説明

乳化化粧料

【課題】酸化亜鉛を皮丘のみならず、毛穴や皮溝にも付着させ、粉体の凝集による色むらがない仕上がりで、粉っぽくなく、ざらつかない使用感の乳化化粧料を提供する。
【解決手段】次の成分(A)、(B)、(C)及び(D):
(A)(a)白色無機顔料、(b)赤色無機顔料及び(c)黄色無機顔料を内包し、平均粒径1〜15μmである着色顔料内包ポリマー粉体、
(B)平均粒径0.1〜1μm、平均粒子厚さ0.005〜0.2μm及び平均板状比3以上の薄片状酸化亜鉛、
(C)HLB1〜8の非イオン界面活性剤、
(D)平均粒径0.01〜2μmの着色顔料
を含有し、成分(A)及び(B)の質量割合が、(B)/(A)≧0.5である乳化化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳化化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、使用感の良い液状ファンデーションが好まれる傾向にあり、仕上がりが良く、紫外線を防御する効果が期待されている。このような背景において、仕上がりの向上、特に、しわ、小じわ、毛穴等による肌の凹凸を目立たなくすることを目的として、体質顔料の光学特性を利用する試みがなされてきた。
例えば、特許文献1、特許文献2には、着色無機顔料を内包するポリマー粉体を含有する化粧料が記載され、肌上へのつき、のびが良く、色むらカバー力と肌の凹凸カバー力が高く、均一で自然な仕上がりで、さらに経時での色変化が少ないことが記載されている。
【0003】
しかして、このような着色無機顔料を内包するポリマー粉体は、母材がポリマーで形成された球状であるために、毛穴や皮溝へ付着しやすい傾向がある。そのため、着色無機顔料を内包するポリマー粉体を液状ファンデーションに配合し、更にその他の粉体、例えば紫外線防御効果を求めて酸化亜鉛を配合すると、特に微粒子酸化亜鉛は皮丘に凝集しやすく、毛穴や皮溝に付着しにくいという問題があった。このため、このような液状ファンデーションでは、皮膚に塗布すると、着色無機顔料内包ポリマー粉体のみが毛穴に入り、仕上がりに色の付着むらが生じやすく、粉っぽい仕上がりや、ざらついた使用感になってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−162941号公報
【特許文献2】特開2008−162942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、酸化亜鉛を皮丘のみならず、毛穴や皮溝にも付着させ、粉体の凝集による色むらがない仕上がりで、粉っぽくなく、ざらつかない使用感の乳化化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、着色無機顔料を内包するポリマー粉体とともに、特定の薄片状酸化亜鉛を特定の割合で組み合わせて用いれば、上記課題を解決した乳化化粧料が得られることを見出した。
【0007】
本発明は、次の成分(A)、(B)、(C)及び(D):
(A)(a)白色無機顔料、(b)赤色無機顔料及び(c)黄色無機顔料を内包し、平均粒径1〜15μmである着色顔料内包ポリマー粉体、
(B)平均粒径0.1〜1μm、平均粒子厚さ0.005〜0.2μm及び平均板状比3以上の薄片状酸化亜鉛、
(C)HLB1〜8の非イオン界面活性剤、
(D)平均粒径0.01〜2μmの着色顔料
を含有し、成分(A)及び(B)の質量割合が、(B)/(A)≧0.5である乳化化粧料を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の乳化化粧料は、酸化亜鉛を皮丘のみならず、毛穴や皮溝にも付着させることができ、粉体の凝集による色むらが生じず、粉っぽくない仕上がりで、ざらつかず、滑らかな使用感である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明で用いる成分(A)のポリマー粉体は、ポリマーを母材として、その中に(a)白色無機顔料、(b)赤色無機顔料、(c)黄色無機顔料を内包するものである。好ましくは、ポリマー粒子中に、(a)白色無機顔料、(b)赤色無機顔料、(c)黄色無機顔料が分散して存在するものや、ポリマー粒子表面に、(a)白色無機顔料、(b)赤色無機顔料、(c)黄色無機顔料が存在するもの等が挙げられ、特に、ポリマー粒子中に、(a)白色無機顔料、(b)赤色無機顔料、(c)黄色無機顔料が均一に分散しているポリマー粉体が好ましい。
【0010】
(a)白色無機顔料としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、二酸化チタン(ルチル型、アナターゼ型等)等の金属酸化物;酸化亜鉛/二酸化チタン複合酸化物、酸化アルミニウム/酸化マグネシウム複合酸化物、酸化カルシウム/酸化ジルコニウム複合酸化物等の複合金属酸化物;硫酸バリウム等の硫酸塩;炭酸カルシウム等の炭酸塩などが挙げられ、これらの白色無機顔料は、単独又は2種以上を混合して用いることができる。これらのうち、化粧料中における安定性等の観点から、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム等の金属酸化物、酸化亜鉛/二酸化チタン複合酸化物が好ましく、特に、二酸化チタンが好ましい。
【0011】
(b)赤色無機顔料としては、例えば、ベンガラ、酸化鉄/酸化チタン焼結物、カドミウムレッド、モリブデンレッド等が挙げられ、ベンガラが好ましい。
(c)黄色無機顔料としては、例えば、黄色酸化鉄、酸化セリウム、ビスマスバナジウムイエロー、黄鉛、カドミウムイエロー等が挙げられ、黄色酸化鉄が好ましい。
【0012】
(a)白色無機顔料、(b)赤色無機顔料、(c)黄色無機顔料の平均粒径は、それぞれ0.01〜0.5μmであるのが、着色顔料内包ポリマー粉体中に均一に分散させる点から好ましい。
【0013】
(a)白色無機顔料、(b)赤色無機顔料、(c)黄色無機顔料のポリマー粉体中の質量割合は、光の短波長側をカットして、毛穴が目立たないようにさせる観点から、70〜99:0.1〜10:0.1〜20、特に70〜97:1〜10:2〜20、更に80〜97:1〜5:2〜15が好ましく、90〜97:1〜3:2〜7であるのがより好ましい。
【0014】
無機顔料には、例えば、撥水性を付与するシリコーン処理、撥水・撥油性を付与するフッ素処理等の表面処理が施されていることが好ましい。特に、一般的な有機溶媒中への分散性に優れる点で、シリコーン処理を施すことが好ましい。シリコーン処理としては、メチルハイドロジェンポリシロキサン、環状シリコーン、片末端又は両末端トリアルコキシ基変性オルガノポリシロキサン等が挙げられる。
【0015】
成分(A)の着色顔料内包ポリマー粉体中における無機顔料の含有量は、合計で5〜40質量%、特に10〜30質量%であるのが、粉体の光透過性と光散乱性のバランス面で好ましい。
なお、無機顔料としては、前記(a)、(b)、(c)以外に、黒色無機顔料(黒酸化鉄等)や、セラミック顔料(陶磁器顔料)などを含有することができる。
【0016】
一方、母材となるポリマーとしては、疎水的な性質を示し、化粧料に通常用いられるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリメチルメタクリレート等の(メタ)アクリル系樹脂、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリウレタン、シリコーン樹脂等をはじめ、ラウリル(メタ)アクリレート−エチレングリコールジ(メタ)アクリレートコポリマー、イソステアリルアクリレート−ジビニルベンゼンコポリマー、架橋ポリウレタン等の架橋ポリマーが挙げられる。これらのポリマーの中では、重合体が透明又は半透明であり、その製造が容易であって、粒子強度及び耐溶剤性に優れるものが好ましく、架橋ポリマーが特に好ましく、ラウリル(メタ)アクリレート−エチレングリコールジ(メタ)アクリレートコポリマーがより好ましい。
【0017】
ポリマーに無機顔料を内包させる方法は、用いられるポリマーの種類により適宜選択することができる。例えば、ポリマーの種類がナイロン樹脂の場合、パラフィン等と環状ラクタムとを混合して、加熱、溶解させ、得られた混合物に、所望量の無機顔料(成分(a)、(b)、(c)を含む)の粉末を添加する。これを、かき混ぜながら、重合促進剤、例えば、三塩化リン等を添加してアルカリ重合を行ない、粒子を得る。更に該粒子を濾別し、得られた粒子を、有機溶剤、例えば、イソプロピルアルコール、ベンゼン等又は水で洗浄し、次いで、乾燥する方法等が挙げられる。
【0018】
また、例えば、ポリマーの種類がシリコーン樹脂の場合、アンモニア、アミン等の水溶液と無機顔料(成分(a)、(b)、(c)を含む)の粉末とを混合し、得られた混合物に加水分解性シラン、アルコキシシラン、アセトキシシラン等を混合してアルコキシシラン等を加水分解する。次いで、アルコキシシラン等の加水分解物と、アルコキシシラン等の加水分解物又は加水分解されていないアルコキシシラン等との縮合反応を行ない、粒子を得る。更に該粒子を濾別し、得られた粒子を水洗して乾燥する方法等が挙げられる。
【0019】
さらに、例えば、ポリマーの種類が、アクリル酸系樹脂の場合、モノマーとして(メタ)アクリル酸エステル、重合開始剤としてのラウロイルパーオキサイドを混合して溶解し、得られた混合物に、所望量の無機顔料(成分(a)、(b)、(c)を含む)を添加して分散させる。得られた分散液をポリビニルアルコール水溶液に添加して分散させ、撹拌しながら加熱して重合(懸濁重合)を行ない、粒子を得る。該粒子を濾別し、得られた粒子を水洗して乾燥する方法等が挙げられる。
【0020】
また、ポリマー粒子内における無機顔料の分散状態は、高分散状態であることが好ましく、分散状態をコントロールする方法としては、ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、超音波分散機、アトライターミル、ボールミル等の機械を用いる分散方法;低分子界面活性剤〔例えば、アニオン界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等)、カチオン界面活性剤、非イオン界面活性剤等〕、高分子分散剤〔例えば、デンプン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、メチルポリシロキサン等〕などを用いる分散方法等が挙げられる。
【0021】
成分(A)のポリマー粉体は、平均粒径1〜15μmであるが、粉体の凝集を抑制して色むら(付着むら)のない仕上がり、および良好な使用感を得る観点から、好ましくは3〜12μmであり、より好ましくは5〜10μmである。
なお、本発明において、平均粒径とは、エタノールを溶媒とし、レーザー回折式粒度分布測定器を用いて測定された体積基準平均粒径をいう。なお、ポリマー粉体中の顔料の粒子径は、電子顕微鏡観察により測定しても良い。
【0022】
ポリマー粉体の形状は、球状、紡錘状、棒状、板状、不定形状などいずれでも良く、光散乱効果と使用感に優れる点から、球状、紡錘状が好ましい。「球状」とは、真球である必要はなく、例えば、真球状のもの;略球状のもの;正反射及び/又は乱反射を抑制する性質を発現する回転楕円体;球状のものの表面に凹凸があるもの等をいう。
【0023】
また、成分(A)のポリマー粉体は、肌への塗布時の色むら(付着むら)と肌の凹凸や毛穴を目立たなくさせる効果の点から、全透過率は40%以上80%未満、特に、50%以上80%未満であるのが好ましく、ヘイズ値は45以上100未満、特に、60以上100未満であるのが好ましい。全透過率とヘイズ値の測定は、粉体0.4g、アミノ変性シリコーン(SF8417、東レ・ダウコーニング社製)1.6gを良く練り込んだものをガラス板へ塗布して、サンプルとし、Haze−meter HM−150(村上色彩技術研究所社製)にて行なう。測定には、波長550nmをピークとした光、8°視野光を用いる。
【0024】
着色顔料内包ポリマー粉体は、そのままの状態で用いることができるが、更にその表面に、通常用いられている疎水化処理剤で疎水化処理を施して用いることもできる。
疎水化処理剤としては、通常用いられるものであれば特に制限されないが、例えば、ハイドロジェンオルガノポリシロキサン等のシリコーン油、脂肪酸金属塩、アルキルリン酸、アルキルリン酸のアルカリ金属塩又はアミン塩、炭素数8〜22のN−モノ脂肪族アシル塩基性アミノ酸、パーフルオロアルキル基を有するリン酸エステル等が挙げられ、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。疎水化処理剤のうち、特に、シリコーン油及びパーフルオロアルキル基を有するリン酸エステルが好ましい。
【0025】
成分(A)のポリマー粉体は、粉っぽくなく、良好な使用感を得るために、全組成中に0.3〜20質量%、特に0.5〜8質量%含有するのが好ましい。
【0026】
本発明で用いる成分(B)の薄片状酸化亜鉛粉末は、平均粒径0.1〜1μm、平均粒子厚さ0.005〜0.2μm、平均板状比が3以上のものである。平均粒径は粉体の凝集を抑制して、分散性や透明性が向上し、また紫外線吸収効果を高める観点から、好ましくは0.2〜0.7μmである。この平均粒径が0.1μm未満では凝集して分散性が低下し、1μmを超えると透明性及び紫外線吸収性が低下する。また、粉体の平均粒子厚さは、良好な使用感を得るために、好ましくは0.01〜0.05μmである。この平均粒子厚さが0.005μm未満では薄片状形態が崩れ易く、0.2μmを超えると化粧料に配合した場合に不快感を生じさせるので、実用的ではない。さらに、平均板状比は、透明性の点から、好ましくは5以上、更に好ましくは10以上である。この板状比が3未満では透明性が低下する。
【0027】
成分(B)の薄片状酸化亜鉛粉末は、当該薄片状酸化亜鉛粉末と、紫外線吸収性の向上を阻害しない範囲で、これと一体となった微量元素とを含むものであっても良い。本発明でいう「一体となった」とは、微量元素が薄片状酸化亜鉛粉末の表面又はその内部に結合・保持されていることを意味する。
【0028】
微量元素は、鉄、ジルコニウム、カルシウム、ゲルマニウム、マンガン、マグネシウム及びイットリウムからなる群から選ばれる1種以上の元素である。これらは単独でも2種以上を組み合わせても用いることもでき、組み合わせの例としては、ジルコニウムと鉄、ジルコニウムとマグネシウム、鉄とマグネシウム、鉄とカルシウム、マグネシウムとゲルマニウム等を挙げることができる。微量元素の含有量は、薄片状酸化亜鉛粉末に含有されている亜鉛量100モルに対して、0.005〜1.0モル、特に0.01〜0.5モルが好ましい。
【0029】
このような薄片状酸化亜鉛粉末は、例えば、特開平7-330334号公報に記載の方法により製造することができる。具体的には、亜鉛塩、亜鉛量100モルに対して0.005〜1.0モルの鉄、ジルコニウム、カルシウム、ゲルマニウム、マンガン、マグネシウム及びイットリウムからなる群から選ばれる1種以上の微量元素を含有する塩及び亜鉛量に対して0.05〜1.0モルの水溶性アルカリ金属塩を、水に添加し、溶解させる第1工程、前工程で得た溶液に、強攪拌下、アルカリ溶液を1〜300秒で添加し、pHを11以上として沈殿を生成させる第2工程、並びに前工程で生成した沈殿を必要に応じて熟成したのち採取し、加熱乾燥する第3工程を含む方法により、製造することができる。
【0030】
まず、第1工程においては、亜鉛塩、微量元素を含有する塩及び水溶性アルカリ金属塩を水に溶解させる。亜鉛塩としては、亜鉛の硫酸塩、硝酸塩又は塩化物等;微量元素を含有する塩としては、鉄、ジルコニウム、カルシウム、ゲルマニウム、マンガン、マグネシウム又はイットリウムの硫酸塩、硝酸塩又は塩化物等を挙げることができる。水溶性アルカリ金属塩は、凝集を起こしにくい紫外線吸収性粉末を得るための成分であり、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム等を挙げることができ、亜鉛量に対して0.05〜1.0モルであるのが好ましい。また、水の代わりに硫酸水溶液等を用いることもできる。
【0031】
第2工程においては、前工程で得た溶液に、強攪拌下でアルカリ溶液を添加してpHを11以上とし、60℃以下で沈殿を生成させる。アルカリ溶液は、1〜300秒、強攪拌下で添加する。
【0032】
第3工程においては、必要に応じて、約60〜100℃で30分〜5時間処理加温しながら熟成処理をしたのち、沈殿を採取し、高温となり過ぎない程度、例えば約200〜300℃、1〜20時間で加熱乾燥する。
【0033】
成分(B)の薄片状酸化亜鉛は、そのままの状態で用いることができるが、成分(A)の着色顔料内包ポリマー粉体と同様、更にその表面に、通常用いられている疎水化処理剤で疎水化処理を施して用いることもできる。
【0034】
成分(B)の薄片状酸化亜鉛は、全組成中に0.5〜20質量%、特に1〜8質量%含有するのが、特に塗布時にざらつきがなく、のびの良い滑らかな使用感の観点から好ましい。
【0035】
また、本発明の乳化化粧料において、成分(A)及び(B)の質量割合は、(B)/(A)≧0.5である。このような質量割合であると、粉体成分が均一に分散するため、薄片状酸化亜鉛を均一に付着させることができる。特に、塗布時の色むら(付着むら)がなく、自然な仕上がりを得る点から、質量割合(B)/(A)は、好ましくは0.5〜40であり、より好ましくは0.8〜20である。(B)/(A)が0.5未満では、酸化亜鉛を均一に付着させることが困難であり、色むらのない仕上がりを得ることができない。
【0036】
本発明で用いる成分(C)の非イオン界面活性剤は、HLB1〜8のものである。ここで、HLBは、界面活性剤の親水・親油バランスを示し、各種の非イオン界面活性剤に対して数値化され、乳化剤選定の目安として広く用いられる値である。
【0037】
本発明においては、特にポリオキシエチレン系非イオン界面活性剤に対して有用なGriffinによって示された非イオン界面活性剤のHLBを求める下記一般式を用いた。
HLB=E/5
ここで、Eは界面活性剤中に含まれるポリオキシエチレン部分の質量%を示す。
【0038】
また、ポリオキシエチレン系以外の非イオン界面活性剤に対しては、
HLB=7+Σ(親水基の基数)+Σ(親油基の基数)
により求められる値を用いた。ここで、基数は化合物の基に固有の値であり、Davisの基数として示されるものである。
【0039】
このような非イオン界面活性剤としては、通常の化粧料に用いられるもので、例えば、モノグリセライド、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、アルカノールアミド、アミンオキサイド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンプロピレングリコールモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルサッカライド、α−モノアルキルグリセリルエーテル、ポリエーテル変性シリコーン等が挙げられる。
これらのうち、特に、ポリエーテル変性シリコーンが好ましい。また、ポリエーテル変性シリコーンは市販品を用いることができ、例えば、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体として、KF−6015(HLB4.5)、KF−6017(HLB4.5)(以上、信越化学工業社)、SH3775M(HLB5)、(以上、東レ・ダウコーニング社)等;ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)メチルポリシロキサン共重合体として、KF−6012(HLB7)(信越化学工業社)等が挙げられる。ポリエーテル変性シリコーンは、デカメチルシクロペンタシロキサンとの混合物であってもよく、BY11−030(HLB3)(東レ・ダウコーニング社)等の市販品も使用できる。
【0040】
成分(C)の非イオン界面活性剤は、全組成中に0.1〜8質量%、特に0.2〜6質量%含有するのが、特に、粉っぽくない仕上がりで、安定的に乳化化粧料が得られるので好ましい。
【0041】
成分(D)の着色顔料の平均粒径は、0.01〜2μmである。着色顔料は、成分(A)のポリマー粉体に内包される無機顔料と同一でもよく、通常の化粧料に用いられるものであれば特に制限されないが、例えば、酸化アルミニウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化チタン(ルチル型、アナターゼ型等)、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化鉄/酸化チタン焼結物、カドミウムレッド、モリブデンレッド、酸化セリウム、ビスマスバナジウムイエロー、黄鉛、カドミウムイエロー等が挙げられる。着色顔料の平均粒径は、組成物中の粉体の凝集による色むらを生じず、また滑らかな使用感を得る点から、特に0.1〜1μmであることが好ましい。
【0042】
成分(D)の着色顔料は、全組成中に0.1〜30質量%、特に1〜20質量%含有するのが、使用感が滑らかであり、シミ・ソバカスが目立たず、かつ自然なカバー力との兼ね合いから好ましい。
【0043】
本発明の乳化化粧料は、更に、25℃における粘度が1〜100000mm2/s、好ましくは5〜10000mm2/sの油剤を含有することができる。本発明において、粘度は、毛細管粘度計もしくは回転粘度計により、測定される値である。
【0044】
このような油剤としては、例えば、流動パラフィン、流動イソパラフィン、スクワラン等の炭化水素油;ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、イソステアリン酸イソプロピル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、乳酸オクチルドデシル、イソノナン酸イソトリデシル等のエステル油;ジメチルポリシロキサン、ジメチルシクロポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、フッ素変性オルガノポリシロキサン等のシリコーン油;フルオロポリエーテル、パーフルオロアルキルエーテルシリコーン等のフッ素油;パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル等の紫外線吸収剤などが挙げられる。
【0045】
これらの油剤は、全組成中に0.1〜90質量%、特に0.5〜70質量%含有するのが、ざらつきがなく、のびやなじみが良好で滑らかな使用感の点で好ましい。
【0046】
本発明において、水は、全組成中に0.1〜90質量%、特に10〜60質量%含有されるのが好ましい。
【0047】
本発明の乳化化粧料は、前記成分以外に、通常化粧料に用いられる成分、例えば、水溶性高分子、無機塩類、酸化防止剤、香料、防腐剤、紫外線吸収剤、保湿剤、清涼剤等を含有することができる。
【0048】
本発明の乳化化粧料は、通常の方法により製造することができ、油中水型乳化化粧料として、液状、乳液状、固形状、ペースト状等の剤型にすることができる。特に、液状の油中水型乳化化粧料として好適である。また、化粧下地、ファンデーション等のメイクアップ化粧料などとして好適である。
【実施例】
【0049】
製造例1(着色顔料内包ポリマー粒子の製造)
1300mL容のビーカーに、ラウリルメタクリレート56g、エチレングリコールジメタクリレート19g及びラウロイルパーオキシド1.5gを仕込み、溶液を得た。また、平均粒径0.25μmの酸化チタン(CR−50、石原産業社製)、平均粒径0.38μmのベンガラ(ベンガラ七宝、森下ベンガラ社製)、平均粒径0.07×0.7μm(針状のため)の黄酸化鉄(イエローLLXLO、チタン工業社製)を、表1に示す割合で混合し、メチルハイドロジェンポリシロキサンを用いて撥水処理(無機粉体に対して2%)した。次に、得られた溶液と、撥水処理した無機顔料とを、表1に示す内包率になるよう混合し、分散させて、分散液を得た。この分散液に1質量%ポリビニルアルコール(ゴーセノールGH−17、日本合成化学工業社製)水溶液750gを添加し、超音波分散機を用いて分散した(時間と強度で粒径がコントロールできる)。得られた分散液を1000mL容のセパラブルフラスコに仕込み、その後、該セパラブルフラスコ内の気相を窒素置換した。次いで、前記分散液を150r/minで撹拌しながら、75℃で8時間、窒素雰囲気下に維持して、重合を行なった。重合終了後、得られた産物を濾過して固体を回収し、水で洗浄し、次いで、減圧乾燥して、表1に示す平均粒径の着色無機顔料含有ポリマー粉体120gを得た。得られたポリマー粉体について、透過率及びヘイズ値を測定した。結果を表1に併せて示す。
【0050】
【表1】

【0051】
製造例2(薄片状酸化亜鉛の製造)
硫酸亜鉛1.6×10-1 モル、硫酸ナトリウム3.8×10-2 モル及び微量元素の塩として硫酸第一鉄1.6×10-4モルを、5×10-2 モル硫酸水溶液315mLに溶解した。次に、この溶液をホモミキサーにより6000r.p.m.で攪拌しながら、2N水酸化ナトリウム水溶液230mLを15秒間で投入し(pH=12.8)、沈殿を生成させたのち、10分間攪拌を継続した。その後、100℃で90分間熟成し、濾過、水洗し、230℃で約10時間乾燥して、薄片状酸化亜鉛粒子を得た。得られた粒子の平均粒径は0.25μm、平均板状比は13であった。
【0052】
実施例1〜6、比較例1〜3:
表2に示す組成の油中水型乳化化粧料を製造し、色のむら付きがない仕上がり、粉っぽくない仕上がり、使用感(ざらつきのなさ、滑らかさ)を評価した。結果を表2に併せて示す。
【0053】
(乳化化粧料の製法)
油相成分を均一混合した後、粉体成分を油相成分にディスパーで分散させる。これに水相成分の混合物を攪拌しながら徐々に添加して乳化し、目的の油中水型乳化ファンデーションを得た。
なお、表2の粉体の表面処理(シリコーン処理)は、メチルハイドロジェンポリシロキサンの2質量%処理である。
【0054】
(評価方法)
(1)色のむら付きがない仕上がり:
専門評価者10人により、各油中水型乳化化粧料を使用したときの色のむら付きがない仕上がりを官能評価し、以下の基準で判定した。
A+;8人以上が、色の塗布時のむら付き(付着むら)がない仕上がりであると評価した。
A ;6〜7人が、色の塗布時のむら付き(付着むら)がない仕上がりであると評価した。
B ;5人が、色の塗布時のむら付き(付着むら)がない仕上がりであると評価した。
C ;3〜4人が、色の塗布時のむら付き(付着むら)がない仕上がりであると評価した。
D ;0〜2人が、色の塗布時のむら付き(付着むら)がない仕上がりであると評価した。
【0055】
(2)粉っぽくない仕上がり:
専門評価者10人により、各油中水型乳化化粧料を使用したときの粉っぽくない仕上がりを官能評価し、以下の基準で判定した。
A+;8人以上が粉っぽくない仕上がりであると評価した。
A ;6〜7人が粉っぽくない仕上がりであると評価した。
B ;5人が粉っぽくない仕上がりであると評価した。
C ;3〜4人が粉っぽくない仕上がりであると評価した。
D ;0〜2人が粉っぽくない仕上がりであると評価した。
【0056】
(3)使用感(ざらつきのなさ):
専門評価者10人により、各油中水型乳化化粧料を使用したとき、使用感におけるざらつきのなさを官能評価し、以下の基準で判定した。
A+;8人以上がざらつきがないと評価した。
A ;6〜7人がざらつきがないと評価した。
B ;5人がざらつきがないと評価した。
C ;3〜4人がざらつきがないと評価した。
D ;0〜2人がざらつきがないと評価した。
【0057】
(4)使用感(滑らかさ):
専門評価者10人により、各油中水型乳化化粧料を使用したとき、使用感における滑らかさを官能評価し、以下の基準で判定した。
A+;8人以上が滑らかと評価した。
A ;6〜7人が滑らかと評価した。
B ;5人が滑らかと評価した。
C ;3〜4人が滑らかと評価した。
D ;0〜2人が滑らかと評価した。
【0058】
【表2】

【0059】
本発明の乳化化粧料は、仕上がりに色のむら付きや粉っぽさがなく、使用感(ざらつきのなさ、滑らかさ)の良好なものであった。これに対し、酸化亜鉛が微粒子粉体である比較例1及び2は、仕上がり、使用感の両方が悪くなった。また、着色顔料内包ポリマーを含まない比較例3は、仕上がり、使用感共に劣るものであった。
【0060】
実施例7(リッキドファンデーション)
次の組成のリキッドファンデーションを、実施例1〜6と同様にして、製造した。
得られたリッキドファンデーションは、仕上がり及び使用感が良好であった。
【0061】
(成分)
(1)ジメチルポリシロキサン・ポリオキシエチレン共重合体
(SH3775M、東レ・ダウコーニング社;HLB5) 4(質量%)
(2)デカメチルシクロペンタシロキサン 15
(3)ジメチルポリシロキサン(2cs) 10
(4)ジメチルポリシロキサン(6cs) 3
(5)グリセリン 3
(6)エタノール 2
(7)硫酸マグネシウム 0.5
(8)精製水 残量
(9)シリコーン処理薄片状酸化亜鉛(製造例2) 6
(10)着色顔料内包ポリマー粉体(製造例1、粉体No.2) 1
(11)シリコーン処理微粒子酸化チタン*11
(12)シリコーン処理酸化チタン*10
(13)シリコーン処理酸化鉄(赤、黄、黒) 2
(14)シリコーン処理酸化鉄被覆雲母チタン
(コロロナオリエンタルベージュ、メルク社) 1
(15)タルク 3
(16)ナイロン樹脂 3
合計 100
*11:MT600B(テイカ社)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B)、(C)及び(D):
(A)(a)白色無機顔料、(b)赤色無機顔料及び(c)黄色無機顔料を内包し、平均粒径1〜15μmである着色顔料内包ポリマー粉体、
(B)平均粒径0.1〜1μm、平均粒子厚さ0.005〜0.2μm及び平均板状比3以上の薄片状酸化亜鉛、
(C)HLB1〜8の非イオン界面活性剤、
(D)平均粒径0.01〜2μmの着色顔料
を含有し、成分(A)及び(B)の質量割合が、(B)/(A)≧0.5である乳化化粧料。
【請求項2】
全組成物中に成分(A)を0.3〜20質量%、成分(B)を0.5〜20質量%含むものである請求項1記載の乳化化粧料。
【請求項3】
成分(A)着色顔料内包ポリマー粉体が、無機顔料をポリマー粉体中に合計で5〜40質量%含有する請求項1又は2記載の乳化化粧料。
【請求項4】
成分(A)着色顔料内包ポリマー粉体中の(a)白色無機顔料、(b)赤色無機顔料、(c)黄色無機顔料の質量割合が70〜99:0.1〜10:0.1〜20である請求項1〜3のいずれかに記載の乳化化粧料。
【請求項5】
全組成物中に成分(D)着色顔料を0.1〜30質量%含むものである請求項1〜4のいずれかに記載の乳化化粧料。
【請求項6】
更に、25℃における粘度が1〜100000mm2/sの油剤を含有する請求項1〜5のいずれかに記載の乳化化粧料。

【公開番号】特開2012−116814(P2012−116814A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270209(P2010−270209)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】