説明

乳化物の製造方法

【課題】貯蔵安定性に優れた乳化物、特にポリオルガノシロキサンの乳化物を容易に得ることを目的とする。
【解決手段】油中で界面活性剤を合成することにより得られた、油及び界面活性剤の混合物を乳化して乳化物を得ることを特徴とする乳化物の製造方法。特に、通常は安定な乳化が困難な(A)オルガノポリシロキサンの乳化物の製造に好適であり、(B)シリコーン系界面活性剤、特に、トリシロキサンのようにシロキサン鎖の重合度が小さいシリコーン系界面活性剤を油中で合成することにより、貯蔵安定性に優れた乳化物を製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯蔵安定性に優れた乳化物を得る新規な乳化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、水中油型エマルジョン又は油中水型エマルジョンの形態である各種の乳化物は、繊維処理剤、塗料、離型剤及び化粧品等の幅広い分野で利用されている。これらの乳化物は、通常、高級炭化水素基を有する、ノニオン系、アニオン系、カチオン系、及び、両性イオン系の様々な界面活性剤を用いて乳化されることが多い。
【0003】
しかし、これらの界面活性剤の疎水基と、油、特にポリオルガノシロキサンとの親和性は必ずしも良好ではないため、これらの界面活性剤を用いて、油、特にポリオルガノシロキサンを乳化する多くの場合、高剪断力を有する乳化装置を用いないと得られる乳化物の貯蔵安定性が悪いという問題がある。そこで、この問題を解決するために、疎水基としてシロキサンを有するポリエーテル変性(ポリ)シロキサン等のシリコーン系界面活性剤を用いて乳化する方法が提案されている(特許文献1〜特許文献3参照)。
【0004】
しかしながら、ポリエーテル変性(ポリ)シロキサンを用いた場合でも、得られる乳化物の安定性は依然として満足できるものではなかった。そこで、他の界面活性剤を併用したり、特殊な乳化方法を用いることで、乳化物の安定性を改善することも提案されている(特許文献4〜特許文献7参照)が、使用に制限を受ける欠点があった。従って、貯蔵安定性に優れた乳化物、特にポリオルガノシロキサンの乳化物を容易に製造するプロセスが望まれていた。
【特許文献1】特開昭61-212321号公報
【特許文献2】特開平6-145524号公報
【特許文献3】特開2000-086437号公報
【特許文献4】特開平6-234918号公報
【特許文献5】特開平7-133354号公報
【特許文献6】特開平11-148010号公報
【特許文献7】特開平11-148011号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、貯蔵安定性に優れた乳化物、特にポリオルガノシロキサンの乳化物を容易に得ることをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、油中で界面活性剤を合成することにより得られた、油及び界面活性剤の混合物を乳化する、乳化物の製造方法によって達成される。
【0007】
前記油は(A)オルガノポリシロキサンでもよい。
【0008】
前記界面活性剤は(B)シリコーン系界面活性剤であることが好ましい。
【0009】
前記(B)シリコーン系界面活性剤として、下記一般式(1):

SiO(RSiO)(RXSiO)SiR(1)

{式中、
1は、互いに独立して、水素原子、又は、置換若しくは非置換の1価の炭化水素基を表し;
Xは、互いに独立して、下記一般式(2):

−C2a(OC24(OC36-OA (2)

(式中、
Aは、水素原子、置換若しくは非置換の1価の炭化水素基、又は、−(CO)−R3(式中、Rは置換若しくは非置換の1価の炭化水素基を表す)で表される有機基を表し;
(OC24)及び(OC36)の配列は、ランダム、ブロック、交互のいずれか、又は、それらの組み合わせであり;
aは2〜15、bは0〜100、cは0〜100である)
で表される基を表し;
mは0〜50、nは0〜20であり、
2は、R1又はXであるが、nが0の場合、R2の少なくとも1つはXである}
で表されるものを使用することができる。m=0〜6及びn=0〜3であるものが好ましい。
【0010】
また、前記(B)シリコーン系界面活性剤として、下記一般式(3):

SiO(RSiO)m'(RYSiO)n'SiR(3)

〔式中、
は、互いに独立して、水素原子、又は、置換若しくは非置換の1価の炭化水素基を表し;
Yは、下記一般式(4):

−C2d(OC(OC36-O−Z-B (4)

{式中、
Bは、水素原子、置換若しくは非置換の1価の炭化水素基、又は、−(CO)−R3(式中、Rは置換若しくは非置換の1価の炭化水素基を表す)で表される有機基を表し;
は、下記一般式(5):
【化1】

(式中、
Wは、水素原子、又は、脂肪族不飽和結合を有しない置換若しくは非置換の1価の炭化水素基を表す)
の2価基を表し;
は、下記一般式(6):
【化2】

(式中、Wは、上記のとおりである)
の2価基を表し;
(OC)及び(OC36)、並びに、Z及びZの配列は、ランダム、ブロック、交互のいずれか、又は、それらの組み合わせであり;
dは2〜20、eは0〜100、fは0〜100、gは0〜200、hは0〜200、1≦g+hである}
で表される基を表し;
m’は0〜50、n’は0〜20であり、
は、R又はYであるが、n’が0の場合、Rの少なくとも1つはYである〕
で表されるものを使用することもできる。m’=0〜6及びn’=0〜3であるものが好ましい。
【0011】
前記(B)シリコーン系界面活性剤は、ケイ素原子結合水素原子含有シロキサン及び末端二重結合含有化合物をヒドロシリル化反応触媒存在下でヒドロシリル化反応により生成されることが好ましい。
【0012】
前記(A)ポリオルガノシロキサンの粘度は、25℃で50〜3000mPa・sであることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、貯蔵安定性に優れた乳化物、特に、ポリオルガノシロキサンの乳化物を容易に得ることができる。すなわち、本発明の製造方法を用いて調製した乳化物、特にポリオルガノシロキサン乳化物は、経時安定性に優れており、長期間安定して貯蔵することができる。そして、本発明の乳化物の製造方法は、既存の乳化装置を用いて容易に実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、界面活性剤の作用によって油を水性媒体中に分散して、又は、水性媒体を油中に分散して乳化物を製造するにあたり、他で既に製造された界面活性剤を油と組み合わせて使用するのではなく、乳化対象となる油中において、いわばin situに界面活性剤を製造して、当該界面活性剤をそのまま油と共に使用することを特徴とする。これにより、例えば、油に界面活性剤を外部から添加して乳化する場合と比べて、乳化物の安定性が改善される。
【0015】
本発明において乳化対象となる油は特に限定されるものではなく、任意の油を使用することができる。油は、疎水性であれば、起源を問わず、固形、半固形、液体のいずれでもよく、不揮発性、半揮発性、揮発性のいずれでよい。具体的には、炭化水素油及びワックス、動植物油、高級アルコール、エステル油、ポリオルガノシロキサン等が挙げられる。油は1種類であってもよく、或いは、2種類以上を混合して使用してもよい。
【0016】
炭化水素油及びワックスとしては、例えば、オゾケライト、スクワラン、スクワレン、セレシン、パラフィン、パラフィンワックス、流動パラフィン、プリスタン、ポリイソブチレン、ポリブテン、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン等が挙げられる。これら2種類以上を併用してもよい。
【0017】
動植物油としては、例えば、アボガド油、アマニ油、アーモンド油、イボタロウ、エノ油、オリーブ油、カカオ脂、カポックロウ、カヤ油、カルナウバロウ、肝油、キャンデリラロウ、牛脂、牛脚脂、牛骨脂、硬化牛脂、キョウニン油、鯨ロウ、硬化油、小麦胚芽油、ゴマ油、コメ胚芽油、コメヌカ油、サトウキビロウ、サザンカ油、サフラワー油、シアバター、シナギリ油、シナモン油、ジョジョバロウ、セラックロウ、タートル油、大豆油、茶実油、ツバキ油、月見草油、トウモロコシ油、豚脂、ナタネ油、日本キリ油、ヌカロウ、胚芽油、馬脂、パーシック油、パーム油、パーム核油、ヒマシ油、硬化ヒマシ油、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、ヒマワリ油、ブドウ油、ベイベリーロウ、ホホバ油、マカデミアナッツ油、ミツロウ、ミンク油、綿実油、綿ロウ、モクロウ、モクロウ核油、モンタンロウ、ヤシ油、硬化ヤシ油、トリヤシ油脂肪酸グリセライド、羊脂、落花生油、ラノリン、液状ラノリン、還元ラノリン、ラノリンアルコール、硬質ラノリン、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、POEラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、POE水素添加ラノリンアルコールエーテル、卵黄油等が挙げられる。これら2種類以上を併用してもよい。
【0018】
高級アルコールとしては、例えば、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ヘキサデシルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、ヘキシルドデカノール、オクチルドデカノール、セトステアリルアルコール、2−デシルテトラデシノール、コレステロール、フィトステロール、POEコレステロールエーテル、モノステアリルグリセリンエーテル(バチルアルコール)、モノオレイルグリセリルエーテル(セラキルアルコール)等が挙げられる。これら2種類以上を併用してもよい。
【0019】
エステル油としては、例えば、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸2−ヘキシルデシル、アジピン酸ジ−2−ヘプチルウンデシル、モノイソステアリン酸N−アルキルグリコール、イソステアリン酸イソセチル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、2−エチルヘキサン酸セチル、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、オクタン酸セチル、オクチルドデシルガムエステル、オレイン酸オレイル、オレイン酸オクチルドデシル、オレイン酸デシル、イソノナン酸イソノニル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、クエン酸トリエチル、コハク酸2−エチルヘキシル、酢酸アミル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ステアリン酸イソセチル、ステアリン酸ブチル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸2−エチルヘキシル、パルミチン酸2−ヘキシルデシル、パルミチン酸2−ヘプチルウンデシル、12−ヒドロキシステアリル酸コレステリル、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸−2−エチルヘキシル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸2−ヘキシルデシル、ミリスチン酸ミリスチル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、ラウリン酸エチル、ラウリン酸ヘキシル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸−2−オクチルドデシルエステル、リンゴ酸ジイソステアリル等;グリセライド油としては、アセトグリセリル、トリイソオクタン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、トリイソパルミチン酸グリセリル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリル、トリミリスチン酸グリセリル、ミリスチン酸イソステアリン酸ジグリセリル等が挙げられる。これら2種類以上を併用してもよい。
【0020】
本発明では、油として、(A)ポリオルガノシロキサンを使用することが好ましい。(A)ポリオルガノシロキサンとしては任意のものを使用することができ、直鎖状、一部分岐した鎖状、分岐状、及び、環状のいずれであってもよいが、直鎖状、一部分岐した鎖状、又は、分岐状が一般的である。そのケイ素原子に結合する有機基としては置換もしくは非置換の1価の炭化水素基が挙げられる。置換もしくは非置換の1価の炭化水素基としては、具体的には、メチル基,エチル基,プロピル基,ブチル基,ペンチル基,ヘキシル基,ヘプチル基,オクチル基,デシル基,ドデシル基等の飽和脂肪族炭化水素基;ビニル基,アリル基,ヘキセニル基等の不飽和脂肪族炭化水素基;シクロペンチル基,シクロヘキシル基等の飽和脂環式炭化水素基;フェニル基、トリル基、ナフチル基などの芳香族炭化水素基、及び、これらの基の炭素原子に結合した水素原子が少なくとも部分的にフッ素等のハロゲン原子、又は、エポキシ基、グリシジル基、アシル基、カルボキシル基、アミノ基、メタクリル基、メルカプト基等を含む有機基で置換された基が例示される。なお、(A)ポリオルガノシロキサンは、ケイ素原子に結合した水酸基やアルコキシ基を含有していてもよい。
【0021】
(A)ポリオルガノシロキサンとして、具体的には、α,ω−ジヒドロキシポリジメチルシロキサン,α−ヒドロキシ-ω−トリメチルシロキシ−ポリジメチルシロキサン,α,ω−ジメトキシポリジメチルシロキサン,α−メトキシ-ω−トリメチルシロキシ−ポリジメチルシロキサン,α,ω−ジエトキシポリジメチルシロキサン,α−エトキシ-ω−トリメチルシロキシ−ポリジメチルシロキサン,α,ω−ジ(トリメチルシロキシ)ポリジメチルシロキサン,分子鎖末端がシラノール基、メトキシ基、エトキシ基又はトリメチルシロキシ基で封鎖された架橋型メチルポリシロキサン、及び、これらのポリオルガノシロキサン中のメチル基の一部が、エチル基,フェニル基,ビニル基,3−アミノプロピル基,N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル基,3−メタクリロキシプロピル基,3−グリシドキシプロピル基,3−カルボキシルプロピル基で置換されたポリオルガノシロキサンが挙げられる。(A)ポリオルガノシロキサンの25℃における粘度は、5〜100,000mPa・sであることが好ましく、10〜10,000mPa・sであることがより好ましく、25〜5,000mPa・sであることが更に好ましく、50〜3000mPa・sであることが特に好ましい。
【0022】
本発明において使用される界面活性剤は特に限定されるものではなく、油中でのin situ合成が可能な任意の界面活性剤を使用することができる。例えば、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油は、ヒマシ油にエチレンオキシドを添加して製造することができるので、本発明において界面活性剤として使用できる。また、酵素を利用してエステル油とグリセリンとのエステル交換反応を行って得られるグリセリン脂肪酸エステルも本発明において界面活性剤として使用できる。また、シリコーン系界面活性剤もオルガノポリシロキサン中でin situ合成可能であるので、本発明において使用することができる。前記界面活性剤は(B)シリコーン系界面活性剤であることが好ましい。
【0023】
(B)シリコーン系界面活性剤としては、(ポリ)シロキサンからなる疎水性部位及び親水性部位を有する限り任意のものを使用することができるが、ポリエーテル変性(ポリ)シロキサン、ポリグリセロール変性(ポリ)シロキサン、ポリ(グリシジルエーテル)変性(ポリ)シロキサン、及び、ポリ(グリシジルエーテル)−ポリグリセロール変性(ポリ)シロキサンからなる群から選択される少なくとも1つを使用することが好ましい。
【0024】
ポリエーテル変性(ポリ)シロキサンとしては、下記一般式(1):

SiO(RSiO)(RXSiO)SiR(1)

{式中、
1は、互いに独立して、水素原子、又は、置換若しくは非置換の1価の炭化水素基を表し;
Xは、互いに独立して、下記一般式(2):

−C2a(OC24(OC36-OA (2)

(式中、
Aは、水素原子、置換若しくは非置換の1価の炭化水素基、又は、−(CO)−R3(式中、Rは置換若しくは非置換の1価の炭化水素基を表す)で表される有機基を表し;
(OC24)及び(OC36)の配列は、ランダム、ブロック、交互のいずれか、又は、それらの組み合わせであり;
aは2〜15、bは0〜100、cは0〜100であり、b+cは100以下であることが好ましく、aは2〜10、bは1〜50、cは1〜50、b+cは50以下であることがより好ましく、aは2又は3、bは5〜30、cは5〜30、b+cは30以下であることが更により好ましい)
で表される基を表し;
mは0〜50、nは0〜20であり、mは0〜30、nは0〜15であることが好ましく、mは0〜10、nは0〜7であることが更により好ましく、mは0〜6、nは0〜3であることが更により好ましく、
mが0〜2であり、かつn=1の場合、およびm=0でありかつn=1の場合が特に好ましい;
2は、R1 又はXであるが、nが0の場合、R2の少なくとも1つはXである}
で表されるものを使用することができる。
【0025】
ポリグリセロール変性(ポリ)シロキサン、ポリ(グリシジルエーテル)変性(ポリ)シロキサン、及び、ポリ(グリシジルエーテル)−ポリグリセロール変性(ポリ)シロキサンとしては、下記一般式(3):

SiO(RSiO)m'(RYSiO)n'SiR(3)

〔式中、
は、互いに独立して、水素原子、又は、置換若しくは非置換の1価の炭化水素基を表し;
Yは、下記一般式(4):

−C2d(OC(OC36−O−Z-B (4)

{式中、
Bは、水素原子、置換若しくは非置換の1価の炭化水素基、又は、−(CO)−R3(式中、Rは置換若しくは非置換の1価の炭化水素基を表す)で表される有機基を表し;
は、下記一般式(5):
【化3】

(式中、
Wは、水素原子、又は、脂肪族不飽和結合を有しない置換若しくは非置換の1価の炭化水素基を表す)
の2価基を表し;
は、下記一般式(6):
【化4】

(式中、Wは、上記のとおりである)
の2価基を表し;
(OC)及び(OC36)、並びに、Z及びZの配列は、ランダム、ブロック、交互のいずれか、又は、それらの組み合わせであり;
dは2〜20、eは0〜100、fは0〜100、gは0〜200、hは0〜200、1≦g+hであり、e+fは100以下であることが好ましく、dは2〜10、eは1〜50、fは1〜50、e+fは50以下であることがより好ましく、dは2又は3、eは5〜30、fは5〜30、e+fは30以下であることが更により好ましい。gは1〜200、hは1〜200で、2≦g+hあることが好ましく、gは2〜200、hは2〜200で、4≦g+hあることがより好ましく、gは5〜200、hは5〜200で、10≦g+hあることが更により好ましい}
で表される基を表し;
m’は0〜50、n’は0〜20であり、m’は0〜30、n’は0〜15であることが好ましく、m’は0〜10、n’は0〜7であることがより好ましく、m’は0〜6、n’は0〜3であることが更により好ましく、m’が0〜2であり、かつn’=1の場合、およびm’=0でありかつn’=1の場合が特に好ましい;
は、R又はYであるが、n’が0の場合、Rの少なくとも1つはYである〕
で表されるものを使用することができる。
【0026】
乳化物における(B)シリコーン系界面活性剤の使用量は特には制限されないが、油100重量部に対して0.01〜50重量部の範囲内であることが好ましく、0.1〜30重量部の範囲内がより好ましい。
【0027】
(B)シリコーン系界面活性剤の具体的な製造方法としては、例えば、ケイ素原子結合水素原子含有シロキサン及び末端二重結合含有化合物を、ヒドロシリル化反応触媒存在下で、ヒドロシリル化反応させることが代表例として挙げられる。
【0028】
ケイ素原子結合水素原子含有シロキサンは、例えば、下記一般式(7):

SiO(RSiO)m’’(RHSiO)n’’SiR(7)

(式中、
は、互いに独立して、水素原子、又は、置換若しくは非置換の1価の炭化水素基を表し;
m’’は0〜50、n’’は0〜20であり、m’’は0〜30、n’’は0〜15であることが好ましく、m’’は0〜10、n’’は0〜7であることがより好ましく、m’’は0〜6、n’’は0〜3であることが更により好ましく、m’’=0、1又は2、n’’=1の場合が特に好ましく;
は、R又は水素原子であるが、n’’が0の場合、Rの少なくとも1つは水素原子である)で表すことができる。一般式(1’)のケイ素原子結合水素原子含有シロキサンとしては、例えば、1,2−ジハイドロジェン−1,1,2,2−テトラメチルジシロキサン、1−ハイドロジェン−1,1,2,2,2−ペンタメチルジシロキサン、2−ハイドロジェン−1,1,1,2,3,3,3−ヘプタメチルトリシロキサン、1,3−ジハイドロジェン−1,1,2,2,3,3−ヘキサメチルトリシロキサン、1−ハイドロジェン−1,1,2,2,3,3,3−ヘプタメチルトリシロキサン、1−ハイドロジェン−1,1,2,2,3,3,5,5,5−ノナメチルテトラシロキサン、3−ハイドロジェン−1,1,1,2,2,2,3,4,4,4,5,5,5−デカメチルテトラシロキサン等が挙げられるが、2−ハイドロジェン−1,1,1,2,3,3,3−ヘプタメチルトリシロキサンが特に好ましい。
【0029】
末端二重結合含有化合物は、末端にエチレン性二重結合を有する化合物であれば特に限定されるものではないが、例えば、下記一般式(2’):

CH=CH−Ca’2a’(OC24(OC36-OA (2’)

(式中、
Aは上記のとおりであり、
b及びcは上記のとおりであり、
a’は0〜13であり、a’は0〜8であることが好ましく、a’は0又は1であることがより好ましい)、又は、下記一般式(4’):

CH=CH−Cd’2d’(OC(OC36- Z-B (4’)

(式中、
B、Z及びZは上記のとおりであり、
e、f、g及びhは上記のとおりであり、
d’は0〜18であり、d’は0〜8であることがさらに好ましく、d’は0又は1であることがより好ましい)
で表されるものを使用することができる。
【0030】
一般式(2’)の化合物としては、例えば、CH=CHCHO(CO)12H、CH=CHCHO(CO)13CH、CH=CHCHO(CO)H等のモノアルケニルポリエーテルが挙げられる。
【0031】
一般式(4’)の化合物としては、例えば、エチレングリコールモノアリルエーテル等の脂肪族不飽和結合含有アルコール又はカルボン酸を開始剤とし、酸性又は塩基触媒存在下に、グリシドール、グリシドールの水酸基中の水素原子を上記W基を構成する炭化水素基で置換して得られるグリシジルエーテル、又は、グリシドールとグリシジルエーテルの混合物を開環(共)重合して得ることができる。開環(共)重合は公知の方法に従って行うことができる。グリシドール及びグリシジルエーテルの混合物を共重合するとランダムコポリマーに対応するものを得ることができ、片方を重合させた後もう一方を添加して重合させることによりブロックコポリマーに対応するものを得ることができる。2種類以上のグリシジルエーテルを用いることも可能である。
【0032】
また、一般式(4’)の化合物は、上記の脂肪族不飽和結合含有アルコール又はカルボン酸を開始剤とし、酸性又は塩基触媒存在下にグリシドールを開環重合した後、所定量の水酸化アルカリを投入し、分子鎖末端をアルカリアルコラート化してからハロゲン化炭化水素と反応させ、水酸基中の水素原子を必要に応じて部分的に炭化水素基で置換する、所謂ウィリアムソンのエーテル合成反応によっても製造することができる。
【0033】
酸性重合触媒としては、BF3・OEt2、HPF6・OEt2、TiCl4、SnCl4、硫酸、PhCOSbF6、過塩素酸、フルオロ硫酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸等のルイス酸が挙げられる(ここで、Etはエチル基、Phはフェニル基を示す)。塩基性重合触媒としては、LiOH、NaOH、KOH、CsOH等の金属水酸化物、Li、Na、K、Cs等のアルカリ金属単体又はこれらの水銀アマルガム、一般式ROM1(R:アルキル基、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、M1:アルカリ金属)で表わされる金属アルコラート、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の金属水素化物、n−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、ペンタジエニルカリウム、ナフタレンカリウム、グリニャール試薬等の有機金属化合物等が挙げられる。これらの中では、アルカリ金属単体、金属水酸化物、金属アルコラートや有機金属化合物が、高活性で好ましく、中でも、K、KOH、CsOH、カリウム水素化物、カリウムメトキシド、カリウムイソプロポキシド、カリウム-t-ブトキシドが、利便性と高活性を兼備した触媒種として特に好ましい。触媒量は、官能基の1モル当量に対して、0.01〜2モル当量が好ましく、0.03〜1.0モル当量が更に好ましく、0.05〜0.8モル当量が特に好ましい。
【0034】
溶媒は、用いても、用いなくてもよいが、触媒種、触媒量、グリシドールの添加量により、反応系が著しく高粘度又は固体状、ないし不均一なスラリー混合物となる場合は、適当な溶媒を用いてその中で重合を行うことができる。
【0035】
重合温度は、使用する触媒の重合活性や、官能基の濃度等により、適宜決定すればよいが、−78〜220℃、−30〜150℃がより好ましい。
【0036】
なお、一般式(4’)の化合物のZ及びZの前後に少量のエチレンオキシ基及び/又はプロピレンオキシ基が存在していてもよい。これらの基は酸化に対して不安定であり容易に分解してカルボニル官能性分解生成物を与えるので、ポリグリセロール基1モル当量に対して0.5モル当量以下であることが好ましく、0.2モル当量以下であることが更に好ましい。これらは上記の重合反応中に所定量のエチレンオキシド及び/またはプロピレンオキシドを添加し、共重合することにより容易に製造できる。
【0037】
ヒドロシリル化反応触媒としては、例えば、白金系触媒、ロジウム系触媒、パラジウム系触媒が挙げられる。これらの中でも、付加重合を著しく促進することから白金系触媒が好ましく、具体的には、微粒子状白金,白金担持シリカ微粉末,白金担持活性炭,塩化白金酸,塩化白金酸のアルコール溶液,白金−アルケニルシロキサン錯体,白金−オレフィン錯体,白金−カルボニル錯体が例示され、白金−アルケニルシロキサン錯体が特に好ましい。このアルケニルシロキサンとしては、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、これらのアルケニルシロキサンのメチル基の一部をエチル基やフェニル基等に置換したアルケニルシロキサン、これらのアルケニルシロキサンのビニル基をアリル基やヘキセニル基等に置換したアルケニルシロキサンが例示される。これらの中でも、錯体としての安定性が良好であることから、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンが好ましい。また、この白金−アルケニルシロキサン錯体の安定性を向上させるために、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ジアリル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ジビニル−1,3−ジメチル−1,3−ジフェニルジシロキサン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラフェニルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン等のアルケニルシロキサンやジメチルシロキサンオリゴマー等のオルガノシロキサンオリゴマーを添加して液状触媒とすることが好ましい。これらの中でもアルケニルシロキサンが好ましい。
【0038】
本発明では、油中においてin situで合成された界面活性剤と油との混合物を乳化して乳化物を製造する。乳化は、前記混合物を水性媒体と組み合わせて行われる。乳化物の形態としては、水中油型エマルジョン、又は、油中水型エマルジョンのいずれでもよいが、水中油型エマルジョンの形態であることが好ましい。
【0039】
前記水性媒体としては、水、又は、常温(25℃)において水と混和性の有機溶媒(水混和性有機溶媒)及び水との混合物を使用することができる。好適には、(C)水性媒体の75質量%以上が水であることが好ましく、90質量%以上が水であることが好ましく、最も好適には、(C)水性媒体が実質的に水である。なお、本願乳化物を化粧料用途等に使用する場合、水は清浄であることが好ましく、精製水、イオン交換水、天然または人工的に加熱処理または滅菌処理等されたミネラルウォーターが例示される。
【0040】
常温(25℃)において水と混和性の有機溶媒としては、例えば、エタノール、イソプロパノール等の2〜6の炭素原子を有するモノアルコール類;2〜20の炭素原子、好ましくは、2〜10の炭素原子、より好ましくは2〜6の炭素原子を有するポリオール類、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジプロピレングリコール、及びジエチレングリコール;グリコールエーテル類(特に、3〜16の炭素原子を有するもの)、(例えば、モノ−、ジ−、トリプロピレングリコールの(C1-C4)アルキルエーテル類、及び、モノ−、ジ−、トリエチレングリコールの(C1-C4)アルキルエーテル類);並びにこれらの混合物が例示される。
【0041】
水性媒体の量は、特に限定されるものではないが、油100重量部に対して、10〜10000重量部の範囲、好ましくは100〜10000重量部の範囲、更に好ましくは300〜10000重量%の範囲とすることができる。
【0042】
乳化手段は特に限定されるものではなく、例えば、ホモミキサー,パドルミキサー,ヘンシェルミキサー,ホモディスパー,コロイドミキサー,プロペラ攪拌機,ホモジナイザー,インライン式連続乳化機,超音波乳化機,真空式練合機,コロイドミル,コンビミキサー等の公知の撹拌・混合装置や乳化機を適宜使用することができる。
【0043】
本発明では、(B)シリコーン系界面活性剤以外のシリコーン系界面活性剤、及び/又は、高級炭化水素基を有する界面活性剤等の他の界面活性剤を乳化物に添加することができる。このような他の界面活性剤としては、上記一般式(1)以外のポリエーテル変性(ポリ)シロキサン、上記一般式(3)以外のポリグリセロール変性(ポリ)シロキサン、上記一般式(3)以外のポリ(グリシジルエーテル)変性(ポリ)シロキサン、上記一般式(3)以外のポリ(グリシジルエーテル)−ポリグリセロール変性(ポリ)シロキサン等のシリコーン系界面活性剤;ヘキシルベンゼンスルホン酸,オクチルベンゼンスルホン酸,デシルベンゼンスルホン酸,ドデシルベンゼンスルホン酸,セチルベンゼンスルホン酸,ミリスチルベンゼンスルホン酸やそのナトリウム塩等のアニオン系界面活性剤;オクチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド,ドデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド,ヘキサデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド,オクチルジメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド,デシルジメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド,ジオクタデシルジメチルアンモニウムヒドロキシド,牛脂トリメチルアンモニウムヒドロキシド,ヤシ油トリメチルアンモニウムヒドロキシド等のカチオン系界面活性剤;ポリオキシアルキレンアルキルエーテル,ポリオキシアルキレンアルキルフェノール,ポリオキシアルキレンアルキルエステル,ポリオキシアルキレンソルビタンエステル,ポリエチレングライコール,ポリプロピレングライコール,ジエチレングライコールトリメチルノナノールのエチレンオキサイド付加物やポリエステル系のノニオン系界面活性剤;これらの界面活性剤の二種以上の混合物が例示される。その添加量は限定されないが、油100重量部に対し0.01〜50重量部の範囲内であることが好ましく、0.1〜30重量部の範囲内がより好ましい。
【0044】
前記他の界面活性剤の添加のタイミングは特に限定されるものではないが、油中で界面活性剤を合成した後、又は、合成する前に添加することが好ましい。
【0045】
本発明では、本発明の目的を損なわない範囲であれば、任意の添加剤として公知である他の成分を、乳化前又は乳化後に、添加・配合することも可能である。このような添加剤としては、加水分解性オルガノシラン,シリカ,pH調整剤,防腐剤,防カビ剤,防錆剤,増粘剤が例示される。これらの成分は、単独あるいは複数組合せて使用しても良い。
【0046】
また、本発明では、界面活性剤を合成する前に、油中に水性媒体の一部を予め混合することも可能である。あらかじめ混合する水性媒体量は制限されないが、油100重量部に対し、0.01〜50重量部が好ましく、0.01〜20重量部がより好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明により製造された乳化物は、撥水剤、離型剤、潤滑剤、繊維処理剤、皮革処理剤、人工皮革処理剤、化粧品添加剤、化粧品、艶出し剤、消泡剤、表面処理剤、コーテイング剤等として有用である。特に、化粧料用の添加剤又は化粧料そのものとして使用されることが好ましい。
【実施例】
【0048】
以下、本発明を実施例によって詳しく説明する。実施例中、「部」は重量部を示している。ポリオルガノシロキサンの粘度、並びに、エマルジョンの平均粒径及びエマルジョンの経時安定性は下記の方法で測定した。
【0049】
[ポリオルガノシロキサンの粘度]
各ポリオルガノシロキサンの粘度は、回転粘度計(ローターNo.3)を用い、温度25℃で測定した。
【0050】
[エマルジョンの平均粒径]
レーザー散乱式サブミクロン粒子分析装置[コールターエレクトロニクス社製のCOULTER N4型]により、平均粒径を測定した。
【0051】
[エマルジョンの経時安定性]
生成したエマルジョン100gを100ccのガラス瓶に入れ、25℃で静置して定期的に肉眼で観察し、エマルジョンから油相の分離が認められるまでの期間に応じ、以下の0〜5の6段階で評価した。
【0052】
0:エマルジョンを形成しない
1:1週間以内に油相が分離する
2:1週間経過後、1ヶ月以内に油相が分離する
3:1ヶ月以上油相が分離しない
4:2ヶ月以上油相が分離しない
5:4ヶ月以上油相が分離しない
【0053】
[実施例1]
末端水酸基ポリオルガノシロキサン(粘度約100mPa・s)50部に、2−ハイドロジェン−1,1,1,2,3,3,3−ヘプタメチルトリシロキサン2.6部とCH=CHCHO(CO)12Hで表されるモノアルケニルポリエーテルを9.4部を添加し、均一になるまで混合した。70℃まで加温後、11%白金・1,3−ジビニル−テトラメチルジシロキサン錯体溶液を0.04部添加し、70℃で15分反応させ、下記式(1):
【化5】

で示されるHLB13.6のポリエーテル変性シロキサンNo.1を得た。冷却後、水10部を添加し、T.Kホモディスパー(特殊機化工業製)を用い、約2500rpmで15分間乳化を行った。その後、水27.96部を添加し、希釈することで乳化物を得た。得られたエマルジョンの粒子径は、約120nmであり、2ヶ月以上安定であった。
【0054】
[実施例2]
実施例1で用いた末端水酸基ポリオルガノシロキサン(粘度約100mPa・s)50部の代わりに末端トリメチルシリル基ポリオルガノシロキサン(粘度約100mPa・s)50部を用いた以外は、実施例1と同様に行い乳化物を得た。得られた乳化物は、粒子径が250nmであり、2ヶ月以上安定であった。
【0055】
[実施例3]
実施例1で用いた末端水酸基ポリオルガノシロキサン(粘度約100mPa・s)50部の代わりに末端水酸基ポリオルガノシロキサン(粘度約2300mPa・s)50部を用いた以外は、実施例1と同様に行い乳化物を得た。得られた乳化物は、粒子径が160nmであり、2ヶ月以上安定であった。
【0056】
[実施例4]
実施例1で用いたCH=CHCHO(CO)12Hで表されるモノアルケニルポリエーテル9.4部の代わりに、CH=CHCHO(CO)13CHを8.8部用い下記式(2):
【化6】

で示されるポリエーテル変性シロキサンNo.2を生成し、転相のための水を14部用い、希釈のための水を24.56部用いた以外は、実施例1と同様に行い乳化物を得た。得られた乳化物は、粒子径が150nmであり、2ヶ月以上安定であった。
【0057】
[実施例5]
実施例1で用いたCH=CHCHO(CO)12Hで表されるモノアルケニルポリエーテル9.4部の代わりに、CH=CHCHO(CO)Hを7.7部用い、2−ハイドロジェン−1,1,1,2,3,3,3−ヘプタメチルトリシロキサンを3.4部用い、下記式(3):
【化7】

で示されるポリエーテル変性シロキサンNo.3を生成し、転相のための水を10部用い、希釈のための水を28.86部用いた以外は、実施例1と同様に行い乳化物を得た。得られた乳化物は、粒子径が181nmであり、1ヶ月安定であった。
【0058】
[実施例6]
実施例1で用いた末端水酸基ポリオルガノシロキサン(粘度約100mPa・s)50部の代わりに末端水酸基ポリオルガノシロキサン(粘度約500mPa・s)50部を用い、転相に用いる水を7.5部、希釈に用いる水を30.46部に代えた以外は、実施例1と同様に行い乳化物を得た。得られた乳化物は、粒子径が281nmであり、2ヶ月以上安定であった。
【0059】
[実施例7]
末端水酸基ポリオルガノシロキサン(粘度約100mPa・s)50部に、2−ハイドロジェン−1,1,1,2,3,3,3−ヘプタメチルトリシロキサン2.6部とCH=CHCHO(CO)12Hで表されるモノアルケニルポリエーテルを9.4部を添加し、均一になるまで混合した。70℃まで加温後、11%白金・1,3−ジビニル−テトラメチルジシロキサン錯体溶液を0.04部添加し、70℃で15分反応させ、HLB13.6のポリエーテル変性シロキサンNo.1を得た。冷却後、水10部を添加し、コロイドミルを用い、乳化を行った。その後、水27.96部を添加し、希釈することで乳化物を得た。得られたエマルジョンの粒子径は、約114nmであり、2ヶ月以上安定であった。
【0060】
[実施例8]
末端水酸基ポリオルガノシロキサン(粘度約100mPa・s)50部に、MeSiO−(SiMeO)1.9−SiHMeO−SiMe(式中、Meは−CH基を表す)で示されるケイ素原子結合水素原子含有シロキサン3.25部とCH=CHCHO(CO)13CHで表されるモノアルケニルポリエーテルを7.9部を添加し、均一になるまで混合した。70℃まで加温後、11%白金・1,3−ジビニル−テトラメチルジシロキサン錯体溶液を0.04部添加し、70℃で15分反応させ、下記平均式(4):
【化8】

で示されるポリエーテル変性シロキサンNo.4を得た。冷却後、水10部を添加し、T.Kホモディスパーを用い、約2500rpmで15分間乳化を行った。その後、水28.61部を添加し、希釈することで乳化物を得た。得られたエマルジョンの粒子径は、約216nmであり、1週間安定であった。
【0061】
[実施例9]
末端水酸基ポリオルガノシロキサン(粘度約100mPa・s)50部に、2−ハイドロジェン−1,1,1,2,3,3,3−ヘプタメチルトリシロキサン1.45部と下記式(5):
【化9】

で表される末端アリル基ポリグリシジルメチルエーテルを10.2部を添加し、均一になるまで混合した。70℃まで加温後、11%白金・1,3−ジビニル−テトラメチルジシロキサン錯体溶液を0.04部添加し、70℃で15分反応させ、下記式(6):
【化10】

で示されるポリグリシジル変性シロキサンNo.5を得た。冷却後、水15部を添加し、T.Kホモディスパーを用い、約2500rpmで15分間乳化を行った。その後、水23.31部を添加し、希釈することで乳化物を得た。得られたエマルジョンの粒子径は、約278nmであり、4ヶ月以上安定であった。
【0062】
[実施例10]
末端水酸基ポリオルガノシロキサン(粘度約100mPa・s)50部に、2−ハイドロジェン−1,1,1,2,3,3,3−ヘプタメチルトリシロキサン1.5部と下記式(7):
【化11】

で表される末端アリル基ポリグリシジルメチルエーテル−ポリグリシドールを10.2部を添加し、均一になるまで混合した。70℃まで加温後、11%白金・1,3−ジビニル−テトラメチルジシロキサン錯体溶液を0.04部添加し、70℃で15分反応させ、下記式(8):
【化12】

で示されるポリグリシジル変性シロキサンNo.6を得た。冷却後、水20部を添加し、T.Kホモディスパーを用い、約2500rpmで15分間乳化を行った。その後、水18.26部を添加し、希釈することで乳化物を得た。得られたエマルジョンの粒子径は、約584nmであり、2ヶ月以上安定であった。
【0063】
[比較例1]
2−ハイドロジェン−1,1,1,2,3,3,3−ヘプタメチルトリシロキサン2.6部とCH=CHCHO(CO)12Hで表されるモノアルケニルポリエーテル9.4部を混合後、70℃まで加温し、11%白金・1,3−ジビニル−テトラメチルジシロキサン錯体溶液を0.04部添加し、70℃で15分反応させることで実施例1と同じポリエーテル変性シロキサンを得た。末端水酸基ポリジメチルシリコーン(粘度約100mPa・s)50部を添加後、水10部を添加し、T.Kホモディスパーを用い、約2500rpmで15分間乳化を行ったが乳化できなかった。
【0064】
[比較例2]
比較例1と同様の手順でポリエーテル変性シロキサンを得た後、末端水酸基ポリジメチルシロキサン(粘度約100mPa・s)50部を添加した。転相水を15部を添加し、T.Kホモディスパーを用い、約2500rpmで15分間乳化を行った。22.96部の水で希釈し、得られた乳化物の粒子径は300nmで、4日後に分離が発生していた。
【0065】
[比較例3]
末端水酸基ポリジメチルシロキサン(粘度約100mPa・s)50部にポリオキシエチレン(7モル)イソデシルエーテルを9.5部添加し、均一になるまで撹拌した。水10部を添加し、T.Kホモディスパーを用い、約2500rpmで15分間乳化を行ったが乳化できなかった。
【0066】
[比較例4]
末端水酸基ポリジメチルシロキサン(粘度約500mPa・s)50部にポリオキシエチレン(7モル)イソデシルエーテルを9.5部添加し、均一になるまで撹拌した。水7.5部を添加し、T.Kホモディスパーを用い、約2500rpmで15分間乳化を行ったが乳化できなかった。
【0067】
[比較例5]
MeSiO−(SiMeO)1.9−SiHMeO−SiMe(式中、Meは−CH基を表す)で示されるケイ素原子結合水素原子含有シロキサン3.25部とCH=CHCHO(CO)13CHで表されるモノアルケニルポリエーテルを7.9部を添加し、混合した。70℃まで加温後、11%白金・1,3−ジビニル−テトラメチルジシロキサン錯体溶液を0.04部添加し、70℃で15分反応させ、実施例8と同じポリエーテル変性シロキサンを9.0部得た。末端水酸基ポリジメチルシリコーン(粘度約100mPa・s)50部を添加後、水10部を添加し、T.Kホモディスパーを用い、約2500rpmで15分間乳化を行ったが乳化できなかった。
【0068】
実施例1〜実施例10の各成分、乳化手段および得られたエマルジョンの平均粒子径および安定性の関係について表1及び表2に示す。また、比較例1〜比較例5の各成分、乳化手段およびおよび得られたエマルジョンの平均粒子径および安定性について表3に示す。なお、表中、「部」は重量部を表す。
【0069】
【表1】

【0070】
【表2】

【0071】
【表3】

【0072】
表1及び2に示されるとおり、(A)ポリオルガノシロキサン中で(B)シリコーン系界面活性剤である各ポリエーテル変性シリコーンを合成した場合、所定の転相水を加えて、T.Kホモディスパーまたはコロイドミルによる乳化処理を行うことにより、経時安定性に優れるエマルジョンを得ることができた。特に、(B)成分を合成する際に2−ハイドロジェン−1,1,1,2,3,3,3−ヘプタメチルトリシロキサンを原料としてポリエーテル変性シリコーンを合成した場合、得られたエマルジョン(実施例1〜7、9及び10)は、25℃で静置して1ヶ月以上油相分離は認められなかった。これに対して、表3に示す通り、(A)ポリオルガノシロキサン中で(B)成分の合成を行なわなかった場合、又は、(B)成分としてノニオン系の界面活性剤を別途添加した場合、所定の転相水を加えて、T.Kホモディスパーによる乳化処理を行っても、乳化できない、若しくは、実施例に比して経時安定性に劣るエマルジョンしか得ることができなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油中で界面活性剤を合成することにより得られた、油及び界面活性剤の混合物を乳化することを特徴とする乳化物の製造方法。
【請求項2】
前記油が(A)オルガノポリシロキサンである、請求項1記載の乳化物の製造方法。
【請求項3】
前記界面活性剤が(B)シリコーン系界面活性剤である、請求項2記載の乳化物の製造方法。
【請求項4】
前記(B)シリコーン系界面活性剤が、下記一般式(1):

SiO(RSiO)(RXSiO)SiR(1)

{式中、
1は、互いに独立して、水素原子、又は、置換若しくは非置換の1価の炭化水素基を表し;
Xは、互いに独立して、下記一般式(2):

−C2a(OC24(OC36-OA (2)

(式中、
Aは、水素原子、置換若しくは非置換の1価の炭化水素基、又は、−(CO)−R3(式中、Rは置換若しくは非置換の1価の炭化水素基を表す)で表される有機基を表し;
(OC24)及び(OC36)の配列は、ランダム、ブロック、交互のいずれか、又は、それらの組み合わせであり;
aは2〜15、bは0〜100、cは0〜100である)
で表される基を表し;
mは0〜50、nは0〜20であり、
2は、R1又はXであるが、nが0の場合、R2の少なくとも1つはXである}
で表される、請求項3記載の乳化物の製造方法。
【請求項5】
m=0〜6及びn=0〜3である、請求項4記載の乳化物の製造方法。
【請求項6】
前記(B)シリコーン系界面活性剤が、下記一般式(3):

SiO(RSiO)m’(RYSiO)n’SiR(3)

〔式中、
は、互いに独立して、水素原子、又は、置換若しくは非置換の1価の炭化水素基を表し;
Yは、下記一般式(4):

−C2d(OC(OC36-O−Z-B (4)

{式中、
Bは、水素原子、置換若しくは非置換の1価の炭化水素基、又は、−(CO)−R3(式中、Rは置換若しくは非置換の1価の炭化水素基を表す)で表される有機基を表し;
は、下記一般式(5):
【化1】

(式中、
Wは、水素原子、又は、脂肪族不飽和結合を有しない置換若しくは非置換の1価の炭化水素基を表す)
の2価基を表し;
は、下記一般式(6):
【化2】

(式中、Wは、上記のとおりである)
の2価基を表し;
(OC)及び(OC36)、並びに、Z及びZの配列は、ランダム、ブロック、交互のいずれか、又は、それらの組み合わせであり;
dは2〜20、eは0〜100、fは0〜100、gは0〜200、hは0〜200、1≦g+hである}
で表される基を表し;
m’は0〜50、n’は0〜20であり、
は、R又はYであるが、n’が0の場合、Rの少なくとも1つはYである〕
で表される、請求項3記載の乳化物の製造方法。
【請求項7】
m’=0〜6及びn’=0〜3である、請求項6記載の乳化物の製造方法。
【請求項8】
前記(B)シリコーン系界面活性剤を、ケイ素原子結合水素原子含有シロキサン及び末端二重結合含有化合物をヒドロシリル化反応触媒存在下でヒドロシリル化反応させて生成する、請求項3乃至7のいずれかに記載の乳化物の製造方法。
【請求項9】
前記(A)ポリオルガノシロキサンの粘度が、25℃で50〜3000mPa・sである、請求項2乃至8のいずれかに記載の乳化物の製造方法。

【公開番号】特開2010−142795(P2010−142795A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−326577(P2008−326577)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【出願人】(000110077)東レ・ダウコーニング株式会社 (338)
【Fターム(参考)】