二次元正方格子構造および二次元正方格子構造の製造方法
【課題】結晶へのダメージを抑制し、特性を向上する二次元正方格子構造および二次元正方格子構造の製造方法を提供する。
【解決手段】二次元正方格子構造10aは、AlxGa(1-x)N(0<x≦1)よりなる第1の部分11と、第1の部分11を構成する材料の屈折率と異なる屈折率を有する第2の部分12とを備えている。第1の部分11を構成する材料は、1×103cm-2以上1×107cm-2未満の転位密度を有する。
【解決手段】二次元正方格子構造10aは、AlxGa(1-x)N(0<x≦1)よりなる第1の部分11と、第1の部分11を構成する材料の屈折率と異なる屈折率を有する第2の部分12とを備えている。第1の部分11を構成する材料は、1×103cm-2以上1×107cm-2未満の転位密度を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次元正方格子構造および二次元正方格子構造の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、二次元正方格子構造は、LD(Laser Diode:レーザダイオード)、LED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)、有機EL(Organic Electroluminescence)、波長変換素子などに用いられている。二次元正方格子構造としての2次元フォトニック結晶を備えた波長変換装置は、たとえば特開2008−170710号公報(特許文献1)に開示されている。上記特許文献1の波長変換装置は、以下の方法で作製されることが開示されている。
【0003】
具体的には、+c面を有するGaN(窒化ガリウム)基板上に、2次元分極反転構造パターンに対応したマスクパターンを形成する。その後、GaN基板の+c面およびマスクパターン上に、+c軸方向にGaN層を形成する。この場合、GaN基板の+c面上には+c軸方向へGaN層の厚さが増大するように+c領域をエピタキシャル成長し、マスク層上には−c軸方向へGaN層の厚さが増大するように−c領域をエピタキシャル成長する。これにより、分極反転構造を形成している。
【0004】
次に、分極反転構造上に、開口部を有するレジストパターンを形成する。その後、レジストパターンをマスクとして、ドライエッチングによって開口部に対応した複数の微小孔を形成する。次いで、レジストパターンを除去する。これにより、2次元フォトニック結晶構造を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−170710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
6.2eVのエネルギーバンドギャップ、約3.3WK-1cm-1の熱伝導率および高い電気抵抗を有するAlN(窒化アルミニウム)結晶などのAlxGa(1-x)N(0<x≦1)(以下、AlGaNとも言う)結晶は、短波長の光デバイスの材料として用いられている。このため、AlGaN結晶を含む二次元正方格子構造を波長変換素子などに用いることが期待されている。
【0007】
しかし、上記特許文献1の波長変換装置の製造方法にしたがって、GaN基板上にAlGaN層を形成すると、GaNとAlGaNとは組成が異なるので、形成したAlGaN層の結晶性が悪くなる。AlGaN層の結晶性が悪いと、二次元正方格子構造に入射された光によりAlGaN層を構成する結晶にダメージが生じるという問題があること、および、二次元正方格子構造から出射される光の特性が悪化するという問題があることを本発明者は初めて明らかにした。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、結晶へのダメージを抑制し、特性を向上する二次元正方格子構造および二次元正方格子構造の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、結晶にダメージが生じること、および特性が悪化することは、AlGaN結晶の転位密度が高いことに起因することを見い出した。すなわち、入射された光のエネルギーによる熱が転位により吸収され、この熱により、AlGaN結晶へダメージを与え、かつ特性を低下することを本発明者は見い出した。
【0010】
また、本発明者は、AlGaN結晶へのダメージを抑制し、かつ特性を向上するために、転位密度をどの程度低減することが効果的であるかを鋭意研究した。その結果、AlGaN結晶の転位密度が1×107cm-2未満であることを見い出した。
【0011】
そこで、本発明の二次元正方格子構造は、AlxGa(1-x)N(0<x≦1)よりなる第1の部分と、第1の部分を構成する材料の屈折率と異なる屈折率を有する第2の部分とを備えている。第1の部分を構成する材料は、1×103cm-2以上1×107cm-2未満の転位密度を有する。
【0012】
本発明の二次元正方格子構造の製造方法は、AlxGa(1-x)Nよりなる下地基板を準備する工程と、下地基板上に、下地基板と同じ組成の結晶を成長する工程と、結晶を構成する材料の屈折率と異なる屈折率を有する第2の部分を結晶に形成する工程とを備えている。成長する工程では、1×103cm-2以上1×107cm-2未満の転位密度を有する結晶を成長する。
【0013】
本発明の二次元正方格子構造およびその製造方法によれば、第1の部分を構成するAlGaNは、1×103cm-2以上1×107cm-2未満の転位密度を有している。転位密度が1×107cm-2未満であるので、入射光のエネルギーを転位で吸収することを抑制できる。このため、第1の部分を構成する結晶の温度が上昇することを抑制できる。これにより、結晶へのダメージを抑制することができる。また、第1の部分の屈折率のばらつきを抑制することができるので、出射光の特性を向上することができる。
【0014】
上記二次元正方格子構造において好ましくは、第1の部分を構成する材料は、1×103cm-2以上1×105cm-2未満の転位密度を有する。
【0015】
上記二次元正方格子構造の製造方法において好ましくは、成長する工程では、1×103cm-2以上1×105cm-2未満の転位密度を有する結晶を成長する。
【0016】
これにより、転位による入射光のエネルギーの吸収をより抑制することができる。したがって、結晶へのダメージをより抑制し、特性をより向上することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の二次元正方格子構造および二次元正方格子構造の製造方法によれば、第1の部分の転位密度を1×103cm-2以上1×107cm-2未満にすることにより、結晶へのダメージを抑制し、特性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の実施の形態1における二次元正方格子構造を概略的に示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態1における二次元正方格子構造を概略的に示す平面図である。
【図3】図1における線分III−IIIに沿った断面図である。
【図4】本発明の実施の形態1における二次元正方格子構造の製造方法のフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態1における下地基板を概略的に示す断面図である。
【図6】本発明の実施の形態1における結晶を成長した状態を概略的に示す断面図である。
【図7】本発明の実施の形態1における基材を概略的に示す断面図である。
【図8】本発明の実施の形態1における第2の部分を形成するための製造工程を概略的に示す断面図である。
【図9】本発明の実施の形態1における第2の部分を形成するための製造工程を概略的に示す断面図である。
【図10】本発明の実施の形態2における二次元正方格子構造を概略的に示す斜視図である。
【図11】図10における線分XI−XIに沿った断面図である。
【図12】本発明の実施の形態2における第2の部分を形成するための製造工程を概略的に示す断面図である。
【図13】本発明の実施の形態2における第2の部分を形成するための製造工程を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には、同一の参照符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0020】
(実施の形態1)
図1〜図3を参照して、本発明の一実施の形態における二次元正方格子構造10aを説明する。二次元正方格子構造10aは、二次元回折格子、フォトニック結晶構造などである。
【0021】
図1〜図3に示すように、二次元正方格子構造10aは、第1の部分11と、第2の部分12とを備えている。二次元正方格子構造10aの主面において、平面形状が円形の複数の第2の部分11が、左右方向および当該左右方向に対して90°の傾斜角度で延びる方向に周期的に形成されている。言い換えると、第2の部分12の各々は、第1の部分11の正方格子の格子点となる位置、つまり正方形の頂点の位置に形成されている。さらに、言い換えると、複数の第2の部分12のうち1つの第2の部分12aに着目すると、この第2の部分12aと近接(または隣接)する第2の部分12bの数が4となる。
【0022】
第1の部分11は、AlxGa(1-x)N(0<x≦1)よりなる。Alの組成比xは、0.1以上1以下であることが好ましく、0.5以上1以下であることがより好ましく、1である(AlNよりなる)ことがより一層好ましい。
【0023】
第1の部分11を構成する材料の転位密度は、1×103cm-2以上1×107cm-2未満であり、1×103cm-2以上1×105cm-2未満であることが好ましい。1×107cm-2未満の場合、入射光101のエネルギーが転位で吸収されることを抑制できるので、この入射光101を転位で吸収することを抑制できる。このため、第1の部分11を構成するAlGaN結晶へのダメージをより抑制し、特性をより向上することができる。1×105cm-2未満の場合、入射光101のエネルギーの転位での吸収を効果的に抑制することができる。転位密度は低い方が好ましいが、容易に製造できる観点から、下限値は、1×103cm-2である。
【0024】
ここで、転位密度は、たとえば溶融KOH(水酸化カリウム)中のエッチングによりできるピットの個数を数えて、単位面積で割るというアルカリ・エッチング法によって測定される値(エッチピット密度:EPD)である。
【0025】
第2の部分12は、第1の部分11を構成する材料の屈折率と異なる屈折率を有している。本実施の形態では、第2の部分12は、屈折率が1の空気、屈折率が1.46のSiO2(二酸化珪素)などを用いることができる。この場合、AlNの屈折率が2.3であること等から、第1の部分11が高屈折率部であり、第2の部分12が低屈折率部になる。第2の部分12は、互いに略同一の形状である。
【0026】
続いて、本実施の形態における二次元正方格子構造10aの製造方法について説明する。図4および図5に示すように、AlxGa(1-x)N(0<x≦1)よりなる下地基板21を準備する(ステップS1)。下地基板21は、成長する結晶22と同じ組成である。下地基板21は、主表面21aを有している。主表面21aは、たとえば(001)面(c面)である。
【0027】
次に、図4および図6に示すように、下地基板21の主表面21a上に、下地基板21と同じ組成の結晶22を成長する(ステップS2)。つまり結晶22は、AlxGa(1-x)N(0<x≦1)よりなる。
【0028】
下地基板21と結晶22とは格子不整合などが緩和されているので、転位密度の低い結晶22を成長することができる。成長する結晶22の転位密度は、1×103cm-2以上1×107cm-2未満であり、好ましくは1×103cm-2以上1×105cm-2未満である。
【0029】
成長方法は特に限定されず、昇華法、HVPE(Hydride Vapor Phase Epitaxy:ハイドライド気相成長)法、MBE(Molecular Beam Epitaxy:分子線エピタキシ)法、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition:有機金属化学気相堆積)法などの気相成長法、フラックス法、高窒素圧溶液法などの液相法などを採用することができる。
【0030】
次に、図4および図7に示すように、結晶22から、第1の部分11となるべき基材11Aを形成する(ステップS3)。基材11Aを形成する方法は特に限定されず、たとえば切断やへき開などによりスライス加工する。また、結晶22から複数枚の基材11Aを作製してもよい。ここで、切断とは、電着ダイヤモンドホイールの外周刃を持つスライサーなどで機械的に基材11Aを切り出すことをいう。へき開とは、結晶格子面に沿って結晶22を分割することをいう。なお、このステップS3は省略されてもよい。
【0031】
次に、結晶22から形成された基材11Aの少なくとも一方の表面を研磨する。研磨する方法は特に限定されないが、たとえばCMP研磨(Chemical Mechanical Planarization:化学機械研磨)などを採用できる。なお、この研磨するステップは省略されてもよい。
【0032】
次に、図4に示すように、結晶22を構成する材料の屈折率と異なる屈折率を有する第2の部分12を、結晶22から形成された基材11Aに形成する(ステップS4)。このステップS4では、たとえば以下の工程を行なう。
【0033】
具体的には、まず、図8に示すように、第2の部分12となるべき領域が開口したパターンを有するレジスト23(円が開口したレジスト23)を基材11A上に形成する。その後、図9に示すように、レジスト23のパターンから開口した領域をたとえばエッチングなどにより除去する。基材11Aのうち残存した領域が第1の部分11となり、基材11Aのうち除去した領域が第2の部分12となる。次いで、レジスト23を除去する。これにより、図1〜図3に示す二次元正方格子構造10aを製造することができる。
【0034】
なお、第2の部分12が空気以外の場合には、レジスト23を除去する前に、基材11Aの開口部にSiO2膜などを形成することにより、SiO2などよりなる第2の部分12を形成してもよい。
【0035】
続いて、本実施の形態における二次元正方格子構造10aの動作について説明する。まず、二次元正方格子構造10aに入射光101を入射する。この入射光101は、二次元正方格子構造10aにおいて分極界面である第1の部分11と第2の部分12との界面に垂直になるように入射することが好ましい。二次元正方格子構造10aが有する所定の周期に対応する波長において入射光101は回折を繰り返し、位相条件が規定される。波長および位相条件の揃った光が主面に垂直な方向(図1において上向き)へ回折され、上面から出射光102を取り出すことができる。これにより、特定波長の入射光101を、異なる波長の出射光102に変換することができる。
【0036】
以上説明したように、本実施の形態における二次元正方格子構造10aおよびその製造方法によれば、同じ組成の下地基板21を用いて、第1の部分11を形成している。このため、第1の部分11を構成するAlGaNは、1×103cm-2以上1×107cm-2未満の転位密度を有している。転位密度が1×107cm-2未満であるので、入射光101のエネルギーを転位で吸収してしまうことを抑制できる。このため、第1の部分11を構成する結晶の温度が上昇することを抑制できる。これにより、第1の部分11を構成するAlGaN結晶へのダメージを抑制することができる。また、第1の部分11の屈折率のばらつきを抑制することができるので、出射光102の特性および効率を向上することができる。
【0037】
したがって、本実施の形態における二次元正方格子構造10aは、たとえば、トンネル磁気抵抗素子、巨大磁気抵抗素子等の種々の磁気抵抗効果を利用した機能デバイス、発光ダイオード、レーザダイオードなどの発光素子、整流器、バイポーラトランジスタ、電界効果トランジスタ(FET)、スピンFET、HEMT(High Electron Mobility Transistor;高電子移動度トランジスタ)などの電子デバイスなどに好適に用いることができる。
【0038】
特に、本実施の形態における二次元正方格子構造10aは、フォトニック結晶構造を有するレーザなどの発光素子または波長変換素子に好適に用いられる。二次元正方格子構造10aをフォトニック結晶構造を有するレーザなどの発光素子に用いると、たとえば波長532nmの光を上面に取り出す場合に特に有効である。二次元正方格子構造10aを波長変換素子に用いると、たとえば波長1064nmの光を素子中に局在化させて波長変換効率を向上する場合に特に有効である。
【0039】
(実施の形態2)
図10および図11を参照して、本実施の形態における二次元正方格子構造10bを説明する。本実施の形態における二次元正方格子構造10bは、基本的には実施の形態1における二次元正方格子構造10aと同様の構成を備えているが、第1および第2の部分11、12の形状が異なっている。
【0040】
具体的には、第1の部分11は、基板と、基板上に形成された円柱形状の部分とを含んでいる。なお、第1の部分11は、基板を含んでいなくてもよい。第2の部分12は、円柱形状を開口した形状である。
【0041】
続いて、本実施の形態における二次元正方格子構造10bの製造方法について説明する。
【0042】
まず、実施の形態1と同様に、図5に示す下地基板21を準備するステップS1、結晶成長するステップS2、基材11Aを形成するステップS3、および研磨するステップを適宜実施する。
【0043】
次に、図12に示すように、第2の部分となるべき領域が開口したパターンを有するレジスト23(円形のレジスト)を基材11A上に形成する。その後、図13に示すように、レジスト23のパターンから開口した領域をたとえばエッチングなどにより除去する。エッチングの際、図13に示すように、基材11Aに第2の部分12が貫通しないように形成してもよく、第2の部分12が貫通するように形成してもよい(図示せず)。次いで、レジスト23を除去する。これにより、図10および図11に示すように、結晶22を構成する材料の屈折率と異なる屈折率を有する第2の部分12を、結晶22から形成された基材11Aに形成できる(ステップS4)。
【実施例】
【0044】
本実施例では、第1の部分11を構成するAlGaNが、1×103cm-2以上1×107cm-2未満の転位密度を有することによる効果について調べた。
【0045】
(本発明例1〜3)
本発明例1〜3の二次元正方格子構造は、基本的には実施の形態1にしたがって製造した。具体的には、まず、本発明例1〜3の下地基板21として、主表面21aが(001)面であるAlN単結晶基板、Al0.5Ga0.5N単結晶基板、およびAl0.1Ga0.9N単結晶基板をそれぞれ準備した(ステップS1)。
【0046】
次に、下地基板21上に、下地基板21と同じ組成の結晶22を昇華法によりそれぞれ成長した(ステップS2)。つまり、結晶22として、本発明例1〜3では、AlN結晶、Al0.5Ga0.5N結晶、およびAl0.1Ga0.9N結晶をそれぞれ成長した。
【0047】
次に、結晶22をスライスして、基材11Aを形成した(ステップS3)。その後、基材11Aの表面にCMP研磨を施した。
【0048】
また得られた本発明例1〜3の基材11Aの転位密度を、KOH−NaOH(水酸化ナトリウム)を用いた溶融アルカリ・エッチング法によりそれぞれ測定した。その結果を下記の表1に示す。
【0049】
次に、以下の方法で、第2の部分を形成した(ステップS4)。基材11A上に、電位ビーム露光および反応性イオンエッチングにより、図1および図3に示すように、直径Rが102.1nm、深さHが100nmの微小円孔を、241.8nmのピッチPで、第2の部分12を周期的に形成した。なお、ピッチPは、隣り合う第2の部分12の中心間の距離とした。また、基材11Aから残存した部分を第1の部分11とした。
【0050】
これにより、空気よりなる第2の部分11が正方格子状に配列された本発明例1〜3の二次元正方格子構造10aを製造した。なお、本発明例1〜3の二次元正方格子構造10において、第1の部分11を構成する材料の屈折率と第2の部分12を構成する材料の屈折率とは異なっていた。
【0051】
(比較例1〜3)
比較例1〜3の二次元正方格子構造は、基本的には本発明例1〜3とぞれぞれ同様に製造したが、下地基板21として、主表面が(001)面のSiC(炭化珪素)基板を用いて、結晶22としてAlN結晶、Al0.5Ga0.5N結晶、およびAl0.1Ga0.9N結晶をそれぞれ成長した点においてのみ異なっていた。
【0052】
(比較例4〜6)
比較例4〜6の二次元正方格子構造は、基本的には本発明例1〜3とそれぞれ同様に製造したが、下地基板21として、主表面が(001)面のGaN(窒化ガリウム)基板を用いて、結晶22としてAlN結晶、Al0.5Ga0.5N結晶、およびAl0.1Ga0.9N結晶をそれぞれ成長した点においてのみ異なっていた。
【0053】
(比較例7〜9)
比較例7〜9の二次元正方格子構造は、基本的には本発明例1〜3とそれぞれ同様に製造したが、下地基板21として、主表面が(001)面のAl2O3(サファイア)基板を用いて、結晶22としてAlN結晶、Al0.5Ga0.5N結晶、およびAl0.1Ga0.9N結晶をそれぞれ成長した点においてのみ異なっていた。
【0054】
(評価方法)
本発明例1〜3および比較例1〜9の二次元正方格子構造について、出射光(透過光)の減衰率と、温度上昇とを測定した。
【0055】
具体的には、本発明例1〜3および比較例1〜9の二次元正方格子構造において、入射光101として波長が532nmのレーザー光を、第1および第2の部分11、12の分極界面に垂直になるように入射し、このときの出射光102の強度を初期の強度としてそれぞれ測定した。1万時間照射を続けた後に、出射光102の強度をそれぞれ測定した。そして、初期の強度に対して1万時間経過後の強度が低下した割合を求めた。これを出射光の減衰率として、下記の表1に記載する。
【0056】
また、本発明例1〜3および比較例1〜9の二次元正方格子構造に入射光101を入射させる前の初期の温度と、1万時間照射後の温度とをそれぞれ測定した。そして、比較例7の初期の温度に対して、1万時間経過後の温度上昇を1としたときに本発明例1〜3および比較例1〜6、8、9の温度上昇の割合をそれぞれ求めた。この結果を下記の表1に記載する。
【0057】
【表1】
【0058】
(測定結果)
本発明例1〜3および比較例1〜9の二次元正方格子構造に上記の入射光101を入射させた結果、上面から出射光102が放射された。
【0059】
しかし、表1に示すように、比較例1〜9の二次元正方格子構造では、1万時間照射すると、温度上昇が大きく、減衰率が大きかった。
【0060】
一方、本発明例1〜3の第1の部分11を構成するAlGaNの転位密度は、比較例1〜9の転位密度よりも低かった。このため、本発明例1〜3の二次元正方格子構造の温度上昇は0.001%と小さかった。その結果、AlGaN結晶へのダメージが小さく、透過光の減衰率を0.1%と小さくすることができた。したがって、本発明例1〜3は、比較例1〜9と比べて初期の特性を99.9%以上向上することができた。
【0061】
このことから、第1の部分11の転位密度は低い程、透過光の減衰率を小さくすることができ、かつ転位密度が1×107cm-2未満の場合に長時間に渡って使用を続けても特性を向上できることがわかった。
【0062】
以上より、本実施例によれば、1×103cm-2以上1×107cm-2未満の転位密度を有する第1の部分11を備えることにより、第1の部分11を構成するAlGaN結晶へのダメージを抑制し、特性を向上することができることが確認できた。
【0063】
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、各実施の形態および実施例の特徴を適宜組み合わせることも当初から予定している。また、今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0064】
10a,10b 二次元正方格子構造、11 第1の部分、11A 基材、12,12a,12b 第2の部分、21 下地基板、21a 主表面、22 結晶、23 レジスト、101 入射光、102 出射光。
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次元正方格子構造および二次元正方格子構造の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、二次元正方格子構造は、LD(Laser Diode:レーザダイオード)、LED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)、有機EL(Organic Electroluminescence)、波長変換素子などに用いられている。二次元正方格子構造としての2次元フォトニック結晶を備えた波長変換装置は、たとえば特開2008−170710号公報(特許文献1)に開示されている。上記特許文献1の波長変換装置は、以下の方法で作製されることが開示されている。
【0003】
具体的には、+c面を有するGaN(窒化ガリウム)基板上に、2次元分極反転構造パターンに対応したマスクパターンを形成する。その後、GaN基板の+c面およびマスクパターン上に、+c軸方向にGaN層を形成する。この場合、GaN基板の+c面上には+c軸方向へGaN層の厚さが増大するように+c領域をエピタキシャル成長し、マスク層上には−c軸方向へGaN層の厚さが増大するように−c領域をエピタキシャル成長する。これにより、分極反転構造を形成している。
【0004】
次に、分極反転構造上に、開口部を有するレジストパターンを形成する。その後、レジストパターンをマスクとして、ドライエッチングによって開口部に対応した複数の微小孔を形成する。次いで、レジストパターンを除去する。これにより、2次元フォトニック結晶構造を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−170710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
6.2eVのエネルギーバンドギャップ、約3.3WK-1cm-1の熱伝導率および高い電気抵抗を有するAlN(窒化アルミニウム)結晶などのAlxGa(1-x)N(0<x≦1)(以下、AlGaNとも言う)結晶は、短波長の光デバイスの材料として用いられている。このため、AlGaN結晶を含む二次元正方格子構造を波長変換素子などに用いることが期待されている。
【0007】
しかし、上記特許文献1の波長変換装置の製造方法にしたがって、GaN基板上にAlGaN層を形成すると、GaNとAlGaNとは組成が異なるので、形成したAlGaN層の結晶性が悪くなる。AlGaN層の結晶性が悪いと、二次元正方格子構造に入射された光によりAlGaN層を構成する結晶にダメージが生じるという問題があること、および、二次元正方格子構造から出射される光の特性が悪化するという問題があることを本発明者は初めて明らかにした。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、結晶へのダメージを抑制し、特性を向上する二次元正方格子構造および二次元正方格子構造の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、結晶にダメージが生じること、および特性が悪化することは、AlGaN結晶の転位密度が高いことに起因することを見い出した。すなわち、入射された光のエネルギーによる熱が転位により吸収され、この熱により、AlGaN結晶へダメージを与え、かつ特性を低下することを本発明者は見い出した。
【0010】
また、本発明者は、AlGaN結晶へのダメージを抑制し、かつ特性を向上するために、転位密度をどの程度低減することが効果的であるかを鋭意研究した。その結果、AlGaN結晶の転位密度が1×107cm-2未満であることを見い出した。
【0011】
そこで、本発明の二次元正方格子構造は、AlxGa(1-x)N(0<x≦1)よりなる第1の部分と、第1の部分を構成する材料の屈折率と異なる屈折率を有する第2の部分とを備えている。第1の部分を構成する材料は、1×103cm-2以上1×107cm-2未満の転位密度を有する。
【0012】
本発明の二次元正方格子構造の製造方法は、AlxGa(1-x)Nよりなる下地基板を準備する工程と、下地基板上に、下地基板と同じ組成の結晶を成長する工程と、結晶を構成する材料の屈折率と異なる屈折率を有する第2の部分を結晶に形成する工程とを備えている。成長する工程では、1×103cm-2以上1×107cm-2未満の転位密度を有する結晶を成長する。
【0013】
本発明の二次元正方格子構造およびその製造方法によれば、第1の部分を構成するAlGaNは、1×103cm-2以上1×107cm-2未満の転位密度を有している。転位密度が1×107cm-2未満であるので、入射光のエネルギーを転位で吸収することを抑制できる。このため、第1の部分を構成する結晶の温度が上昇することを抑制できる。これにより、結晶へのダメージを抑制することができる。また、第1の部分の屈折率のばらつきを抑制することができるので、出射光の特性を向上することができる。
【0014】
上記二次元正方格子構造において好ましくは、第1の部分を構成する材料は、1×103cm-2以上1×105cm-2未満の転位密度を有する。
【0015】
上記二次元正方格子構造の製造方法において好ましくは、成長する工程では、1×103cm-2以上1×105cm-2未満の転位密度を有する結晶を成長する。
【0016】
これにより、転位による入射光のエネルギーの吸収をより抑制することができる。したがって、結晶へのダメージをより抑制し、特性をより向上することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の二次元正方格子構造および二次元正方格子構造の製造方法によれば、第1の部分の転位密度を1×103cm-2以上1×107cm-2未満にすることにより、結晶へのダメージを抑制し、特性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の実施の形態1における二次元正方格子構造を概略的に示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態1における二次元正方格子構造を概略的に示す平面図である。
【図3】図1における線分III−IIIに沿った断面図である。
【図4】本発明の実施の形態1における二次元正方格子構造の製造方法のフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態1における下地基板を概略的に示す断面図である。
【図6】本発明の実施の形態1における結晶を成長した状態を概略的に示す断面図である。
【図7】本発明の実施の形態1における基材を概略的に示す断面図である。
【図8】本発明の実施の形態1における第2の部分を形成するための製造工程を概略的に示す断面図である。
【図9】本発明の実施の形態1における第2の部分を形成するための製造工程を概略的に示す断面図である。
【図10】本発明の実施の形態2における二次元正方格子構造を概略的に示す斜視図である。
【図11】図10における線分XI−XIに沿った断面図である。
【図12】本発明の実施の形態2における第2の部分を形成するための製造工程を概略的に示す断面図である。
【図13】本発明の実施の形態2における第2の部分を形成するための製造工程を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には、同一の参照符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0020】
(実施の形態1)
図1〜図3を参照して、本発明の一実施の形態における二次元正方格子構造10aを説明する。二次元正方格子構造10aは、二次元回折格子、フォトニック結晶構造などである。
【0021】
図1〜図3に示すように、二次元正方格子構造10aは、第1の部分11と、第2の部分12とを備えている。二次元正方格子構造10aの主面において、平面形状が円形の複数の第2の部分11が、左右方向および当該左右方向に対して90°の傾斜角度で延びる方向に周期的に形成されている。言い換えると、第2の部分12の各々は、第1の部分11の正方格子の格子点となる位置、つまり正方形の頂点の位置に形成されている。さらに、言い換えると、複数の第2の部分12のうち1つの第2の部分12aに着目すると、この第2の部分12aと近接(または隣接)する第2の部分12bの数が4となる。
【0022】
第1の部分11は、AlxGa(1-x)N(0<x≦1)よりなる。Alの組成比xは、0.1以上1以下であることが好ましく、0.5以上1以下であることがより好ましく、1である(AlNよりなる)ことがより一層好ましい。
【0023】
第1の部分11を構成する材料の転位密度は、1×103cm-2以上1×107cm-2未満であり、1×103cm-2以上1×105cm-2未満であることが好ましい。1×107cm-2未満の場合、入射光101のエネルギーが転位で吸収されることを抑制できるので、この入射光101を転位で吸収することを抑制できる。このため、第1の部分11を構成するAlGaN結晶へのダメージをより抑制し、特性をより向上することができる。1×105cm-2未満の場合、入射光101のエネルギーの転位での吸収を効果的に抑制することができる。転位密度は低い方が好ましいが、容易に製造できる観点から、下限値は、1×103cm-2である。
【0024】
ここで、転位密度は、たとえば溶融KOH(水酸化カリウム)中のエッチングによりできるピットの個数を数えて、単位面積で割るというアルカリ・エッチング法によって測定される値(エッチピット密度:EPD)である。
【0025】
第2の部分12は、第1の部分11を構成する材料の屈折率と異なる屈折率を有している。本実施の形態では、第2の部分12は、屈折率が1の空気、屈折率が1.46のSiO2(二酸化珪素)などを用いることができる。この場合、AlNの屈折率が2.3であること等から、第1の部分11が高屈折率部であり、第2の部分12が低屈折率部になる。第2の部分12は、互いに略同一の形状である。
【0026】
続いて、本実施の形態における二次元正方格子構造10aの製造方法について説明する。図4および図5に示すように、AlxGa(1-x)N(0<x≦1)よりなる下地基板21を準備する(ステップS1)。下地基板21は、成長する結晶22と同じ組成である。下地基板21は、主表面21aを有している。主表面21aは、たとえば(001)面(c面)である。
【0027】
次に、図4および図6に示すように、下地基板21の主表面21a上に、下地基板21と同じ組成の結晶22を成長する(ステップS2)。つまり結晶22は、AlxGa(1-x)N(0<x≦1)よりなる。
【0028】
下地基板21と結晶22とは格子不整合などが緩和されているので、転位密度の低い結晶22を成長することができる。成長する結晶22の転位密度は、1×103cm-2以上1×107cm-2未満であり、好ましくは1×103cm-2以上1×105cm-2未満である。
【0029】
成長方法は特に限定されず、昇華法、HVPE(Hydride Vapor Phase Epitaxy:ハイドライド気相成長)法、MBE(Molecular Beam Epitaxy:分子線エピタキシ)法、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition:有機金属化学気相堆積)法などの気相成長法、フラックス法、高窒素圧溶液法などの液相法などを採用することができる。
【0030】
次に、図4および図7に示すように、結晶22から、第1の部分11となるべき基材11Aを形成する(ステップS3)。基材11Aを形成する方法は特に限定されず、たとえば切断やへき開などによりスライス加工する。また、結晶22から複数枚の基材11Aを作製してもよい。ここで、切断とは、電着ダイヤモンドホイールの外周刃を持つスライサーなどで機械的に基材11Aを切り出すことをいう。へき開とは、結晶格子面に沿って結晶22を分割することをいう。なお、このステップS3は省略されてもよい。
【0031】
次に、結晶22から形成された基材11Aの少なくとも一方の表面を研磨する。研磨する方法は特に限定されないが、たとえばCMP研磨(Chemical Mechanical Planarization:化学機械研磨)などを採用できる。なお、この研磨するステップは省略されてもよい。
【0032】
次に、図4に示すように、結晶22を構成する材料の屈折率と異なる屈折率を有する第2の部分12を、結晶22から形成された基材11Aに形成する(ステップS4)。このステップS4では、たとえば以下の工程を行なう。
【0033】
具体的には、まず、図8に示すように、第2の部分12となるべき領域が開口したパターンを有するレジスト23(円が開口したレジスト23)を基材11A上に形成する。その後、図9に示すように、レジスト23のパターンから開口した領域をたとえばエッチングなどにより除去する。基材11Aのうち残存した領域が第1の部分11となり、基材11Aのうち除去した領域が第2の部分12となる。次いで、レジスト23を除去する。これにより、図1〜図3に示す二次元正方格子構造10aを製造することができる。
【0034】
なお、第2の部分12が空気以外の場合には、レジスト23を除去する前に、基材11Aの開口部にSiO2膜などを形成することにより、SiO2などよりなる第2の部分12を形成してもよい。
【0035】
続いて、本実施の形態における二次元正方格子構造10aの動作について説明する。まず、二次元正方格子構造10aに入射光101を入射する。この入射光101は、二次元正方格子構造10aにおいて分極界面である第1の部分11と第2の部分12との界面に垂直になるように入射することが好ましい。二次元正方格子構造10aが有する所定の周期に対応する波長において入射光101は回折を繰り返し、位相条件が規定される。波長および位相条件の揃った光が主面に垂直な方向(図1において上向き)へ回折され、上面から出射光102を取り出すことができる。これにより、特定波長の入射光101を、異なる波長の出射光102に変換することができる。
【0036】
以上説明したように、本実施の形態における二次元正方格子構造10aおよびその製造方法によれば、同じ組成の下地基板21を用いて、第1の部分11を形成している。このため、第1の部分11を構成するAlGaNは、1×103cm-2以上1×107cm-2未満の転位密度を有している。転位密度が1×107cm-2未満であるので、入射光101のエネルギーを転位で吸収してしまうことを抑制できる。このため、第1の部分11を構成する結晶の温度が上昇することを抑制できる。これにより、第1の部分11を構成するAlGaN結晶へのダメージを抑制することができる。また、第1の部分11の屈折率のばらつきを抑制することができるので、出射光102の特性および効率を向上することができる。
【0037】
したがって、本実施の形態における二次元正方格子構造10aは、たとえば、トンネル磁気抵抗素子、巨大磁気抵抗素子等の種々の磁気抵抗効果を利用した機能デバイス、発光ダイオード、レーザダイオードなどの発光素子、整流器、バイポーラトランジスタ、電界効果トランジスタ(FET)、スピンFET、HEMT(High Electron Mobility Transistor;高電子移動度トランジスタ)などの電子デバイスなどに好適に用いることができる。
【0038】
特に、本実施の形態における二次元正方格子構造10aは、フォトニック結晶構造を有するレーザなどの発光素子または波長変換素子に好適に用いられる。二次元正方格子構造10aをフォトニック結晶構造を有するレーザなどの発光素子に用いると、たとえば波長532nmの光を上面に取り出す場合に特に有効である。二次元正方格子構造10aを波長変換素子に用いると、たとえば波長1064nmの光を素子中に局在化させて波長変換効率を向上する場合に特に有効である。
【0039】
(実施の形態2)
図10および図11を参照して、本実施の形態における二次元正方格子構造10bを説明する。本実施の形態における二次元正方格子構造10bは、基本的には実施の形態1における二次元正方格子構造10aと同様の構成を備えているが、第1および第2の部分11、12の形状が異なっている。
【0040】
具体的には、第1の部分11は、基板と、基板上に形成された円柱形状の部分とを含んでいる。なお、第1の部分11は、基板を含んでいなくてもよい。第2の部分12は、円柱形状を開口した形状である。
【0041】
続いて、本実施の形態における二次元正方格子構造10bの製造方法について説明する。
【0042】
まず、実施の形態1と同様に、図5に示す下地基板21を準備するステップS1、結晶成長するステップS2、基材11Aを形成するステップS3、および研磨するステップを適宜実施する。
【0043】
次に、図12に示すように、第2の部分となるべき領域が開口したパターンを有するレジスト23(円形のレジスト)を基材11A上に形成する。その後、図13に示すように、レジスト23のパターンから開口した領域をたとえばエッチングなどにより除去する。エッチングの際、図13に示すように、基材11Aに第2の部分12が貫通しないように形成してもよく、第2の部分12が貫通するように形成してもよい(図示せず)。次いで、レジスト23を除去する。これにより、図10および図11に示すように、結晶22を構成する材料の屈折率と異なる屈折率を有する第2の部分12を、結晶22から形成された基材11Aに形成できる(ステップS4)。
【実施例】
【0044】
本実施例では、第1の部分11を構成するAlGaNが、1×103cm-2以上1×107cm-2未満の転位密度を有することによる効果について調べた。
【0045】
(本発明例1〜3)
本発明例1〜3の二次元正方格子構造は、基本的には実施の形態1にしたがって製造した。具体的には、まず、本発明例1〜3の下地基板21として、主表面21aが(001)面であるAlN単結晶基板、Al0.5Ga0.5N単結晶基板、およびAl0.1Ga0.9N単結晶基板をそれぞれ準備した(ステップS1)。
【0046】
次に、下地基板21上に、下地基板21と同じ組成の結晶22を昇華法によりそれぞれ成長した(ステップS2)。つまり、結晶22として、本発明例1〜3では、AlN結晶、Al0.5Ga0.5N結晶、およびAl0.1Ga0.9N結晶をそれぞれ成長した。
【0047】
次に、結晶22をスライスして、基材11Aを形成した(ステップS3)。その後、基材11Aの表面にCMP研磨を施した。
【0048】
また得られた本発明例1〜3の基材11Aの転位密度を、KOH−NaOH(水酸化ナトリウム)を用いた溶融アルカリ・エッチング法によりそれぞれ測定した。その結果を下記の表1に示す。
【0049】
次に、以下の方法で、第2の部分を形成した(ステップS4)。基材11A上に、電位ビーム露光および反応性イオンエッチングにより、図1および図3に示すように、直径Rが102.1nm、深さHが100nmの微小円孔を、241.8nmのピッチPで、第2の部分12を周期的に形成した。なお、ピッチPは、隣り合う第2の部分12の中心間の距離とした。また、基材11Aから残存した部分を第1の部分11とした。
【0050】
これにより、空気よりなる第2の部分11が正方格子状に配列された本発明例1〜3の二次元正方格子構造10aを製造した。なお、本発明例1〜3の二次元正方格子構造10において、第1の部分11を構成する材料の屈折率と第2の部分12を構成する材料の屈折率とは異なっていた。
【0051】
(比較例1〜3)
比較例1〜3の二次元正方格子構造は、基本的には本発明例1〜3とぞれぞれ同様に製造したが、下地基板21として、主表面が(001)面のSiC(炭化珪素)基板を用いて、結晶22としてAlN結晶、Al0.5Ga0.5N結晶、およびAl0.1Ga0.9N結晶をそれぞれ成長した点においてのみ異なっていた。
【0052】
(比較例4〜6)
比較例4〜6の二次元正方格子構造は、基本的には本発明例1〜3とそれぞれ同様に製造したが、下地基板21として、主表面が(001)面のGaN(窒化ガリウム)基板を用いて、結晶22としてAlN結晶、Al0.5Ga0.5N結晶、およびAl0.1Ga0.9N結晶をそれぞれ成長した点においてのみ異なっていた。
【0053】
(比較例7〜9)
比較例7〜9の二次元正方格子構造は、基本的には本発明例1〜3とそれぞれ同様に製造したが、下地基板21として、主表面が(001)面のAl2O3(サファイア)基板を用いて、結晶22としてAlN結晶、Al0.5Ga0.5N結晶、およびAl0.1Ga0.9N結晶をそれぞれ成長した点においてのみ異なっていた。
【0054】
(評価方法)
本発明例1〜3および比較例1〜9の二次元正方格子構造について、出射光(透過光)の減衰率と、温度上昇とを測定した。
【0055】
具体的には、本発明例1〜3および比較例1〜9の二次元正方格子構造において、入射光101として波長が532nmのレーザー光を、第1および第2の部分11、12の分極界面に垂直になるように入射し、このときの出射光102の強度を初期の強度としてそれぞれ測定した。1万時間照射を続けた後に、出射光102の強度をそれぞれ測定した。そして、初期の強度に対して1万時間経過後の強度が低下した割合を求めた。これを出射光の減衰率として、下記の表1に記載する。
【0056】
また、本発明例1〜3および比較例1〜9の二次元正方格子構造に入射光101を入射させる前の初期の温度と、1万時間照射後の温度とをそれぞれ測定した。そして、比較例7の初期の温度に対して、1万時間経過後の温度上昇を1としたときに本発明例1〜3および比較例1〜6、8、9の温度上昇の割合をそれぞれ求めた。この結果を下記の表1に記載する。
【0057】
【表1】
【0058】
(測定結果)
本発明例1〜3および比較例1〜9の二次元正方格子構造に上記の入射光101を入射させた結果、上面から出射光102が放射された。
【0059】
しかし、表1に示すように、比較例1〜9の二次元正方格子構造では、1万時間照射すると、温度上昇が大きく、減衰率が大きかった。
【0060】
一方、本発明例1〜3の第1の部分11を構成するAlGaNの転位密度は、比較例1〜9の転位密度よりも低かった。このため、本発明例1〜3の二次元正方格子構造の温度上昇は0.001%と小さかった。その結果、AlGaN結晶へのダメージが小さく、透過光の減衰率を0.1%と小さくすることができた。したがって、本発明例1〜3は、比較例1〜9と比べて初期の特性を99.9%以上向上することができた。
【0061】
このことから、第1の部分11の転位密度は低い程、透過光の減衰率を小さくすることができ、かつ転位密度が1×107cm-2未満の場合に長時間に渡って使用を続けても特性を向上できることがわかった。
【0062】
以上より、本実施例によれば、1×103cm-2以上1×107cm-2未満の転位密度を有する第1の部分11を備えることにより、第1の部分11を構成するAlGaN結晶へのダメージを抑制し、特性を向上することができることが確認できた。
【0063】
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、各実施の形態および実施例の特徴を適宜組み合わせることも当初から予定している。また、今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0064】
10a,10b 二次元正方格子構造、11 第1の部分、11A 基材、12,12a,12b 第2の部分、21 下地基板、21a 主表面、22 結晶、23 レジスト、101 入射光、102 出射光。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
AlxGa(1-x)N(0<x≦1)よりなる第1の部分と、
前記第1の部分を構成する材料の屈折率と異なる屈折率を有する第2の部分とを備え、
前記第1の部分を構成する材料は、1×103cm-2以上1×107cm-2未満の転位密度を有する、二次元正方格子構造。
【請求項2】
前記第1の部分を構成する材料は、1×103cm-2以上1×105cm-2未満の転位密度を有する、請求項1に記載の二次元正方格子構造。
【請求項3】
AlxGa(1-x)Nよりなる下地基板を準備する工程と、
前記下地基板上に、前記下地基板と同じ組成の結晶を成長する工程と、
前記結晶を構成する材料の屈折率と異なる屈折率を有する第2の部分を前記結晶に形成する工程とを備え、
前記成長する工程では、1×102cm-2以上1×107cm-2未満の転位密度を有する前記結晶を成長する、二次元正方格子構造の製造方法。
【請求項4】
前記成長する工程では、1×103cm-2以上1×105cm-2未満の転位密度を有する前記結晶を成長する、請求項3に記載の二次元正方格子構造の製造方法。
【請求項1】
AlxGa(1-x)N(0<x≦1)よりなる第1の部分と、
前記第1の部分を構成する材料の屈折率と異なる屈折率を有する第2の部分とを備え、
前記第1の部分を構成する材料は、1×103cm-2以上1×107cm-2未満の転位密度を有する、二次元正方格子構造。
【請求項2】
前記第1の部分を構成する材料は、1×103cm-2以上1×105cm-2未満の転位密度を有する、請求項1に記載の二次元正方格子構造。
【請求項3】
AlxGa(1-x)Nよりなる下地基板を準備する工程と、
前記下地基板上に、前記下地基板と同じ組成の結晶を成長する工程と、
前記結晶を構成する材料の屈折率と異なる屈折率を有する第2の部分を前記結晶に形成する工程とを備え、
前記成長する工程では、1×102cm-2以上1×107cm-2未満の転位密度を有する前記結晶を成長する、二次元正方格子構造の製造方法。
【請求項4】
前記成長する工程では、1×103cm-2以上1×105cm-2未満の転位密度を有する前記結晶を成長する、請求項3に記載の二次元正方格子構造の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−176070(P2010−176070A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−21388(P2009−21388)
【出願日】平成21年2月2日(2009.2.2)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月2日(2009.2.2)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
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