説明

乳化基剤これを用いた外用剤及び乳化組成物

【課題】界面活性剤を使用することなく、乳化の安定な乳化基剤等の乳化組成物の提供。
【解決手段】25℃での1%水溶液粘度が1200〜2000mPa・sのキサンタンガム1種と該粘度より300mPa・s以上粘度が離れた少なくとももう1種のキサンタンガムを含有する乳化基剤により課題を解決するものである。さらに、もう1種のキサンタンガムが25℃での1%水溶液粘度が2000mPa・sより大きく3500mPa・s以下のものであり、これらに水素添加リン脂質及び高級アルコールの少なくとも何れか一方を含有する乳化基剤が好ましいものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特定粘度の2種のキサンタンガムを含む医薬及び化粧品等の乳化基剤、それを用いた外用剤及び乳化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬または化粧品等の外用基剤として、水溶性および油溶性の何れの成分をも配合できる外用基剤として、従来乳化型外用剤が使用されている。従来の乳化型外用剤は通常界面活性剤を用いて、乳化及び乳化の安定化を図っている。しかし、界面活性剤の中には安全性に問題があると指摘されているものがいくつか存在し、現在それらも多くの基剤や外用剤で使用されている。例えばポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートは皮膚に適用することで乳頭腫や癌の発生などの報告例があり、更に、セチル硫酸塩等は皮膚刺激性の観点から配合を極力控えるのが好ましい。また、界面活性剤を用いる乳化製剤の場合、金属塩を配合すると、多くの場合、その乳化安定性が崩れ、Schulze-Hardyの経験則として知られている凝集が認められる。
【0003】
そのため、上記の問題等を避けるため、界面活性剤を使用しない外用基剤、特に乳化型外用基剤も研究されており、乳化安定性及び使用感の向上のため、油のゲル化剤、多価アルコールや油成分の選択で解決しようとした例がある。しかし、粘度が高いとベタツキ感やのびが重くなり、粘度が低いとベタツキ感やのびの問題は解消されるものの、乳化製剤においては水相と油相が分離するなど乳化安定性に問題が生じ、全ての条件を満足するようなものは得られなかった。
界面活性剤を用いないで乳化を安定させる方策としては、コロイド性含水ケイ酸塩を配合することで、水相の降伏値をあげて乳化の安定性をはかることも試みられて来たが、乳化安定性及び官能面において完全に満足できる効果は認められていない。
【0004】
更に、保湿用のクリームなどの基剤で、ポリペプチドとキサンタンガムを併用し、「ベタツキ」「ぬるつき」を押さえた基剤が特許文献1に記載されている。 また、ポリペプチドであるサーファクチンとキサンタンガムを併用する方法(特許文献3)も知られている。界面活性剤を用いないで乳化型外用基剤を調製する方法としては、特許文献2にあるように、2種類のエーテル化度が異なるカルボキシメチルセルロースナトリウムとK値が30以上のポリビニルピロリドンを用いて水溶性軟膏基剤を調製する方法が記されている。
従来、キサンタンガムは、主として増粘などの目的で外用基剤及び食品等に用いられ、25℃での1%水溶液粘度が600〜1000未満程度のものを用いることが通例であった。
キサンタンガム(Xanthan gum)は、微生物であるキサントモナス・キャンペストリスの菌体外に産生される天然の多糖類であり、グルコース、マンノース及びグルクロン酸により構成されており、その比率は2:2:1である。キサンタンガムを製造するには一般に、ブドウ糖や澱粉培地でキサントモナス・キャンペストリスを純粋培養して粘質物を生産させ、これをアルコール沈澱により回収して精製・乾燥・粉砕する。また、高粘度のキサンタンガムの製造法としては特許文献4等が知られている。
【特許文献1】特開2005−35947
【特許文献2】特開2006−199607
【特許文献3】特開2005−306863
【特許文献4】特開平10−33125
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、界面活性剤を使用しない乳化安定性のよい乳化組成物、特に乳化基剤を提供しようとするものである。特に、外用剤として使用したときに、使用感の良好な、特に「ベタツキ」や「水っぽさ」の無い乳化型外用基剤を提供しようとするものである。界面活性剤の中には安全性に問題があると指摘されているものがいくつか存在し、現在それらも多くの外用剤で使用されている。例えばポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートは皮膚に適用することで乳頭腫や癌の発生などの報告例があり、更に、セチル硫酸塩等は皮膚刺激性の観点から配合を極力控えるのが好ましい。また、界面活性剤での乳化の場合、金属塩を配合すると、多くの場合、その乳化安定性が崩れ、Schulze-Hardyの経験則として知られている凝集が認められる。
従って、本発明は、界面活性剤を使用することなく、乳化を安定させることのできる乳化組成物、例えば、乳化基剤、特に、外用基剤として使用したとき、使用感の良好な乳化基剤、特に上記問題点を解決した乳化が安定で、金属塩を配合した場合にも、乳化安定性が崩れることのない乳化型外用基剤及び乳化型外用剤を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の問題を解決すべく、種々検討の結果、全く意外にも、粘度の異なるキサンタンガムを組み合わせた乳化組成物とすることにより、界面活性剤等を使用することなく、乳化を安定化させることができると共に、該乳化組成物を外用基剤として使用すると、ベトツキ感等が改善され、その結果、ベトツキ等の問題が解決されると共に、界面活性剤を使用した従来の問題点も解決した外用基剤とすることができること、また、ポリペプチドなどを併用する必要も無いことを見いだし、本発明を完成した。
即ち本発明は、
(1)25℃での1%水溶液粘度が1200〜2000mPa・sのキサンタンガム1種と該粘度より300mPa・s以上粘度が離れた少なくとももう1種のキサンタンガムを含有する乳化基剤、
(2)もう1種のキサンタンガムの25℃での1%水溶液粘度が2000mPa・sより大きく、3500mPa・s以下である請求項1に記載の乳化基剤、
(3)水素添加リン脂質及び高級アルコールの少なくとも何れか一方を含有する請求項2に記載の乳化基剤、
(4)請求項1〜3の何れか1項に記載の基剤中に、水溶性または油溶性の薬効成分を含有する乳化型外用剤、
(5)25℃での1%水溶液粘度が1200〜2000mPa・sのキサンタンガム1種と該粘度より300mPa・s以上粘度が離れた少なくとももう1種のキサンタンガムを含有する乳化組成物、
に関するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の乳化組成物は、界面活性剤を使用すること無く、乳化の安定を行うことができ、金属塩等の共存下においても乳化安定性が崩れないという優れた効果を有し、更に、該乳化組成物を外用基剤として用いて製造された外用剤は、塗布中、塗布後のベトツキ感がなく、官能的に優れ、かつ、界面活性剤を使用しなくてよいことから、皮膚への刺激性がなく、安全性があり、更に水溶性及び油溶性何れの薬効成分をも配合できるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明による25℃での1%水溶液粘度が1200〜2000mPa・sのキサンタンガムと該粘度より300mPa・s以上粘度が離れた少なくとももう1種のキサンタンガムを含有する乳化組成物は、上記のように特に外用基剤として有用であるが、上記のように界面活性剤を使用することなく乳化を安定化させることができることから、外用基剤以外の種々の分野における乳化組成物に使用することもできる。なお、以下特に断らない限り、キサンタンガムにおける粘度は25℃での1%水溶液の粘度を意味する。
本発明で使用する25℃での1%水溶液粘度が1200〜2000mPa・sのキサンタンガム(以下場合により、特定粘度キサンタンガムともいう)は、市場より市販品として入手することもまた、前記の特許文献4の方法において製造することもできる。
また、上記特定粘度キサンタンガムと併用するもう1種のキサンタンガム(以下場合により併用キサンタンガムともいう)としては、上記の特定の粘度より、300mPa・s以上粘度が離れていれば、粘度が高いものであっても、また、低いものであってもよい。粘度差はあまり大きすぎない方が好ましく、通常300〜1500mPa・s程度、より好ましくは400〜1000mPa・s、更に好ましくは400〜700mPa・s程度である。
上記の特定粘度キサンタンガムより、300mPa・s以上粘度が低い併用キサンタンガムとしては、従来一般に使用されている25℃の1%粘度で、1000mPa・sより低いものを使用すればよく、通常、400mPa・s以上のものが好ましい。粘度の低いものとの併用に比して、粘度の高いものとの併用はより併用の効果が大きいので、高いものとの併用はより好ましい。
【0009】
上記の特定粘度キサンタンガムより、300mPa・s以上粘度が高い併用キサンタンガムも市場より市販品として入手することができ、また、前記の特許文献4の方法において製造することもできる。好ましいものとしては粘度が2000mPa・sより大きく、3500mPa・sより小さい粘度を有するものを挙げることができ、より好ましくは2500〜3000mPa・s程度のものである。
特定粘度キサンタンガムと併用キサンタンガムの両者を配合する割合は、本発明の効果が達成される限り特に限定は無いが、上記の特定粘度キサンタンガムを、両者の合計に対して、10〜90質量%(以下特に断らない限り同じ)、より好ましくは20〜80%であり、更に好ましくは、25〜75%程度であり、残部が併用キサンタンガムである。併用キサンタンガムが特定粘度キサンタンガムより粘度の高いキサンタンガムの時は、更に、特定粘度キサンタンガムが20〜60%、併用キサンタンガムが40〜80%程度の時が最も好ましい。
【0010】
特定粘度キサンタンガムと併用キサンタンガム(以下場合により本件2種のキサンタンガムともいう)を含有する乳化組成物における本件2種のキサンタンガムの合計含量は、組成物の種類により異なるので、一概にはいえないが、通常、組成物の総量(質量)に対して、0.1〜5%、好ましくは0.15〜2%の範囲内である。
乳化組成物における油成分の含量は、通常の乳化組成物における含量でよく、通常組成物の総量に対して、5〜70%、好ましくは7〜60%、更に好ましくは7〜40%程度である。残部は水である。
該組成物の代表的なものは医療または/及び化粧品などに使用される外用基剤、特に乳化型外用基剤及びそれを用いた外用剤である。乳化型外用基剤の中では、水中油型の乳化基剤が好ましい。外用基剤中における本件2種のキサンタンガムの合計含量は、上記含量内であればよいが、通常外用基剤総量に対して、0.15〜1%、好ましくは0.2〜0.8%、より好ましくは0.2〜0.6%である。
【0011】
本発明の乳化型外用基剤は、少なくとも本件2種のキサンタンガムを含む乳化型外用基剤であれば、何れでもよい。通常の乳化型外用基剤に本件2種のキサンタンガムを併用することにより得ることができる。但し、本発明においては、界面活性剤を含むことなく、外用基剤を安定化できるので、界面活性剤を含む必要はない。また、本発明における外用基剤中における水含量は、他の成分含量の残部であるが、通常、外用基剤総量(質量)に対して、20〜90%程度であり、好ましくは30〜85%程度、更に好ましくは40〜80%程度である。
【0012】
乳化型外用基剤は通常油成分及び水を含むものである。従って、本発明の外用基剤が乳化型外用基剤の場合には、本件2種のキサンタンガム、油成分及び水を含むものである。油成分の含量は、乳化組成物の項で述べたものでよいが、通常の基剤中における含量が好ましい。即ち、該基剤の総量に対して、油成分の含量は5〜50%程度、より好ましくは7〜40%程度、更に好ましくは7〜35%程度である。本件2種のキサンタンガムの合計の該基剤の総量に対する含量は前記の通りであり、残部は水である。
油成分としては通常乳化型外用剤等で使用される油成分が何れも使用することができる。例えば油成分としては、ワセリン、流動パラフィン、スクワレンまたはミリスチン酸イソプロピル等を挙げることができる。
該乳化型外用剤は、更に、乳化型外用基剤が通常含む添加剤を含んでいてもよい。それらとしては、例えば、多価アルコール等の保湿剤、吸収促進剤、保存剤、香料及び油脂等を配合してもよい。
【0013】
また、乳化安定性及び官能性を更に向上させるため、基剤中に水素添加リン脂質及び/または高級アルコールを含有するのはより好ましい態様であり、両者を含む場合更に好ましい。基剤総量に対する水素添加リン脂質の配合量は通常0.5〜5%程度であり、好ましくは1〜3%である。また、基剤総量に対する高級アルコールの含量は通常0.5〜15%程度、好ましくは1〜10%程度である。
水素添加リン脂質としては通常の基剤で使用されるものが何れも使用しうる。
例えば、黄卵または大豆などより抽出したリン脂質、又は中性脂質を含むリン脂質を常法により水素添加したものである。
また、高級アルコールも、通常の基剤で使用されるものが何れも使用しうる。具体例としてはステアリルアルコール、コレステロール、ミリスチルアルコール及びオレイルアルコール等を挙げることが出来る。
本発明の乳化型外用基剤は基剤中に金属塩を含有する場合でも乳化安定性が崩れることが無く、優れた安定性を示す。従って、薬効成分を含む製剤中に金属塩等が含まれる場合も本発明によれば安定した製剤を得ることができる。特に、上記の好ましい態様の基剤はそのような場合に最適である。
【0014】
本発明の乳化型外用基剤に、水溶性または油溶性の薬効成分を配合することにより、本発明の乳化型外用剤とすることができる。
配合しうる薬効成分は特に限定は無く、目的に応じて、抗生物質、化学療法剤、ビタミン剤、局所麻酔剤、抗ヒスタミン剤、消炎鎮痛剤、収れん剤、サルファ剤、抗真菌剤、血行促進剤、副腎皮質ホルモン等の薬剤を配合することができる。特に上記のように本発明においては、金属塩を含む製剤においても、乳化が安定に保てるので、薬効成分が金属塩となっていても、乳化製剤とすることができる。
【0015】
前記薬効成分としては、具体的には例えば吉草酸ベタメタゾン、プレドニゾロン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、フルオシノニド、ジプロピオン酸ベタメタゾン;インドメタシン、ジクロフェナク、イブプロフェン、ケトプロフェン、トラネキサム酸、フルフェナム酸、メフェナム酸、フェニルブタゾン、サリチル酸メチル、サリチル酸ナトリウム、臭化プロパンテリン;塩酸シプロヘプタジン、クロルフェニラミン、ジフェンヒドラミン、プロメタジン;クロルプロマジン、ジアゼパム、レセルピン;インシュリン、テストステロン、メチルテストステロン、プロゲステロン、エストラジオール;アテノロール、塩酸アルプレノロール、塩酸ラベタロール、クロニジン、酒石酸メトプロロール、α−メチルドパ;ジギトキシン、ジピリダモール;塩酸プロプラノロール、塩酸プロカインアミド、アジマリン、ピンドロール;硝酸イソソルビド、塩酸パパベリン、ニトログリセリン、ニフェジピン;塩酸プロカイン、リドカイン、ベンゾカイン、塩酸ジブカイン;バルビタール、チオペンタール、テオフィリン、フェノバルビタール;アスピリン、アセトアニリド、p−アミノ安息香酸エチル、アンチピリン、コデイン、酢酸ハロプレドン、スリンダク、ナプロキセン、モルヒネ;イソニアジド、塩酸クリンダマイシン、塩酸クロルヘキシジン、塩酸リンコマイシン、エリスロマイシン、オキシテトラサイクリン、ゲンタマイシン、ストレプトマイシン、セファレキシン、テトラサイクリン、ホスホマイシンナトリウム;アムホテリシンB、塩化ベンザルコニウム、グリセオフルビン、ゲンタマイシン;5−フルオロウラシル、ブスルファン、アクチノマイシン、ブレオマイシン、マイトマイシン、メトトレキサート、6−メルカプトプリン;ヒドロクロロチアジド;アトロピン、スコポラミン;ニトラゼパム;スルファミン、スルファモノメトキシン;塩酸カルテオロール、マレイン酸チモロール、メシル酸ベタヒスチン;臭化ブチルスコポラミン等が挙けられる
【0016】
薬効成分は上記に特に限定されるものではなく、各種の、皮膚を通り全身に循環して作用を発現する薬物あるいは塗布面で局所的作用を発現する薬物を配合することができる。
薬効成分の製剤中での含量は、薬剤により異なるので一概にはいえないが、製剤の総量(質量)に対して0.01%程度から60%程度まで、薬剤により適宜変更することができる。
本発明の乳化型外用剤の製剤形態は、特に制限はなく、使用感触や適用のしやすさ等を勘案して、従来外用剤として慣用されている剤型、例えばクリーム剤、ゲル剤、ローション剤、乳剤、液剤、スプレー剤、パップ剤、テープ剤またはパッチ剤等任意の剤型の皮膚外用製剤として使用することができる。
【実施例】
【0017】
次に、本発明を実施例及び試験例を挙げて、具体的に説明する。
実施例1〜3 製剤実施例
外用基剤の調製方法
白色ワセリン、水素添加リン脂質及びステアリルアルコールの処方量を秤量し、水素添加リン脂質はその1部を用い、その他は全量を一緒にして撹拌しながら加温溶解し油層とした。次に1,3-ブチレングリコール、グリセリン、金属塩(硫酸亜鉛)、各粘度のキサンタンガム及び精製水の処方量を秤量し、これらと前記の残りの水素添加リン脂質を撹拌しながら加温溶解し水層とした。撹拌しながら水層と油層を混合し、調製物が室温に冷却されるまで撹拌を続け目的の乳化型外用基剤用の本発明の組成物を得た。得られた本発明の組成物を下表1に、また、比較例の処方を下表2に示す。
なお、表中におけるキサンタンガム(A)は25℃での1%水溶液の粘度が1500〜2000mPa・sのものを、キサンタンガム(B)は同粘度が2500〜3000mPa・sのものを、また、キサンタンガム(通常粘度)は同粘度が600〜800mPa・sのものを使用した。
また、実施例1、2および比較例1〜3の組成物はクリーム用基剤であり、実施例3の組成物はローション用基剤である。
【0018】
【表1】

【0019】
【表2】

【0020】
基剤の保存安定性試験
得られた調製物をポリプロピレン製の蓋付き容器に入れ60℃の恒温器で最大3週間まで保管し、経時的に調製物を恒温器から取り出し、水と油の分離が見られるかどうかを目視により判定した。その結果を下表に示す。
なお、表中における評価基準は下記の通りである。
◎:3週間以上水と油の分離が見られず非常に安定な乳剤組成物
○:7〜20日で水と油の分離が見られ、不十分であるがある程度の範囲で安定な乳剤組成物
×:1〜6日で水と油の分離が見られ、安定化が見られない乳剤組成物
【0021】
表3
実施例番号 1 2 3
評価結果 ◎ ◎ ◎
【0022】
表4
比較例番号 1 2 3
評価結果 ○ × ×
【0023】
外用基剤の官能性試験
実施例2及び比較例1〜3について,以下の方法により官能性の評価を行った。
被験者は3名とし、検体を適当量取り、該検体を被験者の上腕部屈折部内側に置き,人差し指又は中指で検体を延ばした時の官能性を以下の基準をもとに判定した。その結果を表5に示す。表中には3名の評価の平均値である。
【0024】
官能評価基準:
(1)塗布性(延び及び滑らかさ) : 指で塗布した際の塗布性。
○ :延びが適度で滑らかに塗れる。
△ :延びが不足しているか又は滑らかさがやや不足する。
× :延びが悪く塗布しづらい。
(2)皮膚の感触:塗布した皮膚の感触に基づき官能評価を行った。
○ :ベタツキが感じられない。
△ :ややベタツキが感じられる。
× :水っぽい又はベタツキ感が強い。
【0025】
表5
番号 実施例2 比較例1 比較例2 比較例3
評価結果
塗布性 ○ △ × △
皮膚の感触 ○ × × ×
【0026】
官能評価の結果、本発明の実施例2の検体は優れた官能性を示すのに対し、1種類のキサンタンガムを単独で使用した比較例1及び2は、ベタツキ感が強く、比較例3では水っぽさが強く、また、塗布性においても、比較例1及び3では延びが悪く均一に塗布出来ず、比較例2の検体は,塗布することが困難であった。
【産業上の利用可能性】
【0027】
以上から明らかなように本発明の乳化基剤等の乳化組成物は、界面活性剤を使用することなく、乳化が著しく改善されており、乳化基剤、乳化型外用基剤及び外用剤等の製造に有用なものであり、更に、該乳化組成物を外用基剤等として使用したとき、塗布性及び皮膚感触も著しく改善され、外用基剤として適するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
25℃での1%水溶液粘度が1200〜2000mPa・sのキサンタンガム1種と該粘度より300mPa・s以上粘度が離れた少なくとももう1種のキサンタンガムを含有する乳化基剤。
【請求項2】
もう1種のキサンタンガムの25℃での1%水溶液粘度が2000mPa・sより大きく、3500mPa・s以下である請求項1に記載の乳化基剤。
【請求項3】
水素添加リン脂質及び高級アルコールの少なくとも何れか一方を含有する請求項2に記載の乳化基剤。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載の基剤中に、水溶性または油溶性の薬効成分を含有する乳化型外用剤。
【請求項5】
25℃での1%水溶液粘度が1200〜2000mPa・sのキサンタンガム1種と該粘度より300mPa・s以上粘度が離れた少なくとももう1種のキサンタンガムを含有する乳化組成物。

【公開番号】特開2008−201691(P2008−201691A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−37403(P2007−37403)
【出願日】平成19年2月19日(2007.2.19)
【出願人】(000169880)高田製薬株式会社 (33)
【Fターム(参考)】