説明

二成分系エポキシ塗料スプレー缶

本発明は、展色剤成分及び硬化剤成分を含有する、特に自動車産業及び自動車修理産業のための、エーロゾル調合物を含有する二成分系塗料スプレー缶であって、展色剤成分が硬化可能なエポキシ主成分、溶剤及び噴射剤を含有して成り、硬化剤成分がエポキシ展色剤の硬化に適する架橋剤を含有して成り、硬化剤成分が塗料スプレー缶内に配置され且つ外側から作動させ得る架橋剤用スリーブの作用によって展色剤成分とは分離されて収容されている塗料スプレー缶に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的な産業、家庭用産業、建築業、自動車産業、自動車修理産業のための、二成分系エポキシ塗料用エーロゾル調合物を含む二成分系塗料スプレー缶に関する。
【背景技術】
【0002】
種々のベースの塗料スプレー缶用エーロゾル組成物が、長年来、公知である。好ましくはこれは、DIY(Do−It−Yourself)、自動車産業、自動車修理産業のための一成分系(1K)エーロゾル組成物である。
【0003】
最近、自動車及び修理の分野において、塗料スプレー缶入りの二成分系PUR系がますますその市場を拡大させている。そのような二成分(2K)系は、主成分、即ちOH基を有するアクリレート樹脂もしくはポリエステル樹脂、及び硬化剤成分であるポリイソシアネートから成る。このような塗料スプレー缶は、プライマー、下塗り、充填用プライマー、充填剤、上塗り塗料、クリヤラッカー等として、好ましくは車両分野において、乗用車、トラック、バス、市街電車、鉄道、タンクローリー及びコンテナに使用される。
【0004】
一方、一般的な産業、家庭用産業、建築業、機械製作産業等のための、塗料スプレー缶入りの二成分系エーロゾル調合物は今日まで事実上なかった。これらの分野では、二成分系エポキシシステムを用いた塗装が公知であり、当該塗装は吹付け装置、ローラー、刷毛を用いて、あるいは櫛、ドクターブレード及び鋳造プロセスではパテを用いて塗布され、且つ、二成分系として自然乾燥する、即ち室温で硬化する。しかしながら、これまで二成分系塗料スプレー缶に使用可能なエポキシシステムを提供することはできていない。
【0005】
従って、通常、このようなシステムによる補修及び修復は、装置コスト、労働コスト、且つ時間的コストを費やして手作業で全く同一の二成分系材料を用いて実施される。これには吹付け装置、キャスティング装置、ローラー、刷毛、櫛、ドクターブレード、表面パテ、噴霧タンク及び混合容器を必要とする。主成分と硬化剤との混合比は、容量もしくは重量を測定し、正確に配量されなければならず、適切な精密秤又は容量測定計器を用いなければならない。
【0006】
二成分系エポキシ塗料スプレー缶用エーロゾル調合物を用いて、修復、補修又は傷の除去あるいは新規塗装を実施するならば、上記コストを不要とし得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って本発明の目的は、特に補修用途において使用し得るエポキシ塗料システムを含有する二成分系塗料スプレー缶を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の二成分系塗料スプレー缶を用いることで、当該目的は達成される。
【0009】
二成分系エポキシ技術を基礎とするエーロゾル調合物を含む、この新規の塗料スプレー缶は通常以下のものを含有する。
−エポキシ主成分、
−吹付け最終用途に適応させるための溶剤混合物、
−噴射剤、例えばジメチルエーテル、プロパン/ブタン又は過フッ化炭化水素、
−隔離容器内の、エポキシ主成分用の硬化剤成分であるエポキシ硬化剤
【発明の効果】
【0010】
このような新規の二成分系塗料スプレー缶を使用することによって、ボタンを押すことで、正確に配分された硬化剤を隔離アルミニウムカートリッジから塗料スプレー缶内に放出させることを簡単な方法で可能にし、その結果、これらは組成に応じて3〜24時間のポットライフにてスプレー缶バルブ(Spraydosenventil)及びスプレーヘッド(Spruehkopf)を介してきわめて正確に且つ狭く限定的に、損傷しているか、もしくは補修すべき面に、目に見える変わり目なしに膨れ及び穴を生じることなく、さらに皺跡も刷毛跡もなく塗装することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
通常、スプレー缶塗装では、高固形分塗装、即ちハイソリッド塗装を行うことはできない。市販の塗料スプレー缶では、低固形分の、通常物理的に又は酸化によって乾燥する一成分系塗料システムが含まれており、これはその化学組成、固形分及び膜厚から判断して、二成分系エポキシ系を用いて修復、補修もしくは新たに塗装するために、まったく適さない。
【0012】
DE19636221C2によれば、塗料スプレー缶からの放出量を通常10秒毎に8〜10gから10秒毎に20〜25gにまで高めることが可能である。これによって、是認し得る作業コストにて、且つ少ない吹付け工程(Spruehgaengen)にて、顕著により厚い膜厚もが高い作業スピードにて達成され得る。これは、広い噴射ノズルと組み合わせられた、プロパン含量の高いプロパン/ブタン噴射剤混合物を使用することによって可能となる。これによって、高められた一定の圧力での、且つ高い噴射量での缶内容物の放出が可能になる。
【0013】
DE19636221C2の教示と本発明とを組み合わせることによって、特に良好な結果が達成される。
【0014】
溶剤含有の、溶剤不含の、又は水で希釈可能な、市販のもしくは自由に入手可能なもしくは自ら製造した二成分系エポキシシステムを二成分系塗料スプレー缶に適用することで、確実且つきわめて正確な補修、修復、及び新たな塗装に対する全ての要求、即ち塗装が容易なこと、環境適合性の排出物、取扱いが安全なこと、迅速に完全乾燥すること、硬化の寸法精度が高いこと、耐薬品性、長年にわたる使用可能性及び化学品耐性、を満たす、塗装を修復するための驚くべき塗料調合物が得られる。
【0015】
二成分系のエポキシエーロゾル組成物を配合するための塗料スプレー缶として、例えばWO−A−8500175(Zarga)に記載されているような、分離されたプラスチック容器が採用される場合には、有用な結果が得られる。しかしながら、いくつかの場合には、塗料スプレー缶内のエポキシ主成分と隔離プラスチックカートリッジ内のエポキシ硬化剤とが分離して充填されているにもかかわらず、二成分系エーロゾル組成物の貯蔵安定性が低下する場合がある。それは大抵、高いクリープ能力をもつ溶剤に関連している。全ての塗料スプレー缶は、温度に応じて9バールまでの圧力下におかれるため、ザルガ(Zarga)型のプラスチック硬化剤カートリッジが常に最適とは証明されていない。本明細書では、特にザルガの技術を参照する。
【0016】
プラスチックカートリッジ壁を介して圧力はバランスをとろうとする。即ち噴射剤、水蒸気形態の水分とガス形態の溶剤とがカートリッジ壁を通って内部に達し、そして設けられているエポキシ硬化剤が沈殿し、ひいては役立たなくなる。
【0017】
実際には、時間的な理由から、貯蔵安定性は50℃での炉内貯蔵により検査される。プラスチックカートリッジは部分的に、そしていくつかの溶剤の組合せの場合に、炉内において50℃で平均2〜4週後にエポキシ硬化剤の沈殿を招く。長年の経験によれば、室温で1〜2年の貯蔵時間を推論するには、50℃で3か月の炉内貯蔵性が必要である。
【0018】
P10114624.8による缶内に組み込まれたアルミニウムカートリッジを使用することで、二成分系エポキシエーロゾル組成物の低い貯蔵安定性という問題が解決される。アルミニウムから成る硬化剤カートリッジを使用することで、ガスの拡散が防止されるため、炉の温度が50℃のときに3か月という、絶対に必要とされる貯蔵安定性がいかなる場合にも達成できる。そのような貯蔵安定性はまた、特に芳香族溶剤を使用した場合に達成される。
【0019】
P10114624.8は、缶胴部、バルブ収納用ドーム、内曲した底部、円板部に配置された内部スリーブ、及び該内部スリーブ内に配置され且つ前記円板部を貫通して操作可能である、内部スリーブを開放するための突き棒、を備えた圧力缶に関するものである。この圧力缶の場合には、内部スリーブがスプリングケージ(Federkorb)を介して円板部と接続されており、このスプリングケージは作動器を弾性支持しながら内包し、この作動器は突き棒に作用し、この突き棒は、内部スリーブの缶側端部に取り付けられた蓋に作用し且つ操作時にはこの蓋を跳ね飛ばす。この場合、突き棒と作動器との間に隔膜が配置されており、この隔膜は、円板部側端部において内部スリーブを圧力缶の内容物に対して密封するように遮断している。この場合、隔膜と内部スリーブは好ましくは一体的にアルミニウムから製造されている。
【0020】
前述の内部スリーブは、好ましくはその外側端部に、スプリングケージにおける固定のための取付部を有しており、隔膜は内部スリーブから取付部への移行部に存在する。好ましくは取付部はスプリングケージと加締められ(verchlincht)ており、これは特に取付部の自由端がスプリングケージの外側の環状の突起部の周りを巡らされていることによって行われている。
【0021】
スプリングケージ自体は底部円板部に取り付けることもできるし、圧力缶のドーム内のバルブ円板部(Ventilteller)に取り付けることもできる。ドーム内に取付ける場合には、解放は、取付部を通って突き棒に作用し且つ取付部における圧力缶の開放の後にはバルブ要素によって取って代わられる開放ピンを用いて実施される。
【0022】
P10114624.8による、缶胴部、バルブ収納用ドーム、缶底部、円板部に配置された内部スリーブ、該内部スリーブ内に配置され且つ前記円板部を貫通して操作可能である、内部スリーブを開放するための突き棒、を備えた圧力缶は、代替的に、内部スリーブの取り付けられている缶底部の円板部箇所が絞り成形(angeformt)されており、この円板部によって内部スリーブの内側でスプリングケージが支持されており、このスプリングケージが作動器を弾性支持しながら内包し、この作動器が突き棒に作用する。この場合、突き棒は、内部スリーブの缶側端部に取り付けられている蓋に作用し且つ操作時にはこの蓋を跳ね飛ばすように構成することができる。この場合、内部スリーブと円板部とは好ましくは一体的に形成されており、且つアルミニウムから製造されている。この実施形態の場合にも、スプリングケージは好ましくは円板部の中央の成形部に固定されている。
【0023】
一方、二成分系のエポキシ塗料システムを含有する本発明による圧力缶は、通常の従来の二成分用の缶を用いることができ、ザルガの技術又は上述のようなP10114624.8に記載の圧力缶に限定されないことに注意されたい。重要となるのは、二成分系のエポキシ塗料システムが、必要な貯蔵時間にわたって安定したままであること、即ち、エポキシ主成分とエポキシ硬化剤とが確実に分離していることである。
【0024】
二成分系エポキシ塗料スプレー缶用のエーロゾル組成物は、今日まで市場にはなかった。自動車修理用途の二成分系PURシステムのための二成分系塗料スプレー缶は、既に開発されている。但し、そのような二成分系PURシステムは、二成分系エポキシシステムの新規塗装及び補修には適していない。
【0025】
特に、市販の二成分系エポキシ塗料システムに関連するザルガの技術及び/又はP10114624.8と、DE19636221C2の理論とを組み合わせることによって、意外にも、上記産業分野のための効果的な修復、補修及び新規塗装が可能となるエーロゾル調合物が得られる。
【0026】
この塗料スプレー缶によって、スプレー缶から10秒当たり20〜22gの塗料という必要な噴射量が得られ、高固形分のハイソリッドシステムによる修復が可能となる。
【0027】
P10114624.8に記載されているように、二成分系塗料スプレー缶内において、エポキシ硬化剤を隔離アルミニウムカートリッジ内に充填することでエポキシ主成分と分離して充填することで、いずれの場合においても室温で1〜2年という必要な貯蔵安定性がもたらされる。
【0028】
本発明は一般的な産業、家庭用産業、建築業、自動車産業、自動車修理産業等に適用可能である。
【0029】
通常、本発明によるエーロゾル組成物は、発電所、ビール醸造所、食品会社、化学会社のフロアコーティング;船舶、造船及びボート;工作物の保存(Werkserhaltung)、耐薬品塗装;機械製作、タンク建造、タンクのライニング、タンクコーティング;橋、道路建設、建築;タイル、浴槽、セラミックス、磁器;ラミネート、フローリング材料、GRP、繊維ガラス;鋼、アルミニウム及び亜鉛からなる構造物のための腐食塗装(Korrosionsanstriche);コンテナ、車両、軌道車両;コンクリートコーティング(Betonbeschichtungen)、石材及びコンクリートの補修;並びに防水・防腐加工(Impraegnierungen)、絶縁、スリップ防止−及び耐摩擦コーティングに使用される。
【0030】
市販の二成分系エポキシシステムに関しては、多数の非常に広範な主成分及び硬化剤が提供されている。そのようなシステムの混合比は、配合方法に応じて重量で1対1〜10対1で変化させ得る。二成分系塗料スプレー缶において使用する場合には、硬化剤のためのカートリッジ容量は限られている、例えば約25gの容器容量であるため、主成分/硬化剤比は3:1〜6:1に配合することが好ましい。
【0031】
主成分/硬化剤比が、重量比で4:1、即ち80g対20gの混合比となる全ての調合物が特に有利であることが明らかになっている。
【0032】
希釈していないエポキシ主成分60〜150g、好ましくは80〜120gが充填される。関連する原料製造者による複雑な実験室での試験及びデータによって、塗布量、光沢、硬化、使用可能性及び安定性における差の生じる恐れのない正確な化学的硬化を得るためには、通常、主成分と硬化剤との混合比は83:17〜77:23の範囲内で変化させ得る。
【0033】
従って、アルミニウムカートリッジ中のエポキシ硬化剤が約25gの場合には、希釈されていないエポキシ主剤は100〜120gを充填することが好ましい。
【0034】
該カートリッジ中のエポキシ硬化剤が25gの場合には、主剤を当初110〜115g秤量することが特に好ましい。
【0035】
二成分系塗料スプレー缶からの吹付け塗装に関しては、高度な吹付け特性、即ち良好な流展性、滑らかな表面、十分な材料噴射(10s当たり20〜22g)、及びできる限り低い漂遊性のスプレーミスト、を得るための溶剤混合物が必要とされる。
【0036】
エポキシ主成分及びエポキシ硬化剤はともに希釈可能である。当初配合されている二成分系エポキシシステムが溶剤を含有しているか、溶剤不含であるかにかかわらず、これまでの考察、経験及び実験から、溶剤混合物及び噴射剤をエポキシ主成分に添加すること、並びにエポキシ硬化剤成分は希釈せずに特にアルミニウムカートリッジ中に充填することが好ましいことが明らかとなっている。
【0037】
二成分系エポキシシステムは、主にアルコール、好ましくはイソプロパノール、芳香族化合物、好ましくはキシレン、ケトン、好ましくはアセトン、エステル、好ましくは酢酸ブチル、及びこれらの混合物を用いて希釈することができる。
【0038】
エポキシ主成分75g対溶剤混合物25gからエポキシ主成分50g対溶剤混合物50gまでの幅広い混合比で希釈することができる。
【0039】
3mmのノズルを備えるDINカップにおいて、18’’〜30’’のスプレー粘度が、スプレー缶による塗布にとって好ましい。
【0040】
3mmのノズルを備えるDINカップにおいて、22’’〜26’’の粘度が特に有利であることが証明されており、これは混合比で75:25〜55:45gに相応する。
【0041】
エポキシ主成分60〜65gと溶剤混合物35〜40gとの混合比が特に好ましく、これは3mmのノズルを備えるDINカップにおいて、特に23.5’’〜24.5’’の粘度にほぼ相応する。
【0042】
溶剤としてのアルコール及び芳香族化合物は、10〜20%の限定された範囲において、エポキシ主成分に作用する。無制限の範囲において、ケトンとエステルは相溶性である。吹付け塗装には、ケトンとエステルの混合物が特に好ましいことが明らかになっている。50:50〜90:10の比のアセトンと酢酸ブチルの混合物が、特に有用な吹付け結果及び最適な特性をもたらす。80:20〜90:10の比のアセトンと酢酸ブチルの混合物が、特に好ましい。理想的には、アセトン85gと酢酸ブチル15gとを混合したものを選択する。当該数値はすべて重量によるものである。
【0043】
二成分系塗料スプレー缶用の噴射剤としては、特にジメチルエーテル(DME)、DE19636221C2のプロパン/ブタン及び過フッ化炭化水素(フレオン143、144)が考慮の対象となる。通常の塗料調合物に基づく溶剤含有及び溶剤不含の二成分系エポキシシステムに関してはプロパン/ブタン及びDMEが特に好ましいことが明らかになっている。二成分系エポキシシステムの水溶性塗料調合物にはDMEが特に相溶性であることが証明されている。それというのも、他の噴射剤では場合によっては沈殿が生じる場合があるからである。
【0044】
また噴射剤は、希釈された塗料と噴射剤との幅広い混合比、75:25〜40:60においても、効果的な吹付けのために使用することができる。40:60までの比の条件においては、予め希釈されたエポキシ主成分65gと噴射剤35gとからなる全ての混合物が優れていた。
【0045】
理想的には、容量400mlの二成分系塗料スプレー缶には、
−溶剤混合物で予め希釈されているエポキシ主成分180gが充填され、この場合、
−希釈されていないエポキシ主成分114gと溶剤混合物66gが使用される。溶剤混合物は
−アセトン85gと酢酸ブチル15gの重量比から構成される。
噴射剤としてはDMEが使用され、その場合、予め希釈されたエポキシ主成分180gにDME134gが添加されている。
【0046】
塗料化学分野においては、二成分系エポキシシステムは事実上無限のバリエーションが存在する。市販の二成分系システムを製造し得る、多くのメカニズムの化学反応が存在する。
【0047】
本発明による二成分系塗料スプレー缶は、必要及び要求に応じて非常に様々な特性を有し得るため、使用分野を著しく広範なものにすることができる。従って、使用目的に応じて、塗料調合物には非常に広範なバリエーションが存在する。前述の操作範囲から、広範なバリエーションの市販の二成分系エポキシシステムが得られ、これらは化学組成においても実に多様である。二成分系エポキシシステムの化学分野において既知の全ての反応メカニズムが、二成分系塗料スプレー缶への使用に適する。
【0048】
エポキシ樹脂及びエポキシ硬化剤は、反応混合物としてエポキシ樹脂展色剤を形成し、該エポキシ樹脂展色剤は重付加反応によって硬化する。エポキシ樹脂は、DIN 7728によれば、1分子につき1つ以上のエポキシ基を有するオリゴマー化合物である。硬化によって、展色剤は、多くの場合、低粘性もしくは低分子の単量体及びオリゴマー成分の架橋反応を介して、高分子量の三次元網状構造を生じる。網状構造の結び目は、樹脂及び硬化剤の官能基の反応によって生じる(Knittel著, Lehrbuch der Lacke und Beschichtungen, 第2版、第2巻、1998年)。
【0049】
二成分系塗料スプレー缶用のエポキシ樹脂として、グリシジルエーテル、グリシジルエステル、グリシジルアミン、脂環式エポキシド及びイソシアヌル酸グリシジルを基礎とするエポキシ樹脂が挙げられる。
【0050】
エポキシ硬化剤としては、例えば脂肪族アミン及び脂環式アミン、芳香族アミンならびに変性アミンのようなアミン硬化剤、例えばポリアミノアミドのようなポリアミド硬化剤、ジシアンジアミド、環状酸無水物、ポリイソシアネート、アミノ官能性ポリアクリレート等を使用することができる。
【0051】
いくつかの場合には、付加的にマイケル付加によって化学的な硬化を伴う、いわゆる反応性希釈剤、例えばアクリル酸ブチルを、アミノ官能性ポリアクリレートに添加することが可能である。
【0052】
広範な形態で使用可能なアミン硬化剤は、主に、エポキシ塩基性樹脂とのアダクトの形成によって、脂肪酸とのアミド形成によって、又はフェノール及びホルムアルデヒドとのマンニッヒ塩基反応によって製造される。
【0053】
種々の考え得る用途に関して、本発明による二成分系塗料スプレー缶に用いる二成分系エポキシシステムのいくつかの調合例を選定した。以下の例によって、本発明をさらに詳細に説明する。
【0054】
例1
二成分系エポキシ床用塗料、溶剤不含、わずかな黄変、耐摩耗性。
成分A
38.5 Beckopox EP 128(ソルーシア オーストリア社)
0.4 Aerosil 380 (デグッサ(Deggusa)社、フランクフルト)
54.0 Sikron Feinstmehl(クバールツヴェルク(Quarzwerk)社、バート・ラウタベルク)
4.5 Titan Kronos 2059(クロノス チタン(Kronos Titan)社、レーヴァクーゼン)
0.3 Bayferrox 920 (バイエル(Bayer)社、レーヴァクーゼン)
0.3 Bayferrox 308 (バイエル社、レーヴァクーゼン)
0.8 Additol XL 251 (ソルーシア(Solutia)社)
1.2 Additol XL 132 (ソルーシア社)
−−−−−−
100部
成分B
5 Beckopox EH 625 (ソルーシア社)
15 Beckopox EH 637 (ソルーシア社)
−−−−−−
20部
混合比5:1=100:20
【0055】
例2
二成分系エポキシ上塗り塗料、白色、高性能コーティング(Hochleistungsbeschichtung)、耐薬品性、耐溶剤性。
成分A
9.1 Ti−Pure R 902 (デュポン(Dupont)社)
1.8 Talkum AT extra (ノルヴェジャン タルク(Norwegian Talc)社)
38.6 Epon Resin 1001 CX 75 (レゾリューション(Resolution)社、旧シェル社)
1.9 Beetle 216−8 (アメリカン シアナミド(American cyanamid)社)
6.0 MIBK
9.6 メトキシプロパノール
1.2 シクロヘキサノール
7.1 キシレン
24.7 トルエン
−−−−−−
100部
成分B
16 Epicure 3214 硬化剤 (レゾリューション社)
9 MIBK
−−−−−
25部
混合比4:1=100:25
【0056】
例3
二成分系上塗り塗料、緑色、高耐薬品性、高固形分。
成分A
43.7 Beckopox EM 443/57XMIBK(ソルーシア社)
3.2 MPA
36.3 Chromoxidgruen GN−M(バイエル社)
8.3 Schwerspat EWO(サハトレーベン(Sachtleben)社)
4.2 Micro−Talkum AT 1(ノルヴェジャン タルク(Norwegian Talc)社、ベルゲン)
0.2 Aerosil 380(デグッサ社)
0.3 Additol XL 132(ソルーシア社)
0.5 Additol XL 255(ソルーシア社)
3.3 キシレン
−−−−−−
100部
成分B
13.2 Beckopox Eh 631/55(ソルーシア社)
11.8 メトキシプロパノール
−−−−−−
25部
混合比4:1=100:25
【0057】
例4
二成分系エポキシシール剤、
気孔の充填固化を目的とする、例えばコンクリートのための、吸引性下地への良好な入り込み性。
成分A
70 Eurepox 710(シェリング(Schering)社)
20 MIBK
7 キシレン
3 ブタノール
−−−−−
100部
成分B
25 XE 16(シェリング社)
混合比4:1=100:25
【0058】
例5
二成分系エポキシ道路標示用ペイント
成分A
12.5 Eurepox 7001/75(シェリング社)
6.3 アセトン
6.2 MPA
33.0 Vinylite VAGH(アセトン中25%)
4.0 Bentone 38(レオクス(Rheox)社)
4.2 Microdol 1(ノルヴェジャン タルク社)
8.3 Blancfixe(サハトレーベン社)
25.0 Ti−Pure R 902(デュポン社)
0.5 Aerosil 380(デグッサ社)
−−−−−−
100部
成分B
12.5 Versamid 100(シェリング社)
7.0 アセトン
5.5 MPA
−−−−−−
25部
混合比4:1=100:25
【0059】
例6〜8
鋼、アルミニウム、亜鉛用の二成分系エポキシ腐食塗料(Korrosionsanstriche)
a.)エッチングプライマー、クロム酸亜鉛不含
成分A
27.0 Eurepox 7001/75(シェリング社)
8.0 MIBK
12.0 キシレン
3.0 ブタノール
10.0 Schwespat EWO(サハトレーベン社)
10.0 Talkum AT extra(ノルヴェジャン タルク社)
15.0 Heucophos ZP 10(ホイバッハ(Heubach)社)
15.0 Bayferrox 130 BM(バイエル社)
−−−−−−
100部
成分B
15.0 Euredur 30/55(シェリング社)
10.0 キシレン
混合比4:1=100:25
b.)下塗り塗料/プライマー
成分A
26.0 Eurepox 7001/75(シェリング社)
19.0 キシレン
9.0 ブタノール
24.0 Ti−Pure R 902(デュポン社)
13.0 Talkum AT extra(ノルヴェジャン タルク社)
9.0 Blancfixe(サハトレーベン社)
−−−−−−
100部
成分B
15.0 Euredur 30/55(シェリング社)
5.0 キシレン
5.0 MPA
−−−−−−
25部
混合比4:1=100:25
c.)上塗り塗料
成分A
39.0 Eurepox 7001/75(シェリング社)
10.0 キシレン
3.0 ブタノール
6.0 MPA
25.0 TI−Pure R 902(デュポン社)
2.0 Talkum AT extra(ノルヴェジャン タルク社)
15.0 Blancfixe(サハトレーベン社)
−−−−−−
100部
成分B
23.0 Euredur 30/55
2.0 キシレン
−−−−−−
25部
混合比4:1=100:25
【0060】
例9
鋼、アルミニウム及び亜鉛用の二成分系エポキシ充填用プライマー、車両製造、トラック、コンテナ。
成分A
25.0 Beckopox EP 301(ソルーシア社)
2.0 Maprenal MF 600(ソルーシア社)
7.5 キシレン
3.0 EPA
1.0 Bentone 38(レオクス社)
0.3 Bayferrox 316(バイエル社)
0.5 Bayferrox 929(バイエル社)
5.5 Heucophos ZP 10(ホイバッハ社)
11.0 Schwerspat EWO(サハトレーベン社)
16.5 TI−Pure R 902(デュポン社)
20.0 Micro Talkum 20M2(フィンタルク(Finntalc)社)
7.7 メトキシプロパノール
−−−−−−
100部
成分B
8.0 メトキシプロパノール
4.5 Solvesso 100
4.8 キシレン
2.3 Beckopox EP 301
1.8 Laromin C 252(バスフ(BASF)社)
2.5 Versamid 115(シェリング社)
1.1 硬化剤 K54(バスフ社)
−−−−−−
25部
混合比4:1=100:25
【0061】
例10及び11
鋼、アルミニウム、亜鉛用の、二成分系エポキシ・エッチングプライマー、赤褐色、水性。
二成分系エポキシ充填剤、ベージュ色、水性、車両製造、トラック及びコンテナ。
a.)エッチングプライマー
成分A
20.0 VE水
8.0 硬化剤 EH 623/80(ソルーシア社)
20.0 Uraflex ZU 401(DSM社)
1.0 Additol XL 270(ソルーシア社)
1.5 Aerosil 300(デグッサ社)
1.0 亜鉛白樹脂シール(ホイバッハ社)
5.0 Microdol 1(ノルヴェジャン タルク社)
9.0 Heucophos ZPA(ホイバッハ社)
11.0 Talkum AT extra(ノルヴェジャン タルク社)
1.5 Borchigel L 75(ボーチャーズ(Borchers)社)
1.0 Additol XW 390(ソルーシア社)
12.0 VE水
−−−−−−
100部
成分B
25 Beckopox EP 384 W/53(ソルーシア社)
混合比4:1=100:25
b.)充填剤
成分A
30.0 VE水
8.0 Beckopox EH 623/80(ソルーシア社)
2.0 Borchigel L 75(ボーチャーズ社)
1.0 Additol XW 390(ソルーシア社)
0.5 Aerosil 300(デグッサ社)
0.5 Bayferrox 920(バイエル社)
3.0 Sikron SF 600(クバールツヴェルク社)
10.0 Kaolin A(バッサーマン(Bassermann)社)
11.0 Tiona RCL 472(SCM社)
12.0 Schwerspat EWO(サハトレーベン社)
22.0 VE水
−−−−−−
100部
成分B
25 Beckopox EP 384 W/53(ソルーシア社)
混合比4:1=100:25
【0062】
すべての例において、エポキシ主成分Aは、好ましくはキシレン中の、75%溶液として利用される。硬化剤成分Bは、液体の状態で、場合によっては溶解された状態で架橋剤スリーブ中に存在する。全ての量は、重量部として示されている。
【0063】
エポキシ樹脂としては、以下のタイプのものが挙げられる。
【0064】
固体エポキシ樹脂:
固形分 100%、エポキシ価 0.200〜0.225、エポキシ当量 445〜500、粘度 150〜200mPas 25℃(ブチルジグリコール中の40%溶液の場合)、20℃の比重 1.19、引火点 >200℃、ガードナー色数 <2。
75%溶液:
固形分 75%、溶剤 キシレン、エポキシ価 0.150〜0.169、エポキシ当量 590〜666、粘度 約10000mPas 25℃、20℃の比重 1.08、引火点 24℃、ガードナー色数 <3。
実例:
レゾリューション社、旧シェル社のEpon Resin 1001 CX 75、Epikote 1001/75、シェリング社のDown Resin 671/75、Down Eurepox 7001/75、ソリューション(Solution)社、旧バイアノバ(Vianova)社のBeckopox EP 301−x−75。
【0065】
液状エポキシ樹脂:
固形分 100%、中粘度、耐結晶化性(kristallisationsbestaendig)、エポキシ価 0.52〜0.55、エポキシ当量 182〜192、粘度 6500〜9000mPas 25℃、ガードナー色数 <4、20℃の比重 1.17、引火点 180℃。
実例:
Epikote 828、Beckopox EP 116、Dow resin 330、Eurepox 720。
【0066】
水希釈可能なシステムは、通常、硬化剤中に溶解し、そして純粋なエポキシ成分によって硬化する。
【0067】
硬化剤用のアミンとして、例えば以下のものが挙げられる。
【0068】
水に溶解している変性脂肪族ポリアミン、粘度 10000〜17000mPas 25℃、ヨウ素価最大値 10、H活性当量(H−Aktiv−Aequivalentgewicht)(固体樹脂)160、25℃の比重 1.10、引火点 >100℃。
実例:
バイアノバ社のBeckopox Spezialhaerter EH 623w、ソルーシア社の硬化剤 EH 623/80、チバ(Ciba)社の硬化剤XB 3984。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
展色剤成分及び硬化剤成分を含有する、特に自動車産業及び自動車修理のための、エーロゾル調合物を含む二成分系塗料スプレー缶であって、前記展色剤成分が、硬化可能なエポキシ主成分、溶剤及び噴射剤を含有し、前記硬化剤成分が、前記エポキシ展色剤の硬化に適する架橋剤を含有しており、前記硬化剤成分が前記塗料スプレー缶内に配置されていて且つ外側から作動させ得る架橋剤用スリーブの作用によって前記展色剤成分とは分離されて収容されていることを特徴とする、塗料スプレー缶。
【請求項2】
前記エポキシ主成分が、前記硬化剤成分に対して重量比で3:1から6:1にて存在することを特徴とする、請求項1に記載の塗料スプレー缶。
【請求項3】
前記重量比が、4:1から5:1であることを特徴とする、請求項2に記載の塗料スプレー缶。
【請求項4】
前記硬化剤成分が、脂肪族アミン、脂環式アミンもしくは芳香族アミン、これらの反応生成物及びアダクト、ポリアミノアミド、ジシアンジアミド、環状酸無水物、ポリイソシアネート、アミノ官能性ポリアクリレートを含有することを特徴とする、前出の請求項のいずれか一項に記載の塗料スプレー缶。
【請求項5】
前記エポキシ主成分と前記溶剤が、重量比で75:25から50:50にて存在することを特徴とする、前出の請求項のいずれか一項に記載の塗料スプレー缶。
【請求項6】
スプレー粘度が、3mmのノズルを備えるDINカップにおいて、18’’から30’’であることを特徴とする、請求項5に記載の塗料スプレー缶。
【請求項7】
前記展色剤成分が、溶剤としてケトン、エステル、アルコール及び/又は芳香族化合物を含有することを特徴とする、前出の請求項のいずれか一項に記載の塗料スプレー缶。
【請求項8】
前記溶剤が、重量比で50:50から90:10のケトンとエステルから成ることを特徴とする、請求項7に記載の塗料スプレー缶。
【請求項9】
前記溶剤が、重量比で80:20から90:10のアセトンと酢酸ブチルから成ることを特徴とする、請求項7に記載の塗料スプレー缶。
【請求項10】
クルリシジルエーテル(Crlycidylethern)、グリシジルエステル、グリシジルアミン、脂環式エポキシド及びイソシアヌル酸グリシジルを基礎とする前記エポキシ主成分を特徴とする、前出の請求項のいずれか一項に記載の塗料スプレー缶。
【請求項11】
前記展色剤成分が、前記噴射剤を25から60重量%含有することを特徴とする、前出の請求項のいずれか一項に記載の塗料スプレー缶。
【請求項12】
前記展色剤成分が、前記噴射剤としてジメチルエーテル、プロパン及び/又はブタンを含有することを特徴とする、請求項11に記載の塗料スプレー缶。
【請求項13】
前記展色剤成分が、ジメチルエーテルを含有することを特徴とする、請求項12に記載の塗料スプレー缶。
【請求項14】
前記展色剤成分が、ジメチルエーテルを54重量%含有することを特徴とする、請求項13に記載の塗料スプレー缶。
【請求項15】
前記エポキシ主成分が、通常の添加剤、特に顔料、溶剤、安定剤、レオロジー及び/又は粘度に作用する薬剤及び/又は乳化剤を含有することを特徴とする、前出の請求項のいずれか一項に記載の塗料スプレー缶。
【請求項16】
低圧フラットスプレーノズルを特徴とする、前出の請求項のいずれか一項に記載の塗料スプレー缶。
【請求項17】
内圧が、20℃まででは、4.5から6バールであることを特徴とする、前出の請求項のいずれか一項に記載の塗料スプレー缶。
【請求項18】
内圧が、20℃まででは、5.0から5.5バールであることを特徴とする、請求項17に記載の塗料スプレー缶。
【請求項19】
缶底部の円板部に配置されている内部スリーブと、該内部スリーブ内に配置され且つ前記円板部を貫通して操作可能である、前記内部スリーブを開放するための突き棒とを備えており、前記突き棒が前記内部スリーブの缶側端部に取り付けられている蓋に作用し、操作時にはこの蓋を跳ね飛ばすことを特徴とする、前出の請求項のいずれか一項に記載の塗料スプレー缶。
【請求項20】
前記内部スリーブが、金属、好ましくはアルミニウムから成ることを特徴とする、請求項19に記載の塗料スプレー缶。
【請求項21】
前記内部スリーブが、缶底部側に金属隔膜を備えており、それによって前記突き棒が、前記内部スリーブの外側及び缶底部を通って突出している開放ピンと、前記内部スリーブの内側に配置されている前記突き棒とに区分されていることを特徴とする、請求項19又は20に記載の塗料スプレー缶。
【請求項22】
前記内部スリーブが、缶底部の円板部と一体的に形成されているか又は接続されていることを特徴とする、請求項19から21までのいずれか一項に記載の塗料スプレー缶。

【公表番号】特表2006−515634(P2006−515634A)
【公表日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−526974(P2003−526974)
【出願日】平成14年9月5日(2002.9.5)
【国際出願番号】PCT/EP2002/009918
【国際公開番号】WO2003/022903
【国際公開日】平成15年3月20日(2003.3.20)
【出願人】(503346898)ペーター クヴァズニー ゲーエムベーハー (1)
【Fターム(参考)】