説明

乳化型毛髪化粧料

【課題】 部分ごとにダメージ度合いの異なる毛髪に対しても均一なやわらかさを付与でき、また、毛髪に塗布する際の操作性に優れた乳化型毛髪化粧料を提供する。
【解決手段】 少なくとも、(a)炭素数が12〜22である直鎖1級アルコール、(b)炭素数が12〜22であり、分岐鎖を含む1級アルコール、(c)カチオン性界面活性剤、(d)ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、および(e)ポリオキシエチレンアルキルエーテルが配合されており、(c)カチオン性界面活性剤の配合量が、(d)ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルの配合量と(e)ポリオキシエチレンアルキルエーテルの配合量との和よりも少ないことを特徴とする乳化型毛髪化粧料により、前記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘアコンディショナー、ヘアトリートメント、ヘアリンス、パーマネントウェーブ処理の前処理剤または後処理剤、ストレートパーマ処理の前処理剤または後処理剤、染毛用前処理剤または後処理剤などに好適な乳化型の毛髪化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カチオン性界面活性剤は、毛髪に対する吸着力が大きく、コンディショニング作用が良好であることから、このような特性を利用した毛髪保護剤が種々開発されている(例えば、特許文献1、2)。
【0003】
【特許文献1】特開平11−79943号公報
【特許文献2】特開2002−332216号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1や特許文献2に開示の毛髪保護剤は、配合されたカチオン性界面活性剤の機能を有効に引き出して、毛髪を良好に処理し得るものであるが、その一方で、下記の点において改善の余地を残している。
【0005】
最近では、染毛処理やパーマネントウェーブ処理のような化学処理を毛髪に施すことが盛んであるが、このような化学処理を繰り返し施すことで毛髪はダメージを受け、更に日光やブラッシングによるダメージも受ける。このような各種の要因により、毛髪は、部分ごとに異なる度合いのダメージを受けている。
【0006】
ところが、カチオン性界面活性剤の毛髪への吸着力は、毛髪のダメージ度合いの違いによる影響を受けやすい。そのため、前記の毛髪保護剤では、部分ごとにダメージ度合いが異なる毛髪を均一に処理し難く、このような点に改善の余地がある。
【0007】
また、最近では、毛髪の質感に対する消費者の要望が高くなっており、従来にも増して、毛髪の根元から毛先まで、やわらかにできる毛髪化粧料が求められている。前記のような消費者は、毛髪を補修するために集中的なトリートメント処理を行う傾向にある。
【0008】
毛髪化粧料によってトリートメント処理を行うには、毛髪化粧料を如何に毛髪に良好に馴染ませるかが重要であり、多くの場合、揉み込むように毛髪全体に毛髪化粧料を馴染ませることが推奨される。例えば、専門の美容施術者では、毛髪化粧料を塗布した毛髪をマッサージする要領で、毛髪全体に毛髪化粧料をしっかりと馴染ませる操作を行っている。
【0009】
よって、毛髪化粧料は、前記のような操作によって毛髪に馴染ませる際において、毛髪化粧料が乾き難く、適度な粘度を保持し得るといった操作性を備えていることが望ましいが、特許文献1や特許文献2に開示の毛髪保護剤では、このような点においても未だ改善の余地がある。
【0010】
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、部分ごとにダメージ度合いの異なる毛髪に対しても均一なやわらかさを付与でき、また、毛髪に塗布する際の操作性に優れた乳化型毛髪化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成し得た本発明の乳化型毛髪化粧料は、少なくとも、(a)炭素数が12〜22である直鎖1級アルコール、(b)炭素数が12〜22であり且つ分岐鎖を含む1級アルコール、(c)カチオン性界面活性剤、(d)ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、および(e)ポリオキシエチレンアルキルエーテルが配合されており、(c)カチオン性界面活性剤の配合量が、(d)ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルの配合量と(e)ポリオキシエチレンアルキルエーテルの配合量との和よりも小さいことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、部分ごとにダメージ度合いの異なる毛髪に対しても均一なやわらかさを付与でき、また、毛髪に塗布する際の操作性に優れた乳化型毛髪化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の乳化型毛髪化粧料に係る(a)成分の、炭素数が12〜22である直鎖1級アルコールとしては、例えば、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコールなどが挙げられ、これらのうちの1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0014】
乳化型毛髪化粧料における(a)成分の配合量としては、処理後の毛髪に求められる感触や、乳化型毛髪化粧料の粘度、(a)成分以外の成分との組み合わせなどに応じて適宜調節すればよいが、例えば、乳化型毛髪化粧料の粘度をある程度高めて毛髪への塗布をより容易にし、また、乳化型毛髪化粧料の乳化安定性をより高める観点から、1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましい。ただし、乳化型毛髪化粧料において(a)成分が多すぎると、乳化型毛髪化粧料の粘度が高くなりすぎて、毛髪に塗布しにくくなる虞があることから、その配合量は、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。
【0015】
乳化型毛髪化粧料に係る(b)成分の、炭素数が12〜22であり且つ分岐鎖を含む1級アルコールとしては、例えば、オクチルドデカノール、イソステアリルアルコール、ヘキシルデカノールなどが挙げられ、これらのうちの1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0016】
乳化型毛髪化粧料における(b)成分の配合量としては、処理後の毛髪に求められる感触や、乳化型毛髪化粧料の粘度、(b)成分以外の成分との組み合わせなどに応じて適宜調整すればよいが、少なすぎると、処理後の毛髪にベタつきが残る傾向にあることから、1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましい。また、乳化型毛髪化粧料における(b)成分量が多すぎると、処理後の毛髪が軽くパサつきやすくなる傾向にあることから、その配合量は、5質量%以下であることが好ましく、4質量%以下であることがより好ましい。
【0017】
乳化型毛髪化粧料に係る(c)成分のカチオン性界面活性剤としては、例えば、塩化アルキルトリメチルアンモニウム(塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウムなど)、臭化アルキルトリメチルアンモニウム(臭化ラウリルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウムなど)などのモノアルキル型4級アンモニウム塩;塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ジココイルジメチルアンモニウム、塩化ジセチルジメチルアンモニウムなどのジアルキル型4級アンモニウム塩;塩化ベンザルコニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウムなどのベンザルコニウム型4級アンモニウムなどが挙げられ、これらのうちの1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。前記例示のカチオン性界面活性剤の中でも、毛髪にやわらかさを付与する作用が特に良好である点で、前記のモノアルキル型4級アンモニウム塩がより好ましい。
【0018】
乳化型毛髪化粧料における(c)成分の配合量としては、特に毛髪のダメージを受けている箇所への吸着をより良好とし、また、乳化型毛髪化粧料の乳化安定性をより高める観点から、0.5質量%以上であることが好ましく、1.4質量%以上であることがより好ましい。ただし、乳化型毛髪化粧料において(c)成分が多すぎると、乳化型毛髪化粧料の粘度が高くなりすぎて、毛髪に塗布しにくくなる虞があり、また、処理後の毛髪の感触が軽くなりすぎる虞があることから、5質量%以下であることが好ましく、4質量%以下であることがより好ましい。
【0019】
本発明の乳化型毛髪化粧料では、(c)成分であるカチオン性界面活性剤と共に、(d)成分であるポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルと、(e)成分であるポリオキシエチレンアルキルエーテルとを使用する。カチオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤とを組み合わせて乳化型毛髪化粧料を構成した場合、通常は、毛髪に塗布し馴染ませる際の粘度変化を抑制し難く、また、乳化型毛髪化粧料を例えばクリーム状にした場合硬くなる傾向にあることから、操作性が低下しやすい。これに対し、(c)成分であるカチオン性界面活性剤と組み合わせる非イオン性界面活性剤として、(d)成分であるポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルと(e)成分であるポリオキシエチレンアルキルエーテルとを使用することで、毛髪に塗布し馴染ませる際の粘度変化を抑制でき、更に、例えばクリーム状にした場合でも硬くなることを抑えることができるため、良好な操作性を有する乳化型毛髪化粧料を構成できる。
【0020】
乳化型毛髪化粧料に係る(d)成分のポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルとしては、例えば、モノラウリン酸POE(6)ソルビット、テトラステアリン酸POE(60)ソルビット、テトラオレイン酸POE(6)ソルビット、テトラオレイン酸POE(30)ソルビット、テトラオレイン酸POE(40)ソルビット、テトラオレイン酸POE(60)ソルビットなどが挙げられる[前記の各化合物中、「POE」は「ポリオキシエチレン」の略であり、その後の括弧内の数値は、エチレンオキサイドの付加モル数を意味している]。ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルは、前記例示のもののうち1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。なお、乳化型毛髪化粧料による前記の効果(毛髪に均一なやわらかさを付与し、また、毛髪に塗布する際の操作性を高める効果)をより良好に確保する観点からは、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルにおけるエチレンオキサイドの付加モル数は、10モル以上であることが好ましく、また、60モル以下であることが好ましい。
【0021】
乳化型毛髪化粧料における(d)成分の配合量としては、他に使用される非イオン性界面活性剤の量や種類などに応じて適宜調節すればよいが、処理後の毛髪のやわらかさをより向上させ得るようになることから、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。ただし、乳化型毛髪化粧料において(d)成分が多すぎると、乳化型毛髪化粧料が硬くなる傾向にあり、これにより毛髪へ塗布しにくくなることがあるため、その配合量は、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。
【0022】
乳化型毛髪化粧料に係る(e)成分のポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、アルキル部分の炭素数が12〜22のものが好ましく、具体的には、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテルなどが挙げられ、これらのうちの1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。なお、ポリオキシエチレンアルキルエーテルにおけるエチレンオキサイドの付加モル数は、2〜50モルであることが好ましく、なかでも、エチレンオキサイドの付加モル数が10モル以下の場合には、乳化型毛髪化粧料による前記の効果をより良好に確保できることから、特に好ましい。
【0023】
乳化型毛髪化粧料における(e)成分の配合量としては、他に使用される非イオン性界面活性剤の量や種類などに応じて適宜調節すればよいが、処理後の毛髪のやわらかさをより向上させ得るようになることから、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましい。ただし、乳化型毛髪化粧料において(e)成分が多すぎると、乳化型毛髪化粧料が硬くなる傾向にあり、これにより毛髪へ塗布しにくくなることがあるため、その配合量は、10質量%以下であることが好ましく、7質量%以下であることがより好ましい。
【0024】
本発明の乳化型毛髪化粧料においては、(c)成分であるカチオン性界面活性剤の配合量を、(d)成分であるポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルの配合量と(e)成分であるポリオキシエチレンアルキルエーテルの配合量との和よりも少なくする。
【0025】
部分ごとにダメージ度合いの異なる毛髪にカチオン性界面活性剤を含む毛髪化粧料を塗布した場合、ダメージ度合いのより大きな箇所(例えば毛先部分)ほどカチオン性界面活性剤が付着しやすいため、毛髪全体にカチオン性界面活性剤が均一に付着せず、例えば、毛先部分と根元部分では、その処理効果に違いが生じ、均一にやわらかさを付与することが困難である。しかし、乳化型毛髪化粧料における(c)成分の配合量を、(d)成分の配合量と(e)成分の配合量との和よりも小さくすることで、毛髪におけるダメージ度合いの大きな箇所と小さな箇所とでの、カチオン性界面活性剤を始めとする乳化型毛髪化粧料の構成成分の付着の程度の差を可及的に小さくできる。そのため、本発明の乳化型毛髪化粧料では、部分ごとにダメージ度合いの異なる毛髪であっても、均一なやわらかさを付与できる。
【0026】
なお、乳化型毛髪化粧料における(d)成分であるポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルの配合量と(e)成分であるポリオキシエチレンアルキルエーテルの配合量との和は、(c)成分であるカチオン性界面活性剤の配合量の、1.2倍以上であることがより好ましく、また、3倍以下であることがより好ましい。
【0027】
更に、乳化型毛髪化粧料による前記の効果をより良好に確保する観点からは、(d)成分であるポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルの配合量を、(e)成分であるポリオキシエチレンアルキルエーテルの配合量よりも少なくすることが好ましい。
【0028】
また、本発明の乳化型毛髪化粧料には、(f)グリセリン脂肪酸エステルを配合することが好ましく、この場合には、乳化型毛髪化粧料の乳化状態の安定性を高めることができる。(f)成分であるグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、ミリスチン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、イソステアリン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリルなどが挙げられ、これらのうちの1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
乳化型毛髪化粧料における(f)成分の配合量としては、他に使用される非イオン性界面活性剤の量や種類などに応じて適宜調節すればよいが、例えば、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上であって、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下である。
【0030】
また、本発明の乳化型毛髪化粧料には、(g)レシチン誘導体を配合することが好ましく、この場合には、乳化型毛髪化粧料が毛髪へより馴染みやすくなり、毛髪に塗布する際の操作性がより向上する。(g)成分であるレシチン誘導体としては、例えば、水素添加大豆リン脂質などが挙げられる。乳化型毛髪化粧料における(g)成分の配合量としては、例えば、0.01〜1質量%であることが好ましい。
【0031】
本発明の乳化型毛髪化粧料は、乳化物であり、主たる分散媒として水を使用する。分散媒には、水のみを使用してもよく、必要に応じて、エタノール、イソプロパノールなどの低級アルコール(炭素数が6以下のアルコール)などの有機溶媒を、分散媒全量中5質量%以下程度の量で水と併用してもよい。なお、乳化型毛髪化粧料の構成成分の一部は、分散媒に溶解していてもよい。乳化型毛髪化粧料における分散媒の配合量は、例えば、50〜80質量%とすることが好ましい。
【0032】
本発明の乳化型毛髪化粧料は、クリーム状、乳液状、ゲル状などの形態とすることができるが、操作性がより良好となる点で、クリーム状とすることが好ましい。
【0033】
本発明の乳化型毛髪化粧料は、本発明の効果を損なわない範囲で、通常の化粧料に配合されている各種成分を配合することができる。このような成分としては、例えば、動物油や植物油などの油脂、ロウ、炭化水素、脂肪酸、多価アルコール、エーテル、エステル、シリコーン、非イオン性界面活性剤[(d)成分、(e)成分および(f)成分を除く]、水溶性高分子、植物海藻エキス、アミノ酸およびその誘導体、タンパク質およびその誘導体、ビタミンおよびその誘導体、紫外線吸収剤、防腐剤、酸化防止剤、金属イオン封鎖剤、香料などが挙げられ、このような成分の中から好ましいものを、適宜選択して配合することができる。
【0034】
本発明の乳化型毛髪化粧料は、ヘアコンディショナー、ヘアトリートメント、ヘアリンス、パーマネントウェーブ処理の前処理剤または後処理剤、ストレートパーマ処理の前処理剤または後処理剤、染毛用前処理剤または後処理剤などとして好適に用いることができる。
【0035】
すなわち、本発明の乳化型毛髪化粧料により毛髪を処理する際には、例えば、通常のシャンプーなどを用いて洗浄した後の毛髪に、本発明の乳化型毛髪化粧料を適量塗布し、好ましくは毛髪を揉み込むようにして、乳化型毛髪化粧料を毛髪全体に馴染ませた後、水ですすぎ、乾燥すればよい。また、パーマネントウェーブ処理の前処理剤、ストレートパーマ処理の前処理剤、または染毛用前処理剤として、本発明の乳化型毛髪化粧料を使用する場合には、例えば、本発明の乳化型毛髪化粧料によって前記と同様の方法で毛髪を処理した後、または前記と同様の方法で乳化型毛髪化粧料を毛髪全体に馴染ませた後(水ですすぐことなく)、常法に従い、パーマネントウェーブ処理、ストレートパーマ処理または染毛処理を毛髪に施せばよい。更に、パーマネントウェーブ処理の後処理剤、ストレートパーマ処理の後処理剤、または染毛用後処理剤として、本発明の乳化型毛髪化粧料を使用する場合には、常法に従い、パーマネントウェーブ処理、ストレートパーマ処理または染毛処理を施した後の毛髪を、本発明の乳化型毛髪化粧料によって前記と同様の方法で処理すればよい。
【0036】
また、本発明の乳化型毛髪化粧料は、他の毛髪化粧料と組み合わせた多段階式の毛髪処理剤の一部として利用することも可能である。
【実施例】
【0037】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は本発明を制限するものではない。なお、後記の表1および表2では乳化型毛髪化粧料全体で100%となるように、それぞれ各成分の配合量を%で示すが、その%はいずれも質量%であり、また、これらの表中ではその%の表示を省略し、配合量を表す数値のみで表示する。
【0038】
実施例1〜8および比較例1〜5
実施例1〜8および比較例1〜5の乳化型毛髪化粧料を、表1および表2に示す組成で調製した。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

【0041】
なお、表1および表2において、水の欄の「計100とする」とは、乳化型毛髪化粧料を構成する水以外の各成分の合計量に、水の量を加えて100%となるようにしたことを意味している。また、「セトステアリルアルコール」は、セチルアルコールとステアリルアルコールとの混合物である。更に、「POE」はポリオキシエチレンの意味であり、その後の括弧内の数値は、エチレンオキサイドの付加モル数を意味している。
【0042】
また、実施例および比較例で使用した原材料は、以下の通りである。
(1)テトラオレイン酸POE(60)ソルビット:日光ケミカル社製「NIKKOL GO−460V」。
(2)テトラオレイン酸POE(6)ソルビット:日光ケミカル社製「NIKKOL GO−4V」。
(3)POE(2)ステアリルエーテル:日光ケミカル社製「NIKKOL BS−2」。
(4)POE(20)ベヘニルエーテル:日光ケミカル社製「NIKKOL BB−20」。
(5)ステアリン酸グリセリル:日光ケミカル社製「NIKKOL MGS−BSE」。
(6)水素添加大豆リン脂質:日光ケミカル社製「NIKKOL レシノールS−10」。
【0043】
下記の評価用毛束を作製し、これらを、実施例1〜8および比較例1〜5の乳化型毛髪化粧料によって処理した。
【0044】
<評価用毛束の作製>
長さ20cmの毛髪:2.5gを纏めて1つの毛束とし、これを複数用意した。なお、毛束に用いた毛髪は同一人のものであるが、その化学処理の履歴を問わずに集めたため、毛束中の毛髪それぞれの部分ごとや、毛束中の毛髪ごとに、化学処理によるダメージ度合いが異なっていると考えられる。
【0045】
毛髪は、ヘアカラーおよびパーマを施した場合に最も化学的損傷を受ける。そこで、前記の各毛束には、更にブリーチ処理およびパーマネントウェーブ処理を施した。
【0046】
まず、35質量%濃度の過酸化水素水を6.0質量%を含み、精製水によって全量を100質量%にしたものと、25質量%のアンモニア水を8.5質量%含み、精製水によって全量を100質量%にしたものとを等量混合して、ブリーチ処理のためのブリーチ剤を調製した。
【0047】
また、パーマネントウェーブ用剤の第1剤として、DL−システイン塩酸塩5.5質量%と、アセチルシステイン0.5質量%と、50質量%濃度のチオグリコール酸アンモニウム液1.8質量%と、80質量%濃度のモノエタノールアミン液4.7質量%とを含み、アンモニア水(25質量%)でpHを9.3に調整し、精製水で全量を100質量%にしたものを用意した。更に、パーマネントウェーブ用剤の第2剤として、臭素酸ナトリウム6.5質量%と、クエン酸0.1質量%と、リン酸0.05質量%と、リン酸水素一水素ナトリウム0.5質量%とを含み、精製水で全量を100質量%にしたものを用意した。
【0048】
始めに、前記の各毛束を前記のブリーチ剤100ml中に浸漬し、35℃恒温振とう器中で30分振とうすることで、各毛束をブリーチ処理し、精製水で洗浄した。次に、洗浄後の各毛束を直径10mmのロッドに巻き付け、これら全体を前記パーマネントウェーブ用第1剤100ml中に浸漬し、35℃恒温振とう器中で30分振とうし、精製水で洗浄した後自然乾燥し、更に前記パーマネントウェーブ用第2剤100ml中に浸漬し、35℃恒温振とう器中で30分振とうし、精製水で洗浄した後自然乾燥して、パーマネントウェーブ処理を行うことによって各毛束に化学処理による損傷を受けさせた。
【0049】
前記の化学処理を行った各毛束を、27質量%濃度のラウレス硫酸ナトリウム水溶液で洗浄し、水ですすぎ流して乾燥させて、評価用毛束とした。
【0050】
実施例1〜8および比較例1〜5の乳化型毛髪化粧料を、それぞれ異なる評価用毛束に0.5g塗布し、揉み込むようにして毛束全体に乳化型毛髪化粧料を馴染ませた後、水ですすぎ乾燥させて、処理を行った。
【0051】
前記処理後の各毛束のやわらかさについて、下記のねじり応力測定および官能評価による評価を行い、また、乳化型毛髪化粧料を毛髪に塗布する際の操作性について、下記の官能評価を行った。これらの結果を表3に示す。
【0052】
<ねじり応力測定>
乳化型毛髪化粧料による処理後の毛束に係る毛髪について、カトーテック社製のトルク感知式ねじり測定装置「KES−YN−1」を用いて、ねじり応力を測定し、そのやわらかさを評価した。試料毛髪の長さは2cmとし、ねじり回転速度120°/秒、ねじり回転数±3回転の条件でねじり応力を測定した。なお、試料毛髪は、各毛束からランダムに選択したものを用いた。ねじり応力測定により得られる数値が小さいほど、毛髪はやわらかいといえる。
【0053】
<官能評価>
専門のパネラー5名によって、乳化型毛髪化粧料による処理後の毛束に係る毛髪の均一なやわらかさ、および乳化型毛髪化粧料を毛髪に塗布する際の操作性について、下記基準に従って点数付けを行った。なお、「操作性」に関しては、毛髪に塗布する際に、乳化型毛髪化粧料が乾き難く、毛髪に馴染ませやすいか否かについて、評価した。
5点:非常によい。4点:よい。3点:普通。2点:悪い。1点:非常に悪い。
【0054】
そして、各パネラーの付けた点数を合計して、下記基準に従って総合的に評価した。◎および○の評価のものは、乳化型毛髪化粧料による毛髪の処理効果(やわらかさの付与効果)、または乳化型毛髪化粧料の操作性が良好であるといえる。
【0055】
<総合評価基準>
評価◎:点数の合計が20点以上。
評価○:点数の合計が15点以上20点未満。
評価△:点数の合計が10点以上15点未満。
評価×:点数の合計が10点未満。
【0056】
【表3】

【0057】
表3から明らかなように、実施例1〜8の乳化型毛髪化粧料は、毛髪に塗布する際の操作性が良好である。また、実施例1〜8の乳化型毛髪化粧料は、処理後の毛髪のねじり応力が小さく、やわらかであり、また、官能評価においてもやわらかであると評価されていることから、部分ごとにダメージ度合いが異なる毛髪であっても、均一なやわらかさを付与できるものであることが分かる。
【0058】
これに対し、比較例1〜5の乳化型毛髪化粧料は、毛髪に塗布する際の操作性が劣っている。また、比較例1〜5の乳化型毛髪化粧料は、ねじり応力測定、官能評価のいずれにおいても、処理後の毛髪のやわらかさが劣っており、部分ごとにダメージ度合いが異なる毛髪に均一なやわらかさを付与する作用が、実施例1〜8の乳化型毛髪化粧料に比べて低い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、
(a)炭素数が12〜22である直鎖1級アルコール、
(b)炭素数が12〜22であり且つ分岐鎖を含む1級アルコール、
(c)カチオン性界面活性剤、
(d)ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、および
(e)ポリオキシエチレンアルキルエーテル
が配合されており、
(c)カチオン性界面活性剤の配合量が、(d)ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルの配合量と(e)ポリオキシエチレンアルキルエーテルの配合量との和よりも少ないことを特徴とする乳化型毛髪化粧料。
【請求項2】
更に、(f)グリセリン脂肪酸エステルが配合されている請求項1に記載の乳化型毛髪化粧料。
【請求項3】
更に、(g)レシチン誘導体が配合されている請求項1または2に記載の乳化型毛髪化粧料。

【公開番号】特開2009−292732(P2009−292732A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−136164(P2008−136164)
【出願日】平成20年5月26日(2008.5.26)
【出願人】(592255176)株式会社ミルボン (138)
【Fターム(参考)】