説明

乗用型苗植機

【課題】実際の田植作業では昇降制御のセンサーである整地フロートはローリング制御による苗植装置の傾斜修正作動にて泥面から押上げ力を受けて上動する為に、苗植装置は上昇作動してしまい、苗の植付け深さが浅くなって苗が浅植えになったり植付けられなかったりする事態が発生した。
【解決手段】苗植装置25に設けた接地センサー32の接地圧が所定値に維持されるように昇降駆動装置28を制御する昇降制御手段と、苗植装置25の左右傾斜角度を検出する傾斜センサー64の検出値が所定値に維持されるようにローリング駆動装置60を制御するローリング制御手段とを備え、該ローリング制御手段によるローリング駆動装置60の作動中または作動中及び作動後の所定時間は昇降制御手段による苗植装置25を昇降駆動装置28にて上昇作動させる制御を牽制する制御装置51を設けた乗用型苗植機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、乗用型走行車体に田植装置等の各種苗植え作業装置を装着した乗用型苗植機に関するものであり、詳しくは、苗植え作業中に苗植え作業装置を適正に昇降制御及びローリング制御を行って、良好な苗植え作業が行なえるようにした乗用型苗植機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の従来技術としては、田植装置のローリング制御を行なう傾斜センサーによる検出値の設定時間内における変動量が設定量以上であれば、昇降制御の制御感度を鈍感側に補正する乗用型田植機がある。
【特許文献1】特開平7−107825号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
併し乍ら、上記のように田植装置のローリング制御を行なう傾斜センサーによる検出値の設定時間内における変動量が設定量以上であれば、昇降制御の制御感度を鈍感側に補正する制御では、実際の田植作業では昇降制御の接地センサーである整地フロートはローリング制御による苗植え作業装置の傾斜修正作動にて泥面から押上げ力を受けて上動する為に、苗植え作業装置は上昇作動してしまい、苗の植付け深さが浅くなって苗が浅植えになったり植付けられなかったりする事態が発生し、良好な苗植え作業を行なうという点において課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記の従来技術のもつ課題を解決すべく、請求項1記載の発明は、乗用型走行車体1に昇降駆動装置28とローリング駆動装置60とにより昇降自在及びローリング自在に装着した乗用型苗植機において、苗植装置25に設けた接地センサー32の接地圧が所定値に維持されるように昇降駆動装置28を制御する昇降制御手段と、苗植装置25の左右傾斜角度を検出する傾斜センサー64の検出値が所定値に維持されるようにローリング駆動装置60を制御するローリング制御手段とを備え、該ローリング制御手段によるローリング駆動装置60の作動中または作動中及び作動後の所定時間は昇降制御手段による苗植装置25を昇降駆動装置28にて上昇作動させる制御を牽制する制御装置51を設けた乗用型苗植機としたものである。
【0005】
従って、苗の植付け作業中に、機体の傾斜を傾斜センサー64が検出してローリング制御手段にてローリング駆動装置60が作動している時、または、作動している間とその後所定時間の間、接地センサー32の検出により昇降制御手段にて昇降駆動装置28を作動させて苗植装置25を昇降駆動装置28にて上昇作動させようとする制御は牽制される。よって、ローリング制御手段により苗植装置25が駆動制御されている時に、接地センサー32が泥面により押し上げられて苗植装置25を上昇させてしまって苗の植付け深さが浅くなって苗が浅植えになったり植付けられなかったりする弊害を適切に防止できる。
【発明の効果】
【0006】
この発明によると、苗植装置25に設けた接地センサー32の接地圧が所定値に維持されるように昇降駆動装置28を制御する昇降制御手段と、苗植装置25の左右傾斜角度を検出する傾斜センサー64の検出値が所定値に維持されるようにローリング駆動装置60を制御するローリング制御手段とにより、苗植装置25は適正な姿勢制御が行われて、良好な苗の移植作業が行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
この発明の一実施例として、乗用型苗植機の一種である7条植え乗用型田植機を図面に基づき詳細に説明する。1は乗用型走行車体であって、左右フレーム2・2と該左右フレーム2・2の後部を連結する横フレーム3とで構成される機体の後部上面にエンジン4を搭載し、左右フレーム2・2の前部には走行ミッションケース5を固設している。そして、この走行ミッションケース5には、エンジン4の回転駆動力が変速されるHST変速装置と前輪デフ装置と後輪デフ装置とが内蔵されているおり、HST変速装置は、変速レバー6にて、後進と中立と前進(圃場内で植付け作業をする植付速・路上等で早く移動する為の移動速)とに変速操作される。尚、HST変速装置5aは、変速レバー6の操作回動角を検出するHSTレバーセンサ6aの検出結果に応じてHSTモータ5bを回転駆動し、該モータのピニオンギヤ5cと、このピニオンギヤ5cと噛合する扇形ギヤ5dを有したトラニオン操作アーム5eを介してHSTトラニオン軸5fを駆動操作する構成としている。
【0008】
7・7は左右フロントアクスルケースであって、前記走行ミッションケース5の前輪デフ装置より左右駆動軸を介して動力が伝動されるように構成されている。9・9は操向自在の左右駆動前輪であって、左右フロントアクスルケース7・7の下部に嵌合され操舵ハンドル10にて回動される操向ケース11・11に軸架されており、操舵ハンドル10を回すと左右操向ケース11・11が縦軸回りに回動し左右駆動前輪9・9が向きを変えるように構成されている。
【0009】
15・15は左右後輪駆動ケースであって連結枠で一体に連結されており、該連結枠が横フレーム3にロリング軸にてロリング自在に設けられており、その左右両側部に軸架された左右駆動後輪18・18が上下揺動できるように構成されている。19・19は、走行ミッションケース5の後輪デフ装置から左右後輪駆動ケース15・15に動力を伝える伝動軸である。
【0010】
そして、後輪駆動ケース15内部の伝動機構中には左右駆動後輪18・18に対する左右サイドクラッチと左右サイドブレーキとが内蔵されており、機体旋回の為に操舵ハンドル10を所定量以上に操向操作すると旋回内側のサイドクラッチが切れ且つサイドブレーキが利くように連携構成されていて、小回りの旋回操作が操舵ハンドル10を操向操作するだけで容易に行える。
【0011】
21はFRPにて成型された車体カバ−であって、エンジン4の周囲を覆うエンジンカバ−部21aと、前記エンジン4の前方及び左右側方に設けられたステップ21bと、ハンドルポストカバー21cと、エンジン4の後方に設けられた後輪フェンダーを兼ねたステップ21dとにより構成されており、左右フレーム2・2上に固定されている。22は操縦座席で、前記車体カバー21のエンジンカバ−部21a上面に設置固定されている。
【0012】
23は上部リンク23aと下部リンク23bとにより構成される昇降リンク機構であって、上部リンク23aと下部リンク23bの基端部は左右フレーム2・2の後部に固着された支持フレーム24に各々枢着され、後端部は後述の苗植装置25に設けたローリング軸26を回動自在に支持して苗植装置25をローリング自在に装着した縦枠27に枢着されている。そして、昇降リンク機構23の回動角は昇降リンクセンサ23cによって検出されるようになっている。
【0013】
28は油圧シリンダーであって、シリンダーの基部が左右フレーム2・2に枢着され、そのピストンの後端が上部リンク23aと一体の揺動アーム23cに枢着されている。
苗植装置25は、前記縦枠27にローリング軸26にてローリング自在に装着されたフレームを兼ねる植付伝動ケース29と、該植付伝動ケース29に設けられた左右支持部材29a・29aに支持されて機体左右方向に往復動する苗載台30と、植付伝動ケース29の後端部に装着され前記苗載台30の下端より1株分づつの苗を分割して圃場に植え付ける7つの苗植付け具31…と、植付伝動ケース29の下部にその後部が枢支されてその前部が上下揺動自在に装着された整地体であるセンターフロート32・左右サイドフロート33・33等にて構成されている。左右サイドフロート33・33は、各々左右駆動後輪18・18の後方に配置されており、該左右駆動後輪18・18にて掻き乱された圃場を整地すると共に苗植付け具31にて苗が植付けられる圃場の前方を整地すべく設けられている。そして、苗載台30は、7つの苗載置部が左右方向に並列して設けられている。34は苗検出センサーであって、苗載台30の7つの苗載置部の各々に設けられており、苗載置部の苗が減少した場合に検出して、警報ランプを点滅させて7つの苗載置部のどれが苗減少しているかを操縦者に報知する構成となっている。
【0014】
また、走行車体1の前部左右両側には、補給用の苗を載せておく予備苗載台38,38が機体よりも側方に張り出す位置と内側に収納した位置とに回動可能に設けられている。
40は施肥装置であって、前記支持フレーム24の上端部に固着されており、施肥タンク41…と、該各施肥タンク41…の下部に装着され施肥タンク41内の粒状肥料を一定量づつ繰り出す7つの肥料繰出装置42…と、該各々の肥料繰出装置42にて繰り出された肥料をそれぞれ案内する透明の7つの施肥パイプ43a・43b・43c・43d・43e・43f・43gと、センターフロート32・左右サイドフロート33・33に固着され苗植付け位置側方の圃場に施肥溝を掘り各施肥パイプ43a…にて案内された粒状肥料を該施肥溝内に落下案内する7つの作溝器44…とにより構成されている。尚、45は肥料繰出装置42…を駆動する駆動機構であって、左右フレーム2・2上に固設の施肥駆動ケ−ス46により回転動力が伝達される。そして、施肥駆動ケ−ス46には走行ミッションケース5より駆動軸47にて動力が伝達されるように構成されている。
【0015】
48は両端にユニバーサルジョイントを有するPTO伝動軸であって、施肥駆動ケース46の動力を苗植装置25の植付伝動ケース29に伝達すべく設けている。49は圃場に対する苗植装置25の位置を検出するセンサーとしてのセンターフロートセンサーであって、センターフロート32前部の上下位置を検出するポテンショメータにより構成され、センターフロート32の前部上面とリンク50により連携されている。そして、センターフロートセンサー49のセンターフロート32前部の上下位置検出に基づいて、制御装置51の昇降制御手段によりソレノイド油圧バルブ52を制御して油圧シリンダー28にて苗植装置25の上下位置を制御するように構成されている。尚、センターフロート32の前部はバネ50aにより下方に向けて付勢されている。
【0016】
即ち、苗の植付け深さを一定にする苗の植付け深さ制御は、次のように行われる。センターフロート32が泥面に接地した状態でその前部が外力にて適正範囲以上に持ち上げられたことをセンターフロートセンサー49が検出した時には油圧ポンプ53にて走行ミッションケ−ス5内から汲み出された圧油を油圧シリンダー28に送り込んでピストンを突出させ昇降リンク機構23を上動させて苗植装置25を所定位置まで上昇せしめ、また、センターフロート32の前部が適正範囲以上に下がったことをセンターフロートセンサー49が検出した時には油圧シリンダー28内の圧油を走行ミッションケ−ス5内に戻して昇降リンク機構23を下動させて苗植装置25を所定位置まで下降せしめ、そして、センターフロート32の前部が適正範囲にあることをセンターフロートセンサー49が検出しているとき(苗植装置25が適正な所定位置にある時)には油圧シリンダー28内の圧油の出入りを止めて苗植装置25を一定位置に保持せしめるべく設けられている。
【0017】
ところが、下記のローリング制御により苗植装置25が水平状態に駆動制御されている時に、センターフロート32の前部が泥面により押し上げられることがあり、この時、苗の植付け深さ制御が働いていると、センターフロート32の前部が適正範囲以上に持ち上げられたとセンターフロートセンサー49が検出して苗植装置25を上昇させてしまい、苗の植付け深さが浅くなって苗が浅植えになったり植付けられなかったりする弊害が発生する。
【0018】
そこで、苗の植付け深さ制御の「センターフロート32が泥面に接地した状態でその前部が外力にて適正範囲以上に持ち上げられたことをセンターフロートセンサー49が検出した時に油圧ポンプ53にて走行ミッションケ−ス5内から汲み出された圧油を油圧シリンダー28に送り込んでピストンを突出させ昇降リンク機構23を上動させて苗植装置25を所定位置まで上昇させる上げ制御」は、下記のローリング制御の状態により牽制されるようになっている。
【0019】
即ち、図7の制御フロー図に示すように、ローリング制御出力中(ローリング制御により苗植装置25が水平状態に駆動制御されている時)に、植付け深さ制御の上げ出力を0.2秒間止めるようにする。更に、詳しく述べると、ローリング制御出力が出されると、植付け深さ制御の上げ出力ディレーを0.2秒間セットし、この0.2秒間にセンターフロート32の前部が適正範囲以上に持ち上げられたとセンターフロートセンサー49が検出(植付け深さ制御で「上げ」と検出)しても、上げ制御は行わない。
【0020】
このように、ローリング制御出力中(ローリング制御により苗植装置25が水平状態に駆動制御されている時)及び出力後の所定時間(この実施例では0.2秒間であるが、機体の走行速度や性能に応じて適正時間に設定する)は、植付け深さ制御の苗植装置25を上昇させる制御を牽制すると、ローリング制御により苗植装置25が水平状態に駆動制御されている時に、センターフロート32の前部が泥面により押し上げられてセンターフロートセンサー49が検出して苗植装置25を上昇させてしまって苗の植付け深さが浅くなって苗が浅植えになったり植付けられなかったりする弊害を適切に防止できる。
【0021】
54は車体カバ−21より突出して操縦座席22の右側方に設けられた昇降レバーであって、該昇降レバー54を操作することにより、制御装置51のPTOクラッチ作動手段にて走行ミッションケ−ス5から後方に向けて設けられた駆動軸47を駆動回転する動力を断接するPTOクラッチを作動させて施肥装置40及び苗植装置25への動力を入切り操作できるように構成されていると共に、制御装置51の昇降制御手段にてソレノイド油圧バルブ52を作動させて手動にて苗植装置25を上下動できるように構成されている。
【0022】
即ち、昇降レバー54を前方に倒して「自動位置」にすると、PTOクラッチが入り施肥装置40及び苗植装置25が駆動され且つソレノイド油圧バルブ52がセンターフロート32の上下動にて切換えられる自動制御状態となる。逆に、昇降レバー54を後方に引いて「上昇位置」にすると、PTOクラッチが切れ施肥装置40及び苗植装置25の作動が停止し且つソレノイド油圧バルブ52が強制的に苗植装置25を上昇する側に切換えられ、苗植装置25が上昇される。そして、昇降レバー54をその操作ストロークの中間位置の「固定位置」にすると、PTOクラッチが切れ施肥装置40及び苗植装置25の作動が停止し且つソレノイド油圧バルブ52が油圧シリンダー28内の圧油の出入りを止めて苗植装置25を一定位置に保持せしめる位置に切換えられ、苗植装置25が昇降レバー54を「固定位置」に操作したときの位置に保持され苗植装置25は上昇も下降もしない。また、昇降レバー54を「下げ位置」にすると、PTOクラッチが切れ施肥装置40及び苗植装置25の作動が停止し且つソレノイド油圧バルブ52がセンターフロート32の上下動にて切換えられる自動制御状態となる。
【0023】
55は操舵ハンドル10の下方に配置されたフィンガーレバーであって、該フィンガーレバー55を上下方向に操作するとポテンショメータにより構成されるフィンガーレバースイッチ56が作動されて、制御装置51のPTOクラッチ作動手段により、走行ミッションケ−ス5内に設けられた駆動軸47を駆動回転する動力を断接するPTOクラッチをPTOクラッチモータCMにて操作して施肥装置40及び苗植装置25への動力を入切り操作できるように構成されていると共に、制御装置51の昇降制御手段により、ソレノイド油圧バルブ52を操作して手動にて苗植装置25を上下動できるように構成されている。
【0024】
即ち、フィンガーレバー55を「上」に操作すると、PTOクラッチが切れ施肥装置40及び苗植装置25の作動が停止し且つソレノイド油圧バルブ52が強制的に苗植装置25を上昇する側に切換えられる。そして、フィンガーレバー55を「上」に操作した後に、フィンガーレバー55を「下」に1回操作すると、ソレノイド油圧バルブ52がセンターフロート32の上下動にて切換えられる自動制御状態となり、苗植装置25が上昇された状態であればセンターフロート32が接地して適正姿勢になるまで苗植装置25は下降する。更にもう一回、フィンガーレバー55を「下」に操作すると、ソレノイド油圧バルブ52がセンターフロート32の上下動にて切換えられる自動制御状態のままで、PTOクラッチが入り施肥装置40及び苗植装置25が駆動される。以降、フィンガーレバー55を「下」に操作する度に、ソレノイド油圧バルブ52がセンターフロート32の上下動にて切換えられる自動制御状態のままで、PTOクラッチが入りと切りに交互に切り換えられる。
【0025】
57は制御装置51の昇降制御手段の昇降制御感度を設定する感度設定器であり、前記センターフロート32の上下動の量をセンターフロートセンサー49で検出し、その検出情報によって油圧シリンダー28のソレノイド油圧バルブ52を切換え操作する昇降制御手段の昇降制御を行う上でのセンターフロートセンサー49の基準位置を調節することで、昇降制御の感度を調節する一般的なものである。
【0026】
即ち、仮に感度設定器57を標準の「5」の位置から鈍感側「7」に操作すると、センターフロートセンサー49の基準位置が「5」位置から少し上がった「7」位置に変更される。すると、センターフロート32の姿勢が標準の「5」のときの姿勢よりも上向きになって接地面積が減少し、かつ、バネ50aがより圧縮されて基準位置での付勢力が増すので、田面の起伏に追従し難い状態となり、昇降制御感度が鈍感側に調節される。逆に、感度設定器57を標準の「5」の位置から敏感側「3」に操作すると、センターフロートセンサー49の基準位置が「5」位置から少し下がった「3」位置に変更される。すると、センターフロート32の姿勢が下向きになって接地面積が増加し、かつ、バネ50aの付勢力が減るので、田面の起伏に追従し易い状態となり、昇降制御感度が敏感側に調節される。
【0027】
次に、ローリング制御機構59について説明する。60は縦枠27の上部に溶接固定された支持板27aにボルトにて固設された電動モータであって、該電動モータ60の回転駆動軸61の先端に小径の駆動歯車61aが正逆回転駆動されるように装着されている。そして、電動モータ60は、機体背面視で縦枠27の右側に偏った位置に配置して固定されており、電動モータ60のメンテナンス(電動モータ60が機体に取付けられたままでの修理や点検)が容易に機体右側方位置から行えて、その作業性が良い。また、電動モータ60を機体から取外したり組み付けたりする作業も、機体右側方から容易に行えてその作業効率が良い。
【0028】
一方、支持板27aには大径の従動歯車61bが回動軸61cにて回動自在に枢支され、電動モータ60の回転駆動軸61の先端に設けれた駆動歯車61aに噛合っており、従動歯車61bは電動モータ60の回転駆動を減速して回転する構成となっている。そして、従動歯車61bにローリング駆動ピン61dの基端部が溶接固定されており、その先端部は、支持板27aに枢支軸61eにて回動自在に設けられた回動アーム62の長孔62aに嵌合している。
【0029】
そして、回動アーム62の揺動先端部には、左右引張バネ63・63の一端が係合し、左右引張バネ63・63の他端は前記苗植装置25の植付伝動ケース29に設けられた左右支持部材29a・29aに係合している。よって、電動モータ60の回転駆動軸61の正逆転によって、回動アーム62がイ−ロ方向に揺動し、バネ63・63を介して苗植装置25を乗用型走行車体1に対してローリング作動できるようにしてある。
【0030】
64は植付伝動ケース29の上部の機体左右方向中央位置に設けられた水平センサーであって、苗植装置25の水平に対する左右傾斜を電気信号の変動として検出し、機体正面視で水平時に3Vの電圧を出力し、右傾斜するほど出力電圧は5Vまで大きくなり、逆に、左傾斜するほど出力電圧は0Vまで小さくなる。そして、制御装置51のローリング制御手段にてこの水平センサー64の出力電圧に応じて電動モータ60を正逆転制御して苗植装置25を水平に制御するようになっている。
【0031】
65は回動アーム62が左右中央位置で停止するために従動歯車61bの位置を検出する為のセンサーであって、従動歯車61bと同一軸心に装着された検出作動体66の凸部66a(従動歯車61bの最大径部61b’と同じ円弧形状となっている)によりON作動して、回動アーム62が左右中央位置であることを検出できるようになっている。そして、検出作動体66は従動歯車61bに対して回動軸61c回りに回動調節できるようになっており、即ち、従動歯車61bに設けた円弧状の長孔61b”に螺子67を貫通して、該螺子67を検出作動体66に締め付けて、従動歯車61bと検出作動体66とが一体回転するように構成されている。従って、螺子67を緩めて従動歯車61bに対して検出作動体66の位置を回転調節することにより、センサー65が回動アーム62が左右中央位置であることを正確に検出できるようにできる。尚、このセンサー65が回動アーム62が左右中央位置であることの検出は、ローリング制御を停止する等の各種制御に用いている。
【0032】
68は回動アーム62が左右最大揺動位置で停止するために従動歯車61bの位置を検出する為のセンサーであって、その検出接当子が従動歯車61bの外周に形成された凹部68aに接当しており、回動アーム62が左右最大揺動位置まで揺動した時に凹部68aの最終端である凸部になる部位によりON作動して、回動アーム62が左右最大揺動位置であることを検出できるようになっている。尚、このセンサー68が回動アーム62が左右最大揺動位置であることを検出した時には、それ以上に左右方向にローリング制御されることが停止される。
【0033】
ところが、乗用型田植機においては、苗植装置25の苗載台30が左右に往復移動して苗植付け作業が行なわれる為に、苗載台30が中央部に位置する時と右端に位置する時と左端に位置する時とでは、苗植装置25の重心が左右に大きく変動する為に、ローリング制御機構による制御が適正に行ない難い不都合があるので、支持板27aの先端部には、補正用左右引張バネ69・69の一端が係合し、補正用左右引張バネ69・69の他端は前記苗植装置25の苗載台30に係合している。よって、苗載台30が左端付近及び右端付近に移動しているときは苗載台30の重みで、苗植装置25の苗載台30が移動している側が下がりぎみになろうとするが、苗載台30が移動して下がりぎみになろうとする側を引き上げる方向に補正用左右引張バネ69・69が作用して、苗載台30の左右移動によるローリング制御の不安定さを解消できて、ローリング制御が適正に行なえ、良好な苗植付け作業ができる。
【0034】
上記の実施例では、苗植装置25側に水平センサー64を設けた例を示したが、乗用型走行車体1側に水平センサー64を設けて、乗用型走行車体1の傾斜を検出して、苗植装置25が左右水平状態になるように従来一般的に行われている同様の制御手段にて制御しても良い。また、上記の実施例では、ローリング制御機構59は昇降リンク機構23側に設けた例を示したが、逆に、同様のローリング制御機構59を作業装置25側に設けても良い。
【0035】
尚、70はセンターマスコットであって、機体の前端部に設けられており、次工程の機体の中心位置を示す線を圃場面に引く一般的な左右線引きマーカ71・71にて前工程で引かれた線に操縦者が合わせて直進する為の一般的なものである。
【0036】
次に、この実施例の乗用型田植機は、自動直進制御機構が装備されているので、その構成を詳しく説明する。
乗用型走行車体には、操舵ハンドル10の脇に第1の操作パネル80a、操縦座席22の後方に第2の操作パネル80b、機体上部に進行方位センサー81、機体の中央部に左右傾斜及び前後傾斜を検出する車体傾斜センサー82を設けている。苗の植付け作業は、苗植装置25を下げて直進走行しつつ植付けをし、畦際で苗植装置25を上げるとともに機体を旋回した後、再度、苗植装置25を下げて隣接領域についての植付け走行をし、往復での植付け作業を繰り返すことにより行う。
【0037】
制御装置51の入出力構成は、図4に示すように、走行データ入力指示および自動開始用のティーチングスイッチ83、自律直進操舵制御を解除する自動切スイッチ84、設定方向微調節用の左右のトリムスイッチ85、車速センサー86、進行方位センサー81、ハンドル切れ角センサー87等の入力信号のほか、各種のスイッチ、センサーの信号を受け、また、前輪操舵電磁油圧弁88、警報を含む表示ランプ類として目標方位ランプ89a、自動ランフ84a、異常ランプ89b、方位修正ランプ85a、音声警報装置89c、ブザー89dの制御動作を出力する。
【0038】
上記制御装置51により所定の条件を満たす場合に限定して自律直進操舵制御を可能とする。すなわち、自律直進操舵制御は、機体方向を示す方位情報に基づいて別途設定による目標方位に対する機体の方位偏差が小さくなる方向に操向装置の舵角を操作する。機体の方位情報は、進行方位センサー81の信号による。目標方位は、ティーチングスイッチ83がオンの状態で機体走行した際の方位として別途設定される。
【0039】
即ち、図5に示すような圃場で、入出口から苗植装置25を入れて往路工程Aで操縦者が機体を操作して機体が操向されながら苗植付け作業を行なう直進進行方位をティーチングにより演算し、畦際で操縦者が操舵ハンドル10を機体旋回の為に旋回操作(機体を旋回させる意思を持って操縦者が操舵ハンドル10を回す量、例えば、操舵ハンドル10が左右に最大360度〜400度回転する構成であれば、操舵ハンドル10を250度以上操作)し、機体を復路工程Bに進める。この時、旋回操作にて、直進進行方位を演算するティーチングは終了し、機体が往路工程Aで進行した方位が決定される。そして、復路工程Bの直進進行方位が往路工程Aで進行した方位に180°回った方位であることを決定し、復路工程Bでは、その方位に向けて機体は自律直進制御される。以後、旋回のたびに工程C〜工程Kまで同様にして機体は自律直進制御される。
【0040】
また、機体方位の偏差低減に適する走行速度を圃場走行の実測等によって確定した上でこれを基準速度として制御装置51に別途設定する。例えば、作業走行速度が略1m/secの田植え走行の場合において、直線走行として許容される限界速度を実車走行で確認し、または、経験則に基づいて基準速度をO.1m/secとし、また、圃場条件等により、略O.3m/secまでの範囲で定められる。
【0041】
上記構成の制御装置51による制御処理について、図8のフローチャートにより詳細に説明する。
ティーチングスイッチ83がオンの場合(S1)は、走行データが記録されてティーチング処理を行い、ティーチング処理の記録データに基づいて直進進行方位を算出する(S2、往路工程Aでの処理)。
【0042】
そして、畦際で機体を操縦者が旋回操作し、操舵ハンドル10が旋回操作角以上に操作(操舵ハンドル10を250度以上操作)されると、往路工程Aが終了して畦際旋回していると判断し、直進進行方位を演算するティーチングは終了し、機体が往路工程Aで進行した方位が決定される。
【0043】
次いで、自律直進操舵制御の条件(S3〜S6)が満たされている場合に限って進行方位を制御(S7)する(復路工程Bの直進進行方位は、往路工程Aで進行した方位に180°回った方位である)。自律直進操舵制御の条件は、植付「入」で、進行方位が一定範囲内に所定時間維持され、車速が所定値以上で、自動切スイッチ84がオンでない場合である。
【0044】
一方、車速条件が欠けている場合は、警告ランプと警告音の組み合わせや音声出力の警報(S5a)によりオペレータに知らせて自動操舵を解除し、手動操舵に戻す処理を行う。これにより、自動走行中の停止の際の異常修正のまま再出発したときの蛇行を防止して安全を確保することができる。
【0045】
同様に、走行開始時の取扱いについても、一定速度以上にならないと自律直進操舵制御を行わないようにすることにより、低速時の異常修正による出発時の蛇行を防止して安全性を向上することができる。
【0046】
上記警報処理については、音声出力とすることにより、警告ランプと警告音の組み合わせより安価に構成することができる。
また、復路工程Bでは、自律直進操舵制御中で復路工程Bの初期に機体の進行方向がずれた場合に、操縦者はトリムスイッチ85を操作して、左若しくは右に進行方位を修正する。例えば、機体を右に方位修正する場合には、操縦者はトリムスイッチ85の右スイッチを機体の進行方向が修正されるまで複数回押す(トリムスイッチ85による修正方位の調節角は微小にしてあり、複数回押すことにより、正確な修正が行なえるようにしてある)。そして、このトリムスイッチ85による方位修正の為に押された回数は記憶されて、工程C〜Kでは、トリムスイッチ85を一度押すと、復路工程Bで修正された方位分修正できるようにしてある(自動切スイッチ84が操作されるまで、この方位修正量は記憶しておき、トリムスイッチ85を一度押した時の方位修正量は大きくなっている)。このようにすれば、一つの圃場では種々の環境条件が同じであるので、機体旋回後に進行方向がずれている場合、トリムスイッチ85による機体進行方位の修正操作が早く且つ適正に行なえて、作業性及び作業効率が向上する。
【0047】
更に、復路工程Bでの修正方位量は、記憶されて、工程C〜Kにおける進行方位を自動修正する。即ち、復路工程Bでの修正方位量が3°であれば、工程C〜Kにおける進行方位を各々往路工程及び復路工程に応じて3°分だけ自動修正する。このように、復路工程Bでの操縦者の方位修正が、その後の自律直進方位の自動修正に用いられて、自動的に進行方位が修正されるので、操縦者の作業性を良くできて作業能率向上が図れると共に、自律直進制御が適正に行える。
【0048】
また、自律直進操舵制御においては、トリムスイッチ85の操作に応じて進行方位を修正中である旨の音声出力(S8,S8a)を行う。この音声出力により、方向修正が僅かで確認が困難なことから勘違いによるスイッチの誤操作を防止することができる。
【0049】
このようにして、自律直進操舵制御の条件(S3〜S6)を満たす場合に限り、所定角度以上のハンドル操作(S9)がされるまでの間、自律直進操舵制御が継続される(工程B〜K)。
【0050】
上記構成の制御装置51により、所定の基準速度以上の速度範囲に限って自律直進操舵制御により操向装置の舵角操作が行われ、同基準速度に満たない低速走行では、自律直進操舵制御が行われることなく圃場状況に応じた走行となる。したがって、機体方位の偏差低減に適する走行速度を実測等により確定した上でこれを基準速度として設定することにより、圃場状況や走行速度に応じて制御パラメータを変更する適応制御のための複雑な取扱いを要することなく、簡易な構成で信頼性の高い制御部により自律直進操舵制御の不安定化を回避して異常走行を確実に防止することができる。
【0051】
操作パネル80a,80bは、図10の構成図に示すように、ティーチングスイッチ83、「自動」表示ランフ84aを伴う自動切スイッチ84、左右で1組のトリムスイッチ85を中心に、放射状配置のランフによる「目標方位」ランプ群89a、「方位修正」ランプ85a、「異常」ランプ89bを配置して構成し、これを操舵ハンドル10の周辺および操縦座席22の後方中央部もしくはその近傍に配置する。特に操縦座席22後方に配置することにより、自動走行中の苗継ぎ時に後方を見ながらスイッチ操作ができるので、操作性を向上することができる。
【0052】
以上のように、自律直進操舵制御中には走行機体は自動直進制御されているので、機体後部の苗植装置25の苗載台30に載置された苗が残り少なくなった時には、操縦者は操縦座席22を離れて機体走行のステップ21b上に立って、機体前部左右に設けられた左右予備苗載台38,38に載置された予備苗を取って、機体後方を向いて苗植装置25の苗載台30に供給することができる。また、苗植装置25の点検等の場合も、操縦者は操縦座席22を離れて機体走行のステップ21b上に立って後ろを向いて苗植装置25の各部の点検を行なうことができる。
【0053】
従って、自律直進操舵制御が行われない従来の田植機では、苗載台30に載置された苗が残り少なくなった時や苗植装置25の点検を行なう場合に、機体を停止させて苗供給や点検を行なっていたので、その間、苗植付け作業を中断せざるを得なかった。ところが、この発明による上記の自律直進操舵制御を行う田植機では、苗植付け作業を中断することなく、機体を前進させて苗植付け作業を行ないながら苗供給や点検ができ、飛躍的に作業効率が向上する。
【0054】
尚、ティーチングモード中に、操縦者が操舵ハンドル10を通常所定量操作よりも大きく操作した場合(圃場の耕盤が荒れていて機体の進行方向修正操作が困難で大きく蛇行した場合や操縦不慣れによる機体の蛇行運転を行なった場合、例えば、操舵ハンドル10が左右に最大360度〜400度回転する構成であれば、操舵ハンドル10を100度以上操作した場合)、制御装置51により音声警報装置89cにて「ティーチングが適正に行なわれませんでした」と警報を発するようにすれば、再度、ティーチングスイッチ83を押して、ティーチングモードにして作業を続行すれば、以後、適正な自律直進操舵制御が行えて、良好な作業が行なえる。
【0055】
また、ティーチングモード中に、検出する機体が進行の方位が所定幅以上に異なる方位を検出した場合(例えば、検出方位が90°以上の異なる方位を検出した場合)には、その圃場の磁界の影響を受けて正確な方位が検出できていない可能性があるので、制御装置51により音声警報装置89cにて「ティーチングが適正に行なわれませんでした」と警報を発するようにすれば、操縦者は、再度、ティーチングスイッチ83を押して、ティーチングモードにして作業を続行し、適正な作業が行なえる。
【0056】
また、上記の例では、1工程でティーチングを行なう制御としたが、所定距離(例えば、植付け進行した距離が20m)を過ぎるとティーチングを終えて、その工程の進行方位を演算し、その後、その方位に向けて自律直進操舵制御を行い、畦際で旋回後は上記の例と同じように制御するようにすれば、早く自律直進操舵制御が行えて作業効率が良くなる。尚、所定距離(例えば、植付け進行した距離が20m)を過ぎてティーチングを終えた時に、音声警報又はブザーにてティーチングを終えたことを操縦者に知らせるようにすると、操縦者の操作ミスが防止できて作業性が向上する。
【0057】
次に、圃場での枕地植え作業の説明をする。
往復工程A〜Kまでの植付け作業が終わると、最後に、往復工程A〜Kで機体旋回を行なった畦際の枕地の苗植付け作業を行なうが、通常、工程Kを終えてから枕地往路工程Lと枕地復路工程Mを植付け進行し、その後、工程Nで植付け作業をしながら反対側の畦際に進み、畦際を畦に沿って苗の植付けをしないで入出口まで進み、枕地往路工程Oと枕地復路工程Pを植付け進行して、入出口から圃場の外に出る。
【0058】
この枕地往路工程Lの最初に枕地植付けスイッチ90をONにすると、工程Kに対する復路工程である工程Nの進行方位を記憶し、新たなティーチングモードになる。枕地往路工程Lで植付け作業をしながら進行すると、走行データが記録されてティーチング処理を行い、ティーチング処理の記録データに基づいて直進進行方位を算出し、旋回後の枕地復路工程Mの方位が決定される。よって、枕地復路工程Mは自律直進操舵制御が行われる。
【0059】
そして、枕地復路工程Mを終えて、工程Nの最初に枕地植付けスイッチ90をOFFにすると、枕地植えでの方位は消去され、記憶されていた工程Nの進行方位に基づく自律直進操舵制御が行われて、工程Nは自律直進操舵制御が行われる。
【0060】
そして、工程Nを終えて、畦際を畦に沿って苗の植付けをしないで入出口まで進み、枕地往路工程Oの最初に枕地植付けスイッチ90をONにすると、再び、新たなティーチングモードになる。枕地往路工程Oで植付け作業をしながら進行すると、走行データが記録されてティーチング処理を行い、ティーチング処理の記録データに基づいて直進進行方位を算出し、旋回後の枕地復路工程Pの方位が決定される。よって、枕地復路工程Pは自律直進操舵制御が行われる。
【0061】
このように、枕地植付けスイッチ90を設けて、前工程の方位に対する次工程の方位を記憶して、新たなティーチングモードになることにより、枕地植えでも自律直進操舵制御を行なうことができて、作業能率が向上する。
【0062】
一方、乗用型走行車体の中央部に設けた車体傾斜センサー82が車体が左右傾斜及び前後傾斜したことを検出すると、その傾斜検出角度に応じて進行目標方位を補正するようにすると、乗用型走行車体の傾きによる進行方向の誤差が修正されるので、適正な方向に車体は自動直進制御される。
【0063】
また、上記の目標方位に対して車体の進行方向を修正すべく前輪操舵電磁油圧弁88をPID制御(aP+bI+cD=操舵ハンドル10を油圧駆動にて作動させる単位操舵油量、P:目標方位と進行方位との差、I:目標方位と進行方位との差の積分値、D:変化量・微分値)して操舵ハンドル10を油圧駆動にて作動させる制御としているが、そのPID制御の出力ゲイン(a,b,c)を操作パネルに設けたダイヤルにて設定できるようにすると、圃場条件やその地区の環境条件に応じた適正なPID制御が行えて、自動直進制御が適正に行える。
【0064】
最後に、この実施例の乗用型田植機は、変速レバー6の操作で、HSTモータ5bによりHST変速装置5aを変速操作して機体の前後進を制御し、また、フィンガーレバー55の操作で、ソレノイド油圧バルブ52を切換えて苗植装置25の昇降及びPTOクラッチモータCMを駆動してPTOクラッチを入切制御する車体上に操縦者が搭乗して操作する構成に加えて、機体から離れた位置でリモートコントロールにより操作するリモコン操作装置RCの操作により、前記HSTモータ5bを作動させる機体の前後進制御、苗植装置25の昇降制御及びPTOクラッチの入切制御等を行うリモコン操作手段が制御装置51に備えられている。
【0065】
また、この制御装置51には、機体側に設けたモード選択スイッチMSにより搭乗操作モードとリモコン操作モードとに切り替えるモード選択手段が設けられている。また、前記モード選択スイッチMSによってリモコン操作モードに選択されているとき、搭乗しての操作装置が操作されるとその操作を優先する手動優先手段が備えられている。従って、かかる制御手段は、手動優先になっているため、リモコン操作時であっても、危険を感じたときには、人為操作によって即座に対応することができる。つまり、リモコン操作で走行中、危険を感じた時には、変速レバー6を中立に戻して機体を停止するか、または、メインクラッチペダルかブレーキペダルを操作して急停止することができる。
【0066】
尚、図13には、リモコン操作装置の表示パネル例が示されている。走行前進スイッチS1を押すと機体は前進し、走行中立スイッチS2を押すと機体は停止し、走行後進スイッチS3を押すと機体は後進する。植付上げスイッチS4を押すと苗植装置25が上昇し、植付下げスイッチS5を押すと苗植装置25が下降する。また、PTO入りスイッチS6を押せばPTOクラッチが入りとなり、PTO切りスイッチS7を押すとPTOクラッチが切りとなるようになっている。また、このリモコン操作装置には操舵ハンドル10を電動モータにて作動させて機体の進行方向を操向制御する左右操向スイッチも設けられている(図示省略)。
【0067】
また、機体に設けた車体傾斜センサー82が車体の所定角以上(例えば、20度以上)左右傾斜若しくは前後傾斜を検出すると、リモコン操作装置からの指令を無視して、変速レバー6を中立に戻して機体を停止するように制御する構成としており、機体の傾斜による機体転倒を防止できて安全である。このとき、PTOクラッチも切って作業は停止する。
【0068】
また、機体上に作業者が搭乗して操縦座席22に着座している時は、操縦者が機体に乗って作業をしている時であるので、操縦座席22に操縦者が着座していることを検出する着座センサー(例えば、座面に感圧センサーを設けて、操縦者が着座すると、その体重で着座していることを検出する)を設けて、操縦者が着座するとリモコン操作装置からの指令を無視する制御にすると、作業者が搭乗して操縦座席22に着座している時に、誤って他の人がリモコン操作装置を操作しても、不用意に機体は作動しないので安全である。
【0069】
また、リモコン操作装置で機体の操作を始める時に、苗植装置25が下降した状態で機体の前後進操作をすると、苗植装置25が接地したままで前後進する為に破損の恐れがある。そこで、リモコン操作装置を「ON」にした時、昇降リンクセンサ23cにて昇降リンク機構23の回動角を検出して、苗植装置25が最上昇位置にある時にのみ、リモコン操作装置にて機体の前後進操作(走行前進スイッチS1を押して機体を前進させたり、走行後進スイッチS3を押して機体を後進させる操作)ができるようにしておくと、苗植装置25が下降した状態で機体が前後進することがなく各部の破損を防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、上記実施例の乗用型田植機以外に、乗用型野菜移植機や乗用型イ草移植機等の色々な乗用型苗植機に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】乗用型田植機の全体側面図である。
【図2】乗用型田植機の全体平面図である。
【図3】植付装置の正面図である。
【図4】制御系のブロック回路図である。
【図5】ローリング作動機構部の拡大背面図である。
【図6】ローリング作動機構部の拡大側面図である。
【図7】植付け深さ制御フロー図である。
【図8】自律直進操舵制御のフローチャートである。
【図9】圃場での作業工程を示す図である。
【図10】操作パネルの構成図である。
【図11】目標方位修正制御のフローチャートである。
【図12】(a)HST変速装置の平面図及び(b)側面図である。
【図13】リモコン操作装置の表示パネルである。
【図14】リモコン操作装置の操作フロー図である。
【図15】リモコン操作装置の操作フロー図である。
【図16】リモコン操作装置の操作フロー図である。
【符号の説明】
【0072】
1 乗用型走行車体
23 昇降リンク機構
25 苗植装置
28 昇降駆動装置(油圧シリンダー)
32 接地センサー(センターフロート)
51 制御装置
60 ローリング駆動装置(電動モータ)
64 傾斜センサー(水平センサー)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗用型走行車体1に昇降駆動装置28とローリング駆動装置60とにより昇降自在及びローリング自在に装着した乗用型苗植機において、苗植装置25に設けた接地センサー32の接地圧が所定値に維持されるように昇降駆動装置28を制御する昇降制御手段と、苗植装置25の左右傾斜角度を検出する傾斜センサー64の検出値が所定値に維持されるようにローリング駆動装置60を制御するローリング制御手段とを備え、該ローリング制御手段によるローリング駆動装置60の作動中または作動中及び作動後の所定時間は昇降制御手段による苗植装置25を昇降駆動装置28にて上昇作動させる制御を牽制する制御装置51を設けたことを特徴とする乗用型苗植機

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−252320(P2007−252320A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−83315(P2006−83315)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】