6において斜線で示されている部分が、有彩色によって色付けされた部分である。また、図6において黒線の部分は、実際の色付け画像においても黒色の部分であり、スチールコードが写し出された部分である。
【0041】
図6に示すように、各画素の輝度を色情報に変換して表示することにより、元々のデジタル画像データのように明暗のみで表示するよりも、各部の状況を一目瞭然で判断することが可能であり、目視でみても判定を誤る可能性は少ない。図6に示すデジタル画像データPにおいては、拡大図Pの下から3層目の部分において赤色の部分が存在し、ゴムの劣化が進んでいることが確認できる。
【0042】
色付け処理が完了すると、次に、画像比較部26は、記憶部である画像データベース27から、前回の検査において生成された色付け画像データ(以降、比較用画像データとする)を選定して読み出し(S403)、色付け処理が完了した今回のデジタル画像データ(以降、検査対象画像データとする)とを重ね合わせて比較する(S404)。画像データベース27に格納されているデジタル画像データは、色付け処理部25によって色付け処理がされたデジタル画像データであり、ハンドレール検査装置において既に実行された検査において生成されたデジタル画像データである。
【0043】
S404において、画像比較部26は、比較用画像データと検査対象画像データとの間での、色の変化を判断する。即ち、画像比較部26は、比較用画像データ及び検査対象画像データ夫々を構成する画素の色について、各色の面積の差分を算出する。換言すると、画像比較部26は、比較用画像データ及び検査対象画像データ夫々を構成する画素を図5に示す各色毎にカウントし、各色毎の画素数の差異を算出して画像の比較結果とする。即ち、本実施形態においては、検査対象画像データの画素と比較用画像データの画素とを1対1で対応づけて比較を行う必要がないため、処理を簡略化することができる。尚、上記態様に限らず、検査対象画像データの画素と比較用画像データの画素とを1対1で対応づけて比較を行っても良い。
【0044】
画像比較部26によって上述したようにデジタル画像データの比較結果が生成されると、劣化判定部28が、その比較結果としての各色毎の画素数の差異を予め定められた閾値と比較する(S405)ことにより、検査対象画像データにおいてハンドレールの劣化が確認されるか否か判断する。S405において、劣化判定部28は、上記各色毎の画素数の差異が、予め定められた閾値を超えているか否かに基づき、ハンドレールの劣化が確認されるか否か判断する。即ち、本実施形態においては、画像比較部26及び劣化判定部28が連動して、劣化判断部として機能する。
【0045】
S405の判断の結果、各色毎の画素数の差異が閾値を超えている場合(S405/YES)、総合劣化判定部29は、ハンドレールのゴム部分等、スチールコード以外の部分において劣化ありと判断する(S406)。
【0046】
他方、S405の判断の結果、各色毎の画素数の差異が閾値以内であれば(S405/NO)、次に、スチールコード劣化判定部22が、スチールコード自体の劣化判定を行う(S407)。即ち、スチールコード劣化判定部22が、抗張体劣化判断部として機能する。S407において、スチールコード劣化判定部22は、画像データ入力部21によって読み込まれたデジタル画像データにおいて、輝度が低い部分をスチールコードの部分として認識し、スチールコードとして認識した部分が既定のスチールコードの本数分あるか否か、断線や偏りが発生していないか否かを判断する。
【0047】
尚、S407の具体的な判断例としては、スチールコードが9本用いられているハンドレールの場合は、そのうち8本の画像、即ち、画像中において輝度が低い部分が明確に判別できなければ、劣化しているものと判定する。
【0048】
407の判定の結果、劣化ありと判定されれば(S408/YES)、総合劣化判定部29は、スチールコードに劣化が発生していると判断する(S409)。他方、劣化無しと判定されれば(S408/NO)、総合劣化判定部29は、ハンドレールには劣化が発生していないと判断し(S410)、処理を終了する。
【0049】
このようにしてハンドレールの劣化が判断されると、総合劣化判定部29は、生成された色付け画像をLCD60に表示するための表示情報を生成して出力する。これにより、劣化ありと判定されたハンドレールの色付け画像がLCD60に表示され、ユーザによって確認可能となる。即ち、総合劣化判定部29が、表示処理部として機能する。
【0050】
以上説明したように、本実施形態に係る乗客コンベアハンドレールの検査装置においては、透写画像の輝度を色情報に変換することにより、劣化の判断を容易化することができる。また、透写画像の輝度の変化は、主としてハンドレールを構成するゴム等の弾性体において生じるため、抗張体であるスチールコードの周囲をも含めて劣化を判断することが可能である。
【0051】
即ち、本実施形態に係る乗客コンベアハンドレールの検査装置においては、スチールコード自体の劣化判定とスチールコード周囲のゴム劣化の判定を行うことによって多角的に手摺りの劣化を把握することが可能であり、点検周期の最適化に非常に有効な手段となる。
【0052】
尚、上記実施形態においては、検査対象画像データとして生成されて検査対象となったデジタル画像データを画像データベース27に格納しておき、以後の検査において比較用画像データとして用いる場合を例として説明した。しかしながら、以前の検査対象画像データを比較用画像データとして用いる場合に限らず、比較用画像データとして別途生成された画像データを毎回用いるようにしても良い。
【0053】
他方、上述したように、以前の検査において用いられた検査対象画像データを比較用画像データとして用いることにより、経時的な劣化を判定することが可能となる。また、画像データベースを設けておくことにより、上記比較用画像データを容易に取得することが可能となる。
【0054】
また、上記実施形態においては、先に色に基づく判定を行った上で、そこで閾値を超える差異が確認されなかった場合に、スチールコードの判定を行う場合を例として説明したが、当初より、色による判定とスチールコードの判定とを並列して実行しても良い。
【符号の説明】
【0055】
1 放射線発生器
2 ハンドレール
3 受光器
3a シンチレーター
3b 反射板
3c カメラ
4 ビデオキャプチャー
5 PC
6 距離計測用光学マウス
10 CPU
20 RAM
30 ROM
40 HDD
50 I/F
60 LCD
70 操作部
80 バス
21 画像データ入力部
22 スチールコード劣化判定部
23 スチールコードパターン認識部
24 画像輝度計算部
25 色付け処理部
26 画像比較部
27 画像データベース
28 劣化判定部
29 総合劣化判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗客コンベアのハンドレールを透写することによって生成された透写画像に基づき、前記ハンドレールを検査する乗客コンベアハンドレールの検査装置であって、
輝度を示す情報を各画素として生成された前記透写画像を取得する画像取得部と、
輝度と色とが対応付けられた色変換テーブルに基づき、前記取得された透写画像を構成する各画素を色の情報に変換して色付け画像を生成する色変換部と、
前記生成された色付け画像を構成する各画素の色に基づいて前記ハンドレールの劣化を判断する劣化判断部とを含むことを特徴とする乗客コンベアハンドレールの検査装置。
【請求項2】
前記劣化判断部は、新たに生成された前記色付け画像と、既に前記ハンドレールの劣化判断の対象とした色付画像とを比較し、その差異に基づいて前記ハンドレールの劣化を判断することを特徴とする請求項1に記載の乗客コンベアハンドレールの検査装置。
【請求項3】
前記生成された色付け画像を、前記比較の対象とするために記憶する記憶部を含むことを特徴とする請求項2に記載の乗客コンベアハンドレールの検査装置。
【請求項4】
前記取得された透写画像において前記ハンドレールに含まれる抗張体を認識する抗張体認識部と、
前記認識された抗張体の輝度に基づいて前記透写画像全体の輝度を調整する輝度調整部とを含み、
前記色変換部は、輝度の調整された前記透写画像に基づいて前記色付け画像を生成することを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項に記載の乗客コンベアハンドレールの検査装置。
【請求項5】
前記抗張体認識部は、前記生成された透写画像において輝度の低い部分を前記抗張体として認識することを特徴とする請求項4に記載の乗客コンベアハンドレールの検査装置。
【請求項6】
前記抗張体認識部は、予め定められた前記抗張体の配列パターンに基づいて前記抗張体を認識することを特徴とする請求項4に記載の乗客コンベアハンドレールの検査装置。
【請求項7】
前記取得された透写画像において前記ハンドレールに含まれる抗張体を認識して前記抗張体の劣化を判断する抗張体劣化判断部を含むことを特徴とする請求項1乃至6いずれか1項に記載の乗客コンベアハンドレールの検査方法。
【請求項8】
前記生成された色付け画像を表示するための表示情報を前記生成された色付け画像に基づいて生成して出力する表示処理部を含むことを特徴とする請求項1乃至7いずれか1項に記載の乗客コンベアハンドレールの検査方法。
【請求項9】
乗客コンベアのハンドレールを透写することによって生成された透写画像に基づき、前記ハンドレールを検査する乗客コンベアハンドレールの検査方法であって、
輝度を示す情報を各画素として生成された前記透写画像を取得して記憶媒体に記憶し、
輝度と色とが対応付けられた色変換テーブルに基づき、前記取得された透写画像を構成する各画素を色の情報に変換して色付け画像を生成して記憶媒体に記憶し、
前記生成された色付け画像を構成する各画素の色に基づいて前記ハンドレールの劣化を判断し、判断結果を示す情報を出力することを特徴とする乗客コンベアハンドレールの検査方法。
【請求項10】
乗客コンベアのハンドレールを透写することによって生成された透写画像に基づき、前記ハンドレールを検査する乗客コンベアハンドレールの検査プログラムであって、
輝度を示す情報を各画素として生成された前記透写画像を取得して記憶媒体に記憶するステップと、
輝度と色とが対応付けられた色変換テーブルに基づき、前記取得された透写画像を構成する各画素を色の情報に変換して色付け画像を生成して記憶媒体に記憶するステップと、
前記生成された色付け画像を構成する各画素の色に基づいて前記ハンドレールの劣化を判断し、判断結果を示す情報を出力するステップとを情報処理装置に実行させることを特徴とする乗客コンベアハンドレールの検査プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−229109(P2012−229109A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99629(P2011−99629)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000232955)株式会社日立ビルシステム (895)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】