説明

二成分現像剤およびそれを用いる二成分現像装置

【課題】 被覆層の剥離によるホットオフセット発生温度の低下、画像濃度の不足、画像のかぶりおよびトナーの飛散などを抑えることのできる二成分現像剤およびそれを用いる二成分現像装置を提供する。
【解決手段】 画像形成装置100の二成分現像装置1で用いられる二成分現像剤の作製に際し、キャリアの被覆層におけるアクリル系樹脂の含有量を被覆層全量の5〜50重量%の範囲にし、トナーの誘電体損値(tanδ)を4.0×10−3〜15.0×10−3の範囲にする。このような二成分現像剤を用いることによって、定着装置30におけるホットオフセット現象の発生温度の低下を防ぐことができる。また画像濃度の不足、画像のかぶりおよびトナーの飛散などを抑え、高品質で充分な画像濃度を有する画像を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法、静電記録法などの画像形成方法において静電潜像などの潜像を可視化するために用いられる二成分現像剤および二成分現像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタなどの画像形成装置において多用されている電子写真法では、光導電性物質による光導電現象を利用し、以下のようにして画像を形成する(たとえば、特許文献1〜3参照)。まず、光導電性物質が含有される感光層を備える感光体を正または負の所定の電位に帯電させた後、帯電された感光体に画像情報に対応する露光を施し、静電潜像を形成する。次いで、形成された静電潜像を、トナーと呼ばれる荷電微粒子を含む現像剤で現像し、可視像であるトナー像を形成する。形成されたトナー像を必要に応じて紙などの記録材に転写し、加熱、加圧、加熱および加圧、または溶剤蒸気への曝露などによって記録材に定着し、画像を得る。
【0003】
電子写真法に用いられる現像剤としては、トナーのみからなる一成分現像剤と、トナーと磁性を有するキャリアと呼ばれる粒子とからなる二成分現像剤との2種類が知られている。その中でも、トナーの帯電制御が容易であることなどから、二成分現像剤が多用されている。二成分現像剤を用いて現像を行なう二成分現像装置では、現像剤を撹拌し、トナーとキャリアとを摩擦帯電によって互いに逆の極性に帯電させ、内部に磁石を備える現像剤担持体上に供給してキャリアとトナーとから成る磁気ブラシを形成させ、この磁気ブラシを感光体表面に摺擦させることによって静電潜像を現像する。したがって、二成分現像剤におけるキャリアの役割としては、摩擦帯電によるトナーへの電荷の付与、トナーの感光体への搬送などが挙げられ、その中でも、特にトナーへの電荷付与が重要である。
【0004】
近年、複写機、プリンタなどの電子写真法を用いた画像形成装置には、業務上の使用(ビジネスユース)、個人的な使用(パーソナルユース)を問わず、画像形成速度の高速化および小型化が求められている。画像形成速度の高速化および画像形成装置の小型化を実現するための方法としては、現像剤撹拌部の小型化による現像装置の小型化および現像速度の高速化が検討されている。このため、二成分現像剤には、キャリアとの摩擦帯電によってトナーが速やかに帯電されることが求められる。また画像形成装置には、長期に亙って均質な画像を形成することができることも求められるので、二成分現像剤には、トナーの帯電特性およびキャリアのトナーに対する帯電能力が長期間に亙って安定していることも求められる。
【0005】
また現像装置の小型化には、トナーの消費量を低減し、現像剤収容容器を低容量化することも有効である。トナーとしては、結着樹脂と呼ばれる結着性を有する樹脂中に着色剤などを分散させたものが用いられている。トナーの低消費量化を実現するための技術としては、少ないトナー量で所望の画像濃度の画像を形成することができるように、トナー中に含まれる着色剤の含有量を高くして着色力を向上させることが提案されている。たとえば、トナー中におけるカーボンブラックの濃度を10重量%以上としたトナーが開示されている(たとえば、特許文献4参照)。しかしながら、カーボンブラックは導電性を有するので、特許文献4に開示の技術のようにトナー中におけるカーボンブラックの濃度を10重量%以上とすると、トナーの電気抵抗が低くなりすぎ、トナーの帯電量が小さくなり、画像のかぶりおよびトナーの飛散などが発生するという問題が生じる。この問題を解決するためには、キャリアの電気抵抗を高く設定する必要がある。
【0006】
二成分現像剤に用いられるキャリアは、磁性体粒子の表面を樹脂などから成る被覆層で被覆して成るコートキャリアと、磁性体粒子そのものから成るノンコートキャリアとに大別される。このうち、コートキャリアは、ノンコートキャリアに比べて現像剤の長寿命化およびトナーの帯電制御などが容易であることから広く用いられている。またコートキャリアは、ノンコートキャリアに比べてキャリア上がりが発生しにくいという利点も有する。ここで、キャリア上がりとは、現像時に感光体表面の電荷と逆の極性の電荷がキャリアに注入され、感光体表面の電荷とキャリアとの間にクーロン力が働き、キャリアが感光体表面に付着する現象のことである。キャリア上がりが発生すると、キャリアがトナーとともに記録材に転写され、白抜けなどの致命的な画像欠陥を引起す。ノンコートキャリアは、一般にコートキャリアに比べて電気抵抗が低いので、現像時に感光体表面の電荷と逆の極性の電荷が注入されやすく、コートキャリアよりもキャリア上がりが発生しやすいものと考えられる。
【0007】
また、このようにコートキャリアは一般的にノンコートキャリアに比べて電気抵抗が高いので、前述のトナー中におけるカーボンブラックの含有量を高くした場合に生じる問題の解決にはコートキャリアの方が有効である。ただし、キャリア芯材となる磁性体粒子の表面を樹脂のみで被覆すると、キャリアの電気抵抗が高くなりすぎ、エッジ効果および電荷の蓄積現象などによって画質が低下するという問題が生じる。ここで、エッジ効果とは、黒べた部のような大面積のべた画像部を含む画像を形成する際に、トナーが付着されるべた画像部のうち、トナーが付着されない非画像部との境界近傍のべた画像部が、過剰のトナーで現像されてべた画像部の中心部分よりも画像濃度が高くなる現象のことである。
【0008】
この問題を解決するための技術としては、キャリアの被覆層に導電性粒子を分散させることによって、キャリアの電気抵抗を適度に低下させ、キャリアへの電荷の過度の蓄積を抑制するとともに、キャリアからの電荷の漏出(リーク)を抑えることが提案されている(たとえば、特許文献5〜8参照)。
【0009】
このように、コートキャリアでは、被覆層に種々の添加剤を添加することによって所望の特性を実現することができる。たとえば、別の先行技術では、前述のキャリア上がりを防ぐために、被覆層に磁性体微粉末を分散させることが提案されている(たとえば、特許文献9参照)。
【0010】
しかしながら、特許文献5〜9に開示の技術では、キャリアにおける被覆層とキャリア芯材との接着性については考慮していないので、現像剤撹拌時に被覆層が剥離してトナーに混入するおそれがある。被覆層が剥離してトナーに混入すると、被覆層を構成する樹脂によっては、ホットオフセット現象の発生し始める温度(以下、ホットオフセット発生温度と称する)が、トナーのみを用いて検討したときのホットオフセット発生温度よりも低下することがある。ここで、ホットオフセット現象とは、定着時の定着部材によるトナーの加熱温度が高すぎる場合に、トナーが過剰に溶融して定着部材に融着する現象のことである。
【0011】
たとえば、被覆層を構成する樹脂としてシリコーン樹脂、フッ素系樹脂などの融点がたとえば250〜350℃程度と高い樹脂(以下、このような樹脂を高融点樹脂と称する)を用いた場合に、被覆層の剥離が生じてトナー中に剥離層を構成する高融点樹脂が混入すると、ホットオフセット発生温度が低下する。この理由は、以下のように推察される。トナーは、定着時には定着部材によって170〜220℃程度に加熱されるけれども、被覆層の剥離によってトナー中に混入した高融点樹脂は、融点が250〜350℃程度と高いので、定着時の定着部材によるトナーの加熱温度では溶融しない。このため、定着時には、高融点樹脂が滑剤のような機能を果たし、トナーの溶融粘度を低下させるので、ホットオフセット発生温度の低下が生じるものと考えられる。
【0012】
特に、現像手段として、感光体に形成された静電潜像を現像する現像位置である感光体と現像剤担持体との対向部における現像剤担持体の移動方向が、感光体の移動方向と逆の方向に設定される現像装置(以下、カウンター方式の現像装置と称する)を用いる場合には、ホットオフセット発生温度の低下が生じやすい。これは、カウンター方式の現像装置では、現像位置における現像剤担持体の移動方向が感光体の移動方向と同一の方向に設定される現像装置に比べ、感光体と現像剤担持体との対向部において単位時間当たりに圧縮される現像剤量が多いので、現像剤に与えられる機械的負荷が大きく、被覆層の剥離量が多くなるためである。
【0013】
ホットオフセット発生温度が低下すると、定着部材によるトナーの加熱温度を、トナーを記録材に定着させるのに適した温度よりも低く設定することが必要になるので、画像の定着強度が低下するという問題が生じる。したがって、コートキャリアには、被覆層とキャリア芯材との接着性の向上が求められる。
【0014】
被覆層とキャリア芯材との接着性を向上させることに関する先行技術としては、被覆層を構成する材料としてアクリル樹脂とメラミン樹脂との架橋物を用いることが提案されている(たとえば、特許文献10参照)。しかしながら、特許文献10に開示の技術では、トナーの帯電特性については考慮されていないので、トナーの帯電特性によっては、トナーの帯電量が適切な値にならず、画像濃度の不足、画像のかぶりおよびトナーの飛散などが発生する場合がある。特に、最近の画像に対する更なる高精細化および高画質化の要求に対応し、トナーをたとえば体積平均粒径が6〜9μm程度になるように小粒径化すると、トナーの比表面積が増加し、キャリアのトナーに対する帯電能力が不足するので、トナーの帯電量が低下し、画像のかぶりおよびトナーの飛散などが発生しやすくなる。
【0015】
【特許文献1】米国特許第2,297,691号明細書
【特許文献2】特公昭42−23910号公報
【特許文献3】特公昭43−24748号公報
【特許文献4】特開平7−77828号公報
【特許文献5】特開昭58−108549号公報
【特許文献6】特開昭59−166968号公報
【特許文献7】特公平1−19584号公報
【特許文献8】特開平6−202381号公報
【特許文献9】特開昭58−108548号公報
【特許文献10】特許第2683624号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、キャリアにおけるキャリア芯材と被覆層との接着性に優れ、被覆層の剥離によるホットオフセット発生温度の低下を防ぐことができるとともに、キャリアとの撹拌によってトナーを適切な帯電量に帯電することができ、画像濃度の不足、画像のかぶりおよびトナーの飛散などを抑えることのできる二成分現像剤およびそれを用いる二成分現像装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、結着樹脂および着色剤を含有するトナーと、キャリア芯材および前記キャリア芯材を被覆する被覆層を有するキャリアとを含む二成分現像剤であって、
キャリアの被覆層が、アクリル系樹脂を被覆層全量の5重量%以上、50重量%以下含有し、
トナーの誘電体損値(tanδ)が、4.0×10−3以上、15.0×10−3以下(4.0×10−3≦tanδ≦15.0×10−3)であることを特徴とする二成分現像剤である。
【0018】
また本発明は、キャリアの被覆層が、導電性粒子をさらに含有することを特徴とする。
また本発明は、キャリアの被覆層が、シリコーン樹脂をさらに含有することを特徴とする。
【0019】
また本発明は、キャリア芯材が、フェライト系粒子であることを特徴とする。
また本発明は、キャリアは、キャリア芯材100重量部に対して、被覆層が5重量部以上、20重量部以下であることを特徴とする。
【0020】
また本発明は、キャリアは、重量平均粒径が、50μm以上、100μm以下であることを特徴とする。
【0021】
また本発明は、トナー中における着色剤の濃度が、10重量%以上、15重量%以下であることを特徴とする。
【0022】
また本発明は、トナーの濃度が、3.5重量%以上、8.0重量%以下であることを特徴とする。
【0023】
また本発明は、潜像担持体に形成される潜像を現像するために用いられる二成分現像装置であって、
潜像担持体に対向して設けられ、前記本発明の二成分現像剤を担持し、潜像担持体に形成される潜像を現像する位置へ搬送する現像剤担持体を含む現像剤供給手段と、
潜像担持体に形成される潜像を現像する位置における現像剤担持体の移動方向が、前記位置における潜像担持体の移動方向と逆の方向になるように現像剤供給手段の動作を制御する制御手段とを備えることを特徴とする二成分現像装置である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、トナーと被覆層を有するキャリアとを含む二成分現像剤において、キャリアの被覆層には、アクリル系樹脂が被覆層全量の5重量%以上、50重量%以下含有され、トナーの誘電体損値(tanδ)は、4.0×10−3以上、15.0×10−3以下(4.0×10−3≦tanδ≦15.0×10−3)である。アクリル系樹脂はたとえばシリコーン樹脂などに比べてキャリア芯材への接着性に優れるので、被覆層にアクリル系樹脂を被覆層全量の5重量%以上含有させることによって、キャリア芯材と被覆層との接着性に優れるキャリアを実現することができ、撹拌時のキャリア芯材からの被覆層の剥離を抑えることができる。また被覆層に含まれるアクリル系樹脂は、その軟化点がシリコーン樹脂などの融点に比べて低く、定着時の定着部材によるトナーの加熱温度、たとえば170〜220℃程度で瞬時に溶融し、離型剤として機能することができるので、被覆層がキャリア芯材から剥離してトナーに混入しても、ホットオフセット現像は発生しにくい。このため、被覆層を構成する樹脂としてアクリル樹脂と共にたとえばシリコーン樹脂などの融点が250〜350℃程度と高い樹脂(以下、このような樹脂を高融点樹脂と称する)を用いたとしても、ホットオフセット発生温度が低下することはない。このように、本発明の二成分現像剤では、キャリアの被覆層の剥離によるホットオフセット発生温度の低下を防ぐことができる。なお、本発明において、樹脂の融点とは、示差走査型熱量測定(略称DSC)においてDSC曲線に融解に相当する吸熱ピーク(以下、融解ピークと称する)が明確に現れ、融点を特定できるような熱的性質を示す樹脂が溶融し始める温度のことであり、樹脂の軟化点とは、DSC曲線に明確な融解ピークが現れず、融点を特定できないような熱的性質を示す樹脂が溶融を起こして流動し始める温度のことである。
【0025】
また、たとえば被覆層を構成する樹脂としてアクリル系樹脂と共にシリコーン樹脂などの絶縁性に優れる樹脂(以下、高絶縁性樹脂と称する)を用いた場合に、被覆層におけるアクリル系樹脂の含有量を前記範囲に選択することによって、キャリアの電気抵抗を好適なものとすることができる。これによって、キャリア上がり、エッジ効果およびキャリアへの電荷の蓄積現象などによる画質の低下、トナーの帯電量の不足による画像のかぶりおよびトナーの飛散などを抑えることができる。
【0026】
また、トナーの誘電体損値(tanδ)を前記範囲に選択することによって、本発明の二成分現像剤に用いられる前述のキャリアとの摩擦帯電によって充分な帯電量を得ることのできるトナーが実現される。すなわち、キャリアの被覆層におけるアクリル系樹脂の含有量を前記範囲に選択するとともに、トナーの誘電体損値(tanδ)を前記範囲に選択することによって、トナーの帯電量を好適なものとすることができるので、画像濃度の不足、画像のかぶりおよびトナーの飛散を抑えることができる。
【0027】
したがって、前述のようにキャリアの被覆層におけるアクリル系樹脂の含有量を前記範囲に選択し、かつトナーの誘電体損値(tanδ)を前記範囲に選択することによって、キャリアにおけるキャリア芯材と被覆層との接着性に優れ、被覆層の剥離によるホットオフセット発生温度の低下を防ぐことができるとともに、キャリアとの撹拌によってトナーに適切な帯電量を付与することができ、画像濃度の不足、画像のかぶりおよびトナーの飛散などを抑えることのできる二成分現像剤を実現することができる。
【0028】
また本発明によれば、キャリアの被覆層は、導電性粒子を含有することが好ましい。キャリアの被覆層中に導電性粒子を分散させることによって、キャリアに適度な導電性が付与される。したがって、キャリアが現像電極として作用し、現像電極と、現像されるべき潜像が形成された感光体などの潜像担持体の表面とが、非常に近接した状態で現像が行われるので、線部および黒べた画像のような大面積のべた画像部のいずれであっても、原稿画像通りに忠実に再現することができる。また、キャリアへの電荷の蓄積現象が一層抑制されるので、長期間に亙ってトナーの帯電量が安定し、現像剤担持体に担持された現像剤中のトナー濃度の制御が容易になり、画像むらのない高品質の画像を長期間に亙って安定して形成することができる。
【0029】
また本発明によれば、キャリアの被覆層は、アクリル系樹脂と共に、シリコーン樹脂を含有することが好ましい。キャリアの被覆層にシリコーン樹脂を含有させることによって、現像剤撹拌時のキャリア表面へのトナーの融着が抑えられるので、繰返し使用されているうちにキャリアの帯電特性が変化することを防ぐことができる。したがって、長期間に亙ってトナーの帯電量を一定に維持し、均質な画像を提供することができる。
【0030】
また本発明によれば、キャリア芯材には、フェライト系粒子を用いることが好ましい。フェライト系粒子は、電気抵抗の経時変化が小さく、また温度および湿度などの周囲環境が変化しても電気抵抗が変化しにくいので、キャリア芯材としてフェライト系粒子を用いることによって、キャリアの帯電特性の経時変化および環境の変動による変化を抑制することができる。したがって、種々の環境下において、長期間に亙ってトナーの帯電量を一定に維持し、高品質の画像を形成することができる。また、フェライト系粒子によって形成される磁気ブラシの穂は柔らかく、潜像担持体に与える機械的負荷が小さいので、潜像担持体表面の摺擦による画質の劣化を防ぐことができる。
【0031】
また本発明によれば、キャリアにおける被覆層の割合は、キャリア芯材100重量部に対して、5重量部以上、20重量部以下であることが好ましい。被覆層の割合を前記範囲に選択することによって、キャリアの電気抵抗を好適なものとすることができるので、トナーに適切な帯電量を付与することができ、トナーの帯電量の過多による画像濃度の低下、トナーの帯電量の過少による画像のかぶりおよびトナーの飛散などをより確実に防ぐことができる。また撹拌時の機械的負荷によってキャリア芯材が露出することを防ぐことができるので、キャリアの露出部分の拡大によるキャリアの帯電特性の変化を抑え、二成分現像剤の耐久性を向上させることができる。
【0032】
また本発明によれば、キャリアの重量平均粒径は、50μm以上、100μm以下であることが好ましい。キャリアの重量平均粒径を前記範囲に選択することによって、キャリア上がり現象の発生を一層抑制し、画像への白抜けの発生をより確実に防止することができる。また、トナーに対するキャリアの帯電能力を好適なものとすることができるので、トナーに適切な帯電量を付与し、画像のかぶりおよびトナーの飛散を一層抑えることができる。また、トナーの体積平均粒径をたとえば6〜9μm程度と小さくしても、トナーに適切な帯電量を付与することができるので、画像のかぶりおよびトナーの飛散を引起すことなくトナーの小粒径化を実現し、高精細および高品質の画像を形成することが可能になる。
【0033】
また本発明によれば、トナー中における着色剤の濃度は、10重量%以上、15重量%以下であることが好ましい。ここで、トナー中における着色剤の濃度とは、後述するトナーの製造工程において少なくとも結着樹脂および着色剤を含む混合物から造粒される粒子(以下、この粒子をトナー粒子と称する)中における着色剤の濃度のことであり、トナーが、トナー粒子とトナー粒子に外添される流動化剤などの外添剤とを含んで構成される場合であっても、トナー粒子と外添剤とを含む組成物中における着色剤の濃度のことではなく、トナー粒子中における着色剤の濃度のことをいう。トナー中における着色剤の濃度を前記範囲に選択することによって、トナーの着色力を向上させ、一定濃度の画像を形成するのに必要なトナーの量が少ない二成分現像剤を実現することができる。しかしながら、たとえば着色剤としてカーボンブラックなどの導電性を有するものを用いる場合に、前述のようにトナー中の着色剤の濃度を10重量%以上とすると、トナーの電気抵抗が低くなりすぎるおそれがある。これに対し、本発明の二成分現像剤では、トナーの誘電体損値(tanδ)を前記特定の範囲に選択するので、トナーの電気抵抗が低くなりすぎることを防ぐことができる。したがって、トナーの帯電量の不足による画像のかぶりおよびトナーの飛散などを引起すことなく、トナーの着色力を向上させることができる。
【0034】
また本発明によれば、本発明の二成分現像剤中におけるトナーの濃度は、製造時の状態において、3.5重量%以上、8.0重量%以下であることが好ましい。なお、ここで規定する二成分現像剤中のトナーの濃度とは、製造時の状態における値すなわち未使用の状態における値のことであり、現像剤担持体に担持された状態における値のことではない。トナーの濃度を前記範囲に選択することによって、トナーの絶対量の不足による画像濃度の低下を防止することができるので、充分な画像濃度を有する画像を実現することができる。また撹拌性が向上され、トナーとキャリアとが充分に撹拌されて摩擦帯電されるので、トナーの帯電量の不足による画像のかぶりおよびトナーの飛散をより確実に防止することができる。
【0035】
また本発明によれば、二成分現像装置は、現像剤担持体を含む現像剤供給手段と制御手段とを備え、現像剤担持体によって前記本発明の二成分現像剤を担持し、潜像担持体に形成される潜像を現像する位置(以下、現像位置と称する)へ搬送する。このとき、制御手段は、現像位置における現像剤担持体の移動方向が、現像位置における潜像担持体の移動方向と逆の方向(以下、カウンター方向と称する)になるように、現像剤供給手段の動作を制御する。このことによって、潜像担持体に形成される潜像に対して、潜像担持体と逆の方向に移動する現像剤担持体によって前記本発明の二成分現像剤が供給され、潜像担持体に形成された潜像が前記本発明の二成分現像剤で現像される。このように現像剤担持体が潜像担持体に対してカウンター方向に移動する二成分現像装置では、現像剤担持体と潜像担持体との対向部において二成分現像剤に与えられる機械的負荷が大きいので、二成分現像剤に含まれるキャリアの被覆層の剥離が生じ、画像形成装置の定着装置においてホットオフセット現象を引起すおそれがある。しかしながら、本発明の二成分現像装置において、二成分現像剤として用いられる前記本発明の二成分現像剤に含まれるキャリアは、前述のようにキャリア芯材と被覆層との接着性に優れ、被覆層の剥離が起こりにくく、また被覆層が剥離してトナーに混入しても被覆層に含まれるアクリル系樹脂が離型剤として機能するので、本発明の二成分現像装置は、定着時のホットオフセット現象を引起しにくい。したがって、本発明の二成分現像装置を画像形成装置に用いることによって、キャリアの被覆層の剥離によるホットオフセット発生温度の低下を防ぐことができるので、定着時の定着部材によるトナーの加熱温度を、トナーが記録材に充分な強度で定着される温度に設定し、定着強度に優れる画像を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本発明の二成分現像剤は、結着樹脂および着色剤を含有するトナーと、キャリア芯材およびキャリア芯材を被覆する被覆層を有するキャリアとを含む。
【0037】
〔トナー〕
本発明の二成分現像剤に含まれるトナーは、誘電体損値(tanδ)が、4.0×10−3以上、15.0×10−3以下であり、好ましくは4.5×10−3以上、14.5×10−3以下である。トナーの誘電体損値(tanδ)が4.0×10−3〜15.0×10−3の範囲になるように、トナーを設計することによって、本発明の二成分現像剤に含まれる後述の特定のキャリアとの摩擦帯電によって充分な帯電量を得ることのできるトナーが実現される。したがって、トナーの帯電量を好適なものとすることができるので、画像濃度の不足、画像のかぶりおよびトナーの飛散を抑えることができる。
【0038】
トナーの誘電体損値(tanδ)が4.0×10−3未満であると、後述する特定のキャリアと組合せても、トナーの帯電量が過剰になるので、本発明の二成分現像剤を用いて潜像を現像する際に、潜像担持体表面に付着するトナーの量が減少し、形成される画像の画像濃度が低下する。トナーの誘電体損値(tanδ)が15.0×10−3を超えると、後述する特定のキャリアと組合せても、トナーの帯電量が少なくなるので、形成される画像にかぶりが発生する。またトナーの飛散が生じるので、飛散したトナーが画像形成装置内部および潜像担持体表面に付着し、記録材の表面および裏面に付着してかぶりを増加させるおそれがある。したがって、トナーの誘電体損値(tanδ)を、4.0×10−3以上、15.0×10−3以下とした。
【0039】
トナーの誘電体損値(tanδ)は、結着樹脂、着色剤などの各成分の種類およびその含有量などによって変化する。またトナーは、同一の材料を用いて製造しても後述する混練工程における混練条件および冷却条件などの製造条件によって各成分の分散状態が変化し、誘電体損値(tanδ)が変化する。したがって、トナーの誘電体損値(tanδ)は、結着樹脂、着色剤などの各成分の種類およびその含有量、ならびに混練工程における混練条件および冷却条件などを適宜選択することによって、前述の本発明に規定する範囲内に調整することができる。
【0040】
トナーの誘電体損値(tanδ)は、ブリッジ法を用いて次のようにして求められる。ブリッジ法は、物質の誘電率を測定する基本的な方法である。ブリッジ法では、平板コンデンサの電極間に誘電体が充填されているときの静電容量Cxと、平板コンデンサの電極間に誘電体が充填されていない空のときの静電容量Coとを比較することによって、誘電体の誘電率を求める。このとき、誘電体の誘電率ε’は、次式ε’=Cx/Coで与えられる。
【0041】
この関係に基づき、平板コンデンサの電極に挟持される誘電体の誘電体損値tanδは、次式(1)から求められる。
tanδ=1/(ωCx・ΔR) …(1)
【0042】
ここで、ω=2πfであり、fは測定周波数である。またΔR=R’−Roであり、Roは、平板コンデンサの電極間に誘電体が充填されていないときのコンダクタンスであり、R’は、平板コンデンサの電極間に誘電体が充填されているときのコンダクタンスである。
【0043】
なお、平板コンデンサの電極間に誘電体が充填されていないときの静電容量Coは、平板コンデンサの電極間が真空であるときの静電容量に略等しく、次式(2)で求められる。
Co=A/(11.3×Tx) …(2)
【0044】
ここで、Aは平板コンデンサの有効電極面積であり、Txは平板コンデンサの電極間に挟持される誘電体層の厚みである。
【0045】
本発明では、トナーの誘電体損値は、誘電体損測定器(商品名:TR−10C型、安藤電気株式会社製)を用いて以下のようにして求められる。なお、発振器にはWBG−9型(商品名、安藤電気株式会社製)、平衡点検出器にはBDA−9形(商品名、安藤電気株式会社製)、恒温槽にはTO−19形(商品名、安藤電気株式会社製)、固体用電極にはSE−70形(商品名、安藤電気株式会社製)をそれぞれ用いる。なお、固体用電極の有効電極面積Aは、約2.83(0.952π)cmである。
【0046】
トナー1gを錠剤成型機によって錠剤に成型し、これを測定用サンプルとする。この測定用サンプルを用いて、以下のようにしてコンダクタンスおよび静電容量(キャパシタンス)を測定する。まず、零平衡操作としてコンダクタンスを所定の値に合わせる。このときのコンダクタンスの値をRoとする。次に、作製した測定用サンプルを固体用電極の中心に置き、その上からガード電極で挟み、発振器の周波数を1kHzに設定し、電極間に10Vの電圧を印加する。電極間に電圧を印加し始めてから15分間経過後に、コンダクタンスおよび静電容量を測定する。このとき測定されるコンダクタンスの値をR’とし、静電容量の値をCxとする。測定終了後、測定用サンプルの厚みを中心1点および周縁部4点で測定し、これらの平均値を求め、これをTxとする。
【0047】
トナーの誘電体損値(tanδ)は、次式(3)から求められる。
tanδ=Gx/ωCx …(3)
【0048】
ここで、ω=2πfであり、fは測定周波数である。また、Gxはコンダクタンスであり、次式から求められる。
Gx=RATIO値×(R’−Ro)
【0049】
なお、RATIO値とは、測定時において測定周波数f毎に定められた定数である。ここでは、測定周波数fは1kHzであり、それに応じたRATIO値は1×10−9である。
【0050】
また、トナーの誘電率ε’は、次式から求められる。
ε’=Cx/Co=11.3・Tx・Cx/A
【0051】
また、トナーの抵抗値Rは、次式から求められる。
R=10A/(Gx・Tx)
【0052】
トナーは、結着樹脂および着色剤の他に、電荷制御剤、離型剤、流動化剤などの各種添加剤を含むことができる。
【0053】
(結着樹脂)
結着樹脂としては、トナーの結着樹脂として常用されるものを使用でき、たとえば、ポリエステル樹脂、ポリスチレンなどのスチレン系樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリスチレン−アクリル酸エステル共重合体などのアクリル系樹脂、塩化ビニル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエーテルポリオール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂などの熱可塑性樹脂などが挙げられる。
【0054】
これらの中でも、ポリエステル樹脂が好適に用いられる。ポリエステル樹脂としては、公知のものを使用でき、その中でも、ポリオールと多塩基酸とを縮重合させることによって得られるポリエステル樹脂が好ましい。ポリエステル樹脂は、ポリオールおよび多塩基酸の少なくとも一方に、3価以上の多官能性分を用いて重合させることによって架橋化された、架橋構造を有するものであってもよい。ここで、ポリオールとは、ヒドロキシル基を2個以上有する化合物のことであり、アルコール性のヒドロキシル基を有するアルコール類およびフェノール性のヒドロキシル基を有するフェノール類のいずれをも含む。また、多塩基酸とは、カルボキシル基を2個以上有する化合物およびその誘導体のことである。
【0055】
ポリエステル樹脂の合成に用いられるポリオールとしては、公知のものを使用でき、ポリオールのうち、2価のアルコール類すなわちジオール類としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−ブテンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオールなどが挙げられる。
【0056】
またポリオールのうち、2価のフェノール類としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(慣用名:ビスフェノールA)、水添ビスフェノールA、ポリオキシエチレン化ビスフェノールAなどのビスフェノールAアルキレンオキシド付加物、ヒドロキノンなどが挙げられる。
【0057】
またポリエステル樹脂の架橋化に関わる3価以上の多官能性分である3価以上のポリオールとしては、グリセリン、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスルトール、トリペンタエリスリトール、1,2,3,6−ヘキサンテトラオール、ソルビトール、1,4−ソルビタン、ショ糖などのアルコール類、1,2,4−ベンゼントリオールなどのフェノール類などが挙げられる。
【0058】
ポリエステル樹脂の合成に用いられる多塩基酸としても、公知のものを使用でき、多塩基酸のうち、二塩基酸としては、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、およびこれらの酸の無水物または低級アルコール(たとえば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどの炭素数1〜4の低級アルコール)とのエステルなどが挙げられる。
【0059】
またポリエステル樹脂の架橋化に関わる3価以上の多官能性分である3価以上の多塩基酸としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサトリカルボン酸、およびこれらの酸の無水物または低級アルコール(たとえば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどの炭素数1〜4の低級アルコール)とのエステルなどが挙げられる。
【0060】
(着色剤)
着色剤としては、トナーの着色剤として常用される染料および顔料を使用でき、たとえば、ニグロシン染料、カーマイン染料、各種の塩基性染料、酸性染料、油性染料、アントラキノン染料、ベンジジン系黄色有機顔料、キナントリン系有機顔料、ローダミン系有機顔料、フタロシアニン系有機顔料、酸化亜鉛、酸化チタン、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラックなどが挙げられる。これらの中でも、カーボンブラックが好ましい。さらに、カーボンブラックの中でも、結着樹脂中での分散性に優れる1次粒子径が15〜30nmのものが好ましく、またトナー製造時にトナーに含まれる他の成分の特性を損なうことのない酸性(pH7以下)のものが好ましい。本発明の二成分現像剤は、トナーに含まれる着色剤の色を適宜選択することによって、白黒画像およびカラー画像のいずれの現像にも使用することができる。着色剤は、1種が単独で使用されてもよく、また2種以上が併用されてもよい。
【0061】
着色剤の使用量は、結着樹脂100重量部に対して、3重量部以上、20重量部以下であることが好ましい。
【0062】
また、トナーの着色力を考慮すると、トナー中における着色剤の濃度は、10重量%以上、15重量%以下であることが好ましい。着色剤の濃度が10重量%未満でも特段の不都合はないけれども、一定の画像濃度の画像を形成するのに必要なトナーの量を低減するためには、10重量%以上とすることが好ましい。たとえば、記録材へのトナー付着量を0.60mg/cmに設定して画像を形成する場合に、着色剤の濃度がトナー全量の10重量%未満であると、充分な画像濃度が得られない可能性がある。着色剤の濃度がトナー全量の15重量%を超えると、着色剤の結着樹脂中への分散性が低下し、さらに帯電制御剤などの他の成分の分散が妨げられ、トナーの均一性が低下するので、トナーの誘電体損値(tanδ)が前述の好適な範囲の上限値である15.0×10−3を超えるおそれがある。
【0063】
(電荷制御剤)
電荷制御剤としては、トナーの電荷制御剤として常用されるものを使用でき、ニグロシン染料、金属アゾ化合物、サリチル酸金属塩、第四級アンモニウム塩などが挙げられる。電荷制御剤は、1種が単独で使用されてもよく、また2種以上が併用されてもよい。電荷制御剤の使用量は、特に制限されず、結着樹脂の種類、着色剤の種類および含有量などの各種条件に応じて広い範囲から適宜選択することができるけれども、好ましくは、結着樹脂100重量部に対して0.5重量部以上、3.0重量部以下である。
【0064】
(離型剤)
離型剤としては、トナーの離型剤として常用されるものを使用でき、その中でも、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの石油系ワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャートロプッシュワックス、アミドワックスなどの合成系ワックス、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックスなどの動植物系ワックスなどのワックス類が好ましい。
【0065】
離型剤は、トナー中に分散され、定着部材によるトナーの加熱時にトナー表面に溶出(ブリード)してトナーに離型性を発現させ、ホットオフセット現象を防止するオフセット防止剤として働く。離型剤のオフセット防止効果は、離型剤の融点およびトナー中における分散状態に大きく影響される。このため、離型剤の融点は、60℃以上、100℃以下であることが好ましい。ここで、離型剤の融点とは、示差走査型熱量測定(略称DSC)におけるDSC曲線の融解に相当する吸熱ピークの温度のことである。離型剤の融点が60℃未満であると、後述する混練粉砕法によってトナーを製造する際の粉砕工程において、混練物の衝突板への融着が発生し、トナーの製造が困難になるおそれがある。離型剤の融点が100℃を超えると、定着時に離型剤が充分に溶出(ブリード)できず、トナーの定着部材への巻きつきなどが発生するおそれがある。
【0066】
離型剤の酸価は、1.0mgKOH/g以上、10.0mgKOH/g以下であることが好ましく、より好ましくは1.0mgKOH/g以上、4.0mgKOH/g以下である。離型剤の酸価が10.0mgKOH/gを超えると、離型剤の結着樹脂特にポリエステル樹脂に対する親和性が増し、定着時に離型剤がトナー表面に溶出(ブリード)し難くなり、ホットオフセット現象の発生を充分に防止することができなくなるおそれがある。
【0067】
離型剤の使用量は、特に制限されず、結着樹脂の種類、着色剤の種類および含有量などの各種条件に応じて広い範囲から適宜選択することができるけれども、好ましくは、結着樹脂100重量部に対して0.5重量部以上、5.0重量部以下であり、より好ましくは、結着樹脂100重量部に対して1.5重量部以上、3.5重量部以下である。結着樹脂100重量部当たりの離型剤の使用量が0.5重量部未満であると、離型剤のホットオフセット現象防止効果が充分に発揮されず、ホットオフセット現象が発生する可能性がある。結着樹脂100重量部当たりの離型剤の使用量が5.0重量部を超えると、トナーが潜像担持体または現像剤担持体の表面に皮膜状に融着するフィルミングと呼ばれる現象などが発生するおそれがある。
【0068】
(流動化剤)
流動化剤は、トナーの流動性を向上させることを目的として添加される。流動化剤は、トナー粒子形成後にトナー粒子に外添されることが好ましい。本発明では、このようにトナー粒子の形成後にトナー粒子に外添される添加剤を外添剤と称する。流動化剤などの外添剤は、トナー粒子の表面に付着させてもよいし、その一部がトナー粒子に埋め込まれるようにしてもよい。流動化剤としては、公知のものを使用でき、たとえば、コロイダルシリカ、アルミナ粉末、酸化チタン粉末、炭酸カルシウム粉末などが挙げられる。流動化剤は、1種が単独で使用されてもよく、また2種以上が併用されてもよい。流動化剤の使用量は、特に制限されず、結着樹脂の種類、着色剤の種類および含有量などの各種条件に応じて広い範囲から適宜選択することができるけれども、好ましくは、トナー粒子100重量部に対して0.1重量部以上、3.0重量部以下である。
【0069】
本発明の二成分現像剤に含まれるトナーは、混練粉砕法、懸濁法、乳化凝集法、液中乾燥法などの公知の方法に従って製造できる。たとえば、混練粉砕法を用いる場合には、以下のようにしてトナー粒子を造粒することができる。まず、結着樹脂および着色剤、ならびに必要に応じて前述の荷電制御剤などの各種添加剤をヘンシェルミキサなどの乾式混合機で混合し、得られる原料混合物を押出し混練機(エクストルーダ)などの混練機で溶融混練する。得られる混練物を冷却し、固化物をジェットミル、スピードミルなどの粉砕機で粉砕してトナー粒子を造粒する。
【0070】
このようにして造粒されたトナー粒子または懸濁法、乳化凝集法、液中乾燥法などによって造粒されたトナー粒子を必要に応じて風力分級機などで分級して粒度を調整する。トナー粒子に前述の流動化剤を外添しない場合には、以上のようにして本発明の二成分現像剤に用いられるトナーを得ることができる。トナー粒子に前述の流動化剤を外添する場合には、トナー粒子に必要に応じて粒度調整を施した後に、トナー粒子と流動化剤とを、ヘンシェルミキサなどの粉体混合機、ハイブリダイザなどの表面改質機などを用いて混合することによって、本発明の二成分現像剤に用いられるトナーを得ることができる。
【0071】
前述のようにトナー中における着色剤の濃度を10重量%以上とする場合には、着色剤およびその他の添加剤を結着樹脂中に均一に分散させ、結着樹脂の特性を損なわず、効率良くトナーを製造するために、トナー粒子の製造にあたり、マスターバッチ法を採用することが好ましい。
【0072】
マスターバッチ法によれば、所定量よりも少ない量の結着樹脂と所定量の着色剤とを上記と同様にして混合機によって混合し、得られる原料混合物をたとえば後述する連続式2本ロール型混練機によって剪断力を加えながら加熱して混練する。得られる混練物を冷却固化し、さらに粗粉砕して混練粗砕物を得る。この混練粗砕物に残りの結着樹脂および他の添加剤を混合し、押出し混練機(エクストルーダ)などの混練機を用いて希釈溶融混練し、得られる混練物を上記と同様にして冷却固化して粉砕し、必要に応じて粒度調整することによって、トナーを得ることができる。着色剤と予め混練される結着樹脂と、混練後に混練粗砕物に混合される結着樹脂とは同種のものであっても異種のものであってもよい。
【0073】
図1(a)は、マスターバッチ法に好適に用いられる連続式2本ロール型混練機200の構成を簡略化して示す側面図である。図1(b)は、図1(a)に示す連続式2本ロール型混練機200を切断面線A−A’から見て示す断面図である。
【0074】
連続式2本ロール型混練機200は、原料供給部211と、混練物排出部212と、第1混練ロール213と、第2混練ロール214と、加熱および冷却媒体供給排出部215,216と、ロール駆動用モータ217,218とを含んで構成される。
【0075】
原料供給部211には、結着樹脂および着色剤を含む原料混合物が供給される。第1混練ロール213および第2混練ロール214は、それぞれロール駆動用モータ217,218によって、その軸線方向に回転駆動可能に設けられる。また、第1混練ロール213および第2混練ロール214の内部には、図示しない、加熱媒体または冷却媒体を流過させる配管が設けられ、加熱媒体または冷却媒体の温度を調節することによって、第1混練ロール213および第2混練ロール214の表面温度ひいては原料混練物の混練温度を調節することができる。加熱媒体および冷却媒体は、加熱および冷却媒体供給排出部215,216から第1混練ロール213および第2混練ロール214に供給され、その内部を循環した後、排出される。混練物排出部212は、混練物を連続式2本ロール型混練機200の外部に排出する。
【0076】
連続式2本ロール型混練機200によれば、原料混合物は、原料供給部211から第1混練ロール213と第2混練ロール214との間に供給され、そこで、第1混練ロール213および第2混練ロール214の表面温度で加熱を受けるとともに、これらの回転によって連続的に剪断力を受け、混練物排出部212の方向に徐々に移動しながら混練される。このようにして得られる混練物は、混練物排出部212から連続式2本ロール型混練機200の外部に排出される。
【0077】
トナーの誘電体損値(tanδ)は、前述のようにトナー中における着色剤などの各成分の分散性によって調整することができ、たとえば混練粉砕法を用いてトナーを製造する場合には、溶融混練条件を適宜選択することによって調整することができる。たとえば、押出し混練機(エクストルーダ)を用いて原料混合物または混練粗砕物などの溶融混練を行なう場合には、シリンダ設定温度を80〜160℃、好ましくは100〜140℃に設定し、バレル回転数を毎分100〜500回転(100〜500rpm)、好ましくは毎分200〜400回転(200〜400rpm)に設定し、原料(混合物)供給速度を5〜25kg/時間、好ましくは10〜20kg/時間に設定することによって、誘電体損値(tanδ)が前述の好適な範囲内にあるトナーを製造することができる。
【0078】
〔キャリア〕
本発明の二成分現像剤に含まれるキャリアは、磁性を有するキャリア芯材と、キャリア芯材を被覆する被覆層とを含む。
【0079】
(キャリア芯材)
キャリア芯材としては、二成分現像剤のキャリアのキャリア芯材として常用される磁性粒子を使用でき、その中でもフェライト系粒子が好適に用いられる。フェライト系粒子は、電気抵抗の経時変化が小さく、また温度および湿度などの周囲環境が変化しても電気抵抗が変化しにくいので、キャリア芯材としてフェライト系粒子を用いることによって、キャリアの帯電特性の経時変化および環境の変動による変化を抑制することができる。したがって、種々の環境下において、長期間に亙ってトナーの帯電量を一定に維持し、高品質の画像を形成することができる。また、フェライト系粒子によって形成される磁気ブラシの穂は柔らかく、潜像担持体に与える機械的負荷が小さいので、潜像担持体表面の摺擦による画質の劣化を防ぐことができる。
【0080】
フェライト系粒子としては、亜鉛系フェライト、ニッケル系フェライト、銅系フェライト、ニッケル−亜鉛系フェライト、マンガン−マグネシウム系フェライト、銅−マグネシウム系フェライト、マンガン−亜鉛系フェライト、マンガン−銅−亜鉛系フェライトなどが挙げられる。これらのフェライト系粒子は、原料を混合し、仮焼および粉砕を経た後に焼成して得られ、焼成温度を変化させることによって粒子の表面形状を変化させることができる。キャリア芯材となる磁性粒子は、1種が単独で使用されてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0081】
(被覆層)
キャリア芯材を被覆する被覆層は、樹脂で構成することができる。被覆層を構成する樹脂としては、アクリル系樹脂と、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂、アルキッド樹脂などの他の樹脂とが用いられる。本発明において、キャリアの被覆層に含有されるアクリル系樹脂の含有量は、被覆層全量の5重量%以上、50重量%以下である。
【0082】
アクリル系樹脂は、併用されるシリコーン樹脂などの他の樹脂に比べてキャリア芯材への接着性に優れるので、被覆層におけるアクリル系樹脂の含有量を被覆層全量の5重量%以上にすることによって、キャリア芯材と被覆層との接着性に優れるキャリアを実現することができ、撹拌時のキャリア芯材からの被覆層の剥離を抑えることができる。また被覆層に含まれるアクリル系樹脂は、その軟化点がシリコーン樹脂、フッ素系樹脂などの融点に比べて低く、定着時の定着部材によるトナーの加熱温度、たとえば170〜220℃程度で瞬時に溶融し、離型剤として機能することができるので、被覆層がキャリア芯材から剥離してトナーに混入しても、ホットオフセット現像は発生しにくい。このため、被覆層を構成する樹脂としてアクリル樹脂と共にシリコーン樹脂、フッ素系樹脂などの高融点樹脂を用いたとしても、ホットオフセット発生温度が低下することはない。すなわち、本発明の二成分現像剤では、キャリアの被覆層の剥離によるホットオフセット発生温度の低下を防ぐことができる。
【0083】
また、被覆層を構成する樹脂としてシリコーン樹脂などの絶縁性に優れる樹脂(以下、高絶縁性樹脂と称する)のみを用いると、キャリアの電気抵抗が高くなりすぎ、前述のトナーと組合せてもトナーに好適な帯電量を付与することができず、トナーの帯電量が過剰になるおそれがある。またエッジ効果およびキャリアへの電荷の蓄積現象が生じ、画質が低下する可能性がある。本発明では、被覆層におけるアクリル系樹脂の含有量は被覆層全量の5重量%以上、50重量%以下であるので、アクリル系樹脂と共にシリコーン樹脂などの高絶縁性樹脂を用いても、キャリアの電気抵抗は前述のトナーに好適なものとなる。したがって、トナーの帯電量を好適なものとすることができるので、キャリア上がり、エッジ効果およびキャリアへの電荷の蓄積現象などによる画質の低下、トナーの帯電量の過多による画像濃度の不足、トナーの帯電量の過少による画像のかぶりおよびトナーの飛散などを抑えることができる。
【0084】
これに対し、キャリアの被覆層におけるアクリル系樹脂の含有量が5重量%未満であると、被覆層とキャリア芯材との接着性が不充分となり、被覆層の剥離量が増加する。また剥離した被覆層中に存在するアクリル系樹脂の量が少なくなるので、アクリル系樹脂による離型効果が充分に発揮されない。このため、被覆層の剥離によるホットオフセット発生温度の低下を抑止することができなくなる。また、被覆層を構成する樹脂として、アクリル系樹脂と共にたとえばシリコーン樹脂などの絶縁性に優れる樹脂(高絶縁性樹脂)を用いる場合には、被覆層における高絶縁性樹脂の比率が相対的に高くなるので、高絶縁性樹脂の絶縁性の高さに起因して、キャリアの電気抵抗が高くなりすぎ、エッジ効果および電荷の蓄積現象が生じ、画質の低下が起こる。
【0085】
逆に、キャリアの被覆層におけるアクリル系樹脂の含有量が50重量%を超えると、たとえば被覆層を構成する樹脂としてアクリル系樹脂とシリコーン樹脂などの高絶縁性樹脂とを用いた場合に、被覆層における高絶縁性樹脂の比率が相対的に低下するので、キャリアの電気抵抗が低くなりすぎる。このため、トナーの誘電体損値(tanδ)を前記範囲に選択しても、トナーに充分な帯電量を付与することができず、トナーの帯電量が減少するので、かぶりおよびトナーの飛散などが発生する。
【0086】
したがって、キャリアの被覆層におけるアクリル系樹脂の含有量を、被覆層全量の5重量%以上、50重量%以下とした。
【0087】
アクリル系樹脂としては、アクリル系単量体を単独重合または共重合させて得られるものなどを挙げることができる。
【0088】
アクリル系樹脂の合成に用いられるアクリル系単量体としては、公知のものを使用でき、たとえば、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクタデシル(アクリル酸ステアリル)、アクリル酸n−ドデシル(アクリル酸ラウリル)などのアクリル酸のアルキル(好ましくは炭素数1〜18のアルキル)エステル、アクリル酸フェニルなどのアクリル酸のアリールエステルなどのアクリル酸エステル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチルなどのアクリル酸エステル誘導体、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸n−オクタデシル(メタクリル酸ステアリル)、メタクリル酸n−ドデシル(メタクリル酸ラウリル)などのメタクリル酸のアルキル(好ましくは炭素数1〜18のアルキル)エステル、メタクリル酸フェニルなどのメタクリル酸のアリールエステルなどのメタクリル酸エステル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチルなどのメタクリル酸エステル誘導体などが挙げられる。また、シクロヘキシルアクリレートなどのアクリル酸の脂環式アルキルエステル、シクロヘキシルメタクリレート、シクロペンチルメタクリレートなどのメタクリル酸の脂環式アルキルエステル誘導体などの脂環式アクリル系単量体なども挙げられる。アクリル系単量体は、1種が単独で使用されてもよく、また2種以上が併用されてもよい。
【0089】
アクリル系樹脂のうち、好ましいものとしては、脂環式アクリル系単量体と、アクリル酸、アクリル酸エステルおよびその誘導体、ならびにメタクリル酸、メタクリル酸エステルおよびその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種のアクリル系単量体との共重合体が挙げられる。この場合、脂環式アクリル系単量体とその他のアクリル系単量体との比率は、特に限定されるものではないけれども、好ましくは、脂環式アクリル系単量体がアクリル系単量体全量の40重量%以上、80重量%以下である。
【0090】
アクリル系樹脂は、前述のアクリル系単量体が他のエチレン性不飽和単量体と共重合したものであってもよい。アクリル系単量体と共重合され得るエチレン性不飽和単量体としては、公知のものを使用でき、たとえば、スチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、p−エチルスチレン、α−クロロスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレンなどのビニル芳香族単量体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル系単量体、ビニル−n−ブチルエーテル、ビニルフェニルエーテル、ビニルシクロヘキサンエーテルなどのビニルエーテル系単量体、ブタジエン、イソプレン、クロロプレンなどのジオレフィン系単量体、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテンなどのモノオレフィン系単量体などが挙げられる。これらのエチレン性不飽和単量体は、1種が単独で使用されてもよく、また2種以上が併用されてもよい。アクリル系樹脂がアクリル系単量体と他のエチレン性不飽和単量体との共重合体である場合、アクリル系樹脂は、アクリル系単量体が単量体全量の50重量%以上を占めることが好ましい。
【0091】
被覆層を構成する樹脂としては、アクリル系樹脂とシリコーン樹脂とを併用することが好ましい。シリコーン樹脂は離型性に優れるので、被覆層を構成する樹脂としてアクリル系樹脂と共にシリコーン樹脂を用いることによって、現像剤撹拌時のキャリア表面へのトナーの融着を抑えることができる。したがって、繰返し使用されているうちにキャリアの帯電特性が変化することを防ぐことができるので、長期間に亙ってトナーの帯電量を一定に維持し、均質な画像を提供することができる。
【0092】
シリコーン樹脂としては、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、シリコーンワニス(株式会社東芝製のTSR115、TSR114、TSR102、TSR103、YR3061、TSR110、TSR116、TSR117、TSR108、TSR109、TSR180、TSR181、TSR187、TSR144、TSR165(いずれも商品名)、信越シリコーン株式会社製のKR271、KR272、KR275、KR280、KR282、KR267、KR269、KR211、KR212(いずれも商品名)など)、アルキッド変性シリコーンワニス(株式会社東芝製のTSR184、TSR185(いずれも商品名)など)、エポキシ変性シリコーンワニス(株式会社東芝製のTSR194、YS54(いずれも商品名)など)、ポリエステル変性シリコーンワニス(株式会社東芝製のTSR187(商品名)など)、アクリル変性シリコーンワニス(株式会社東芝製のTSR170、TSR171(いずれも商品名)など)、ウレタン変性シリコーンワニス(株式会社東芝製のTSR175(商品名)など)、反応性シリコーン樹脂(信越シリコーン株式会社製のKA1008、KBE1003、KBC1003、KBM303、KBM403、KBM503、KBM602、KBM603(いずれも商品名)など)などが挙げられる。
【0093】
被覆層には、キャリアの電気抵抗値を制御するために、導電性粒子を添加することが好ましい。被覆層に導電性粒子を分散させることによって、導電性粒子が抵抗制御剤として機能し、キャリアに適度な導電性が付与される。したがって、キャリアが現像電極として作用し、現像電極と、現像されるべき潜像が形成された感光体などの潜像担持体の表面とが、非常に近接した状態で現像が行われるので、線部および黒べた画像のような大面積のべた画像部のいずれであっても、原稿画像通りに忠実に再現することができる。また、キャリアへの電荷の蓄積現象が一層抑制されるので、長期間に亙ってトナーの帯電量が安定し、現像剤担持体に担持された状態の現像剤中におけるトナーの濃度の制御が容易になり、画像むらのない高品質の画像を長期間に亙って安定して形成することができる。
【0094】
被覆層に添加される導電性粒子としては、たとえば、カーボンブラック、黒鉛(グラファイト)、チタンブラック、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化チタン、酸化スズ、酸化マグネシウムなどの導電性金属酸化物、チタン酸カリウム、チタン酸カルシウム、ホウ酸アルミニウムなどの無機酸の金属塩などの微粉末などが挙げられる。導電性粒子の粒子径は、特に制限されないけれども、好ましくは0.01〜10μmである。導電性粒子の添加量は、特に制限されないけれども、好ましくは被覆層全量の5〜20重量%である。
【0095】
また被覆層には、導電性粒子以外の各種添加剤を添加してもよい。該添加剤としては、酸化ケイ素、アルミナ、硫酸バリウム、炭酸カルシウムなどの非導電性の添加剤などが挙げられる。
【0096】
本発明の二成分現像剤に用いられるキャリアは、キャリア芯材となる前述の磁性粒子を、適当な溶剤中に被覆層を構成する前述のアクリル系樹脂およびシリコーン樹脂などの他の樹脂、ならびに必要に応じて導電性粒子などの各種添加剤を溶解および/または分散させて得られる溶液(以下、被覆樹脂溶液と称する)で被覆し、被膜を乾燥して硬化させることによって製造することができる。キャリア芯材を被覆樹脂溶液で被覆する方法としては、たとえば、被覆樹脂溶液中にキャリア芯材を浸漬する浸漬法、被覆樹脂溶液をキャリア芯材に噴霧するスプレー法、キャリア芯材を流動エアーによって空気中などに浮遊させた状態で、キャリア芯材に被覆樹脂溶液を噴霧する流動床法、ニーダコータ中でキャリア芯材と被覆樹脂溶液とを混合し、溶剤を除去するニーダコータ法などの公知の方法を用いることができる。
【0097】
以上のようにして得られるキャリアにおける被覆層の割合は、キャリア芯材100重量部に対して、5重量部以上、20重量部以下であることが好ましい。キャリアにおける被覆層の割合を前記範囲に選択することによって、キャリアの電気抵抗を好適なものとすることができるので、トナーに適切な帯電量を付与することができ、トナーの帯電量の過多による画像濃度の低下、トナーの帯電量の過少による画像のかぶりおよびトナーの飛散などをより確実に防ぐことができる。また摩擦帯電によってトナーに発生した電荷がキャリアを通して減衰することを防ぎ、トナーの帯電量を維持することができる。また現像剤撹拌時のキャリア同士の衝突、キャリアとトナーとの衝突、キャリアと現像剤収容容器との衝突などによる機械的負荷によってキャリア芯材が露出することを防ぐことができるので、キャリアの露出部分の拡大によるキャリアの帯電特性の変化を抑え、二成分現像剤の耐久性を向上させることができる。したがって、充分な画像濃度を有し、かつかぶりおよびトナーの飛散などによる画像欠陥のない高品質の画像を長期間に亙って安定して形成することのできる二成分現像剤が実現される。
【0098】
キャリアにおける被覆層の割合がキャリア芯材100重量部に対して5重量部未満であると、キャリア芯材の露出部分が大きくなり、トナーに対して安定した帯電を施すことができなくなるおそれがある。またキャリアの電気抵抗が低くなりすぎ、摩擦帯電によってトナーに発生した電荷がキャリアを通して減衰し、トナーの帯電量が維持できなくなり、画像のかぶりおよびトナーの飛散などが発生するおそれもある。また、現像剤撹拌時に、キャリア同士の衝突、キャリアとトナーとの衝突、キャリアと現像剤収容容器との衝突などによる機械的負荷によって被覆層が剥離してキャリア芯材の露出部分が拡大し、キャリアの帯電特性が変化するおそれがあり、二成分現像剤としての耐久性が充分に得られない可能性がある。また、キャリアにおける被覆層の割合がキャリア芯材100重量部に対して20重量部を超えると、キャリアの電気抵抗が高くなりすぎてトナーの帯電量が過剰になるおそれがあり、感光体などの潜像担持体へのトナーの付着量が減少し、充分な画像濃度が得られなくなる可能性がある。
【0099】
また、キャリアの重量平均粒径は、50μm以上、100μm以下であることが好ましく、より好ましくは60μm以上、90μm以下である。キャリアの重量平均粒径を前記範囲に選択することによって、キャリア上がり現象の発生を一層抑制し、画像への白抜けの発生をより確実に防止することができる。また、トナーに対するキャリアの帯電能力を好適なものとし、トナーに適切な帯電量を付与することができるので、画像濃度の不足、画像のかぶりおよびトナーの飛散を一層抑えることができる。したがって、充分な画像濃度を有し、かつかぶりおよび白抜けなどの画像欠陥のない高品質の画像をより確実に形成することができる。また、トナーの体積平均粒径をたとえば6〜9μm程度と小さくしても、トナーに適切な帯電量を付与することができるので、画像のかぶりおよびトナーの飛散を引起すことなくトナーの小粒径化を実現し、高精細および高品質の画像を形成することが可能になる。
【0100】
キャリアの重量平均粒径が50μm未満であると、個々のキャリアと現像剤担持体との静電引力が小さくなるので、キャリア上がりが生じやすくなり、画像に白抜けが発生し、画像濃度が低下するおそれがある。また、キャリアの重量平均粒径が100μmを超えると、個々のキャリアの粒径が大きくなりすぎ、個々のトナーに安定した帯電を施すことができなくなるおそれがあり、現像性が低下し、所望の画像濃度が得られない可能性がある。特に、トナーの体積平均粒径をたとえば6〜9μm程度と小さくした場合には、トナーの帯電量が少なくなりすぎ、画像のかぶりおよびトナーの飛散が生じるおそれがある。
【0101】
本発明の二成分現像剤は、前述のようにして得られるトナーとキャリアとをナウターミキサなどの混合機で混合することによって製造することができる。
【0102】
このようにして得られる本発明の二成分現像剤中におけるトナーの濃度は、製造時の状態において、3.5重量%以上、8.0重量%以下であることが好ましく、より好ましくは4.0重量%以上、7.0重量%以下である。トナーの濃度を前記範囲に選択することによって、トナーの絶対量の不足による画像濃度の低下を防止することができるので、充分な画像濃度を有する画像を実現することができる。また撹拌性が向上され、トナーとキャリアとが充分に撹拌されて摩擦帯電されるので、トナーの帯電量の不足による画像のかぶりおよびトナーの飛散をより確実に防止することができる。
【0103】
二成分現像剤中におけるトナーの濃度が3.5重量%未満であると、現像剤中に含まれるトナーの絶対量が少なくなりすぎ、潜像の現像に使用されるトナーが不足し、トナー中における着色剤の濃度を前述のように10重量%以上としても、充分な画像濃度が得られない可能性がある。また、二成分現像剤中におけるトナーの濃度が8.0重量%を超えると、現像剤撹拌部の攪拌能力が不足し、トナーに充分な帯電量を付与することができないおそれがあり、画像のかぶりおよびトナーの飛散などが生じる可能性がある。
【0104】
図2は、本発明の実施の他の形態である二成分現像装置1を備える画像形成装置100の構成を簡略化して示す配置正面図である。画像形成装置100は、二成分現像装置1を含む画像形成部8と、記録材供給部2と、画像定着部3と、制御部4とを含んで構成される。
【0105】
画像形成部8は、感光体ドラム5と、感光体ドラム5の周面に対向するように設けられる帯電手段6、露光ユニット7、二成分現像装置1、転写手段9、クリーニングユニット10および除電手段11とを含む。
【0106】
感光体ドラム5は、図示しない、円筒状または円柱状の導電性基体と、導電性基体の表面に形成される光導電層とを含む。感光体ドラム5は、図示しない駆動手段によって矢符40方向に所定の周速度Vpで回転駆動される。(以下、この周速度Vpを感光体ドラム5の回転周速とも称する。)
帯電手段6は、帯電ローラ、帯電チャージャなどの接触式または非接触式の帯電器によって構成され、感光体ドラム5の周面を所定の極性および電位に帯電させる。
【0107】
露光ユニット7は、半導体レーザなどのレーザユニットによって構成され、制御部4から伝達される画像情報に基づいて、帯電手段6によって帯電状態にある感光体ドラム5の周面を露光し、該周面に静電潜像を書き込む。
【0108】
本発明の実施の他の形態である二成分現像装置1は、現像剤供給手段14と、トナー補給手段13と、現像剤供給手段14およびトナー補給手段13を含む二成分現像装置1内の各部を制御する制御手段18とを含んで構成される。現像剤供給手段14は、感光体ドラム5に対向して回転自在に設けられる現像剤担持体である現像ローラ15と、現像ローラ15を支持するとともに、内部空間に本発明の二成分現像剤を収容する現像剤収容容器16と、現像剤収容容器16の内部に設けられる現像剤撹拌機17とを含む。トナー補給手段13は、現像剤収容容器16に連通するように設けられ、内部空間に本発明の二成分現像剤に用いられるトナーを収容する。制御手段18は、たとえばマイクロコンピュータなどの処理回路によって実現される。
【0109】
現像ローラ15は、たとえば円柱状であり、内部の図示しない回転軸の周りに図示しない磁極部材を備え、複数の磁極を有する。現像ローラ15は、回転軸を介して現像剤収容容器16に回転自在に支持され、図示しないモータなどの駆動手段によって矢符41方向に回転駆動される。
【0110】
現像剤撹拌機17は、現像剤収容容器16に収容される本発明の二成分現像剤およびトナー補給手段13から補給されるトナーを撹拌し、トナーとキャリアとを逆の極性に帯電させるとともに、現像ローラ15に搬送する。現像ローラ15は、本発明の二成分現像剤を担持し、潜像担持体である感光体ドラム5に形成される潜像を現像する位置(以下、現像位置と称する)、すなわち現像ローラ15と感光体ドラム5との対向部に搬送する。トナー補給手段13は、現像剤収容容器16にトナーを補給する。現像ローラ15には、図示しない電源手段によって電圧が印加される。
【0111】
二成分現像装置1は、現像剤撹拌機17によって本発明の二成分現像剤を撹拌して帯電させ、現像ローラ15に担持して現像位置に供給する。このとき、現像ローラ15には電源手段によって電圧が印加されているので、感光体ドラム5と現像ローラ15との間には電界が生じており、この電界によって現像ローラ15表面のトナーが感光体ドラム5表面に付着する。これによって、感光体ドラム5に形成された静電潜像が現像され、感光体ドラム5の外周面にトナー像が形成される。
【0112】
本実施の形態では、現像剤供給手段14は、現像位置における現像ローラ15の移動方向が、現像位置における感光体ドラム5の移動方向と逆の方向(カウンター方向)になるように、制御手段18によって制御される。すなわち、現像ローラ15は、感光体ドラム5と同一の方向に回転駆動され、感光体ドラム5と現像ローラ15との対向部である現像位置において、感光体ドラム5に対して逆の方向(カウンター方向)に移動する。
【0113】
このことによって、現像位置において感光体ドラム5と現像ローラ15とが同一の方向に移動する場合に比べ、現像ローラ15表面に形成された磁気ブラシの感光体ドラム5に対する接触頻度が増加するので、高濃度で白抜けなどのない高品質の画像を形成することが可能になる。また現像ローラ15表面の磁気ブラシと感光体ドラム5との間に剪断力が働くので、キャリア上がりの発生を防止することが可能になる。
【0114】
ただし、このように現像ローラ15が感光体ドラム5に対してカウンター方向に移動する二成分現像装置では、現像ローラ15と感光体ドラム5との対向部において二成分現像剤に与えられる機械的負荷が大きいので、二成分現像剤に含まれるキャリアの被覆層の剥離が生じ、後述する定着装置30においてホットオフセット現象を引起すおそれがある。
【0115】
しかしながら、本実施の形態の二成分現像装置1では、前述の本発明の二成分現像剤を用いるので、定着装置30における定着時のホットオフセット現象は起こりにくい。これは、本発明の二成分現像剤に含まれるキャリアが、キャリア芯材と被覆層との接着性に優れ、被覆層の剥離を起こしにくく、またキャリアの被覆層が剥離してトナーに混入しても、被覆層に含まれるアクリル系樹脂が離型剤として機能するためである。すなわち、本実施の形態の二成分現像装置1を用いた画像形成装置100では、キャリアの被覆層の剥離によるホットオフセット発生温度の低下を防ぐことができる。したがって、定着装置30の定着ローラ35によるトナーの加熱温度、すなわち定着ローラ35の表面温度を、トナーが記録材に充分な強度で定着される温度に設定し、定着強度に優れる画像を形成することができる。
【0116】
なお、本発明の二成分現像剤は、本発明の二成分現像装置1に限定されることなく、公知の、二成分現像剤を用いる二成分現像装置に使用することができる。
【0117】
転写手段9は、接触式の転写手段であり、転写ローラ12と、図示しない電圧印加手段とを含んで構成され、記録材の転写ローラ12側から電圧を印加して記録材を帯電させ、さらに転写ローラ12にて加圧することによって、感光体ドラム5周面上のトナー像が、記録材に転写される。なお、記録材は、露光ユニット7による露光に同期して、後述する記録材供給部2によって転写手段9に供給される。なお、転写手段9は、転写ローラ12に代えて図示しない転写ベルトを用いる接触方式であってもよく、また非接触式の転写手段であってもよい。
【0118】
クリーニングユニット10は、弾性材料からなるクリーニングブレードなどを含んで構成され、トナー像を記録材に転写した後に、感光体ドラム5の周面に残留するトナーを除去する。
【0119】
除電手段11は、除電ランプなどを含んで構成され、クリーニング後の感光体ドラム5周面の電荷を除去する。
【0120】
画像形成部8では、感光体ドラム5の周面が、帯電手段6によって均一に帯電され、これに露光ユニット7から露光が行われ、静電潜像が書き込まれる。この静電潜像は、二成分現像装置1から供給される二成分現像剤により顕像化され、感光体ドラム5周面にトナー像が形成される。このトナー像は、転写手段9によって記録材に転写される。転写後、感光体ドラム5は、クリーニングユニット10による残留トナーの除去および除電手段11による電荷除去を受け、清浄化される。この一連の操作が繰り返し実行されることにより、複数の画像を形成することができる。
【0121】
記録材供給部2は、記録材収容トレイ20と、ピックアップローラ21と、レジストローラ22とを含んで構成される。記録材収容トレイ20は、普通紙、カラーコピー用紙、OHPフィルムなどの記録材を収容するトレイである。記録材収容トレイ20への記録材の補給は、画像形成装置100の正面側(操作側)に、記録材収容トレイ20を引き出して行われる。ピックアップローラ21は、記録材収容トレイ20内の記録材を1枚ずつ分離してレジストローラ22に送給する。レジストローラ22は、画像形成部8における露光ユニット7の感光体ドラム5周面への露光に同期して、記録材を感光体ドラム5と転写手段9との間に順次送給する。
【0122】
記録材供給部2によれば、記録材収容トレイ20に収容される記録材は、ピックアップローラ21およびレジストローラ22を介して、画像形成部8に供給される。
【0123】
画像定着部3は、定着装置30と、搬送ローラ31と、切換えゲート32と、反転ローラ33と、積載トレイ34とを含んで構成される。定着装置30は、定着ローラ35と、定着ローラ35に当接して設けられる加圧ローラ36とを含む。定着ローラ35は、加熱手段を備え、所定の温度に加熱される。定着装置30は、画像形成部8の転写手段9によりトナー像が転写された記録材を順次受取り、定着ローラ35と加圧ローラ36との当接部(ニップ部)を通過させ、定着ローラ35および加圧ローラ36によって加熱および加圧してトナー像を記録材に定着させる。記録材は、定着ローラ35および加圧ローラ36に挟持され、定着ローラ35および加圧ローラ36の回転に伴って搬送される。定着装置30の動作によって、記録材上に画像が形成(記録)される。搬送ローラ31は、定着装置30にて画像が形成された記録材を切換えゲート32に送給する。切換えゲート32は、画像記録済み記録材の送給経路を切換える。
【0124】
画像記録済み記録材の排出トレイが、画像記録装置100の外部に設けられた積載トレイ34に設定される場合には、切換えゲート32は画像記録済み記録材を反転ローラ33に送給し、該記録材は反転ローラ33を経由して積載トレイ34に排出される。積載トレイ34は、画像形成装置100の外部に設けられ、画像記録済み記録材を画像形成装置100の外部に排出し、貯留するためのトレイである。
【0125】
一方、両面画像形成または後処理が指定される場合には、画像記録済み記録材は切換えゲート32によって反転ローラ33に送給される。反転ローラ33は該記録材をそのまま通過させることなく、該記録材を挟持した状態で、該記録材の一部を積載トレイ34の方向に排出した後逆回転し、該記録材を切換えゲート32に向けて反転送給する。このとき、切換えゲート32は、実線の状態から破線の状態に切換えられるので、画像記録済み記録材は、両面画像形成または後処理のために画像形成装置100の外部に装着される、図示しない記録材再供給搬送装置に送給される。両面画像を形成する場合には、画像記録済み記録材は、記録材再供給搬送装置を経由して再び画像形成装置100に供給される。後処理がなされる場合、画像形成済み記録材は、記録材再供給搬送装置から図示しない別の切換えゲートを経由し、さらに中継搬送装置を経由し、後処理装置に送給される。
【0126】
画像定着部3によれば、定着装置30によりトナー像が定着され、画像が記録された記録材は、搬送ローラ31および切換えゲート32を介して反転ローラ33に搬送され、設定に応じて積載トレイ34に排出されるか、または再び切換えゲート32を介して図示しない中継搬送装置もしくは記録材再供給搬送装置に反転搬送される。
【0127】
制御部4は、画像形成装置100内部の、露光ユニット7の上下空間部に設けられ、図示しない、画像形成プロセスを制御する回路基板、外部機器からの画像データを受け入れるインターフェイス基板および電源装置を含んで構成される。電源装置は、回路基板およびインターフェイス基板だけでなく、画像形成部8、記録材供給部2および画像定着部3における各装置にも電力を供給する。
【0128】
画像形成装置100の下面および側面には、搬送路37,38,39が設けられる。搬送路37,38,39は、画像形成装置100に外部装置を接続する際に、記録材を画像形成装置100の内部または外部に搬送するために利用される。外部装置には、前述の記録材再供給搬送装置、中継搬送装置、後処理装置のほかに、1または複数の記録材収容トレイを有し、同一サイズの記録材を大量に収容できるかまたは複数のサイズの記録材を収容できる記録材供給装置がある。
【0129】
なお、本発明の二成分現像装置1は、画像形成装置100に限定されることなく、公知の、二成分現像装置を用いる電子写真方式の画像形成装置に使用することができる。
【実施例】
【0130】
以下に実施例および比較例を挙げ、本発明を具体的に説明する。
なお、本実施例における各物性値の測定は、次のようにして行なった。
【0131】
[キャリアの重量平均粒径]
日本工業規格(JIS)H2601に準拠し、以下のようにして求めた。
【0132】
篩として、孔径が149μm、105μm、74μm、63μm、44μmの5種類を準備した。これらの篩を、上から順に、孔径が149μm、105μm、74μm、63μm、44μmになるように積み重ね、さらに各篩の下方に受け皿を設置した。試料約100gを0.1gの桁まで秤取し、最上部の孔径149μmの篩に入れた。次いで、各篩を、振動機(商品名:AS400、株式会社レッチェ製)によって水平回転数毎分285回転(285rpm)、振動回数毎分150回(150rpm)の条件で15分間振盪した。振盪後、各篩の下方に設置した受け皿に回収された試料を秤取した。各受け皿に回収された試料の最初に秤取した試料の重量に対する割合を重量百分率で算出し、その値から重量平均粒径を求めた。
【0133】
[トナーの体積平均粒径]
マルチサイザーII測定機(商品名、コールター社製)にて、粒度分布測定を行ない、トナーの体積平均粒径D50(μm)を算出した。
【0134】
[トナーの摩擦帯電量およびトナー濃度]
図3に示す摩擦帯電量測定装置50を用い、温度23℃、相対湿度60%の環境下において、以下のようにして測定した。底部に500メッシュの導電性スクリーン53を具備する金属製の測定容器52に、現像ローラ上から採取した二成分現像剤約0.2gを入れ、金属製の蓋54をした。このときの測定容器52全体の重量を秤量し、この値をW1(g)とした。
【0135】
次に、吸引機51において、吸引口57から吸引し、風量調節弁56を調整して真空計55の圧力を250mmHgにした。この状態で、吸引口57からの吸引を2分間行ない、トナーを吸引除去した。このとき、測定容器52に接続されたコンデンサ58の電極間の電圧を電位計59で測定し、この値をV(V;ボルト)とした。なお、吸引機51の少なくとも測定容器52と接する部分は絶縁体で構成される。また、吸引後の測定容器52全体の重量を秤量し、この値をW2(g)とした。
【0136】
以上の測定結果を下記式(4)に代入し、試料の摩擦帯電量Q(μC/g)を算出した。
Q=(C×V)/(W1−W2) …(4)
ここで、Cはコンデンサ58の容量(μF)である。
【0137】
また、以上の測定結果を下記式(5)に代入し、二成分現像剤中のトナー濃度C(重量%)を算出した。
C=(W1−W2)/W1 …(5)
【0138】
[トナーの誘電体損値]
誘電体損測定器(商品名:TR−10C型、安藤電気株式会社製)を用いて測定を行ない、測定値から前述の式(3)に基づいて算出した。なお、発振器にはWBG−9型(商品名、安藤電気株式会社製)、平衡点検出器にはBDA−9形(商品名、安藤電気株式会社製)、恒温槽にはTO−19形(商品名、安藤電気株式会社製)、固体用電極にはSE−70形(商品名、安藤電気株式会社製)をそれぞれ用いた。
【0139】
〔試験例1〕
試験例1では、以下のようにして製造した実施例1〜9および比較例1〜12の二成分現像剤を用い、トナーの誘電体損値(tanδ)およびキャリアの被覆層におけるアクリル系樹脂の含有量(重量%)の現像剤性能に対する影響について検討した。
【0140】
(実施例1)
[トナーの製造]
ポリエステル樹脂(商品名:EP208、三洋化成工業株式会社製)60重量部に対して、カーボンブラック(商品名:♯44、粒子径24nm、三菱化学株式会社製)40重量部の割合で計量された原料10kgを、ヘンシェルミキサにて、撹拌羽根回転数毎分700回転(700rpm)の条件で3分間混合した。得られた原料混合物を、テーブルフィーダーにて図1に示す連続式2本ロール型混練機に定量供給し、溶融混練を行い、混練物を得た。この混練物を冷却後、ハンマータイプの粉砕機にて孔径2mmのスクリーンを使用して粗砕し、混練粗砕物を得た。
【0141】
連続式2本ロール混練機の運転条件は下記の通りである。
ロール外径:0.12m
有効ロール長:0.8m
第1混練ロール回転数:毎分75回転(75rpm)
第2混練ロール回転数:毎分55回転(55rpm)
第2混練ロール回転数/第1混練ロール回転数:約0.7
第1混練ロールと第2混練ロールとの間隙:0.1mm
ロール内加熱冷却媒体温度:
第1混練ロール 原料混合物供給側;90℃、混練物排出側;75℃
第2混練ロール 原料混合物供給側;15℃ 、混練物排出側;15℃
原料混合物の滞留時間:約6分
【0142】
ポリエステル樹脂(商品名:EP208、三洋化成工業株式会社製)66重量部に対して、上記で得られた混練粗砕物25重量部、電荷制御剤(商品名:ボントロンS−34、オリエント化学株式会社製)4重量部および離型剤としてポリオレフィンワックス(商品名:ハイワックスNP105、融点148℃、三井化学株式会社製)5重量部の割合で10kgを計量し、ヘンシェルミキサにて撹拌羽根回転数毎分850回転(850rpm)の条件で2分間混合し、原料混合物を得た。
【0143】
得られた原料混合物を、押出し混練機(商品名:PCM−30、池貝鉄工株式会社製)を用いて溶融混練した。押出し混練機の運転条件は、シリンダ設定温度110℃、バレル回転数毎分380回転(380rpm)、原料混合物供給速度10kg/時間とした。得られた混練物を、表面温度15℃の冷却ベルトにて1時間冷却した後、孔径(φ)2mmのスクリーンを有するスピードミルにて粗粉砕した。得られた粗砕物をI型ジェットミルにて粉砕した後、エルボージェット分級機を用いて分級を行ない、体積平均粒径(D50)6.7μmのトナーを製造した。得られたトナーの誘電体損値(tanδ)は、4.2×10−3であった。
【0144】
[キャリアの製造]
シリコーン樹脂(商品名:TSR115、株式会社東芝製)90重量部(固形分換算)に対して、アクリル系樹脂(商品名:ヒタロイド3019、日立化成工業株式会社製)5重量部および導電性粒子として酸化チタン(商品名:ECTT−1、チタン工業株式会社製)5重量部の割合で混合し、得られた混合物をトルエンで希釈し、固形分10重量%の被覆樹脂溶液を調製した。キャリア芯材としてMn−Mg系フェライト粒子(商品名:EFキャリア、体積平均粒子径60μm、パウダーテック株式会社製)を用い、キャリア芯材に、得られた被覆樹脂溶液を流動床法によって、焼付け後の被覆層の割合が後述する値になるように調整しながら噴霧した後、温度200℃で2時間加熱して焼付けを行ない、被覆層の割合がキャリア芯材100重量部に対して20重量部であるキャリアを製造した。得られたキャリアの重量平均粒径(D50)は、60μmであった。
【0145】
[二成分現像剤の製造]
上記で得られたトナーおよびキャリアを用い、二成分現像剤中のトナーの濃度が4.0重量%になるような割合で両者をナウターミキサにて均一に混合し、本発明の二成分現像剤を製造した。
【0146】
(実施例2)
キャリアの製造に際し、シリコーン樹脂の配合量を65重量部に変更し、アクリル系樹脂の配合量を30重量部に変更すること以外は、実施例1と同様にして、実施例2の二成分現像剤を製造した。
【0147】
(実施例3)
キャリアの製造に際し、シリコーン樹脂の配合量を45重量部に変更し、アクリル系樹脂の配合量を50重量部に変更すること以外は、実施例1と同様にして、実施例3の二成分現像剤を製造した。
【0148】
(実施例4〜6)
トナーの製造に際し、押出し混練機の運転条件を、シリンダ設定温度110℃、バレル回転数毎分350回転(350rpm)、原料混合物供給速度15kg/時間に変更すること以外は、実施例1〜3とそれぞれ同様にして、実施例4〜6の二成分現像剤を作製した。実施例4〜6で得られたトナーの誘電体損値(tanδ)は、8.7×10−3であった。
【0149】
(実施例7〜9)
トナーの製造に際し、押出し混練機の運転条件を、シリンダ設定温度120℃、バレル回転数毎分300回転(300rpm)、原料混合物供給速度15kg/時間に変更すること以外は、実施例1〜3とそれぞれ同様にして、実施例7〜9の二成分現像剤を作製した。実施例7〜9で得られたトナーの誘電体損値(tanδ)は、14.7×10−3であった。
【0150】
(比較例1〜3)
トナーの製造に際し、押出し混練機の運転条件を、シリンダ設定温度110℃、バレル回転数毎分380回転(380rpm)、原料混合物供給速度8kg/時間に変更すること以外は、実施例1〜3とそれぞれ同様にして、比較例1〜3の二成分現像剤を作製した。比較例1〜3で得られたトナーの誘電体損値(tanδ)は、2.8×10−3であった。
【0151】
(比較例4〜6)
トナーの製造に際し、押出し混練機の運転条件を、シリンダ設定温度140℃、バレル回転数毎分150回転(150rpm)、原料混合物供給速度15kg/時間に変更すること以外は、実施例1〜3とそれぞれ同様にして、比較例4〜6の二成分現像剤を作製した。比較例4〜6で得られたトナーの誘電体損値(tanδ)は、15.4×10−3であった。
【0152】
(比較例7)
キャリアの製造に際し、シリコーン樹脂の配合量を92重量部に変更し、アクリル系樹脂の配合量を3重量部に変更すること以外は、実施例1と同様にして、比較例7の二成分現像剤を製造した。
【0153】
(比較例8)
トナーの製造に際し、押出し混練機の運転条件を、シリンダ設定温度110℃、バレル回転数毎分350回転(350rpm)、原料混合物供給速度15kg/時間に変更し、キャリアの製造に際し、シリコーン樹脂の配合量を92重量部に変更し、アクリル系樹脂の配合量を3重量部に変更すること以外は、実施例1と同様にして、比較例8の二成分現像剤を作製した。比較例8で得られたトナーの誘電体損値(tanδ)は、8.7×10−3であった。
【0154】
(比較例9)
トナーの製造に際し、押出し混練機の運転条件を、シリンダ設定温度120℃、バレル回転数毎分300回転(300rpm)、原料混合物供給速度15kg/時間に変更し、キャリアの製造に際し、シリコーン樹脂の配合量を92重量部に変更し、アクリル系樹脂の配合量を3重量部に変更すること以外は、実施例1と同様にして、比較例8の二成分現像剤を作製した。比較例9で得られたトナーの誘電体損値(tanδ)は、14.7×10−3であった。
【0155】
(比較例10)
キャリアの製造に際し、シリコーン樹脂の配合量を35重量部に変更し、アクリル系樹脂の配合量を60重量部に変更すること以外は、実施例1と同様にして、比較例10の二成分現像剤を製造した。
【0156】
(比較例11)
トナーの製造に際し、押出し混練機の運転条件を、シリンダ設定温度110℃、バレル回転数毎分350回転(350rpm)、原料混合物供給速度15kg/時間に変更し、キャリアの製造に際し、シリコーン樹脂の配合量を35重量部に変更し、アクリル系樹脂の配合量を60重量部に変更すること以外は、実施例1と同様にして、比較例11の二成分現像剤を作製した。比較例11で得られたトナーの誘電体損値(tanδ)は、8.7×10−3であった。
【0157】
(比較例12)
トナーの製造に際し、押出し混練機の運転条件を、シリンダ設定温度120℃、バレル回転数毎分300回転(300rpm)、原料混合物供給速度15kg/時間に変更し、キャリアの製造に際し、シリコーン樹脂の配合量を35重量部に変更し、アクリル系樹脂の配合量を60重量部に変更すること以外は、実施例1と同様にして、比較例12の二成分現像剤を作製した。比較例12で得られたトナーの誘電体損値(tanδ)は、14.7×10−3であった。
【0158】
以上の実施例1〜9および比較例1〜12で得られたトナーについて、着色剤濃度(重量%)、誘電体損値(tanδ)および体積平均粒径(D50、μm)を表1に示す。
【0159】
また、実施例1〜9および比較例1〜12で得られたキャリアについて、キャリア芯材であるフェライト系粒子100重量部に対する被覆層の割合(重量部)、被覆層中におけるアクリル系樹脂の含有量(重量%)、被覆層中における導電性粒子である酸化チタンの含有量(重量%)および重量平均粒径(D50、μm)を表1に示す。
【0160】
また、実施例1〜9および比較例1〜12の各二成分現像剤中におけるトナーの濃度(重量%)を表1に示す。
【0161】
【表1】

【0162】
[評価1]
実施例1〜9および比較例1〜12の各二成分現像剤を画像形成装置の現像剤収容容器に投入し、JIS P0138に規定されるA4判の寸法の印字率6%の文字原稿を記録用紙1000枚に連続して複写させた後、(a)ホットオフセット発生温度の低下度合、(b)画像濃度、(c)画像のかぶり度合および(d)トナーの飛散度合を以下のようにして評価した。画像形成動作は、画像形成装置として、外径30mmの感光体を備える解像度600dpi(dot per inch)の市販のデジタル複写機(商品名:AR−260、シャープ株式会社製)を用い、感光体の回転周速(プロセススピード)を130mm/秒に設定し、温度23℃、相対湿度60%の環境下で行なった。記録用紙には、A4判用紙(普通紙、坪量80g/m)を用いた。
【0163】
(a)ホットオフセット発生温度の低下度合
1000枚の連続複写後、複写機AR−260から定着装置を取除き、この複写機を用い、記録用紙上に、縦3cm、横3cmの正方形状のべた部を含むサンプル画像を、べた部のトナー付着量が0.60mg/cmとなるように調整して、未定着の状態で形成した。形成された未定着画像を、定着ローラとしてテフロン(登録商標)で被覆されたローラを具備する定着テスト機にて、定着ローラのニップ幅5mm、定着ローラの回転周速130mm/秒の条件で定着した後、定着テスト機の定着ローラの表面に地汚れが発生するか否かを目視観察によって判断した。
【0164】
この操作を、定着ローラの表面温度を順次上昇させて繰返し行ない、定着ローラの表面に地汚れが発生し始めたときの定着ローラの表面温度を求め、これをホットオフセット発生温度Tmaxとした。画像形成に使用した市販のデジタル複写機AR−260のホットオフセット発生温度の下限スペックである220℃を基準値T0とし、この温度T0から、求めたホットオフセット発生温度Tmaxを差引いた値(T0−Tmax)を、オフセット発生温度低下幅ΔTとして求め、これを評価指標としてホットオフセット発生温度の低下度合を評価した。ホットオフセット発生温度の低下度合の評価基準は以下のようである。
【0165】
○:良好。ΔTが10℃以下。
△:実使用上問題無し。ΔTが10℃を超え30℃未満。
×:不良。ΔTが30℃以上。
【0166】
(b)画像濃度
1000枚の連続複写後、複写機AR−260を用い、縦3cm、横3cmの正方形状のべた部を含むサンプル画像を、べた部のトナー付着量が0.60mg/cmとなるように調整して記録用紙上に形成し、これを評価用画像とした。反射濃度計(商品名:RD918、マクベス社製)を用い、評価用画像のべた部の反射濃度を画像濃度として測定し、画像濃度を評価した。画像濃度の評価基準は以下のようである。
【0167】
◎:非常に良好。画像濃度が1.35以上。
○:良好。画像濃度が1.30を超え1.35未満。
△:実使用上問題無し。画像濃度が1.28を超え1.30以下。
×:不良。画像濃度が1.28以下。
【0168】
(c)画像のかぶり度合
記録用紙への画像形成前に、白色度計(商品名:Σ90、日本電色工業株式会社製)を用い、画像形成後に白地部となる位置において、記録用紙のJIS P8148に規定される白色度を予め測定し、これを第1測定値M1とした。次いで、1000枚の連続複写後の複写機AR−260を用い、印字率6%のA4判文字原稿を記録用紙上に形成し、これを評価用画像とした。前述の白色度計を用い、画像形成前と同位置において、評価用画像の白地部の白色度を測定し、これを第2測定値M2とした。第1測定値M1から第2測定値M2を差引いた値(M1−M2)をかぶり濃度ΔMとして求め、これを評価指標としてかぶり度合を評価した。かぶり度合の評価基準は以下のようである。
【0169】
◎:非常に良好。ΔMが0.70以下。
○:良好。ΔMが0.70を超え1.00以下。
△:実使用上問題無し。ΔMが1.00を超え1.20未満。
×:不良。ΔMが1.20以上。
【0170】
(d)トナーの飛散度合
1000枚の連続複写後、複写機AR−260の現像装置内部および現像装置の周辺部を目視観察し、トナーの飛散度合を判断した。トナーの飛散度合の評価基準は以下のようである。
【0171】
◎:非常に良好。現像装置内部および現像装置の周辺部のいずれにもトナーの飛散なし。
○:良好。現像装置内部にはトナーの飛散が観測されるけれども、現像装置の周辺部にはトナーの飛散なし。
△:実使用上問題無し。現像装置内部および現像装置の周辺部のいずれにもトナーの飛散が観測されるけれども、実使用上問題のない程度である。
×:不良。現像装置内部および現像装置の周辺部のいずれにも著しいトナーの飛散あり。
以上の評価結果を表2に示す。
【0172】
【表2】

【0173】
表2から、キャリアの被覆層におけるアクリル系樹脂の含有量を本発明に規定の範囲である5〜50重量%とし、かつトナーの誘電体損値(tanδ)を本発明に規定の範囲である4.0×10−3〜15.0×10−3(4.0×10−3≦tanδ≦15.0×10−3)とすることによって、繰返し画像を形成後におけるホットオフセット発生温度の低下を抑止するとともに、画像のかぶりおよびトナーの飛散を減少させ、高品質で充分な画像濃度を有する画像が得られることが判る。
【0174】
〔試験例2〕
試験例2では、前述の実施例5の二成分現像剤および以下のようにして製造した実施例10の二成分現像剤を用い、キャリアの被覆層に含有される導電性粒子の現像剤性能に対する影響について検討した。
【0175】
(実施例10)
キャリアの製造に際し、シリコーン樹脂の配合量を95重量部(固形分換算)に変更し、導電性粒子である酸化チタンを使用しないこと以外は、実施例5と同様にして、実施例10の二成分現像剤を製造した。
【0176】
実施例10で得られたトナーについて、着色剤濃度(重量%)、誘電体損値(tanδ)および体積平均粒径(D50、μm)を表3に示す。また、実施例10で得られたキャリアについて、キャリア芯材であるフェライト系粒子100重量部に対する被覆層の割合(重量部)、被覆層中におけるアクリル系樹脂の含有量(重量%)、被覆層中の導電性粒子である酸化チタンの有無および重量平均粒径(D50、μm)を表3に示す。また、実施例10の二成分現像剤中におけるトナーの濃度(重量%)を表3に示す。なお、表3には、実施例5の二成分現像剤の値を合わせて示す。
【0177】
【表3】

【0178】
[評価2]
実施例5および実施例10の各二成分現像剤を用い、記録用紙への画像形成動作を繰返し行ない、以下のようにして耐久性を評価した。画像形成動作は、画像形成装置として、前述の市販のデジタル複写機AR−260、シャープ株式会社製)を用い、感光体の回転周速(プロセススピード)を130mm/秒に設定し、温度23℃、相対湿度60%の環境下で行なった。記録用紙には、A4判用紙(普通紙、坪量80g/m)を用いた。
【0179】
印字率6%のA4判文字原稿を記録用紙に複写し、これを評価用画像とした。得られた評価用画像について、試験例1の評価1と同様にして、画像濃度および画像のかぶり度合を評価した。また画像形成装置の現像スリーブ上から二成分現像剤を採取し、この二成分現像剤中のトナーの濃度および帯電量を測定した。以上の評価結果を初期の評価結果とする。
【0180】
また、印字率6%のA4判文字原稿を記録用紙5000枚に連続して複写した後、さらに印字率6%のA4判文字原稿を記録用紙に複写し、これを評価用画像とし、初期と同様にして画像濃度および画像のかぶり度合を評価した。また画像形成装置の現像スリーブ上から二成分現像剤を採取し、この二成分現像剤中のトナーの濃度および帯電量を測定した。以上の評価結果を5000枚複写後の評価結果とする。
【0181】
また、印字率6%のA4判文字原稿を記録用紙10000枚に連続して複写した後、5000枚複写後と同様にして、画像濃度および画像のかぶり度合を評価し、さらに現像スリーブ上から採取した二成分現像剤中のトナーの濃度および帯電量を測定した。以上の評価結果を10000枚複写後の評価結果とする。
以上の評価結果を表4に示す。
【0182】
【表4】

【0183】
表4から、キャリアの被覆層に導電性粒子を含有させることによって、現像剤担持体に担持された二成分現像剤中のトナー濃度およびトナー帯電量の推移が安定し、画像のかぶりがさらに減少し、かつ充分な画像濃度を有する画像が得られることが判る。
【0184】
〔試験例3〕
試験例3では、前述の実施例5の二成分現像剤および以下のようにして製造した実施例11〜13の二成分現像剤を用い、キャリアにおける被覆層の割合の現像剤性能に対する影響について検討した。
【0185】
(実施例11〜13)
キャリアの製造に際し、キャリア芯材であるフェライト系粒子100重量部に対する被覆層の割合が表5に示す値になるように、被覆樹脂溶液の噴霧量を変更すること以外は、実施例5と同様にして、実施例11〜13の二成分現像剤を製造した。なお、表5には、実施例5の二成分現像剤の値を合わせて示す。
【0186】
【表5】

【0187】
[評価3]
実施例5および実施例11〜13の各二成分現像剤について、試験例1の評価1と同様にして、ホットオフセット発生温度の低下度合、画像濃度、画像のかぶり度合およびトナーの飛散度合を評価した。以上の評価結果を表6に示す。
【0188】
【表6】

【0189】
表6から、キャリアにおける被覆層の割合を、キャリア芯材100重量部に対して5〜20重量部の範囲にすることによって、画像のかぶりおよびトナーの飛散をさらに減少させ、かつより高い画像濃度を有する画像が得られることが判る。
【0190】
〔試験例4〕
試験例4では、前述の実施例5の二成分現像剤および以下のようにして製造した実施例14〜17の二成分現像剤を用い、キャリアの重量平均粒径の現像剤性能に対する影響について検討した。
【0191】
(実施例14〜17)
キャリアの重量平均粒径が表7に示す値になるようにフェライト粒子の体積平均粒子径を変更すること以外は、実施例5と同様にして、実施例14〜17の二成分現像剤を製造した。なお、表7には、実施例5の二成分現像剤の値を合わせて示す。
【0192】
【表7】

【0193】
[評価4]
実施例5および実施例14〜17の各二成分現像剤について、試験例1の評価1と同様にして、ホットオフセット発生温度の低下度合、画像濃度、画像のかぶり度合およびトナーの飛散度合を評価した。以上の評価結果を表8に示す。
【0194】
【表8】

【0195】
表8から、キャリアにおける被覆層の割合を、キャリアの重量平均粒径を50〜100μmの範囲にすることによって、画像のかぶりおよびトナーの飛散をさらに減少させ、かつより高い画像濃度を有する画像が得られることが判る。
【0196】
〔試験例5〕
試験例5では、前述の実施例5の二成分現像剤および以下のようにして製造した実施例18〜21の二成分現像剤を用い、二成分現像剤中のトナー濃度の現像剤性能に対する影響について検討した。
【0197】
(実施例18〜21)
二成分現像剤中のトナーの濃度を表9に示す値に変更すること以外は、実施例5と同様にして、実施例18〜21の二成分現像剤を製造した。なお、表9には、実施例5の二成分現像剤の値を合わせて示す。
【0198】
【表9】

【0199】
[評価5]
実施例5および実施例18〜21の各二成分現像剤について、試験例1の評価1と同様にして、ホットオフセット発生温度の低下度合、画像濃度、画像のかぶり度合およびトナーの飛散度合を評価した。以上の評価結果を表10に示す。
【0200】
【表10】

【0201】
表10から、二成分現像剤中におけるトナーの濃度を3.5〜8.0重量%の範囲にすることによって、画像のかぶりおよびトナーの飛散をさらに減少させ、かつより高い画像濃度を有する画像が得られることが判る。
【0202】
以上のように、キャリアの被覆層におけるアクリル系樹脂の含有量を被覆層全量の5〜50重量%の範囲にし、かつトナーの誘電体損値(tanδ)を4.0×10−3〜15.0×10−3の範囲にすることによって、被覆層の剥離によるホットオフセット発生温度の低下を防ぐことができるとともに、画像濃度の不足、画像のかぶりおよびトナーの飛散などを抑えることのできる二成分現像剤を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0203】
【図1】連続式2本ロール型混練機200の構成を簡略化して示す図である。
【図2】本発明の実施の他の形態である二成分現像装置1を備える画像形成装置100の構成を簡略化して示す配置正面図である。
【図3】摩擦帯電量測定装置50の構成を簡略化して示す斜視図である。
【符号の説明】
【0204】
1 二成分現像装置
2 記録材供給部
3 画像定着部
4 制御部
5 感光体ドラム
6 帯電手段
7 露光ユニット
8 画像形成部
9 転写手段
10 クリーニングユニット
11 除電手段
12 転写ローラ
13 トナー補給手段
14 現像剤供給手段
15 現像ローラ
16 現像剤収容容器
17 現像剤撹拌機
30 定着装置
35 定着ローラ
36 加圧ローラ
100 画像形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂および着色剤を含有するトナーと、キャリア芯材および前記キャリア芯材を被覆する被覆層を有するキャリアとを含む二成分現像剤であって、
キャリアの被覆層が、アクリル系樹脂を被覆層全量の5重量%以上、50重量%以下含有し、
トナーの誘電体損値(tanδ)が、4.0×10−3以上、15.0×10−3以下(4.0×10−3≦tanδ≦15.0×10−3)であることを特徴とする二成分現像剤。
【請求項2】
キャリアの被覆層が、導電性粒子をさらに含有することを特徴とする請求項1記載の二成分現像剤。
【請求項3】
キャリアの被覆層が、シリコーン樹脂をさらに含有することを特徴とする請求項1または2記載の二成分現像剤。
【請求項4】
キャリア芯材が、フェライト系粒子であることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか1つに記載の二成分現像剤。
【請求項5】
キャリアは、キャリア芯材100重量部に対して、被覆層が5重量部以上、20重量部以下であることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか1つに記載の二成分現像剤。
【請求項6】
キャリアは、重量平均粒径が、50μm以上、100μm以下であることを特徴とする請求項1〜5のうちのいずれか1つに記載の二成分現像剤。
【請求項7】
トナー中における着色剤の濃度が、10重量%以上、15重量%以下であることを特徴とする請求項1〜6のうちのいずれか1つに記載の二成分現像剤。
【請求項8】
トナーの濃度が、3.5重量%以上、8.0重量%以下であることを特徴とする請求項1〜7のうちのいずれか1つに記載の二成分現像剤。
【請求項9】
潜像担持体に形成される潜像を現像するために用いられる二成分現像装置であって、
潜像担持体に対向して設けられ、請求項1〜8のいずれかに記載の二成分現像剤を担持し、潜像担持体に形成される潜像を現像する位置へ搬送する現像剤担持体を含む現像剤供給手段と、
潜像担持体に形成される潜像を現像する位置における現像剤担持体の移動方向が、前記位置における潜像担持体の移動方向と逆の方向になるように現像剤供給手段の動作を制御する制御手段とを備えることを特徴とする二成分現像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−3745(P2006−3745A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−181663(P2004−181663)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】