説明

乳酸またはグリコール酸オリゴマー/誘導体を使用した食品の制御された酸性化

本発明は乳製品、肉等の食品の制御された酸性化に関する。酸性化により、食品は有害な微生物カルチャーから保護され、そして食物はある種の食感、例えば乳製品の凝固または乾燥ソーセージの乾燥化および食感の形成を得ることができる。本発明は制御された様式で食品を酸性化する新規方法を含んでなる。乳酸またはグリコール酸オリゴマー/誘導体およびそれらの塩または誘導体を使用することにより、この制御された酸性化が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳製品、肉等のような食品の制御された酸性化(acidification)に関する。食品の酸性化は食品にある種の風味および食感(texture)を与えるために、例えば乳製品の凝固、または乾燥ソーセージの乾燥および食感の形成に使用される。それに加えて、酸性化は細菌による腐敗から食物を保護する。また本発明は制御された酸性化法により酸性化される食品を含む。
【背景技術】
【0002】
乳製品および他の食品のpHレベルを下げることは発酵工程の一部であり、これは特定の食感(チーズ、乾燥ソーセージ)を得るために必要であり、かつ/または有害な微生物活性に対して食品を保護するために使用される。これらの理由から、5またはさらに4.5よりも低いpHがしばしば必要である。
【0003】
pHレベルを下げることは:
1)直接酸性化:リン酸、乳酸、酢酸、クエン酸等のような(食品級の)酸を食品に加えることにより、あるいは
2)間接酸性化:酸のスターターカルチャーを加える(細菌による酸性化)か、またはアシドゲン(acidogen)または酸放出剤を加える(間接的な化学的酸性化)ことにより行うことができる。これらの方法は組み合わせて適用することもできる。
【0004】
食物の酸性化工程中、酸性化速度を制御することが重要である。例えばチーズ作成中の早すぎるpH低下は、凝乳中に大量の乳清の封入を導く。これにより望ましくない苦く、堅いがもろいチーズが生成する。一方、酸性化が遅すぎると、例えば殺菌処理により排除できなかったバクテリオファージにより微生物スターターが影響を受ける時、品質の悪い凝乳が得られる。さらに酸性化が遅すぎると、病原菌が成長し始める。
【0005】
肉ペーストの場合、pHの低下が早すぎる時、早期に堅い食感を導き、これはケーシングに肉を詰めることをさらに難しくする。
【0006】
酸性化は、抗菌を目的として食材に食品級の酸を単に添加することと混同してはならない。酸性化を用いることは、食材の調製中のpHの低下を意味するので、ヨーグルトまたはチーズを得るためにミルクを酸性化するような、あるいは挽いた肉の酸性化により乾燥ソーセージを調製するような、食感と味の変化が達成される。
【0007】
チーズの直接的な化学的酸性化は、多数の特許公報で述べられてきた。特許文献1は数種のチーズを含む食品の酸性化を記載しているが、豆腐およびパン、菓子製品(bakery product)も記載している。その明細書では、過酸化水素(H)と脂肪族C2−6ジオンとの反応により酸を形成する方法について記載されている。この方法の欠点は過酸化水素が大変反応性であり、そしてジオンと反応するだけでなく、食物とも反応し、または必須材料も酸性化する可能性があり、食物の劣化を導く点である。さらに食物中の過酸化水素は一般に望ましくない。
【0008】
特許文献2では、限外濾過および乳酸、クエン酸、ソルビン酸、リン酸のような食品級の酸による直接的酸性化との組み合わせが述べられている。さらに酸の直接添加は凝乳形成の制御を可能としない。その上、例えばクエン酸の添加はチーズの味を変える可能性があった。
【0009】
食品級の酸による非乳製品の直接的酸性化ももちろん可能である:特許文献3は熱的滅菌の代替としてタンパク質を含有する肉の類似物のpHを下げるために、無機酸(リン酸)の使用を教示する。特許文献4は4.6以下の内部のpH値を得るための酸性化に、リン酸または有機酸(の組み合わせ)を使用する。
【0010】
これらの直接的な化学的酸性化法に関して特に重要な点は、もちろんpHの制御である:これらの酸を加えることにより製品内にpH勾配を容易に作成でき、これは所望する食感の形成を制御することを難しくする。
【0011】
したがって例えば微生物カルチャーを使用することによる制御された酸性化は、食品を酸性化し、そして所望の食感を得るためにより適する方法である。
【0012】
チーズ、ヨーグルトおよび肉のような食品に、間接的酸性化法として微生物カルチャーを使用することは周知である。例えば特許文献5または特許文献6は、所望する食感の肉を得るために乳酸を生産する微生物を使用することにより、乾燥ソーセージ等のような肉製品の調製を教示する。ここで酸性化は発酵肉製品を得るために不可欠な工程に属する。
【0013】
しかし微生物のスターターカルチャーの使用は、該微生物の増殖を制御することが難しいので逆効果を導く可能性がある。微生物の増殖は温度、塩濃度および「天然」または合成インヒビターの存在に影響され得る。さらに雑菌混入の危険性も引き起こす。したがってある方法が一方では制御されないpH低下の問題を克服し、他方では微生物を使用しないので上に挙げた問題を克服する。故にアシドゲンが酸を制御された方式で放出する間接的な化学的酸性化法が導入された。
【0014】
肉の間接的な化学的酸性化は例えば特許文献7により教示され、これは肉を塩水につけ、そして肉の赤色発色を得るために、固体の酸組成物中にグルコノ−デルタ−ラクトン(今後GDLと呼ぶ)の使用を開示する。GDLはゆっくりと加水分解してグルコン酸となり、pHを下げる。
【0015】
特許文献8は、チーズ作成工程中の水の存在下での粉末ミルクの間接的な化学的酸性化を開示する。この工程で使用されるアシドゲンは、グルコノラクトンおよびグルコヘプトノラクトンに属し、好ましくはグルコノ−デルタ−ラクトンである。グルコノ−デルタ−ラクトンはミルク懸濁液中でグルコン酸へと反応し、そしてこれにより約5.0〜6.6のpH値を生じる。
【0016】
アシドゲンおよび凝固刺激物質としてのグルコノ−デルタ−ラクトンも、他の多数の特許明細書で言及されてきた:改善されたサワークリームを作成するために(特許文献9)、ヨーグルト様の食品の調製において(特許文献10)、およびカッテージチーズの連続生産(特許文献11)。
【0017】
食物を酸性化するためのグルコノ−デルタ−ラクトンの使用は、食品を酸性化するための精緻で簡潔な方法を提供するが、幾つかの欠点もある:
1)グルコノ−デルタ−ラクトンを用いた方法は、例えば以前に記載された従来技術の特許文献1よりも経費がかかる
2)凝固時間を設定できないので、場合によっては望む食感が得られない
3)この方法はグルコン酸またはグルコン酸残渣の形成を導き、これは場合により味に悪影響を及ぼすかもしれない、および
4)GDLは炭素源として微生物に利用されることができ、それに加えてすべての種類の代謝産物が形成される可能性があり、これは味にも悪い影響を及ぼすかもしれない。
【0018】
さらに特許文献12、13、14、15、16、17のような幾つかの特許明細書では、ジラクチドがミルクおよび挽いた肉等の酸性化に使用されている。ジラクチドの使用は加水分解時間、すなわち凝固時間を設定できないので不利である。
【0019】
上記から、食物の味に負の影響を及ぼさず、望ましくない酸を導入しない、費用に対して効果の高い、食品のための十分に制御される化学的酸性化法が必要であることは明白である。
【参考文献】
【0020】
【特許文献1】米国特許第4,328,115明細書
【特許文献2】欧州特許第755630号明細書
【特許文献3】欧州特許第0180281号明細書
【特許文献4】米国特許第4,788,070明細書
【特許文献5】独国特許第804296号明細書
【特許文献6】欧州特許第0641857号明細書
【特許文献7】独国特許第949287号明細書
【特許文献8】米国特許第4,851,237明細書
【特許文献9】独国特許第1,124,238号明細書
【特許文献10】米国特許第4,842,873明細書
【特許文献11】国際公開第9100690号パンフレット
【特許文献12】米国特許第3,340,066明細書
【特許文献13】独国特許第2029192号明細書
【特許文献14】仏国特許第1485051号明細書
【特許文献15】特開平10/279577号公報
【特許文献16】米国特許第4,374,152明細書
【特許文献17】独国特許第1,38,765号明細書
【発明の開示】
【0021】
本発明に従い、そのような酸性化法が見いだされた。すなわち食品の制御された酸性化のための方法が提供され、ここで以下の式:
【0022】
【化1】

【0023】
[式中、RはH、2〜10個の炭素原子を有するアルキル、グリセロイル基、Na、K、Ca2+、Fe2+、Fe3+、Zn2+、Al3+またはMg2+の群から選択される置換基であり、そしてnは1〜50であり、そしてRがHである場合、nは2〜50であり;Rは水素またはメチルであり、そして各Rは独立して選択され得る]
の乳酸またはグリコール酸オリゴマー/誘導体またはそれらの塩が食品に加えられ、そして食品がオリゴマー/誘導体またはそれらの塩の自発的な加水分解により制御された様式で酸性化される。
【0024】
オリゴマーは、乳酸および/またはグリコール酸単位である少なくとも2つの酸単位を含んでなる化合物を意味する。現実的な限界の観点から、オリゴマーは多くても50の酸単位、好ましくは10未満の酸単位、より好ましくは5未満の酸単位を含む。もちろんオリゴマーは置換された誘導体でもよい。置換された誘導体のオリゴマーは、エチル、エチルヘキシルのようなアルキル誘導体、グリセロイル基(CHOH−CHOH−CHO−)誘導体を意味する。可能なオリゴマー塩は、オリゴマーのNa、K、Ca2+、Mg2+、Fe2+、Fe3+、Zn2+、Al3+塩である。一般に乳酸またはグリコール酸単位または誘導体の加水分解で形成される化合物は、グリセロール、エタノール等のような食品として認可されることが保証されるべきである。オリゴマーを使用する利点は、グリコール酸および乳酸の外にさらに形成される化合物が無いことである。
【0025】
本発明の内容では、「オリゴマー/誘導体」は乳酸および/またはグリコール酸単位である少なくとも2つの酸単位を含んでなり、そしてこれらの酸単位はそのような酸単位(乳酸および/またはグリコール酸である)の誘導体であることもできるオリゴマーであるか、あるいは式で定義するようなR基、例えばエチル、エチルヘキシル、グリセロイル基(CHOH−CHOH−CHO−)で誘導化されたモノマーのいずれかを指す。
【0026】
好ましくはRはエチル、グリセロイル基、Na、K、Ca2+またはMg2+である。より好ましくはRはエチル基である;Rは水素またはメチル基であり、そして各Rは独立して選択され得る。換言すると、オリゴマーはグリコール酸単位および乳酸単位の混合物から構成することができる。Rがアルキルである時、これは直鎖、分枝または環状でよい。
【0027】
自発的な加水分解という用語は、加水分解が触媒または酵素の添加無しに起こることを意味する。
【0028】
本発明に従い使用される化合物は、水に直ちに溶解でき、そして添加に際してはpH的に中性である。
【0029】
本発明の酸性化法の利点は、乳酸オリゴマーの加水分解による制御された酸性化が通常は発酵工程で形成される天然の酸を食物に導入する点である。これにより生成物は、従来の方式で調製されたならば形成されるであろう生成物に、より類似するようになる。また当業者は本発明の方法により微生物的に活性な物質の使用を最小にできるか、またはさらに排除できるようになる。したがってこれは食物を安全な様式で酸性化するための方法である。
【0030】
本方法の別の利点は、乳酸およびグリコール酸オリゴマー/誘導体が酸性化に使用できる種類の化合物を提供する点であり、ここで酸性化の速度(pH低下の速度)および最終pHレベルは、その種類の1以上のメンバー、その濃度、および温度、撹拌、添加順序等のような工程のパラメーターを選択することにより選択的に選ぶことができる。さらに塩濃度および製品に必要とされる味も適切なオリゴマーまたは誘導体を選択することにより容易に設定することができる。
【0031】
乳酸およびグリコール酸オリゴマーおよび誘導体の調製は当業者には知られており、そしてここで更に説明する必要はない。
【0032】
乳酸およびグリコール酸オリゴマーは通常、種々の重合度のオリゴマーの混合物を含んでいる。通常、少量の高級(4酸単位より多くを含む)および低級オリゴマー(4酸単位未満を含む)が存在する。またこれらの生成物も本発明の一部である。したがって本発明の内容で例えば2ラクテート単位のオリゴマーと言う時、これには2の平均重合度を有する生成物を含む。また誘導体、直鎖オリゴマー、その塩および誘導体の組み合わせも、本発明において適切に使用することができる。
【0033】
オリゴマーの酸単位の数および/または種類の選択、および混合物中の種々のオリゴマー/誘導体の比率は、加えるアシドゲンまたはアシドゲンの組み合わせの濃度、所望する最終pH値、所望する食感(例えばヨーグルトまたはチーズ)および工程のパラメーターに依存する。当業者は最終生成物およびその生産方法の要件に対して上記選択を適合させる。
【0034】
特定の目的のために、上に挙げたアシドゲンに加えて少量の細菌カルチャーも食物を酸性化し、かつ/または所望の食感を得るために加えることができる。これは例えば食品の味をわずかに適合させるために行うことができる。したがって1つの態様は、乳酸またはグリコール酸オリゴマー/誘導体を用いた間接的な化学的酸性化と、特定の細菌カルチャーを添加することの組み合わせによる食品の酸性化でもある。
【0035】
本発明の方法は、例えばチーズ、ヨーグルト、サワークリームを作成するためのミルクの酸性化に、しかしまた豆腐、ザウワークラウトのような塩漬け野菜、肉、ソーセージおよびパン、菓子製品の酸性化にも使用することができる。したがって本発明は、カッテージチーズ、リコッタ等のような本発明の制御された酸性化法に従い酸性化されたチーズ、ミルク、ヨーグルトおよびサワークリームのような乳製品も含んでなる。また本発明は本発明に記載する方法に従い酸性化された肉または肉を含む製品、パン、菓子製品、大豆製品、ビールおよびザウワークラウトのような塩漬け野菜を含んでなる。
【0036】
本発明の多数の応用を、以下でより詳細に記載する。
【0037】
多数のチーズが知られているので、チーズ作成法の1つではない。しかし細菌による酸性化を使用したチーズ作成法における主要工程の包括的な説明を与えることはできる。すべての工業的に調製されるチーズについて、ほとんどの有害細菌を殺すためにミルクは最初に熱処理(殺菌)にかけられる。この熱処理後、ミルクは冷却され、そしてスターター細菌カルチャーがpH6.5〜6.8でミルクに加えられる。次いでミルクは熟成され、そして凝固工程が凝乳酵素の添加により開始される。凝乳酵素はカゼインミセルの不安定化を引き起こし、これは酸性化と組合わさってミルクを凝乳、カゼインミセルと脂肪滴の混合物および乳清への分離を引き起こす。次いで凝乳は型に入れられ、そして過剰な乳清が圧縮により除去される。この脱水された凝乳は続いて熟成されてさらなる味を生み、そしてさらに脱水され得る。凝乳の形成中、塩および酸が加えられ、そして凝乳は撹拌および加熱にかけられて凝乳の形成が可能となる。またチーズは外側から有害細菌を抑制するために塩水に漬けてもよい。
【0038】
本発明の制御された酸性化法では、細菌カルチャーの代わりに乳酸またはグリコール酸オリゴマー/誘導体が加えられる。殺菌後、ミルクは温度約0℃〜100℃、好ましくは30℃から70℃の間とされ、そして乳酸またはグリコール酸オリゴマー/誘導体が加えられる。オリゴマー/誘導体の量は所望する最終pHにより決定し、そして所望するチーズの種類およびR基(H、エチル、グリセロイル、Na、K、Ca2+またはMg2+)に依存する。ミルクはオリゴマー/誘導体の完全な溶媒和まで撹拌される。pHは乳酸オリゴマーの加水分解による乳酸の制御された形成により低下する。30分から1日過ぎると、よく切断できる凝乳が得られる。上記のように、オリゴマー/誘導体の組み合わせをアシドゲンとして加えてもよい。
【0039】
一般にヨーグルトを作成するためは、ミルクまたは豆乳を通常は殺菌し、次いで冷却する。ミルクまたは豆乳は80℃未満、好ましくは30℃未満の温度に維持される。続いてアシドゲンは、チーズの種類および所望の最終pHにより決定される量で加えられる。
【0040】
肉ペーストを作成するために、肉を所望する程度の細かさに挽く。次いで肉の種類に依存して他の材料および/または添加物を混合しながら加える。共通する材料は塩化ナトリウム、デキストロースおよびスパイスである。酸性化剤を粉末状または溶液のいずれかで加える。アシドゲンは一般に肉の0.5〜3%の酸となる量で加える。肉ペーストは約6℃未満、好ましくは0℃未満の温度に維持すべきである。保存前または後、肉をケーシング中に詰めることができる。所望により、次いで肉を燻製室に貯蔵することができる。
【0041】
ザウワークラウトは白キャベツを切り、そして本発明に従いアシドゲンを加えることにより調製することができる。
実施例
【実施例1】
【0042】
水中の酸性化法
この実験に従い、アシドゲン水溶液のpHの低下を20℃および70℃で測定する。これらの実験には、20℃の実験用に100mlのフラスコを、そして70℃の実験には1.5リットルの二重壁ガラス容器を使用した。温度は水浴で制御し、そしてpHはpHメーターCG387型またはアップリコン(Applikon)のBiowatch pHコントローラーを用いて測定した。市販のエステルを使用した:
EL:乳酸エチル
EL2:エチルラクトイルラクテート99.5%
EL3:エチルラクトイルラクトイルラクテート94%
EL4:エチルラクトイルラクトイルラクトイルラクテート60%
GDL:グルコノ−デルタ−ラクトン(比較)
diL:ジラクチド(比較)
図1および2は、それぞれ20℃および70℃でEL、EL2、EL3、EL4、GDLおよびdiLを含む水のpHの低下を示す。これらのデータから、化学的酸性化がこの種の化合物で達成されることが明らかである。
【実施例2】
【0043】
ミルクまたは豆乳の酸性化
アシドゲンであるジラクチド(プラックバイオケム(Purac Biochem)B.V.のPurasorb(商標)DL−ラクチド、エチルラクトイルラクテート(EL2、99.5%)、エチルラクトイルラクトイルラクテート(EL3、94%)およびグルコノ−デルタ−ラクトン(GDL)を完全脂肪乳(例えばFriesche Vlag(脂肪))または豆乳(例えばAlpro(商標))に0.6または1.2重量%の量で加えた。ミルク懸濁物はそれぞれ0℃、30℃または80℃に維持し、そして乳酸オリゴマーの溶液が完成するまで撹拌する。撹拌時間はすべてのサンプルで同じである。pHを乳酸オリゴマーの添加前、および添加後に測定し、pHを数日監視する。ヨーグルトでは所望の最終pH値は5未満であり、そして好ましくは約4〜4.5の間である。
【0044】
酸性化を図3(豆乳、0℃)、4(ミルク、30℃)および5(豆乳、30℃)、6(ミルク、80℃)および7(豆乳、80℃)にそれぞれ示す。80℃での測定は最大のpH低下の調査するために行った。この実験において、80℃でのpH測定は4時間後に開始した。
【0045】
表1では、上に述べた温度でpHレベルが<4.75に達するために必要だった時間が、幾つかのサンプルについて与えられる:
【0046】
【表1】

【0047】
これらのデータから、diLおよびGDLが大変早い加水分解を有すると結論づけることができる。これは凝固時間を設定することを難しくする。この結果は、酸性化の時間(そしてすなわち凝固)が30℃で1.2重量%のEL2またはEL3を加えた場合幾分長いことを教示する。これらのデータは本発明のアシドゲン、その濃度および操作温度を選択することにより、酸性化を制御できることを示す。
【実施例3】
【0048】
肉ぺーストの酸性化
この実験では肉ペーストの酸性化を試験した。ペーストを酸性化し、そして次いでケーシングに詰める。酸性化(そしてすなわち凝固)が早く起こりすぎないことが重要である。早く起こりすぎる場合、肉をケーシングに詰めることは不可能になる。
【0049】
【表2】

【0050】
これらの材料をよく混合し、そしてペーストを20℃に維持する、次いで酸性化剤GDLおよびEL2を加えた。酸性化剤は予め溶解しなかった。酸性化剤および肉を十分に混合した後(ブレンダー中で約1分間)、ペーストを−1℃、6℃および20℃に冷却した。
【0051】
上記と同じバッチのエチルラクトイルラクテート(EL2)およびGDLを、この試験に使用した。3種の異なる肉のペーストを作成した:ブランク(酸を加えない)、0.8重量%のEL2を含むペーストおよび0.4重量%のGDLを含む肉のペースト。これらの肉のペーストを−1℃、6℃および20℃で一晩保存した(ケーシング中)。以下の結果が得られた(表3):
【0052】
【表3】

【0053】
24時間の保存後、表3からのソーセージを調理し、そしてpHを再度測定した。結果を表4に与える:
【0054】
【表4】

【0055】
2回目の調理後、EL2を加えた肉のペーストに基づくソーセージのpHは変化しなかった。市販の燻製したソーセージは5.1から5.3の間のpHを有した。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】請求項1のものを含め、20℃の水中で種々の酸形成化合物の経時的なpH値の変化を記載する。
【図2】請求項1のものを含め、70℃の水中で種々の酸形成化合物の経時的なpH値の変化を記載する。
【図3】0℃の豆乳中、0.6重量%のジラクチドの経時的なpH値の変化を記載する。
【図4】30℃のミルク中、1.2重量%のグルコノ−デルタ−ラクトン(GDL)、ジラクチド(diL)、エチルラクトイルラクテート(EL2)およびエチルラクトイルラクトイルラクテート(EL3)の経時的なpH値の変化を記載する。
【図5】30℃の豆乳中、1.2重量%のグルコノ−デルタ−ラクトン(GDL)、ジラクチド(diL)およびエチルラクトイルラクトイルラクテート(EL3)の経時的なpH値の変化を記載する。
【図6】80℃のミルク中、1.2重量%のグルコノ−デルタ−ラクトン(GDL)、ジラクチド(diL)、エチルラクトイルラクテート(EL2)およびエチルラクトイルラクトイルラクテート(EL3)の経時的なpH値の変化を記載する。(pH測定は4時間後に開始した)
【図7】80℃の豆乳中、グルコノ−デルタ−ラクトン(GDL)、ジラクチド(diL)、エチルラクトイルラクテート(EL2)およびエチルラクトイルラクトイルラクテート(EL3)の経時的なpH値の変化を記載する。(pH測定は4時間後に開始した)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式:
【化1】

[式中、RはH、2〜10個の炭素原子を有するアルキル、グリセロイル、Na
、Ca2+、Fe2+、Fe3+、Zn2+、Al3+またはMg2+の群から選択される置換基であり、そしてnは1〜50であり、そしてR1がHである場合、nは2〜50であり;Rは水素またはメチルであり、そして各Rは独立して選択され得る]
の乳酸またはグリコール酸オリゴマー/誘導体またはそれらの塩が食品に加えられ、そして食品がオリゴマー/誘導体またはそれらの塩の自発的な加水分解により制御された様式で酸性化される、食品の制御された酸性化法。
【請求項2】
がエチル基である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
がNa、K、Mg2+またはCa2+である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
nが10未満である、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
nが5未満である、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
食品が乳製品である、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
食品がチーズ、ミルク、ヨーグルトまたはサワークリームである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
食品が肉または肉含有製品である、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
食品がパン、菓子製品、大豆製品、ビールまたは塩漬け野菜である、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
食品がザウワークラウトである、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに従い酸性化した食品。
【請求項12】
請求項1〜7のいずれかに従い酸性化した乳製品。
【請求項13】
請求項1〜5および8のいずれかに従い酸性化した肉または肉含有製品。
【請求項14】
請求項1〜5および9のいずれかに従い酸性化したパン、菓子製品、大豆製品、ビールまたは塩漬け野菜。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2006−515175(P2006−515175A)
【公表日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−562116(P2004−562116)
【出願日】平成15年12月19日(2003.12.19)
【国際出願番号】PCT/NL2003/000913
【国際公開番号】WO2004/056203
【国際公開日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【出願人】(593078556)
【Fターム(参考)】