説明

事故情報記録システムおよび車載システム

【課題】車両の事故情報を記録するシステムにおいて、必要な車両情報を効率よく記録する。
【解決手段】事故情報記録システム10は、車載システム200とセンターシステム100とにより構成される。車載システム200は、車両の操作状態を含む車両情報を取得する車両情報取得部202と、車両の異常を検出する異常検出部206と、異常検出部206が異常を検出した場合に、そのタイミングで車両情報取得部202が取得した車両情報に異常が検出されたことを示す異常情報を付加してセンターシステム100に送信する車両情報送信処理部204とを含む。センターシステム100は、車両情報を異常情報とともに時系列に記憶する車両情報記憶部106を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、事故情報記録システムおよび車載システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の交通事故が発生した場合、損害保険金の支払い額は、損害額と過失割合との積により算出される。損害額は、治療費、休損、交通費、その他雑費等の諸費、および慰謝料により算出される。また、過失割合は、自車両の状況、相手車両の状況、および周囲の状況等により算出される。しかし、従来、過失割合を算出するための客観的なデータが得られないという問題があった。
【0003】
特許文献1(特開2002−132898号公報)には、車両に搭載された運転データ記録装置から得られる運転データと事故報告書とから交通事故の状況を再現し、該事故状況と当該事故状況に基づき想定される過失割合を元に事故相手方との示談交渉を代行する交通事故示談サービス提供方法および交通事故分析処理装置が開示されている。
【0004】
特許文献2(特開2005−266914号公報)には、車両に搭載される車載システムと、車載システムの記録データを解析する解析装置とを備える運転状態記録解析システムが開示されている。車載システムは、GPS衛星からの位置情報に加え、交差点の信号機に設置された信号機用無線装置から発信されてくる位置情報および点灯タイミング情報を含む信号機データを受信し、これらのデータを、車両操作情報および車両動作情報とともに、運転状態情報として時系列に記録する。解析装置は、この記録装置に基づき、交差点での交通事故発生時の信号機の点灯状態および車両の運転状態を仮想的な3次元画像として再現する。
【特許文献1】特開2002−132898号公報
【特許文献2】特開2005−266914号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1や特許文献2に記載されたように、運転データ等を記録しておく場合、データ量が膨大になってしまう。そのため、必要なデータを取得するとともに、不要なデータを適宜処分していく必要がある。特許文献2に記載の技術では、車両の交通事故による衝撃を検出した場合、記録を停止するようになっている。しかし、損害保険金が支払われる交通事故には様々なものがある。大きな衝撃が起こる事故であれば、事故を検出するのも容易であるが、速度を落として運転している際に衝突等が生じた場合は、衝撃が小さくて事故を検出できないこともある。一方、事故と判断するための衝撃のレベルを低く設定することにより小さな衝撃による事故も検出することができる。しかし、この場合は、実際には事故が発生していないにも関わらず、事故が発生したと検出されてしまうおそれがある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、車両の事故情報を記録するシステムにおいて、必要な車両情報を効率よく記録する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、
車両の操作状態を含む車両情報を取得する車両情報取得部と、
前記車両情報取得部が取得した前記車両情報を、時系列に記憶する車両情報記憶部と、
前記車両の異常を検出する異常検出部と、
前記異常検出部が異常を検出した場合に、そのタイミングで前記車両情報取得部が取得した前記車両情報に異常が検出されたことを示す異常情報を付加する情報付加部と、
を含み、
前記車両情報記憶部は、前記車両情報を前記異常情報とともに時系列に記憶する事故情報記録システムが提供される。
【0008】
本発明の事故情報記録システムによれば、車両情報を時系列に記憶しておき、異常が検出された場合には、異常が検出されたことを示す異常情報を車両情報に付加するようになっている。そのため、異常情報が付されているか否かを考慮して車両情報の削除等を行うことができ、必要な車両情報を効率よく記録することができる。また、異常が検出された際の車両情報を効率よく抽出することもできる。
【0009】
本発明の事故情報記録システムは、車両に搭載された車載システムと、当該車載システムとネットワークを介して接続されたセンターシステムと、を含むことができ、前記車載システムは、前記車両情報取得部と、前記異常検出部と、前記情報付加部を含み、前記車両情報取得部が取得した前記車両情報を時系列に前記センターシステムに送信するとともに、前記異常検出部が異常を検出した場合に、そのタイミングで前記車両情報取得部が取得した前記車両情報に異常が検出されたことを示す異常情報を付加して当該異常情報とともに前記車両情報を前記センターシステムに送信する送信処理部と、を含み、前記センターシステムは、前記車両情報記憶部と、前記車載システムから、前記車両情報および前記異常情報を受信し、前記車両情報および前記異常情報を前記車両情報記憶部に記憶する受信処理部と、を含むことができる。
【0010】
車載システムは、センターシステムに車両情報を略リアルタイムで順次送信することもできるが、車載システムも車両情報を記憶する車両情報記憶部を有し、所定のタイミング毎に車両情報をセンターシステムに送信する構成とすることもできる。
【0011】
本発明の事故情報記録システムにおいて、前記センターシステムは、前記車両が事故にあったことを示す事故通知を受け付ける事故通知受付部と、前記事故通知受付部が前記事故通知を受け付けると、前記車両情報記憶部を参照して、前記異常情報が付加されたタイミング前後の所定時間の前記車両情報を事故情報として抽出する事故情報抽出部と、をさらに含むことができる。
【0012】
本発明の事故情報記録システムにおいて、車両の異常が検出された場合には、車両情報に異常情報が付加される。そのため、事故情報を効率よく検出することができる。
【0013】
本発明の事故情報記録システムにおいて、前記車載システムは、前記異常検出部が異常を検出すると、事故が発生したか否かをユーザに確認する確認部と、前記ユーザから事故が発生したことを示す情報の入力があると、当該入力を前記事故通知として前記センターシステムに送信する事故通知送信処理部と、をさらに含むことができる。
【0014】
このようにすれば、事故情報を効率よく確実に検出することができる。
【0015】
本発明の事故情報記録システムにおいて、前記車載システムは、前記異常検出部が異常を検出すると、事故が発生したか否かをユーザに確認する確認部をさらに含むことができ、前記送信処理部は、前記ユーザから事故が発生していないことを示す情報の入力があると、前記異常検出部が異常を検出した時間と、当該異常が事故によるものではないことを示す確認情報とを対応付けて前記センターシステムに送信することができ、前記センターシステムは、前記異常検出部が異常を検出した時間と、当該異常が事故によるものではないことを示す確認情報とを対応付けて記憶する確認情報記憶部をさらに含むことができる。
【0016】
このようにすれば、事故情報を効率よく検出することができるとともに、異常検出部が異常を検出した場合でも、事故が原因でない場合には、確認情報が付加されるので、事故情報を精度よく検出することができる。
【0017】
本発明の事故情報記録システムにおいて、前記センターシステムは、前記車両情報記憶部および前記確認情報記憶部を参照して、前記車両情報に前記異常情報が付加されているか否かおよび前記確認情報が記憶されているか否かに基づき、前記異常情報が付加されていない場合、および前記異常情報が付加されている場合であっても、対応する時間に前記確認情報が記憶されている場合に優先的に前記車両情報を削除して、前記車両情報記憶部を更新する更新部をさらに含むことができる。このようにすれば、必要な車両情報を効率よく記録することができる。
【0018】
本発明の事故情報記録システムにおいて、前記センターシステムは、前記車両情報記憶部を参照して、前記車両情報に前記異常情報が付加されているか否かに基づき、前記異常情報が付加されていない場合に優先的に前記車両情報を削除して、前記車両情報記憶部を更新する更新部をさらに含むことができる。このようにすれば、必要な車両情報を効率よく記録することができる。
【0019】
本発明の事故情報記録システムは、前記車両が事故にあったことを示す事故通知を受け付ける事故通知受付部と、前記事故通知受付部が前記事故通知を受け付けると、前記車両情報記憶部を参照して、前記異常情報が付加されたタイミング前後の所定時間の前記車両情報を事故情報として抽出する事故情報抽出部と、をさらに含むことができる。このようにすれば、事故情報を効率よく抽出することができる。
【0020】
本発明によれば、
車両の操作状態を含む車両情報を取得する車両情報取得部と、
前記車両情報取得部が取得した前記車両情報を時系列に所定のセンターシステムに送信する送信処理部と、
前記車両の異常を検出する異常検出部と、
を含み、
前記送信処理部は、前記異常検出部が異常を検出した場合に、そのタイミングで前記車両情報取得部が取得した前記車両情報に異常が検出されたことを示す異常情報を付加する情報付加部を含み、前記車両情報を、前記異常情報とともに時系列に所定のセンターシステムに送信する車載システムが提供される。
【0021】
本発明によれば、
車両に搭載された車載システムと、当該車載システムとネットワークを介して接続されたセンターシステムと、を含み、
前記車載システムは、
車両の操作状態を含む車両情報を取得する車両情報取得部と、
前記車両の異常を検出する異常検出部と、
前記車両情報取得部が取得した前記車両情報を順次前記センターシステムに送信するとともに、前記異常検出部が異常を検出した場合に、そのタイミングで前記車両情報取得部が取得した前記車両情報に異常が検出されたことを示す異常情報を付加して当該異常情報とともに前記車両情報を前記センターシステムに送信する送信処理部と、を含み、
前記センターシステムは、
前記車載システムから、前記車両情報および前記異常情報を受信する受信処理部と、
前記受信処理部が受信した前記車両情報を、前記異常情報とともに時系列に記憶する車両情報記憶部と、
を含む事故情報記録システムが提供される。
【0022】
本発明の事故情報記録システムは、前記車両が事故にあったことを示す事故通知を受け付ける事故通知受付部と、前記事故通知受付部が前記事故通知を受け付けると、前記車両情報記憶部を参照して、前記異常情報が付加されたタイミング前後の所定時間の前記車両情報を事故情報として抽出する事故情報抽出部と、をさらに含むことができる。
【0023】
本発明の事故情報記録システムは、前記異常検出部が異常を検出すると、事故が発生したか否かをユーザに確認する確認部をさらに含むことができ、前記事故通知受付部は、ユーザから事故が発生したことを示す情報の入力があると、当該入力を前記事故通知として受け付けることができる。
【0024】
本発明の事故情報記録システムは、前記異常検出部が異常を検出すると、事故が発生したか否かをユーザに確認する確認部と、ユーザから事故が発生していないことを示す情報の入力があると、前記異常検出部が異常を検出した時間と、当該異常が事故によるものではないことを示す確認情報とを対応付けて記憶する確認情報記憶部と、をさらに含むことができる。
【0025】
本発明の事故情報記録システムは、前記車両情報記憶部および前記確認情報記憶部を参照して、前記車両情報に前記異常情報が付加されているか否かおよび前記確認情報が記憶されているか否かに基づき、前記異常情報が付加されていない場合、および前記異常情報が付加されている場合であっても、対応する時間に前記確認情報が記憶されている場合に優先的に前記車両情報を削除して、前記車両情報記憶部を更新する更新部をさらに含むことができる。
【0026】
本発明の事故情報記録システムは、前記車両情報記憶部を参照して、前記車両情報に前記異常情報が付加されているか否かに基づき、前記異常情報が付加されていない場合に優先的に前記車両情報を削除して、前記車両情報記憶部を更新する更新部をさらに含むことができる。
【0027】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、車両の事故情報を記録するシステムにおいて、必要な車両情報を効率よく記録することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0030】
図8は、車両の交通事故が発生した場合に、損害保険金の支払い額を算出する方法を模式的に示す図である。図示したように、被保険者や被害者への保険支払い額は、損害額と過失割合との積により算出される。
【0031】
保険支払い額は、たとえば、治療費、休損、交通費、諸費、慰謝料等により算出される。治療費、休損、交通費等は、診断書・後遺障害診断書、診療報酬明細書、付添看護証明、休業証明者、交通費明細書等を参考にして算出することができる。
【0032】
また、被保険者や被害者が事故発生に関して過失があるときは、その過失割合を過去の事例や判例に基づき算出する。これらは、保険会社等の事例データベースや裁判所の判例データベースを用いて算出することができる。また、過失割合を算出するためには、事故の状況を把握する必要がある。本実施の形態においては、事故の状況を客観的に判断するために、事故車両の事故前後のデータ、道路データ、映像データ等のデータを記録しておく。車両のデータは、たとえば事故前後のスピード、急発進・急ブレーキ、ハンドル操作等を含む。また、その他天気、温度、風力、気温等の外部からのデータも取り込み、各種の事故関連データを総合的に取り扱うこともできる。このようにして記録したデータにより事故の状況を把握し、事例データベースや判例データベースに記録された過去のデータに基づき、過失割合を算出することができる。
【0033】
図1は、本実施の形態における事故情報記録システムの構成を示すブロック図である。
事故情報記録システム10は、車両に搭載された車載システム200と、車載システム200とネットワーク300を介して接続されたセンターシステム100とを含む。センターシステム100は、たとえば保険会社内または第三者機関として自立性と独立性のある交通事故データセンター等に設けることができる。ネットワーク300は、無線ネットワークとすることができる。本実施の形態において、ネットワーク300は、衛星通信ネットワークとすることができる。ここでは、車載システム200を一つしか図示していないが、センターシステム100は、複数の車両にそれぞれ搭載された複数の車載システムからデータを取得することができる。
【0034】
車載システム200は、車両情報取得部202、車両情報送信処理部204(情報付加部)、異常検出部206、確認部210、事故通知送信処理部212、および通信制御部214を含む。通信制御部214は、ネットワーク300を介してセンターシステム100とデータの送受信を行う。
【0035】
車両情報取得部202は、車両の操作状態を含む車両情報を取得する。車両情報は、たとえば、車両の停止、加速制動、およびハンドル操作等の物理的な情報、ならびに車両の前後左右にセットされた小型カメラからの映像データ等を含む。図2は、車両情報取得部202の構成を詳細に示すブロック図である。車両情報取得部202は、位置情報取得部220、車載器情報取得部222、および周囲情報取得部224を含む。位置情報取得部220は、たとえばGPS、PHS、または携帯電話等とすることができ、車両の位置情報を取得する。車載器情報取得部222は、車両に搭載されたエンジン回転速度計、速度メータ、ブレーキ、アクセル、ハンドル、方向指示器、エアバック等から、エンジン回転速度、速度、ブレーキの掛かり具合、急停車や急発進等の情報を取得する。周囲情報取得部224は、車両の前方、後方、側方等に取り付けられたカメラとすることができ、車両の周囲の映像を取得する。周囲情報取得部224は、たとえば、自車両の走行状況や道路幅、道路の種類、信号の色等の道路状況を取得する。
【0036】
異常検出部206は、車両の異常を検出する。異常検出部206は、たとえば、加速度センサとすることができ、交通事故発生等による衝撃を検出する。ここで、異常検出部206は、通常の車両に搭載されているエアバックに設けられた加速度センサと同等のものとすることができる。また、エアバックが動作する条件よりも軽い衝撃を検出する構成とすることもできる。
【0037】
車両情報送信処理部204は、車両情報取得部202が取得した車両情報をネットワーク300を介して順次センターシステム100に送信する。また、車両情報送信処理部204は、異常検出部206が異常を検出した場合に、そのタイミングで車両情報取得部202が取得した車両情報に異常が検出されたことを示す異常情報(マーキング)を付加して当該異常情報とともに車両情報をセンターシステムに送信する。本実施の形態において、車両情報送信処理部204は、車両情報に車載システム200が搭載された車両の識別情報を対応付けてセンターシステム100に送信する。
【0038】
確認部210は、異常検出部206が異常を検出すると、事故が発生したか否かをユーザに確認する。事故通知送信処理部212は、確認部210の確認に対し、ユーザから事故が発生したことを示す情報の入力があると、当該入力を事故通知としてセンターシステム100に送信する。また、確認部210の確認に対し、ユーザから事故が発生していないことを示す情報の入力があると、車両情報送信処理部204は、異常検出部206が異常を検出した時間と、当該異常が事故によるものではないことを示す確認情報とを対応付けてセンターシステム100に送信する。
【0039】
センターシステム100は、通信制御部102、車両情報受信処理部104、車両情報記憶部106、事故通知受付部108、事故情報抽出部110、事故情報記憶部112、車両情報更新部116、および確認情報記憶部118を含む。
【0040】
通信制御部102は、ネットワーク300を介して車載システム200等の種々のシステムとデータの送受信を行う。
【0041】
車両情報受信処理部104は、車載システム200から車両情報および異常情報を受信し、車両情報を異常情報とともに車両情報記憶部106に記憶する。また、車両情報受信処理部104は、車載システム200から車両情報とともに車両の識別情報を受信し、車両情報を車両の識別情報に対応付けて車両情報記憶部106に記憶する。さらに、車両情報受信処理部104は車両情報の送信エラーを検出することもできる。ここで、エラーとは、たとえば、車載システム200から正常な終了信号がないのに車両情報の送信が途切れた場合等とすることができる。エラーが検出された場合、車両情報受信処理部104は、そのタイミングで受信した車両情報にエラー情報を付加することができる。車両情報記憶部106は、車両情報および異常情報を時系列に記憶する。
【0042】
図3は、車両情報記憶部106の内部構成の一例を示す図である。車両情報記憶部106は、時間欄、車両情報欄、および異常情報欄を含む。車両情報欄は、位置情報欄、車載器情報欄、および周囲情報欄等を含む。また、車両情報記憶部106は、車両情報を車両のIDに対応付けて記憶する。ここでは、車両ID0001の車両情報を示す。また、図3では、1分毎に取得した車両情報を示しているが、時間間隔はより短くしてもよく、長くしてもよい。また、ここでは、10:01の車両情報に異常情報が対応付けられている。これにより、この時間に、車両において衝撃等により車両の異常が検出されたことが把握できる。また、ここでは図示していないが、車両情報記憶部106は、車両情報受信処理部104により付加されるエラー情報を記憶するエラー情報欄をさらに含むこともできる。
【0043】
図1に戻り、確認情報記憶部118は、車載システム200の異常検出部206が異常を検出した時間と、当該異常が事故によるものではないことを示す確認情報とを対応付けて記憶する。
【0044】
車両情報更新部116は、車両情報記憶部106から不要な情報を削除して車両情報記憶部106を更新する。車両情報更新部116は、車両情報記憶部106を参照して、車両情報に異常情報が付加されているか否かに基づき、異常情報が付加されていない場合に優先的に車両情報を削除して、車両情報記憶部106を更新する。また、この際、車両情報更新部116は、確認情報記憶部118も参照して、確認情報が記憶されているか否かに基づき、異常情報が付加されている場合であっても、対応する時間に確認情報が記憶されている場合に優先的に車両情報を削除して、車両情報更新部116を更新することができる。
【0045】
事故通知受付部108は、車両が事故にあったことを示す事故通知を受け付ける。事故情報抽出部110は、事故通知受付部108が事故通知を受け付けると、車両情報記憶部106を参照して、異常情報が付加されたタイミング前後の所定時間の車両情報を事故情報として抽出する。事故情報抽出部110は、抽出した事項情報を事故情報記憶部112に記憶する。なお、事故通知は、車載システム200からだけでなく、他の経路から入力することもできる。たとえば、車両のユーザが事故が発生したことを携帯電話等でセンターシステム100の管理会社に通知し、管理会社のオペレーター等が事故通知を入力することもできる。
【0046】
図4は、本実施の形態における車載システム200の処理手順を示すフローチャートである。
車両情報の記録開始指示があると(S100のYES)、車両情報取得部202は、車両情報の取得を開始する(S102)。ステップS100における車両情報の記録開始指示は、ユーザが操作部等を介して行うこともでき、たとえば車両のエンジンがかかった場合やキーが差し込まれた場合等にユーザが意識することなく自動的に行われるようにすることもできる。なお、車両情報の記録開始指示があると(S100のYESの場合)、車両情報送信処理部204は、センターシステム100に開始通知を行うことができる。(S101)。
【0047】
車両情報取得部202が車両情報を取得中に異常検出部206が衝撃等の異常を検出すると(S104のYES)、車両情報送信処理部204は、そのタイミングで車両情報取得部202が取得した車両情報に異常情報を付加して(S106)、車載システム200に送信する(S110)。また、ステップS104で異常が検出されると(S104のYES)、ステップS106の処理に引き続いて、または並行して、確認処理が行われる(S108)。確認処理については後述する。
【0048】
車両情報取得部202が車両情報を取得中に異常検出部206により異常が検出されない間(S104のNO)は、車両情報送信処理部204は、車両情報を順次センターシステム100に送信する(S110)。以上の処理を処理終了の指示があるまで(S112のYESの場合)繰り返す。処理終了の指示があると(S112のYES)、車両情報送信処理部204は、センターシステム100に終了通知を行う(S114)。
【0049】
図5は、図4のステップS108の確認処理を詳細に示すフローチャートである。
異常検出部206が異常を検出すると(図4のS104のYES)、確認部210は、たとえば確認画面を表示する(S120)。確認画面には、「衝撃を検出しました。事故が発生しましたか?」等のメッセージを表示することができる。また、確認画面ではなく、音声案内とすることもできる。
【0050】
このような確認画面に対して、ユーザがタッチパネル等の操作部から事故ではないことを示す確認情報を入力すると(S122のYES)、確認部210はその旨を車両情報送信処理部204に通知する。車両情報送信処理部204は、異常検出部206が異常を検出した時間と、当該異常が事故によるものではないことを示す確認情報とを対応付けてセンターシステム100に送信する(S124)。これにより、確認処理を終了する。
【0051】
本実施の形態において、異常検出部206が異常を検出すると、車両情報送信処理部204により、車両情報に異常情報が付加される。そのため、実際には事故でないのに、何らかの衝撃が発生して異常検出部206が衝撃を検出した場合であっても、センターシステム100に送信される車両情報には異常情報が付加されてしまう。しかし、ユーザが事故ではないことを確認した場合に、確認情報をセンターシステム100に送信することにより、センターシステム100において、車両情報を取り扱いやすくすることができる。
【0052】
また、ステップS120の確認画面に対して、ユーザが操作部から事故であることを示す情報を入力した場合(S122のNO、S126のYES)、事故通知送信処理部212は、その入力に基づき、事故があったことを示す事故通知をセンターシステム100に送信する(S128)。この場合、事故通知送信処理部212は、事故通知に異常検出部206が衝撃を検出した時間を示す情報を含めてセンターシステム100に送信することができる。これにより、確認処理を終了する。
【0053】
また、ステップS120の確認画面に対して、所定時間が経過してもユーザから入力がない場合(S122のNO、S126のNO、S130のYES)、確認処理を終了する
【0054】
図6は、本実施の形態におけるセンターシステム100の処理手順を示すフローチャートである。
車両情報受信処理部104は、いずれかの車載システム200から開始通知があると(S200のYES)、車両情報の受信処理を行う(S201)。車両情報受信処理部104は、車両情報を受信している間、エラーの発生の有無を検出する(S202)。ここで、エラーとは、たとえば、車載システム200から正常な終了信号がないのに車両情報の送信が途切れた場合等とすることができる。エラーが検出された場合(S202のYES)、車両情報受信処理部104は、そのタイミングで受信した車両情報にエラー情報を付加する(S204)。たとえば、車載システム200から正常な終了信号がないのに車両情報の送信が途切れた場合、車載システム200が搭載された車両に事故等が発生した可能性がある。その車両において、車載システム200が機能していれば、図5を参照して説明したように、車載システム200から事故通知等が送信されることになる。しかし、事故により車載システム200が機能しないようになった場合、車載システム200から事故通知を送信することができない。センターシステム100において、このようなエラーを検出してエラー情報を付加することにより、後の管理を容易にすることができる。
【0055】
車両情報受信処理部104が車両情報を受信中にエラーが検出されない間(S202のNO)は、車両情報受信処理部104は、車両情報を順次車両情報記憶部106に記憶する(S206)。以上の処理を車載システム200から終了通知があるまで(S208のYESの場合)繰り返す。処理通知があると(S208のYES)、車両情報受信処理部104は、車両情報記憶部106に終了記録を行う(S210)。
【0056】
図7は、本実施の形態におけるセンターシステム100の別の処理手順を示すフローチャートである。
事故通知受付部108が事故通知を受け付けると(S220のYES)、事故情報抽出部110は、車両情報記憶部106から事故情報を抽出する(S222)。事故情報抽出部110は、抽出した事故情報を事故情報記憶部112に記憶する(S224)。また、必要に応じて、所定の宛先に送信等出力することもできる。
【0057】
以上のように、本実施の形態における事故情報記録システム10によれば、車両情報を記録しておき、異常が検出された場合には、異常が検出されたことを示す異常情報を車両情報に付加するようになっている。そのため、異常情報が付されているか否かを考慮して車両情報の削除等を行うことができ、必要な車両情報を効率よく記録することができる。
【0058】
図1および図2に示した事故情報記録システム10の各構成要素は、ハードウエア単位の構成ではなく、機能単位のブロックを示している。事故情報記録システム10の各構成要素は、任意のコンピュータのCPU、メモリ、メモリにロードされた本図の構成要素を実現するプログラム、そのプログラムを格納するハードディスクなどの記憶ユニット、ネットワーク接続用インタフェースを中心にハードウエアとソフトウエアの任意の組合せによって実現される。そして、その実現方法、装置にはいろいろな変形例があることは、当業者には理解されるところである。
【0059】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0060】
以上の実施の形態において、車両情報記憶部106がセンターシステム100に設けられる構成としたが、車両情報記憶部106は、車載システム200に設けておくこともできる。この場合、車両情報記憶部106に記憶されたデータが改ざん等されないようにしておき、事故が発生した場合に、車両情報記憶部106からデータを読み出してセンターシステム100に送信したりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施の形態における事故情報記録システムの構成を示すブロック図である。
【図2】車両情報記憶部の構成を詳細に示すブロック図である。
【図3】車両情報記憶部の内部構成の一例を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態における車載システムの処理手順を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態における車載システムの処理手順を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施の形態におけるセンターシステムの処理手順を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施の形態におけるセンターシステムの処理手順を示すフローチャートである。
【図8】車両の交通事故が発生した場合に、損害保険金の支払い額を算出する方法を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0062】
10 事故情報記録システム
100 センターシステム
102 通信制御部
104 車両情報受信処理部
106 車両情報記憶部
108 事故通知受付部
110 事故情報抽出部
112 事故情報記憶部
116 車両情報更新部
118 確認情報記憶部
200 車載システム
202 車両情報取得部
204 車両情報送信処理部
206 異常検出部
210 確認部
212 事故通知送信処理部
214 通信制御部
220 位置情報取得部
222 車載器情報取得部
224 周囲情報取得部
300 ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の操作状態を含む車両情報を取得する車両情報取得部と、
前記車両情報取得部が取得した前記車両情報を、時系列に記憶する車両情報記憶部と、
前記車両の異常を検出する異常検出部と、
前記異常検出部が異常を検出した場合に、そのタイミングで前記車両情報取得部が取得した前記車両情報に異常が検出されたことを示す異常情報を付加する情報付加部と、
を含み、
前記車両情報記憶部は、前記車両情報を前記異常情報とともに時系列に記憶する事故情報記録システム。
【請求項2】
請求項1に記載の事故情報記録システムにおいて、
車両に搭載された車載システムと、当該車載システムとネットワークを介して接続されたセンターシステムと、を含み、
前記車載システムは、前記車両情報取得部と、前記異常検出部と、前記情報付加部を含み、前記車両情報取得部が取得した前記車両情報を時系列に前記センターシステムに送信するとともに、前記異常検出部が異常を検出した場合に、そのタイミングで前記車両情報取得部が取得した前記車両情報に異常が検出されたことを示す異常情報を付加して当該異常情報とともに前記車両情報を前記センターシステムに送信する送信処理部と、を含み、
前記センターシステムは、前記車両情報記憶部と、前記車載システムから、前記車両情報および前記異常情報を受信し、前記車両情報および前記異常情報を前記車両情報記憶部に記憶する受信処理部と、を含む事故情報記録システム。
【請求項3】
請求項2に記載の事故情報記録システムにおいて、
前記センターシステムは、
前記車両が事故にあったことを示す事故通知を受け付ける事故通知受付部と、
前記事故通知受付部が前記事故通知を受け付けると、前記車両情報記憶部を参照して、前記異常情報が付加されたタイミング前後の所定時間の前記車両情報を事故情報として抽出する事故情報抽出部と、
をさらに含む事故情報記録システム。
【請求項4】
請求項3に記載の事故情報記録システムにおいて、
前記車載システムは、
前記異常検出部が異常を検出すると、事故が発生したか否かをユーザに確認する確認部と、
前記ユーザから事故が発生したことを示す情報の入力があると、当該入力を前記事故通知として前記センターシステムに送信する事故通知送信処理部と、
をさらに含む事故情報記録システム。
【請求項5】
請求項2から4いずれかに記載の事故情報記録システムにおいて、
前記車載システムは、前記異常検出部が異常を検出すると、事故が発生したか否かをユーザに確認する確認部をさらに含み、
前記送信処理部は、前記ユーザから事故が発生していないことを示す情報の入力があると、前記異常検出部が異常を検出した時間と、当該異常が事故によるものではないことを示す確認情報とを対応付けて前記センターシステムに送信し、
前記センターシステムは、前記異常検出部が異常を検出した時間と、当該異常が事故によるものではないことを示す確認情報とを対応付けて記憶する確認情報記憶部をさらに含む事故情報記録システム。
【請求項6】
請求項2から5いずれかに記載の事故情報記録システムにおいて、
前記センターシステムは、前記車両情報記憶部および前記確認情報記憶部を参照して、前記車両情報に前記異常情報が付加されているか否かおよび前記確認情報が記憶されているか否かに基づき、前記異常情報が付加されていない場合、および前記異常情報が付加されている場合であっても、対応する時間に前記確認情報が記憶されている場合に優先的に前記車両情報を削除して、前記車両情報記憶部を更新する更新部をさらに含む事故情報記録システム。
【請求項7】
請求項2から5いずれかに記載の事故情報記録システムにおいて、
前記センターシステムは、前記車両情報記憶部を参照して、前記車両情報に前記異常情報が付加されているか否かに基づき、前記異常情報が付加されていない場合に優先的に前記車両情報を削除して、前記車両情報記憶部を更新する更新部をさらに含む事故情報記録システム。
【請求項8】
請求項1に記載の事故情報記録システムにおいて、
前記車両が事故にあったことを示す事故通知を受け付ける事故通知受付部と、
前記事故通知受付部が前記事故通知を受け付けると、前記車両情報記憶部を参照して、前記異常情報が付加されたタイミング前後の所定時間の前記車両情報を事故情報として抽出する事故情報抽出部と、
をさらに含む事故情報記録システム。
【請求項9】
車両の操作状態を含む車両情報を取得する車両情報取得部と、
前記車両情報取得部が取得した前記車両情報を時系列に所定のセンターシステムに送信する送信処理部と、
前記車両の異常を検出する異常検出部と、
を含み、
前記送信処理部は、前記異常検出部が異常を検出した場合に、そのタイミングで前記車両情報取得部が取得した前記車両情報に異常が検出されたことを示す異常情報を付加する情報付加部を含み、前記車両情報を、前記異常情報とともに時系列に所定のセンターシステムに送信する車載システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−264820(P2007−264820A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−86373(P2006−86373)
【出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【出願人】(506032233)株式会社あいおい基礎研究所 (11)
【出願人】(592018320)あいおい損害保険株式会社 (21)
【Fターム(参考)】