説明

二層形状記憶リボン、及びその製造方法

【課題】高い磁気特性、形状記憶性を併せ持つ二層形状記憶リボンを提供する。
【解決手段】磁歪定数がほぼゼロの軟磁性合金である第1層、及び、非磁性の形状記憶合金である第2層からなる2層積層構造を有し、上記軟磁性合金の成分組成における含有量(質量%)が最も多い元素と、上記形状記憶合金の成分組成における含有量(質量%)が最も多い元素が、同じ元素であることを特徴とする二層形状記憶リボン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、十分な強磁性を有し、電気回路の複雑な制御系への応用が可能な二層形状記憶リボン、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般的な形状記憶合金としては、Ni−Ti系合金、Cu−Al−Zn系合金、Cu−Al−Ni系合金等がよく知られている。これらの形状記憶合金は、主に、管継手等に用いられる。これらの形状記憶合金は、非磁性である。
【0003】
形状記憶合金が外部磁界に反応する程度の強磁性を有すれば、その用途は、磁気センサや小型アクチュエータへ拡大可能となる。すなわち、磁界を用いて形状記憶合金を操作することが可能であれば、電子回路やシーケンス回路等の電気信号を磁界に変換し、この磁界で形状記憶合金を変形させることにより、複雑な制御が可能になると期待される。
【0004】
さらに、形状記憶合金の透磁率が高ければ、加熱効率が高くなるので、非接触の誘導加熱を用いて、変形前の形状に容易に回復できる。
【0005】
近年、形状記憶性に加え、強磁性を有する、鉄基形状記憶合金が提案されている。例えば、非特許文献1には、非磁性のFe−Mn−Si形状記憶合金に強磁性元素(Co、Ni)を添加した強磁性形状記憶合金が開示されている。その他、特許文献1〜5にも、鉄基形状記憶合金が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−146320号公報
【特許文献2】特公平5−72464号公報
【特許文献3】特開昭61−201761号公報
【特許文献4】特開平2−190448号公報
【特許文献5】特開平2−77554号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】戸高孝、佐藤勇太、榎園正人,Fe基強磁性形状記憶合金の磁気特性並びに形状記憶特性,日本AEM学会誌 VOL.16, No.2, 2008, PP.76-81
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
非特許文献1には、強磁性形状記憶合金の磁気特性(飽和磁化)と形状記憶特性(Shape Memory Effect、以下「SME」という)は互いにトレードオフの関係があることが示されている。
【0009】
非特許文献1に開示された強磁性形状記憶合金では、SMEが100%のときの飽和磁化は、20〜30emu/g程度である。また、飽和磁化が100emu/gのときのSMEは、10〜35%程度である。
【0010】
このように、従来の強磁性形状記憶合金は、磁気センサ、小型アクチュエータに用いるには、磁気特性、形状記憶性ともに、十分なものとはいえない。
【0011】
本発明は、上記の事情にかんがみてなされたものであって、従来にない高い磁気特性、形状記憶性を併せ持つ二層形状記憶リボンの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、高い磁気特性、形状記憶性を併せ持つ二層形状記憶リボンを得るべく、鋭意検討した。その結果、従来の技術とは全く異なる方法で、高い磁気特性、形状記憶性を併せ持つ二層形状記憶リボンを得ることに成功した。
【0013】
すなわち、軟磁性合金の成分組成を有する溶融金属と、形状記憶合金の成分組成を有する溶融金属を、ノズルより噴射し、それぞれの溶融金属を、冷却ロールを用いて急速冷却することにより、軟磁性層と形状記憶層が層の境界で融着凝固した2層からなる2層積層構造のリボンを製造することができ、かつ、得られたリボンは、軟磁性と形状記憶性の特性を併せ持つことを見出した。
【0014】
本発明は、上記の知見に基づきなされたものであって、その要旨は以下のとおりである。
【0015】
(1)磁歪定数がほぼゼロの軟磁性合金である第1層、及び、非磁性の形状記憶合金である第2層からなる2層積層構造を有し、
上記第1層と第2層が層の境界で融着凝固されたことを特徴とする二層形状記憶リボン。
【0016】
(2)前記軟磁性合金がFe−Si系合金であり、前記形状記憶合金がFe−Mn−Si系合金であることを特徴とする前記(1)の二層形状記憶リボン。
【0017】
(3)前記軟磁性合金がFe−Si−Al系合金であり、前記形状記憶合金がFe−Mn−Si系合金であることを特徴とする前記(1)の二層形状記憶リボン。
【0018】
(4)前記軟磁性合金がNi−Fe系合金であり、前記形状記憶合金がNi−Ti系合金であることを特徴とする前記(1)の二層形状記憶リボン。
【0019】
(5)厚さが50〜100μmであることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかの二層形状記憶リボン。
【0020】
(6)磁歪定数がほぼゼロの軟磁性合金の成分組成を有する溶融金属と、非磁性の形状記憶合金の成分組成を有する溶融金属を、それぞれノズルから溶融金属を回転する冷却ロールの冷却面に、同時に、連続的に噴射して、上記冷却面で急冷凝固させることにより、上記軟磁性合金からなる第1層と上記形状記憶合金からなる第2層が層の境界で融着凝固された2層積層構造を有するリボンを製造することを特徴とする二層形状記憶リボンの製造方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、高い磁気特性、形状記憶性を併せ持つ二層形状記憶リボンを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】超急冷法による本発明の二層形状記憶リボンの製造方法の概略を示す図である。
【図2−1】本発明の二層形状記憶リボンの製造に用いることができる、ノズルの一例を示す図である。
【図2−2】本発明の二層形状記憶リボンの製造に用いることができる、ノズルの一例を示す図である。
【図3】形状記憶効果(SME)の評価方法を説明する図である。
【図4−1】本発明の実施例で作製した二層形状記憶リボンの表面のX線回折ピークを示す図である。
【図4−2】本発明の実施例で作製した二層形状記憶リボンの表面のX線回折ピークを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の二層形状記憶リボンについて、詳細に説明する。以下、「%」は「質量%」を示すものとする。
【0024】
本発明の二層形状記憶リボンは、磁歪定数がほぼゼロの軟磁性合金である第1層、及び、非磁性の形状記憶合金である第2層からなる2層積層構造を有する。ここで、「磁歪定数がほぼゼロ」とは、磁歪定数が絶対値で1×10-6以下であることをいうものとする。
【0025】
単に、磁歪定数がほぼゼロの軟磁性合金、及び、非磁性の形状記憶合金を合金化したり、合金化した状態でリボン化したりしても、本発明の二層形状記憶リボンと同様の性質は得られない。すなわち、軟磁性合金からなる第1層、及び形状記憶合金からなる第2層に分かれ、第1層と第2層が層の境界で融着凝固した積層構造である点が、高い磁気特性及び形状記憶性を得る上で重要である。
【0026】
第1層と第2層の境界において、軟磁性合金、及び形状記憶合金の一部が合金化していてもかまわないが、合金化の割合は低いほうが、磁気特性、及び形状記憶特性が優れた二層形状記憶リボンが得られる。合金化した領域の割合は、全厚みの10%以下であることが好ましく、より好ましくは5%以下、さらに好ましくは1%以下である。
【0027】
本発明の二層形状記憶リボンの第1層は、磁歪定数がほぼゼロの軟磁性合金からなり、この軟磁性合金の特性が、本発明の二層形状記憶リボンの磁気特性となる。磁歪定数がほぼゼロであることにより、リボンに圧力(張力)を加えても磁気特性が変化しないので、本発明の二層形状記憶リボンは、磁気センサや小型アクチュエータに好適である。
【0028】
磁歪定数がほぼゼロとなる磁性合金としては、例えば、Fe−Si系合金、Fe−Si−Al系合金、Ni−Fe系合金、Ni−Mn系合金などが知られており、目的に応じて、適宜、選択することができる。磁気特性の観点からは、第1層は、Fe−Si系合金、Fe−Si−Al系合金、又は、Ni−Fe系合金であることが好ましい。
【0029】
Fe−Si系合金は、Siの含有量が6.5%前後で、残部が鉄からなる合金が、磁歪定数がほぼゼロとなることが知られている。Fe−Si−Al系合金は、Siの含有量が9.6%前後、Alの含有量が5.4%前後で、残部が鉄からなる合金が、磁歪定数がほぼゼロとなることが知られている。Ni−Fe系合金は、Niの含有量が81%前後で、磁歪定数がほぼゼロとなることが知られている。
【0030】
なお、本発明の二層形状記憶リボンの第1層の磁性合金は、磁歪定数がほぼゼロとなる磁性合金であれば、上に示した成分系に、さらにMo、B、Co等の元素を添加した、例えば5%Mo−79%Ni−16%Feのような合金であってもかまわない。
【0031】
本発明の二層形状記憶リボンの第2層は、非磁性の形状記憶合金からなる。ここで、「非磁性」とは、磁性が全くない場合のほか、本発明の趣旨に影響しない程度の低い磁性であることを意味し、常温で常磁性、反強磁性、反磁性であるものを含む。
【0032】
第2層の形状記憶合金が磁性を有すると、第1層から第2層へと磁束の一部が漏れ出るので、第1層の軟磁性合金が有する磁気特性を、本発明の二層形状記憶リボン全体として得ることができなくなる。
【0033】
また、第1層と第2層の組成を近いものとすることにより、層間の密着力を高めることが可能となり、実用上問題のない密着力を有する2層積層構造のリボンを得ることができる。
【0034】
例えば、第1層が、Fe−Si系合金や、Fe−Si−Al系合金である場合は、第2層は、Fe−Mn−Si系の形状記憶合金が好適である。第1層が、Ni−Fe系合金である場合は、第2層は、Ni−Ti系の形状記憶合金が好適である。
【0035】
これらの合金には、上に記載された元素の他に、酸化の防止や結晶粒の微細化を目的として、B、Mo、Cr、Co、Cuのような元素を適宜添加したものも含まれる。
【0036】
Bは、結晶粒の微細化を目的として、1%以下の範囲で添加することができる。Mo及びCoは、透磁率の向上を目的として、それぞれ、6%以下、15%以下の範囲で添加することができる。Crは、耐酸化性の向上を目的として、12%以下の範囲で添加することができる。Cuは、透磁率の向上、及び延性の向上を目的として、6%以下の範囲で添加することができる。
【0037】
好適な第1層、及び第2層の合金の具体的な例を、表1に示す。これらの組み合わせは例示であり、磁歪定数がほぼゼロの軟磁性合金と、非磁性の形状記憶合金の組み合わせであれば、他の合金を用いてもよい。
【0038】
【表1】

【0039】
本発明の二層形状記憶リボンは、全体として軟磁性なので、透磁率が高く、加熱効率が高い。その結果、非接触の誘導加熱等により、変形前の形状に容易に回復させることができる。
【0040】
本発明の二層形状記憶リボンの厚さは、特に制限されるものではない。リボン全体として、高い磁気特性、及び形状記憶性を得るためには、50〜100μm程度が好ましい。厚さが50μm未満になると、リボンを安定して製造するのが難しくなる。厚さが100μmを超えると、リボンを安定して製造するのが難しくなり、さらにリボンがもろくなりやすくなる。
【0041】
次に、本発明の二層形状記憶リボンの製造方法について説明する。
【0042】
本発明の二層形状記憶リボンは、例えば、図1に示すような、溶融金属を噴射するノズル10と、冷却ロール20を有する、単ロール装置を用いて製造することができる。
【0043】
具体的には、第1層の軟磁性合金の成分組成を有する溶融金属と、第2層の形状記憶合金の成分組成を有する溶融金属を、それぞれ、互いの噴射口を所定の間隔をおいて接近させて配置した別々のノズルから、溶融金属を冷却ロールの冷却面に、同時に、連続的に噴射して、冷却面上で急冷凝固させる。
【0044】
特に限定されるものではないが、それぞれのノズルの噴射口の間隔は、2mm以下とするのが好ましい。また、特に限定されるものではないが、溶融金属は、冷却ロールの頂部からロール回転方向に±5〜6°程度の範囲の直上に位置させたノズルから噴射し凝固させるのが、リボンの製造が容易であり好ましい。
【0045】
ノズルから噴射する溶融金属は、噴射口の反対側のガス導入管(図示せず)から、例えばアルゴンガス等を導入して加圧し、噴射する。
【0046】
ノズルには、例えば、図2−1、図2−2に示すような、磁性体合金の成分組成を有する溶融金属と、形状記憶合金の成分組成を有する溶融金属とを、混合することなく注入可能とする隔壁11をノズル10の内部に備え、磁性体合金の成分組成を有する溶融金属を噴射する噴射口12aと、形状記憶合金の成分組成を有する溶融金属とを噴射する噴射口12bとを、備えるガラス製等の非金属製のノズルを用いることもできる。
【0047】
ノズルの形状は、特に限定するものではないが、図2−2の(e−1)、(e−2)に示す、スケアー形状のスリットノズルが、均等厚の薄リボンを製造する観点からは好適である。
【0048】
ノズル内の溶融金属を加圧するアルゴンガスの圧力、冷却ロールとノズルの間隔、冷却ロールの回転数等を制御することによって、リボンの厚みの制御を行うことができ、本発明の二層形状記憶リボンを得ることができる。
【0049】
本発明の二層形状記憶リボンの作製は、大気中、アルゴンガス雰囲気中、真空中等で行うことができる。また、上で説明した単ロール装置のほかに、双ロール装置、ドラムの内壁を使う延伸急冷装置、エンドレスタイプのベルトを使う装置等を用いても、本発明の二層形状記憶リボンを製造することができる。
【0050】
リボンの一方の面側が軟磁性合金、他方の面側が形状記憶合金の構造を有することは、それぞれの面のX線回折を測定することで確認することができる。また、リボンの断面をTEM観察しても、リボンが2層積層構造を持つことを確認することができる。
【実施例】
【0051】
図1に示した超急冷装置、及び図2−1、図2−2に示したノズルを用いて、磁歪定数がほぼゼロの軟磁性合金(6.5%Si−93.1%Fe−0.4%B)、及び非磁性の形状記憶合金(57.8%Fe−26%Mn−10%Cr−6%Si−0.2%B)の2層からなる二層形状記憶リボンを作製した。冷却ロールは、銅製の、直径20cm、冷却周面の幅20mmのロールを用いた。
【0052】
軟磁性合金、及び形状記憶合金は、内部分割式のノズル内にそれぞれ収容し、同時に溶融し、容器下部のノズルから、回転する冷却ロールの頂部から回転方向に2°程度ずらした位置に、同時に噴射して急冷し、軟磁性合金からなる第1層と形状記憶合金からなる第2層が融着凝固された2層積層構造を有するリボンを製造した。
【0053】
ノズルの噴射口の位置は、冷却ロールの頂部から回転方向に2°程度ずらした位置の直上において、ロール回転方向の上流側と下流側に各々配列した。軟磁性合金及び形状記憶合金を、それぞれ、このノズルの噴射口の上・下流側のどちら側から噴射するかは、リボン製造に影響を及ぼさない。
【0054】
本例では上流側に形状記憶合金用の噴出口を下流側に軟磁性合金用の噴出口を配置して、形状記憶合金が先に冷却ロール周面に接触し凝固するようにしてある。
【0055】
リボンの作製は、大気中と、アルゴンガス中で行った。ノズルからの金属の噴射は、ノズル内の溶融金属をアルゴンガスで加圧して行った。アルゴンガスの噴射圧、冷却ロールとノズル先端の間隔、冷却ロールの回転数、ロールの周速度は、表2の条件とした。また冷却ロールの周囲は空気巻き込みによる噴射溶融金属の酸化を防止するためアルゴンガスパージしてある。
【0056】
【表2】

【0057】
作製したリボンの評価は、飽和磁化、キュリー温度、形状記憶効果の測定により行った。
【0058】
飽和磁化は、印加磁界10kOeの下で、振動試料型磁力計(以下「VSM」という)により測定したM−H曲線から算出した。
【0059】
キュリー温度は、印加磁界20Oeの下で、VSMにより測定したM−T曲線から算出した。
【0060】
形状記憶効果は、図3に示すように、はじめにリボンを形状記憶処理により直線状に形状記憶させ(a)、次いで、室温で45°に曲げ(b)、その後、マッフル炉で300℃で10秒間加熱し、回復角度αを測定した(c)。曲げは、軟磁性層側、形状記憶層側に曲げ、それぞれの場合について、回復角度を測定した。
【0061】
形状記憶効果SMEは、下記式(1)で算出した。
SME[%]=(45°−α[°])/45°×100 …(1)
【0062】
形状記憶処理は、リボンを、1000℃で40秒間加熱し、その後、約20℃の水で急冷する条件で行った。
【0063】
結果を、表3に示す。試料No.21、22は、それぞれ、軟磁性合金、形状記憶合金の単層からなるリボンである。表2中のノズルの表記で、「a」等は、それぞれ、図2−1、図2−2の(a−1)、(a−2)等に示した形状であることを示す。また、「通常」は、1種類の溶融金属を1つの噴射口から噴射するタイプのノズルであることを示す。
【0064】
ノズルの大きさは、aは、外形28.6mm、噴射口径0.5mm、bは、外形28.6mm、噴射口径0.4mm、c、dは、外形15mm、噴射口径0.5mmである。また、通常のノズルは、外形15mm、噴射口径0.5mmである。
【0065】
【表3】

【0066】
ノズルa、b、cを用いて製造した試料No.1〜3は、形状記憶層側の形状記憶効果が100%であり、かつ、飽和磁化が80emu/g以上、高いものでは170emu/gと、従来の強磁性形状記憶合金と比べ、高い磁気特性、形状記憶性を併せ持つことが確認できた。
【0067】
ノズルdを用いて製造した試料No.4は、ノズルの隔壁が短いので、2種類の合金が噴射前に混合され、2層積層構造とならなかった比較例である。試料No.4は、磁気特性は他の試料と変わらないが、形状記憶効果が32%と、高い形状記憶効果が得られなかった。
【0068】
図4−1、図4−2に、作製したリボンの表面のX線回折を測定した結果を示す。(1−1)は試料No.1の磁性層側のX線回折ピーク、(1−2)は試料No.1の形状記憶層側のX線回折ピークである。試料No.2、3についても同様である。試料No.1〜3は、測定した面により回折ピークが異なっており、2層積層構造となっていることが確認できた。
【0069】
試料No.4は、どちらの面からの測定結果も、図4−2の(4)に示す同じ結果となり、2層積層構造とならなかったことが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明によれば、高い磁気特性及び形状記憶特性を併せ持つ二層形状記憶リボンを得ることができ、磁気センサや小型アクチュエータに適用することができるので、産業上の利用可能性は大きい。
【符号の説明】
【0071】
1 二層形状記憶リボン
10 ノズル
11 隔壁
12a、12b 噴射口
20 冷却ロール
30 ヒーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁歪定数がほぼゼロの軟磁性合金である第1層、及び、非磁性の形状記憶合金である第2層からなる2層積層構造を有し、
上記第1層と第2層が層の境界で融着凝固されたことを特徴とする二層形状記憶リボン。
【請求項2】
前記軟磁性合金がFe−Si系合金であり、前記形状記憶合金がFe−Mn−Si系合金であることを特徴とする請求項1の記載の二層形状記憶リボン。
【請求項3】
前記軟磁性合金がFe−Si−Al系合金であり、前記形状記憶合金がFe−Mn−Si系合金であることを特徴とする請求項1の記載の二層形状記憶リボン。
【請求項4】
前記軟磁性合金がNi−Fe系合金であり、前記形状記憶合金がNi−Ti系合金であることを特徴とする請求項1の記載の二層形状記憶リボン。
【請求項5】
厚さが50〜100μmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の二層形状記憶リボン。
【請求項6】
磁歪定数がほぼゼロの軟磁性合金の成分組成を有する溶融金属と、非磁性の形状記憶合金の成分組成を有する溶融金属を、それぞれ、互いに接近して配置された2つの噴射口から溶融金属を回転する冷却ロールの冷却面に、同時に、連続的に噴射して、上記冷却面で急冷凝固させることにより、上記軟磁性合金からなる第1層と上記形状記憶合金からなる第2層が層の境界で融着凝固された2層積層構造を有するリボンを製造することを特徴とする二層形状記憶リボンの製造方法。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【公開番号】特開2012−228826(P2012−228826A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98776(P2011−98776)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(304028726)国立大学法人 大分大学 (181)
【Fターム(参考)】