説明

二剤以上を用時調製する型の発泡性皮膚外用剤

【課題】発泡力、刺激感、発泡持続性、液垂れ、伸展性、弾力性、粘り気、柔軟性などの大部分の評価項目(必ずしも全てでなくてもよい)においてバランスよく優れた皮膚外用剤を提供する。
【解決手段】本発明によれば、二剤以上を用時調製する型の発泡性皮膚外用剤が提供される。この発泡性皮膚外用剤は、水溶性酸を含む粒状物と、炭酸塩、水及び増粘剤を含む、粘性組成物と、を含む。また、この粘性組成物は、増粘剤として、ラムダカラギーナンと、イオタカラギーナンと、キサンタンガムと、を含み、少なくともカッパーカラギーナンは含まない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二剤以上を用時調製する型の発泡性皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、女性の間で発泡性化粧品が人気商品となりつつある。例えば、特許文献1には、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム等からなる第1剤と、硫酸カルシウム、クエン酸、アスコルビン酸、酒石酸等からなる第2剤と、脱脂粉乳、でんぷん等からなる添加剤によって構成され、水を添加すると第1剤と第2剤が反応して炭酸ガスを発生し、その炭酸ガスの気泡の発生から膨張、破裂、消滅、に到る変化がマッサージ等に利用できるようにされたものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平04−217609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記文献記載の従来技術は、以下の点で改善の余地を有していた。
【0005】
すなわち、特許文献1の技術では、パック化粧品などの皮膚外用剤に用いた場合に、発泡力、刺激感、発泡持続性、液垂れ、伸展性、弾力性、粘り気、柔軟性などの大部分の評価項目(以下、「本評価項目」と称す)(必ずしも全てでなくてもよい)においてバランスよく優れた皮膚外用剤を得ることは難しい。特に、特許文献1の技術では、パック化粧品などの皮膚外用剤に用いた場合の発泡性が2〜3分から数分間しか持続しないため、充分なマッサージ効果を得るためにはさらなる改善の余地があった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、本評価項目(必ずしも全てでなくてもよい)においてバランスよく優れた皮膚外用剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明によれば、二剤以上を用時調製する型の発泡性皮膚外用剤であって、水溶性酸を含む粒状物(第一剤)と、炭酸塩、水及び増粘剤を含む粘性組成物(第二剤)と、を含み、前記粘性組成物が、前記増粘剤として、ラムダカラギーナンと、イオタカラギーナンと、キサンタンガムと、を含み、少なくともカッパーカラギーナンは含まない、発泡性皮膚外用剤が提供される。
【0008】
(2)(1)に記載の発泡性皮膚外用剤において、前記粘性組成物が、前記ラムダカラギーナンを0.5〜3.0質量%、イオタカラギーナンを0.3〜2.0質量%、キサンタンガムを0.3〜2.0質量%含むことが好ましい。
【0009】
(3)(1)又は(2)に記載の発泡性皮膚外用剤において、前記粘性組成物のブルックフィールド型粘度計におけるずり速度50rpmでの粘度が、3,000〜30,000mPa・s(25℃)であり、前記粘性組成物のブルックフィールド型粘度計におけるずり速度0.5rpmでの粘度が、 100,000〜1,000,000mPa・s(25℃)であることが好ましい。
【0010】
(4)(1)〜(3)のいずれかに記載の発泡性皮膚外用剤において、前記粒状物が、 水溶性分散剤をさらに含み、増粘剤を含まないことが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、本評価項目(必ずしも全てでなくてもよい)においてバランスよく優れた皮膚外用剤が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、同様な構成要素については適宜説明を省略する。また、以下の説明において、A〜Bとは、A以上B以下を意味するものとする。
【0013】
<皮膚外用剤>
本実施形態の発泡性皮膚外用剤は、二剤以上を用時調製する型の発泡性皮膚外用剤である。この発泡性皮膚外用剤は、水溶性酸を含む粒状物と、炭酸塩、水及び増粘剤を含む、粘性組成物と、を含む。また、この粘性組成物は、増粘剤として、ラムダカラギーナンと、イオタカラギーナンと、キサンタンガムと、を含み、少なくともカッパーカラギーナンは含まない。
【0014】
この組成によれば、増粘剤として、ラムダカラギーナンと、イオタカラギーナンと、キサンタンガムと、を含み、少なくともカッパーカラギーナンは含まないため、後述する実施例で示すように、適切な範囲の粘度を有する粘性組成物が得られる。そして、この粘性組成物と、水溶性酸を含む粒状物とを組み合わせることによって、後述する実施例で示すように、本評価項目(必ずしも全てでなくてもよい)においてバランスよく優れた皮膚外用剤が得られる。
【0015】
なお、本実施形態に係る皮膚外用剤は、化粧品、医薬部外品、医薬品のいずれにも用いることができ、その剤形としては、例えば、パック等の化粧品、毛髪用剤、洗浄剤、浴用剤、薬剤等の皮膚に適用されるものが挙げられる。もっとも、いずれの形態を採る場合にも、粒状物及び粘性組成物を含む二剤以上を用時調製する型の発泡性皮膚外用剤として用いられる点では同様である。
【0016】
すなわち、本実施形態に係る皮膚外用剤は、粒状物と粘性組成物が接触しない状態で保存されていれば良く、両者とも特に密閉状態で保存されることが好ましい。保存容器としては、材質や形状、構造など特に制限なく使用でき、例えば材質としてはプラスチック、ガラス、アルミニウム、紙、各種ポリマーやこれらの材料の複合体が挙げられ、また、形状や構造としてはカップ、チューブ、バッグ、びん、スティック、ポンプが挙げられ、これらのいずれかが制限なく使用できる。これらの中で特に粒状物には、内面をポリエチレンテレフタレートでラミネートしたアルミスティックもしくはアルミバッグ、粘性組成物には内面をポリエチレンテレフタレートでラミネートしたアルミスティックもしくはアルミバッグ、あるいは内面をポリエチレンテレフタレートでラミネートしたアルミシートで蓋をヒールシートするポリエチレンテレフタレート製のカップが、密閉性や内容物の保存安定性、製造コストの面などから好ましい。
【0017】
また、本実施形態に係る皮膚外用剤は、粒状物と粘性組成物の混合は、ガラスやプラスチックなどの適当な容器を用いて行っても良く、あるいは手のひらや皮膚等の上などで行っても良い。いずれにしても、粒状物が消えない程度に軽く混ぜ合わせることが好ましい。粒状物と粘性組成物の混合は手指などで行っても良いし、スパチュラやヘラなどの道具を用いても良い。
【0018】
また、本実施形態に係る皮膚外用剤は、皮膚等に塗布後、20〜30分間放置することが好ましいため、これをサロン等ではなく家庭で用いる場合には特に、該皮膚外用剤を皮膚等に塗布している間も、立ち歩きや、掃除等の簡単な日常動作を行っても、該皮膚外用剤が垂れ落ちず、皮膚等に留まり続けることが望ましい。なお、皮膚等に塗布後、放置する時間は、20〜30分に限定されるものではない。
【0019】
また、本実施形態に係る皮膚外用剤は、粒状物1質量部に対し粘性組成物5〜40質量部であることが好ましいが、より好ましくは10〜35質量部、さらに好ましくは15〜20質量部である。粒状物1質量部に対し粘性組成物が5質量部以下では、両者を混合して二酸化炭素外用剤を調製した場合に、発泡が早く、発泡持続性が十分ではない。また、二酸化炭素の気泡が激しく発生した結果、該皮膚外用剤が皮膚等から剥がれ落ちやすくなる。そして、粒状物と粘性組成物の反応が早く、多くの二酸化炭素が短時間に外気中に発散しやすいため、皮膚等に塗布する頃には、二酸化炭素の発泡が十分ではなく、充分な美容もしくは医療効果が得られにくい。粒状物1重量部に対して粘性組成物が40質量部以上では、粒状物を粘性組成物と混合した際、ムラが生じやすく、消費者にとっては使いにくいだけでなく、十分な効果が得られない。
【0020】
<粒状物>
本実施形態の発泡性皮膚外用剤に用いられる粒状物は、所定の大きさを有することが望ましい。微粉の場合は、粒状物と粘性組成物を混合する際に、いわゆるダマ状の固まりになりやすく、不均一になるからである。不均一となった結果、ダマ状の部分は発泡が強すぎ、粉状物が行き渡らなかった部分はほとんど又は全く発泡しないこととなり、消費者にとっては使いにくいだけでなく、十分な効果が得られない。また、該粒状物は、水溶性酸を含んでいればよく、形状について限定するものではない。すなわち、一般的に、粒状物の形状は、粒状物の製造方法により異なり、不規則なものや平べったいもの、多面形、球状、しずく状、繊維状、円柱状などであってもよい。いずれの場合も、粒状物の形状は嵩密度、流動性、成形性に大きな影響を及ぼすため、適宜適切な形状の粒状物を選択して用いることが好ましい。
【0021】
また、この粒状物は、粉度及び粉度分布を限定するものではない。すなわち、一般的に、粒状物において、これ以上分けられない最小の独立した単位が単粒状物であるが、実際の粒状物は通常、集合した粒状物(二次粒状物)となっていることが多い。なお、粒状物のうち、異なる大きさの粒状物が全体に占める割合を「粒度分布」という。いずれにしても、この粒状物は、適切な粒度及び粒度分布を有することが好ましい。すなわち、この粒状物のメッシュサイズは、所定の範囲内であることが好ましい。
【0022】
また、この粒状物に含まれる水溶性酸は、特に限定するものではないが、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、フマル酸、マレイン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、グリコール酸、リンゴ酸、酒石酸、イタ酒石酸、クエン酸、イソクエン酸、乳酸、ヒドロキシアクリル酸、α−オキシ酪酸、グリセリン酸、タルトロン酸、サリチル酸、没食子酸、トロパ酸、アスコルビン酸、グルコン酸、リン酸、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸カリウム、酸性ヘキサメタリン酸ナトリウム、酸性ヘキサメタリン酸カリウム、酸性ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸カリウム、スルファミン酸などを好適に用いることができる。なお、これらのうちの1種だけを用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0023】
また、これらの水溶性酸の中でも、特にほど良い刺激感を実現するためには、クエン酸及びアスコルビン酸をともに混合して用いることが好ましい。消費者の立場からすると刺激が強すぎても弱すぎても満足感を得にくいからである。具体的には、アスコルビン酸だけの場合には、刺激感が弱すぎて消費者にとっては物足りないように感じられる。また、クエン酸だけの場合には、刺激感が強すぎて消費者にとっては不快感を感じる場合がある。なお、クエン酸及びアスコルビン酸の混合比率については、消費者の好みに応じて適宜調整することが好ましい。
【0024】
また、この粒状物は、水溶性酸がうまく粘性組成物中の炭酸塩と反応することを促すために、水溶性分散剤をさらに含むことが好ましい。なお、一般的には、水溶性酸も水溶性分散剤として機能するが、この水溶性分散剤は、上記の水溶性酸とは別の成分として添加される。すなわち、この粒状物に含まれる水溶性分散剤は、特に限定するものではないが、例えば、乳糖、白糖(主成分はショ糖)、D−マンニトール、果糖、尿素などを好適に用いることができる。なお、これらのうちの1種だけを用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。また、これらの水溶性分散剤の中でも、特にほど良い発泡力を実現するためには、乳糖を用いることが好ましい。なお、水溶性酸及び水溶性分散剤の混合比率については、目的とする発泡力の強さなどに応じて適宜調整することが好ましい。
【0025】
また、この粒状物は、粒状物を製造する際の通常の技術常識に反して増粘剤を含まないことが好ましい。増粘剤を含めた方が粒状にはしやすいが、その反面、粒状物の結合力が強くなりすぎるため、粒状物を粘性組成物に反応させた際、増粘剤を含めない方が粘性組成物内での粒状物の分散性が良いためである。しかしながら、この粒状物に増粘剤を入れることを排除する趣旨ではなく、増粘剤を入れる場合には、その含有率は目的とする各種特性に応じて適宜調整することが好ましい。
【0026】
<粘性組成物>
本実施形態の発泡性皮膚外用剤に用いられる粘性組成物は、炭酸塩、水及び増粘剤を含んでいればよく、形状について限定するものではない。すなわち、一般的に、粘性組成物の形状は、粘性組成物の組成により異なり、ジェル状、ゲル状、スラリー状などの形状を取ることができる。もっとも、これらの中でも、皮膚外用剤として用いた場合の使用感に優れるためジェル状の粘性組成物を用いることが特に好ましい。
【0027】
この粘性組成物に含まれる炭酸塩としては、特に限定されず、水溶性酸と反応して二酸化炭素を発生するものであれば好適に用いることができる。例えば、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、セスキ炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、セスキ炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸水素リチウム、セスキ炭酸リチウム、炭酸セシウム、炭酸水素セシウム、セスキ炭酸セシウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸水酸化マグネシウム、炭酸バリウムなどを好適に用いることができる。なお、これらのうちの1種だけを用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。また、これらの炭酸塩の中でも、特にほど良い発泡力を実現するためには、炭酸水素ナトリウムを用いることが好ましい。
【0028】
なお、炭酸水素ナトリウムの含有率については、目的とする発泡力の強さなどに応じて適宜調整することが好ましい。具体的には、炭酸塩の配合量は、粘性組成物全体に対して0.1〜10質量%が好ましいが、より好ましくは0.5〜6質量%、さらに好ましくは2〜4質量%である。炭酸塩の配合量が0.1質量%以下であると、これと反応する酸の量がどれだけ多くても二酸化炭素の発生量が少ないために、美容もしくは医療効果が得られない。炭酸塩の配合量が10質量%以上であると、飽和溶解度を超えるため析出し、製品外観を損なうので好ましくない。
【0029】
この粘性組成物に含まれる水としては、特に限定されず、通常の化粧品や医薬品等の製造に使用できる水であれば特に制限されず、蒸留水、膜濾過水、イオン交換水などが適宜使用できる。水の配合量は、粘性組成物全体に対して50〜90質量%が好ましいが、より好ましくは55〜85質量%、さらに好ましくは60〜80質量%である。水の配合量が50質量%以下であると、粘性組成物の粘性が高すぎて流動性、柔軟性等に欠けるために粒状物の混合が困難になるとともに、皮膚等にも塗布しにくくなる。また、粘性組成物中に粒状物がまんべんなく行き渡らなくなる結果、皮膚等への塗布部分全体に対して充分な美容もしくは医療効果が得られない。水の配合量が90質量%以上であると、粘性組成物に粒状物を混合したとき、水溶性酸の溶解が早すぎて二酸化炭素が急激に発生し、外気中に発散し、皮膚等に塗布する頃には、調製された二酸化炭素外用剤中の二酸化炭素含有量が少なくなるため、充分な美容もしくは医療効果が得られない。また、該二酸化炭素外用剤を皮膚等に塗布したときに垂れるため使用性も悪い。
【0030】
この粘性組成物に含まれる増粘剤としては、ラムダカラギーナンと、イオタカラギーナンと、キサンタンガムと、を含み、少なくともカッパーカラギーナンは含まない。これらのうち、ラムダカラギーナンは粘り気(ねっとり感)に関し、イオタカラギーナン、キサンタンガムは弾力性(プルプル感)に関係する。一方で、カッパーカラギーナンを入れると粘性組成物が固体になってしまい、皮膚外用剤として塗布不能になってしまう。
【0031】
ここで、カラギーナン(carrageenan)は、直鎖含硫黄多糖類の一種で、D−ガラクトース(もしくは3,6−アンヒドロ−D−ガラクトース)と硫酸から構成される陰イオン性高分子化合物を含む。カラギーナンは、カラギナン、カラゲナン、カラジーナン、カラゲニン(carrageenin)とも呼ばれる。
【0032】
カラギーナンには次の3つのタイプがある。
κ(カッパ):硬く強いゲルを作る傾向がある。Kappaphycus cottonii (オオキリンサイ属)から得られる。
ι(イオタ):軟らかいゲルを作る傾向がある。Eucheuma spinosum(キリンサイ属)から得られる。
λ(ラムダ):水ではゲル化しないが、タンパク質と混ぜたときに軟らかいゲルを作る傾向がある。よく使われる原料は南欧産のGigartina(スギノリ属)である。
【0033】
また、キサンタンガム (xanthan gum)は多糖類の一種で、グルコース2分子、マンノース2分子、グルクロン酸の繰り返し単位からなる高分子化合物を含む。トウモロコシなどの澱粉を細菌(Xanthomonas campestris)により発酵させて作られることが多い。分子量は約200万もしくは1,300万から5,000万程度であることが多い。
【0034】
この粘性組成物中のラムダカラギーナンの含有率は、0.5〜3.0質量%であることが好ましい。ラムダカラギーナンの含有率がこの範囲内であれば、後述する実施例に示すように、本評価項目(必ずしも全てでなくてもよい)においてバランスよく優れた皮膚外用剤が得られる。なお、このラムダカラギーナンの含有率は、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0質量%から選ばれる任意の2つの数値の範囲内であっても良い。
【0035】
また、この粘性組成物中のイオタカラギーナンの含有率は、0.3〜2.0質量%であることが好ましい。イオタカラギーナンの含有率がこの範囲内であれば、後述する実施例に示すように、本評価項目(必ずしも全てでなくてもよい)においてバランスよく優れた皮膚外用剤が得られる。なお、このイオタカラギーナンの含有率は、0.3、0.6、0.9、1.2、1.5、1.8、2.0質量%から選ばれる任意の2つの数値の範囲内であっても良い。
【0036】
また、この粘性組成物中のキサンタンガムの含有率は、0.3〜2.0質量%であることが好ましい。キサンタンガムの含有率がこの範囲内であれば、後述する実施例に示すように、本評価項目(必ずしも全てでなくてもよい)においてバランスよく優れた皮膚外用剤が得られる。なお、このキサンタンガムの含有率は、0.3、0.6、0.9、1.2、1.5、1.8、2.0質量%から選ばれる任意の2つの数値の範囲内であっても良い。
【0037】
また、この粘性組成物に含まれる増粘剤としては、ラムダカラギーナンと、イオタカラギーナンと、キサンタンガムと、これら以外にも、他の増粘剤を混合しても良い。他の増粘剤としては、例えば、アルギン酸系高分子、セルロース系高分子、合成高分子が好ましく、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、カルボキシメチルセルロース及びその塩類、カルボキシメチルスターチ及びその塩類、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドンが使用性などの面からより好ましく、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、カルボキシメチルセルロースナトリウムが使用感などの面からさらに好ましい。もっとも、既に説明したように、この粘性組成物に含まれる増粘剤としては、少なくともカッパーカラギーナンは含まない。
【0038】
また、この粘性組成物のブルックフィールド型粘度計におけるずり速度50rpm(高ずり速度)での粘度は、3,000〜30,000mPa・s(25℃)であることが好ましい。この粘性組成物が、ラムダカラギーナンを0.5〜3.0質量%、イオタカラギーナンを0.3〜2.0質量%、キサンタンガムを0.3〜2.0質量%含む場合には、後述する実施例で示すように、この高ずり速度での粘度がこの範囲内に収まる。そして、この高ずり速度での粘度がこの範囲内であれば、後述する実施例に示すように、本評価項目(必ずしも全てでなくてもよい)においてバランスよく優れた皮膚外用剤が得られる。なお、ここの高ずり速度での粘度は、3,000、5,000、10,000、15,000、20,000、25,000、30,000mPa・s(25℃)から選ばれる任意の2つの数値の範囲内であっても良い。
【0039】
また、この粘性組成物のブルックフィールド型粘度計におけるずり速度0.5rpm(低ずり速度)での粘度が、 100,000〜1,000,000mPa・s(25℃)であることが好ましい。この粘性組成物が、ラムダカラギーナンを0.5〜3.0質量%、イオタカラギーナンを0.3〜2.0質量%、キサンタンガムを0.3〜2.0質量%含む場合には、後述する実施例で示すように、この低ずり速度での粘度がこの範囲内に収まる。そして、この低ずり速度での粘度がこの範囲内であれば、後述する実施例に示すように、本評価項目(必ずしも全てでなくてもよい)においてバランスよく優れた皮膚外用剤が得られる。なお、ここの低ずり速度での粘度は、100,000、200,000、300,000、400,000、500,000、600,000、700,000、800,000、900,000、1,000,000mPa・s(25℃)から選ばれる任意の2つの数値の範囲内であっても良い。
【0040】
ここで、本実施形態に係る発泡性皮膚外用剤に含まれる粘性組成物は、この粘性組成物の効果を損なわない範囲内で、化粧品などに用いられる成分である油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、金属石鹸、pH調整剤、防腐剤、香料、保湿剤、粉体、紫外線吸収剤、色素、酸化防止剤、キレート剤、樹皮組成物等の成分を配合することができる。また、更に、松樹皮抽出物、アイスプラント抽出物、大豆抽出物、ジャガイモ抽出物、葛の花抽出物、甘藷若葉末、タマネギ粉末を配合しても良い。
【0041】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0042】
例えば、上記実施の形態では、水溶性酸を含む粒状物と、炭酸塩、水及び増粘剤を含む、粘性組成物とからなる二剤を用時調製する型の発泡性皮膚外用剤を中心に説明したが、特に二剤に限定するわけではない。例えば、三剤以上を用時調製する型の発泡性皮膚外用剤であってもよい。このようにしても、水溶性酸を含む粒状物と、炭酸塩、水及び増粘剤を含む、粘性組成物とからなる二剤を用時調製した際の発泡を三剤目が邪魔しなければ、同様に本評価項目(必ずしも全てでなくてもよい)においてバランスよく優れた皮膚外用剤が得られる。
【実施例】
【0043】
以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0044】
<評価項目>
後述する実施例及び比較例のサンプルについて、以下の評価項目について、表1に示す判断基準で判定を行った。なお、粘度の測定については、ブルックフィールド型粘度計を用いて常法にて行った。
【0045】
【表1】

【0046】
表1において、粘度1及び粘度2の意味は以下のとおりである。
粘度1〔高ズリ速度(50rpm)〕・・・伸ばし易さを測定
なお、粘度1が30,000mPa・s超であると、本実施形態に係る皮膚外用剤を皮膚等へ塗布する際、硬くて伸ばしにくい。また、粘度1が3,000mPa・s未満であると、柔らかすぎて伸ばしにくい。
粘度2〔低ズリ速度(0.5rpm)〕・・・垂れ易さを測定
なお、粘度2が1,000,000mPa・s超であると、本実施形態に係る皮膚外用剤を皮膚等へ塗布する際、垂れないが重くなりすぎ、塗布時に不均一性が出る。また、粘度2が100,000mPa・s未満であると、塗布後に該皮膚外用剤が垂れてくる。
【0047】
<実施例・比較例>
後述する表2〜表4に示す組成からなる実施例及び比較例のサンプルについて、上記の評価項目について、表1に示す判断基準で判定を行った結果を、あわせて表2〜表4に示す。
【0048】
実施例1は、粒状物および粘性組成物ともに代表的な組成を示している。実施例2は、粒状物がクエン酸を含まない組成を示している。実施例3は、粒状物がアスコルビン酸を含まない組成であり、クエン酸を多く含む組成を示している。実施例4は、粘性組成物がラムダカラギーナンを多く含む組成を示している。
【0049】
【表2】

【0050】
実施例5は、粘性組成物がラムダカラギーナンを少なくしか含まない組成を示している。実施例6は、粘性組成物がイオタカラギーナンを多く含む組成を示している。実施例7は、粘性組成物がイオタカラギーナンを少なくしか含まない組成を示している。実施例8は、粘性組成物がキサンタンガムを多く含む場合の組成を示している。実施例9は、粘性組成物がキサンタンガムを少なくしか含まない場合の組成を示している。
【0051】
【表3】

【0052】
比較例1は、粘性組成物がラムダカラギーナンを含まない組成を示している。比較例2は、粘性組成物がイオタカラギーナンを含まない組成を示している。比較例3は、粘性組成物がキサンタンガムを含まない組成を示している。比較例4は、粘性組成物がカッパーカラギーナンを含む場合の組成を示している。比較例5は、粘性組成物が増粘剤としてカッパーカラギーナンだけを含む場合の組成を示している。
【0053】
【表4】

【0054】
<結果の考察>
上記の実施例・比較例の評価結果から、増粘剤として、ラムダカラギーナンと、イオタカラギーナンと、キサンタンガムと、を含み、少なくともカッパーカラギーナンは含まない場合には、本評価項目(必ずしも全てでなくてもよい)においてバランスよく優れた皮膚外用剤が得られることがわかる。
【0055】
また、粘性組成物が、ラムダカラギーナンを0.5〜3.0質量%、イオタカラギーナンを0.3〜2.0質量%、キサンタンガムを0.3〜2.0質量%含む場合には、発泡力、発泡持続性、液垂れ、伸展性、弾力性、粘り気、柔軟性のすべての評価項目においてバランスよく優れた皮膚外用剤が得られることがわかる。そして、この場合に、さらに水溶性酸としてクエン酸及びアスコルビン酸を混合して用いることにより、刺激感においても優れた皮膚外用剤が得られることがわかる。
【0056】
また、粘度1が高すぎ、粘度2が低すぎると、発泡力、刺激感、伸展性、柔軟性が低下し、弾力性、粘り気が過剰になるデメリットがある。また、粘度1が低すぎ、粘度2が低すぎると、発泡持続性、弾力性、粘り気が低下し、液垂れが発生し、発泡力、柔軟性が過剰になるデメリットがある。また、粘度1が高すぎ、粘度2が高すぎると、発泡力、柔軟性が低下し、弾力性、粘り気が過剰になるデメリットがある。
【0057】
なお、本評価項目の評価結果は、粘度1及び粘度2によってのみ左右されるわけではない。すなわち、実施例7では、粘度1は適度であるが、粘度2が低すぎる場合に、弾力性が低下し、液垂れが発生し、発泡力、柔軟性が過剰になるデメリットがある。一方、比較例2では、粘度1は適度であるが、粘度2が低すぎる場合に、発泡力、発泡持続性、伸展性、柔軟性が低下し、液垂れが発生し、弾力性、粘り気が過剰になるデメリットがある。また、比較例3では、粘度1は適度であるが、粘度2が低すぎる場合に、発泡力、伸展性、柔軟性が低下し、液垂れが発生し、弾力性、粘り気が過剰になるデメリットがある。
【0058】
このように、本評価項目の評価結果は、粘度1及び粘度2によってのみ左右されるわけではなく、増粘剤として、ラムダカラギーナンと、イオタカラギーナンと、キサンタンガムと、を含み、少なくともカッパーカラギーナンは含まない場合には、本評価項目(必ずしも全てでなくてもよい)においてバランスよく優れた皮膚外用剤が得られる点に注目されたい。このような結果は、本願の出願時の技術常識からは当業者が容易に想到しえない結果であることが明らかである。
【0059】
以上、本発明を実施例に基づいて説明した。この実施例はあくまで例示であり、種々の変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0060】
たとえば、上記実施例では、水溶性分散剤として乳糖を用いたが、他の水溶性分散剤を用いてもよい。この場合にも、同様に本評価項目(必ずしも全てでなくてもよい)においてバランスよく優れた皮膚外用剤が得られることは、当業者であれば容易に理解できることである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二剤以上を用時調製する型の発泡性皮膚外用剤であって、
水溶性酸を含む粒状物(第一剤)と、
炭酸塩、水及び増粘剤を含む粘性組成物(第二剤)と、
を含み、
前記粘性組成物が、前記増粘剤として、
ラムダカラギーナンと、
イオタカラギーナンと、
キサンタンガムと、
を含み、
少なくともカッパーカラギーナンは含まない、
発泡性皮膚外用剤。
【請求項2】
請求項1に記載の発泡性皮膚外用剤において、
前記粘性組成物が、前記ラムダカラギーナンを0.5〜3.0質量%、イオタカラギーナンを0.3〜2.0質量%、キサンタンガムを0.3〜2.0質量%含む、
発泡性皮膚外用剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の発泡性皮膚外用剤において、
前記粘性組成物のブルックフィールド型粘度計におけるずり速度50rpmでの粘度が、3,000〜30,000mPa・s(25℃)であり、
前記粘性組成物のブルックフィールド型粘度計におけるずり速度0.5rpmでの粘度が、 100,000〜1,000,000mPa・s(25℃)である、
発泡性皮膚外用剤。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の発泡性皮膚外用剤において、
前記粒状物が、
水溶性分散剤をさらに含み、
増粘剤を含まない、
発泡性皮膚外用剤。

【公開番号】特開2013−14532(P2013−14532A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147756(P2011−147756)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(398028503)株式会社東洋新薬 (182)
【Fターム(参考)】