説明

二次電池の満充電判定方法およびこれを用いる二次電池の充電制御方法

【課題】 満充電を高い精度で判定することのできる満充電判定方法およびこれを用いる二次電池の充電制御方法を提供することである。
【解決手段】 二次電池12の満充電判定方法は、内圧検出工程と、充電状態検出工程とを含んで構成される。二次電池12は、密閉された容器を有し、容器内における気体の反応を利用して充放電する。内圧検出工程では、前記容器の内圧を検出する。充電状態検出工程では、内圧検出工程における内圧の検出結果に基づいて、二次電池12の充電状態を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池が満充電であるか否かを判定する、二次電池の満充電判定方法と、定電流で連続的にまたは断続的に二次電池を充電するときの充電を制御する、二次電池の充電制御方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術に係る満充電判定方法として、充電休止時における二次電池の開放電圧に対する基準値を、電池の温度に基づいて可変設定する手法が知られる。この満充電判定方法は、ニッケル水素電池の充電に用いられる。この充電方法では、充電休止時における二次電池の開放電圧を検出し、検出された開放電圧が、基準値として予め定められる閾値電圧よりも低いときに、充電を開始する(たとえば特許文献1参照)。この閾値電圧は、二次電池に含まれるニッケル水素電池の個数と、電池の温度とに基づく予め定める範囲内に可変設定される。これによって、二次電池をパルス充電するときに、二次電池が過充電に至る前の満充電状態を判定し、充電を停止させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−318040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電池の温度は、充電に伴って上昇するけれども、電池の温度も、またこの温度の上昇速度も、環境温度に依存するので、電池の温度のみに基づく満充電の判定方法では、満充電を高い精度で判定することができないという問題点がある。
【0005】
本発明の目的は、満充電を高い精度で判定することのできる満充電判定方法およびこれを用いる二次電池の充電制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、密閉された容器を有し、前記容器内における気体の反応を利用して充放電する二次電池について、前記容器の内圧を検出する内圧検出工程と、
内圧検出工程における内圧の検出結果に基づいて前記二次電池の充電状態を検出する充電状態検出工程とを含むことを特徴とする二次電池の満充電判定方法である。
【0007】
また本発明は、前記二次電池の開放電圧を検出する開放電圧検出工程と、
前記開放電圧検出工程における開放電圧の検出結果が、予め定める設定電圧以上であるか否かを判定する開放電圧判定工程と、
前記二次電池に対して定電流による充電が行われるときの印加電圧の変化速度を測定する電圧変化測定工程と、
前記電圧変化測定工程における変化速度の測定結果が、予め定める設定速度以上であるか否かを判定する電圧速度判定工程とをさらに含み、
前記充電状態検出工程は、前記内圧検出工程における内圧の検出結果が、予め定める条件を満たすか否かを判定する内圧判定段階を含み、
前記充電状態検出工程では、
(a)前記開放電圧検出工程における開放電圧の検出結果に基づく、開放電圧判定工程における判定結果が、前記設定電圧以上であり、
(b)前記電圧変化測定工程における変化速度の測定結果に基づく、電圧速度判定工程における判定結果が、前記設定速度以上であり、かつ
(c)前記内圧検出工程における内圧の検出結果に基づく、内圧判定段階における判定結果が、前記予め定める条件を満たすとの結果であるときに、満充電であると判定することを特徴とする。
【0008】
また本発明は、前記予め定める条件は、前記内圧検出工程における内圧の検出結果が、予め定める設定内圧以上であるという条件であることを特徴とする。
【0009】
また本発明は、前記予め定める条件は、前記内圧検出工程における内圧の検出結果が、単位時間当たりに、予め定める設定上昇速度以上の上昇速度で上昇するという条件であることを特徴とする。
【0010】
また本発明は、前記設定電圧を補正する電圧基準補正工程を含み、
前記電圧基準補正工程では、前記開放電圧検出工程における開放電圧の検出結果を参照値として、この参照値に応じて定められる補正値によって、前記設定電圧を補正することを特徴とする。
【0011】
また本発明は、前記二次電池の温度を検出する温度検出工程と、
前記設定電圧を補正する温度基準補正工程とを含み、
前記温度基準補正工程では、前記温度検出工程における温度の検出結果を参照値として、この参照値に応じて定められる補正値によって、前記設定電圧を補正することを特徴とする。
【0012】
また本発明は、二次電池において適正な充電電流として予め定められる適正充電電流を取得する適正電流取得工程と、
前記設定電圧を補正する設定基準補正工程とを含み、
前記設定基準補正工程では、前記適正電流取得工程における適正充電電流の取得結果を参照値として、この参照値に応じて定められる補正値によって、前記設定電圧を補正することを特徴とする。
【0013】
また本発明は、前記二次電池の満充電判定方法を利用して二次電池の充電を制御することを特徴とする二次電池の充電制御方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、二次電池は、密閉された容器を有し、容器内における気体の反応を利用して充放電する。内圧検出工程では、前記容器の内圧を検出する。充電状態検出工程では、内圧検出工程における内圧の検出結果に基づいて、二次電池の充電状態を検出する。これによって、容器内における気体の物質量の増減に関する情報を得ることができ、これに基づいて、充電状態を検出することができる。したがって、従来技術に比べて充電状態を精確に検出することができる。気体の物質量は、密閉された容器内において充電に関する化学反応の結果として変化する。したがって、内圧を検出することによって、充電に関する化学反応の進行の程度について、情報を得ることができ、これを充電状態の検出に反映することができる。これによって、従来技術に比べて、高い精度で満充電を判定することができる。
【0015】
また本発明によれば、二次電池の満充電判定方法において、充電状態検出工程では、(a)開放電圧測定工程における開放電圧の測定結果が、設定電圧以上であると判定され、(b)電圧変化測定工程における変化速度の測定結果が、設定速度以上であると判定され、かつ(c)内圧検出工程における内圧の検出結果が、予め定める条件を満たすとの結果であるときに、満充電であると判定する。これによって、二次電池の満充電を、開放電圧と、印加電圧の変化速度と、二次電池の容器の内圧とに基づいて判定することができる。したがって、従来技術に比べて、満充電の判定を、高い精度で行うことができる。
【0016】
また本発明によれば、前記予め定める条件は、内圧検出工程における内圧の検出結果が、予め定める設定内圧以上であるという条件である。これによって、複雑な計算をすることなく、満充電の判定を行うことができる。内圧は、充電率の上昇に伴って、増加および減少の両方が生じることはなく、当然に増加および減少が繰返されたりすることはない。内圧は、充電率の上昇に伴って上昇するので、充電状態の判定に有効に利用することができる。
【0017】
また本発明によれば、前記予め定める条件は、内圧検出工程における内圧の検出結果が、単位時間当たりに予め定める設定上昇速度以上の変化速度で上昇するという条件である。これによって、たとえば、温度条件などが異なる場合であっても、精確に充電状態を判定することができる。充電率の上昇に伴う内圧の上昇割合は、充電率に応じて異なり、定電流で充電するときの内圧の上昇速度の、充電率に対する依存性は、たとえば温度条件などの影響をほとんど受けない。したがって、内圧の上昇速度は、充電状態の判定に有効に利用することができる。
【0018】
また本発明によれば、二次電池の満充電判定方法は、設定電圧を補正する電圧基準補正工程を含んで構成される。電圧基準補正工程では、開放電圧測定工程における開放電圧の測定結果を参照値として、この参照値に応じて定められる補正値によって、設定電圧を補正する。これによって、満充電の判定に用いる基準を、充電開始時の二次電池の条件に基づいて補正することができる。したがって、充電開始時において二次電池の充電状態が異なる複数の場合に、高い精度で満充電を判定することができる。
【0019】
また本発明によれば、二次電池の満充電判定方法は、二次電池の温度を検出する温度検出工程と、設定電圧を補正する温度基準補正工程とを含んで構成される。温度基準補正工程では、温度検出工程における温度の検出結果を参照値として、この参照値に応じて定められる補正値によって、設定電圧を補正する。これによって、満充電の判定に用いる基準を、充電開始時における温度条件に基づいて補正することができる。温度条件は、二次電池が充電されるときの環境の条件を反映するので、二次電池が置かれる環境に応じて、満充電の判定に用いる基準を補正することができる。したがって、環境の条件が異なる場合にも、従来技術に比べて、高い精度で満充電を判定することができる。
【0020】
また本発明によれば、二次電池の満充電判定方法は、適正電流取得工程と、設定電圧を補正する設定基準補正工程とを含んで構成される。適正電流取得工程では、適正充電電流を取得する。適正充電電流は、二次電池において適正な充電電流として予め定められる。設定基準補正工程では、適正電流取得工程における適正充電電流の取得結果を参照値として、この参照値に応じて定められる補正値によって、設定電圧を補正する。これによって、各二次電池の種別に応じて満充電を判定することができる。開放電圧のみでは、各二次電池の充電状態を精確に検出することはできない。開放電圧の、充電率に対する依存性は、二次電池の種別によって異なる。各二次電池に定められる充電電流に対応することで、各二次電池の種別において、その二次電池の充電率に依存した開放電圧に応じて、満充電を判定することができる。したがって、従来技術に比べて、高い精度で満充電を判定することができる。
【0021】
また本発明によれば、二次電池の充電制御方法は、前記二次電池の満充電判定方法を利用して二次電池の充電を制御する。これによって、精確に満充電を判定することができるので、精確に満充電まで充電することと、過充電を防止することとを両立することができる。
【0022】
このように過充電を防止することによって、電極の劣化を防止することができる。これによって、二次電池の性能を長く維持することが可能となる。二次電池の性能が高い場合であっても、過充電によって電極が劣化すると、二次電池の性能は低下する。電極の劣化を防ぐことによって、二次電池に対する充放電を多く繰返しても、二次電池の性能を高く維持することができるので、二次電池の修理または交換の頻度を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態に係る満充電判定方法の工程を表すフローチャートである。
【図2】本発明の第1実施形態における満充電判定装置10と、これを含む充電制御装置11との構成を表す図である。
【図3】本発明の第1実施形態における満充電判定装置10および充電制御装置11の構成を、さらに詳細に表すブロック図である。
【図4】本発明の第1実施形態において満充電判定の対象となる二次電池12の外観を表す斜視図である。
【図5】本発明の第1実施形態において満充電判定の対象となる二次電池12の構成を表す斜視図である。
【図6】本発明の第1実施形態において、充電率と充電率に応じて変化する二次電池12の物理量との関係を表す図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る満充電判定方法の工程を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための複数の形態について説明する。第2実施形態以降の説明においては、先行する実施形態ですでに説明している事項に対応している部分については、重複する説明を略す場合がある。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、先行して説明している形態と同様とする。各実施の形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組合せることも可能である。またそれぞれの実施形態は、本発明に係る技術を具体化するために例示するものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明に係る技術内容は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることが可能である。
【0025】
以下の説明は、二次電池の満充電判定方法、二次電池の充電制御方法についての説明をも含む。以下、二次電池の満充電判定方法を、単に「満充電判定方法」と称し、二次電池の充電制御方法を、単に「充電制御方法」と称する。また二次電池の満充電判定装置10を、単に「満充電判定装置」(10)と称し、二次電池の充電制御装置11を、単に「充電制御装置」(11)と称する。
【0026】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る満充電判定方法の工程を表すフローチャートである。図2は、本発明の第1実施形態における満充電判定装置10と、これを含む充電制御装置11との構成を表す図である。図3は、本発明の第1実施形態における満充電判定装置10および充電制御装置11の構成を、さらに詳細に表すブロック図である。
【0027】
第1実施形態において満充電判定方法は、二次電池12が満充電であるか否かを判定する方法である。また第1実施形態において充電制御方法は、満充電判定方法を用い、定電流で連続的にまたは断続的に二次電池12を充電するときの、二次電池12の充電を制御する方法である。満充電判定方法は、満充電判定装置10を用いて実施され、充電制御方法は、充電制御装置11を用いて実施される。充電制御装置11は、満充電判定装置10を利用して二次電池12の充電を制御する。
【0028】
満充電判定装置10は、内圧検出部13と、充電状態検出部16とを含んで構成される。内圧検出部13は、容器を有する二次電池12について、容器の内圧を検出する。二次電池12は、密閉された容器を有し、容器内における気体の反応を利用して充放電する。充電状態検出部16は、内部検出部による内圧の検出結果に基づいて、二次電池12の充電状態を検出する。具体的には「充電状態」は、予め定める充電率以上であるか否かの情報を含んでいれば、足りる。たとえば70%または80%などの充電率が達成されたことを充電状態検出部16によって検出することができれば、これに基づいて、総合判定部分が充電率100%が達成される時刻までの時間を予測したり、充電率100%が達成されるまでの充電に必要となる電気量を算出したりすることも可能となる。予め定める充電率は、零%以上100%以下の範囲内で、少なくとも1つ定められ、複数の充電率が定められる構成としてもよい。
【0029】
満充電判定装置10は、開放電圧検出部17と、開放電圧判定部18と、電圧変化測定部19と、電圧速度判定部20とをさらに含んで構成される。開放電圧検出部17は、二次電池12の開放電圧を検出する。開放電圧判定部18は、開放電圧検出部17による開放電圧の検出結果が、予め定める設定電圧以上であるか否かを判定する。電圧変化測定部19は、二次電池12に対して定電流による充電が行われるときの印加電圧の変化速度を測定する。電圧速度判定部20は、電圧変化測定部19による変化速度の測定結果が、予め定める設定速度以上であるか否かを判定する。
【0030】
充電状態検出部16は、内圧判定部分21を含み、内圧判定部分21は、内圧検出部13による内圧の検出結果が、予め定める条件を満たすか否かを判定する。充電状態検出部16では、(a)開放電圧検出部17による開放電圧の検出結果が、設定電圧以上であると判定され、(b)電圧変化測定部19による変化速度の測定結果が、設定速度以上であると判定され、かつ(c−1)内圧検出部13による内圧の検出結果が、前記予め定める条件を満たすと判定されたときに、満充電であると判定する。具体的には、第1実施形態において内圧判定部分21は、内圧検出部13による内圧の検出結果が、予め定める設定内圧以上であるか否かを判定する。充電状態検出部16では、(a)開放電圧の検出結果が設定電圧以上で、(b)変化速度の測定結果が設定速度以上であり、かつ(c−2)内圧の検出結果が設定内圧以上であると判定されたときに、満充電であると判定する。
【0031】
本発明の第1実施形態に係る満充電判定装置10が、判定の対象とする二次電池12は、たとえば電力を駆動力として走行する電気バスなどに搭載される。二次電池12は、満充電のときにおよそ400Vの出力電圧を示す。他の実施形態において電気バスは、ガソリンを燃料とするエンジンを併用してもよいけれども、第1実施形態において電気バスは、二次電池12が供給する電力のみで走行可能である。二次電池12の容量は、電気バスが3時間以上または4時間以上、走行可能な電気量を蓄積可能に設定される。
【0032】
二次電池12は、複数のセル22を含んで構成され、各セル22は、ニッケルおよび水素の反応を利用する。各セル22の起電力は1.2Vで、およそ330個のセル22が直列的に接続されることで、およそ400Vの出力電圧を達成する。複数のセル22は、放熱板23によって仕切られている。各セル22の正極は、水酸化ニッケル(Ni(OH)/NiOOH)を含み、負極は水素吸蔵合金(M/MH)を含み、電解液は、濃水酸化カリウム水溶液(KOHaq.)を含む。各電極での反応は、次の式(1)および式(2)で表される。
正極:NiOOH+HO+e⇔Ni(OH)+OH …(1)
負極:MH+OH⇔M+HO+e …(2)
【0033】
図4は、本発明の第1実施形態において満充電判定の対象となる二次電池12の外観を表す斜視図である。図5は、本発明の第1実施形態において満充電判定の対象となる二次電池12の構成を表す斜視図である。二次電池12は、電気バスにおいて、普通のバスではエンジンが搭載される場所に搭載される。二次電池12は、およそ直方体の形状の筐体26を含み、筐体26と配線とを除く残余の部品は、筐体26内に収容されている。筐体26には、外部との接続を配線によって行うときに、配線が通る貫通孔、また二次電池12に含まれる冷却ファンによって外気を取入れるための貫通孔が形成される。
【0034】
二次電池12は、筐体26内に複数のモジュール24を含み、各モジュール24は、複数のセル22と容器とを有する。第1実施形態では、30個のセル22が、1つのモジュール24に含まれ、1つの容器内に収容される。各モジュール24において容器は、密閉され、容器の内圧の変化による変形は防止されている。各モジュール24には、冷却ファン25なども取付けられている。二次電池12は、温度計27と、圧力計28とを含む。温度計27と圧力計28とは、1つの二次電池12に対して1つ以上含まれる。たとえば温度計27および圧力計28のうち少なくともいずれか一方は、複数設けられ、複数のモジュール24に配置されてもよい。
【0035】
二次電池12は、充電率が零%である状態と、100%である状態とが、それぞれ予め定められる。充電率が100%の状態、すなわち満充電の状態は、各二次電池12において、電極の消耗が生じない範囲において最もエネルギを多く蓄積できる状態として定められる。充電率は、SOC(state of charge)と称されることもあり、充電率が零%の状態では、起電力を生じない。二次電池12に充電を行うと、充電される電気量、すなわち充電回路を移動した電荷の量に比例して充電率は上昇する。定電流で充電するので、充電率は、およそ充電回路に電圧が印加された時間に比例して上昇する。充電状態を精確に検出し、満充電を精確に判定できる範囲内で、充電を行う時間は、短い方が好ましい。
【0036】
充電率が零%の状態で充電を開始して、1時間で充電率100%、すなわち満充電を達成する充電速度の容量に対する割合を、1Cとする。仮に30分で満充電を達成する充電速度の割合は、2Cとなる。第1実施形態の二次電池12に対しては、たとえば250Aの定電流で充電し、およそ2Cの充電速度の割合で充電する。実際の充電は、充電率が零%よりも大きい状態で開始される場合が多いので、2Cの充電速度の割合で充電すると、20分〜25分で満充電が達成されることが多い。2Cの充電速度の割合は、いわゆる急速充電に相当する。
【0037】
二次電池12には、予め適正な充電速度、すなわち充電電流が設定される。二次電池12の容量は、各二次電池12において一定しているので、単位「C」で定められることと、単位「A」(アンペア)で定められることとは、技術的に同じ意味である。これらの速度を「適正充電電流」と称する。各二次電池12に予め定められる、適正充電電流は、電流設定部32によって、満充電判定装置10に入力され設定される。二次電池12に対する充電電流が、適正充電電流以下の電流であれば、二次電池12に不都合が生じることはないけれども、充電電流が小さければ小さいほど充電開始から満充電が達成されるまでの時間が長くなる。
【0038】
充電のために印加している電圧を「印加電圧」と称する。充電が行われるときには、電流が発生するので、印加電圧は、二次電池12の内部抵抗に応じて、開放電圧よりも大きな値となる。二次電池12の内部抵抗は、たとえば温度などの条件によって変化するので、開放電圧を印加電圧から算出すると、算出される開放電圧に誤差が含まれる。したがって第1実施形態において開放電圧は、充電を停止し、電流が停止した状態において測定される。
【0039】
第1実施形態では、充電のための電圧を数十秒〜百数十秒の間の予め定める時間、印加し、その直後数秒間、電圧の印加を停止し、二次電池12が有する開放電圧を測定する。二次電圧が示す電圧は、常時、電圧計33によって測定を続ける構成であってもよいけれども、いずれの時刻において示される二次電池12の電圧が、印加電圧であるか、開放電圧であるかは把握する必要がある。第1実施形態では、印加電圧は、電圧変化測定部19が取得し、その時間変化を測定する。開放電圧は、開放電圧検出部17が検出する。
【0040】
第1実施形態において満充電判定の対象となる二次電池12は、多数のセル22を含み、また発生する水素を水素吸蔵合金で吸蔵する。この二次電池12は、250Aという大きな電流で充電が行われる。したがって、たとえば電動ドリル、デジタルカメラなどに使用される二次電池12の充電における物質の移動に比較して、単位時間当たりに移動する物質の物質量は、大きい。このような大形の二次電池12の急速充電においては、数秒間の充電停止時間を設定しても、数秒間のうちに安定した電圧が示されることはない。充電停止後、充分に時間が経過した状態における、安定した理想的な電圧を、以下「理想開放電圧」と称する。
【0041】
印加電圧と理想開放電圧との差異を100%とすれば、数秒間の充電停止時間のうちには、50%から90%の割合で、理想開放電圧に近づく。印加電圧が印加されている状態から、充電を停止すると、充電を停止した直後は急速に電圧が低下し、理想開放電圧に近づくけれども、充電停止後の時間が経過すればするほど、理想開放電圧に近づく速度は遅くなる。したがって、3分〜6分経過しても、完全には理想開放電圧に一致していない状態が続く。
【0042】
第1実施形態における満充電判定方法において、開放電圧を1つの基準として利用するけれども、これは充電のための電圧の印加および電流を停止させてから、数秒後の状態における電圧を「開放電圧」として利用する。充電開始から満充電を達成するまでの時間は、短く設定したいという要望があるので、理想開放電圧を精確に測定することよりも、充電を停止している時間を短く設定することの方が、技術的な重要性を有する。
【0043】
また開放電圧は、充電率が100%に近づけば近づくほど、充電率の変化に対する開放電圧の上昇割合は、小さくなる。したがって、従来技術のように開放電圧だけで、満充電を判定すると、急速に充電し、かつ満充電の判定に係る精度を高く設定することはできないという問題点がある。
【0044】
また充電率が上昇するに伴って二次電池12の温度は上昇するけれども、温度上昇の速度は、環境温度に依存する。また温度上昇の速度は、充電を行う前の二次電池12の初期の温度にも依存するので、温度に関して閾値を設定しても、温度についての閾値を用いて満充電を高い精度で判定することができない、という問題点がある。また充電率が満充電に近づいても、温度変化の速度はおよそ一定しており、温度変化の速度を計測したとしても、温度上昇の速度から精確に満充電を判定することはできない、という問題点がある。
【0045】
図1に示すように、第1実施形態に係る二次電池12の満充電判定方法は、内圧検出工程と、充電状態検出工程とを含んで構成される。内圧検出工程では、前記容器の内圧を検出する。充電状態検出工程では、内圧検出工程における内圧の検出結果に基づいて、二次電池12の充電状態を検出する。
【0046】
二次電池12の満充電判定方法はさらに、開放電圧検出工程と、開放電圧判定工程と、電圧変化測定工程と、電圧速度判定工程とを含んで構成される。開放電圧検出工程では、二次電池12の開放電圧を検出する。開放電圧判定工程では、開放電圧検出工程における開放電圧の検出結果が、予め定める設定電圧以上であるか否かを判定する。電圧変化測定工程では、二次電池12に対して定電流による充電が行われるときの印加電圧の変化速度を測定する。電圧速度判定工程では、電圧変化測定工程における変化速度の判定結果が、予め定める変化速度以上であるか否かを判定する。
【0047】
充電状態検出工程は、内圧判定段階を含み、内圧判定段階では、内圧検出工程における検出結果が、予め定める設定内圧以上であるか否かを判定する。また充電状態検出工程では、(a)開放電圧検出工程における開放電圧の検出結果が、設定電圧以上であると判定され、(b)電圧変化測定工程における変化速度の測定結果が、設定速度以上であると判定され、かつ(c)内圧検出工程における内圧の検出結果が、前記設定内圧以上であると判定されたときに、満充電であると判定する。二次電池12の充電制御方法は、前記二次電池12の満充電判定方法を利用して二次電池12の充電を制御する。
【0048】
満充電判定装置10は、図2および図3に示すように、内圧検出部13と、充電状態検出部16と、開放電圧検出部17と、開放電圧判定部18と、電圧変化測定部19と、補正部35と、温度検出部36とを含む。これらは、満充電判定装置10において、入出力および演算を行う。第1実施形態において、これらの構成要素は、1つの中央処理装置(central processing unit, 略称「CPU」)によって実現される。ただしこれらの構成要素は、他の実施形態においては複数のCPU38によって実現されてもよく、また構成要素毎に異なる部品、たとえばディスクリート部品群によって実現されてもよい。
【0049】
満充電判定装置10は、記憶部39と、測定用タイマー42とをさらに含んで構成される。内圧検出部13は、二次電池12の内圧を検出する。第1実施形態において内圧検出部13は、圧力計28を含まず、圧力計28から出力される測定結果を取得する。内圧検出部13によるこの場合の「検出」は、「出力される測定結果情報を受信することによって取得すること」を意味する。他の実施形態において内圧検出部13は、圧力計28を含んでいてもよい。その場合の内圧検出部13による「検出」は、「測定」を含み、「測定によって測定結果情報を取得すること」を意味する。第1実施形態における開放電圧検出部17は、電圧計33を含まずに構成されるけれども、他の実施形態においては、内圧検出部13が圧力計28を含んでもよいのと同様に、開放電圧検出部17は、電圧計33を含んで構成されてもよい。
【0050】
内圧検出部13は、検出用タイマー14を含み、内圧の値のみならず、内圧の単位時間当たりの変化量を測定することが可能に構成されている。内圧は、充電率の上昇に伴って上昇するので、検出用タイマー14を含むことによって、内圧の上昇速度を満充電の判定に利用することも可能となる。ただし第1実施形態においては、内圧の値を満充電の判定に利用するので、内圧の上昇速度を満充電判定に利用しない構成が可能である。
【0051】
図6は、本発明の第1実施形態において、充電率と充電率に応じて変化する二次電池12の物理量との関係を表す図である。図6において横軸は充電率を表しており、図6の左側に示す縦軸は、開放電圧を表している。また右に離れて示す縦軸の目盛は、内圧を表しており、充電率の最大値の目盛から縦に延びて記載される縦軸の目盛は、二次電池12の温度を表している。図6に示す3つの曲線のうち、最も下段に示しているのは、充電率に対する内圧の変化P1である。また中段に示しているのは、二次電池12の温度変化P2である。この温度変化は、環境温度が25℃であるときの充電に伴う温度変化であり、充電が進行するにつれて次第に上昇する温度の様子を表している。最も上段に示しているのは、開放電圧P3である。
【0052】
充電状態検出部16は、内圧判定部分21と、充電状態判定部分44と、総合判定部分46とを含む。内圧検出部13による内圧の検出結果は、内圧判定部分21によって内圧に基づく充電状態の判定に用いられる。内圧は、充電率が小さい範囲と大きい範囲とでは、充電率に対する変化の割合が異なる。つまり内圧は、充電率が100%未満の特定の充電率を境界として、内圧の充電率に対する依存性が変化する。この特定の充電率を、図6において依存性変化点P4として示す。
【0053】
図6に示す二次電池12では、内圧の変化は、依存性変化点以下の範囲では充電率に対して線形的に依存し、依存性変化点を超える範囲で、充電率に対して非線形で依存する。第1実施形態では、依存性変化点は、充電率に対する内圧の変化を表す曲線において微分不可能な点として現れる。依存性変化点は、充電率が100%未満の範囲で存在する。これを利用することによって、充電状態を検出することができる。
【0054】
内圧判定部分21は、充電率に対する内圧の変化の様子と、依存性変化点とを記憶している。二次電池12において、形状、大きさ、セル22の数、用いられる材質などの種類が同一であれば、充電率に対する依存性は、同一の曲線となる。また内圧判定部分21は、予め定める設定内圧を記憶している。これによって内圧に基づいて充電状態を判定することが可能となる。
【0055】
二次電池12を充電するときには、定電流出力を行う充電用電源48によって充電を行う。この定電流出力電源48は、印加電圧を制御して、出力される電流を予め定める一定の電流に調整する機能を有する。二次電池12と定電流出力電源48との間には、電流調整部49が介在する。充電制御装置11は、満充電判定装置10と、電流調整部49と、電圧計33と、電流設定部32とを含んで構成される。電流調整部49は、定電流出力電源48に接続され、定電流出力電源48から一定に出力される電流の電流値を制御する。電流調整部49は、定電流出力電源48からの出力電流値を零V以上数百V以下の範囲で設定可能である。この電流調整部49は、たとえばCPU38の動作によって制御可能であって、定電流電源48による二次電池12に対する印加のオン状態とオフ状態とを切換える機能をも有する。
【0056】
電流調整部49は、充電状態検出部16に接続され、充電状態検出部16によって制御される。ただし他の実施形態では、電流調整部49は、開放電圧検出部17に接続され、開放電圧検出部17に制御される構成とすることも可能である。開放電圧検出部17は、直接または充電状態検出部16を介して充電に関する印加状態がオンであるかオフであるかを検出し、電圧計33によって測定された電圧が開放電圧であるか否かを検知する。この検知結果と電圧計33による測定結果とに基づいて、開放電圧を検出する。
【0057】
開放電圧検出部17による開放電圧の検出結果は、開放電圧判定部18によって開放電圧が予め定める設定電圧以上であるか否かの判定に利用される。この判定結果は、充電状態判定部分44によって充電状態の判定に利用される。設定電圧は、開放電圧判定部18に接続される記憶部39に予め記憶されていてもよいけれども、第1実施形態では、開放電圧判定部18が、予め定める設定電圧を記憶している。
【0058】
電流調整部49は、制御用タイマー51を含んで構成される。他の実施形態では、直接またはCPU38を介して制御用タイマー51に接続されてもよい。第1実施形態において制御用タイマー51は、時間を秒以下の単位で計測する。たとえば水晶発振子、電気的な共振回路などを用いてもよい。これによって電流調整部49は、前述のように数十秒〜百数十秒の間の予め定める時間の印加状態と、数秒間の印加停止状態とを繰り返すことが可能となる。印加状態、すなわち印加のオン状態と、印加停止状態、すなわち印加のオフ状態とのそれぞれの時間は、たとえばCPU38などによって変更して設定することも可能である。
【0059】
電圧変化測定部19は、電圧計33と測定用タイマー42とに接続され、電圧計33による電圧の測定結果が印加状態におけるものであるか否かと、印加状態における電圧の測定結果の時間依存性とを測定する。電圧変化測定部19は、電流調整部49に直接接続されていてもよい。充電電圧、すなわち印加状態における二次電池12に対する印加電圧は、充電率の上昇に伴って増加する。電圧変化測定部19は、この増加の割合を、時間経過に対する割合、すなわち速度として測定する。この測定結果は、電圧速度判定部20において利用される。またこの電圧速度判定部20による判定結果は、充電状態判定部分44において利用される。
【0060】
電圧速度判定部20は、電圧の変化速度に関して予め定める設定速度を記憶している。これによって、印加電圧の変化速度に関する電圧変化測定部19による測定結果について、その大小を判定することができる。他の実施形態においては、開放電圧検出部17および電圧変化測定部19は、それぞれ電圧計33を内在していてもよい。
【0061】
第1実施形態において充電状態判定部分44は、内圧判定部分21による判定結果と、開放電圧判定部18による判定結果と、電圧速度判定部20による判定結果とに基づいて、充電状態を判定する。充電状態判定部分44による充電状態の判定結果は、総合判定部分46によって、二次電池12が満充電であるか否かの総合判定に利用される。
【0062】
図3には、充電制御装置11に含まれる電流設定部32と、満充電判定装置10内のCPU38に含まれる補正部35と、CPU38とともに満充電判定装置10に含まれる記憶部39とを図示しているけれども、第1実施形態においては、これらを使用せず満充電判定方法を実施することが可能である。
【0063】
満充電判定方法では、本処理に先立って、二次電池12と充電用電源48とを、充電制御装置11を介して接続する。本処理開始後、図1に示すステップa1の開放電圧検出工程に移行し、開放電圧の検出を行う。これは、開放電圧検出部17によって行う。第1実施形態では、電圧計33は、開放電圧検出部17とは別に設けられるので、開放電圧検出工程は、電圧計33と開放電圧検出部17とによって行われる。次にステップa2の開放電圧判定工程に移行し、開放電圧検出部17による検出結果が予め定める設定電圧以上であるか否かの判定を行う。これは、開放電圧判定部18が行う。
【0064】
次にステップa3の印加開始工程に移行し、電圧の印加を開始することによって、定電流による充電を開始する。電圧の印加の開始は、電流調整部49によって行われる。次にステップa4の電圧変化測定工程に移行し、定電流による充電が行われているときの電圧の変化速度の測定を開始する。これは、電圧変化測定部19によって行われる。次にステップa5の電圧速度判定工程に移行し、電圧変化測定部19による電圧の変化速度が予め定める設定速度以上であるか否かの判定を行う。これは、電圧速度判定部20が行う。
【0065】
次にステップa6の内圧検出工程に移行し、二次電池12の内圧の検出を行う。これは、内圧検出部13によって行われる。第1実施形態において圧力計28は、内圧検出部13とは別に設けられるので、内圧検出工程は、圧力計28と内圧検出部13とによって行われる。次に充電状態検出工程S1に移行する。充電状態検出工程S1は、内圧判定段階と、充電状態判定段階と、総合判定段階とを含む。内圧検出工程の後、ステップa7の内圧判定段階に移行し、内圧検出部13によって検出された内圧が、設定内圧以上であるか否かの判定を行う。この判定は、内圧判定部分21によって行われる。
【0066】
次に、ステップa8の充電状態判定段階に移行し、充電状態の判定を行う。これは、充電率が零%から100%までのすべての範囲内で、たとえば1%ずつの判定を行う必要はない。たとえば、内圧判定部分21による判定結果と、開放電圧判定部18による判定結果と、電圧変化測定部19の測定結果とに基づいて、たとえば、依存性変化点を精確に検出し、これを二次電池12に応じて定められる依存性変化点に応じた充電率として、充電率を求め、これによって充電状態を判定てもよい。充電状態判定段階は、充電状態判定部分44によって行われる。
【0067】
次にステップa9の総合判定段階に移行し、充電状態判定部分44の判定結果に基づいて、二次電池12が満充電であるか否かを判定する。これは、総合判定部分46が行う。その後、満充電判定方法は、終了する。満充電判定方法において、開放電圧検出工程は、開放電圧判定工程よりも前に行われる必要がある。印加電圧開始工程は、電圧変化測定工程よりも前に行われる必要があり、電圧変化測定工程は、電圧速度判定工程よりも前に行われる必要がある。内圧検出工程は、内圧判定段階よりも前に行われる必要がある。
【0068】
充電状態検出工程内において、内圧判定段階と、充電状態判定段階と、総合判定段階とは、この順序で行われる。ただし他の実施形態において、開放電圧検出工程と、印加開始工程と、内圧検出工程との順序は、任意に変更することが可能である。たとえば印加開始工程を開放電圧検出工程に先立って行った場合には、開放電圧検出工程において、電流調整部49によって一時的に印加を停止させて、電流が停止した状態で、開放電圧の検出を行う。また開放電圧判定工程と、電圧速度判定工程と、内圧判定段階との順序については、任意に変更することが可能である。
【0069】
充電制御方法は、満充電判定方法と、充電電流停止工程とを含んで構成される。総合判定部分46による総合判定の結果は、充電電流停止工程において、電流調整部49の制御に用いられる。電流調整部49の制御は、充電状態検出部16によって行われる。したがって、充電状態検出部16は、電流調整部49を制御することによって、充電電流を停止させる充電電流停止部として機能する。総合判定部分46は、充電率が100%であるときに、満充電であると判定し、充電状態検出部16は、電流調整部49を制御することによって、定電流出力電源からの出力電流を零Vにさせる。これによって、二次電池12に対する電圧の印加は停止され、二次電池12の充電が停止される。その後、充電制御方法は、終了する。ただし他の実施形態では、たとえば充電率が95%以上であることをもって満充電であると判定してもよい。
【0070】
充電状態検出部16は、充電率が100%以下の範囲において、予め定める少なくとも1つの充電率が達成されたことを検出できれば、足りる。たとえば70%または80%などの充電率が達成されたことを充電状態判定部分44によって判定することができれば、これに基づいて、総合判定部分が充電率100%が達成される時刻を予測し、その時刻になったときに満充電と判定する構成とすることも可能である。
【0071】
第1実施形態によれば、二次電池12は、密閉された容器を有し、容器内における気体の反応を利用して充放電する。内圧検出工程では、前記容器の内圧を検出する。充電状態検出工程では、内圧検出工程における内圧の検出結果に基づいて、二次電池12の充電状態を検出する。
【0072】
これによって、容器内における気体の物質量の増減に関する情報を得ることができ、これに基づいて、充電状態を検出することができる。したがって、従来技術に比べて充電状態を精確に検出することができる。気体の物質量は、密閉された容器内において充電に関する化学反応の結果として変化する。したがって、内圧を検出することによって、充電に関する化学反応の進行の程度について、情報を得ることができ、これを充電状態の検出に反映することができる。これによって、従来技術に比べて、高い精度で満充電を判定することができる。
【0073】
また第1実施形態によれば、開放電圧判定工程では、開放電圧検出工程における開放電圧の検出結果が、予め定める設定電圧以上であるか否かを判定する。電圧変化測定工程では、二次電池12に対して定電流による充電が行われるときの印加電圧の変化速度を測定する。電圧速度判定工程では、電圧変化測定工程における変化速度の判定結果が、予め定める変化速度以上であるか否かを判定する。
【0074】
充電状態検出工程は、内圧判定段階を含み、内圧判定段階では、内圧検出工程における検出結果が、予め定める条件を満たすか否かを判定する。また充電状態検出工程では、(a)開放電圧検出工程における開放電圧の検出結果が、設定電圧以上であると判定され、(b)電圧変化測定工程における変化速度の測定結果が、設定速度以上であると判定され、かつ(c)内圧検出工程における内圧の検出結果が、前記予め定める条件を満たすと判定されたときに、満充電であると判定する。
【0075】
これによって、二次電池12の満充電を、開放電圧と、印加電圧の変化速度と、二次電池12の容器の内圧とに基づいて判定することができる。したがって、従来技術に比べて、満充電の判定を、高い精度で行うことができる。
【0076】
また第1実施形態によれば、前記予め定める条件は、内圧検出工程における内圧の検出結果が、予め定める設定内圧以上であるという条件である。これによって、複雑な計算をすることなく、満充電の判定を行うことができる。内圧は、充電率の上昇に伴って、増加および減少の両方が生じることはなく、当然に増加および減少が繰返されたりすることはない。内圧は、充電率の上昇に伴って上昇するので、充電状態の判定に有効に利用することができる。
【0077】
また第1実施形態によれば、充電制御方法は、満充電判定方法を利用して二次電池12の充電を制御する。これによって、精確に満充電を判定することができるので、精確に満充電まで充電することと、過充電を防止することとを両立することができる。
【0078】
このように過充電を防止することによって、電極の劣化を防止することができる。これによって、二次電池12の性能を長く維持することが可能となる。二次電池12の性能が高い場合であっても、過充電によって電極が劣化すると、二次電池12の性能は低下する。電極の劣化を防ぐことによって、二次電池12に対する充放電を多く繰返しても、二次電池12の性能を高く維持することができるので、二次電池12の修理または交換の頻度を抑制することができる。
【0079】
また第1実施形態によれば、内圧の検出結果を満充電判定に利用することによって、複雑な数式に基づく計算を回避することができる。したがって、計算コストを下げ、簡単な方法によって、正確な満充電判定を行うことができる。
【0080】
第1実施形態によるこれらの効果は、満充電判定方法が各工程を含むことによる効果でもあり、また満充電判定方法が、第1実施形態における満充電判定装置10を使用することによる効果であるとも言える。また充電制御方法が、満充電判定方法および充電状態切換工程を含むことによるこれらの効果は、充電制御方法が、充電制御装置11を使用することによる効果であるとも言える。
【0081】
(第2実施形態)
図7は、本発明の第2実施形態に係る満充電判定方法の工程を表すフローチャートである。第2実施形態に係る満充電判定方法は、第1実施形態に係る満充電判定方法に類似し、第2実施形態に係る充電制御方法は、第1実施形態に係る充電制御方法に類似する。以下、第1実施形態に対する第2実施形態の相違点を中心に説明する。
【0082】
満充電判定装置10は、設定電圧を補正する補正部35を含んで構成される。補正部35は、開放電圧検出部17による開放電圧の検出結果を参照値として、この参照値に応じて定められる補正値によって、設定電圧を補正する。満充電判定装置10は、二次電池12の温度を検出する温度検出部36と、設定電圧を補正する補正部35とを含んで構成される。補正部35は、温度検出部36による温度の検出結果を参照値として、この参照値に応じて定められる補正値によって、設定電圧を補正する。
【0083】
満充電判定装置10は、適正電流取得部と、設定電圧を補正する補正部35とを含んで構成される。適正電流取得部は、二次電池12において適正な充電電流として予め定められる適正充電電流を取得する。補正部35は、適正電流取得部による適正充電電流の取得結果を参照値として、この参照値に応じて定められる補正値によって、設定電圧を補正する。補正部35は、複数の参照値と各参照値に応じて定められる補正値とを互いに対応付けられる補正情報を用いて、設定電圧を補正する。補正部35は、中間値と、予め定める数式とを用いて、設定電圧を補正する。中間値は、補正情報のうち大小関係において隣合う2つの参照値の間の中間値である。予め定める数式は、中間値に応じた補正値を補間によって求めるための数式である。
【0084】
満充電判定方法は、設定電圧を補正する補正工程を含んで構成される。補正工程では、開放電圧検出工程における開放電圧の検出結果を参照値として、この参照値に応じて定められる補正値によって、設定電圧を補正する。満充電判定方法は、二次電池12の温度を検出する温度検出工程と、設定電圧を補正する補正工程とを含んで構成される。補正工程では、温度検出工程における温度の検出結果を参照値として、この参照値に応じて定められる補正値によって、設定電圧を補正する。特に開放電圧の検出結果を参照値として補正する場合の補正工程を、電圧基準補正工程とも称する。また温度の検出結果を参照値として補正する場合の補正工程を、温度基準補正工程とも称する。
【0085】
満充電判定方法は、適正電流取得工程と、設定電圧を補正する補正工程とを含んで構成される。適正電流取得工程では、適正充電電流を取得する。適正充電電流は、二次電池12において適正な充電電流として予め定められる。補正工程では、適正電流取得工程における適正充電電流の取得結果を参照値として、この参照値に応じて定められる補正値によって、設定電圧を補正する。補正工程では、補正情報を用いて、設定電圧を補正する。補正情報は、複数の参照値と各参照値に応じて定められる補正値とを表形式で互いに対応付ける。補正工程では、中間値と数式とを用いて、設定電圧を補正する。特に適正電流の取得結果を参照値として補正する場合の補正工程を、設定基準補正工程とも称する。
【0086】
第2実施形態における満充電判定装置10の構成を図示すると、図3と同様の図となる。補正部35は、電流設定部32に接続され、電流設定部32によって設定される。これによって補正部35は、二次電池12の種別についての情報を取得する。二次電池12の種別についての情報は、適正充電電流を含み、たとえば充電容量、使用が許容される適正な環境温度範囲などの情報を、さらに含んでいてもよい。
【0087】
電流設定部32は、人手によって入力を行うための入力部を備え、入力部の操作によって適正充電電流を含む二次電池12の種別について、情報の入力が行われる。第2実施形態において、電流設定部32から入力された適正充電電流を含む二次電池12の種別についての情報は、補正部35による設定電圧の補正に用いられる。電流設定部32による適正充電電流の値の入力は、満充電判定装置10および充電制御装置11の操作者による操作によって入力される。一旦入力された適正充電電流の値は、操作者による電流設定部32の操作によって設定変更されるまで補正部に記憶される。これによって、二次電池12の充電を開始する度に設定入力が必要となることを回避することができる。
【0088】
温度検出部36は、二次電池12の温度を検出する。温度検出部36は、温度計27を含んでいてもよいけれども、本実施形態において温度計27は、二次電池12の内部に予め含まれて設けられる。二次電池12内に設けられる温度計27が複数の場合には、温度検出部36は、複数の温度計27による測定結果の平均値を、二次電池12の温度として取得する。温度検出部36による温度の検出結果は、補正部35において、設定電圧の補正に用いられる。また補正部35は、開放電圧検出部17による開放電圧の検出結果を取得する。開放電圧の検出結果も、設定電圧の補正に用いられる。
【0089】
第2実施形態において設定電圧は、開放電圧判定部18のみならず、記憶部39にも記憶され、記憶部39における設定電圧についての情報は、書換え可能に記憶されている。充電状態検出部16において開放電圧の情報が利用されるときには、第2実施形態では、記憶部39に記憶された情報を優先して用いる。
【0090】
補正部35は、電流設定部32から取得した適性充電電流と、温度検出部36で検出された温度と、開放電圧検出部17で検出された開放電圧に応じて設定電圧を補正する。検出された開放電圧を参照値として設定電圧を補正するときには、たとえば以下の表1を用いる。
【0091】
【表1】

【0092】
検出された温度を参照値として設定電圧を補正するときには、たとえば以下の表2を用いる。
【0093】
【表2】

【0094】
取得された適正充電電流を参照値として設定電圧を補正するときには、たとえば以下の表3を用いる。
【0095】
【表3】

【0096】
これら複数の参照値と各参照値に応じて定められる補正値とを表形式で互いに対応付ける情報を、「補正情報」と称する。第2実施形態において補正情報は、表形式で表されたこれらの情報のうちの一部を指す場合も、または全部を指す場合もある。
【0097】
補正部35は、記憶部39に記憶される補正前の基準となる設定電圧Vom(V)に対し、開放電圧を参照値としたときの補正値V1と、温度を参照値としたときの補正値V2と、適正充電電流を参照値としたときの補正値V3とを加算することによって、補正後の設定電圧Vofを算出し、記憶部39に記憶される設定電圧Vomを補正後の設定電圧Vofで置き換える。CPU38において実行されるプログラムにおいては、記憶部39において設定電圧Vomが代入されている変数に、補正後の設定電圧Vofを代入することによって、補正が行われる。補正後の設定電圧Vofは、次の式(3)によって表される。
Vof=Vom+V1+V2+V3 …(3)
【0098】
このように、第2実施形態における補正工程では、補正情報を用いて、設定電圧を補正する。補正情報は、複数の参照値と各参照値に応じて定められる補正値とを表形式で互いに対応付ける。これによって、設定電圧の決定において、参照値と補正値とを数式によって対応付ける必要がないので、これらの対応付けに近似を持ち込む必要がない。したがって、従来技術に比べて、高い精度で満充電を判定することができる。
【0099】
図7に示すように、第2実施形態における満充電判定方法は、第1実施形態における満充電判定方法に比べて、適正電流取得工程と、温度検出工程と、補正工程とをさらに含んで構成される。本処理開始後、ステップb1の適正電流取得工程に移行し、補正部35によって適正充電電流の取得が行われる。これは、人手による入力を含む場合があってもよく、第2実施形態では、電流設定部32から過去すでに入力され設定された適正充電電流の値を、補正部35が自動的に取得してもよい。
【0100】
次にステップb2の温度検出工程に移行し、二次電池12の温度についての情報を、温度計27から取得する。充電が進行するにつれて、二次電池12の温度は上昇する場合が多いけれども、補正のために温度検出部36が検出する温度は、充電開始時の一時的な温度についての情報でよい。これは、二次電池12の環境についての情報を含んでおり、その後の二次電池12の温度変化は、充電開始時の温度情報、すなわち環境に関する情報から、推測が可能となる。
【0101】
次にステップb3の開放電圧検出工程に移行する。この工程は、図1におけるステップa1の開放電圧検出工程と同様である。次にステップb4の補正工程に移行し、前述の表に示した参照値と補正値とに基づいて、設定電圧の補正を行う。これは、補正部35によって行われる。次にステップb5の開放電圧判定工程に移行する。第2実施形態における開放電圧判定工程では、開放電圧判定部18は、記憶部39に記憶された、補正後の設定電圧を基準として開放電圧の判定を行う。
【0102】
開放電圧判定部18には、補正部35による補正の基準値とするために、基準となる設定電圧は記憶されている。1つの二次電池12の充電が終了し、再び他の二次電池12の充電を行うときには、開放電圧判定部18は、記憶部39に記憶される設定電圧を初期化し、再度の補正部35による補正が行われる。
【0103】
図7のステップb5の開放電圧判定工程の後には、ステップb6の印加開始工程に移行する。この工程以降の工程は、図1に示したステップa3の印加開始工程以降の工程と同様であり、図7の充電状態検出工程S1も図1の充電状態判別工程S1と同様である。また電流調整部49の制御によって充電を停止する充電制御方法も、印加開始工程以降の工程では、第1実施形態と同様である。第2実施形態において適正電流取得工程、温度検出工程、および開放電圧検出工程の3つの工程は、補正工程よりも前に行う必要があるけれども、3つの工程の順序は、任意に変更することが可能である。
【0104】
補正部35による補正における、これらの参照値は、満充電付近における二次電池12の開放電圧に直接的に影響するということよりも、これらを利用して設定電圧を補正することで、満充電を検出するときの精度を向上させることができるという点で、技術的な重要性を有する。これら3つの項目、すなわち充電開始時の開放電圧、充電開始時の温度、二次電池12に定められる充電電流の項目のうち、いずれか1つのみ、あるいはいずれか2つのみの項目について補正を行う構成とすることも可能である。
【0105】
第2実施形態によれば、補正工程では、開放電圧検出工程における開放電圧の検出結果を参照値として、この参照値に応じて定められる補正値によって、設定電圧を補正する。これによって、満充電の判定に用いる基準を、充電開始時の二次電池12の条件に基づいて補正することができる。たとえば、充電率が30%である場合と、充電率が40%である場合とでは、充電開始時における開放電圧に差異が生じる。開放電圧に基づく補正を行うことによって、このような二次電池12自身の状態に関する条件に基づいて、満充電の判定を修正することが可能となり、充電開始時における二次電池12の充電率が異なる複数の場合にも、高い精度で満充電を判定することができる。
【0106】
また第2実施形態によれば、補正工程では、温度検出工程における温度の検出結果を参照値として、この参照値に応じて定められる補正値によって、設定電圧を補正する。これによって、満充電の判定に用いる基準を、充電開始時における温度条件に基づいて補正することができる。温度条件は、二次電池12が充電されるときの環境の条件を反映するので、二次電池12が置かれる環境に応じて、満充電の判定に用いる基準を補正することができる。したがって、環境の条件が異なる場合にも、従来技術に比べて、高い精度で満充電を判定することができる。
【0107】
また第2実施形態によれば、満充電判定方法は、補正工程では、適正電流取得工程における適正充電電流の取得結果を参照値として、この参照値に応じて定められる補正値によって、設定電圧を補正する。これによって、各二次電池12の種別に応じて満充電を判定することができる。開放電圧のみでは、各二次電池12の充電状態を精確に検出することはできない。開放電圧の、充電率に対する依存性は、二次電池12の種別によって異なる。各二次電池12に定められる充電電流に対応することで、各二次電池12の種別において、その二次電池12の充電率に依存した開放電圧に応じて、満充電を判定することができる。したがって、従来技術に比べて、高い精度で満充電を判定することができる。
【0108】
また第2実施形態では、これら充電開始時の開放電圧、充電開始時の温度、二次電池12に定められる充電電流のすべての項目に基づいて補正する。これによって、充電率などの二次電池12自身の条件、環境についての条件および二次電池12の種別に関する条件を考慮することができるので、さまざまに存在しうる条件の組合せに充分に対応することができる。
【0109】
また第2実施形態では、補正工程では、補正情報を用いて、設定電圧を補正する。補正情報は、複数の参照値と各参照値に応じて定められる補正値とを表形式で互いに対応付ける。これによって、設定電圧の決定において、参照値と補正値とを数式によって対応付ける必要がないので、これらの対応付けに近似を持ち込む必要がない。したがって、従来技術に比べて、計算コストを低減することができ、かつ高い精度で満充電を判定することができる。
【0110】
(第3実施形態)
第3実施形態に係る満充電判定方法は、第2実施形態に係る満充電判定方法に類似し、第3実施形態に係る充電制御方法は、第3実施形態に係る充電制御方法に類似する。以下、第2実施形態に対する第3実施形態の相違点を中心に説明する。
【0111】
第3実施形態における補正工程では、前記表1〜表3における中間値と、前記中間値に応じた補正値を補間によって求めるための数式とを用いて、前記設定電圧を補正することを特徴とする。中間値は、補正情報のうち大小関係において隣合う2つの参照値の間の値のことを意味する。数式は、たとえば参照値を横軸の定義域とし、補正値を縦軸の値域としたときの、これらの関係を表す。具体的には、数式は、中間値とこれに対応する補正値とを座標とする2つの点を通る一次関数で表される。したがって数式が表す関数は、中間値と補正値とを、線形の関係であるものとして表す。仮にこの関数を図示すれば、中間値と補正値とによって表される座標上の点は、前記2つの点を通る直線状に並ぶ。
【0112】
これによって、数式は、大小関係において隣合う2つの点を結ぶ直線として表すことができるので、簡単なものとすることができる。したがって、参照値として用いられる範囲全体の、参照値と補正値との関係を1つの数式で近似する訳ではないので、数式は簡単なものとすることができる。また複数の参照値に関する補正情報を利用するので、大小関係において隣合う2つの参照値および補正値の関係を数式決定に利用できるので、大きな誤差が含まれることを防止することができる。
【0113】
また参照値と補正値との関係に関して、利用できる関係を増大させることができる。第2実施形態における補正情報では、参照値と補正値とが表形式で対応付けられるので、大小関係において隣合う複数の参照値の間には、中間値が生じる。数式を用いることによって、中間値に応じた補正値を求めるので、使用する補正値を、大小関係において隣合う複数の参照値の間の全ての値に対応させることができる。また補正値を補間によって求めるための数式は、大小関係において隣合う2つの参照値の間の中間値に対応すればよいので、全ての参照値と補正値との関係を表す必要がない。したがって、全て補正値を数式で近似して求める場合に比べて、算出した補正値が含む誤差を低減することができる。
【0114】
また第3実施形態によれば、参照値と補正値と前述の数式とを満充電判定に利用することによって、複雑な数式に基づく計算を回避することができる。したがって、計算コストを下げ、簡単な方法によって、正確な満充電判定を行うことができる。
【0115】
また第1〜第3実施形態において達成される効果は、二次電池12の規模が大きくなれば大きくなるほど、顕著な効果となる。規模の大きな二次電池12については、温度計27および圧力計28が備えられている点で、たとえば電動ドリル、デジタルカメラなどに使用される二次電池12とは、明確に区別が可能である。
【0116】
(変形例)
第1〜第3実施形態では、充電率が100%のときに満充電と判定するものとしたけれども、他の実施形態では、充電率が100%未満である状態において、積極的に充電を停止する制御を行ってもよい。これによって、二次電池12にわずかでも過充電が行われる可能性を可及的に低減し、二次電池12の劣化を防止し、二次電池12の寿命を長くすることができる。
【0117】
また二次電池12は、充電率積算部をさらに含んで構成されてもよい。充電率積算部は、充電および放電の両方において、電流の時間変化を積算し、これによって二次電池12における化学反応に関する化学量論および移動電荷量を算出することができる。ただしこれは、充放電が繰返される中で誤差を含む可能性があるので、第1〜第3実施形態に類似する方法によって、充電率積算部における算出結果を校正することが好ましい。
【0118】
満充電判定装置10が充電率積算部を含むことによって、充電状態判定部分44が100%よりも小さい、予め定める充電率を検出する構成としたときに、総合判定部分46が、その予め定める充電率と充電率積算部の積算結果に基づいて、満充電を判定することも可能となる。したがって、充電状態判定部分44が検出する、予め定める充電率の精度が充分に高ければ、この予め定める充電率を100%よりも小さく定めることによる満充電判定の精度の低下を、防止することができる。充電状態判定部分44が検出する、この予め定める充電率は、零%以上100%以下の範囲において複数の充電率の値として定められてもよい。
【0119】
また第1〜第3実施形態において、容器の内圧を測定する圧力計28による測定結果は、その絶対値が大きくなったとき、あるいはその変化が急激であった場合に、その絶対値または変化率に基づいて充電を停止する制御を行ってもよい。これによって、充電に伴う化学反応の速度を制御することができる。
【0120】
第1〜第3実施形態において内圧判定部分21は、内圧検出部13による内圧の検出結果が、予め定める設定内圧以上であるか否かを判定するものとし、充電状態検出部16では、(a)開放電圧の検出結果が設定電圧以上で、(b)変化速度の測定結果が設定速度以上であり、かつ(c−2)内圧の検出結果が設定内圧以上であると判定されたときに、満充電であると判定する。
【0121】
ただし他の実施形態において、内圧判定部分21は、内圧検出部における内圧の検出結果が、単位時間当たりに、予め定める設定上昇速度以上の上昇速度で上昇するか否かを判定してもよい。この場合には、充電状態検出部16では、(a)開放電圧の検出結果が設定電圧以上で、(b)変化速度の測定結果が設定速度以上であり、かつ(c−3)内圧の検出結果が設定上昇速度以上の上昇速度で上昇すると判定されたときに、満充電であると判定する。単位時間は、たとえば1秒〜数十秒のいずれかの時間に設定してもよく、たとえば1分〜数分のいずれかの時間に設定してもよい。
【0122】
これによって、たとえば、温度条件などが異なる場合であっても、精確に充電状態を判定することができる。充電率の上昇に伴う内圧の上昇割合は、充電率に応じて異なり、定電流で充電するときの内圧の上昇速度の、充電率に対する依存性は、たとえば温度条件などの影響をほとんど受けない。したがって、内圧の上昇速度は、充電状態の判定に有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0123】
10 満充電判定装置
11 充電制御装置
12 二次電池
13 内圧検出部
16 充電状態検出部
17 開放電圧検出部
18 開放電圧判定部
19 電圧変化測定部
20 電圧速度判定部
21 内圧判定部分
24 モジュール
27 温度計
28 圧力計
32 電流設定部
33 電圧計
35 補正部
36 温度検出部
39 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉された容器を有し、前記容器内における気体の反応を利用して充放電する二次電池について、前記容器の内圧を検出する内圧検出工程と、
内圧検出工程における内圧の検出結果に基づいて前記二次電池の充電状態を検出する充電状態検出工程とを含むことを特徴とする二次電池の満充電判定方法。
【請求項2】
前記二次電池の開放電圧を検出する開放電圧検出工程と、
前記開放電圧検出工程における開放電圧の検出結果が、予め定める設定電圧以上であるか否かを判定する開放電圧判定工程と、
前記二次電池に対して定電流による充電が行われるときの印加電圧の変化速度を測定する電圧変化測定工程と、
前記電圧変化測定工程における変化速度の測定結果が、予め定める設定速度以上であるか否かを判定する電圧速度判定工程とをさらに含み、
前記充電状態検出工程は、前記内圧検出工程における内圧の検出結果が、予め定める条件を満たすか否かを判定する内圧判定段階を含み、
前記充電状態検出工程では、
(a)前記開放電圧検出工程における開放電圧の検出結果に基づく、開放電圧判定工程における判定結果が、前記設定電圧以上であり、
(b)前記電圧変化測定工程における変化速度の測定結果に基づく、電圧速度判定工程における判定結果が、前記設定速度以上であり、かつ
(c)前記内圧検出工程における内圧の検出結果に基づく、内圧判定段階における判定結果が、前記予め定める条件を満たすとの結果であるときに、満充電であると判定することを特徴とする請求項1に記載の二次電池の満充電判定方法。
【請求項3】
前記予め定める条件は、前記内圧検出工程における内圧の検出結果が、予め定める設定内圧以上であるという条件であることを特徴とする請求項2に記載の二次電池の満充電判定方法。
【請求項4】
前記予め定める条件は、前記内圧検出工程における内圧の検出結果が、単位時間当たりに、予め定める設定上昇速度以上の上昇速度で上昇するという条件であることを特徴とする請求項2に記載の二次電池の満充電判定方法。
【請求項5】
前記設定電圧を補正する電圧基準補正工程を含み、
前記電圧基準補正工程では、前記開放電圧検出工程における開放電圧の検出結果を参照値として、この参照値に応じて定められる補正値によって、前記設定電圧を補正することを特徴とする請求項2〜4のいずれか1つに記載の二次電池の満充電判定方法。
【請求項6】
前記二次電池の温度を検出する温度検出工程と、
前記設定電圧を補正する温度基準補正工程とを含み、
前記温度基準補正工程では、前記温度検出工程における温度の検出結果を参照値として、この参照値に応じて定められる補正値によって、前記設定電圧を補正することを特徴とする請求項2〜5のいずれか1つに記載の二次電池の満充電判定方法。
【請求項7】
二次電池において適正な充電電流として予め定められる適正充電電流を取得する適正電流取得工程と、
前記設定電圧を補正する設定基準補正工程とを含み、
前記設定基準補正工程では、前記適正電流取得工程における適正充電電流の取得結果を参照値として、この参照値に応じて定められる補正値によって、前記設定電圧を補正することを特徴とする請求項2〜6のいずれか1つに記載の二次電池の満充電判定方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1つに記載の二次電池の満充電判定方法を利用して二次電池の充電を制御することを特徴とする二次電池の充電制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−175859(P2011−175859A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−39072(P2010−39072)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(597167748)財団法人新産業創造研究機構 (20)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】