説明

乗物用シート

【課題】前面衝突時に座面を移動させるとともに、シートベルトを引き込む動作を簡易な構成で実現する。
【解決手段】乗物用シートを、着座部のうち乗物の機体側に支持されるベース部(ベースフレーム30、レールスライダ装置10)と、ベース部に対し相対的に前後に移動可能な可動フレーム40と、ベース部に設けられ、前面衝突時に作動する引張力発生装置(ガスシリンダ51)と、引張力発生装置に接続される第1部分(第1ワイヤ61)と、当該第1部分から分岐しシートベルトアンカー56またはインナーバックル57に接続される第2部分(第2ワイヤ62)と、第1部分から分岐し可動フレーム40に接続された第3部分(第3ワイヤ63)とを有する張力伝達部材と備え、引張力発生装置の作動により第3部分で可動フレーム40を引っ張り、第2部分でシートベルトアンカー56またはインナーバックル57を引っ張るよう構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートなどの乗物用シートに関し、特に、前面衝突時に座面が移動する構成の乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
車両が正面衝突するなどの前面衝突時に着座部の座面が後方に移動する構成の車両用シートが知られている。例えば、特許文献1に記載の車両用シートでは、左右方向に軸心を向けたプリテンショナ装置(ガスシリンダ)により、座面を後方に移動させる構成が開示されている。また、特許文献1には、プリテンショナ装置により、前面衝突時にシートベルトを即座に引き込む構成の車両用シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−213546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の車両用シートでは、座面を後方に移動させるためのガスシリンダとシートベルトを引き込むためのガスシリンダとを別個に設ける必要があり、ワイヤの取り回しなどの構成が複雑であるとともに、装置が大型化してしまい、シート重量も重くなってしまうという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、前面衝突時に座面を移動させるとともに、シートベルトを引き込む動作を簡易な構成で実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した課題を解決する本発明の乗物用シートは、乗員を基準とした前面衝突時に着座部の座面が移動するように構成された乗物用シートであって、前記着座部のうち乗物の機体側に支持されるベース部と、前記ベース部に対し相対的に前後に移動可能な可動フレームと、前記ベース部に設けられ、前面衝突時に作動する引張力発生装置と、前記引張力発生装置に接続される第1部分と、当該第1部分から分岐しシートベルトアンカーまたはインナーバックルに接続される第2部分と、前記第1部分から前記第2部分と分岐し前記可動フレームに接続された第3部分とを有する張力伝達部材と備え、前記引張力発生装置の作動により前記第3部分で前記可動フレームを引っ張って、前記可動フレームを後方に移動するとともに前記第2部分で前記シートベルトまたはインナーバックルを引っ張るよう構成したことを特徴とする。
【0007】
このような構成によれば、張力伝達部材の第1部分が引張力発生装置に引かれると、第2部分と第3部分の両方が引かれ、第3部分で可動フレームを引っ張って座面が後方に移動するとともに、第2部分でシートベルトまたはインナーバックルを引っ張ってシートベルトが引き込まれる。すなわち、1つの引張力発生装置で可動フレームとシートベルトの双方を動かすことができる。
【0008】
前記した乗物用シートにおいては、前記ベース部は、前記機体に固定される固定部と、前記可動フレームに対し相対的に前後に移動可能に組み合わされたベースフレームと、前記固定部とベースフレームを接続するように設けられ前記ベースフレームの高さを調整するハイトアジャスト機構とを有し、前記引張力発生装置は、前記固定部に設けられた構成とすることができる。このようにすれば、着座部を支える高い剛性を有する部分に引張力発生装置を配置して、装置の動作を安定させることができる。
【0009】
また、前記した乗物用シートにおいては、前記ベース部は、前記機体に固定される固定部と、前記可動フレームに対し相対的に前後に移動可能に組み合わされたベースフレームと、前記固定部とベースフレームを接続するように設けられ前記ベースフレームの高さを調整するハイトアジャスト機構とを有し、前記引張力発生装置は、前記ベースフレームに設けられた構成とすることができる。この場合には、着座部を支える高い剛性を有する部分に引張力発生装置を配置して、動作を安定させることができる。
【0010】
そして、前記したハイトアジャスト機構を有する構成においては、前記ハイトアジャスト機構は、前記固定部と前記ベースフレームとを、フロントリンクおよびリアリンクで結合することで四節リンク機構を構成してなり、前記リアリンクの前記固定部との節点には、同軸で第1ガイドが設けられ、前記リアリンクの前記ベースフレームとの節点には、同軸で第2ガイドが設けられ、前記第3部分は、前記第2部分との分岐部分から前記第1ガイド、前記第2ガイドの順に掛け回され、前記第2ガイドから前方に向けて延びて端部が前記可動フレームに接続されている構成とすることができる。この場合には、ハイトアジャスト機構より構成的に上の位置(絶対な位置で上ではなく)に引張力発生装置が設けられるので、引張力発生装置による張力伝達部材を引っ張る動作がハイトアジャスト機構の影響を受けず、簡素に構成して、動作を安定させることができる。
【0011】
また、ハイトアジャスト機構を構成する四節リンク機構を設ける場合において、第3部分をリアリンクと固定部との節点に設けられた第1ガイドと、リアリンクとベースフレームとの節点に設けられた第2ガイドとに順に掛け回すことで、第3部分はハイトアジャスト機構の外側を回り込むように配置されるので、構成的にハイトアジャスト機構の下に引張力発生装置を配置しながら、ハイトアジャスト機構の上下動と第3部分との干渉を避けることができる。
【0012】
そして、この四節リンク機構を用いた構成においては、好ましい一形態として、前記四節リンク機構は、平行リンク機構であり、前記第1ガイドと前記第2ガイドは同じガイド径である構成とすることができる。
【0013】
このような構成によると、ハイトアジャスト機構でベースフレームを上下させる前後において、第3部分が配される経路の長さが変わらないので、第3部分の張力の変動を避け、第3部分の緩みや、張りすぎを防止できる。
【0014】
また、四節リンク機構を用いた構成においては、好ましい他の形態として、前記四節リンク機構は、2組の対向するリンク同士の組のうち少なくとも一方の組のリンク同士の長さが異なる非平行リンク機構であり、前記ベースフレームが、前記ハイトアジャスト機構により高い位置に移動するにつれ前下がりになるように構成され、前記ハイトアジャスト機構の作動前後において前記張力伝達部材の張力が変動しにくくするため、前記第1ガイドより前記第2ガイドの方が、ガイド径が大きい構成とすることができる。
【0015】
前記引張力発生装置は、前記着座部の下に配置されるのが望ましい。引張力発生装置を着座部の下に配置することで、着座部の下の空間を利用して、装置をコンパクトに配置することができる。
【0016】
前記した乗物用シートにおいては、前記第1部分、前記第2部分および前記第3部分を接続する分岐ブラケットを備え、前記分岐ブラケットは、前記第1部分が接続される第1接続部、前記第2部分が接続される第2接続部および前記第3部分が接続される第3接続部を有し、前記第1接続部は、前記第1部分の引っ張り方向において前記第2接続部および前記第3接続部よりも前記第1部分側に配置され、前記第2接続部および前記第3接続部は、前記第1接続部の両側に振り分けて配置する構成とするのが望ましい。
【0017】
このような構成にすると、第1部分、第2部分および第3部分は、分岐ブラケットにより接続される。そして、引張力発生装置が作動して第1部分を引っ張ると、第1部分は、分岐ブラケットの第1接続部を引っ張る。第1接続部を引っ張る力は、第1接続部の両側に振り分けて配置された第2接続部および第3接続部を介して第2部分および第3部分を引っ張る。そのため、第2部分と第3部分のうち、先に大きな荷重が掛かった方が、分岐ブラケットを第1接続点回りに回転させ、第2部分と第3部分のうち大きな荷重が掛かった方を緩め、荷重が小さかった方を張る。このようにして第1部分の1本で、第2部分と第3部分の2本をバランス良く引っ張ることができる。
【0018】
前記した乗物用シートにおいては、前記第2部分は、前記第3部分より外側に配置されるのが望ましい。
【0019】
シートベルトアンカーや、インナーバックルは、通常、座席の左右外側に配置されるので、このように構成することで、張力伝達部材同士や張力伝達部材と他の部品との干渉を避けて張力伝達部材をコンパクトに取り回すことができる。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に記載の構成によれば、1つの引張力発生装置で可動フレームとシートベルトの双方を動かすことができ、簡易な構成として、装置の大型化や重量増の抑制を図ることができる。
【0021】
請求項2に記載の構成によれば、着座部を支える高い剛性を有する部分に引張力発生装置を配置して、動作を安定させることができる。
【0022】
請求項3に記載の構成によれば、引張力発生装置による張力伝達部材を引っ張る動作がハイトアジャスト機構の影響を受けず、簡素に構成して、動作を安定させることができる。
【0023】
請求項4に記載の構成によれば、構成的にハイトアジャスト機構の下に引張力発生装置を配置しながら、ハイトアジャスト機構の上下動と第3部分との干渉を避けることができる。
【0024】
請求項5に記載の構成によれば、第3部分の張力の変動を避け、第3部分の緩みや、張りすぎを防止できる。
【0025】
請求項6に記載の構成によれば、ハイトアジャスト機構に非平行四節リンク機構を用いる場合でも、第3部分の張力の変動をほとんど無くすことができる。
【0026】
請求項7に記載の構成によれば、第1部分の1本で、第2部分と第3部分の2本をバランス良く引っ張ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】車両用シートのシートフレームの全体斜視図である。
【図2】シートフレームの着座部の分解斜視図である。
【図3】ハイトアジャスト機構を説明する模式図であり、(a)シートを低くしたときと、(b)シートを高くしたときである。
【図4】ローポジションにおけるガスシリンダが作動前の要部側面図である。
【図5】ローポジションにおけるガスシリンダが作動後の要部側面図である。
【図6】分岐ブラケットを説明する図であり、(a)ガスシリンダの作動前と、(b)ガスシリンダの作動後の一例である。
【図7】ハイポジションにおけるガスシリンダが作動前の要部側面図である。
【図8】ハイポジションにおけるガスシリンダが作動後の要部側面図である。
【図9】ベースフレームにガスシリンダを設けた変形例の図である。
【図10】ハイトアジャスト機構に非平行四節リンク機構を使用した場合の説明図であり、シートが高くなるにつれ、着座部が前下がりになる場合を示す。
【図11】ハイトアジャスト機構に非平行四節リンク機構を使用した場合の説明図であり、シートが高くなるにつれ、着座部が前上がりになる場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。
本発明の乗物用シートの一例としての車両用シートは、図1に示すようなシートフレーム1の外側に、ウレタンフォームなどからなるシートクッションを被せることで構成されている。シートフレーム1は、シートバックフレーム2と、着座部フレーム3を有する。なお、本発明において、前後、左右、上下は、シートに座る乗員を基準とする。
【0029】
図2に示すように、着座部フレーム3は、車体フロアに着座部を固定する固定部の一例としてのレールスライダ装置10と、座面の高さを変更するハイトアジャスト機構20と、ベースフレーム30と、可動フレーム40と、前面衝突時にシートベルトを引き込むプリテンショナ装置および前面衝突時に可動フレーム40を後方へ移動させる座面移動装置を作動させる引張力発生装置の一例としてのガスシリンダ51とを主として備えている。なお、レールスライダ装置10とベースフレーム30とが、ベース部の一例である。可動フレーム40は、前面衝突するとベースフレーム30に対して相対的に後方に移動するように構成され、この前面衝突による作動前の状態を通常状態といい、作動後の状態を作動後状態という。以下、特に断りが無いときは、通常状態の構成を説明する。
【0030】
レールスライダ装置10は、レール11とスライダ15を主に有している。レール11は、前後に長く延びた形状を有し、左右に離れて同様のものが2つ平行に設けられている。各レール11は、フロントブラケット12とリアブラケット13により、車体(機体)のフロアに固定されている。
【0031】
スライダ15は、前後に長く延びた形状を有し、レール11に対してスライド移動可能に構成されている。スライダ15は、ハイトアジャスト機構20を介してベースフレーム30を支持している。
【0032】
ハイトアジャスト機構20は、フロントリンク21およびリアリンク23を有し、これらの下端21A,23Aがスライダ15に回動可能に接続され、これらの上端21B,23Bがベースフレーム30に回動可能に接続されている。これにより、四節リンク機構によりベースフレーム30をスライダ15に対して上下動させることができるようになっている。
【0033】
具体的には、フロントリンク21は、左右に2つ設けられ、それぞれの下端21Aが各スライダ15の前端に設けられた金具91に軸支されている。左右のフロントリンク21は、各フロントリンク21中央付近でフロントリンク連結パイプ22により連結されている。これにより、左右のフロントリンク21は、双方が同時に回動するようになっている。
フロントリンク21の上端21Bは、後述するベースフレーム30に設けられたダイヤル27と同軸で、ピン92(一方のみ図示)により軸支されている。
各フロントリンク21は、通常状態において、下端21Aよりも上端21Bが後に位置するように後傾して配置されている。
【0034】
リアリンク23は、フロントリンク21と同様に、下端23Aが金具93を介してスライダ15に軸支され、上端23Bが後述するベースフレーム30に対し回転可能に係合したピン94に係合されている。また、リアリンク23は、フロントリンク21と同様に、通常状態において下端23Aよりも上端23Bが後に位置するように後傾して配置されている。
左右のリアリンク23は、各リアリンク23の中央付近で、リアリンク連結パイプ24により連結されている。これにより、左右のリアリンク23は、双方が同時に回動するようになっている。
【0035】
リアリンク23の上端23Bとピン94とは、回転不能に係合している。そして、ピン94は、上方に延びるリンク25と回転不能に係合している。さらに、図3(a),(b)に示すように、リンク25の上端は、前後に延びる操作リンク26の後端と回動可能に連結しており、操作リンク26は、ベースフレーム30に対し回動する扇形のギヤ28に回動可能に連結している。ベースフレーム30には、ギヤを回転させるダイヤル27が設けられており、ダイヤル27のギヤと扇形のギヤ28とが歯合している。これにより、ダイヤル27を回転させると、この回転が扇形のギヤ28に伝達されてギヤ28を回動させ、扇形のギヤ28の回動が、操作リンク26を介してリンク25を回動させる。リンク25とリアリンク23とは、互いの角度がピン94により固定されているので、リンク25の移動がリアリンク23の回動となる。フロントリンク21、リアリンク23、スライダ15およびベースフレーム30は四節リンク機構を構成しているので、リアリンク23が前方に向けて起きあがると、フロントリンク21も同様に前方に向けて起きあがり、ベースフレーム30は上方へ移動する。このようにして、ダイヤル27の正逆回転により、ベースフレーム30は上下に高さを調節することができるようになっている。なお、本実施形態では、フロントリンク21とリアリンク23の長さ(節間の距離)は等しく、また、スライダ15のリンクとしての長さ(節間の距離)と、ベースフレーム30のリンクとしての長さ(節間の長さ)とは、等しい。つまり、これらの部材は、対辺同士の長さが等しく、4つのリンクで平行四辺形を形成する平行四節リンク機構を構成している。
【0036】
図2に示すように、ベースフレーム30は、左右の側壁を形成するサイドフレーム31と、左右のサイドフレーム31を前端で連結する連結パイプ32とを主に有している。右のサイドフレーム31には前端部にダイヤル27が回転可能に設けられている。ダイヤル27と同軸の位置には、左右のサイドフレーム31に、リフト用リンク43がピン92により回動可能に軸支されている。リフト用リンク43は、可動フレーム40が後方に移動するときに可動フレーム40を持ち上げるリンクであり、通常状態では、水平に対し前方に傾斜しており、上端は、可動フレーム40のサイドフレーム41に回動可能に連結されている。リフト用リンク43は、上端に可動フレーム40との接続部43A、下端にベースフレーム30との接続部43Bを有し、中央付近に、後述する第3ワイヤ63との接続部43Cが設けられている。第3ワイヤ63との接続部43Cは、接続部43Aと接続部43Bを繋ぐ線分よりも後方に位置しており、第3ワイヤ63でリフト用リンク43を引っ張る力が、リフト用リンク43を捩れさせることなく効率的に接続部43Aに伝わるようになっている。
左右のサイドフレーム31には、後端部にピン94が回転可能に係合している。
【0037】
可動フレーム40は、左右の側壁を形成するサイドフレーム41と、左右のサイドフレーム41の前端を連結するパンフレーム42と、左右のサイドフレーム41の後端を連結する連結パイプ44を備えている。
【0038】
各サイドフレーム41の後端部には、前後方向に延びるガイド孔41Aが形成され、このガイド孔41Aには、前記したピン94が挿通されている。これにより、可動フレーム40がベースフレーム30に対して後方に移動するときには、可動フレーム40の後端部は、このガイド孔41Aが延びる方向に沿って移動するようになっている。また、各サイドフレーム41は、後端部において、上方に突出する突出部41Bを有している。
【0039】
パンフレーム42は、板金をプレス加工してなり、後端部には、板金の一部を起こして先端が前方へ向かうフック42Hが形成されている。このフック42Hと連結パイプ44の間には、シートスプリング81が張設されている。連結パイプ44は、その両端が、サイドフレーム41の突出部41Bに連結されている。
【0040】
ガスシリンダ51は、特許文献1のプリテンショナ装置と同様に、シリンダ51Aと、シリンダ51A内で移動するピストン(図示せず)と、ピストンからシリンダ51Aの外部へと軸方向に突出するピストンロッド51Bと、ガスジェネレータ(図示せず)とを有している。ガスシリンダ51は、その軸線が左右に向けられて配置されている。ガスジェネレータには、図示しない加速度センサが接続され、加速度センサで所定値以上の車両の減速度が検出されると、加速度センサから電気信号が入力される。そうすると、シリンダ51A内にガスジェネレータからガスが供給されてピストンロッド51Bがシリンダ51A内に入り込み、ガスシリンダ51全体としては軸方向に収縮するようになっている。ガスシリンダ51のシリンダ51Aは、第1部分の一例としての第1ワイヤ61が右方に延出するように接続され、ピストンロッド51Bは、もう一つの第1ワイヤ61が左方に延出するように接続されている。
【0041】
2つのスライダ15には、それぞれ、上下方向の軸線回りに回転可能なプーリ53がブラケット58を介して設けられている。シリンダ51Aおよびピストンロッド51Bに接続された2本の第1ワイヤ61は、左右方向外側に延びた後、プーリ53に掛け回されることで後方に向けられている。そして、左右のブラケット58は、補強パイプ54により接続されている。これにより、2本の第1ワイヤ61に強い張力が掛かって左右のプーリ53にお互いが近づくような力が掛かっても、補強パイプ54がこの力に抗して突っ張ることで、左右のスライダ15の間隔を適正に維持できるようになっている。
【0042】
第1ワイヤ61の後端は、分岐ブラケット65を介して第2部分の一例としての第2ワイヤ62および第3部分の一例としての第3ワイヤ63と接続されている。本実施形態では、第1ワイヤ61、第2ワイヤ62および第3ワイヤ63を合わせて「接続ワイヤ」という。接続ワイヤは、張力伝達部材に相当する。分岐ブラケット65は、第1ワイヤ61が接続される第1接続部65A、第2ワイヤ62が接続される第2接続部65Bおよび第3ワイヤ63が接続される第3接続部65Cを有している。第1接続部65Aが第1ワイヤ61により前方へ引かれる力と、第2接続部65Bと第3接続部65Cが第2ワイヤ62および第3ワイヤ63により後方に引かれる力により、分岐ブラケット65の姿勢が不安定にならないようにするため、第1接続部65Aは、第1ワイヤ61の引っ張り方向、つまり前後方向において第2接続部65Bおよび第3接続部65Cよりも第1ワイヤ61側、つまり前側に配置されている。そして、第2接続部65Bおよび第3接続部65Cは、第1接続部65Aの左右両側に振り分けて配置されている。言い換えれば、第2接続部65B、第1接続部65Aおよび第3接続部65Cを繋ぐ線分は、V字型をなすように各接続部65A〜65Cが配置されている。後述するように、分岐ブラケット65の回転による各ワイヤ61〜63の張力の調整が効果的に機能するように、このV字をなす角度θ(図6(a)参照)は、鈍角(90〜180度)であるのが望ましい。この角度θが鋭角であると、分岐ブラケット65が回転しても第2接続部65Bと第3接続部65Cの第2ワイヤ62と第3ワイヤ63の引っ張り方向への変位が小さいからである。
また、分岐ブラケット65により第2ワイヤ62は、第3ワイヤ63よりも左右方向の外側に配置されている。第2ワイヤ62は、座席の左右外側に配置されるシートベルトアンカー56またはインナーバックル57に接続されるので、第2ワイヤ62を第3ワイヤ63よりも左右外側に配置することで、第2ワイヤ62と第3ワイヤ63の干渉や、これらの接続ワイヤと他の部品との干渉を避けて接続ワイヤをコンパクトに取り回すことができる。
【0043】
2つのスライダ15の後端に設けられた金具93には、左右方向の軸線回りに回転可能なプリテンショナ用プーリ55がそれぞれ設けられている。プリテンショナ用プーリ55は、回転軸が、リアリンク23の下端23Aにあるリアリンク23の回動軸(単に、「下端23Aの節点」という。上端23Bについても以下同様とする。)と一致している。前後に延びた2本の第2ワイヤ62は、プリテンショナ用プーリ55に掛け回されることで斜め上方の前方に向いており、その末端にそれぞれシートベルトアンカー56とインナーバックル57が接続されている。なお、プリテンショナ用プーリ55には、プリテンショナ用プーリ55との間で第2ワイヤ62を挟み込むことで第2ワイヤ62の脱落を防止するリテーナ55Aが設けられている。リテーナ55Aは、適度な挟持力で第2ワイヤ62を保持することで、通常状態において、第2ワイヤ62が緩んでシートベルトアンカー56とインナーバックル57がぐらついたり、下がったりするのを防止している。
【0044】
リアリンク23の下端23Aの節点には、左右外側に、左右方向の軸線周りに回転可能な第1ガイドの一例としての第1プーリ71が設けられ、リアリンク23の上端23Bの節点には、左右外側に、左右方向の軸線周りに回転可能な第2ガイドの一例としての第2プーリ72が設けられている。すなわち、第1プーリ71とプリテンショナ用プーリ55とは、同軸に配置されている。このため、2つのプーリを共通の軸で支持させることが可能であり、第1プーリ71とプリテンショナ用プーリ55とを少ない部品でコンパクトに配置することができる。
第1プーリ71と、第2プーリ72とは、後述するように、ハイトアジャスト機構20の作動前後における接続ワイヤの張りすぎや緩みを防止するため、同じプーリ径(ガイド径)を有する。
【0045】
分岐ブラケット65で、第1ワイヤ61から第2ワイヤ62と分岐した第3ワイヤ63は、分岐ブラケット65の第3接続部65Cから後方に延び、第1プーリ71、第2プーリ72の順に掛け回され、第2プーリ72から前方に延びて、前記したリフト用リンク43の接続部43Cに接続されている。すなわち、第3ワイヤ63は、リフト用リンク43を介して可動フレーム40に接続されている。
【0046】
第3ワイヤ63の第2プーリ72からリフト用リンク43までの間は、左右方向の位置が、ベースフレーム30のサイドフレーム31と可動フレーム40のサイドフレーム41の間に配置されている。これにより、前後へ延びる第3ワイヤ63をコンパクトに配置できるとともに、フレーム類の外側に被せられるクッションなどと第3ワイヤ63の干渉を抑制することができる。
【0047】
ガスシリンダ51は、可動フレーム40の下、すなわち、着座部の下に配置されている。ガスシリンダ51を、着座部の下から外した、例えばベースフレーム30のより後ろやより前などに配置することも可能であるが、本実施形態のように、着座部の下に配置することで、乗員が座るときにじゃまにならず、装置をコンパクトに配置することができる。
【0048】
以上のように構成された車両用シートの動作について説明する。
図4に示すように、座面が低い状態にあるときに車両が前面衝突して、所定値以上の大きな減速度が発生すると、図示しない加速度センサから信号が出力されて、ガスジェネレータを作動させる。これにより、ガスシリンダ51が収縮動作して、左右の接続ワイヤ(第1ワイヤ61)を引っ張る。
【0049】
すると、図6(a)に示す状態から、第1ワイヤ61が前方に引っ張られるので、第2ワイヤ62および第3ワイヤ63に掛かる負荷や、これらのたるみ具合に応じて、例えば図6(b)に示すように分岐ブラケット65が第1接続部65A回りに回転する。第3ワイヤ63のたるみに比べて、第2ワイヤ62のたるみが大きかった場合には、その分、図6(b)に示すように、第2接続部65Bが前方に行くように分岐ブラケット65が回転する。逆に、第3ワイヤ63のたるみが第2ワイヤ62のたるみに比べて大きかった場合には、図6(b)とは逆の方向に分岐ブラケット65が回転する。
【0050】
また、シートベルトを引っ張る負荷に比べて、可動フレーム40を引っ張る負荷が大きければ、やはり、図6(b)に示すように、第2接続部65Bが前方に行くように分岐ブラケット65が回転する。分岐ブラケット65が回転すると、第1接続部65Aと第2接続部65Bの、ワイヤ引張方向(図6の左右方向)に直交する方向(図6の上下方向)の距離が大きくなることで第2ワイヤ62が分岐ブラケット65を回そうとする力は大きくなり、一方で、第1接続部65Aと第3接続部65Cのワイヤ引張方向に直交する距離が小さくなることで第3ワイヤ63が分岐ブラケット65を回そうとする力が小さくなる。こうして、第2ワイヤ62が分岐ブラケット65を回す力と、第3ワイヤ63が分岐ブラケット65を回す力が釣り合うと、分岐ブラケット65の姿勢が安定する。このように、分岐ブラケット65があたかも第1接続部65Aで吊った天秤のように第2ワイヤ62および第3ワイヤ63で引っ張られる力に応じ回転することで、一本のワイヤ(第1ワイヤ61)で2本のワイヤ(第2ワイヤ62および第3ワイヤ63)をバランス良く引っ張ることができる。
また、この作用を見て分かるように、第1接続部65Aと第2接続部65Bの距離と、第1接続部65Aと第3接続部65Cの距離とを調整することで、シートベルトを引っ張る力と可動フレーム40を引っ張る力や量のバランスを調整することが可能である。
【0051】
第2ワイヤ62が分岐ブラケット65を介して引っ張られると、図5に示すように、シートベルトアンカー56が引き込まれる。図示しないインナーバックル57も同様である。これにより、シートベルトが締まり、乗員の車両用シートへの保持力が向上する。
【0052】
また、第3ワイヤ63が分岐ブラケット65を介して引っ張られると、図5に示すように、第1プーリ71および第2プーリ72を掛け回されて前方に向かった第3ワイヤ63の端部が後方へ移動し、これにより、リフト用リンク43が下端を中心に後方へ回動する。これにより、可動フレーム40が後方へ移動するとともに、可動フレーム40の前端部がリフト用リンク43の上端の接続部43Aの移動軌跡と同様の動きで上に上がる。これにより、図示しないクッション上の座面は後に移動しながら前部が上に上がり、乗員が慣性により前方に移動しようとするのを座面が受け止め易くなり、乗員の車両用シートへの保持力が向上する。
【0053】
図4に示す座面が低い状態(「ローポジション」という。)から、ハイトアジャスト機構20を操作すると、フロントリンク21およびリアリンク23がそれぞれの下端21A,23Bを回動軸として前方に回動して、図7に示す座面が高い状態(「ハイポジション」という。)になる。このとき、フロントリンク21、リアリンク23、スライダ15およびベースフレーム30は、平行四節リンク機構を構成しており、第1プーリ71と第2プーリ72のプーリ径は同じであるので、図4、図7の側面視において見えている接続ワイヤが掛け渡される長さは変わらない。これを細かく見ていくと、まず、プーリ53から第1プーリ71までの長さ、第1プーリ71から第2プーリ72までの長さおよび第2プーリ72から接続部43Cまでの長さは変わらない。そして、ローポジションからハイポジションまで変化する間に、第1プーリ71に巻き掛けられる第3ワイヤ63の巻き掛け角はリンク21,23の回転角であるθ1(図7参照)だけ増えるが、第2プーリ72に巻き掛けられる第3ワイヤ63の巻き掛け角はθ1だけ減る。ここで、第1プーリ71と第2プーリ72のプーリ径は同じであるので、第1プーリ71と第2プーリ72に巻き掛けられる第3ワイヤ63の合計長さは、ローポジションとハイポジションのどちらにおいても同じである。したがって、プーリ53からリフト用リンク43の接続部43Cまでの経路の長さは、ローポジションとハイポジションとで変化がなく、このため、ハイトアジャスト機構20を操作しても、接続ワイヤの緩みや、張りすぎを防止することができる。
【0054】
図7および図8に示すように、ハイポジションにおいて、ガスシリンダ51が作動すると、ローポジションの場合と全く同じようにして、第1ワイヤ61を引っ張る力が、第2ワイヤ62と第3ワイヤ63に伝えられ、シートベルトが引き込まれて乗員が車両用シートから離れるのが抑制されるとともに、可動フレーム40が後方へ移動すると同時に前部が上に上がる。これにより、乗員が慣性により前方に移動しようとするのを座面が受け止め易くなり、乗員が車両用シートから離れにくくなる。
【0055】
以上のような本実施形態の車両用シートによれば、次の各効果を奏することができる。
1つのガスシリンダ51で、可動フレーム40、シートベルトアンカー56およびインナーバックル57の両方を動作させるので、従来のように2つのガスシリンダを備える必要がなく、簡易な構成として装置の大型化や重量増の抑制を図ることができる。
【0056】
着座部を支える高い剛性を有する部分である固定部(レールスライダ装置10)にガスシリンダを配置したので、動作を安定させることができる。
【0057】
第3ワイヤ63をハイトアジャスト機構20の一部であるリアリンク23の後方を迂回するように配置しているので、ガスシリンダ51により第3ワイヤ63を引っ張る動作が、ハイトアジャスト機構20の影響を受けない。
【0058】
ハイトアジャスト機構20は、平行四節リンク機構であり、第1プーリ71と第2プーリ72は、同じプーリ径であるので、ローポジションとハイポジションとで第3ワイヤ63が配される経路の長さが不変であり、第3ワイヤ63の緩みや、張りすぎを防止できる。
【0059】
ガスシリンダ51を着座部の下に配置したことで、空いている空間を利用してガスシリンダ51をコンパクトに配置することができる。
【0060】
分岐ブラケット65により、第1ワイヤ61を、第2ワイヤ62と第3ワイヤ63に分岐させたことにより、1本のワイヤで第2ワイヤ62および第3ワイヤ63をバランス良く引っ張ることができる。
【0061】
第2ワイヤ62を第3ワイヤ63より左右方向外側に配置したことにより、これらの干渉や、これらのワイヤと他の部品との干渉を避けて、ワイヤをコンパクトに取り回すことができる。
【0062】
以上に本発明の実施形態について説明したが、本発明は、以下の他の形態に示すように、適宜変形して実施することが可能である。
【0063】
例えば、前記実施形態においては、左右の第1ワイヤ61を共に分岐させて、一方の第2ワイヤ62で、シートベルトアンカー56を引張り、他方の第2ワイヤ62でインナーバックル57を引っ張るようにしたが、シートベルトアンカー56とインナーバックル57のどちらか一方のみを引っ張るように構成しても構わない。また、分岐ブラケット65を用いずに、第1部分と第3部分を一本のワイヤで構成し、これに第2部分を接続することで、第1部分から第2部分と第3部分を分岐させてもよい。
【0064】
前記実施形態においては、ガスシリンダ51をスライダ15に配置したが、乗物用シートが前後スライド機構を有さない場合には、ベースフレーム30を支えるブラケット(例えば、フロントブラケット12やリアブラケット13に相当する部分)にガスシリンダ51を配置してもよい。
【0065】
また、ガスシリンダ51は図9に示すように、ベースフレーム30に配置してもよい。このとき、プリテンショナ用プーリ55もベースフレーム30に取り付けるとよい。このような構成にすると、引張力発生装置によるワイヤを引っ張る動作がハイトアジャスト機構の影響を受けず、簡素に構成して、動作を安定させることができる。
【0066】
前記実施形態においては、ハイトアジャスト機構20を平行四節リンク機構で構成したが、2組の対向するリンク同士の組のうち少なくとも一方の組のリンク同士の長さが異なる非平行リンク機構にしてもよい。この場合には、図10や図11のように、第1プーリ171と第2プーリ172のプーリ径(ガイド径)、第1プーリ271と第2プーリ272のプーリ径(ガイド径)を異ならせておくとよい。
【0067】
図10、図11は、ハイトアジャスト機構20の非平行四節リンク機構を模式的に示した図であり、2点鎖線がローポジション、実線がハイポジションを示し、太線が接続ワイヤ(第1ワイヤ61と第3ワイヤ63を合わせたもの)を示している。
【0068】
図10は、ローポジションからハイポジションに移行するにつれて着座部(ここでは可動フレーム40の部分)が前下がりになる形態であり、この場合には、第1プーリ171よりも第2プーリ172の方が、プーリ径が大きい方がよい。これを詳細に説明すると、リアリンク123の回転角をθ2とし、ローポジションにおける第1プーリ171の巻き掛け角をα、第2プーリ172の巻き掛け角をβとし、ハイポジションにおける第1プーリ171の巻き掛け角をα′、第2プーリ172の巻き掛け角をβ′とし、可動フレーム40が前下がりになる角度(変化量)をγ(正の値)とすれば(角度の単位はラジアンとする)、
α′=α+θ2
β′=β−θ2+γ
であり第1プーリ171の巻き掛け長さは、プーリ径をR1としてR1・θ2だけ増え、第2プーリ172の巻き掛け長さは、プーリ径をR2としてR2・(θ2−γ)だけ減る。そのため、ローポジションとハイポジションの移行前後において、接続ワイヤの経路の長さが変わりにくくなるようにするには、R1・θ2とR2・(θ2−γ)が近いのが望ましく、このことから、R1<R2であるのが望ましいといえる。
【0069】
図11は、ローポジションからハイポジションに移行するにつれて着座部(ここでは可動フレーム40の部分)が前上がりになる形態であり、この場合には、第1プーリ271よりも第2プーリ272の方が、プーリ径が小さい方がよい。この理由は、図10の場合とちょうど逆で、α′,β′は、
α′=α+θ2
β′=β−θ2−γ
となり、第1プーリ271の巻き掛け長さは、プーリ径をR1としてR1・θ2だけ増え、第2プーリ272の巻き掛け長さは、プーリ径をR2としてR2・(θ2+γ)だけ減る(なお、γは変化量であり、正の値としている)。そのため、ローポジションとハイポジションの移行前後において、接続ワイヤの経路の長さが変わりにくくなるようにするには、R1・θ2とR2・(θ2+γ)が近いのが望ましく、このことから、R1>R2であるのが望ましいといえる。
【0070】
前記実施形態では、引張力発生部材としてガスシリンダ51を例示したが、これに限定されず、例えば、バネやモータなどであってもよい。
【0071】
接続ワイヤは、引張力を伝達することができるものであれば、他の部材でもよく、ベルトやチェーンであっても構わない。
【0072】
前記実施形態では、第2ワイヤ62および第3ワイヤ63の力の作用方向を転換させるガイドとして、回転可能なプーリを例示したが、これに限定されず、例えば、ワイヤなどが巻き掛けられる円筒状の面を有した回転しない部材であってもよい。
【0073】
前記実施形態では、前面衝突時に可動フレーム(着座部の座面)が後方に移動する構成としたが、移動方向は後方に限定されず、例えば、前面衝突時において、着座部の前部が持ち上がったり、着座部の後部が下降したりする構成としてもよい。
【0074】
前記実施形態では、前面衝突時に、可動フレーム40が移動し、ベースフレーム30が移動しない構成としたが、これに限定されず、前面衝突時において、機体に対しベースフレーム30も若干移動する構成としてもよい。
【0075】
前記実施形態では、乗物用シートの適用例として車両用シートを示したが、本発明の乗物用シートは、その他の乗物用シート、例えば、船舶用や航空機用のシートに適用することもできる。なお、本発明において「前」とは、シートに座る乗員を基準としている。したがって、シート(シートに座る乗員)が乗物の進行方向に対して後方を向いている場合には、進行方向後方が乗員を基準として前方となり、例えば、乗物が後から追突されたときなどが前面衝突となる。
【符号の説明】
【0076】
1 シートフレーム
2 シートバックフレーム
3 着座部フレーム
10 レールスライダ装置
11 レール
12 フロントブラケット
13 リアブラケット
15 スライダ
20 ハイトアジャスト機構
21 フロントリンク
23 リアリンク
30 ベースフレーム
40 可動フレーム
43 リフト用リンク
43A 接続部
43B 接続部
43C 接続部
51 ガスシリンダ(引張力発生装置)
55 プリテンショナ用プーリ
55A リテーナ
56 シートベルトアンカー
57 インナーバックル
61 第1ワイヤ
62 第2ワイヤ
63 第3ワイヤ
65 分岐ブラケット
65A 第1接続部
65B 第2接続部
65C 第3接続部
71 第1プーリ
72 第2プーリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員を基準とした前面衝突時に着座部の座面が移動するように構成された乗物用シートであって、
前記着座部のうち乗物の機体側に支持されるベース部と、
前記ベース部に対し相対的に前後に移動可能な可動フレームと、
前記ベース部に設けられ、前面衝突時に作動する引張力発生装置と、
前記引張力発生装置に接続される第1部分と、当該第1部分から分岐しシートベルトアンカーまたはインナーバックルに接続される第2部分と、前記第1部分から前記第2部分と分岐し前記可動フレームに接続された第3部分とを有する張力伝達部材と備え、
前記引張力発生装置の作動により前記第3部分で前記可動フレームを引っ張って、前記可動フレームを後方に移動するとともに前記第2部分で前記シートベルトまたはインナーバックルを引っ張るよう構成したことを特徴とする乗物用シート。
【請求項2】
前記ベース部は、前記機体に固定される固定部と、前記可動フレームに対し相対的に前後に移動可能に組み合わされたベースフレームと、前記固定部とベースフレームを接続するように設けられ前記ベースフレームの高さを調整するハイトアジャスト機構とを有し、前記引張力発生装置は、前記固定部に設けられたことを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項3】
前記ベース部は、前記機体に固定される固定部と、前記可動フレームに対し相対的に前後に移動可能に組み合わされたベースフレームと、前記固定部とベースフレームを接続するように設けられ前記ベースフレームの高さを調整するハイトアジャスト機構とを有し、前記引張力発生装置は、前記ベースフレームに設けられたことを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項4】
前記ハイトアジャスト機構は、前記固定部と前記ベースフレームとを、フロントリンクおよびリアリンクで結合することで四節リンク機構を構成してなり、
前記リアリンクの前記固定部との節点には、同軸で第1ガイドが設けられ、
前記リアリンクの前記ベースフレームとの節点には、同軸で第2ガイドが設けられ、
前記第3部分は、前記第2部分との分岐部分から前記第1ガイド、前記第2ガイドの順に掛け回され、前記第2ガイドから前方に向けて延びて端部が前記可動フレームに接続されていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の乗物用シート。
【請求項5】
前記四節リンク機構は、平行リンク機構であり、前記第1ガイドと前記第2ガイドは同じガイド径であることを特徴とする請求項4に記載の乗物用シート。
【請求項6】
前記四節リンク機構は、2組の対向するリンク同士の組のうち少なくとも一方の組のリンク同士の長さが異なる非平行リンク機構であり、前記ベースフレームが、前記ハイトアジャスト機構により高い位置に移動するにつれ前下がりになるように構成され、
前記ハイトアジャスト機構の作動前後において前記張力伝達部材の張力が変動しにくくするため、前記第1ガイドより前記第2ガイドの方が、ガイド径が大きいことを特徴とする請求項4に記載の乗物用シート。
【請求項7】
前記第1部分、前記第2部分および前記第3部分を接続する分岐ブラケットを備え、
前記分岐ブラケットは、前記第1部分が接続される第1接続部、前記第2部分が接続される第2接続部および前記第3部分が接続される第3接続部を有し、
前記第1接続部は、前記第1部分の引っ張り方向において前記第2接続部および前記第3接続部よりも前記第1部分側に配置され、前記第2接続部および前記第3接続部は、前記第1接続部の両側に振り分けて配置されたことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の乗物用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−178259(P2011−178259A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−43964(P2010−43964)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【出願人】(000220066)テイ・エス テック株式会社 (625)
【Fターム(参考)】