説明

乗用自動車

【課題】フロント・ウインドウを有するゴルフカートは炎天下で使用する場合に、キャビン内への外気の侵入がフロント・ウインドウで遮られるためにキャビン内の温度が上昇して不快感を催す。
【解決手段】カート1は、フロント・ウインドウ13に通気口21及び該通気口を開閉するルーバー14を備えていて、ルーバー14により通気口21を開放して走行することにより、外気を通気口21からキャビン内に効果的に取り入れて乗員に吹き付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフ場にてゴルフバッグやプレーヤー等を乗せて各ホール間を移動するのに使用するゴルフカートや、農業や工事現場において、農作業や工事をするのに使用するトラクター等の乗用自動車(以下、カートと称する)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
真夏の炎天下等の強い日差しの下で各ホール間をカートで移動する場合に、強い日差しがカートのフロント・ウインドウを通して運転席や助手席に座っている人を照射し、暑さにより気分が悪くなってしまうことがある。このような場合には、カートの前方のフロント・ウインドウ側から外気をキャビン内に導入してキャビン内の温度を下げるとともに、特に、冷たい風を顔に当てることにより不快感を大幅に緩和することができる。
【0003】
運転席や助手席の前方のフロント・ウインドウ側から外気をキャビン内に導入する工夫を施したカートの代表的な例として、以下に説明する第1,第2のカートが開発されている。
【0004】
第1のカートは、図9Aに示すように、カート101のフロント・ウインドウ102の上端をヒンジ103で回動可能にルーフ補強枠104に取り付け、その下端をストッパー・アーム105を用いて前部ルーフ支柱106に開閉可能に取り付け、図9Bに示すように、フロント・ウインドウ102を、前記ヒンジ103を中心にして時計方向に回動させて、フロント・ウインドウ102の下端とボンネット107の間に隙間108を形成し、該隙間108から風を導入する構成になっている。(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、第2のカートは、図10に示すように、カート201の車体前方に、上下二分割のウインドシールド202,203を設け、下部ウインドシールド203を車体のフロント支柱204に固定し、上部ウインドシールド202の上下左右端にガイドローラ205を配設し、該ガイドローラ205をフロント支柱204に付設したレール206上を転動可能に構成し、上部ウインドシールド202を下げて下部ウインドシールド203の前部に収納可能にしたものである。(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−185125号公報
【特許文献2】特開2003−154844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前記第1,第2のカートには次に述べるような問題点があった。
(1)第1のカート101は、前記隙間108からの外気の導入量を増大させるためには、フロント・ウインドウ102の開き角度θを大きくしなければならない。フロント・ウインドウ102の開き角度θを大きくすると、図11に示すように、見る位置の高さによって、例えばアの位置、イの位置、ウの位置によってフロント・ウインドウ102内を透過する光路長L1,L2,L3に大きな差が出て、外の風景を正確に視認することができない。また、前記隙間から導入した外気を運転席や助手席に座っている人の顔に当たるようにするのが難しい。
(2)第2のカート201は、上部ウインドシールド202を下げることにより、運転席や助手席に座っている人の面前は開放された状態になり、外からの風を顔面等に効果的に当てることができるが、面前が開放された状態になっているため、ミスショットのボールが、運転席や助手席に座っている人の顔面を直撃する虞がある。
【0008】
本発明の目的は、前記第1のカートの場合のように、フロント・ウインドウを回動させてフロント・ウインドウの下端に隙間を作ることなく、また前記第2のカートの場合のように、運転席や助手席に座っている人の面前を開放することなく、運転席や助手席に座っている人の顔面等に向けて外気を効果的に導入することのできるカートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明のカートは、フロント・ウインドウに通気口及び該通気口を開閉するルーバーを設けた。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1に記載のカートにおいて、前記ルーバーを、前記通気口内に組み付ける枠体と、該枠体内に回動可能に組み付けられていて傾斜角度調整可能なルーバー羽根と、ルーバー羽根の傾斜角度調整及び傾斜角度調整したルーバー羽根のロックを行なうルーバー羽根操作部と、で構成した。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載のカートにおいて、前記通気口及びルーバーを、前記フロント・ウインドウの下部に設けた。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1又は請求項2に記載のカートにおいて、前記通気口及びルーバーを、前記フロント・ウインドウの上部に設けた。
【0013】
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載のカートにおいて、前記ルーバーを、透明素材又は不透明素材で形成した。
【発明の効果】
【0014】
(1)請求項1のカートは、ルーバーにより通気口を開放して走行することにより、外気を通気口からキャビン内に効果的に導入してキャビン内を冷却することができる。
(2)請求項2のカートは、ルーバー羽根操作部によってルーバー羽根の傾斜角度調整および角度調整したルーバー羽根のロックを行なうことができる。
(3)請求項3のカートは、通気口及び該通気口を開閉するルーバーを、フロント・ウインドウの下部に設けたので、ルーバーがフロント・ウインドウからの視界に悪影響を与え、運転に支障を来たすのを防止することができる。また、ルーバーの傾斜角度を調整することにより、ルーバーをガイドとして、外気を運転席や助手席に座っている人の顔面等に向けて導入することができる。
(4)請求項4のカートは、通気口及び該通気口を開閉するルーバーを、フロント・ウインドウの上部、即ち運転手や助手席に座っている人の斜め上方の運転に支障を来たさない位置に設けたので、前記通気口から導入した外気を運転席や助手席に座っている人の顔面等に効果的に当てることができる。
(5)請求項5の乗用自動車は、ルーバーを透明素材で形成することにより、ルーバーにより視界が遮られるのを防ぐことができる。また、ルーバーをフロント・ウインドウの上部に設けた場合においては、ルーバーを不透明素材で形成することによりルーバーをサンバイザーとして利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1実施形態のカートのルーバー部分を破断して示す側面図。
【図2】第1実施形態のカートの平面図。
【図3】第1実施形態のカートの正面図。
【図4】フロント・ウインドウからルーバーを取り外した状態の斜視図。
【図5】フロント・ウインドウおよびルーバーの拡大斜視図。
【図6】ルーバー羽根を開いた状態の斜視図。
【図7】ルーバー羽根を閉じた状態の斜視図。
【図8】第2実施形態のカートの斜視図。
【図9】従来例を示し、Aはフロント・ウインドウの下端の隙間を無くした状態の側面図、Bはフロント・ウインドウの下端に隙間を形成した状態の側面図。
【図10】他の従来例の説明図。
【図11】従来例の問題点を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1〜図7はフロント・ウインドウの下部に通気口とルーバーを設けた第1実施形態のカートを示す。図1はカート1の要部であるルーバー部分を破断して示す側面図、図2は平面図である。カート1は、ゴルフ用のカートとして構成されている。カート1は、蓄電池を動力源とし、電動モータで前輪2又は後輪3を回転させるEV(エレクトリック・ビークル)カートとして構成されている。4はステアリングホイール、5は前部座席、6は後部座席であり、これらステアリングホイール4、前部座席5、後部座席6は車体7に搭載されている。前部座席5は、運転席5aと、助手席5bと、からなっている。
【0017】
前記ステアリングホイール4、前部座席5、後部座席6の上方にはルーフ8が設けられていて、雨等から乗員を保護する。
【0018】
図3に示すように、車体7のフロント側には左右一対のルーフ支持柱9,10が設けられている。また、図示は省略したが車体7のリヤ側にも前記車体7のフロント側と同様に左右一対のルーフ支持柱9,10が設けられている。そして、これらフロント側とリヤ側の左右一対ずつ合計4本のルーフ支持柱によって前記ルーフ8が支持されている。
【0019】
図1に示すように、前記フロント側の左右一対のルーフ支持柱9,10にはフロント・ウインドウ13が取り付けられている。フロント・ウインドウ13の下部にはルーバー14が設けられている。フロント・ウインドウ13は、合成樹脂等の透明な素材で平板状に形成されている。
【0020】
図4に示すように、フロント・ウインドウ13の両側部にはそれぞれ複数のボルト挿入孔15…15,16…16が形成されている。また、前記左右一対のルーフ支持柱9,10にもボルト挿入孔17…17,18…18が形成されている。
【0021】
フロント・ウインドウ13は、両側部に形成したボルト挿入孔15…15,16…16を、前記左右一対のルーフ支持柱9,10に形成したボルト挿入孔17…17,18…18に重ね合わせて、複数のボルト19とナット20により、前記左右一対のルーフ支持柱9,10に着脱自在に取り付けられている。
【0022】
フロント・ウインドウ13の下部には、通気口21が打ち抜き形成されている。通気口21は、フロント・ウインドウ13の横幅X1よりも若干短めの横幅X2で、且つフロント・ウインドウ13の縦幅Y1の1/2〜1/4程度の縦幅Y2の長方形状に形成されていて運転席5a及び助手席5bの前方に位置している。前記通気口21にはルーバー14が取り付けられる。
【0023】
図5に拡大して示すように、ルーバー14は、通気口21と略同じ大きさに形成された枠体22と、該枠体22に軸23を中心に回動可能に組み付けられた複数のルーバー羽根24…24と、前記枠体22の内面(キャビン内に露出する面)に設けられていて、前記複数のルーバー羽根24…24を同時に回動させてルーバー羽根24…24の傾斜角度調整および傾斜角度調整したルーバー羽根24…24のロックを行なうルーバー羽根操作部25と、を備えている。
【0024】
前記ルーバー羽根操作部25は、軸23を中心にルーバー羽根24…24を回動させて傾斜角度を調整するルーバー羽根傾斜角度調整ダイヤル(以下、ダイヤル)25aと、該ダイヤル25aを回転不可能にロックするダイヤルロックレバー25bと、を備えている。
【0025】
前記ダイヤル25aは、矢印A方向に最大限回動させると、図6に示すように、前記複数のルーバー羽根24…24を略水平状態にして前記通気口21を開放する。また、前記ダイヤル25aを矢印B方向に最大限回動させると、図7に示すように、前記複数のルーバー羽根24…24を略垂直状態にして前記通気口21を閉塞する。
【0026】
前記ダイヤルロックレバー25bは、枠体22にスライド可能に取り付けられていて、矢印C方向にスライドさせることによりダイヤル係合部(図示省略)が前記ダイヤル25aに係合して該ダイヤル25aの回転を阻止する。
【0027】
ダイヤルロックレバー25bによるダイヤル25aのロックを解除する場合は、ダイヤルロックレバー25bを矢印D方向に押すことにより、前記ダイヤル係合部(図示省略)の係合が外れてダイヤル25aのロックが解除される。
【0028】
前記ルーバー羽根24…24は、合成樹脂等の透明な素材で形成されていて、ルーバー羽根24…24を通して外部が視認可能になっている。また、ルーバー羽根24,24間の隙間Gは、ゴルフボールの直径よりも小に設定されていて、ミスショットのゴルフボールがルーバー羽根24,24間の隙間Gからキャビン内に侵入するのを防止している。
【0029】
なお、図1に示すように、前記リヤ側の左右一対のルーフ支持柱9,10にはリヤ・ウインドウ26が取り付けられている。リヤ・ウインドウ26は、フロント・ウインドウ13と同様に合成樹脂等の透明な素材で平板状に形成されていて、ボルトとナットにより、前記リヤ側の左右一対のルーフ支持柱9,10に着脱自在に取り付けられている。また、車体7の最後部にはゴルフバッグ等を収容する収納部27が設けられている。
【0030】
第1実施形態のカート1は、上述のような構成であって、フロント・ウインドウ13の下部に通気口21とルーバー14を設けたので、ルーバー14の存在により運転中の視界が妨げられて運転に支障を来たすのを最小限に抑えることができる。特に、ルーバー14を透明素材で形成したので、ルーバー14を透かして前方を視認することが可能である。
【0031】
そして、キャビン内に風を導入したくない時には、図7に示すように、ルーバー羽根24を略垂直状態にして通気口21を閉塞することにより、通気口21から外気がキャビン内に侵入するのを防止する。また、真夏の炎天下の猛暑の下でホール間を移動する場合等には、図6に示すように、ルーバー羽根24を略水平状態にして通気口21を開放することにより、通気口21から外気をキャビン内に取り入れる。特に、図1に示すように、ルーバー羽根24を傾斜させて、ルーバー羽根24を運転席や助手席に座っている人の顔等に向けて風を取り入れ、風を乗員の顔等に当てることにより涼感をより一層強く感じさせることができる。
【0032】
図8は第2実施形態のカート1Aを示す。この実施形態のカート1Aは、フロント・ウインドウ13の上部に通気口21及びルーバー14が設けられている。
【0033】
通気口21及び該通気口21を開閉するルーバー14をフロント・ウインドウ13の上部、即ち、運転席5aや助手席5bに座っている人の斜め上方に設けたので、前記通気口21から取り入れた外気を運転席5aや助手席5bに座っている人の顔面等により効果的に当てることができる。また、ルーバー羽根24を不透明素材で形成することによりルーバー羽根24をサンバイザーとして利用することができる。他の構成は、第1実施形態と略同じであるので重複する説明は省略する。なお、第1実施形態においては、3枚のルーバー羽根24でルーバー14を構成し、第2実施形態においては、2枚のルーバー羽根24でルーバー14を構成した場合を示したが、ルーバー羽根24の枚数は1枚でも、4枚以上であっても良い。また、第1,第2実施形態においては、単一の通気口21とルーバー14で、運転席5a側と助手席5b側の両方に跨って外気を取り入れる構成にしたが、通気口21とルーバー14を運転席5a側と助手席5bに分割して設けても良い。また、第1,第2実施形態においては、枠体22にルーバー羽根24等を枠体22に組み付け、ルーバー14をユニット化して、ユニット化したルーバー14を、通気口21に嵌め込んで取り付ける構成にしたが、ルーバー羽根24等を直接、通気口21に組み付ける構成にしても良い。
【0034】
また、フロント・ウインドウ13の下部を長方形状に打ち抜いて通気口21を形成する代わりに、フロント・ウインドウ13の縦幅Y1の下部の1/4程度を切り取って通気口21を形成する一方、ルーバー14の枠体22をフロント・ウインドウ13の横幅X1と略同じ横幅に形成して、前記通気口21に取り付ける構成にしてもよい。また、前記実施形態においては、前記ルーバー羽根操作部25を、ダイヤル25aと、該ダイヤル25aを回転不可能にロックするダイヤルロックレバー25bと、で構成した場合を示したが、ルーバー羽根操作部25にハンドルを使用し、該ハンドルを時計方向または反時計方向のいずれか一方向に回転させることにより、ルーバー羽根24が開き、前記ハンドルを他方向に回転させることにより、ルーバー羽根24が閉じるようにしてもよい。
【0035】
また、第1,第2実施形態においては、カートを、蓄電池を動力源とし、電動モータで前輪2又は後輪3を回転させるEVカートとして構成した場合を示したが、カートはガソリンやエタノールを使用する燃料使用カートであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
上記実施形態においては、本発明の乗用自動車をゴルフ用のカートとして使用する場合を示したが、本発明の乗用自動車は、ゴルフ用に限られず、工事現場や農場等においける簡易搬送手段として広く用いることができる。
【符号の説明】
【0037】
1,1A…乗用自動車(カート)、2…前輪、3…後輪、4…ステアリングホイール、5…前部座席、5a…運転席、5b…助手席、6…後部座席、7…車体、8…ルーフ、9、10…左右一対のルーフ支柱、13…フロント・ウインドウ、14…ルーバー、15〜18…ボルト挿入孔、19…ボルト、20…ナット、21…通気口、22…枠体、23…軸、24…ルーバー羽根、25…ルーバー羽根操作部、25a…ルーバー羽根傾斜角度調整ダイヤル、25b…ダイヤルロックレバー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロント・ウインドウに通気口及び該通気口を開閉するルーバーを設けたことを特徴とする乗用自動車。
【請求項2】
前記ルーバーは、前記通気口内に組み付ける枠体と、該枠体内に回動可能に組み付けられていて傾斜角度調整可能なルーバー羽根と、ルーバー羽根の傾斜角度調整および傾斜角度調整したルーバー羽根のロックを行なうルーバー羽根操作部と、を備えていることを特徴とする請求項1に記載の乗用自動車。
【請求項3】
前記通気口及びルーバーは、前記フロント・ウインドウの下部に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の乗用自動車。
【請求項4】
前記通気口及びルーバーは、前記フロント・ウインドウの上部に設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の乗用自動車。
【請求項5】
前記ルーバーは、透明素材又は不透明素材で形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の乗用自動車。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2011−51365(P2011−51365A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−199256(P2009−199256)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(509245038)
【Fターム(参考)】