説明

予熱板、それを備えた定着装置および印刷装置

【課題】を提供する。
【解決手段】内部に熱源4を配置して、トナー像2を担持した被記録媒体1を表面に沿って通過させることにより、トナー像2を被記録媒体1の裏面側から予備加熱する予熱板3において、被記録媒体1の走行方向Xおよび被記録媒体幅方向Yにおいて分割された複数の発熱領域I〜IVを有し、各発熱領域I〜IV毎に熱源4と、被記録媒体幅方向Yにおいて所定の間隔をおいて配置された複数の温度センサ12a〜12jを内蔵して、各発熱領域I〜IV毎に設けられた複数の温度センサ12a〜12jの内から選択された1つの温度センサ12の検出出力に基づいて熱源4の発熱を制御する制御手段11を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予熱板(プレヒータ)、それを備えた定着装置および印刷装置に係り、特に予熱板に内蔵されるヒータなどの熱源と、その熱源の発熱制御に用いられる温度センサの構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図6は、従来の定着装置の概略構成図である。
同図に示すように、トナー像2を担持した印刷用紙などの被記録媒体(以下、印刷用紙と略称する)1は、複数本のランプ構造のヒータ4a,4b,4c,4dを内蔵した予熱板3により用紙裏面から加熱され、この加熱で軟化したトナー像2は、次の複数本の発熱ランプ6を内蔵した加熱ローラ5と、支持体7に支持された加圧ローラ8により挟持搬送されることで、印刷用紙1上に溶融・定着される。
【0003】
前記予熱板3の内部には、例えばサーミスタからなる複数個の温度センサ9a,9b,9c,9dが配置されており、予熱板3の表面温度は、印刷に使用する印刷用紙1の幅や種類などに応じて、各温度センサ9a,9b,9c,9dでの検出温度をトナー像2の軟化に必要な温度範囲内に保つように、制御部10によって前記ヒータ4a,4b,4c,4dを点灯/消灯させて制御している。
【0004】
各ヒータ4a〜4dの発熱領域は、印刷用紙1の幅や種類など考慮して、例えば4分割されており、ヒータ4a〜4dに対して所定の位置に前記温度センサ9a,9b,9c,9dが各発熱領域内に1個ずつ配置されている。
【0005】
これにより予熱板3は、図7に示すように、4つの異なる発熱領域I,II,III,IVを持つことになり、各発熱領域I〜IVは或る温度範囲内に制御されることになる。
【0006】
前述のように各ヒータ4a〜4dの発熱領域が分割されている理由は、予熱板3上に搬送されて来た印刷用紙1に発生する、用紙1自体が有する温度と予熱板3の制御温度との差による用紙の収縮や変形などのダメージを最小に抑え、加熱ローラ5と加圧ローラ8で挟持搬送されるまでに、トナー像2を軟化させるのに必要な熱量を供給することと、様々な幅や厚さを有する印刷用紙1に対応して、予熱板3上の非印刷用紙走行領域における無駄な熱の供給を抑えるためである。
【0007】
従って前記理由により、一般的に制御部10では、用紙幅方向に並んだ発熱領域IとII、および発熱領域IIIとIVにおいては、同様の温度範囲を設定し制御しており、さらに用紙走行方向においては、発熱領域I,IIよりも発熱領域III,IVを高い温度範囲を設定し制御している。
【0008】
また、印刷用紙1の幅や変形などによって予熱板3との密着性が低下する状態には、発熱領域Iと発熱領域IIIにおける制御部10での温度制御方法とは異なる制御方法、例えば温度検出用に用いられている温度センサ9bと温度センサ9dは使用せず、予め設定された点灯率でヒータ4bとヒータ4dを点灯させる制御を行って、発熱領域IIと発熱領域IVを温度制御する場合もある。
【0009】
いずれの場合においても、従来技術においては各発熱領域に配置された一つの温度センサ9により予熱板3の表面温度が制御されていることには変わりない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述した従来技術においては、前記制御部10で、予熱板3の表面温度はトナー像2の軟化に必要な熱量を印刷用紙1に与えられるよう或る温度範囲内に制御されている。
【0011】
その際温度制御では、各温度センサ9a,9b,9c,9dが印刷用紙1で覆われており、印刷用紙1への熱量供給により低下した予熱板3の表面温度が適正に検出されていることが必要となる。
【0012】
しかし、様々な幅の印刷用紙1に対応する場合においては、発熱領域Iおよび発熱領域IIIが必ず印刷用紙1で覆われるように、すなわち最小用紙幅に対応するような分割をしても、発熱領域IIおよび発熱領域IVでは必ずしも温度センサ9bおよび温度センサ9dが印刷用紙1で覆われるとは限らない。
【0013】
印刷用紙1の幅によっては、予熱板3の用紙幅領域外、すなわち非印刷用紙走行領域に温度センサ9bおよび温度センサ9dが存在する場合もある。
【0014】
このように、予熱板3の非印刷用紙走行領域に温度センサ9bおよび温度センサ9dがある場合には、発熱領域IIおよび発熱領域IV内でも印刷用紙1へ熱供給を行っていない部分の予熱板3の表面温度を検出することになる温度センサ9bおよび温度センサ9dによって、制御されている状態となっている。
【0015】
しかしながら、この場合、備え付けられている温度センサ9bおよび温度センサ9dが検出する予熱板3の表面温度と、発熱領域IIおよび発熱領域IV内でも実際に印刷用紙1が走行する印刷用紙走行領域で印刷用紙1へ熱供給を行っている部分の予熱板3の表面温度との間に温度差が生じる。
【0016】
当然、印刷用紙走行領域で印刷用紙1への熱供給を行っている部分の予熱板3の表面温度の方が、印刷用紙1への熱供給を行っていない部分、つまり温度センサ9bおよび温度センサ9dが検出する予熱板3の表面温度よりも目標する或る温度範囲よりかけ離れた温度状態となる。
【0017】
このような状態においても、制御部10は温度センサ9bおよび温度センサ9dの検出温度に基づいて発熱領域IIおよび発熱領域IVの温度制御を行うため、印刷用紙1の発熱領域IIおよび発熱領域IVを走行する領域において、予熱板3からの供給熱量が減少する状態となる。
【0018】
この状態は、連続紙印刷装置において、厚紙用紙印刷時や印刷用紙幅により予熱板3への熱負荷の偏りが発生する場合に顕著に現れる。
【0019】
このように、印刷用紙1への供給熱量が部分的に低下した状態で印刷が行われると、トナー像2の軟化や定着工程に必要な熱量を予熱板3より印刷用紙1へ供給できない状態となり、部分的な熱量過少による定着不良、すなわち印刷品質の不均一という問題を引き起こしていた。
【0020】
この問題を解決するために、前記発熱領域IIおよび発熱領域IVは、温度センサ9bおよび温度センサ9dを使用せずに、予め設定された手法により温度制御する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0021】
しかしながらその方法においても、温度センサの検出温度を用いずに印刷用紙への供給熱量を確保するために、前記発熱領域IIおよび発熱領域IVにおいて、印刷用紙への供給熱量が過剰になることが生じた場合は、その熱量過剰による文字などの画像のにじみという印刷品質の不均一という課題を引き起こす可能性があった。
【0022】
本発明の目的は、このような従来技術の欠点を解消し、安定した印刷品質が得られる予熱板、それを備えた定着装置および印刷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
前記目的を達成するため、本発明は、
内部に例えばヒータなどの熱源を配置して、トナー像を担持した例えば記録用紙などの被記録媒体を表面に沿って通過させることにより、前記トナー像を前記被記録媒体の裏面側から予備加熱する予熱板において、
前記被記録媒体の走行方向およびその被記録媒体走行方向と直交する被記録媒体幅方向において分割された複数の発熱領域を有し、
各発熱領域毎に前記熱源と、前記被記録媒体幅方向において所定の間隔をおいて配置された複数の温度センサを内蔵して、
前記各発熱領域毎に設けられた複数の温度センサの内から選択された1つの温度センサの検出出力に基づいて前記熱源の発熱を制御する制御手段を設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明は前述のような構成になっており、安定した印刷品質が得られる予熱板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施例に係る定着装置の概略構成図である。
【図2】その定着装置に用いる予熱板上での発熱領域に対するヒータと温度センサの配置関係を説明するための概略平面図である。
【図3】本発明の実施例において制御部によるヒータの温度制御方法を説明するためのフローチャートである。
【図4】本発明の他の実施例に係る予熱板上での発熱領域に対するヒータと温度センサの配置関係を説明するための概略平面図である。
【図5】本発明を適用したレーザビームプリンタの概略全体構成図である。
【図6】従来の定着装置の概略構成図である。
【図7】その定着装置の予熱板上での発熱領域に対するヒータと温度センサの配置関係を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に本発明の実施例を図面とともに説明する。
(印刷装置全体の概略構成)
始めに、本発明を適用した印刷装置として電子写真方式を用いたレーザビームプリンタを例示し、その全体構成を図5を用いて説明する。
【0027】
同図において、符号21はレーザビームプリンタであり、そのコントローラ22からの印刷動作開始信号に基づいて感光体ドラム23が矢印方向に回転を始める。感光体ドラム23は、レーザビームプリンタ21の印刷速度に相当する速度で回転し、印刷動作が終了するまで回転を続ける。感光体ドラム23が回転を開始すると、コロナ帯電器24に高電圧が印加され、感光体ドラム23の表面に例えば正の電荷が一様に帯電される。
【0028】
回転多面鏡25は、レーザビームプリンタ21に電源が投入されると直ちに回転を開始し、電源が投入されている間、高精度に定速回転が維持される。半導体レーザなどの光源26から出力した光(レーザビーム)は、回転多面鏡25で反射し、fθレンズ27を通じて感光体ドラム23上を走査しながら照射する。
【0029】
ドットイメージに変換された文字データや画像データがレーザビームのON/OFF信号として前記コントローラ22からレーザビームプリンタ21に送られると、感光体ドラム23の表面にレーザビームが照射される部分と照射されない部分とが形成され、それによって前記データに基づいた静電潜像が形成される。
【0030】
この静電潜像を形成した感光体ドラム23の領域が現像装置28と対向する位置に到来すると、現像装置28内のトナーが前記静電潜像に供給され、レーザビームの照射により感光体ドラム23上の電荷が消失した部分に、例えば正電荷を帯電したトナーが静電気により吸引されて感光体ドラム23上にトナー像が形成される。
【0031】
一方、用紙ホッパー29に収納されている長尺状の連続した印刷用紙1は、用紙搬送トラクタ31によって、感光体ドラム23上に形成されたトナー像が転写位置に到達するタイミングと同期させて、感光体ドラム23と転写器32の間に向けて搬送・供給される。
【0032】
感光体ドラム23上に形成されたトナー像は、印刷用紙1の裏面側にトナー像と逆極性の電荷を付与する転写器32の作用によって印刷用紙1上に吸引・転写される。
【0033】
このようにして、用紙ホッパー29にセットされていた印刷用紙1は、用紙搬送トラクタ31、転写器32、用紙搬送トラクタ33およびバッファプレート34を経て定着装置35に搬送される。
【0034】
定着装置35に到着した印刷用紙1は、内部に複数本のヒータを有する予熱板(プレヒータ)3で予熱された後、内部に複数本の発熱ランプ6を備えた加熱ローラ5と加圧ローラ8からなる一対の定着ローラによって形成されるニップ部によって加熱・加圧されながら挟持・搬送され、前記トナー像が印刷用紙1に溶融・定着される。
【0035】
加熱ローラ5と加圧ローラ8によって送り出された印刷用紙1は、用紙送り出しローラ36によってスタッカーテーブル37側に送り出されるとともに、スイングフィン38の揺動動作によってミシン目に沿って交互に折り分けられ、さらに、回転するパドル39で折り畳み状態が整えられながら、スタッカーテーブル37上に積み重ねられて行く。
感光体ドラム23の転写位置を通過した領域は、清掃装置40で表面が清掃されて、次に印刷動作に備えられる。
【0036】
図中の符号41は、印刷動作中のレーザビームプリンタ21の状態に基づく情報を表示したりする表示画面である。また、符号42は加熱ローラ5の表面に接触可能で、且つ巻き取り可能に設けられたウェブ部材で、加熱ローラ5の表面に離型剤(オイル)の塗布を行なうためのものである。
【0037】
(定着装置の概略構成)
図1は本実施例に係る定着装置35の概略構成図、図2はその定着装置35に用いる予熱板3上での発熱領域に対するヒータ4と温度センサ12の配置関係を説明するための概略平面図である。なお、図2において、ヒータ4や温度センサ12は予熱板3に内蔵されているため図1と同様に点線で示すところであるが、ヒータ4や温度センサ12の位置を明確に表すため実線で示している。
【0038】
図1に示すように、トナー像2を担持した印刷用紙1は、予熱板(プレヒータ)3により印刷用紙1の裏面側から加熱され、この加熱で軟化したトナー像2は、複数本の発熱ランプ6を内蔵した加熱ローラ5と、支持体7に支持された加圧ローラ8により挟持搬送されることで、印刷用紙1上に溶融・定着される。
【0039】
前記予熱板3は図2に示すように、本実施例の場合4つの発熱領域I,II,III,IV、すなわち、印刷用紙走行方向Xの上流側に、印刷用紙幅方向(印刷用紙走行方向Xと直交する方向)Yにわたって第1の発熱領域Iと第2の発熱領域IIが設けられている。また、印刷用紙走行方向Xの下流側にも同様に、印刷用紙幅方向Yにわたって第3の発熱領域IIIと第4の発熱領域IVが設けられている。各発熱領域I〜IVの面積は均等であり、各発熱領域I〜IVは夫々或る目標温度に制御される。
【0040】
このように予熱板3を複数の発熱領域I〜IVに分割する理由は、予熱板3上に搬送されて来た印刷用紙1に発生する、用紙1自体の温度と予熱板3の制御温度との差による用紙収縮や変形などのダメージを最小に抑え、加熱ローラ5と加圧ローラ8で挟持搬送されるまでに、トナー像2を軟化させるのに必要な熱量を供給することと、様々な幅の印刷用紙1に対応して非印刷用紙走行領域における無駄な熱の供給を抑えるためである。
【0041】
本実施例における印刷用紙1の搬送は、印刷用紙幅方向Yにおいて、用紙サイズにかかわらず、一方側(本実施例では図1に向って右側、すなわち第1、第3の発熱領域I、III側(図2参照))に沿わせる片側基準搬送方式で行なわれる。
【0042】
図2に示すように、ヒータ4a〜4dは各発熱領域I〜IVに対して2本ずつ配置されているが、第1の発熱領域Iと第3の発熱領域IIIに配置されるヒータ4aとヒータ4cは、発熱領域を印刷用紙走行方向Xに2分割したときに、それぞれ印刷用紙走行方向Xの上流側に配置されている。一方、第2の発熱領域IIと第4の発熱領域IVに配置されるヒータ4bとヒータ4dは、発熱領域を印刷用紙走行方向Xに2分割したときに、それぞれ印刷用紙走行方向Xの下流側に配置されている。従って、ヒータ4a〜4dは、予熱板3全体から見て千鳥状の配列となっている。
【0043】
これは、ヒータ4a〜4d全てを通電したときに、熱を発熱領域I〜IV全体にほぼ均等に行き渡らせつつ、同一仕様の熱源(ヒータ)が使用でき、また、ヒータ4a〜4dの配線の取り回しを一方向から取り出せる効率的な配置によるものである。
図1に示すように、各ヒータ4a〜4dからの配線は同一方向に取り出されて、それぞれ制御部11に接続されている。
【0044】
各発熱領域I〜IVには、印刷用紙幅方向Yに任意の間隔をあけて複数個(本実施例では、2個と3個)のサーミスタからなる温度センサ12a〜12jが配置されている。各温度センサ12a〜12jは各発熱領域I〜IVにおける予熱板3の表面温度を検出する。
【0045】
本実施例の場合、図2に示すように、用紙の走行基準側である第1の発熱領域Iには2本のヒータ4aの間に2個の温度センサ12a,12bが、第2の発熱領域IIには2本のヒータ4bの間に3個の温度センサ12c,12d,12eが、用紙の走行基準側である第3の発熱領域IIIには2本のヒータ4cの間に2個の温度センサ12f,12gが、第4の発熱領域IVには2本のヒータ4dの間に3個の温度センサ12h,12i,12jが、それぞれ配置されている。
【0046】
なお、各発熱領域I〜IVにおける温度センサ12の設置個数はこれに限定されるものではないが、各発熱領域に対して2個以上設けると良い。但し、特定の発熱領域に対しては、幅が異なる印刷用紙を用いない構成とする場合には、この限りではない。具体的には、最小用紙サイズが、第1、第3の発熱領域I、IIIの幅方向より大きいか或るいはほぼ同等の場合、第1、第3の発熱領域I、IIIにおいては温度センサ12の設置個数を1個ずつとすることもできる。
【0047】
各温度センサ12の配置位置に関して、印刷用紙幅方向Yでは、各温度センサ12の温度監視領域内にある各ヒータ4の発熱領域の中央位置を基本とする。
【0048】
本実施例では、幅寸法A(図2参照)が20インチの予熱板3を使用しており、第1の発熱領域I(発熱領域Iの幅寸法=A/2)内に配置される2個の温度センサ12a,12bのうち、温度センサ12aは、2本のヒータ4aの間で、且つ、用紙幅中央の位置(図2に示す端部Zから5インチの位置)に配置されている。
【0049】
これは、対応する印刷用紙1の最小幅にて覆われる位置であり、且つ、第1の発熱領域I全体の温度を確認する必要性から、幅方向の中央位置に2個配置し、また、熱源の中心である2本のヒータ4aの間に配置する。
【0050】
なお、各発熱領域内でのヒータ4の設置数が1本あるいは3本の場合、前述した理由により、温度センサ12の印刷用紙走行方向Xにおける位置は、ヒータユニットのできるだけ中央位置に置く方が望ましい。
【0051】
また、前記温度センサ12aと同じ第1の発熱領域Iに配置される温度センサ12bは、使用される印刷用紙1を考慮して、温度センサ12bを配置する。本実施例では、最小幅の印刷用紙1(例えば幅8インチ)により前記温度センサ12aは覆われる。温度センサ12bは、最小幅の8インチよりも幅が広く、且つ、発熱領域Iの幅10インチよりも狭い用紙(例えば9インチなど)の用紙が使用された際に、より適切な温度制御を行なうために配置される。従って、温度センサ12bは、温度センサ12aよりも第2の発熱領域IIに近く、且つ、使用する用紙が最小幅の印刷用紙1の場合には覆われない位置に配置することが望ましい。
【0052】
一方、第2の発熱領域II(発熱領域IIの幅寸法=A/2)に配置される3個の温度センサ12c,12d,12eについては、3個の温度センサ12c,12d,12eのうちの中間位置の温度センサ12dは、前記温度センサ12aと同様、ヒータ4bの中央位置に配置される。また、温度センサ12cと12eは、前記温度センサ12dの両側で等間隔の位置に配置される。また、温度センサ12b,12c,12eについて、印刷用紙幅方向Yの位置は、用いられる印刷用紙1の幅や連量により、予熱板3の表面温度を制御するに適した温度センサ12の配置位置に合わせる。
【0053】
ここで、本実施例においては、使用される代表的な印刷用紙1(規格紙:幅12インチ、幅15インチ、幅19.5インチ)に合わせて、それぞれ、各用紙にセンサ面が覆われるように、それぞれ端部Zから10.5インチ離れた所に温度センサ12cを、13.5インチ離れた所に温度センサ12dを、18インチ離れた所に温度センサ12eを、それぞれ配置した。また、併せて、使用する規格紙の幅を考慮し、発熱領域I、IIIの印刷用紙幅方向Yの幅を9インチ、同様に、発熱領域II、IVの幅を10.5インチとした。
【0054】
当然のことながら、使用する印刷用紙1のサイズなどにより、温度センサ12の位置は変更してもよく、従って、前記の位置に限定されるものではない。例えば、上記では温度センサ12cを13.5インチとしたが、発熱領域II、IVの幅方向の略中央位置となる14.5インチの位置に配置し、各発熱領域でより中央領域付近になるように配置しても良い。
【0055】
また、予熱板3内の第1の発熱領域Iと第3の発熱領域III、第2の発熱領域IIと第4の発熱領域IVのように、同一幅の印刷用紙1が走行する発熱領域での温度センサ12の配置位置は、印刷用紙1へ熱供給するヒータ4の構成が同一であるという観点から、それぞれ同じ位置が望ましい。すなわち、本実施例では、第3の発熱領域IIIにおける温度センサ12f,12gは前記温度センサ12a,12bと同じ配置、また、第4の発熱領域IVにおける温度センサ12h,12i,12jは前記温度センサ12c,12d,12eと同じ配置が望ましい。
【0056】
なお、各発熱領域I〜IVにおいて、複数の温度センサ12a〜12jは印刷用紙幅方向Yにおいて一列に配置されている。これは、或る幅の印刷用紙1において、用紙走行領域と非用紙走行領域での温度センサ12の検出状態を認識させるための理由からである。
【0057】
更に、予熱板3の厚み方向では、使用する温度センサ12の温度検出性能を最大限に発揮する位置、例えば、予熱板3の用紙走行面に最も近づける位置に温度センサ12を設置する。しかしこの位置も、使用する予熱板3の形状や温度センサ12自体の保護も考慮して、あらゆる幅や連量の印刷用紙1に対応した温度制御を行うために、例えば、予熱板3の用紙走行面より数mm沈めた位置に温度センサ12を設置することを基本とする。
図1に示すように、各温度センサ12a〜12jの信号線は、制御部11にそれぞれ接続されている。
【0058】
(制御部によるヒータの温度制御方法)
制御部は、各ヒータ4a〜4dの付近に設置された温度センサ12a〜12jの中から、発熱領域I〜IV毎にそれぞれ何れか1つの温度センサ12を選択して、その選択された各々の温度センサ12の出力値に基づいて、各ヒータ4a〜4dの点灯/消灯(ON/OFF)制御を行う。
【0059】
次に制御部11によるヒータ4a〜4dの温度制御方法について、図3のフローチャートを用いて説明する。
先ず、ステップ(以下、Sと略記する)1で、ヒータ4a〜4dを全灯(通電)する。これは、より早くヒータを加熱させる目的がある。また、仮に、発熱領域の片側(発熱領域I、III)のみの点灯では、印刷用紙1への熱量付与以外に、もう一方のヒータが点灯していない側(発熱領域II、IV)にも熱が奪われてしまい、その結果、温度制御に不都合が生じるためである。
【0060】
次にS2で、使用する印刷用紙1の幅が、温度センサ12aから温度センサ12jまでの全てを覆うことができる幅であるかどうかの判断がなされる。なお、使用する印刷用紙1の幅は、図示しない用紙幅検知センサによって制御部11に入力され、それに基づいて前記S2の判断がなされる。なお、そう(YES)であればS3で、その印刷用紙1の走行領域内に全ての温度センサ12a〜12jが配置されていることになり、「予熱板3≒印刷用紙1への供給熱量」と考えられる。その場合には、各発熱領域I〜IVにおける動作を許される温度センサ12として、各発熱領域I〜IVで中央に備えられている温度センサ12を選択する。
【0061】
これは、発熱領域の略全域が覆われる場合、各ヒータの中央部(もしくは中央付近)の温度が、各発熱領域での温度が反映された状態となり、温度制御に適しているためである。
【0062】
本実施例の場合、第1の発熱領域Iでは温度センサ12a、第2の発熱領域IIでは温度センサ12d、第3の発熱領域IIIでは温度センサ12f、第4の発熱領域IVでは温度センサ12iが選択される。
【0063】
次にS4で、選択された温度センサ12からの検出温度を制御部11に入力し、制御部11に予め記憶されている各発熱領域I〜IVでの設定温度と個別に比較され、検出温度が設定温度に達していない領域に設置されているヒータ4に対しては点灯が続行され、検出温度が設定温度に達した領域に設置されているヒータ4は消灯される。このように各温度センサ12により、各ヒータ4a〜4dの点灯/消灯制御が行われて、予熱板3の表面温度を適切に調整・維持する。
【0064】
なお、印刷用紙幅方向Yに並んだ発熱領域IとII、および発熱領域IIIとIVにおいては、同様の温度範囲を設定しており、さらに用紙走行方向Xにおいては、発熱領域I,IIよりも発熱領域III,IVを高い温度範囲に設定している。
【0065】
前記S2でNOと判断されるとS5に進み、使用する印刷用紙1の幅が、第2の発熱領域IIの温度センサ12cおよび第4の発熱領域IVの温度センサ12hの上を覆うが、第2の発熱領域IIの温度センサ12d,12eおよび第4の発熱領域IVの温度センサ12i,12jは覆わない幅であるかどうかの判断がなされる。
【0066】
そう(YES)であれば、第2の発熱領域IIと第4の発熱領域IVに非用紙走行領域が存在することになり、「予熱板3≠印刷用紙1への供給熱量」と考えられ、印刷用紙1への供給熱量に過不足が生じる恐れがある。
【0067】
このときも各発熱領域I〜IVにおいて各々1つ選択される温度センサ12として、各発熱領域I〜IVにおいて印刷用紙1で覆われている温度センサ12が選択される。そして、同じ発熱領域において、複数個の温度センサ12が印刷用紙1で覆われている場合、印刷用紙幅方向Yにおいて、より中央に近い温度センサ12が選択される。
【0068】
具体的には、第1の発熱領域Iではより中央に近い温度センサ12a、第2の発熱領域IIでは印刷用紙1で覆われている温度センサ12として温度センサ12c、第3の発熱領域IIIではより中央に近い温度センサ12f、第4の発熱領域IVでは印刷用紙1で覆われている温度センサ12として温度センサ12hが選択される(S6)。
【0069】
このようにして温度センサ12の選択がなされると、前述のS4に進み、選択された温度センサ12に基づいて各ヒータ4a〜4dの点灯/消灯制御が行われ、予熱板3の表面温度を適切に調整・維持する。
【0070】
前記S5でNOと判断されるとS7に進み、使用する印刷用紙1の幅が、第2の発熱領域IIの温度センサ12c,12dおよび第4の発熱領域IVの温度センサ12h,12iの上を覆うが、第2の発熱領域IIの温度センサ12eおよび第4の発熱領域IVの温度センサ12jは覆わない幅であるかどうかの判断がなされる。
【0071】
そう(YES)であれば、各発熱領域I〜IVにおいて各々1つ選択される温度センサ12として、各発熱領域I〜IVにおいて印刷用紙1で覆われている温度センサ12が選択される。そして、同じ発熱領域において、複数個の温度センサ12が印刷用紙1で覆われている場合、印刷用紙幅方向Yにおいて、より中央に近い温度センサ12を選択する。
【0072】
具体的には、第1の発熱領域Iでは温度センサ12a、第2の発熱領域IIでは温度センサ12dまたは12c、第3の発熱領域IIIでは温度センサ12f、第4の発熱領域IVでは温度センサ12iまたは12hが選択される(S8)。
【0073】
具体的には、用紙幅方向の左側端部が、温度センサ12e側に近い場合、例えば、用紙幅が17インチの場合、発熱領域II、IVの右側9インチ分が覆われることになる。そのため、用紙に覆われている温度センサ12dと12c(および温度センサ12i、12h)のうち、13.5インチの位置にある温度センサ12d、12iがそれぞれ選択される。
【0074】
また、用紙幅が14インチの場合、発熱領域II、IVの右側5インチ分が覆われることになるため、用紙に覆われている温度センサ12dと12c(および12iと12h)のうち、発熱領域II、IVの用紙で覆われた幅方向範囲において、より中央に近い温度センサ12c、12hがそれぞれ選択される。
【0075】
このようにして温度センサ12の選択がなされると、前述のS4に進み、選択された温度センサ12に基づいて各ヒータ4a〜4dの点灯/消灯制御が行われ、予熱板3の表面温度を適切に調整・維持する。
【0076】
前記S7でNOと判断されると、使用される印刷用紙1の幅は、第1、第3の発熱領域I、IIIの幅方向とほぼ同等の幅の用紙から最小の幅用紙のいずれかであるから、本実施例においては、幅方向でより中央に近い第1の発熱領域Iの温度センサ12aと第3の発熱領域IIIの温度センサ12fが選択され、第2の発熱領域IIならびに第4の発熱領域IVの温度センサ12は全て印刷用紙1で覆われていないから、本温度制御方法における温度センサ12としては選択されない(S9)。なお、温度センサ12b、12gは、非走行用紙領域となる場合に、温度制御の選択(温度センサ12a、12f)の制御に加えた制御として、より詳細な温度制御に利用することができる。例えば、非走行用紙領域となる場合、用紙に覆われる場合よりも制御温度を上げて制御することが考えられる。
【0077】
このようにして温度センサ12の選択がなされると、前述のS4に進み、選択された温度センサ12に基づいてヒータ4a〜4dについて、本実施例の点灯/消灯制御が行なわれ、予熱板3の表面温度を適切に調整・維持する。
【0078】
なお、S9を経由した場合であっても、発熱領域II、IVに対応するヒータ4b、4dは、一定温度に保たれるように点灯制御が行なわれている。その理由はS1で述べた通り、発熱領域I、IIIのヒータによる加熱のみでは、発熱領域II、IV側がヒータOFFであると、熱量がより奪われ、ヒータ4a、4c本来の温度制御に支障をきたすためである。効率的に温度制御を行なうためにも、用紙で覆われない発熱領域部についても、一定の温度を維持するように各ヒータのON/OFF制御を行なう。
このようにして、制御部11によるヒータ4a〜4dの温度制御が行われる。
【0079】
また、本実施例では、非走行用紙領域にある温度センサ12によって予熱板3の温度検出も同時に行い、それに基づいて制御部11において、非用紙走行領域における余剰熱による温度過上昇も監視している。
【0080】
例えばS5においてYESと判断された場合、第2の発熱領域IIの温度センサ12dと12e、および第4の発熱領域IVの温度センサ12iと12jは、非走行用紙領域にある。これらの温度センサ12の全部あるいは一部によって非用紙走行領域の温度検出を行い、その検出値が制御部11に入力される。制御部11には、非用紙走行領域における温度過上昇を判定するための上限値が予め設定されており、制御部11に入力されている検出値と前記上限値が比較され、検出値が上限値を超えている場合は温度過上昇と判断する。
【0081】
なお、各発熱領域に対し、非用紙走行領域の温度センサが複数個ある場合、より詳細な温度制御が要求される場合には、複数の温度センサを選択し、その温度検出値を用いる。但し、非用紙走行領域の用紙幅方向で、より中央側温度センサの検出値を選択して、その検出値を用いても良い。これにより、判断制御をより簡易に行なうことが可能である。
【0082】
この判断に基づいて本実施例では、対応する発熱領域を受け持つヒータ4の点灯制御を変更して、例えば、ヒータ4の点灯時間を短くして、より細かな温度制御を行うことにより、非用紙走行領域の余剰熱による温度過上昇を抑えている。
【0083】
また、前述したS5でYESと判断された場合と同様に、S7においてYESと判断された場合、(また、温度センサ12b、12gを有する場合には、S7でNOと判断された場合)も同様である。これらの温度センサ12の全部あるいは一部によって非用紙走行領域の温度検出を行い、その検出値が制御部11に入力される。制御部11には、非用紙走行領域における温度過上昇を判断するための上限値が予め設定されており、制御部11に入力されている検出値と前記上限値が比較され、検出値が上限値を超えている場合は温度過上昇と判断する。
【0084】
連続紙を使用すると、非走行用紙領域の温度は定常印刷中はほぼ一定温度であるから、この場合は非走行用紙領域に温度変化があるかどうかを監視する。
【0085】
また、カット紙の場合、或る用紙幅の用紙での連続印刷中に、別の用紙幅の用紙による用紙幅の変化があり得る。その場合、印刷用紙走行方向Xに発熱領域が2分割されている構成では、印刷用紙幅方向Yで同じ位置関係にある上流側と下流側の温度センサで、同様の温度変化傾向を示すことを利用して、適正な温度検知が行なわれているかどうかの判定に利用することもできる。
【0086】
印刷用紙1の幅により、第1の発熱領域Iの温度センサ12bおよび第2の発熱領域IIの温度センサ12g上を覆うが、第3の発熱領域IIIの温度センサ12cおよび第4の発熱領域IVの温度センサ12hは覆わないような場合においても、前述と同様な考えに基づき、各発熱領域I〜IVにおいて印刷用紙1で覆われている温度センサ12の内で最も相応しいと思われるものを選択して、余熱の表面温度を制御し、さらに非走行用紙領域にある温度センサ12により温度過上昇の監視を行なうことができる。
【0087】
前述のように本実施例では、印刷用紙1の搬送形態は片側基準の搬送であり、予め用紙幅の端部位置は認識できる構成になっている。温度センサ12を印刷用紙幅方向Yに複数個設けることで、用紙装填時に一旦ヒータ4を加熱し、温度センサ12の検出状態により用紙幅を推定する。
【0088】
本実施例では、印刷用紙幅方向Yに配置された、例えば温度センサ12a,12b,12c,12d,12eによって温度状態を検知して、予め用紙幅毎に検知して用意されている温度分布テーブルとの比較により、用紙幅を推定することができる。
【0089】
前述のように、各温度センサ12での温度推移において、印刷用紙1で覆われている温度センサ12では温度上昇変化率(温度勾配)が大きくなるが、印刷用紙1で覆われていない温度センサ12では温度上昇変化率(温度勾配)が小さいという状況を検知し、温度上昇変化率(温度勾配)の違う2つの温度センサ12間に用紙端部が存在することが判れば、その対象となる温度センサ12の位置により、印刷用紙1の幅を推定することができる。
【0090】
前記実施例では、複数個の温度センサ12により、予熱板3の表面温度制御と搬送されて来た印刷用紙1の幅の推定とを行ったが、別の実施例として、温度センサ12の印刷用紙搬送方向Xの上流側(もしくは温度センサ12の付近、或るいは温度センサ12の印刷用紙搬送方向Xの下流側)に用紙幅検知センサを設けて、その用紙幅の検知結果に基づいて、予熱板3の表面温度制御に用いる温度センサ12を決定することもできる。
【0091】
なお、オペレータが印刷用紙1の装填時に、印刷用紙1の種類(連量)を操作パネルなどから入力して設定する構成の場合、予め用紙幅毎に検知して作成した温度分布テーブルを、印刷用紙1の種類(連量)毎に複数用意してもよい。この場合、用紙幅検知センサが不要になり、且つ、用紙装填時の一時的なヒータ4による加熱が不要となる効果がある。
【0092】
前述したように本発明では、各発熱領域毎に複数個も受けられた温度センサのうち、印刷用紙に覆われている温度センサを選択し、その温度センサからの検出信号に基づいて、該当するヒータの温度制御を行うため、印刷用紙の温度を適切に反映した検出値による予備加熱制御ができる。
【0093】
このため、いかなる用紙幅においても、予熱板からトナー像の軟化に必要な熱量を過不足なく印刷用紙に供給することができる。そのため、部分的な熱量の過少による定着不良や熱良過剰による画像にじみなど印刷品質の不均一を抑制することができる。
【0094】
更に、予熱板での余剰熱による温度過上昇を防止することができるため、印刷装置の消費電力を抑え、印刷装置の耐久性を向上することができる。
【0095】
また、各ヒータ(熱源)に対し、単一の温度センサからの検出値を使用して温度制御を行うため、複数の温度センサを使用して温度制御を行う場合と比較して、より簡易な制御ができる。
【0096】
図4は、本発明の他の実施例に係る予熱板上での発熱領域に対するヒータと温度センサの配置関係を説明するための概略平面図である。
【0097】
この実施例の場合、印刷用紙走行方向Xの上流側の位置に第1の発熱領域Iと第2の発熱領域IIが、印刷用紙走行方向Xの中間位置に第3の発熱領域IIIと第4の発熱領域IVが、また、印刷用紙走行方向Xの下流側の位置に第5の発熱領域Vと第6の発熱領域VIがそれぞれ設けられ、合計で6つの発熱領域に区分けされている。
【0098】
各発熱領域I〜VIの面積は均等であり、各発熱領域I〜VIは夫々或る目標温度に制御される。このように予熱板3を複数の発熱領域I〜VIに分割する理由は、前記実施例と同じである。
【0099】
この実施例においても、印刷用紙1の搬送は、印刷用紙幅方向Yにおいて、用紙サイズにかかわらず、一方側(この実施例では図4に向って右側、すなわち第1、第3、第5の発熱領域I、III、V側)に沿わせる片側基準搬送方式で行なわれる。
【0100】
図4に示すように、ヒータ4a〜4fは各発熱領域I〜VIに対して2本ずつ配置されているが、第1の発熱領域Iと第3の発熱領域IIIと第5の発熱領域に配置されるヒータ4aとヒータ4cとヒータ4eは、発熱領域を印刷用紙走行方向Xに2分割したときに、印刷用紙走行方向Xの下流側に配置されている。一方、第2の発熱領域IIと第4の発熱領域IVと第6の発熱領域VIに配置されるヒータ4bとヒータ4dとヒータ4fは、発熱領域を印刷用紙走行方向Xに2分割したときに、印刷用紙走行方向Xの上流側に配置されている。従って、ヒータ4a〜4fは、予熱板3全体から見て千鳥状の配列となっている。
【0101】
これは、ヒータ4a〜4f全てを通電したときに、熱を発熱領域I〜VI全体にほぼ均等に行き渡らせつつ、同一仕様の熱源(ヒータ)が使用でき、また、ヒータ4a〜4dの配線の取り回しを一方向から取り出せる効率的な配置によるものである。
各発熱領域I〜VIには、印刷用紙幅方向Yに任意の間隔をあけて複数個(この実施例でも、2個と3個)のサーミスタからなる温度センサ12a〜12oが配置されている。
【0102】
この実施例の場合、図4に示すように、第1の発熱領域Iには2本のヒータ4aの間に2個の温度センサ12a,12bが、第2の発熱領域IIには2本のヒータ4bの間に3個の温度センサ12c,12d,12eが、用紙の走行基準側である第3の発熱領域IIIには2本のヒータ4cの間に2個の温度センサ12f,12gが、第4の発熱領域IVには2本のヒータ4dの間に3個の温度センサ12h,12i,12jが、第5の発熱領域Vには2本のヒータ4eの間に2個の温度センサ12k,12lが、第6の発熱領域VIには2本のヒータ4fの間に3個の温度センサ12m,12n,12oが、それぞれ配置されている。
【0103】
各温度センサ12a〜12oからの検出値に基づく各ヒータ4a〜4fの点灯/消灯制御は前記実施例と同様であるから、説明は省略する。
【符号の説明】
【0104】
1:被記録媒体(印刷用紙)、2:トナー像、3:予熱板(プレヒータ)、4a〜4d:ヒータ、5:加熱ローラ、8:加圧ローラ、11:制御部、12a〜12j:温度センサ、21:レーザビームプリンタ、22:コントローラ、23:感光体ドラム、24:コロナ帯電器、26:光源、28:現像装置、31:用紙搬送トラクタ、32:転写器、33:用紙搬送トラクタ、35:定着装置、X:印刷用紙走行方向、Y:印刷用紙幅方向、Z:印刷用紙の端部、I:第1の発熱領域、II:第2の発熱領域、III:第3の発熱領域、IV:第4の発熱領域。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0105】
【特許文献1】特開2008−46472号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に熱源を配置して、トナー像を担持した被記録媒体を表面に沿って通過させることにより、前記トナー像を前記被記録媒体の裏面側から予備加熱する予熱板において、
前記被記録媒体の走行方向およびその被記録媒体走行方向と直交する被記録媒体幅方向において分割された複数の発熱領域を有し、
各発熱領域毎に前記熱源と、前記被記録媒体幅方向において所定の間隔をおいて配置された複数の温度センサを内蔵して、
前記各発熱領域毎に設けられた複数の温度センサの内から選択された1つの温度センサの検出出力に基づいて前記熱源の発熱を制御する制御手段を設けたことを特徴とする予熱板。
【請求項2】
請求項1に記載の予熱板において、
前記各発熱領域毎に配置されている複数の温度センサは、前記被記録媒体の幅に応じて配置されていることを特徴とする予熱板。
【請求項3】
請求項1または2に記載の予熱板において、
前記各発熱領域は、前記被記録媒体走行方向および被記録媒体幅方向においてそれぞれ少なくとも2分割されて、
前記被記録媒体走行方向の上流側で且つ片側の第1の発熱領域と、
その第1の発熱領域の被記録媒体幅方向の隣に設けられた第2の発熱領域と、
前記第1の発熱領域の被記録媒体走行方向の下流側に設けられた第3の発熱領域と、
前記第2の発熱領域の被記録媒体走行方向の下流側に設けられた第4の発熱領域を有し、
前記第1の発熱領域の第2の発熱領域とは反対側の端部付近、ならびに前記第3の発熱領域の第4の発熱領域とは反対側の端部付近を基準にして、前記被記録媒体が片側基準走行する構成になっていることを特徴とする予熱板。
【請求項4】
請求項1または2に記載の予熱板において、
前記各発熱領域は、前記被記録媒体走行方向および被記録媒体幅方向においてそれぞれ少なくとも2分割されて、
前記被記録媒体走行方向の上流側で且つ片側の第1の発熱領域と、
その第1の発熱領域の被記録媒体幅方向の隣に設けられた第2の発熱領域と、
前記第1の発熱領域の被記録媒体走行方向の下流側に設けられた第3の発熱領域と、
前記第2の発熱領域の被記録媒体走行方向の下流側に設けられた第4の発熱領域を有し、
さらに前記第1〜4の発熱領域を被記録媒体走行方向に沿って2分割して形成された、
前記第1の発熱領域の被記録媒体走行方向上流側部分に第1の発熱領域用熱源を配置し、
前記第2の発熱領域の被記録媒体走行方向下流側部分に第2の発熱領域用熱源を配置し、
前記第3の発熱領域の被記録媒体走行方向上流側部分に第3の発熱領域用熱源を配置し、
前記第4の発熱領域の被記録媒体走行方向下流側部分に第4の発熱領域用熱源を配置するか、または、
前記第1の発熱領域の被記録媒体走行方向下流側部分に第1の発熱領域用熱源を配置し、
前記第2の発熱領域の被記録媒体走行方向上流側部分に第2の発熱領域用熱源を配置し、
前記第3の発熱領域の被記録媒体走行方向下流側部分に第3の発熱領域用熱源を配置し、
前記第4の発熱領域の被記録媒体走行方向上流側部分に第4の発熱領域用熱源を配置することを特徴とする予熱板。
【請求項5】
請求項2または3に記載の予熱板において、
前記制御手段は、
前記被記録媒体走行中における前記複数の温度センサの各々の検出出力を比較することにより、当該被記録媒体の幅を推定し、その推定した被記録媒体の幅に応じて各発熱領域で前記熱源の発熱制御のために使用する温度センサを選択する構成になっていることを特徴とする予熱板。
【請求項6】
予熱板と、
その予熱板の前記被記録媒体走行方向の下流側に配置された加熱手段と加圧手段とからなる定着手段とを備え、
被記録媒体上に担持されているトナー像を前記予熱板において予備加熱してから、
前記被記録媒体を前記加熱手段と加圧手段とで形成されるニップ部に通すことにより、前記トナー像を前記被記録媒体上に定着する定着装置において、
前記予熱板が請求項1ないし5のいずれか1項に記載の予熱板であることを特徴とする定着装置。
【請求項7】
感光体と、
その感光体の表面を一様に帯電する帯電手段と、
帯電した感光体の表面に対して画像データに基づいて露光して静電潜像を形成する露光手段と、
前記静電潜像にトナーを付着してトナー像を形成する現像手段と、
被記録媒体を搬送供給する搬送手段と、
前記感光体上のトナー像を搬送されて来た前記被記録媒体上に転写する転写手段と、
前記被記録媒体上のトナー像を当該被記録媒体に定着する定着手段を備えた印刷装置において、
前記定着装置が請求項6に記載の定着装置であることを特徴とする印刷装置。
【請求項8】
請求項7に記載の印刷装置において、
前記被記録媒体が、長尺状の連続用紙であることを特徴とする印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−64794(P2013−64794A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202299(P2011−202299)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】