説明

二方向噴射ノズルおよび走行式噴霧装置

【課題】被噴霧物の細部に亘って液粒を散布することが可能でドリフト量の低減化も図り得る二方向噴射ノズルおよび走行式噴霧装置の提供。
【解決手段】二方向噴射ノズル1は、ノズル本体2に形成された第1流路5Aおよび第2流路5Bを有し、第1流路5Aおよび第2流路5Bに設けられた噴霧口14,12から液体を互いに異なる方向に噴霧するものであって、液体が搬送方向斜め後方(矢印H)に噴霧されるように噴霧口14を配置し、液体が搬送方向斜め前方(矢印G)に噴霧されるように噴霧口12を配置するとともに、第1流路5Aから噴霧される液体の粒径を第2流路5Bから噴霧される液体の粒径よりも相対的に大きくする液粒径調整手段40を備えている。この二方向噴射ノズル1は搬送車両に搭載されて走行式噴霧装置を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば農薬や液肥などの薬液その他の液体を散布する二方向噴射ノズルおよびこの二方向噴射ノズルを用いた走行式噴霧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の二方向噴射ノズルは下記の特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1記載の二方向噴射ノズルは、搬送操作されるノズル本体内に形成された主流路の先端で二股状に分岐した第1流路および第2流路を有し、薬液を搬送方向斜め後方に噴霧するように第1流路の噴霧口が配置され、薬液を搬送方向斜め前方に噴霧するように第2流路の噴霧口が配置されている。この二方向噴射ノズルによれば、果実、野菜、植樹など植物の上方を通過させることにより植物のほぼ全体にわたって薬液を散布できるという利点を有している。この場合、第1流路の噴霧口から噴霧される霧粒の粒径と第2流路の噴霧口から噴霧される霧粒の粒径はほぼ同じであり、薬液を植物の細部に行き渡らせるためにいずれも粒径の微細な霧粒が噴霧される。
【0003】
【特許文献1】特開平2−9465号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1記載の二方向噴射ノズルでは、第1流路の噴霧口から噴霧される霧粒の粒径と第2流路の噴霧口から噴霧される霧粒の粒径がほぼ同じであるので、第1流路の噴霧口から噴霧された霧粒および第2流路の噴霧口から噴霧された霧粒がいずれも微細な場合、微細な液粒が植物の細部に行き渡って付着することから殺虫・殺菌性の高い薬液効果が得られる。その反面、微細な霧粒は空気中に浮遊しやすく、霧粒が風に乗って飛散する、いわゆるドリフト現象により遠方まで到達し、或る種の薬液散布が禁止されている隣の菜園などに無為に噴霧されるおそれがあった。逆に、第1流路の噴霧口からの液粒および第2流路の噴霧口からの液粒がいずれも粗い場合、ドリフト量は少なくなるが、液粒が植物の細部に行き渡りにくく薬液効果が低くなるという問題を生じる。
【0005】
本発明は、上記した従来の問題点に鑑みてなされたものであり、被噴霧物の細部に亘って液粒を散布、付着させることが可能でドリフト量の低減化も図り得る二方向噴射ノズルおよび走行式噴霧装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る二方向噴射ノズルは、ノズル本体に形成された第1流路および第2流路にそれぞれ設けられた噴霧口から液体を互いに異なる方向に噴霧する二方向噴射ノズルにおいて、第1流路から噴霧される液体の粒径を第2流路から噴霧される液体の粒径よりも相対的に大きくする霧粒径調整手段を具備してなる構成にしてある。
【0007】
また、本発明に係る別の二方向噴射ノズルは、搬送操作されるノズル本体に形成された第1流路および第2流路にそれぞれ設けられた噴霧口から液体を互いに異なる方向に噴霧する二方向噴射ノズルにおいて、液体が搬送方向斜め後方に噴霧されるように第1流路の噴霧口を配置し、液体が搬送方向斜め前方に噴霧されるように第2流路の噴霧口を配置するとともに、第1流路から噴霧される液体の粒径を第2流路から噴霧される液体の粒径よりも相対的に大きくする霧粒径調整手段を具備してなるものである。
【0008】
そして、本発明に係る走行式噴霧装置は、請求項2に記載の二方向噴射ノズルと、該二方向噴射ノズルを搭載して搬送する搬送車両とを具備してなるものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る二方向噴射ノズルによれば、霧粒径調整手段によって、第1流路から噴霧される液体の粒径が第2流路から噴霧される液体の粒径よりも相対的に大きくされるので、粒径の異なる液粒を互いに異なる方向に一度に噴霧することが可能で、使用状況に応じて異なる粒径の液粒を適宜選定することができる。
【0010】
また、搬送操作される二方向噴射ノズルでは、液体を搬送方向斜め後方に噴霧するように第1流路の噴霧口が配置され、液体を搬送方向斜め前方に噴霧するように第2流路の噴霧口が配置され、更に第1流路から噴霧される液体の粒径が第2流路から噴霧される液体の粒径よりも相対的に大きくされるので、第2流路から噴霧された微細な液粒は、後行の第1流路から噴霧された粒径の大きな液粒と衝突して叩き落とされ飛散しにくい。これにより、微細な液粒のドリフト量を低減化することができ、周囲への迷惑を防止できる。
【0011】
そして、本発明に係る走行式噴霧装置によれば、搬送車両が二方向噴射ノズルを搭載して搬送するので、人力搬送操作による場合と比べて、液体散布作業を簡便かつ迅速に行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の最良の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下に述べる実施形態は本発明を具体化した一例に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものでない。ここに、図1は本発明の一実施形態に係る二方向噴射ノズルの外観図、図2は前記二方向噴射ノズルの側断面図、図3は前記二方向噴射ノズルの一部分の分解斜視図である。
各図において、この実施形態に係る二方向噴射ノズル1は、内部に主流路5が形成されたノズル本体2と、ユニオンナット8によりノズル本体2に連結される接続管6と、主流路5の先端で二股状に分岐したノズル本体2の第1流路5Aおよび第2流路5Bにそれぞれ設けられたオリフィス板13,11とを備えている。二方向噴射ノズル1の接続管6は取付具9を介して通水可能に給水管10に連結される。給水管10は手動によりまたは車載駆動により搬送操作することができる。
【0013】
ノズル本体2は、第1流路5Aおよび第2流路5Bを有する噴射管4と、主流路5を有する基管3とからなっている。噴射管4は、基管3と接続される主管部4Cと、主管部4Cから二股に分かれ形成されていて第1流路5Aおよび第2流路5Bを有する分岐管部4A,4Bとからなっている。尚、噴射管4の外形は必ずしも分岐管部4A,4Bを有する二股状でなくてよく、これらを一体にして塊状に形成したものでも構わない。基管3には、主流路5の上部の大径部28と、主流路5の途中に連通する外気吸入口24とが形成されている。基管3の大径部28には、外気吸入作用を発生させる噴射口26付きのオリフィス板25と、オリフィス板25の上流位置に配置されるフィルタ29が配備されている。基管3の上端部はユニオンナット8により接続管6と連結されている。各図中の符号16,23,27はそれぞれOリングを示している。
【0014】
分岐管部4Aの先端には、コア15A、Oリング16およびオリフィス板13が装着されキャップ7で固定されている。同様に、分岐管部4Bの先端には、コア15B、Oリング16およびオリフィス板11が装着されキャップ7で固定されている。コア15Aは、円盤状本体下面の対角位置に1対の位置決め突起19,19が垂設され、位置決め突起19,19を結ぶ対角線と直交する対角位置の円盤状本体上面に1対の位置決め突起17,17が立設されている。コア15Aにおいて位置決め突起17,17と隣接する内方位置には、第1流路5Aからの液体を通す1対の通水口18,18が形成されている。通水口18,18間の円盤状本体には凸部20が立設されている。コア15Bは円盤状本体上面に凸部20を持たないこと以外、コア15Aと同様の基本構造を有している。コア15A,15Bの位置決め突起19,19,19,19は、分岐管部4A,4Bの先端開口の内周面に形成された位置決め溝21,21に装入される。これにより、コア15A,15Bが分岐管部4A,4Bに対し回り止め係止されるようになっている。
【0015】
前記のオリフィス板13は、図4に示すように基体が円盤状に形成されていて、その直径方向に長い膨出部30が前方に突出して形成されている。膨出部30の背面部分は凹部32となっている。オリフィス板13の正面中心位置、すなわち膨出部30の長手方向中心位置には、噴霧口14が形成されている。噴霧口14は膨出部30の長手方向と直交する方向に長い矩形状に形成されている。凹部32の両端部にコア15Aの位置決め突起17,17が装入されることにより、とにより、オリフィス板13がコア15Aに対し回り止め係止されるようになっている。コア15Aの突部20は空間22A内で噴霧口14の背方に噴霧口14からわずかに離間して配置される。このオリフィス板13は、その噴霧口14からの液体が後方斜め下向き(図1および図2中の矢印H方向)に噴霧される向きで第1流路5Aの先端に配置されている。また、オリフィス板13は膨出部30の長手方向が前後方向(後述の走行式噴霧装置50(図7)では搬送方向F)を向くように配置される。
【0016】
前記のオリフィス板11は、図5に示すように基体が円盤状に形成されていて、その直径方向に長い膨出部31が前方に突出して形成されている。膨出部31は長手方向の中央部分が両端部分よりもくびれたアレイ形状に形成されている。膨出部31の短手方向の幅寸法は上記したオリフィス板13の膨出部30の短手方向の幅寸法よりも小さく設定されている。膨出部31の背面部分は凹部33となっている。オリフィス板11の正面中心位置、すなわち膨出部31の長手方向中心位置には、噴霧口12が形成されている。噴霧口12は正面から見て膨出部31の長手方向に長い矩形状に形成されており、その開口面積は上記したオリフィス板13の噴霧口14の開口面積よりも小さく設定されている。前記した凹部33の両端部にコア15Bの位置決め突起17,17が装入されることにより、オリフィス板11がコア15Bに対し回り止め係止されるようになっている。オリフィス板11の凹部33とコア15Bとの間は、オリフィス板13およびコア15Aを組み合わせた場合と異なって、突部20の無い広い空間22Bとなっている。このオリフィス板11は噴霧口12からの液体が前方斜め下向き(図1および図2中の矢印G方向)に噴霧される向きで第2流路5Bの先端に配置されている。このオリフィス板11も膨出部31の長手方向が前後方向を向くように配置される。
【0017】
上記のように構成された二方向噴射ノズル1の作用を次に説明する。まず、給水管10に取り付けられた二方向噴射ノズル1をキャベツなどの野菜の上方にかざした状態にする。そして、給水管10のコック(図示省略)を開くと、圧送ポンプ(図示省略)から給水管10を経て供給された薬液が、接続管6から基管3の大径部28に流入してフィルタ29を通過し、オリフィス板25の噴射口26から主流路5に噴出する。主流路5に噴出した薬液は外気吸入口24から吸入された外気と混合して気液混合流となる。主流路5からの混合気液は第1流路5Aおよび第2流路5Bに分流し、それぞれのコア15A,15Bの通水口18,18,18,18から空間22A,22Bへ流入する。空間22Aへ流入した混合気液はオリフィス板13の噴霧口14から霧粒として後方斜め下向き(矢印H方向)に噴霧され、空間22Bへ流入した混合気液はオリフィス板11の噴霧口12から霧粒として前方斜め下向き(矢印G方向)に噴霧される。噴霧口14から噴霧された霧粒および噴霧口12から噴霧された霧粒の噴霧パターンは、いずれも左右方向(後述の走行式噴霧装置50では搬送方向Fと直交する水平方向)に長い平面視で楕円形もしくは長円形となっている。
【0018】
従って、この二方向噴射ノズル1によれば、野菜、果実、植樹などの植物に2方向から薬液を散布することができる。そして、二方向噴射ノズル1を植物の上方を通過させるように搬送すると、上方通過前にはオリフィス板11の噴霧口12から植物の後部に薬液を散布し、上方通過中は前には植物の上部から薬液を散布し、更に上方通過後はオリフィス板13の噴霧口14から植物の前部に薬液を散布するといったように万遍なく薬液散布を行なうことができる。あるいは、二方向噴射ノズル1を天地逆に配置して植物の下方を通過させるように搬送すると、高所にある枝や葉裏に対し斜め上向きの薬液散布を行なうことも可能である。
【0019】
そのうえ、この二方向噴射ノズル1では、(1)第1流路5Aにおけるコア15Aの凸部20の存在により空間22A内での撹拌流動が規制されること、(2)オリフィス板13の噴霧口14の開口面積がオリフィス板11の噴霧口12の開口面積よりも大きく設定されていることから、オリフィス板13の噴霧口14から噴霧される霧粒S1の粒径は、オリフィス板11の噴霧口12から噴霧される霧粒S2の粒径と比べて大きくなる。すなわち、コア15Aとオリフィス板13の間に形成した空間22A、空間22A内における凸部20の配置、ならびに、噴霧口14の開口形状、向きおよび開口面積を備える構成が、この実施形態における霧粒径調整手段40となる。従って、この二方向噴射ノズル1は、粒径の異なる液粒を互いに異なる方向に一度に散布することができる。
【0020】
ここで、噴霧口14から噴霧された霧粒の粒径と噴霧口12から噴霧された霧粒の粒径を計測した。斯かる粒径の計測は、二方向噴射ノズル1の下方30cmの高さ位置で、各12,14から噴霧された霧粒のそれぞれの噴霧パターンにレーザ光を左右水平方向(各噴霧パターンの長手方向)から照射して計測した。各霧粒の粒径計測結果を下記の表1に示す。
【0021】
【表1】

【0022】
表1から明らかなように、噴霧圧が1.0〜2.0MPaにおいて、第2流路5Bの噴霧口12から噴霧された霧粒の粒径は296〜191μm、第1流路5Aの噴霧口14から噴霧された霧粒の粒径は361〜242μmであり、1流路5Aの噴霧口14から噴霧された霧粒の方が粒径が大きいことがわかる。また、双方の霧粒ともに噴霧圧を低くしたほうが、粒径が大きくなることがわかる。
【0023】
そして、上記した二方向噴射ノズル1は、図6および図7に示すように走行式噴霧装置50に用いられる。この走行式噴霧装置50では、車輪52,52,・・の回転により走行駆動する搬送車両51の側部に水平方向のブーム53が突設され、搬送車両51の上面に薬液供給用のタンク54が搭載されている。ブーム53には、タンク54および圧送ポンプ(図示省略)と接続された給水管10が添設され、給水管10に複数の二方向噴射ノズル1,1,1,1・・・がそれぞれ取付具9によって取り付けられている。この走行式噴霧装置50の二方向噴射ノズル1では、噴霧口14から噴霧される霧粒S1を走行式噴霧装置50による搬送方向(矢印F方向)の斜め後方に噴霧するように第1流路5Aのオリフィス板13が二方向噴射ノズル1の後部に配置され、噴霧口12から噴霧される霧粒S2を走行式噴霧装置50による搬送方向の斜め前方に噴霧するように第2流路5Bのオリフィス板11が二方向噴射ノズル1の前部に配置されている。
【0024】
斯かる構成の走行式噴霧装置50は畑に栽培された野菜60などへの薬剤散布に使用される。そこで、走行式噴霧装置50が畑を走行すると、二方向噴射ノズル1,1,1,・・・の搬送方向(矢印F方向)前方にある野菜60に、オリフィス板11の噴霧口12から微細で付着しやすい霧粒S2,S2,S2,・・・が噴きつけられることにより、殺虫・殺菌性の高い薬液効果が得られる。噴霧口12から霧粒S2を噴霧された野菜60は、走行式噴霧装置50の走行に伴ってオリフィス板13の噴霧口14から粗粒な霧粒S1,S1,S1,・・・の噴霧を受ける。
ところで、前記した分岐管部4Bから噴出した霧粒S2は微細であることから噴霧口12からの噴出後に風などによって拡がりやすい。しかしながら、噴霧口12からの噴出後に拡がった微細な霧粒S2,S2,S2,・・・は、後続の分岐管部4Aから噴出した粗粒の霧粒S1,S1,S1,・・・と衝突して叩き落とされ飛散しにくい。これにより、霧粒のドリフト量を低減化させることができ、周囲への迷惑を防止できる。ひいては、作業性を低下させることなく散布作業を行なうことができる。
【0025】
尚、上記実施形態の走行式噴霧装置では、二方向噴射ノズルを車体に搭載して搬送させるようにしたが、本発明の二方向噴射ノズルはそれに限定されるものでなく、例えば人が担ぐことのできる携帯式肩掛けブームに取り付けて、この携帯式肩掛けブームを担いだ人が移動することにより、二方向噴射ノズルを搬送操作させることも可能である。
【0026】
また、上記では、第1流路から噴霧される液体の粒径を第2流路から噴霧される液体の粒径よりも相対的に大きくする霧粒径調整手段として、第1流路から噴霧される液体の粒径を大きくする第1流路側霧粒径拡大構成を例示したが、本発明はそれに限定されない。例えば、第2流路から噴霧される液体の粒径を第1流路から噴霧される液体の粒径よりも相対的に小さくする第2流路側霧粒径縮小構成を具備し、この第2流路側霧粒径縮小構成を本発明の霧粒径調整手段としても構わない。
【0027】
そして、上記では、ノズル本体2の末端側に主流路5を形成するとともに主流路5の先端で二股状に分岐する第1流路5Aおよび第2流路5Bを形成した例を示したが、本発明に係る第1流路および第2流路は、分岐でなく、互いに独立した流路としてノズル本体に並設されたものであってもよい。
【0028】
尚、本発明に係る二方向噴射ノズルにおいて、第1流路と第2流路との成す開き角度(例えば図2では矢印Hと矢印Gとが成す角度)は特に限定されないが、好ましくは30度以上120度以下に設定するのがよい。前記の開き角度が30度未満の場合は、第1流路の噴霧口および第2流路の噴霧口のそれぞれから噴霧された液粒が近すぎて、これらの散布状態が、従来のフラットタイプノズルからフラット状に噴霧された散布状態に近くなり、目的のひとつである被噴霧物への液粒の付着性能が劣ることとなる。そのうえ、例えば第1流路を成す分岐管部と第2流路を成す分岐管部を干渉させないよう、それぞれの分岐管部を長く形成しなければならず、ノズル製作面で実用的でなくなるという問題もある。一方で、前記の開き角度が120度を超える場合は、第2流路の噴霧口から噴霧された微細な液粒が被噴霧物に届くまでの到達距離が長くなること、および、第2流路から噴霧された微細な液粒が第1流路から噴霧された粗粒の液粒により叩き落とされるまでの時間が長くなることにより、ドリフト現象の影響を受けやすくなって、噴霧された液粒が目標とする被噴霧物以外の場所へ飛来するおそれがある。
【0029】
尚、第1流路5Aが向いている方向(図1および図2中の矢印H方向)および第2流路5Bが向いている方向(図1および図2中の矢印G方向)は、鉛直方向からの傾斜角度が必ずしも前後対称の角度でなくてよい。但し、鉛直方向に対する第2流路5Bの傾斜角度を、鉛直方向に対する第1流路5Aの傾斜角度よりも大きくとる方が、微細液粒を進行方向前向きに多く噴霧し、且つ、噴霧後に漂う微細液粒を第1流路5Aからの粗い液粒で下向きに叩き落せるので、付着性能がより高くなり、ドリフト現象もいっそう抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態に係る二方向噴射ノズルの外観図である。
【図2】前記二方向噴射ノズルの側断面図である。
【図3】前記二方向噴射ノズルの一部分の分解斜視図である。
【図4】前記二方向噴射ノズルに用いる一方のオリフィス板を示すものであって、(a)は正面図、(b)は背面図、(c)は(a)におけるA−A線矢視断面図、(d)は(a)におけるB−B線矢視断面図である。
【図5】前記二方向噴射ノズルに用いる他方のオリフィス板を示すものであって、(a)は正面図、(b)は背面図、(c)は(a)におけるC−C線矢視断面図、(d)は(a)におけるD−D線矢視断面図である。
【図6】前記二方向噴射ノズルを用いた走行式噴霧装置の正面図である。
【図7】前記走行式噴霧装置の側面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 二方向噴射ノズル
2 ノズル本体
5 主流路
5A 第1流路
5B 第2流路
10 給水管
11 オリフィス板
12 噴霧口
13 オリフィス板
14 噴霧口
20 凸部
22A 空間
30 膨出部
32 凹部
40 霧粒径調整手段
50 走行式噴霧装置
51 搬送車両
53 ブーム
F 矢印
G 矢印
H 矢印
S1 霧粒
S2 霧粒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル本体に形成された第1流路および第2流路にそれぞれ設けられた噴霧口から液体を互いに異なる方向に噴霧する二方向噴射ノズルにおいて、第1流路から噴霧される液体の粒径を第2流路から噴霧される液体の粒径よりも相対的に大きくする霧粒径調整手段を具備してなることを特徴とする二方向噴射ノズル。
【請求項2】
搬送操作されるノズル本体に形成された第1流路および第2流路にそれぞれ設けられた噴霧口から液体を互いに異なる方向に噴霧する二方向噴射ノズルにおいて、液体が搬送方向斜め後方に噴霧されるように第1流路の噴霧口を配置し、液体が搬送方向斜め前方に噴霧されるように第2流路の噴霧口を配置するとともに、第1流路から噴霧される液体の粒径を第2流路から噴霧される液体の粒径よりも相対的に大きくする霧粒径調整手段を具備してなることを特徴とする二方向噴射ノズル。
【請求項3】
請求項2に記載の二方向噴射ノズルと、該二方向噴射ノズルを搭載して搬送する搬送車両とを具備してなることを特徴とする走行式噴霧装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−238021(P2008−238021A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−80712(P2007−80712)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成19年3月1日 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 生物系特定産業技術研究支援センター 農業機械化研究所発行の「平成18年度 事業報告」に発表
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【出願人】(397002360)ヤマホ工業株式会社 (14)
【Fターム(参考)】