乾式ガス精製設備及び石炭ガス化複合発電設備
【課題】 選択酸化反応によるアンモニアの分解を良好に行い得るとともに、温度や圧力の昇降に対する影響、後続機器への影響に配慮して可燃ガスの精製を乾式で実現し得る乾式ガス精製設備及びこれを有する石炭ガス化複合発電設備を提供する。
【解決手段】 精製する可燃ガスの温度を、露点を上回る温度に維持して運転する乾式法により、前記可燃ガス中の硫化物を除去する脱硫装置21と、脱硫装置21で脱硫された前記可燃ガス中のアンモニア分を、アンモニア分解触媒を用いて200℃乃至500℃の反応温度で選択酸化反応により分解するアンモニア分解装置23と、アンモニア分解装置23の上流側に配設され、アンモニア分解装置23の入口側の可燃ガスの温度が、前記選択酸化反応の反応温度から前記選択酸化反応による温度上昇分を差し引いた温度になるように脱硫後の前記可燃ガスの温度を調整する温度調整装置22とを有する。
【解決手段】 精製する可燃ガスの温度を、露点を上回る温度に維持して運転する乾式法により、前記可燃ガス中の硫化物を除去する脱硫装置21と、脱硫装置21で脱硫された前記可燃ガス中のアンモニア分を、アンモニア分解触媒を用いて200℃乃至500℃の反応温度で選択酸化反応により分解するアンモニア分解装置23と、アンモニア分解装置23の上流側に配設され、アンモニア分解装置23の入口側の可燃ガスの温度が、前記選択酸化反応の反応温度から前記選択酸化反応による温度上昇分を差し引いた温度になるように脱硫後の前記可燃ガスの温度を調整する温度調整装置22とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は乾式ガス精製設備及び石炭ガス化複合発電設備に関し、特に石炭ガス化ガス等の可燃ガス(炭素原子を含む可燃化合物、硫化物、アンモニアを含むガス。以下同じ)中のアンモニアを選択酸化反応により分解するアンモニア分解装置を有するものに適用して有用なものである。
【背景技術】
【0002】
石炭は世界の広い地域に存在し、可採埋蔵量が多く、価格が安定しているため、供給安定性が高く発熱量あたりの価格が低廉である。かかる石炭を燃料とする火力発電の一つの方式として、石炭ガス化複合発電(IGCC:Integrated Coal Gasfication Combined Cycle)が知られている。石炭ガス化複合発電では、石炭ガス化ガスを燃料としてガスタービンを駆動して電力を得ると共に、ガスタービンの排気熱を回収して蒸気を発生させ、発生した蒸気により蒸気タービンを駆動して電力を得ている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
石炭ガス化炉で発生する石炭ガス化ガスには硫化物やアンモニア等の不純物、後続機器に対して影響を与える不純物、微量成分が含まれるため、ガス精製設備により石炭ガス化ガスの不純物を除去してガスタービンに供給している(以下、ガス精製後のガスタービンに供給されるガスを「燃料ガス」という。)。
【0004】
ガス精製設備として、水洗塔やCOS転換器等が設置された湿式ガス精製設備が広く用いられている。湿式ガス精製設備は、石炭ガス化ガス中の微量成分等の精密除去が可能であり、ガスタービン等の後続機器への影響に配慮された設備となっている。
【0005】
しかし、湿式ガス精製設備は、水分の蒸発や凝縮に起因する潜熱の損失が大きいため、石炭ガス化複合発電に用いた場合には、高効率化に限度があるのが実情である。
【0006】
これに対し、温度や圧力の昇降を抑制し、主に硫化物を除去して、高温の石炭ガス化ガスを精製する乾式ガス精製設備が種々検討されている。乾式で石炭ガス化ガスを精製することで石炭ガス化ガスを高温のまま精製することができるので、温度や圧力の昇降を抑えて精製後の高温の燃料ガスをガスタービンに供給することができる。
【0007】
乾式ガス精製設備では、温度や圧力を維持して(圧力損失を抑制して)燃料ガスを得ることができるが、後続機器に影響を与える不純物や微量成分を確実に除去するには至っていないのが現状である。このため、温度や圧力の維持を考慮したり、後続機器への影響を考慮した状態で、種々の不純物に対する除去剤の運用等を確立する必要があり、実用化に至っていない。
【0008】
一方、石炭ガス化複合発電設備等のガス化設備の熱効率を低下させず、効率的な運転に資するべく可燃ガス中のアンモニア分を除去するため、選択酸化反応を利用した乾式のアンモニア分解処理方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。これは、少量の酸素を添加して可燃ガス中のアンモニアの窒素と水への分解反応を選択的に進め、一酸化炭素の二酸化炭素への酸化反応および水素の水への酸化反応を抑制するとともに、触媒表面で一酸化炭素等の炭素原子を含む化合物が炭素に分解される副反応を抑制するように工夫したものである。
【0009】
上述の石炭ガス化ガス等、アンモニアともに可燃分を含む可燃ガスの精製においては、アンモニアの分解反応を促進させると同時に、それ以外の可燃ガスの劣化の原因となる副反応を可及的に抑制することが肝要である。上記特許文献2に開示する場合でも可燃ガスのアンモニアの分解反応を促進させると同時に、それ以外の可燃成分の副反応の抑制は行っているが、より効果的に可燃ガスの劣化を抑制しつつ前記可燃ガス中のアンモニアの分解反応を良好に促進させることができる技術の出現が待望されている。
【0010】
なお、温度や圧力の維持を考慮したり、後続機器への影響を配慮した乾式ガス精製を、上述の如き副反応を抑制したアンモニア分解とともに適用することは、例えばバイオマス、重質油、都市ゴミ等の燃料をガス化炉で加熱分解して得る可燃ガスを精製する場合においても同様に存在する課題である。これらは、何れも原料中に窒素化合物が含まれているため、燃料をガス化する際にアンモニアが生成されて燃料中に混入するが、アンモニアが混入した可燃ガスをそのまま燃焼させると、アンモニア中の窒素と酸素が反応してフュエルNOxが発生するからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2005―171148号公報
【特許文献2】特開2006―56935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は,上記従来技術に鑑み、選択酸化反応によるアンモニアの分解を良好に行い得るとともに、温度や圧力の昇降に対する影響、後続機器への影響に配慮して可燃ガスの精製を乾式で実現し得る乾式ガス精製設備及びこれを有する石炭ガス化複合発電設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成する本発明の第1の態様は、
精製する可燃ガスの温度を、露点を上回る温度に維持して運転する乾式法により、前記可燃ガス中の硫化物を除去する脱硫装置と、前記脱硫装置で脱硫された前記可燃ガス中のアンモニア分を、アンモニア分解触媒を用いて200℃乃至500℃の反応温度で選択酸化反応により分解するアンモニア分解装置と、前記アンモニア分解装置の上流側に配設され、前記アンモニア分解装置の入口側の可燃ガスの温度が、前記選択酸化反応の反応温度から前記選択酸化反応による温度上昇分を差し引いた温度になるように脱硫後の前記可燃ガスの温度を調整する温度調整手段とを有することを特徴とする乾式ガス精製設備にある。なお、ここでいうアンモニア選択酸化反応による温度上昇分とは、一酸化炭素や水素の酸化などの副反応も含めた、本反応全体による温度上昇分である。
【0014】
本態様によれば、乾式法により脱硫された可燃ガスの温度が温度調整手段で温度調整され、アンモニア分解装置における選択酸化反応を、分解効率が良好な温度域である200℃乃至500℃で実施させることができる。
【0015】
この結果、可燃ガスの温度を低下させることなく、高温度を維持したままで可燃ガスの脱硫を行うことができるばかりでなく、選択酸化によるアンモニア分解を効率的に行うことができる。また、アンモニア分解装置に供給される可燃ガスは脱硫されているので硫化物によりアンモニア分解触媒が劣化されることもない。
【0016】
本発明の第2の態様は、
第1の態様に記載する乾式ガス精製設備において、前記アンモニア分解装置でアンモニア分が分解された可燃ガスに含まれる水銀を除去する水銀除去器と、前記水銀除去器に導入される前記可燃ガスを熱媒として水銀除去後の可燃ガスを昇温させる熱交換器とを有することを特徴とする乾式ガス精製設備にある。
【0017】
本態様では、第1の態様のアンモニア分解装置の下流側に熱交換器とともに水銀除去器を追加したので、水銀除去器による水銀の除去も可能になるばかりでなく、水銀除去のために可燃ガスの温度を低下させた場合でも、この熱を熱交換器で回収することができる。
【0018】
この結果、水銀除去処理に伴う熱回収も行うことができ、可燃ガスの熱エネルギを喪失させることなく硫化物、アンモニアとともに水銀も除去することができる。
【0019】
本発明の第3の態様は、
精製する可燃ガスの温度を、露点を上回る温度に維持して運転する乾式法により、前記可燃ガス中の硫化物を除去する脱硫装置と、前記脱硫装置で脱硫された前記可燃ガスの温度を所定の温度に調整する温度調整手段と、前記温度調整手段で温度が調整された前記可燃ガスに含まれる水銀を除去する水銀除去器と、前記水銀除去器で水銀が除去されて導入される可燃ガス中のアンモニア分を、アンモニア分解触媒を用いて200℃乃至500℃の反応温度で選択酸化反応により分解するアンモニア分解装置と、前記水銀除去器に導入される前記可燃ガスを熱媒として、前記アンモニア分解装置の入口側の可燃ガスの温度が、前記選択酸化反応の反応温度から前記選択酸化反応による温度上昇分を差し引いた温度になるように、前記水銀除去後の可燃ガスを昇温させる熱交換器とを有することを特徴とする乾式ガス精製設備にある。
【0020】
本態様によれば、第1の態様のアンモニア分解装置の上流側に熱交換器とともに水銀除去器を追加したので、水銀除去器により水銀の除去も可能になるばかりでなく、水銀除去のために可燃ガスの温度を低下させた場合でも、この熱を熱交換器で回収することができる。
【0021】
さらに、水銀除去器はアンモニア分解装置の上流側に設けたので、水銀によるアンモニア分解触媒の劣化を有効に防止し得る。ここで、水銀除去系は可燃ガス中のアンモニア分の影響を受けることはない。
【0022】
この結果、アンモニア分解触媒に対する水銀による劣化を防止しつつ、水銀除去処理に伴う熱回収も行うことができ、可燃ガスの熱エネルギを喪失させることなく硫化物、アンモニアとともに水銀も除去することができる。
【0023】
本発明の第4の態様は、
精製する可燃ガスの温度を、露点を上回る温度に維持して運転する乾式法により、前記可燃ガス中の硫化物を除去する脱硫装置と、前記脱硫装置で脱硫された前記可燃ガス中のアンモニア分を、アンモニア分解触媒を用いて200℃乃至500℃の反応温度で選択酸化反応により分解するアンモニア分解装置と、前記アンモニア分解装置の上流側に配設され、前記アンモニア分解装置の入口側の可燃ガスの温度が、前記選択酸化反応の反応温度から前記選択酸化反応による温度上昇分を差し引いた温度になるように脱硫後の前記可燃ガスの温度を調整する温度調整手段と、前記温度調整手段の上流側に配設され、前記温度調整手段に導入される可燃ガスを熱媒としてアンモニア分解後の可燃ガスを昇温させる熱交換器とを有することを特徴とする乾式ガス精製設備にある。
【0024】
本態様によれば、第1の態様の脱硫装置とアンモニア分解装置との間で降温する熱の一部を、当該乾式ガス精製設備から、例えばタービンに供給される可燃ガスで熱交換器により回収することもできる。
【0025】
この結果、第1の態様の作用・効果に加え、より高温の可燃ガスをタービン等の後続機器に供給することができるという作用・効果も奏する。
【0026】
本発明の第5の態様は、
第4の態様に記載する乾式ガス精製設備において、前記アンモニア分解装置でアンモニア分が分解された可燃ガスに含まれる水銀を除去する水銀除去器と、前記水銀除去器に導入される前記可燃ガスを熱媒として水銀除去後の可燃ガスを昇温させる熱交換器とを有することを特徴とする乾式ガス精製設備にある。
【0027】
本態様によれば、第2の態様の脱硫装置とアンモニア分解装置との間で降温する熱の一部を、当該乾式ガス精製設備から、例えばタービンに供給される可燃ガスで熱交換器により回収することもできる。
【0028】
この結果、第2の態様の作用・効果に加え、より高温の可燃ガスをタービン等の後続機器に供給することができるという作用・効果も奏する。
【0029】
本発明の第6の態様は、
精製する可燃ガスの温度を、露点を上回る温度に維持して運転する乾式法により、前記可燃ガス中の硫化物を除去する脱硫装置と、前記脱硫装置で脱硫された前記可燃ガスの温度を所定の温度に調整する温度調整手段と、前記温度調整手段で温度が調整された前記可燃ガスに含まれる水銀を除去する水銀除去器と、前記水銀除去器で水銀が除去されて導入される可燃ガス中のアンモニア分を、アンモニア分解触媒を用いて200℃乃至500℃の反応温度で選択酸化反応により分解するアンモニア分解装置と、前記水銀除去器に導入される前記可燃ガスを熱媒として、前記アンモニア分解装置の入口側の可燃ガスの温度が、前記選択酸化反応の反応温度から前記選択酸化反応による温度上昇分を差し引いた温度になるように、前記水銀除去後の可燃ガスを昇温させる第1の熱交換器と、前記温度調整手段の上流側に配設され、前記温度調整手段に導入される可燃ガスを熱媒としてアンモニア分解後の可燃ガスを昇温させる第2の熱交換器とを有することを特徴とする乾式ガス精製設備にある。
【0030】
本態様によれば、第3の態様の脱硫装置とアンモニア分解装置との間で降温する熱の一部を、当該乾式ガス精製設備から、例えばタービンに供給される可燃ガスで熱交換器により回収することもできる。
【0031】
この結果、第3の態様の作用・効果に加え、より高温の可燃ガスをタービン等の後続機器に供給することができるという作用・効果も奏する。
【0032】
本発明の第7の態様は、
第1、第2、第4又は第5の態様に記載する乾式ガス精製設備において、前記温度調整手段と前記アンモニア分解装置とは両者が一体化された構造となっており、しかも多段で所定の温度調整及びアンモニア分解を行うように構成したものであることを特徴とする乾式ガス精製設備にある。
【0033】
本態様では、温度調整とともにアンモニア分解処理が多段で行われる。
【0034】
この結果、アンモニア分解触媒における温度分布のばらつきを可及的に平準化でき、最も合理的な温度で分解反応を進行させることができる。また、一体化により設備の全体的な小型化に資することもできる。
【0035】
本発明の第8の態様は、
第1乃至第7の態様の何れか一つに記載する乾式ガス精製設備において、前記アンモニア分解触媒は、10員環構造もしくは12員環構造のゼオライトまたはシリカ・アルミナを担体として遷移金属を担持させて構成したものであることを特徴とする乾式ガス精製設備にある。
【0036】
本態様は、選択酸化によるアンモニア分解性能が良好であると同時に、炭素析出等の副反応を可及的に抑制し得るアンモニア分解触媒を使用した設備となる。
【0037】
この結果、高効率のアンモニア分解と同時に、当該アンモニア分解処理に伴う可燃ガスの劣化を可及的に低減し得る。
【0038】
本発明の第9の態様は、第1乃至請求項8の何れか一つに記載する乾式ガス精製設備において、前記脱硫装置の上流側に、前記乾式法により精製する可燃ガス中のハロゲン化物を除去するハロゲン化物除去装置を配設したことを特徴とする乾式ガス精製設備にある。
【0039】
本態様によれば、可燃ガス中のハロゲン化物を乾式で、しかも脱硫装置の上流側で除去している。
【0040】
この結果、当該ガス精製設備の熱効率を高く維持した状態で、下流側の機器等に対するハロゲン化物による悪影響を除去することもできる。
【0041】
本発明の第10の態様は、
石炭及び酸化剤の反応により石炭ガス化ガスを生成する石炭ガス化炉と、前記石炭ガス化炉で生成された石炭ガス化ガスを精製する第1至第9の態様の何れか一つに記載の乾式ガス精製設備と、前記乾式ガス精製設備で得られた可燃ガスを燃焼させる燃焼手段と、前記燃焼手段からの燃焼ガスを膨張することで動力を得るガスタービンと、前記ガスタービンの排気ガスの熱を回収して得られた蒸気を膨張することで動力を得る蒸気タービンとを備えたことを特徴とする石炭ガス化複合発電設備にある。
【0042】
本態様では、石炭ガス化ガスを乾式ガス精製設備で良好に精製するとともに、炭素析出等の副反応が抑制された燃料ガスがガスタービンに供給され、蒸気タービンによる複合発電が行われる。
【0043】
この結果、良質且つ高温の燃料ガスで高効率の発電を行うことができる。
【発明の効果】
【0044】
本発明に係る乾式ガス精製設備は、全体のガス精製処理を乾式で行うようにしたので、可燃ガスの温度を低下させることなく、高温状態を維持したままで所定の良好なガス精製を行うことができる。特に、選択酸化によるアンモニアの分解を200℃乃至500℃の反応温度で実施することができるので、可燃ガス中のアンモニア分を最も効率的に分解することができる。
【0045】
さらに、湿式のガス精製に較べ、廃棄物処理や排水処理設備の不要化による設備費、薬品費、処理費の低減乃至環境負荷の低減等の効果も得られる。
【0046】
また、本発明に係る石炭ガス化複合発電設備は、乾式ガス精製設備で高度に精製された高品質・高温の石炭ガス化ガスで高効率の発電を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施の形態に係る石炭ガス化ガス複合発電設備を示すブロック線図である。
【図2】図1の一部を抽出した本発明の第1の実施の形態に係る乾式ガス精製設備を示すブロック線図である。
【図3】図1の一部を抽出した本発明の第2の実施の形態に係る乾式ガス精製設備を示すブロック線図である。
【図4】図1の一部を抽出した本発明の第3の実施の形態に係る乾式ガス精製設備を示すブロック線図である。
【図5】図1の一部を抽出した本発明の第4の実施の形態に係る乾式ガス精製設備を示すブロック線図である。
【図6】図1の一部を抽出した本発明の第5の実施の形態に係る乾式ガス精製設備を示すブロック線図である。
【図7】図1の一部を抽出した本発明の第6の実施の形態に係る乾式ガス精製設備を示すブロック線図である。
【図8】各試作触媒毎のアンモニア分解特性を示すグラフである。
【図9】各試作触媒毎のN2Oの生成特性を示すグラフである。
【図10】各試作触媒毎のHCNの生成特性を示すグラフである。
【図11】各試作触媒毎のCO、CO2の反応・生成特性を示すグラフである。
【図12】各試作触媒毎のH2、CH4の反応・生成特性を示すグラフである。
【図13】アンモニア分解を多段で行う多段式アンモニア分解装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0049】
<石炭ガス化複合発電設備の実施の形態>
図1は本発明の実施の形態に係る石炭ガス化複合発電設備を示すブロック線図である。同図に示すように、当該石炭ガス化複合発電設備1は、石炭ガス化炉2を備え、石炭ガス化炉2では石炭と酸化剤(酸素、空気)の高温での反応により、炭素原子を含む可燃化合物、硫化物、アンモニア等を含む可燃ガスである石炭ガス化ガスgが生成される。石炭ガス化ガスgは図示しない除塵手段により除塵されて熱交換器3で所定の温度に調整され、さらに乾式ガス精製設備4で不純物が除去されて精製される。このように精製された石炭ガス化ガスが燃料ガスfとしてタービン設備5の燃焼器6に供給される。ここで、タービン設備5は圧縮機16及びガスタービン7を備え、圧縮機16で圧縮された圧縮空気と燃料ガスfとが燃焼器6に送られる。燃焼器6では燃料ガスfが燃焼され、燃焼ガスがガスタービン7に送られて膨張されて動力が得られる。ガスタービン7の排気ガスは排熱回収ボイラー8で熱回収され、排煙脱硝装置9で窒素酸化物が除去された後、煙突10から大気に放出される。
【0050】
一方、圧縮機16及びガスタービン7と蒸気タービン11が同軸状態で接続され、蒸気タービン11には発電機12が接続されている。排熱回収ボイラー8には、蒸気タービン11の排気蒸気を図示しない復水器で凝縮した復水が給水され、排熱回収ボイラー8ではガスタービン7の排気ガスにより蒸気を発生させる。排熱回収ボイラー8で発生した蒸気は蒸気タービン11に送られて動力が得られる。
【0051】
直列に接続されたガスタービン7及び蒸気タービン11の動力により発電機12が駆動され、ガスタービン7と蒸気タービン11による複合発電が行われる。
【0052】
上述した石炭ガス化複合発電設備1では、石炭ガス化炉2の酸化剤として圧縮機16の圧縮空気が抽気されて供給される(A)。熱交換器3には、排熱回収ボイラー8に送られる復水の一部が給水され(B)、石炭ガス化ガスとの熱交換により蒸気を発生させ、発生した蒸気は蒸気タービン11に送られる(C)。このため、この蒸気によっても蒸気タービン11の出力が追加される。
【0053】
上記構成の石炭ガス化複合発電設備1では、乾式ガス精製設備4により石炭ガス化ガスgが乾式精製により精製されて高温の燃料ガスfを得ている。
【0054】
ここで、乾式ガス精製設備のさらに具体的な構成を図2乃至図7に示す各実施の形態に基づき説明しておく。なお、各実施の形態において、同一部分には同一番号を付し、重複する説明は省略する。また、各図に示す温度はガス温度であるが、これらはあくまで一例であり、当然これらの温度に限定されるものではない。さらに、各温度は熱損失がない理想状態のものとして表わしている。
【0055】
<乾式ガス精製設備の第1の実施の形態>
図2は本発明の第1の実施の形態に係る乾式ガス精製設備を示すブロック線図である。同図に示すように、本形態に係る乾式ガス精製設備41は、石炭ガス化炉2で生成された石炭ガス化ガスgに含まれるハロゲン化物を最上流部で除去するハロゲン化物除去装置20と、ハロゲン化物が除去された石炭ガス化ガスgに含まれる硫化物を除去する脱硫装置21と、脱硫後の石炭ガス化ガスgを所定の温度に調整する温度調整装置22と、温度が調整された石炭ガス化ガスgに含まれるアンモニア分を空気aの存在(石炭ガス化ガスgを気相燃焼させ得ない量の酸素の存在)下で選択酸化により分解するアンモニア分解装置23と、最下流部に配設された物理的濾過装置(例えば、焼結フィルタ)である後置フィルタ24とを有しており、上流側から順にハロゲン化物、硫化物、アンモニア分が除去され、その他の微量成分等を含む粒子状物質を後置フィルタ24で除去することにより精製した燃料ガスfをタービン設備5に供給するように構成してある。
【0056】
さらに詳言すると、ハロゲン化物除去装置20では、例えばアルカリ系としてナトリウム系のハロゲン化物吸収剤であるアルミン酸ナトリウム(NaAlO2)がペレット状に成形されて使用され、これにより乾式法によりハロゲン化物である塩化水素(HCl)及びフッ化水素(HF)を同時に除去することができる。
【0057】
脱硫装置21では、酸化亜鉛系の脱硫剤である亜鉛フェライト脱硫剤をハニカム形状化して好適に使用することができ、亜鉛フェライト脱硫剤に石炭ガス化ガスgを接触させることで、硫化硫黄(H2S)や硫化カルボニル(COS)等を乾式で極低濃度まで除去することができる。ここで、亜鉛フェライト脱硫剤自体が水素化触媒の機能を持つため、硫化カルボニル(COS)をはじめとする有機硫黄化合物にも性能を発揮することができる。
【0058】
温度調整装置22は本形態の場合、脱硫後の高温(例えば、450℃)の石炭ガス化ガスgを低温(220℃)の石炭ガス化ガスgに降温する冷却器として機能するものであるが、これは、例えば石炭ガス化複合発電設備1(図1参照)の任意の蒸気発生源で発生する蒸気を供給し、この蒸気に硫化後の高温の石炭ガス化ガスgの顕熱を吸収させるように構成することで好適に実現し得る。
【0059】
アンモニア分解装置23には、選択酸化反応によるアンモニア分解のための触媒が充填されているが、この触媒としては、10員環構造又は12員環構造のゼオライトを担体とするものが好適である。ここで、10員環又は12員環とは酸素原子数10又は12の員環構造をいう。細孔径が小さい8員環構造のゼオライトでは細孔内に分子の大きさが大きい酸素が進入しにくく、したがって細孔内でアンモニアとの選択酸化反応も起こりにくい。これに対し細孔径が大きい10員環以上の構造のゼオライトは細孔内に酸素が容易に進入できるので細孔内でのアンモニアとの選択酸化反応が促進される。ところが、細孔径が大きいほど細孔内で炭素の成長及び含炭素化合物の重合がし易くなり、炭素析出が生じ易くなる。このため、アンモニアの選択酸化による分解反応を促進させると同時に、触媒の表面で一酸化炭素等が炭素に分解される反応等を抑制するには、細孔構造が10員環構造又は12員環構造のゼオライトが好適であり、中でも10員環構造のゼオライトが最適である。10員環構造のゼオライトとしてはZSM−5ゼオライト及びZSM−11ゼオライトを挙げることができる。また、12員環構造のゼオライトとしてはY型ゼオライトが好適である。
【0060】
なお、シリカ/アルミナ比が大きいほどゼオライトの結晶安定性が向上し、高温・高水蒸気条件下でもゼオライトの構造が維持されるので触媒寿命が延伸される。触媒の活性物質としては遷移金属、例えばニッケルが好適である。
【0061】
また、ゼオライト以外で同様の機能を期待し得る担体としてはシリカ・アルミナがある。
【0062】
すなわち、本形態における触媒は10員環構造もしくは12員環構造のゼオライトまたはシリカ・アルミナを担体としてニッケルを担持させて好適に形成することができる。
【0063】
ここで、触媒の形状に特別な制限はない。粉末状、ペレット状、ハニカム形状等の何れであっても構わない。また、活性物質の担持形態にも特別な限定はない。すなわち、所定形状の担体の少なくとも表面にニッケル等の遷移金属を担持させても良いし、粉末状の担体に遷移金属を担持させ、そのまま、又は粒状に成形して使用しても良い。さらに、これをスラリー状にして型に流し込み、焼成してハニカム等の所定形状に成形したものでも良い。
【0064】
また、選択酸化を促進すると同時に可燃成分が分解される反応を抑制するための酸素の添加量は、アンモニアに対しモル比で0.75mol/mol以上で且つ15mol/mol以下であることが望ましいが、気相燃焼を回避するためには限界酸素濃度以下の濃度にする必要がある。ちなみに、アンモニアが1000ppm含まれる石炭ガス化ガスの場合、アンモニアに対するモル比が15mol/molの酸素濃度は1.5vol%である。ここで、限界酸素濃度とは、所定の温度、圧力において可燃ガスが気相燃焼できなくなるような酸素濃度をいい、水素は1.5vol%、一酸化炭素は5.6vol%、メタンは12.1vol%、アンモニアはそれ以上である。かかる限界酸素濃度は反応場の温度や圧力により変化するので運転条件に即して調整することが肝要である。
【0065】
ここで、本形態では、選択酸化によるアンモニアの分解反応が300℃で行われるように、温度調整装置22によりアンモニア分解装置23の入口側ガス温度を220℃に調整したが、これは選択酸化によるアンモニア分解の際の反応熱によるアンモニア分解触媒の表面温度の上昇分(この場合は80℃(=300℃−220℃))を見込んだためである。したがって、一般的には、温度調整装置22によるアンモニア分解装置23の入口側ガス温度は、燃料の劣化や炭素析出を抑制しながらアンモニアを最も効率的に分解する触媒層の温度から、その際の酸素または空気の添加量と酸素の反応率によって定まる、選択酸化反応による温度上昇分を差し引いた温度に調整すれば良い。
【0066】
また、本形態におけるアンモニア分解処理の反応温度の温度範囲としては200℃乃至500℃が好ましく、さらに200℃乃至450℃がより好ましい。この点の根拠については、その知見の基礎となる実験とともに後で詳述する。
【0067】
上述の如き構成の本形態においては、乾式法により450℃(露点を上回る運転温度)でハロゲン除去及び脱硫処理を行うとともに、300℃で選択酸化反応によるアンモニア分解処理を行うとともに最下流部の後置フィルタ24で粒子状物質を捕捉して除去する。
【0068】
この結果、石炭ガス化ガスgの温度や圧力を維持して、タービン設備5等の後続機器に悪影響を与える不純物や微量成分を確実に除去して高温の燃料ガスをタービン設備5に供給することができる。また、本形態では選択酸化反応によるアンモニア分解を300℃で行うようにしたので、石炭ガス化ガスgの可燃成分を劣化させる副反応を抑制してアンモニアを良好に分解することができる。
【0069】
すなわち、温度調整装置22でアンモニア分解装置23の入口側温度が220℃に調整されて所定量の空気aとともに供給される石炭ガス化ガスgがアンモニア分解触媒に接触することにより、
4NH3+3O2→2N2+6H2O
で示されるアンモニアの選択酸化反応が促進され、同時にそれ以外のアンモニアの反応(一酸化窒素、二酸化窒素、亜酸化窒素、シアン化水素等の窒素化合物の生成)及び燃料ガスの反応(水素、一酸化炭素の酸化、炭素、炭化水素の生成等の反応)を効果的に抑制しつつ石炭ガス化ガスgが含有するアンモニア分を良好に分解する。
【0070】
なお、本形態において、ハロゲン化物除去装置20及び後置フィルタ24は必要に応じて設ければよい。
【0071】
<乾式ガス精製設備の第2の実施の形態>
図3は本発明の第2の実施の形態に係る乾式ガス精製設備を示すブロック線図である。同図に示すように、本形態に係る乾式ガス精製設備42は、図2に示す第1の実施の形態のアンモニア分解装置23の下流側にアンモニア分解後の石炭ガスgに含まれる水銀を除去する水銀除去器25及び熱交換器26を追加したものである。
【0072】
さらに詳言すると、水銀除去器25は、銅を主体として水銀を吸収する銅系吸収剤を水銀除去剤として好適に適用することができ、銅系吸収剤に石炭ガス化ガスgを接触させることで水銀を吸収させて除去する。水銀吸収剤としては、他にも化学反応性を有する成分を担持させ、水銀との化学反応により生成した塩を吸着することで水銀を除去する添着活性炭を用いることもできる。ここで、銅系吸収剤や添着活性炭は、低い温度(例えば180℃)で吸着性能を発揮するので、水銀除去器25には、アンモニア分を選択酸化により分解する際の反応熱で高温(例えば、300℃)になっている石炭ガス化ガスgを熱交換器26で180℃に降温して供給するようになっている。
【0073】
一方、熱交換器26の冷却媒体は、後置フィルタ24で不純物が濾過されて熱交換器26で昇温される低温(例えば、180℃)の燃料ガスfであるので、水銀除去器25に供給される前の高温(約450℃)の石炭ガス化ガスgの顕熱を低温(約180℃)の燃料ガスfの昇温に使用して熱エネルギを当該乾式ガス精製設備42の系内で回収することができる。
【0074】
このため、本形態によれば、アンモニア分解後の石炭ガス化ガスgに含まれる水銀を除去し得るばかりでなく、水銀除去器25に導入される石炭ガス化ガスgの温度を制御するための顕熱が燃料ガスfを昇温させるために回収され、低い運転温度の銅系吸収剤等を適用した場合であっても、水銀除去器25の運転温度に対する温度制御と燃料ガスfの高温維持を両立させることができる。
【0075】
<乾式ガス精製設備の第3の実施の形態>
図4は本発明の第3の実施の形態に係る乾式ガス精製設備を示すブロック線図である。同図に示すように、本形態に係る乾式ガス精製設備43は、図2に示す第1の実施の形態のアンモニア分解装置23の上流側に脱硫後の石炭ガスgに含まれる水銀を除去する水銀除去器25及び熱交換器26を追加したものである。ここで、水銀除去器25及び熱交換器26の構成自体は、図3に示す第2の実施の形態のものと同様である。ただ、本形態の熱交換器26はアンモニア分解装置23の入口温度(例えば、220℃)に調整した石炭ガス化ガスgを水銀除去器25に適した所定の低温(例えば、180℃)に降温するため、前記石炭ガス化ガスgを熱媒としてアンモニア分解装置23の入口側の温度が所定温度(例えば、220℃)になるように、水銀除去後の低温(例えば、180℃)の石炭ガス化ガスを昇温させるようになっている。すなわち、熱交換器26は水銀除去処理のため降温した石炭ガス化ガスgの顕熱を回収して、より高温(例えば300℃)で処理を行うアンモニア分解装置23へと、水銀を除去した石炭ガス化ガスgを供給するようになっている。
【0076】
かかる本形態においては、脱硫後の石炭ガス化ガスgに含まれる水銀を除去し得るばかりでなく、水銀除去器25に導入される石炭ガス化ガスgの温度を制御するための顕熱がアンモニア分解装置23に供給される石炭ガス化ガスgを昇温させるために回収され、低い運転温度の銅系吸収剤等を適用した場合であっても、水銀除去器25の運転温度に対する温度制御と石炭ガス化ガスgの高温維持を両立させることができる。
【0077】
さらに、本形態では、水銀除去器25がアンモニア分解装置23の上流側に配設されているので、水銀によるアンモニア分解触媒の劣化を有効に防止し得る。
【0078】
<乾式ガス精製設備の第4の実施の形態>
図5は本発明の第4の実施の形態に係る乾式ガス精製設備を示すブロック線図である。同図に示すように、本形態に係る乾式ガス精製設備44は、図2に示す第1の実施の形態に熱交換器27を追加したものである。この熱交換器27は温度調整装置22の上流側に配設され、温度調整装置22に導入される脱硫後の石炭ガス化ガスgを熱媒として、アンモニア分解後に後置フィルタ24で最終的に粒子状物質が除去されてタービン設備5に供給される燃料ガスfを昇温させる。
【0079】
かかる本形態によれば、第1の実施の形態の作用・効果に加え、さらに脱硫装置21とアンモニア分解装置23との間で降温する熱の一部を回収してタービン設備5に供給する燃料ガスfの温度を上昇させることができる。この結果、発電設備全体としての効率向上に資することができる。
【0080】
<乾式ガス精製設備の第5の実施の形態>
図6は本発明の第5の実施の形態に係る乾式ガス精製設備を示すブロック線図である。同図に示すように、本形態に係る乾式ガス精製設備45は、図3に示す第2の実施の形態に熱交換器27を追加したものである。この熱交換器27は温度調整装置22の上流側に配設され、温度調整装置22に導入される脱硫後の石炭ガス化ガスgを熱媒として、水銀除去後に後置フィルタ24で最終的に粒子状物質が除去されてタービン設備5に供給される燃料ガスfを昇温させる。
【0081】
かかる本形態によれば、第2の実施の形態の作用・効果に加え、さらに脱硫装置21とアンモニア分解装置23との間で降温する熱の一部を回収してタービン設備5に供給する燃料ガスfの温度を上昇させることができる。この結果、第4の実施の形態と同様に、発電設備全体としての効率向上に資することができる。
【0082】
<乾式ガス精製設備の第6の実施の形態>
図7は本発明の第6の実施の形態に係る乾式ガス精製設備を示すブロック線図である。同図に示すように、本形態に係る乾式ガス精製設備46は、図4に示す第3の実施の形態に熱交換器27を追加したものである。この熱交換器27は温度調整装置22の上流側に配設され、温度調整装置22に導入される脱硫後の石炭ガス化ガスgを熱媒として、アンモニア除去後に後置フィルタ24で最終的に粒子状物質が除去されてタービン設備5に供給される燃料ガスfを昇温させる。
【0083】
かかる本形態によれば、第3の実施の形態の作用・効果に加え、さらに脱硫装置21とアンモニア分解装置23との間で降温する熱の一部を回収してタービン設備5に供給する燃料ガスfの温度を上昇させることができる。この結果、第4及び第5の実施の形態と同様に、発電設備全体としての効率向上に資することができる。
【0084】
<アンモニア分解処理に関連する基礎実験>
上述の如き各実施の形態に係る乾式ガス精製設備41乃至46におけるアンモニア分解触媒は、10員環構造もしくは12員環構造のゼオライトまたはシリカ・アルミナを担体として遷移金属(例えばニッケル)を担持させたものが好適である旨、及びアンモニア分解処理の反応温度の温度範囲が200℃乃至500℃が好ましく、さらに200℃乃至450℃がより好ましい旨を述べたが、この点の根拠となる知見を得た基礎実験及びその結果の考察について言及しておく。
【0085】
本実験に用いた試作触媒であるアンモニア分解触媒の活性成分としては、ニッケル(Ni)を選定し、担体としては、アルミナ(Al2O3)、シリカ・アルミナ(SiO2・Al2O3)、ZSM−5ゼオライト(ZSM−5)、ベータゼオライト(Beta)、Y型ゼオライト(Y)を用いた。かかる試作触媒の一覧を表1に示す。
【0086】
【表1】
【0087】
表1に示す試作触媒で2〜3mmメッシュの粒状のアンモニア分解触媒を形成し石炭ガス化ガスを模擬した可燃ガスを接触させた。さらに詳言すると、前記可燃ガスの組成は、乾式給炭酸素富化空気吹き噴流床ガス化炉を用いた石炭ガス化複合発電設備の脱硫装置出口のガス組成を模擬することとし、可燃ガスに酸素を酸素/燃料比(O2/Fuel)で0.008mol/mol(NH3に対しモル比で約8mol/mol)添加した。実験は、空間速度(S.V.)が20000h−1、圧力が0.9MPaの条件で行った。
【0088】
このときの実験条件を表2に示す。
【0089】
【表2】
【0090】
本実験における可燃ガスの供給に際しては、先ず窒素(N2)気流中でアンモニア分解触媒層を150℃に昇温して温度が安定した後に可燃ガスおよび酸素を供給し、ガス組成の分析値が安定するまで保持した。次に、アンモニア分解触媒層を所定の温度に昇温後、20分一定温度に保持し、データを取得する操作を50℃毎に600℃まで繰り返した。このときのデータとは、分解ガス中のアンモニア(NH3)、シアン化水素(HCN)、一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO2)、一酸化二窒素(N2O)、水素(H2)、メタン(CH4)〜ブタン(C4H10)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO2)、窒素(N2)及び酸素(O2)の濃度である。
【0091】
かかる実験結果を図8乃至図12に示す。図8は触媒温度に対するアンモニア(NH3)の窒素(N2)への転換率を示す。なお、当該転換率は、分解したアンモニア(NH3)から、生成したシアン化水素(HCN)、一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO2)及び一酸化二窒素(N2O)を差し引いた濃度として所定の計算式を用いて計算した。
【0092】
また、図9は一酸化二窒素(N2O)、図10はシアン化水素(HCN)の触媒温度に対する生成率を示しており、図11は触媒出口の一酸化炭素(CO)及び二酸化炭素(CO2)の触媒温度に対する濃度を、図12は水素(H2)及びメタン(CH4)の触媒温度に対する濃度をそれぞれ示している。この中で、O2が消失した状態でのCOの濃度減少とCO2の濃度増加の同時発生は炭素析出が起きた証拠となる。なお、図には示さなかったがNO、NO2、エタン〜ブタンはほとんど生成せず、触媒出口のO2は450乃至500℃以上で消失していた。
【0093】
したがって、図9乃至図12の特性は、所定の選択酸化反応における可燃ガスの可燃分の劣化の程度、換言すれば副反応の抑制の程度の触媒温度に対する特性と見ることができる。
【0094】
これら図8乃至図12に示す実験結果を参照すれば、本形態における選択酸化によるアンモニア分解反応は触媒温度が200℃乃至500℃で行わせるのが好ましく、さらに200℃乃至450℃がより好ましいことが分かる。
【0095】
さらに、触媒自体について検討すれば、SiO2とAl2O3の両方を主な担体構成成分とするNi担持触媒が良好なアンモニア分解活性を示し、同時に可燃ガスの消費、炭素析出、CH4、N2O、HCN生成などの副反応を抑制できると考えられ、特にNi/ZSM−5が高いNH3分解活性及び副反応の抑制能力を有する。他にも、Ni/Y及びNi/SiO2・Al2O3がアンモニアの分解活性と広い温度範囲での炭素析出などの副反応を抑制できている。
【0096】
このように、Ni/ZSM−5が顕著なNH3選択酸化分解活性を有し、かつ広い温度範囲で炭素析出などの副反応を抑制できることが明らかとなった本実験の結果を踏まえれば、10員環構造のゼオライトであるZSM−5、12員環構造のゼオライトであるYゼオライト及びSiO2・Al2O3である担体に遷移金属(例えばニッケル)を担持させた触媒を使用した場合には広い温度範囲で副反応を抑制して可燃ガスとしての劣化を可及的に抑制しつつ含有するアンモニアを良好に分解することができると考えられる。
【0097】
また、上記触媒をはじめ、実験に使用した触媒におけるアンモニアの分解率を良好に維持しつつ、有害な副反応を有効に抑制し得る温度範囲として200℃乃至500℃が好ましく、さらに200℃乃至450℃がより好ましいことが分かった。
【0098】
<他の実施の形態>
一般に、乾式ガス精製設備の熱効率の観点から脱硫処理後の可燃ガス温度は高温の方が望ましい。したがって、脱硫装置の出口側温度がアンモニア分解装置の入口側温度よりも高温である場合が多い。換言すれば温度調整装置22は冷却器として機能させる場合が多い。ただ、乾式法による脱硫は露点を上回る温度で可燃ガスを処理することができれば良いので、アンモニア処理装置の入口温度との関係では昇温する場合を排除するものではない。要はアンモニア分解効率等の観点から設定されるアンモニア分解装置の入口温度に合わせ込むことができるように構成されていれば良い。
【0099】
さらに、アンモニア分解装置は温度調整装置と一体化して多段に構成しても良い。すなわち、図13に示すように、入口側から第1段目の温度調整装置28A、第1段目のアンモニア分解装置28B、2段目の温度調整装置28C、第2段目のアンモニア分解装置28Dをタンデムに接続し一体化して構成する。
【0100】
かかる多段アンモニア分解装置28において、例えば第1段目のアンモニア分解装置28Bの触媒量を多段でない場合の半分の量にすると、第1段目の温度調整装置28Aの入口側に脱硫後の高温(例えば450℃)の可燃ガスを選択酸化反応のための空気aとともに供給した場合、温度調整装置28Aでは多段でない場合より高い温度(例えば260℃)に降温してアンモニア分解装置28Bに供給すれば良い。この結果、アンモニア分解装置28Bでは触媒量が少ないために反応による温度上昇も少なくなり、所定の温度(例えば300℃)で選択酸化によるアンモニアの分解が行われる。次に、この結果昇温(例えば、300℃)された可燃ガスを第2段目の温度調整装置28Cに供給して所定の温度(例えば260℃)に降温し、残りの触媒量を充填した第2段目のアンモニア分解装置28Dに供給すれば、同様に所定の温度(例えば300℃)で選択酸化によるアンモニアの分解が行われる。
【0101】
この結果、かかる多段アンモニア分解装置28では、各アンモニア分解装置28B,28Dにおける温度分布のばらつきを可及的に平準化でき、最も合理的な温度で分解反応を進行させることができる。また、一体化により設備の全体的な小型化に資することもできる。
【0102】
さらに、上記各実施の形態では、可燃ガスとして石炭ガス化ガスを用いる石炭ガス化複合発電設備を説明したが、勿論これに限るものではない。可燃ガスは、石炭ガス化ガスに限らず、炭素原子を含む可燃化合物、硫化物、アンモニア等を含むガスであれば特に制限はなく、またこの種の可燃ガスを使用する設備としても前記可燃ガスを乾式精製して使用する設備であれば特に制限する必要はない。他の可燃ガスとしては、例えばバイオマス、重質油、都市ゴミ等の燃料をガス化炉で加熱分解して得るガスであっても良く、この種のガスを精製して使用する設備であれば、各種の発電設備や化学合成用のガス設備等であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明は、石炭ガス化ガス等の可燃ガスを乾式で精製する設備を利用する産業分野において有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0104】
1 石炭ガス化複合発電設備
2 石炭ガス化炉
4 乾式ガス精製設備
5 タービン設備
6 燃焼器
7 ガスタービン
11 蒸気タービン
12 発電機
16 圧縮機
20 ハロゲン化物除去装置
21 脱硫装置
22 温度調整装置
23 アンモニア分解装置
25 水銀除去器
26、27 熱交換器
28 多段アンモニア分解装置
28A、28C 温度調整装置
28B、28D アンモニア分解装置
41〜46 乾式ガス精製設備
【技術分野】
【0001】
本発明は乾式ガス精製設備及び石炭ガス化複合発電設備に関し、特に石炭ガス化ガス等の可燃ガス(炭素原子を含む可燃化合物、硫化物、アンモニアを含むガス。以下同じ)中のアンモニアを選択酸化反応により分解するアンモニア分解装置を有するものに適用して有用なものである。
【背景技術】
【0002】
石炭は世界の広い地域に存在し、可採埋蔵量が多く、価格が安定しているため、供給安定性が高く発熱量あたりの価格が低廉である。かかる石炭を燃料とする火力発電の一つの方式として、石炭ガス化複合発電(IGCC:Integrated Coal Gasfication Combined Cycle)が知られている。石炭ガス化複合発電では、石炭ガス化ガスを燃料としてガスタービンを駆動して電力を得ると共に、ガスタービンの排気熱を回収して蒸気を発生させ、発生した蒸気により蒸気タービンを駆動して電力を得ている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
石炭ガス化炉で発生する石炭ガス化ガスには硫化物やアンモニア等の不純物、後続機器に対して影響を与える不純物、微量成分が含まれるため、ガス精製設備により石炭ガス化ガスの不純物を除去してガスタービンに供給している(以下、ガス精製後のガスタービンに供給されるガスを「燃料ガス」という。)。
【0004】
ガス精製設備として、水洗塔やCOS転換器等が設置された湿式ガス精製設備が広く用いられている。湿式ガス精製設備は、石炭ガス化ガス中の微量成分等の精密除去が可能であり、ガスタービン等の後続機器への影響に配慮された設備となっている。
【0005】
しかし、湿式ガス精製設備は、水分の蒸発や凝縮に起因する潜熱の損失が大きいため、石炭ガス化複合発電に用いた場合には、高効率化に限度があるのが実情である。
【0006】
これに対し、温度や圧力の昇降を抑制し、主に硫化物を除去して、高温の石炭ガス化ガスを精製する乾式ガス精製設備が種々検討されている。乾式で石炭ガス化ガスを精製することで石炭ガス化ガスを高温のまま精製することができるので、温度や圧力の昇降を抑えて精製後の高温の燃料ガスをガスタービンに供給することができる。
【0007】
乾式ガス精製設備では、温度や圧力を維持して(圧力損失を抑制して)燃料ガスを得ることができるが、後続機器に影響を与える不純物や微量成分を確実に除去するには至っていないのが現状である。このため、温度や圧力の維持を考慮したり、後続機器への影響を考慮した状態で、種々の不純物に対する除去剤の運用等を確立する必要があり、実用化に至っていない。
【0008】
一方、石炭ガス化複合発電設備等のガス化設備の熱効率を低下させず、効率的な運転に資するべく可燃ガス中のアンモニア分を除去するため、選択酸化反応を利用した乾式のアンモニア分解処理方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。これは、少量の酸素を添加して可燃ガス中のアンモニアの窒素と水への分解反応を選択的に進め、一酸化炭素の二酸化炭素への酸化反応および水素の水への酸化反応を抑制するとともに、触媒表面で一酸化炭素等の炭素原子を含む化合物が炭素に分解される副反応を抑制するように工夫したものである。
【0009】
上述の石炭ガス化ガス等、アンモニアともに可燃分を含む可燃ガスの精製においては、アンモニアの分解反応を促進させると同時に、それ以外の可燃ガスの劣化の原因となる副反応を可及的に抑制することが肝要である。上記特許文献2に開示する場合でも可燃ガスのアンモニアの分解反応を促進させると同時に、それ以外の可燃成分の副反応の抑制は行っているが、より効果的に可燃ガスの劣化を抑制しつつ前記可燃ガス中のアンモニアの分解反応を良好に促進させることができる技術の出現が待望されている。
【0010】
なお、温度や圧力の維持を考慮したり、後続機器への影響を配慮した乾式ガス精製を、上述の如き副反応を抑制したアンモニア分解とともに適用することは、例えばバイオマス、重質油、都市ゴミ等の燃料をガス化炉で加熱分解して得る可燃ガスを精製する場合においても同様に存在する課題である。これらは、何れも原料中に窒素化合物が含まれているため、燃料をガス化する際にアンモニアが生成されて燃料中に混入するが、アンモニアが混入した可燃ガスをそのまま燃焼させると、アンモニア中の窒素と酸素が反応してフュエルNOxが発生するからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2005―171148号公報
【特許文献2】特開2006―56935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は,上記従来技術に鑑み、選択酸化反応によるアンモニアの分解を良好に行い得るとともに、温度や圧力の昇降に対する影響、後続機器への影響に配慮して可燃ガスの精製を乾式で実現し得る乾式ガス精製設備及びこれを有する石炭ガス化複合発電設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成する本発明の第1の態様は、
精製する可燃ガスの温度を、露点を上回る温度に維持して運転する乾式法により、前記可燃ガス中の硫化物を除去する脱硫装置と、前記脱硫装置で脱硫された前記可燃ガス中のアンモニア分を、アンモニア分解触媒を用いて200℃乃至500℃の反応温度で選択酸化反応により分解するアンモニア分解装置と、前記アンモニア分解装置の上流側に配設され、前記アンモニア分解装置の入口側の可燃ガスの温度が、前記選択酸化反応の反応温度から前記選択酸化反応による温度上昇分を差し引いた温度になるように脱硫後の前記可燃ガスの温度を調整する温度調整手段とを有することを特徴とする乾式ガス精製設備にある。なお、ここでいうアンモニア選択酸化反応による温度上昇分とは、一酸化炭素や水素の酸化などの副反応も含めた、本反応全体による温度上昇分である。
【0014】
本態様によれば、乾式法により脱硫された可燃ガスの温度が温度調整手段で温度調整され、アンモニア分解装置における選択酸化反応を、分解効率が良好な温度域である200℃乃至500℃で実施させることができる。
【0015】
この結果、可燃ガスの温度を低下させることなく、高温度を維持したままで可燃ガスの脱硫を行うことができるばかりでなく、選択酸化によるアンモニア分解を効率的に行うことができる。また、アンモニア分解装置に供給される可燃ガスは脱硫されているので硫化物によりアンモニア分解触媒が劣化されることもない。
【0016】
本発明の第2の態様は、
第1の態様に記載する乾式ガス精製設備において、前記アンモニア分解装置でアンモニア分が分解された可燃ガスに含まれる水銀を除去する水銀除去器と、前記水銀除去器に導入される前記可燃ガスを熱媒として水銀除去後の可燃ガスを昇温させる熱交換器とを有することを特徴とする乾式ガス精製設備にある。
【0017】
本態様では、第1の態様のアンモニア分解装置の下流側に熱交換器とともに水銀除去器を追加したので、水銀除去器による水銀の除去も可能になるばかりでなく、水銀除去のために可燃ガスの温度を低下させた場合でも、この熱を熱交換器で回収することができる。
【0018】
この結果、水銀除去処理に伴う熱回収も行うことができ、可燃ガスの熱エネルギを喪失させることなく硫化物、アンモニアとともに水銀も除去することができる。
【0019】
本発明の第3の態様は、
精製する可燃ガスの温度を、露点を上回る温度に維持して運転する乾式法により、前記可燃ガス中の硫化物を除去する脱硫装置と、前記脱硫装置で脱硫された前記可燃ガスの温度を所定の温度に調整する温度調整手段と、前記温度調整手段で温度が調整された前記可燃ガスに含まれる水銀を除去する水銀除去器と、前記水銀除去器で水銀が除去されて導入される可燃ガス中のアンモニア分を、アンモニア分解触媒を用いて200℃乃至500℃の反応温度で選択酸化反応により分解するアンモニア分解装置と、前記水銀除去器に導入される前記可燃ガスを熱媒として、前記アンモニア分解装置の入口側の可燃ガスの温度が、前記選択酸化反応の反応温度から前記選択酸化反応による温度上昇分を差し引いた温度になるように、前記水銀除去後の可燃ガスを昇温させる熱交換器とを有することを特徴とする乾式ガス精製設備にある。
【0020】
本態様によれば、第1の態様のアンモニア分解装置の上流側に熱交換器とともに水銀除去器を追加したので、水銀除去器により水銀の除去も可能になるばかりでなく、水銀除去のために可燃ガスの温度を低下させた場合でも、この熱を熱交換器で回収することができる。
【0021】
さらに、水銀除去器はアンモニア分解装置の上流側に設けたので、水銀によるアンモニア分解触媒の劣化を有効に防止し得る。ここで、水銀除去系は可燃ガス中のアンモニア分の影響を受けることはない。
【0022】
この結果、アンモニア分解触媒に対する水銀による劣化を防止しつつ、水銀除去処理に伴う熱回収も行うことができ、可燃ガスの熱エネルギを喪失させることなく硫化物、アンモニアとともに水銀も除去することができる。
【0023】
本発明の第4の態様は、
精製する可燃ガスの温度を、露点を上回る温度に維持して運転する乾式法により、前記可燃ガス中の硫化物を除去する脱硫装置と、前記脱硫装置で脱硫された前記可燃ガス中のアンモニア分を、アンモニア分解触媒を用いて200℃乃至500℃の反応温度で選択酸化反応により分解するアンモニア分解装置と、前記アンモニア分解装置の上流側に配設され、前記アンモニア分解装置の入口側の可燃ガスの温度が、前記選択酸化反応の反応温度から前記選択酸化反応による温度上昇分を差し引いた温度になるように脱硫後の前記可燃ガスの温度を調整する温度調整手段と、前記温度調整手段の上流側に配設され、前記温度調整手段に導入される可燃ガスを熱媒としてアンモニア分解後の可燃ガスを昇温させる熱交換器とを有することを特徴とする乾式ガス精製設備にある。
【0024】
本態様によれば、第1の態様の脱硫装置とアンモニア分解装置との間で降温する熱の一部を、当該乾式ガス精製設備から、例えばタービンに供給される可燃ガスで熱交換器により回収することもできる。
【0025】
この結果、第1の態様の作用・効果に加え、より高温の可燃ガスをタービン等の後続機器に供給することができるという作用・効果も奏する。
【0026】
本発明の第5の態様は、
第4の態様に記載する乾式ガス精製設備において、前記アンモニア分解装置でアンモニア分が分解された可燃ガスに含まれる水銀を除去する水銀除去器と、前記水銀除去器に導入される前記可燃ガスを熱媒として水銀除去後の可燃ガスを昇温させる熱交換器とを有することを特徴とする乾式ガス精製設備にある。
【0027】
本態様によれば、第2の態様の脱硫装置とアンモニア分解装置との間で降温する熱の一部を、当該乾式ガス精製設備から、例えばタービンに供給される可燃ガスで熱交換器により回収することもできる。
【0028】
この結果、第2の態様の作用・効果に加え、より高温の可燃ガスをタービン等の後続機器に供給することができるという作用・効果も奏する。
【0029】
本発明の第6の態様は、
精製する可燃ガスの温度を、露点を上回る温度に維持して運転する乾式法により、前記可燃ガス中の硫化物を除去する脱硫装置と、前記脱硫装置で脱硫された前記可燃ガスの温度を所定の温度に調整する温度調整手段と、前記温度調整手段で温度が調整された前記可燃ガスに含まれる水銀を除去する水銀除去器と、前記水銀除去器で水銀が除去されて導入される可燃ガス中のアンモニア分を、アンモニア分解触媒を用いて200℃乃至500℃の反応温度で選択酸化反応により分解するアンモニア分解装置と、前記水銀除去器に導入される前記可燃ガスを熱媒として、前記アンモニア分解装置の入口側の可燃ガスの温度が、前記選択酸化反応の反応温度から前記選択酸化反応による温度上昇分を差し引いた温度になるように、前記水銀除去後の可燃ガスを昇温させる第1の熱交換器と、前記温度調整手段の上流側に配設され、前記温度調整手段に導入される可燃ガスを熱媒としてアンモニア分解後の可燃ガスを昇温させる第2の熱交換器とを有することを特徴とする乾式ガス精製設備にある。
【0030】
本態様によれば、第3の態様の脱硫装置とアンモニア分解装置との間で降温する熱の一部を、当該乾式ガス精製設備から、例えばタービンに供給される可燃ガスで熱交換器により回収することもできる。
【0031】
この結果、第3の態様の作用・効果に加え、より高温の可燃ガスをタービン等の後続機器に供給することができるという作用・効果も奏する。
【0032】
本発明の第7の態様は、
第1、第2、第4又は第5の態様に記載する乾式ガス精製設備において、前記温度調整手段と前記アンモニア分解装置とは両者が一体化された構造となっており、しかも多段で所定の温度調整及びアンモニア分解を行うように構成したものであることを特徴とする乾式ガス精製設備にある。
【0033】
本態様では、温度調整とともにアンモニア分解処理が多段で行われる。
【0034】
この結果、アンモニア分解触媒における温度分布のばらつきを可及的に平準化でき、最も合理的な温度で分解反応を進行させることができる。また、一体化により設備の全体的な小型化に資することもできる。
【0035】
本発明の第8の態様は、
第1乃至第7の態様の何れか一つに記載する乾式ガス精製設備において、前記アンモニア分解触媒は、10員環構造もしくは12員環構造のゼオライトまたはシリカ・アルミナを担体として遷移金属を担持させて構成したものであることを特徴とする乾式ガス精製設備にある。
【0036】
本態様は、選択酸化によるアンモニア分解性能が良好であると同時に、炭素析出等の副反応を可及的に抑制し得るアンモニア分解触媒を使用した設備となる。
【0037】
この結果、高効率のアンモニア分解と同時に、当該アンモニア分解処理に伴う可燃ガスの劣化を可及的に低減し得る。
【0038】
本発明の第9の態様は、第1乃至請求項8の何れか一つに記載する乾式ガス精製設備において、前記脱硫装置の上流側に、前記乾式法により精製する可燃ガス中のハロゲン化物を除去するハロゲン化物除去装置を配設したことを特徴とする乾式ガス精製設備にある。
【0039】
本態様によれば、可燃ガス中のハロゲン化物を乾式で、しかも脱硫装置の上流側で除去している。
【0040】
この結果、当該ガス精製設備の熱効率を高く維持した状態で、下流側の機器等に対するハロゲン化物による悪影響を除去することもできる。
【0041】
本発明の第10の態様は、
石炭及び酸化剤の反応により石炭ガス化ガスを生成する石炭ガス化炉と、前記石炭ガス化炉で生成された石炭ガス化ガスを精製する第1至第9の態様の何れか一つに記載の乾式ガス精製設備と、前記乾式ガス精製設備で得られた可燃ガスを燃焼させる燃焼手段と、前記燃焼手段からの燃焼ガスを膨張することで動力を得るガスタービンと、前記ガスタービンの排気ガスの熱を回収して得られた蒸気を膨張することで動力を得る蒸気タービンとを備えたことを特徴とする石炭ガス化複合発電設備にある。
【0042】
本態様では、石炭ガス化ガスを乾式ガス精製設備で良好に精製するとともに、炭素析出等の副反応が抑制された燃料ガスがガスタービンに供給され、蒸気タービンによる複合発電が行われる。
【0043】
この結果、良質且つ高温の燃料ガスで高効率の発電を行うことができる。
【発明の効果】
【0044】
本発明に係る乾式ガス精製設備は、全体のガス精製処理を乾式で行うようにしたので、可燃ガスの温度を低下させることなく、高温状態を維持したままで所定の良好なガス精製を行うことができる。特に、選択酸化によるアンモニアの分解を200℃乃至500℃の反応温度で実施することができるので、可燃ガス中のアンモニア分を最も効率的に分解することができる。
【0045】
さらに、湿式のガス精製に較べ、廃棄物処理や排水処理設備の不要化による設備費、薬品費、処理費の低減乃至環境負荷の低減等の効果も得られる。
【0046】
また、本発明に係る石炭ガス化複合発電設備は、乾式ガス精製設備で高度に精製された高品質・高温の石炭ガス化ガスで高効率の発電を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施の形態に係る石炭ガス化ガス複合発電設備を示すブロック線図である。
【図2】図1の一部を抽出した本発明の第1の実施の形態に係る乾式ガス精製設備を示すブロック線図である。
【図3】図1の一部を抽出した本発明の第2の実施の形態に係る乾式ガス精製設備を示すブロック線図である。
【図4】図1の一部を抽出した本発明の第3の実施の形態に係る乾式ガス精製設備を示すブロック線図である。
【図5】図1の一部を抽出した本発明の第4の実施の形態に係る乾式ガス精製設備を示すブロック線図である。
【図6】図1の一部を抽出した本発明の第5の実施の形態に係る乾式ガス精製設備を示すブロック線図である。
【図7】図1の一部を抽出した本発明の第6の実施の形態に係る乾式ガス精製設備を示すブロック線図である。
【図8】各試作触媒毎のアンモニア分解特性を示すグラフである。
【図9】各試作触媒毎のN2Oの生成特性を示すグラフである。
【図10】各試作触媒毎のHCNの生成特性を示すグラフである。
【図11】各試作触媒毎のCO、CO2の反応・生成特性を示すグラフである。
【図12】各試作触媒毎のH2、CH4の反応・生成特性を示すグラフである。
【図13】アンモニア分解を多段で行う多段式アンモニア分解装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0049】
<石炭ガス化複合発電設備の実施の形態>
図1は本発明の実施の形態に係る石炭ガス化複合発電設備を示すブロック線図である。同図に示すように、当該石炭ガス化複合発電設備1は、石炭ガス化炉2を備え、石炭ガス化炉2では石炭と酸化剤(酸素、空気)の高温での反応により、炭素原子を含む可燃化合物、硫化物、アンモニア等を含む可燃ガスである石炭ガス化ガスgが生成される。石炭ガス化ガスgは図示しない除塵手段により除塵されて熱交換器3で所定の温度に調整され、さらに乾式ガス精製設備4で不純物が除去されて精製される。このように精製された石炭ガス化ガスが燃料ガスfとしてタービン設備5の燃焼器6に供給される。ここで、タービン設備5は圧縮機16及びガスタービン7を備え、圧縮機16で圧縮された圧縮空気と燃料ガスfとが燃焼器6に送られる。燃焼器6では燃料ガスfが燃焼され、燃焼ガスがガスタービン7に送られて膨張されて動力が得られる。ガスタービン7の排気ガスは排熱回収ボイラー8で熱回収され、排煙脱硝装置9で窒素酸化物が除去された後、煙突10から大気に放出される。
【0050】
一方、圧縮機16及びガスタービン7と蒸気タービン11が同軸状態で接続され、蒸気タービン11には発電機12が接続されている。排熱回収ボイラー8には、蒸気タービン11の排気蒸気を図示しない復水器で凝縮した復水が給水され、排熱回収ボイラー8ではガスタービン7の排気ガスにより蒸気を発生させる。排熱回収ボイラー8で発生した蒸気は蒸気タービン11に送られて動力が得られる。
【0051】
直列に接続されたガスタービン7及び蒸気タービン11の動力により発電機12が駆動され、ガスタービン7と蒸気タービン11による複合発電が行われる。
【0052】
上述した石炭ガス化複合発電設備1では、石炭ガス化炉2の酸化剤として圧縮機16の圧縮空気が抽気されて供給される(A)。熱交換器3には、排熱回収ボイラー8に送られる復水の一部が給水され(B)、石炭ガス化ガスとの熱交換により蒸気を発生させ、発生した蒸気は蒸気タービン11に送られる(C)。このため、この蒸気によっても蒸気タービン11の出力が追加される。
【0053】
上記構成の石炭ガス化複合発電設備1では、乾式ガス精製設備4により石炭ガス化ガスgが乾式精製により精製されて高温の燃料ガスfを得ている。
【0054】
ここで、乾式ガス精製設備のさらに具体的な構成を図2乃至図7に示す各実施の形態に基づき説明しておく。なお、各実施の形態において、同一部分には同一番号を付し、重複する説明は省略する。また、各図に示す温度はガス温度であるが、これらはあくまで一例であり、当然これらの温度に限定されるものではない。さらに、各温度は熱損失がない理想状態のものとして表わしている。
【0055】
<乾式ガス精製設備の第1の実施の形態>
図2は本発明の第1の実施の形態に係る乾式ガス精製設備を示すブロック線図である。同図に示すように、本形態に係る乾式ガス精製設備41は、石炭ガス化炉2で生成された石炭ガス化ガスgに含まれるハロゲン化物を最上流部で除去するハロゲン化物除去装置20と、ハロゲン化物が除去された石炭ガス化ガスgに含まれる硫化物を除去する脱硫装置21と、脱硫後の石炭ガス化ガスgを所定の温度に調整する温度調整装置22と、温度が調整された石炭ガス化ガスgに含まれるアンモニア分を空気aの存在(石炭ガス化ガスgを気相燃焼させ得ない量の酸素の存在)下で選択酸化により分解するアンモニア分解装置23と、最下流部に配設された物理的濾過装置(例えば、焼結フィルタ)である後置フィルタ24とを有しており、上流側から順にハロゲン化物、硫化物、アンモニア分が除去され、その他の微量成分等を含む粒子状物質を後置フィルタ24で除去することにより精製した燃料ガスfをタービン設備5に供給するように構成してある。
【0056】
さらに詳言すると、ハロゲン化物除去装置20では、例えばアルカリ系としてナトリウム系のハロゲン化物吸収剤であるアルミン酸ナトリウム(NaAlO2)がペレット状に成形されて使用され、これにより乾式法によりハロゲン化物である塩化水素(HCl)及びフッ化水素(HF)を同時に除去することができる。
【0057】
脱硫装置21では、酸化亜鉛系の脱硫剤である亜鉛フェライト脱硫剤をハニカム形状化して好適に使用することができ、亜鉛フェライト脱硫剤に石炭ガス化ガスgを接触させることで、硫化硫黄(H2S)や硫化カルボニル(COS)等を乾式で極低濃度まで除去することができる。ここで、亜鉛フェライト脱硫剤自体が水素化触媒の機能を持つため、硫化カルボニル(COS)をはじめとする有機硫黄化合物にも性能を発揮することができる。
【0058】
温度調整装置22は本形態の場合、脱硫後の高温(例えば、450℃)の石炭ガス化ガスgを低温(220℃)の石炭ガス化ガスgに降温する冷却器として機能するものであるが、これは、例えば石炭ガス化複合発電設備1(図1参照)の任意の蒸気発生源で発生する蒸気を供給し、この蒸気に硫化後の高温の石炭ガス化ガスgの顕熱を吸収させるように構成することで好適に実現し得る。
【0059】
アンモニア分解装置23には、選択酸化反応によるアンモニア分解のための触媒が充填されているが、この触媒としては、10員環構造又は12員環構造のゼオライトを担体とするものが好適である。ここで、10員環又は12員環とは酸素原子数10又は12の員環構造をいう。細孔径が小さい8員環構造のゼオライトでは細孔内に分子の大きさが大きい酸素が進入しにくく、したがって細孔内でアンモニアとの選択酸化反応も起こりにくい。これに対し細孔径が大きい10員環以上の構造のゼオライトは細孔内に酸素が容易に進入できるので細孔内でのアンモニアとの選択酸化反応が促進される。ところが、細孔径が大きいほど細孔内で炭素の成長及び含炭素化合物の重合がし易くなり、炭素析出が生じ易くなる。このため、アンモニアの選択酸化による分解反応を促進させると同時に、触媒の表面で一酸化炭素等が炭素に分解される反応等を抑制するには、細孔構造が10員環構造又は12員環構造のゼオライトが好適であり、中でも10員環構造のゼオライトが最適である。10員環構造のゼオライトとしてはZSM−5ゼオライト及びZSM−11ゼオライトを挙げることができる。また、12員環構造のゼオライトとしてはY型ゼオライトが好適である。
【0060】
なお、シリカ/アルミナ比が大きいほどゼオライトの結晶安定性が向上し、高温・高水蒸気条件下でもゼオライトの構造が維持されるので触媒寿命が延伸される。触媒の活性物質としては遷移金属、例えばニッケルが好適である。
【0061】
また、ゼオライト以外で同様の機能を期待し得る担体としてはシリカ・アルミナがある。
【0062】
すなわち、本形態における触媒は10員環構造もしくは12員環構造のゼオライトまたはシリカ・アルミナを担体としてニッケルを担持させて好適に形成することができる。
【0063】
ここで、触媒の形状に特別な制限はない。粉末状、ペレット状、ハニカム形状等の何れであっても構わない。また、活性物質の担持形態にも特別な限定はない。すなわち、所定形状の担体の少なくとも表面にニッケル等の遷移金属を担持させても良いし、粉末状の担体に遷移金属を担持させ、そのまま、又は粒状に成形して使用しても良い。さらに、これをスラリー状にして型に流し込み、焼成してハニカム等の所定形状に成形したものでも良い。
【0064】
また、選択酸化を促進すると同時に可燃成分が分解される反応を抑制するための酸素の添加量は、アンモニアに対しモル比で0.75mol/mol以上で且つ15mol/mol以下であることが望ましいが、気相燃焼を回避するためには限界酸素濃度以下の濃度にする必要がある。ちなみに、アンモニアが1000ppm含まれる石炭ガス化ガスの場合、アンモニアに対するモル比が15mol/molの酸素濃度は1.5vol%である。ここで、限界酸素濃度とは、所定の温度、圧力において可燃ガスが気相燃焼できなくなるような酸素濃度をいい、水素は1.5vol%、一酸化炭素は5.6vol%、メタンは12.1vol%、アンモニアはそれ以上である。かかる限界酸素濃度は反応場の温度や圧力により変化するので運転条件に即して調整することが肝要である。
【0065】
ここで、本形態では、選択酸化によるアンモニアの分解反応が300℃で行われるように、温度調整装置22によりアンモニア分解装置23の入口側ガス温度を220℃に調整したが、これは選択酸化によるアンモニア分解の際の反応熱によるアンモニア分解触媒の表面温度の上昇分(この場合は80℃(=300℃−220℃))を見込んだためである。したがって、一般的には、温度調整装置22によるアンモニア分解装置23の入口側ガス温度は、燃料の劣化や炭素析出を抑制しながらアンモニアを最も効率的に分解する触媒層の温度から、その際の酸素または空気の添加量と酸素の反応率によって定まる、選択酸化反応による温度上昇分を差し引いた温度に調整すれば良い。
【0066】
また、本形態におけるアンモニア分解処理の反応温度の温度範囲としては200℃乃至500℃が好ましく、さらに200℃乃至450℃がより好ましい。この点の根拠については、その知見の基礎となる実験とともに後で詳述する。
【0067】
上述の如き構成の本形態においては、乾式法により450℃(露点を上回る運転温度)でハロゲン除去及び脱硫処理を行うとともに、300℃で選択酸化反応によるアンモニア分解処理を行うとともに最下流部の後置フィルタ24で粒子状物質を捕捉して除去する。
【0068】
この結果、石炭ガス化ガスgの温度や圧力を維持して、タービン設備5等の後続機器に悪影響を与える不純物や微量成分を確実に除去して高温の燃料ガスをタービン設備5に供給することができる。また、本形態では選択酸化反応によるアンモニア分解を300℃で行うようにしたので、石炭ガス化ガスgの可燃成分を劣化させる副反応を抑制してアンモニアを良好に分解することができる。
【0069】
すなわち、温度調整装置22でアンモニア分解装置23の入口側温度が220℃に調整されて所定量の空気aとともに供給される石炭ガス化ガスgがアンモニア分解触媒に接触することにより、
4NH3+3O2→2N2+6H2O
で示されるアンモニアの選択酸化反応が促進され、同時にそれ以外のアンモニアの反応(一酸化窒素、二酸化窒素、亜酸化窒素、シアン化水素等の窒素化合物の生成)及び燃料ガスの反応(水素、一酸化炭素の酸化、炭素、炭化水素の生成等の反応)を効果的に抑制しつつ石炭ガス化ガスgが含有するアンモニア分を良好に分解する。
【0070】
なお、本形態において、ハロゲン化物除去装置20及び後置フィルタ24は必要に応じて設ければよい。
【0071】
<乾式ガス精製設備の第2の実施の形態>
図3は本発明の第2の実施の形態に係る乾式ガス精製設備を示すブロック線図である。同図に示すように、本形態に係る乾式ガス精製設備42は、図2に示す第1の実施の形態のアンモニア分解装置23の下流側にアンモニア分解後の石炭ガスgに含まれる水銀を除去する水銀除去器25及び熱交換器26を追加したものである。
【0072】
さらに詳言すると、水銀除去器25は、銅を主体として水銀を吸収する銅系吸収剤を水銀除去剤として好適に適用することができ、銅系吸収剤に石炭ガス化ガスgを接触させることで水銀を吸収させて除去する。水銀吸収剤としては、他にも化学反応性を有する成分を担持させ、水銀との化学反応により生成した塩を吸着することで水銀を除去する添着活性炭を用いることもできる。ここで、銅系吸収剤や添着活性炭は、低い温度(例えば180℃)で吸着性能を発揮するので、水銀除去器25には、アンモニア分を選択酸化により分解する際の反応熱で高温(例えば、300℃)になっている石炭ガス化ガスgを熱交換器26で180℃に降温して供給するようになっている。
【0073】
一方、熱交換器26の冷却媒体は、後置フィルタ24で不純物が濾過されて熱交換器26で昇温される低温(例えば、180℃)の燃料ガスfであるので、水銀除去器25に供給される前の高温(約450℃)の石炭ガス化ガスgの顕熱を低温(約180℃)の燃料ガスfの昇温に使用して熱エネルギを当該乾式ガス精製設備42の系内で回収することができる。
【0074】
このため、本形態によれば、アンモニア分解後の石炭ガス化ガスgに含まれる水銀を除去し得るばかりでなく、水銀除去器25に導入される石炭ガス化ガスgの温度を制御するための顕熱が燃料ガスfを昇温させるために回収され、低い運転温度の銅系吸収剤等を適用した場合であっても、水銀除去器25の運転温度に対する温度制御と燃料ガスfの高温維持を両立させることができる。
【0075】
<乾式ガス精製設備の第3の実施の形態>
図4は本発明の第3の実施の形態に係る乾式ガス精製設備を示すブロック線図である。同図に示すように、本形態に係る乾式ガス精製設備43は、図2に示す第1の実施の形態のアンモニア分解装置23の上流側に脱硫後の石炭ガスgに含まれる水銀を除去する水銀除去器25及び熱交換器26を追加したものである。ここで、水銀除去器25及び熱交換器26の構成自体は、図3に示す第2の実施の形態のものと同様である。ただ、本形態の熱交換器26はアンモニア分解装置23の入口温度(例えば、220℃)に調整した石炭ガス化ガスgを水銀除去器25に適した所定の低温(例えば、180℃)に降温するため、前記石炭ガス化ガスgを熱媒としてアンモニア分解装置23の入口側の温度が所定温度(例えば、220℃)になるように、水銀除去後の低温(例えば、180℃)の石炭ガス化ガスを昇温させるようになっている。すなわち、熱交換器26は水銀除去処理のため降温した石炭ガス化ガスgの顕熱を回収して、より高温(例えば300℃)で処理を行うアンモニア分解装置23へと、水銀を除去した石炭ガス化ガスgを供給するようになっている。
【0076】
かかる本形態においては、脱硫後の石炭ガス化ガスgに含まれる水銀を除去し得るばかりでなく、水銀除去器25に導入される石炭ガス化ガスgの温度を制御するための顕熱がアンモニア分解装置23に供給される石炭ガス化ガスgを昇温させるために回収され、低い運転温度の銅系吸収剤等を適用した場合であっても、水銀除去器25の運転温度に対する温度制御と石炭ガス化ガスgの高温維持を両立させることができる。
【0077】
さらに、本形態では、水銀除去器25がアンモニア分解装置23の上流側に配設されているので、水銀によるアンモニア分解触媒の劣化を有効に防止し得る。
【0078】
<乾式ガス精製設備の第4の実施の形態>
図5は本発明の第4の実施の形態に係る乾式ガス精製設備を示すブロック線図である。同図に示すように、本形態に係る乾式ガス精製設備44は、図2に示す第1の実施の形態に熱交換器27を追加したものである。この熱交換器27は温度調整装置22の上流側に配設され、温度調整装置22に導入される脱硫後の石炭ガス化ガスgを熱媒として、アンモニア分解後に後置フィルタ24で最終的に粒子状物質が除去されてタービン設備5に供給される燃料ガスfを昇温させる。
【0079】
かかる本形態によれば、第1の実施の形態の作用・効果に加え、さらに脱硫装置21とアンモニア分解装置23との間で降温する熱の一部を回収してタービン設備5に供給する燃料ガスfの温度を上昇させることができる。この結果、発電設備全体としての効率向上に資することができる。
【0080】
<乾式ガス精製設備の第5の実施の形態>
図6は本発明の第5の実施の形態に係る乾式ガス精製設備を示すブロック線図である。同図に示すように、本形態に係る乾式ガス精製設備45は、図3に示す第2の実施の形態に熱交換器27を追加したものである。この熱交換器27は温度調整装置22の上流側に配設され、温度調整装置22に導入される脱硫後の石炭ガス化ガスgを熱媒として、水銀除去後に後置フィルタ24で最終的に粒子状物質が除去されてタービン設備5に供給される燃料ガスfを昇温させる。
【0081】
かかる本形態によれば、第2の実施の形態の作用・効果に加え、さらに脱硫装置21とアンモニア分解装置23との間で降温する熱の一部を回収してタービン設備5に供給する燃料ガスfの温度を上昇させることができる。この結果、第4の実施の形態と同様に、発電設備全体としての効率向上に資することができる。
【0082】
<乾式ガス精製設備の第6の実施の形態>
図7は本発明の第6の実施の形態に係る乾式ガス精製設備を示すブロック線図である。同図に示すように、本形態に係る乾式ガス精製設備46は、図4に示す第3の実施の形態に熱交換器27を追加したものである。この熱交換器27は温度調整装置22の上流側に配設され、温度調整装置22に導入される脱硫後の石炭ガス化ガスgを熱媒として、アンモニア除去後に後置フィルタ24で最終的に粒子状物質が除去されてタービン設備5に供給される燃料ガスfを昇温させる。
【0083】
かかる本形態によれば、第3の実施の形態の作用・効果に加え、さらに脱硫装置21とアンモニア分解装置23との間で降温する熱の一部を回収してタービン設備5に供給する燃料ガスfの温度を上昇させることができる。この結果、第4及び第5の実施の形態と同様に、発電設備全体としての効率向上に資することができる。
【0084】
<アンモニア分解処理に関連する基礎実験>
上述の如き各実施の形態に係る乾式ガス精製設備41乃至46におけるアンモニア分解触媒は、10員環構造もしくは12員環構造のゼオライトまたはシリカ・アルミナを担体として遷移金属(例えばニッケル)を担持させたものが好適である旨、及びアンモニア分解処理の反応温度の温度範囲が200℃乃至500℃が好ましく、さらに200℃乃至450℃がより好ましい旨を述べたが、この点の根拠となる知見を得た基礎実験及びその結果の考察について言及しておく。
【0085】
本実験に用いた試作触媒であるアンモニア分解触媒の活性成分としては、ニッケル(Ni)を選定し、担体としては、アルミナ(Al2O3)、シリカ・アルミナ(SiO2・Al2O3)、ZSM−5ゼオライト(ZSM−5)、ベータゼオライト(Beta)、Y型ゼオライト(Y)を用いた。かかる試作触媒の一覧を表1に示す。
【0086】
【表1】
【0087】
表1に示す試作触媒で2〜3mmメッシュの粒状のアンモニア分解触媒を形成し石炭ガス化ガスを模擬した可燃ガスを接触させた。さらに詳言すると、前記可燃ガスの組成は、乾式給炭酸素富化空気吹き噴流床ガス化炉を用いた石炭ガス化複合発電設備の脱硫装置出口のガス組成を模擬することとし、可燃ガスに酸素を酸素/燃料比(O2/Fuel)で0.008mol/mol(NH3に対しモル比で約8mol/mol)添加した。実験は、空間速度(S.V.)が20000h−1、圧力が0.9MPaの条件で行った。
【0088】
このときの実験条件を表2に示す。
【0089】
【表2】
【0090】
本実験における可燃ガスの供給に際しては、先ず窒素(N2)気流中でアンモニア分解触媒層を150℃に昇温して温度が安定した後に可燃ガスおよび酸素を供給し、ガス組成の分析値が安定するまで保持した。次に、アンモニア分解触媒層を所定の温度に昇温後、20分一定温度に保持し、データを取得する操作を50℃毎に600℃まで繰り返した。このときのデータとは、分解ガス中のアンモニア(NH3)、シアン化水素(HCN)、一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO2)、一酸化二窒素(N2O)、水素(H2)、メタン(CH4)〜ブタン(C4H10)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO2)、窒素(N2)及び酸素(O2)の濃度である。
【0091】
かかる実験結果を図8乃至図12に示す。図8は触媒温度に対するアンモニア(NH3)の窒素(N2)への転換率を示す。なお、当該転換率は、分解したアンモニア(NH3)から、生成したシアン化水素(HCN)、一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO2)及び一酸化二窒素(N2O)を差し引いた濃度として所定の計算式を用いて計算した。
【0092】
また、図9は一酸化二窒素(N2O)、図10はシアン化水素(HCN)の触媒温度に対する生成率を示しており、図11は触媒出口の一酸化炭素(CO)及び二酸化炭素(CO2)の触媒温度に対する濃度を、図12は水素(H2)及びメタン(CH4)の触媒温度に対する濃度をそれぞれ示している。この中で、O2が消失した状態でのCOの濃度減少とCO2の濃度増加の同時発生は炭素析出が起きた証拠となる。なお、図には示さなかったがNO、NO2、エタン〜ブタンはほとんど生成せず、触媒出口のO2は450乃至500℃以上で消失していた。
【0093】
したがって、図9乃至図12の特性は、所定の選択酸化反応における可燃ガスの可燃分の劣化の程度、換言すれば副反応の抑制の程度の触媒温度に対する特性と見ることができる。
【0094】
これら図8乃至図12に示す実験結果を参照すれば、本形態における選択酸化によるアンモニア分解反応は触媒温度が200℃乃至500℃で行わせるのが好ましく、さらに200℃乃至450℃がより好ましいことが分かる。
【0095】
さらに、触媒自体について検討すれば、SiO2とAl2O3の両方を主な担体構成成分とするNi担持触媒が良好なアンモニア分解活性を示し、同時に可燃ガスの消費、炭素析出、CH4、N2O、HCN生成などの副反応を抑制できると考えられ、特にNi/ZSM−5が高いNH3分解活性及び副反応の抑制能力を有する。他にも、Ni/Y及びNi/SiO2・Al2O3がアンモニアの分解活性と広い温度範囲での炭素析出などの副反応を抑制できている。
【0096】
このように、Ni/ZSM−5が顕著なNH3選択酸化分解活性を有し、かつ広い温度範囲で炭素析出などの副反応を抑制できることが明らかとなった本実験の結果を踏まえれば、10員環構造のゼオライトであるZSM−5、12員環構造のゼオライトであるYゼオライト及びSiO2・Al2O3である担体に遷移金属(例えばニッケル)を担持させた触媒を使用した場合には広い温度範囲で副反応を抑制して可燃ガスとしての劣化を可及的に抑制しつつ含有するアンモニアを良好に分解することができると考えられる。
【0097】
また、上記触媒をはじめ、実験に使用した触媒におけるアンモニアの分解率を良好に維持しつつ、有害な副反応を有効に抑制し得る温度範囲として200℃乃至500℃が好ましく、さらに200℃乃至450℃がより好ましいことが分かった。
【0098】
<他の実施の形態>
一般に、乾式ガス精製設備の熱効率の観点から脱硫処理後の可燃ガス温度は高温の方が望ましい。したがって、脱硫装置の出口側温度がアンモニア分解装置の入口側温度よりも高温である場合が多い。換言すれば温度調整装置22は冷却器として機能させる場合が多い。ただ、乾式法による脱硫は露点を上回る温度で可燃ガスを処理することができれば良いので、アンモニア処理装置の入口温度との関係では昇温する場合を排除するものではない。要はアンモニア分解効率等の観点から設定されるアンモニア分解装置の入口温度に合わせ込むことができるように構成されていれば良い。
【0099】
さらに、アンモニア分解装置は温度調整装置と一体化して多段に構成しても良い。すなわち、図13に示すように、入口側から第1段目の温度調整装置28A、第1段目のアンモニア分解装置28B、2段目の温度調整装置28C、第2段目のアンモニア分解装置28Dをタンデムに接続し一体化して構成する。
【0100】
かかる多段アンモニア分解装置28において、例えば第1段目のアンモニア分解装置28Bの触媒量を多段でない場合の半分の量にすると、第1段目の温度調整装置28Aの入口側に脱硫後の高温(例えば450℃)の可燃ガスを選択酸化反応のための空気aとともに供給した場合、温度調整装置28Aでは多段でない場合より高い温度(例えば260℃)に降温してアンモニア分解装置28Bに供給すれば良い。この結果、アンモニア分解装置28Bでは触媒量が少ないために反応による温度上昇も少なくなり、所定の温度(例えば300℃)で選択酸化によるアンモニアの分解が行われる。次に、この結果昇温(例えば、300℃)された可燃ガスを第2段目の温度調整装置28Cに供給して所定の温度(例えば260℃)に降温し、残りの触媒量を充填した第2段目のアンモニア分解装置28Dに供給すれば、同様に所定の温度(例えば300℃)で選択酸化によるアンモニアの分解が行われる。
【0101】
この結果、かかる多段アンモニア分解装置28では、各アンモニア分解装置28B,28Dにおける温度分布のばらつきを可及的に平準化でき、最も合理的な温度で分解反応を進行させることができる。また、一体化により設備の全体的な小型化に資することもできる。
【0102】
さらに、上記各実施の形態では、可燃ガスとして石炭ガス化ガスを用いる石炭ガス化複合発電設備を説明したが、勿論これに限るものではない。可燃ガスは、石炭ガス化ガスに限らず、炭素原子を含む可燃化合物、硫化物、アンモニア等を含むガスであれば特に制限はなく、またこの種の可燃ガスを使用する設備としても前記可燃ガスを乾式精製して使用する設備であれば特に制限する必要はない。他の可燃ガスとしては、例えばバイオマス、重質油、都市ゴミ等の燃料をガス化炉で加熱分解して得るガスであっても良く、この種のガスを精製して使用する設備であれば、各種の発電設備や化学合成用のガス設備等であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明は、石炭ガス化ガス等の可燃ガスを乾式で精製する設備を利用する産業分野において有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0104】
1 石炭ガス化複合発電設備
2 石炭ガス化炉
4 乾式ガス精製設備
5 タービン設備
6 燃焼器
7 ガスタービン
11 蒸気タービン
12 発電機
16 圧縮機
20 ハロゲン化物除去装置
21 脱硫装置
22 温度調整装置
23 アンモニア分解装置
25 水銀除去器
26、27 熱交換器
28 多段アンモニア分解装置
28A、28C 温度調整装置
28B、28D アンモニア分解装置
41〜46 乾式ガス精製設備
【特許請求の範囲】
【請求項1】
精製する可燃ガスの温度を、露点を上回る温度に維持して運転する乾式法により、前記可燃ガス中の硫化物を除去する脱硫装置と、
前記脱硫装置で脱硫された前記可燃ガス中のアンモニア分を、アンモニア分解触媒を用いて200℃乃至500℃の反応温度で選択酸化反応により分解するアンモニア分解装置と、
前記アンモニア分解装置の上流側に配設され、前記アンモニア分解装置の入口側の可燃ガスの温度が、前記選択酸化反応の反応温度から前記選択酸化反応による温度上昇分を差し引いた温度になるように脱硫後の前記可燃ガスの温度を調整する温度調整手段とを有することを特徴とする乾式ガス精製設備。
【請求項2】
請求項1に記載する乾式ガス精製設備において、
前記アンモニア分解装置でアンモニア分が分解された可燃ガスに含まれる水銀を除去する水銀除去器と、
前記水銀除去器に導入される前記可燃ガスを熱媒として水銀除去後の可燃ガスを昇温させる熱交換器とを有することを特徴とする乾式ガス精製設備。
【請求項3】
精製する可燃ガスの温度を、露点を上回る温度に維持して運転する乾式法により、前記可燃ガス中の硫化物を除去する脱硫装置と、
前記脱硫装置で脱硫された前記可燃ガスの温度を所定の温度に調整する温度調整手段と、
前記温度調整手段で温度が調整された前記可燃ガスに含まれる水銀を除去する水銀除去器と、
前記水銀除去器で水銀が除去されて導入される可燃ガス中のアンモニア分を、アンモニア分解触媒を用いて200℃乃至500℃の反応温度で選択酸化反応により分解するアンモニア分解装置と、
前記水銀除去器に導入される前記可燃ガスを熱媒として、前記アンモニア分解装置の入口側の可燃ガスの温度が、前記選択酸化反応の反応温度から前記選択酸化反応による温度上昇分を差し引いた温度になるように、前記水銀除去後の可燃ガスを昇温させる熱交換器とを有することを特徴とする乾式ガス精製設備。
【請求項4】
精製する可燃ガスの温度を、露点を上回る温度に維持して運転する乾式法により、前記可燃ガス中の硫化物を除去する脱硫装置と、
前記脱硫装置で脱硫された前記可燃ガス中のアンモニア分を、アンモニア分解触媒を用いて200℃乃至500℃の反応温度で選択酸化反応により分解するアンモニア分解装置と、
前記アンモニア分解装置の上流側に配設され、前記アンモニア分解装置の入口側の可燃ガスの温度が、前記選択酸化反応の反応温度から前記選択酸化反応による温度上昇分を差し引いた温度になるように脱硫後の前記可燃ガスの温度を調整する温度調整手段と、
前記温度調整手段の上流側に配設され、前記温度調整手段に導入される可燃ガスを熱媒としてアンモニア分解後の可燃ガスを昇温させる熱交換器とを有することを特徴とする乾式ガス精製設備。
【請求項5】
請求項4に記載する乾式ガス精製設備において、
前記アンモニア分解装置でアンモニア分が分解された可燃ガスに含まれる水銀を除去する水銀除去器と、
前記水銀除去器に導入される前記可燃ガスを熱媒として水銀除去後の可燃ガスを昇温させる熱交換器とを有することを特徴とする乾式ガス精製設備。
【請求項6】
精製する可燃ガスの温度を、露点を上回る温度に維持して運転する乾式法により、前記可燃ガス中の硫化物を除去する脱硫装置と、
前記脱硫装置で脱硫された前記可燃ガスの温度を所定の温度に調整する温度調整手段と、
前記温度調整手段で温度が調整された前記可燃ガスに含まれる水銀を除去する水銀除去器と、
前記水銀除去器で水銀が除去されて導入される可燃ガス中のアンモニア分を、アンモニア分解触媒を用いて200℃乃至500℃の反応温度で選択酸化反応により分解するアンモニア分解装置と、
前記水銀除去器に導入される前記可燃ガスを熱媒として、前記アンモニア分解装置の入口側の可燃ガスの温度が、前記選択酸化反応の反応温度から前記選択酸化反応による温度上昇分を差し引いた温度になるように、前記水銀除去後の可燃ガスを昇温させる第1の熱交換器と、
前記温度調整手段の上流側に配設され、前記温度調整手段に導入される可燃ガスを熱媒としてアンモニア分解後の可燃ガスを昇温させる第2の熱交換器とを有することを特徴とする乾式ガス精製設備。
【請求項7】
請求項1、請求項2,請求項4又は請求項5に記載する乾式ガス精製設備において、
前記温度調整手段と前記アンモニア分解装置とは両者が一体化された構造となっており、しかも多段で所定の温度調整及びアンモニア分解を行うように構成したものであることを特徴とする乾式ガス精製設備。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7の何れか一つに記載する乾式ガス精製設備において、
前記アンモニア分解触媒は、10員環構造もしくは12員環構造のゼオライトまたはシリカ・アルミナを担体として遷移金属を担持させて構成したものであることを特徴とする乾式ガス精製設備。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8の何れか一つに記載する乾式ガス精製設備において、
前記脱硫装置の上流側に、前記乾式法により精製する可燃ガス中のハロゲン化物を除去するハロゲン化物除去装置を配設したことを特徴とする乾式ガス精製設備。
【請求項10】
石炭及び酸化剤の反応により石炭ガス化ガスを生成する石炭ガス化炉と、
前記石炭ガス化炉で生成された石炭ガス化ガスを精製する請求項1乃至請求項9の何れか一つに記載の乾式ガス精製設備と、
前記乾式ガス精製設備で得られた可燃ガスを燃焼させる燃焼手段と、
前記燃焼手段からの燃焼ガスを膨張することで動力を得るガスタービンと、
前記ガスタービンの排気ガスの熱を回収して得られた蒸気を膨張することで動力を得る蒸気タービンとを備えたことを特徴とする石炭ガス化複合発電設備。
【請求項1】
精製する可燃ガスの温度を、露点を上回る温度に維持して運転する乾式法により、前記可燃ガス中の硫化物を除去する脱硫装置と、
前記脱硫装置で脱硫された前記可燃ガス中のアンモニア分を、アンモニア分解触媒を用いて200℃乃至500℃の反応温度で選択酸化反応により分解するアンモニア分解装置と、
前記アンモニア分解装置の上流側に配設され、前記アンモニア分解装置の入口側の可燃ガスの温度が、前記選択酸化反応の反応温度から前記選択酸化反応による温度上昇分を差し引いた温度になるように脱硫後の前記可燃ガスの温度を調整する温度調整手段とを有することを特徴とする乾式ガス精製設備。
【請求項2】
請求項1に記載する乾式ガス精製設備において、
前記アンモニア分解装置でアンモニア分が分解された可燃ガスに含まれる水銀を除去する水銀除去器と、
前記水銀除去器に導入される前記可燃ガスを熱媒として水銀除去後の可燃ガスを昇温させる熱交換器とを有することを特徴とする乾式ガス精製設備。
【請求項3】
精製する可燃ガスの温度を、露点を上回る温度に維持して運転する乾式法により、前記可燃ガス中の硫化物を除去する脱硫装置と、
前記脱硫装置で脱硫された前記可燃ガスの温度を所定の温度に調整する温度調整手段と、
前記温度調整手段で温度が調整された前記可燃ガスに含まれる水銀を除去する水銀除去器と、
前記水銀除去器で水銀が除去されて導入される可燃ガス中のアンモニア分を、アンモニア分解触媒を用いて200℃乃至500℃の反応温度で選択酸化反応により分解するアンモニア分解装置と、
前記水銀除去器に導入される前記可燃ガスを熱媒として、前記アンモニア分解装置の入口側の可燃ガスの温度が、前記選択酸化反応の反応温度から前記選択酸化反応による温度上昇分を差し引いた温度になるように、前記水銀除去後の可燃ガスを昇温させる熱交換器とを有することを特徴とする乾式ガス精製設備。
【請求項4】
精製する可燃ガスの温度を、露点を上回る温度に維持して運転する乾式法により、前記可燃ガス中の硫化物を除去する脱硫装置と、
前記脱硫装置で脱硫された前記可燃ガス中のアンモニア分を、アンモニア分解触媒を用いて200℃乃至500℃の反応温度で選択酸化反応により分解するアンモニア分解装置と、
前記アンモニア分解装置の上流側に配設され、前記アンモニア分解装置の入口側の可燃ガスの温度が、前記選択酸化反応の反応温度から前記選択酸化反応による温度上昇分を差し引いた温度になるように脱硫後の前記可燃ガスの温度を調整する温度調整手段と、
前記温度調整手段の上流側に配設され、前記温度調整手段に導入される可燃ガスを熱媒としてアンモニア分解後の可燃ガスを昇温させる熱交換器とを有することを特徴とする乾式ガス精製設備。
【請求項5】
請求項4に記載する乾式ガス精製設備において、
前記アンモニア分解装置でアンモニア分が分解された可燃ガスに含まれる水銀を除去する水銀除去器と、
前記水銀除去器に導入される前記可燃ガスを熱媒として水銀除去後の可燃ガスを昇温させる熱交換器とを有することを特徴とする乾式ガス精製設備。
【請求項6】
精製する可燃ガスの温度を、露点を上回る温度に維持して運転する乾式法により、前記可燃ガス中の硫化物を除去する脱硫装置と、
前記脱硫装置で脱硫された前記可燃ガスの温度を所定の温度に調整する温度調整手段と、
前記温度調整手段で温度が調整された前記可燃ガスに含まれる水銀を除去する水銀除去器と、
前記水銀除去器で水銀が除去されて導入される可燃ガス中のアンモニア分を、アンモニア分解触媒を用いて200℃乃至500℃の反応温度で選択酸化反応により分解するアンモニア分解装置と、
前記水銀除去器に導入される前記可燃ガスを熱媒として、前記アンモニア分解装置の入口側の可燃ガスの温度が、前記選択酸化反応の反応温度から前記選択酸化反応による温度上昇分を差し引いた温度になるように、前記水銀除去後の可燃ガスを昇温させる第1の熱交換器と、
前記温度調整手段の上流側に配設され、前記温度調整手段に導入される可燃ガスを熱媒としてアンモニア分解後の可燃ガスを昇温させる第2の熱交換器とを有することを特徴とする乾式ガス精製設備。
【請求項7】
請求項1、請求項2,請求項4又は請求項5に記載する乾式ガス精製設備において、
前記温度調整手段と前記アンモニア分解装置とは両者が一体化された構造となっており、しかも多段で所定の温度調整及びアンモニア分解を行うように構成したものであることを特徴とする乾式ガス精製設備。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7の何れか一つに記載する乾式ガス精製設備において、
前記アンモニア分解触媒は、10員環構造もしくは12員環構造のゼオライトまたはシリカ・アルミナを担体として遷移金属を担持させて構成したものであることを特徴とする乾式ガス精製設備。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8の何れか一つに記載する乾式ガス精製設備において、
前記脱硫装置の上流側に、前記乾式法により精製する可燃ガス中のハロゲン化物を除去するハロゲン化物除去装置を配設したことを特徴とする乾式ガス精製設備。
【請求項10】
石炭及び酸化剤の反応により石炭ガス化ガスを生成する石炭ガス化炉と、
前記石炭ガス化炉で生成された石炭ガス化ガスを精製する請求項1乃至請求項9の何れか一つに記載の乾式ガス精製設備と、
前記乾式ガス精製設備で得られた可燃ガスを燃焼させる燃焼手段と、
前記燃焼手段からの燃焼ガスを膨張することで動力を得るガスタービンと、
前記ガスタービンの排気ガスの熱を回収して得られた蒸気を膨張することで動力を得る蒸気タービンとを備えたことを特徴とする石炭ガス化複合発電設備。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−68841(P2011−68841A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−223515(P2009−223515)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]