説明

乗客コンベア

【課題】 保護パネルの破損の検出精度を高め、乗客の安全性を向上させること。
【解決手段】 乗客コンベアの移動手摺3と天井面7とにより形成される略三角状の空間に保護パネル11を備えた乗客コンベアにおいて、保護パネル11は、複数の導線23を接離可能に連設して形成された導電路19の両端に通電して通電状態を検知する検知手段13を備えるようにする。これにより、導電路19は保護パネル11の破損時に容易に破断されるため、保護パネル11の破損の検出精度を高くすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗客を移送する乗客コンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建物内において下階から上階へ乗客を運ぶエスカレータの手摺と建物の天井面との間には、略三角状の空間が形成される。このため、乗客が手摺から手や頭等を外側にはみ出した状態で上方に移送された場合、この空間の鋭角部に挟まれるおそれがある。
【0003】
従来、この空間内には、保護パネル等が天井から吊るして設けられ、手摺からはみ出した手等が保護パネルに当たることで乗客が手等を引っ込めることを促し、乗客が手等を挟まれる事故を未然に防ぐようにしている。
【0004】
このような保護パネルの安全性能を保持するため、保護パネルの破損を検知する安全装置について検討されている。例えば、特許文献1においては、保護パネル内に、電線を張り巡らせて通電させ、パネルの破損時に電線が切断されることでパネルの破損を検知するエレベータの監視装置が提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開2003−165683号公報(第3頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1によれば、保護パネルの破損状態によっては、パネルが破損しても電線が切断されずに通電が行われ、破損を検出できない場合がある。このため、保護パネルによる安全性が十分に確保されているとはいえない。
【0007】
本発明は、保護パネルの破損の検出精度を高め、乗客の安全性を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するため、乗客コンベアの移動手摺と天井面とにより形成される略三角状の空間に保護パネルを備えた乗客コンベアにおいて、保護パネルは、複数の導線を接離可能に連設して形成された導電路と、この導電路の両端に通電して通電状態を検知する検知手段とを備えた構成とすることを特徴とする。
【0009】
このような構成とすれば、例えば、保護パネルの一部が破損した場合、導電路が容易に切り離されて通電が遮断されるため、破損を高い精度で検知することができ、乗客の安全性を向上させることができる。
【0010】
この場合において、検知手段は、例えば、保護パネル内に複数の光ファイバを接離可能に当設させて連設して形成された光伝送路に光を伝送させることにより、伝送状態を検知するようにしてもよい。これによれば、保護パネルが破損した場合、光伝送路が容易に切り離されて光の伝送が遮断されるため、高い精度で破損を検知することができ、乗客の安全性を向上させることができる。
【0011】
ここで、保護パネルは、二枚のパネルで導電路又は光伝送路を挟持させるように構成することが好ましい。これによれば、保護パネルの組み立てが容易になり製造コストを低減できる。
【0012】
また、検知手段により出力される信号を入力して、この信号に基づいて乗客コンベアの駆動速度を制限する速度制限手段を備えるようにしてもよい。これによれば、検知手段が保護パネルの破損を検知すると、乗客コンベアの移動速度を低下又は停止させることができ、乗客の安全性を向上させることができる。
【0013】
また、検知手段により出力される信号を入力して、この信号に基づいて警報を発する報知手段を備えるようにしてもよい。これによれば、例えば、保護パネルの破損を検知すると、直ちに乗客に報知して注意を促すことができ、乗客の安全性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、保護パネルの破損の検出精度を高め、乗客の安全性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を適用してなる乗客コンベアの実施形態について図を参照して説明する。図1は、本発明を適用してなる乗客コンベアの保護パネル及び破損の検知装置を示す図である。図2は、本発明を適用してなる乗客コンベアの全体構成を示す図である。図3は、本発明を適用してなる乗客コンベアの保護パネル内に設けられた導線の接続状態を示す斜視図である。図4は、本発明を適用してなる乗客コンベアの保護パネル内に設けられる光ファイバの接続状態を示す斜視図である。図5は、本発明を適用してなる乗客コンベアの制御に係る構成を示す図である。図6は、本発明を適用してなる乗客コンベアの保護パネルが破損した状態を示す図である。図7は、本発明を適用してなる乗客コンベアの制御手順を説明するフロー図である。
【0016】
本実施形態では、乗客コンベアの一例として、建物内に設置されるエスカレータを一例として説明する。本実施形態のエスカレータは、図2に示すように、下階から上階へ傾斜して設けられるコンベア本体1、コンベア本体1に沿って配置され、a方向に移動する手摺3、手摺3と同期して移動する踏段5、手摺3と下階の天井7との間に形成される台形状の空間9に配置される保護パネル11、保護パネル11の破損を検知する検知装置13、制御装置15、報知装置16、コンベアの駆動モータ17を備えて構成される。
【0017】
保護パネル11は、図1及び図2に示すように、手摺3に沿って台形状に形成され、天井7から吊り下げられて空間9内に配置されている。保護パネル11は、プラスチック製のパネルを2枚張り合わせて形成され、このパネルの間には導電路19が張り巡らされている。導電路19は、接続部21を介して複数の導線23を接続して構成される。導電路19の両端部は、保護パネル11から引き出された状態で被覆され、検知装置13の外部端子と接続されている。これにより、導電路19は、検知装置13によって通電されるとともに通電状態が監視されるようになっている。なお、導電路19は、保護パネル11内の外縁に沿って配設されることが検知精度上好ましく、内側に蛇行して配置されていてもよい。
【0018】
導電路19は、図3に示すように、導線23の端部を重ねて互いに接触した状態で2枚のパネルによって挟持されている。導線23が重なる部分は、接続部21に相等する。なお、接続部21は、この構成に限らず、例えば、導電性の接点部を介して接離可能に接続されていてもよい。
【0019】
本実施形態の制御機構は、図5に示すように、検知装置13、制御装置15、報知装置16、駆動モータ17を備えて構成される。すなわち、検知装置13が導電路19の遮断を検知すると、その結果が制御装置15に出力され、制御装置15から駆動モータ17に制御指令が出力される一方、検知装置13から報知装置16に報知指令が出力されるようになっている。
【0020】
上記のように構成される乗客コンベアにおいて、仮に保護パネル11の一部が破損して欠け落ちた場合、その状態が放置されると乗客の安全に支障をきたすおそれがある。例えば、乗客が手摺3から外側に手等を出した状態で移送されると、空間9に差し掛かったところで、手等が保護パネル11に接触するタイミングが遅くなり、又は接触されず、乗客が危険を検知して手等を引っ込める動作が遅れるおそれがある。
【0021】
本実施形態の保護パネル11によれば、図6に示すように、保護パネル11の一部が破損して破損部31が生じた場合、破損したパネル領域に配設される導電路19の導線23が接続部21から容易に外れるため、導電路19の通電が遮断される。これにより、検知装置13は、保護パネル11の破損を高い精度で検知することができる。そして、破損を検知することにより、保護パネル11を交換、修復することができ、保護パネル11の安全性能を回復させ、乗客の安全を保つことができる。
【0022】
更に、本実施形態では、保護パネル11の破損を検知した際、制御装置15は、必要に応じて所定の安全対策を行うことができる。すなわち、導電路19の切断により検知装置13が保護パネル11の破損を検知すると、検知装置13から報知装置16に報知信号が出力され、例えば、報知装置16から乗客に注意を促すように音声放送がされる。一方、検知装置13は、保護パネル11の破損検知に伴い、検知信号を制御装置15へ出力する。そして、制御装置15は、駆動モータ17に速度制限信号を出力することで、コンベア本体1の駆動速度を低減又は停止させる。これにより、乗客の安全性を一層向上させることができる。
【0023】
なお、本実施形態では、パネル内に導線23を配置しているが、これに限定されず、例えば、光ファイバ25を用いるようにしてもよい。具体的には、図4に示すように、光ファイバ25の端面同士を密着させて接続部21を構成し、保護パネル11内に光伝送路を張り巡らせて配置する。この場合、パネルから引き出された光伝送路の両端は、検知装置13に設けられた投光装置と接続される。そして、光伝送路は、検知装置13によって光が伝送されるとともに光の伝送状態が監視される。これによれば、保護パネル11が破損したとき、光ファイバ25が接続部21から容易に外れることにより導電路19の通電が遮断され、破損を高い精度で検知することができる。
【0024】
また、本実施形態では、保護パネル11から引き出した導線23を、接点22を介して他の導線23と接続し、検知装置13の外部端子と接続している。これによれば、例えば、保護パネル11が鎖24から外れて落下した場合、導線23は容易に接点22から外れるため、保護パネル11の落下を検知することができる。また、光ファイバを用いる場合は、例えば、光ファイバ同士が端面を密着して連結された状態を保つように、外側から筒状部材等で覆って支持固定するようにしてもよい。
【0025】
次に、本実施形態の制御手順について図7を用いて説明する。乗客コンベアは、ステップS11において、定常運転が開始されると、ステップS12において、タイマがリセットされる。続いて、ステップS13において、検知装置13は、保護パネル11の破損有無を検知する。すなわち、保護パネル11内に導電路19が設けられている場合は、検知装置13によって通電状態が検知され、光伝送路が設けられている場合は、光の伝送状態が検知される。ここで、破損が確認された場合は、ステップS14に進み、検知装置13から報知装置16へ報知信号が出力され、報知装置16から乗客に注意が促すように音声放送がされる。一方、破損が確認されない場合は、定常運転に戻り、ステップS11からS13が繰り返される。
【0026】
次に、ステップS15において、検知装置13から制御装置15へ破損を検知したことを知らせる検知信号が出力されると、ステップS16に進み、乗客コンベアの駆動モータ17に速度制限信号が出力され、コンベアの運転が低速運転に切り替えられる。また、同時にタイマが作動する。そして、ステップS17において、タイマが設定時間経過すると、ステップS18に進み、乗客コンベアが停止する。
【0027】
以上述べたように、本実施形態では、保護パネル11内に接続部21を介して導線23を連続的に接続して配置しているため、保護パネル11が破損した際は、容易に導線23が外れ、通電が停止されるため、保護パネル11の破損を高い精度で検出することができる。また、保護パネル11の破損を検出したことを音声で放送することにより、保護パネル11が破損したことを乗客に知らせることができ、乗客の安全性を高く維持することができる。また、保護パネル11の破損を検知すると、乗客コンベアの運転速度を段階的に制限して停止させることができるため、保護パネル11が破損しても、乗客の安全性を一層高く維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明を適用してなる乗客コンベアの保護パネル及び破損の検知装置を示す構成図である。
【図2】本発明を適用してなる乗客コンベアの全体構成を示す図である。
【図3】本発明を適用してなる乗客コンベアの保護パネル内に設けられた導線の接続状態を示す斜視図である。
【図4】本発明を適用してなる乗客コンベアの保護パネル内に設けられた光ファイバの接続状態を示す斜視図である。
【図5】本発明を適用してなる乗客コンベアの制御に係る構成を示す図である。
【図6】本発明を適用してなる乗客コンベアの保護パネルが破損した状態を示す図である。
【図7】本発明を適用してなる乗客コンベアの制御手順を説明するフロー図である。
【符号の説明】
【0029】
1 コンベア本体
7 天井
9 空間
11 保護パネル
13 検知装置
15 制御装置
17 駆動モータ
19 導電路
21 接続部
23 導線
25 光ファイバ
31 破損部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗客コンベアの移動手摺と天井面とにより形成される略三角状の空間に保護パネルを備えた乗客コンベアにおいて、
前記保護パネルは、複数の導線を接離可能に連設して形成された導電路と、該導電路の両端に通電して通電状態を検知する検知手段とを備えることを特徴とする乗客コンベア。
【請求項2】
乗客コンベアの移動手摺と天井面とにより形成される略三角状の空間に保護パネルを備えた乗客コンベアにおいて、
前記保護パネルは、複数の光ファイバを接離可能に当接させて連設して形成された光伝送路と、該光伝送路に光を伝送させて伝送状態を検知する検知手段とを備えることを特徴とする乗客コンベア。
【請求項3】
前記保護パネルは、二枚のパネルで前記導電路又は前記光伝送路を挟持させてなる請求項1又は2に記載の乗客コンベア。
【請求項4】
前記検知手段により出力される信号を入力して、該信号に基づいて前記乗客コンベアの駆動速度を制限する速度制限手段を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の乗客コンベア。
【請求項5】
前記検知手段により出力される信号を入力して、該信号に基づいて警報を発する報知手段を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の乗客コンベア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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