説明

二相冷却剤の生成及びその冷却能力の決定のためのシステム及び方法

本発明は氷スラリーなどの二相冷却剤を生成するシステム及び装置を提供する。また、二相冷却剤を生成する方法、二相冷却剤を用いて温度を下げる、又は特定の低温が望まれる被験体、システム、対象、装置、又は用途において、低温を維持する方法を提供する。また、二相冷却剤の冷却能力を決定する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に冷凍及び冷却の分野に関する。詳しくは、本発明は、二相冷却剤などの冷却剤を生成するシステム及び二相、液体−固体冷却剤などの冷却剤の冷却能力を測定するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
多くの産業がきわめて多様な用途で冷却システムを必要としている。多くの場合、冷却剤化学物質又は冷却機械を用いて所望の用途のために低温の空気又は氷が生成される。種々の冷却システムが提案されているが、産業界では依然として改良された冷却システムが必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、従来の冷却システムを改良することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
ある様態で、本発明は二相冷却剤を生成するシステムを提供する。このシステムは、第一容器、第一容器からの第一流体を受けるように結合されたホモジナイザー、第一容器から前記ホモジナイザーへの第一流体の流れをコントロールするように配置された弁、及びホモジナイザーへ第二流体を放出するように結合された第二容器を含む。第一容器は、第一流体を第一流体の大気圧での凝固点よりも低い温度に維持するように構成され、第一流体が第一容器から放出されたとき実質的に瞬時的に第一流体の凍結を生ずる十分に高い圧力レベルに加圧される。第二容器は、第二流体を第一流体の大気圧での凝固点よりも低い温度に維持するように構成される。ホモジナイザーは生成された冷却剤の放出のための開口を含む。
【0005】
別の様態で、本発明は二相冷却剤などの冷却剤を生成する方法を提供する。この方法は、加圧された容器から大気圧での凝固点よりも低い温度に冷却された第一流体を、第一流体の大気圧での凍結点より低い温度に冷却されたキャリア流体と共に放出することによって生成される微粒子状の固体を混合することを含む。容器における圧力は、容器から放出されたときに第一流体の実質的に瞬時的な凍結を生ずる十分に高い圧力であることが好ましい。いくつかの様態では、微粒子状の固体は氷である。第一流体又はキャリア流体は水性又は非極性流体であってよい。水性流体は、生理的に適合する緩衝剤であってもよく、又は一つ以上の塩、糖、生体分子、界面活性剤、又は乳化剤を含んでよい。
【0006】
本発明はまた、被験体に低体温状態を誘発する方法を提供する。この方法は、被験体に医薬的に受容される微粒子二相冷却剤をその被験体に低体温状態を誘発するのに十分な量で投与するステップを含む。被験体はどんな動物であってもよいが、好ましくは人間である。低体温状態は組織的であっても、体の一つ以上の特定器官、組織、場所、空洞部分、スペース、又は領域に局所化されたものであってもよい。
【0007】
本発明はさらに、傷みやすい物品を冷却する方法を提供する。この方法は、微粒子二相冷却剤を生成すること及び傷みやすい物品をその冷却剤に曝露することを含む。傷みやすい物品は、食品又は飲料、化学物質、薬品、又は医薬化合物又は組成物、細胞、組織、生体流体、器官などである。
【0008】
本発明はさらに、装置を冷却する方法を提供する。いくつかの好ましい様態で、前記装置は兵器である。この方法は、微粒子二相冷却剤を生成すること及び装置をその冷却剤に曝露することを含む。兵器の例としては銃、大砲、レーザー兵器などがある。
【0009】
部屋を冷却する方法も提供される。そのような方法は、微粒子二相冷却剤を生成すること、空気をその冷却剤に曝露すること、及び冷却された空気を少なくとも一つの部屋全体に循環させることを含む。
【0010】
別の様態で、本発明は二相、固体−液体冷却剤の冷却能力を決定するシステムを提供する。既知熱伝達特性を有する所定長の導管が所定流量での二相、固体−液体冷却剤の流れを受ける。前記導管の内部を流れる冷却剤に熱を伝達するように熱源が配置される。冷却剤への熱伝達及び冷却剤の温度を冷却剤が導管内部を通って移する距離の関数として測定するために少なくとも一つの熱流束センサと少なくとも一つの温度センサが導管に配置される。温度センサと熱流束センサに結合されたエレクトロニクスが導管で測定された冷却剤への熱伝達と冷却剤温度の変化を用いて冷却剤の冷却能力を計算する。
【0011】
別の様態で、本発明は二相、固体−液体冷却剤における固体空隙率及び固体粒子サイズを検出するシステムを提供する。内部と外部を有し入口と出口を有する既知熱伝達特性を有する所定長の導管が所定の体積流量(volumetric flow rate)での二相、固体−液体冷却剤の流れを受ける。前記導管の内部を流れる冷却剤に熱を伝達するように熱源が配置される。導管は、冷却剤が導管を通って移する距離の関数として冷却剤への熱伝達を測定するように配置された少なくとも一つの熱流束センサを有する。導管はさらに、冷却剤が導管を通って移する距離の関数として導管内部の冷却剤温度を測定するように配置された少なくとも一つの温度センサを有する。測定された熱伝達と温度を用いて、温度センサと熱流束センサに結合されたエレクトロニクスが冷却剤の固体空隙率及び固体粒子サイズを決定する。
【0012】
別の様態で、本発明は二相、固体−液体冷却剤の冷却能力を決定する方法を提供する。内部と外部を有し既知熱伝達特性を有する所定長の導管を通って流れる所定流量の二相、固体−液体冷却剤の流れに熱が伝達される。導管内の冷却剤の流れへの熱伝達と冷却剤温度が導管を通って冷却剤が移する距離の関数として測定される。冷却剤の冷却能力は、測定された熱伝達と冷却剤温度を用いて計算される。
【0013】
別の様態では、二相、固体−液体冷却剤における固体空隙率と固体粒子サイズを検出する方法が提供される。内部と外部を有し既知熱伝達特性を有する所定長の導管を通って流れる所定流量の二相、固体−液体冷却剤に熱が伝達される。導管内の冷却剤の流れへの熱伝達と導管内の冷却剤の温度が、導管を通って冷却剤が移する距離の関数として測定される。測定された熱伝達と冷却剤温度が冷却剤の固体空隙率と固体粒子サイズに関連付けられ、冷却剤の固体空隙率と固体粒子サイズが計算される。
【0014】
本発明はまた、氷スラリーなどの二相冷却剤を生成するシステム及び装置を提供する。ある様態では、氷スラリーを生成するシステムであって、市販されている0.45%, 0.9%, 又は3.0%生理的食塩水などの低濃度の塩水、ドライアイス又は圧縮ガスなどの冷却剤、低濃度塩水の凍結温度をコントロールするように構成された熱交換器、及び塩水が凍結したときに生ずる氷スラリーを加熱するように配置された熱源を含むシステムが提供される。熱交換器は二つの同心管を含み、内部の管は氷スラリーを生成するように構成され、外部の管は内側の管を冷却して低濃度塩水の一部が凍結することを可能にする冷却剤を含むように構成され、その結果、液相と固相(凍結した相)の低濃度塩水から成る氷スラリーが得られる。氷スラリーは、約0.001%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又はそれ以上の固相の氷を含む。熱交換器は、円環ヒートパイプなどのヒートパイプを含むものであってよい。
【0015】
いくつかの様態では、氷スラリーを生成する装置は、少なくとも一つの冷却剤を含み低濃度塩水などの流体の凍結温度をコントロールするように構成された熱交換器を含むハウジング、駆動シャフトであってその駆動シャフトに結合した少なくとも一つのスクレイパー・ブレードを回転させるように構成され、熱交換器の側壁から氷をかき取るように構成される駆動シャフト、熱交換器に結合され駆動シャフトの端にベアリングを保持するように構成された内部ディスク、及び熱交換器からの氷スラリーを受け、高濃度塩水を受るように構成された混合容器、及び混合用のブレードを含む。
【0016】
熱交換器は二つの同心管を含んでよく、内側管は氷スラリーの形成と流れのために構成され、外側管は内側管を冷却して低濃度塩水の一部が凍結することが可能になるように構成され、その結果、液相の塩水と固相の氷から成る低濃度塩水−氷スラリーが得られる。熱交換器は、円環ヒートパイプなどのヒートパイプを含むものであってもよい。低濃度塩水は、0.45%, 0.9%, 又は3.0%生理的食塩水などの市販されている医療用食塩水であってよい。高濃度塩水は、3.0%, 5.0%, 又は7.5%生理的食塩水などの市販されている医療用食塩水であってよい。
【0017】
装置はさらに、ポンプを含むことができる。例えば、装置は、装置の一つ以上の構成要素を介して氷スラリーを輸送するように構成された第一ポンプを含み、熱交換器を通って冷却剤を送るように構成された第二ポンプを含むことができる。ドライアイス、ドライアイス−アルコール・スラリー、圧縮ガス、凝固点降下水、エチレングリコール、又はポリエチレン・グリコールなど、任意の適当な冷却剤を用いることができる。
【0018】
本発明はまた、氷スラリーを生成するためのキット、例えば本明細書に記載され例示されるシステム、装置、及び方法を用いて氷スラリーを生成するためのキットを提供する。いくつかの様態で、このキットは低濃度塩水、少なくとも一つの冷却剤、塩水の凍結温度をコントロールするように構成された熱交換器、及び高濃度塩水を含む。冷却剤はドライアイス、圧縮ガス、などの任意の適当な冷却剤であってよい。低濃度塩水は0.45%, 0.9%, 又は3.0%生理的食塩水などの市販されている医療用食塩水であってよい。高濃度塩水は、3.0%, 5.0%, 又は7.5%生理的食塩水などの市販されている医療用食塩水であってよい。
【0019】
熱交換器は二つの同心管を含んでよく、内側管は氷スラリーの形成と流れのために構成され、外側管は内側管を冷却して低濃度塩水の一部が凍結することが可能になるように構成され、その結果、液相の塩水と固相の氷から成る低濃度塩水−氷スラリーが得られる。熱交換器は、円環ヒートパイプなどのヒートパイプを含むものであってよい。
【0020】
本発明はまた、氷スラリーを生成する方法を提供する。一般に、この方法は、低濃度塩水を少なくとも一つの冷却剤を含みその塩水の凍結温度をコントロールするように構成された熱交換器と接触させることを含む。塩水を熱交換器と接触させると、塩水の一部は熱交換器の内部で凍結し、残りの塩水は液体の状態で維持され氷スラリーを形成する。この方法は、氷スラリーが形成された後、高濃度塩水を氷スラリーと混合する工程を含む。
【0021】
熱交換器は二つの同心管を含んでよく、内側管は氷スラリーの形成と流れのために構成され、外側管は内側管を冷却して低濃度塩水の一部が凍結することが可能になるように構成され、その結果、液相及び凍結した低濃度塩水から成る氷スラリーが得られる。熱交換器は、円環ヒートパイプなどのヒートパイプを含むものであってよい。低濃度塩水は、0.45%, 0.9%, 又は3.0%生理的食塩水などの市販されている医療用食塩水であってよい。高濃度塩水は、3.0%, 5.0%, 又は7.5%生理的食塩水などの市販されている医療用食塩水であってよい。氷スラリーは、約0.001%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%以上の固相の塩水を含んでよい。
【0022】
本発明はまた、被験体に低体温状態を誘発する方法を提供する。この方法は、低濃度の塩水を、少なくとも一つの冷却剤を含み該塩水の凍結温度をコントロールするように構成された熱交換器と接触させ、該塩水の一部が熱交換器内で凍結し残りの塩水が液体状態を維持することによって生成された医薬的に受容される氷スラリーを有効量で被験体に投与すること、及び高濃度の塩水を氷スラリーと混合させることを含む。被験体はどんな動物であってもよいが、好ましくは人間である。低体温状態は、被験体の体全体にわたる組織的であっても、被験体の特定の器官、組織、場所、空洞部分、スペース、又は領域に局所化されたものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】二相冷却剤を生成するシステムの代表的な実施形態を示す概略図である。
【図2】二相、液体−固体冷却剤の固体空隙率と固体粒子サイズを測定するシステムの代表的な実施形態を示す概略ダイアグラムである。
【図3】粒子サイズが熱流束測定に及ぼす影響を示す図式ダイアグラムである。
【図4A】加圧液体からの氷の生成に適合する2ノズル実施形態を示す概略ダイアグラムである。影をつけた部分は、内部での氷形成とノズル出口の閉塞を防ぐために加熱又は非粘着性物質で被膜される表面である。
【図4B】加圧液体からの氷の生成に適合する2ノズル実施形態を示す概略ダイアグラムである。影をつけた部分は、内部での氷形成とノズル出口の閉塞を防ぐために加熱又は非粘着性物質で被膜される表面である。
【図4C】加圧液体からの氷の生成に適合する2ノズル実施形態を示す概略ダイアグラムである。
【図5】凍結を促進するための電気冷凍と異なり相変化を利用する二相冷却剤生成システムのある実施形態を示す概略図である。
【図6A】二相冷却剤生成装置のある実施形態を示す分解図である。
【図6B】二相冷却剤生成装置のある実施形態を示す分解図である。
【図7A】二相冷却剤生成装置の種々の構成要素のためのハウジングの実施形態を示す図である。
【図7B】二相冷却剤生成装置の種々の構成要素のためのハウジングの実施形態を示す図である。
【図8】図6に示された冷却剤生成組立体に使用できる熱交換器の実施形態を示す図である。
【図9】図6に示された冷却剤生成組立体に使用できる駆動シャフトの実施形態を示す図である。
【図10】図6に示された冷却剤生成組立体に使用できるスクレイパー・ブレードの実施形態を示す図である。
【図11A】図6に示された冷却剤生成組立体に使用できる内部ディスクの実施形態を示す図である。
【図11B】図6に示された冷却剤生成組立体に使用できる内部ディスクの実施形態を示す図である。
【図11C】図6に示された冷却剤生成組立体に使用できる内部ディスクの実施形態を示す図である。
【図12A】図6に示された冷却剤生成組立体に使用できる二相冷却材混合ブレードの実施形態を示す図である。
【図12B】図6に示された冷却剤生成組立体に使用できる二相冷却材混合ブレードの実施形態を示す図である。
【図12C】図6に示された冷却剤生成組立体に使用できる二相冷却材混合ブレードの実施形態を示す図である。
【図13】図6に示された冷却剤生成組立体に使用できる混合容器の実施形態を示す図である。
【図14】図6に示された冷却剤生成組立体に使用できる混合容器ハウジングの実施形態を示す図である。
【図15】図6に示された冷却剤生成組立体に使用できる円環ヒートパイプを含む熱交換器の実施形態を示す図である。
【図16】二相、液体−固体冷却剤の固体空隙率と粒子サイズを測定するための、ヒートパイプを含むシステムの代表的な実施形態を示す概略ダイアグラムである。
【図17A】熱交換装置からのスラリー生成によって発生する熱の流れと温度プロファイルを示す図である。
【図17B】熱交換装置からのスラリー生成によって発生する熱の流れと温度プロファイルを示す図である。
【図18A】冷却剤ラインにおける凍結したプラグがスラリー生成システムの動作に及ぼす影響を示している熱の流れと温度プロファイルを示す図である。
【図18B】冷却剤ラインにおける凍結したプラグがスラリー生成システムの動作に及ぼす影響を示している熱の流れと温度プロファイルを示す図である。
【図19A】氷スクレイパー・ブレードの回転速度の変化が氷スラリー生成システムの動作に及ぼす影響を示している熱の流れと温度プロファイルを示す図である。
【図19B】氷スクレイパー・ブレードの回転速度の変化が氷スラリー生成システムの動作に及ぼす影響を示している熱の流れと温度プロファイルを示す図である。
【図19C】氷スクレイパー・ブレードの回転速度の変化が氷スラリー生成システムの動作に及ぼす影響を示している熱の流れと温度プロファイルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明のシステム、方法、及びその他の側面に関して種々の用語がこの明細書と特許請求の範囲の全体にわたって用いられている。それらの用語には、他に明記される場合を除き、当業界における通常の意味に解されるべきである。
【0025】
特許、公開された出願、技術的な論文及び学術論文を含む種々の刊行物が明細書全体にわたって引用されている。引用された各刊行物は、すべての目的でその全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0026】
本発明の諸様態によって、凝固点降下を利用して流体を自発凍結させることができ、それを微粒子状にしてキャリア流体と混合して氷スラリーを形成できることが発見された。さらに、微粒子のサイズをコントロールし微調整して特定用途に役立てることができることが発見された。さらに、得られたスラリーをコントロールされた環境で維持し輸送して、凍結した粒子の望ましくない融解を防ぎ、凝集を防止し、凍った流体成分とキャリア流体の混合を防ぐことができることが発見された。また、市販されている氷スラリー生成装置における氷結晶の形成後に塩を混合することでスラリーがポンプで送りやすくなることが発見された。
【0027】
このように、本発明は、二相冷却剤を生成するシステムを含む冷却システムを提供する。図面は、本発明のシステムの代表的な実施形態を示す。図1に示されたある代表的な様態では、システムは第一容器10を含む。第一容器は第一流体14を容器に導入するための少なくとも一つの開口12を含む。第一流体14は容器10の内部に放出可能に保持される。第一容器10はまた、第一流体14を容器から放出するための少なくとも一つの別の開口16を含む。第一容器10はホモジナイザー18に結合され、第一流体14がホモジナイザーによって受けられるようになっている。選択的に、第一容器10はホモジナイザー18に第一管20によって結合される。
【0028】
いくつかの様態で、システムは第一容器10からホモジナイザー18への第一流体14の流れをコントロールするように配置された弁22を含む。選択的に、弁は容器10,第一管20,又はホモジナイザー18に結合することができる。オプションであるガスケット24は、第二開口16で第一容器10に、第一管20に,弁22に、又はホモジナイザー18に結合することができる。システムの構成要素の結合は完全に流体シール、又は気密シールにはなっていないので、ガスケット24を利用して、結合された構成要素間のシールを形成することができる。
【0029】
弁22はノズルであってよい。噴霧器又はノズルを用いて問題としている流体のミクロン・サイズの液滴を生成することができる。流体は、ノズルから放出されたときに液滴の圧力が大気圧に戻ると液体から固体への相転移を起こすと予期される。
【0030】
図4は、本発明の粒子化された氷の生成を助けるために用いることができる代表的なノズル構造を示す概略ダイアグラムである。図4Aは、多数の開口を有するノズルの断面を示す。図4Bは、単一の開口を有するノズルの断面を示す。図4Cは、単一開口ノズルの上面図を示す。例えば、ノズル44は、複数の小さな開口46が存在して出てゆく流体から細かいミストを形成することができる。ニードルバルブ48を用いてノズルを通る流体の流れを制限して流量をコントロールすることができる。別の例では、ノズル50は単一の開口52しか有しないが、孔を出てゆく液体が相当大きな回転速度を有し、流れに存在する運動エネルギーを劇的に増加させ、それによって細かいミストを形成するような内部形状を有する。ノズル50はまた、ノズルを通る流体の流れをコントロールするニードルバルブ54を含むことができる。
【0031】
ノズルは流体が出てゆく間、ノズルの内側で相変化、例えば凍結、を開始しないような十分に高い圧力を維持することが好ましい。ノズルの内側で流体が固化すると、ノズルの流体が流れるスペース56の詰まり、又は開口の詰まりを引き起こす可能性がある。流体がノズルから出てゆく前に相変化を起こす可能性を小さくするために、開口46を円錐形にして出口58が最小の直径になるようにすることができる。
【0032】
円錐形がノズル内で流体が凍結することを防ぐのに不十分である場合、少なくとも二つの非限定的な戦略選択肢を用いて固化とノズルの詰まりを減らす又はなくすことができる。第一の戦略は、抵抗加熱要素(図示せず)を用いてノズル壁56の近くの流れに小さな熱境界層を作りだすことである。この境界層は凍結せず、出口を通る流れをスムースに連続させることができる。第二の戦略は、ノズルに疎水性コーティングを施して出てゆく流体とノズル壁との間の付着エネルギーを減らすことである。この疎水性コーティングはまた、出てゆく流体中に存在するかもしれない他の疎水性要素を引きつけ、それが出てゆく流体とノズル壁との間の付着エネルギーをさらに減らすことに役立つ可能性がある。
【0033】
図1に示されているように、システムはまた第二容器26を含む。第二容器26は、第一容器10から分離していても、それと同心状であっても、又はその他の方法で連結されていてよい。図1は、二つの容器の分離形態を示す。第二容器は、第二流体30をその容器に導入するための少なくとも一つの開口28を含む。第二流体30は容器26内に放出可能に保持される。第二容器26は、また、第二流体30を容器から放出するための少なくとも一つの別の開口32を含む。第二容器26はホモジナイザー18に、第二流体30がホモジナイザー18に受けられるように結合される。選択的に、第二容器26はホモジナイザー18に第二管34によって結合される。選択的にのガスケット(図示せず)は、第二容器に開口28で、第二管34に、又はホモジナイザー18に取り付けることができる。
【0034】
容器は、プラスチック、ガラス、ゴム、金属、セラミックなど、それだけに限定されないが、当分野で好適な任意の材料で作ることができる。容器は、透明、透光性、不透明、又は光を通さないものであってよい。ガスケットは、それだけに限定されないが、例えばシリコン及び炭素をベースとするエラストマー・ポリマー、熱可塑性エラストマー、ニトリルブタジエン・ゴム、ブチル・ゴム、シロキサン、エチレンプロピルジエン・モノマー、などのエラストマーなど、当分野で適当な任意材料から成るものであってよい。
【0035】
ホモジナイザー18は、均一な所望の粒子サイズと所望のスラリー密度、例えば固体粒子物質対流体の比、を生ずるように機能する。ホモジナイザー18は、第一容器10から放出される固化した流体14を受けるための少なくとも一つの開口36と、第二容器26から放出される第二流体30を受けるための少なくとも一つの開口38を含む。いくつかの様態では、単一の開口が容器10から放出される固化した流体14と容器26から放出される第二流体30の両方を受ける。ホモジナイザー18は、ホモジナイザーで生成された二相冷却剤を放出するための少なくとも一つの開口40を含む。選択的に、第三の管42を、開口40を介してホモジナイザー18に結合することができる。第三の管42を用いて冷却剤を特定の場所に、例えば本明細書で記載され例示される場所に、配送することができる。
【0036】
選択的に、システムはポンプ(図示せず)を含むことができる。ポンプは、第一容器10,第二容器26,又はホモジナイザー18に結合することができる。重力などの力、及び容器10から放出される圧力で、固化した第一流体14や第二流体30をホモジナイザー18に輸送することができるが、いくつかの様態では、ポンプを用いて輸送を助けることが好ましい。
【0037】
第一容器に液体を満すプロセスでは、容器は全容積に満たない少量を充填する。例えば、流体は全容積の約半分まで充填されるが、それより多い量又は少ない量で流体が充填されることもある。その後、容器は密封され、ほぼ必要な圧力で気体シリンダーに取り付けられる。圧力を供給するために、酸素、二酸化炭素、窒素、又はアルゴンを含む、任意の適当な気体を用いることができる。次に、気体は第一容器に接続されて必要な圧力を供給する。圧力の大きさは、流体のタイプや揮発性、流体の大気圧での凍結点、などの変数に合わせて変えることができる。容器は密封されているので、圧力は長時間にわたって所望レベルに維持することができる。スプレーを始めるためにノズルが開かれると圧力シールは破られる。
【0038】
第一容器からの圧力を使用してホモジナイザーへの流れのための力を供給し、第二容器から流体を駆動又は取り込むことができる。容器が同心的である場合、第二流体はノズルから出てゆくスプレーの速度によって取り込まれる。さらに、選択的に、スプレーの運動を変化させて低圧の区域を創りだし、サイフォン作用で第二タンクから流体を取り込むことができる。第三の選択は、第二タンクの圧力をノズル出口につなぎ、氷と気体の膨張によりノズルの出口で圧力を上昇させる。その圧力を利用して第二容器における圧力を高めることができる。第二容器からの流れはノズルの下を進み、配送システムへの経路で微粒子状の氷をピックアップすることができる。
【0039】
また、本発明の代表的な様態によって、二相冷却剤を含む冷却剤を生成する方法が提供される。一般に、これらの方法は粒子化された固体をキャリア流体と混合することを含む。粒子化された固体は好ましくは微粒子化され、さらに好ましくはナノ粒子化され、加圧された容器から大気圧での凍結点よりも低い温度に冷却された第一流体を放出することによって生成される。第一流体は実質的に瞬時的に凍結して固体になることが好ましい。凍結は、例えば、断熱法により行われる。例えば本明細書に記載され例示されるような当分野において任意の適宜手段を用いて凍結した流体を粒子化することができる。容器内の圧力は凝固点降下を引き起こすレベルに維持される。キャリア流体も第一流体の大気圧での凍結点よりも低い温度に冷却される。この様態にしたがって、粒子化した凍結した第一流体をキャリア流体と混合すると、スラリー、すなわち二相溶液が生成され、それは本明細書に記載され例示されるような適当な用途で冷却剤として用いることができる。いくつかのきわめて好ましい様態では、二相溶液はホモジナイズされて均一な粒子サイズ及び/又は均一な固体対流体比になる。
【0040】
いくつかの様態では、第一流体及び/又はキャリア流体は水性、又は実質的に水性である。水性流体は、水、アルコール、又は生理的に適合する緩衝剤、例えばHanks液、Ringer液、又は生理食塩水など、であるが、それだけに限定されない。第一流体及び/又はキャリア流体は、少なくとも一つの塩、モノサッカリド又はポリサッカリド、又は核酸、ポリペプチド、及び脂質などの生体分子、又は上記のいずれかの類似体、相同体、又は誘導体、を含むことができる。既知又は研究者の特定のニーズに適合する任意の塩、モノサッカリド又はポリサッカリドを用いることができる。
【0041】
第一流体及び/又はキャリア流体は少なくとも一つの乳化剤を含むことができる。既知又は用途の特定ニーズに適合する任意の乳化剤を用いることができる。US FDAが認可している乳化剤が、とりわけ得られる氷スラリーの治療又は食品ベースの用途に関して、きわめて好ましい。そのような乳化剤の非限定的な例としては、グリセロール、大豆油、及び卵レシチンがあげられる。
【0042】
第一流体及び/又はキャリア流体は少なくとも一つの界面活性剤を含むことができる。既知又は用途の特定ニーズに適合する任意の界面活性剤を用いることができる。US FDAが認可している界面活性剤がきわめて好ましい。例えば、ポリエチレン・オキシド(PEO)、ポリプロピレン・オキシド(PPO)、又はポリエチレン・グリコール(PEG)、及びポリプロピレン・グリコール(PPG)サブユニットから作られる界面活性剤の系列が特に好ましい。これらの界面活性剤は非毒性であることが示され、一般に安全であると考えられており、また、細胞損傷やマイクロバブル塞栓症の症例で保護的であることが既知。二つの系列の界面活性剤:すなわち、ポロキサマー界面活性剤(PEG及びPPGコポリマー界面活性剤);及びプルロニック界面活性剤(PEO及びPPOコポリマー界面活性剤)が非常に好ましい。
【0043】
いくつかの様態では、第一流体及び/又はキャリア流体は非極性、例えば有機溶媒、である。既知又は用途の特定ニーズに適合する任意の非極性流体を用いることができる。そのような流体の非限定的な例としては、ペルフトラン、及びペルフルオロエックスアネス(perfluoro-x-anes)、例えばペルフルオロデカン及びペルフルオロヘキサンなどがある。二相冷却剤は、用途の特定ニーズに適した任意の固体対流体比であってよい。例えば、この比は0.001%固体から99.999%固体まで、それに対応する99.999%流体から0.001%流体までにわたる。流体中で少なくとも約10%の固体空隙率が好ましい。流体中でさらに好ましくは少なくとも約15%の固体空隙率、さらに好ましくは少なくとも約20%の固体空隙率、さらに好ましくは少なくとも約25%の固体空隙率、さらに好ましくは少なくとも約30%の固体空隙率、さらに好ましくは少なくとも約35%の固体空隙率、さらに好ましくは少なくとも約40%の固体空隙率、さらに好ましくは少なくとも約45%の固体空隙率、さらに好ましくは少なくとも約50%の固体空隙率、さらに好ましくは少なくとも約55%の固体空隙率を用いることができる。流体中で少なくとも約60%の固体空隙率がさらに好ましく、もっと高いパーセンテージであればさらに好ましい。所与体積で冷却を最大にすることが好ましいので、最終的なスラリーを構成するために選ばれた物質で達成できる限りの最高パーセンテージの固体空隙率を実現することがきわめて望ましい。場合によっては、化学的な潤滑剤(乳化剤及び界面活性剤)及び/又は粒子サイズ調整剤を用いて固体空隙率を高めることがある。
【0044】
本発明はまた、本発明のシステム及び方法によって生成される二相冷却剤などの冷却剤を使用する方法を提供する。この冷却剤は、より低い温度又は温度の維持が望ましい用途において、冷却するため又は特定温度を維持するために用いることができる。
【0045】
このように、本発明は、被験体に低体温状態を誘発又は維持する方法を提供する。そのような方法は一般に、ここに記載され例示される本発明の方法のいずれかにしたがって生成される二相冷却剤などの医薬的に受容される冷却剤を必要とする被験体に投与することを含む。冷却剤は被験体に低体温状態を誘発するのに有効量で投与される。有効量は種々の因子に依存するが、それらの因子は当分野で既知であると思われる。そのような因子の非限定的な例として、被験体の種、身長、体重、年齢、などがある。投与は、冷却剤が用いられる特定の用途に適合する任意の手段によって進めることができる。例えば、冷却剤は、静脈内に、筋肉内に、腹腔内に、局所的に、経口で、経鼻的に、肛門から、子宮に、胸腔内に、肺に、体の他のスペース、領域などに投与することができる。静脈内投与がきわめて好ましい。
【0046】
これらの方法はどんな被験体にも用いることができる。好ましくは、これらの方法はウマ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、ハムスター、及びマウスなどの哺乳類で用いられる。これらの方法は、好ましくは人間で有益に用いられる。
【0047】
低体温状態は組織的であってよい。その意味は、低体温状態は被験体の全身にわたって誘発し及び/又は維持されることである。あるいはまた、低体温状態は体の特定の場所(単数又は複数)に、例えば特定の器官、付属器官、空洞、スペース、又は領域に向けられるものであってよい。
【0048】
また、傷みやすい物品を急速に冷却する又は低い温度を維持する方法が提供される。そのような方法は、一般に、本明細書に記載される又は例示される本発明の方法にしたがって二相冷却剤などの冷却剤を生成すること、及び傷みやすい物品をその冷却剤に曝露することを含む。傷みやすい物品とは、貯蔵寿命が有限な製品、化合物、又は組成物を指す。傷みやすい物品の非限定的な例としては、肉、魚、農産物、ミルク及び乳製品、菓子、飲料、などの食品、医薬品、ビタミン、ミネラル、揮発性化学物質、放射性核種、核酸、ポリペプチド、及び脂質などの生体分子、細胞、組織、器官、及び血液、血清、尿、唾液、汗、乳などの生物学的流体などがある。
【0049】
また、武器や大出力エレクトロニクスなどの熱を発生する装置を急速に冷却する方法も記載される。これらの方法は一般に、ここに記載される又は例示される本発明の方法のいずれかにしたがって二相冷却剤などの冷却剤を生成すること、及びその冷却剤に武器を曝露することを含む。武器又は武器の一部、例えば弾倉、を本発明の方法を用いて冷却することができる。適当な武器の非限定的な例として、銃、大砲、及び電磁パルス発生器などがある。レーザー兵器も本発明の方法にしたがって冷却することができる。武器は、手で持つものであっても、飛行機、ヘリコプター、又は車両などの設備に取り付けられるものであってもよい。大出力エレクトロニクスの非限定的な例としては、コンピュータ、電気器具、マイクロエレクトロニクス装置、電力変圧器などがある。
【0050】
本発明はまた、部屋を冷却する方法を記載する。それらの方法は一般に、ここに記載される又は例示される本発明の方法のいずれかにしたがって二相冷却剤などの冷却剤を生成すること、空気の温度が低下するようにその冷却剤に空気を曝露すること、及び冷却された空気を部屋全体にわたって循環させることを含む。空気は、当分野で好適な任意の手段によって冷却剤に曝露することができる。同様に、冷却された空気は当分野で好適なファンなどの任意の手段によって循環させることができる。本発明は、本発明の方法によって複数の部屋を同時に冷却することができると考える。例えば、適当なダクト工事によって、冷却された空気をある特定の建物のすべての部屋を含む複数の部屋に同時に循環させることができる。
【0051】
本発明はまた、非致死的な群衆規制の方法を記載する。例えば、放水砲からの二相冷却剤の大量且つ高圧のポンプ放水を用いて、二相冷却剤に全身がさらされて生ずる急激な冷却によって厳しい苦痛を創出して暴徒化した群衆を散らすことができる。
【0052】
本発明はまた、火災の制御又は制圧方法を改良する方法を記載する。例えば、消火ホースからの二相冷却剤の大量且つ高圧のポンプ放水によって、環境に優しい二相冷却剤が火災からより多くの熱を吸収することができ、燃焼プロセスのエネルギーを弱め、火災の制御と制圧を容易にする。さらに、火災スプリンクラー・システムからの氷スラリーの放出も火災に同様な作用を及ぼすであろう。
【0053】
本発明はまた、極端な高熱のときに構造要素を保護する方法を記載する。極端な高熱の非限定的な例としては:建物の火災、宇宙船の大気再突入、又は金属精錬設備などがある。極端な高熱の状況では、熱が構造部材の限界を超えて建物の崩壊、宇宙船の分解、又は機械システムの故障に導くことがある。これらのシステムの部材が大量二相冷却剤生成システムと合わせて設計されて完備した熱伝達導管が設けられていたら、それらの部材は高熱発生時に直接冷却されて構造の崩壊までの時間が長くなるであろう。
【0054】
さらに、本発明は個人冷却システムのための方法を記載する。個人冷却は、身体活動のときの個人の動作を改善する、又はその他の形で体の過熱を防止するのに役立つであろう。個人冷却システムの非限定的な例として、個人用ミスト発生器、スポーツチームのためのベンチ用ミスト発生器、体の所望部分を冷却するために他の衣服、装置、ヘルメット、グローブ、シューズなどの下に着用するボディー冷却システム、がある。
【0055】
さらに、本発明は、有毒気体の除去又は安全な取り扱いのための方法を記載する。液体の温度が下がると、その液体に溶解できる気体の量は増加する。記載された方法を用いて二相の空気洗浄液体を創りだすことができる。この液体を用いて種々の有毒ガスのいずれかにさらされた空気を急速に濾過することができる;有毒ガスの非限定的な例としては、一酸化炭素、毒ガス、放射性ガス、放射性粒状物質、アスベスト粒状物質、などがある。同じ装置の別の様態は、そのような気体を含む武器の安全な取り扱いを可能にする。
【0056】
さらに本発明は、寒冷痙縮(cryostasis)状態の誘導のための深い低体温状態を急速に誘発する方法を記載する。この方法は、病院における医療上の利益のために用いられ、あるいは長期間の宇宙旅行のために血行静止(stasis)を誘導するために用いられることもある。深い低体温状態を誘導する箇所は二相冷却剤生成システムの異なる実施形態を必要とするであろう。宇宙で用いるように設計されたシステムは、宇宙の真空を一次冷却剤として用いることができる。
【0057】
上述方法、又は本発明が適合できるその他の方法のいずれにおいても、冷却速度をコントロールすることができる。したがって、冷却はゆっくりと又は速やかに、均一な速度で、又は段階的速度で、例えばある期間は速やかに、その後にゆっくりした期間が続くように進行させることができる。冷却速度は、用途の特定のニーズにしたがって決定し調整することができる。冷却速度は当分野で好適な任意手段によってコントロールすることができる。冷却速度をコントロールするための適当な方法としては、スラリーの配送速度を調整すること、又はスラリーの氷含有率を調整することなどがあるが、それだけに限定されない。これらのパラメータをコントロールするのに用いられる方法は、装置の特定の構成形態に依存するが、ポンピング速度を変えること、又はある弁又はノズルが開いているパーセンテージを変えること、などが含まれる。本発明が提供する冷却システムは、非常に多様なその他の用途で好適に利用できると考えられる。そのような用途の非限定的な例としては、種々の産業における貯蔵、発送、及び空調などがある。別の用途は、例えば、医療産業に見られ、そこでは患者の冷却が外傷、心停止、虚血性傷害、などの結果を改善する治療法として認知されつつある。冷却はまた、装置の構成要素を損傷する過剰な熱が発生する装置にとっても有益である。そのような装置には、コンピュータ、武器、工具、モータ、車両などがある。
【0058】
用途によっては、選択的に冷媒用化学物質又は冷媒機が冷たい空気や氷を発生させるために用いられる。しかし、クロロフルオロカーボンなどの冷媒用化学物質の多くは有毒であり、環境を損なう恐れがあるので、それらの冷却システムは冷媒用化学物質を使用することなく運転できる本明細書で記載される実施形態に比べて好ましくない。同様に、多くの市販の空調装置や冷凍装置は大量のエネルギーを使用することがあり、ピーク需要のときには電力網に大きな負担になる可能性があるので、大量のエネルギーを使用せずに運転できる本明細書で記載される実施形態に比べて好ましくない。
【0059】
本明細書で記載されるタイプの二相、固体−液体冷却剤は、医療、冷凍、及びHVAC用途、群衆規制、及び消火など、種々の用途で有益に用いることができる。用途によっては、そのような冷却剤の質、すなわち冷却能力、をその冷却剤を用いる活動場所で検証することが特に有益である。したがって、種々の用途で二相冷却剤システムの信頼できる使用を可能にする品質保証システムが望ましい。
【0060】
二相、固体−液体冷却剤の冷却能力は冷却剤固体の空隙率と粒子サイズに関係する。超音波や光散乱を用いる粒子検出装置が、選択的に、冷却能力を決定する測定を行うために用いられる。必要とされる大きな電力と計算能力が利用できない用途、あるいはクリーンで安定した環境が利用できない用途においては、予測できない環境、例えば戦場、緊急事態、又は海上など、で種々の用途に合わせて調整できる最小の電力と計算能力しか必要としない品質保証システムがあることが有益である。
【0061】
図2に示されているように、ある好ましい実施形態では、二相、固体−液体冷却剤の冷却能力を決定するための、内部111と外部112を有し,予め定められた長さ、及び既知熱伝達特性を有する導管110を含むシステム100が設けられる。導管は、銅、アルミニウム、又はステンレス鋼などの金属から作ることができる。冷却剤が品質測定装置を通って進むときに層状混合が行われるように導管には旋条をつけることができる。旋条をつけた導管装置の内側寸法は、入口管及び出口管と同じ寸法とすることができるが、用途によって異なる。非限定的な例をあげると、胃腸管配送システムは静脈内配送システムよりも大きな導管である。導管の外径は内径の二倍を超えないことが好ましい。導管110は、さらに、入口113と出口114を有しそれぞれ、導管110の内部111を流れる所定流量の冷却剤を受け、放出するように構成される。熱源120が、導管の内部111を通って流れる冷却剤に熱を伝達するように導管110に対して位置決めされる。装置のための熱源は電流より印加される一連の抵抗熱装置(RTD)の形で最適に設けることができる。RTDsは導管の壁に埋め込むことも、導管の内部又は外部に取り付けることもできる。一定の温度が維持されるようにRTDsをコントロールすることができる。さらに、RTDは熱流束センサと温度センサを内蔵することができる。少なくとも一つの熱流束センサ121と少なくとも一つの温度センサ122が導管110上に位置決めされる。センサのワイヤ123がセンサをエレクトロニクス・要素130に,普通はコンピュータ又はその他の半導体装置に、結合する。
【0062】
運転時には、所定流量の二相、固体−液体冷却剤、好ましくは氷の水性スラリー、が冷却剤配送システムの出口から引き出され、導管110の入口113に導かれる。導管110への冷却剤の流れは、冷却剤を使用する点にできるだけ近い源から引き出して、使用する点での冷却剤の冷却能力を決定することが好ましい。熱は、熱源120から導管内部111を流れる冷却剤に伝達される。導管110の外部112は一定温度に維持されることが好ましい。また、冷却剤が導管110を通るときに、冷却剤中の固相の実質的に均一な断面分布が維持されることが好ましい。流体の均一性を確保する混合を誘発するための旋条又は羽根(vane)が導管に存在してもよい。
【0063】
熱流束センサと温度センサ121,122によって、熱伝達と冷却剤温度が、冷却剤が導管内部111を移する距離の関数として測定される。信号はセンサ121,122からセンサ・ワイヤ123によってコンピュータなどのエレクトロニクス・要素130に伝送される。エレクトロニクス・要素130には、測定された冷却剤への熱流束と冷却剤温度と冷却剤の諸性質、すなわち冷却能力、固体空隙率、及び固体粒子サイズ、との関係が与えられている。熱流束と温度の測定値を用いて、エレクトロニクス・要素130は関連する冷却剤の諸性質を計算する。図3に示されているように、固体粒子サイズの減少は測定される熱流束の増加と相関する。
【0064】
また、本発明によって、二相冷却剤のオンデマンド生成のための携帯システム及び方法が記載される。例えば、現場で治療のための低体温状態を誘発する急速冷却を行うとき、一つの障害は、患者を治療するために利用できる短時間の間に塩水などの液体を冷却して氷を生成するのに十分な電力源が見つけられないことである。さらに、その治療環境で、患者の冷却は病院に着く前に始められるのが理想であるということが、電力ニーズを満たすことを難しくしている、すなわち、大きな電力源が救急車で利用できる必要があることを意味する。
【0065】
例をあげると、2リットルの塩水を約室温から略0℃の凍結点まで冷却するのに、2リットルのうち1リットルを凍結して氷にするために必要な全エネルギーは約550キロジュールである。このプロセスを約5分で遂行するには、理想的な条件を仮定しても1.8キロワットを超えるエネルギーが必要である。そのタイプの冷却能力を備えた冷凍ユニットはあるが、一般に特別な220ボルトの配線を必要とし、一般に大きくて重く、数百ポンドという重量になる。さらに、多くの場合に条件は理想的でないので、この電力ニーズの推定値は、実際に必要な電力を著しく過小に推定したものになっている。すなわち、実際に必要な冷凍ユニットはもっと重く、運転するためにもっと大きな電力を必要とするものになりそうである。サイズ及び必要電力の制限は病院の建物内で緊急事態に二相冷却剤を生成する能力を制約するであろうし、そのような冷却剤を緊急医療事態という制約の下に救急車で生成する能力を、不可能にするとまで言わないとしても、厳しく制約する。
【0066】
このような制約に打ち克つために、可能な一つの方法は二相冷却剤を必要となる前に生成してそれを貯蔵しておくことである。予め調製することで、冷却剤の流量を著しく減らし、消費電力を減らすことができる。しかし、スラリーなどの二相冷却剤は、貯蔵しておくと好ましい氷粒子形状やポンプ配送特性が失われて冷却剤の治療価値が低下する。水性の氷スラリーは水の氷形態と液体形態の間で絶えず相変化している状態にある。時間がたつと氷結晶の樹枝状の性質が回復し、スラリーをポンプで送ろうとしても、例えば静脈内管という厳しい制約の下では、もはや動くことができなくなる。
【0067】
本発明によって、例えば圧縮ガスやドライアイスに貯えられた熱力学的エネルギーを制御して、二相冷却剤の移動可能なオンデマンド生成のために利用できることが発見された。しかし、このような冷却液体の熱力学的エネルギーの利用は、塩水の共晶点より低い温度を創りだし、その結果0℃よりずっと低い温度の氷スラリーが生じ、それが患者にとって有害になる可能性がある。この問題は、一つ以上の熱交換器を用いて塩水の凍結温度をコントロールできる発見によって解決された。熱交換器の使用はまた、ドライアイスの昇華又は液体の蒸発という形で貯えられた冷却(cooling)を利用することを可能にする。熱交換器の使用の概観が図5に示されている。本発明のシステムの実施形態の詳細について、図6-14を参照して以下で説明する。
【0068】
熱交換器の圧力低下、熱流量、及び質量流量は、その長さ寸法(linear dimension)を変えることによって変えることができる。熟練した技能者は、この点に関する指針として、例えばJohn E Hesselgreavesの「小型熱交換器:選定、設計、及び運転(Compact Heat Exchangers: Selection, Design and Operation)」(Elsevier Science LTD. 2001)を参照することができる。本明細書に記載され又は例示された装置の寸法は、説明のためであって限定でない。したがって、寸法は、個々のユーザー又は研究者の個々のシステム、装置、用途、又はニーズによって異なる。
【0069】
ある様態では、二相冷却剤の生成システムは、一般に約0.45%から約7.5%の溶質を含有する医療用食塩水を用いて、患者に低体温状態を誘発するための無菌の氷−食塩水スラリーをオンデマンドで作りだす。例えば、生成される無菌の氷スラリーを用いて、突然死、心臓発作、卒中、熱中症、敗血症性ショック、又は制御されない出血性ショックが問題になるその他の医学的状態の際に、患者保護のために治療的な低体温状態を速やかに誘発できる。
【0070】
図6A−Bに示されているように、二相冷却剤生成システムはいくつかの主要な構成部品を含み、それらはスラリー生成装置200に組み立てられる。適当な組立体形態の一例の分解図が示されている。図6Bは、図6Aに示されている形態を90度回転したものを示している。図は、ハウジング220,熱交換器240,駆動シャフト260,氷スクレイパー・ブレード280,内部ディスク300,混合ブレード320,混合容器340,及び混合容器ハウジング360を含む。組立体はさらにガスケットとコネクタ、例えばねじ又はスナップフィット(図示せず)を含むことができる。
【0071】
いくつかの様態では、システムは二相冷却剤生成システムの主要構成要素を収容するように構成されたハウジング220を含む。ハウジングは、金属、プラスチック、ゴム、シリカ、ポリマー、ガラス、木材、など任意の適当な材料で構成できる。ハウジングは断熱することができる。プラスチックが材料として好ましい。図7に示されているように、ハウジングは二相冷却剤生成システムの構成要素を収容するための管孔222を含むことができる。図7Aは、ハウジングのある代表的な外側形態を示す。図7Bは、ハウジングの切り欠き図を示し、ハウジング内のスラリー生成システムの別の構成要素の形態の一例を示している。この構成要素は当分野で好適な任意の手段によってハウジングに固定することができる。好ましくは、構成要素は定期的にクリーニング及び/又は殺菌することができるように可逆的に組み立てられる。
【0072】
ハウジングはまた、例えば冷却剤入口226と冷却剤出口224として開口を含むことができ、且つ凍結されてできる氷スラリーの氷成分に成るべき流体の入口230及び氷スラリーの出口228として用いられる。開口は、選択的に、ハウジングを流体容器、スラリー貯蔵容器、スラリーの配送のための配管、システムのその他の構成要素に結合するように構成されたコネクタを含むことができる。コネクタは、使用目的のために当分野で好適な任意のコネクタであってよい。
【0073】
好ましくは、ハウジングは熱交換器240を含む。熱交換器は長さL、直径がDである(図7B)。いくつかの好ましい様態では、熱交換器は一つ以上の管、好ましくは同心管を含み、二相冷却剤を含む流体から冷却剤を分離する。
【0074】
図8に示されているように、熱交換器は一つの管を含むことができる。管は管孔244を有し、二相冷却剤を含む流体がそれを通って流れることができ、生成されるスラリーの氷相は管孔の側壁246上に形成される。冷却剤はハウジング220と熱交換器の管240との間を流れる。熱交換器の管は、長さが約1インチから約24インチ(1インチ≒2.54cm)までの範囲にあるが、もっと短い又はもっと長い管を用いることができる。好ましくは、管の長さは約1インチから約6インチまでである。内部の管は、直径が約0.25インチから約2インチまでの範囲にある。好ましくは、内側の管の直径は約0.5インチである。外部の管は、直径が約0.5インチから約2.5インチまでの範囲にある。好ましくは、外部の管の直径は約0.8インチである。単一の熱交換器管のある非限定的な例では、管の長さLは約6インチであり、直径Dは約0.75インチである。
【0075】
熱交換器の管は当分野で好適な任意の材料から作ることができ、選ばれる材料はそのシステムを使用する用途による。熱交換器の管はステンレス鋼、プラチナ、又はチタンなどの金属から構成できる。好ましくは、熱交換器の材料はステンレス鋼である。内側及び外部の管は同じ材料で構成しても異なる材料で構成してもよい。外部の管は、ステンレス鋼、プラチナ、チタン、ナイロン、ポリカーボネート、Teflon(登録商標)、又はTygon(登録商標)から構成できる。好ましくは、材料はポリカーボネートなどの絶縁性であって殺菌できるものである。
【0076】
熱交換器の管はハウジング内に収容され、熱交換器の管の壁にはハウジング管孔を流れる又はその他の形で存在している冷却剤が直接に接触する。管はハウジングに固定されるか、ハウジング内に遊離して浮いている。冷却剤は熱交換器の管を、熱交換器の管の側壁に接触する流体を凍結させるのに十分な温度まで冷却する。さらに、流体の冷却は、結果的に熱交換器の管の側壁に直接に接触しないで流体を凍結させることができる。冷却剤は問題としている流体を凍結させるのに当分野で好適などんな冷却剤であってもよい。冷却剤の非限定的な例として、ドライアイス-アルコール・スラリー、フレオンやアンモニアなどの圧縮冷凍ガス、ポリエチレン・グリコール、ポリプロピレン・グリコール、水、塩化ナトリウム塩水又は蟻酸カリウム塩水又はデキストロース溶液などの凝固点降下水、アルコール、などである。
【0077】
好ましくは、熱交換器の管は駆動シャフト260,例えば図9に示されているようなもの、を含む。駆動シャフトは、熱交換器の内側の管の中で回転する軸262を含む。駆動シャフトはさらに、駆動シャフトに一つ以上のスクレイパー・ブレードを可逆的に固定する一つ以上のスクレイパー・ブレード・ホルダー264を含むことができる。駆動シャフトはさらに、流体の流れと輸送を助け且つ形成しつつある氷スラリーが熱交換器を通るために、一つ以上のチャンネル266を含むことができる。チャンネルは、スラリー生成組立体の下流構成要素を通って脈動する流れを生ずるような角度で駆動シャフトの先端に切り込まれてよい。このタイプの冷却剤を生成するときの一つの問題は、氷粒子が凝集して固まる性向があり、スラリーをポンプで送ることができなくなることである。スラリーの流れの経路の大きな障害は流れの淀み点になり、それがさらに氷粒子が凝集する場所になる。脈動する流れによって、樹枝状の氷結晶で生じやすい氷粒子の密集を減らし、ゼロにすることさえできる。さらに、駆動シャフトは混合ブレード268を結合するための適当な手段になる。
【0078】
駆動シャフトは熱交換器に固定してもハウジングに固定してもよい。駆動シャフトは、時計回り、反時計回り、又はそれらの組み合わせで回転してよい。駆動シャフトは、当分野が適当であるとしている任意のスピードで回転してよい。駆動シャフトの回転速度は氷をかき取るブレードの数に関係する。例えば、水の凍結プロセスの分析から、氷界面を約1/30秒毎から約1/5秒毎にかき取ることが好ましいことが判明した。いくつかの好ましい様態では、氷界面は1/20秒毎にかき取られる。したがって、かき取るブレードが1枚の駆動シャフトは約1200rpmで回転することが好ましい。かき取るブレードが2枚の駆動シャフトは約600rpmで回転することが好ましい。かき取るブレードが3枚の駆動シャフトは約400rpmで回転することが好ましい。かき取るブレードが4枚の駆動シャフトは約300rpmで回転することが好ましい。かき取るブレードの数と駆動シャフトのrpmとの間のこの関係は、かき取るブレードのすべての数について続く。さらに好ましい様態では、駆動シャフトは約0.0001から約200rpmまでで回転する。回転は、モータの使用を含め、当分野が適当とする任意の手段によって実行することができる。いくつかの実施形態では、バッテリー又はΑΧ電力による適当なパワーのモータを駆動シャフト262の近位端に取り付けることができる。別の実施形態では、タービン・ブレードを駆動シャフト262の近位端に取り付けることができる。この駆動シャフトは、流体を装置にポンプ配送するために用いるポンプを動力にすることができる。
【0079】
図10に示されているように、駆動シャフトは一つ以上のスクレイパー・ブレードを含むことができる。スクレイパー・ブレードは形成された氷を内側の管の側壁から除去するように構成される。各スクレイパー・ブレードは、選択的に、一つ以上の開口282を含むことができる。開口はかき取られた氷粒子がスクレイパー・ブレードを自由に通過することを可能にする。開口のサイズは、幅が約1/16インチから約1/2インチまで、長さが約1/4インチから約8インチまでの範囲にある。好ましくは、開口は幅が約1/8インチで長さが約3/4インチである。
【0080】
スクレイパー・ブレードを通る自由通路は得られるスラリーの均一性を保証するのに役立つ。スクレイパー・ブレードは、金属、プラスチック、ゴム、ガラス、ポリマー、シリカ、など当分野で好適な任意の材料から作ることができる。内側の管の側壁に形成される氷に接触するスクレイパー・ブレードの端はテーパーをつけることができる。スクレイパー・ブレードは螺旋きり(auger)の形態にすることができる。螺旋きり形態では、スクレイパー・ブレードは少なくとも二つの目的に役立つ。ある様態では、螺旋きり型スクレイパー・ブレードは熱交換界面から氷をかき取ることに役立ち、装置を通して塩水スラリーを輸送するためにも役立つ。螺旋きり型の実施形態は、必要なポンプの数が少なく、運転するのに必要な電力が少ない利点がある。螺旋きり型スクレイパー・ブレードの数は1から多数まであり得る。ブレードの数は、所望のスラリー流量、螺旋パラメータ(リード、リード角、及び平均螺旋直径)、及びモータの所望RPMなど種々の変数によって決定される。
【0081】
いくつかの様態では、スラリー生成組立体は、図11A−Cに示されているように内部ディスク300を含む。図A−Cは異なる角度で見た内部ディスクを示す。内部ディスクは駆動シャフトの端の近くにベアリングを保持することができる。内部ディスクは、一つ以上の開口302を有し、生成された氷-塩水スラリーがディスクを通過して装置の次の構成要素へ進むことを可能にする。さらに、ディスクは装置を一緒に封止する圧縮力のための二つの面を含み、熱交換器の遠位端を含み、混合容器の近位端を含む。選択的に、熱交換器の遠位端とディスクとの間、及び混合容器の近位端とディスクとの間にガスケットを用いることができる。
【0082】
いくつかの様態では、スラリー生成組立体は混合ブレード320を含む。混合ブレードの一つの非限定的な例が図12A−Cに示されている。図12Aはこの混合ブレードの側面図を示し、図12Bはこの混合ブレードの上面図を示し、図12Cは混合ブレード全体の3-次元斜視図を示す。このブレードは熱交換器で生成された氷スラリー(これは樹枝状の氷スラリーになる)と高濃度塩水を混合し且つ/又は細かく均一化するように構成される。ブレードの形はスラリーと高濃度塩水の乱流(無秩序な)混合を創りだすように設計される。いくつかの様態では、混合ブレードはスラリーを径方向に押し出して、代わりに高濃度塩水をもっと中心の区域へ付勢するように構成される。
【0083】
最初に形成されて氷スラリーを構成する氷粒子は、一般に鋭い樹枝状のエッジを含む。形成された氷のこの形状は、例えば患者への配送のために、スラリーの管へのポンプ輸送を妨げ、又は不可能にすることさえある。氷粒子の形をなめらかにすることは一次的な氷形成プロセスでも二次的なスムージング・プロセスでも可能であり、それによって樹枝状氷結晶から成る氷スラリーを輸送する問題が解決されることが発見された。上述の二次的プロセスは、多くの市販されている軟氷(slush)生成装置に追加することができ、スラリーをポンプ輸送しやすい又は飲みやすいものにできる。現在市販されている軟氷生成装置の非限定例として:ORS-1075HS HUSH-SLUSH(登録商標)(O. R. Solutions, Inc., Chantilly, VA)システム、SLURPEE(登録商標)マシン(7-Eleven)、スラシー・マシン、凍結アルコール飲料機、二相冷却剤を用いる建物冷房システム、などがある。
【0084】
さらに、氷粒子の形をなめらかなものにすることは、スラリーの制御された加熱によって、有効量の高濃度の塩水を氷スラリーに加えることによって、又は有効量の凍結していない液体を加えることによって達成できることが発見された。スラリーに少量の熱を加えることはスラリーを攪拌しながら熱流束又は液体流束によって行うことができ、それはなめらかな氷粒子の生成に導く。必要な加熱の量は、例えば所望のスラリー流量によって異なる。熱は、壁の温度をスラリーの平均温度よりも高く維持することによって加えることができる。非限定的な壁の温度は約0℃から約40℃までの範囲にわたり、低い範囲の0-4℃と30-40℃の両方が好ましい。二つの好ましい温度範囲は異なる加熱面積に対応しており、大きい方の加熱面積は低い方の壁温度に対応する。
【0085】
高濃度塩水は、市販されている約3.5%, 5%, 及び7.5%医療用食塩水を含め、約1から約10パーセントの溶質を含む。塩水は、以下の非限定的な溶質を含み、それらは好ましくは医薬的に受容される又は生理的な塩又は糖であり、非限定的な例としては:塩化ナトリウム、乳酸ナトリウム、燐酸カリウム、塩化カルシウム、塩化カリウム、燐酸ナトリウム、二燐酸カリウム、蟻酸カリウム、グルコース、及びデキストロースなどがある。
【0086】
氷スラリーの制御された加熱及び/又は氷スラリーへの高濃度塩水の添加は、スラリー生成組立体のどの構成要素においても実行できる。一つの好ましい様態では、組立体が氷粒子をなめらかにするための専用の構成要素、例えば混合容器、を含む。混合容器は、当分野で好適な任意の形及びサイズで構成できる。あるきわめて好ましい様態では、混合容器は図13に示されているように円錐形である。
【0087】
混合容器340は、内部ディスクを通過する熱交換器で形成された氷スラリーのための入口342を含む。混合容器はまた、精製されたスラリーの排出、例えば患者に投与されることになる排出、のための出口344を含む。いくつかの様態で、容器は高濃度の塩水を容器管孔に加えることができるようにする一つ又は複数の入口346を含むことができる。混合容器は混合ブレードを含む。いくつかの様態では、容器を加熱して氷粒子をなめらかなにすることができる。混合容器を加熱する方法の非限定例として、混合容器の壁に抵抗発熱装置を組み込むこと、混合容器の壁の外部のまわりに暖かい流体を流すこと、あるいは混合容器の壁をヒートパイプで構成してスラリー温度より高く設定された壁温度をヒートパイプで実現すること、などがある。容器は、金属、プラスチック、ゴム、シリカ、ポリマー、ガラスなど、当分野で好適な任意材料で作ることができる。
【0088】
いくつかの実施形態では、スラリー生成組立体は混合容器ハウジング360を含むことができる。混合用円錐形容器を収容するように構成された容器ハウジングの一例が図14に示されている。容器ハウジング構成要素は組立体の諸構成要素を内部ディスクの遠位側で保持するように構成され、組立体の主ハウジングに可逆的に固定され、異なる種々のコンパートメントをすべて密封して組立体全体を一緒に保持する圧縮を与える。いくつかの好ましい様態では、容器ハウジングは一つ以上の開口362を含み、それによって高濃度スラリーが容器ハウジングを通過して混合容器に入ることが可能になる。いくつかの好ましい様態では、容器ハウジングは、スラリー生成組立体からの生成されたスラリーの排出のための一つ以上の出口364を含む。いくつかのきわめて好ましい様態では、この出口は、スラリーを患者に投与するための静脈内管などの管に接続するための取付部品366を含む。当分野で好適な任意の取付部品を、例えばIVルアー(luer)・コネクタなど、を用いることができる。その他の可能なコネクタの非限定例として;建物冷房、腐敗性物品の冷却、又は消火スプリンクラー・システム、に用いられる標準的な鉛管コネクタ、レーザー、銃、大砲、及び電磁発生器などの武器の冷却に適したコネクタ、消火ホースや放水銃に適合するコネクタ、冷却キャップ、冷却ベスト等の個人的冷却システム、又は、個人的ミスト発生システムに適合するコネクタ、職員ミスト発生システム(スポーツチーム・ベンチ)に適合するコネクタ、低温痙縮システムに適合するコネクタ、精錬所冷却に適合するコネクタ、火災時のビルディング・フレーム冷却又は損傷した熱シールドで大気再突入するときの宇宙船防護など、極端条件での構造要素の冷却に適合するコネクタ、エアー洗浄システムに適合するコネクタ、改善された有毒気体の収容と輸送に適合するコネクタ、長時間の手術の間に器官保存で用いる最小侵襲外科器具に適合するコネクタ、貯蔵タンク寄託に適合するコネクタ、胃腸管管、肺洗浄用配管、又は鼻咽頭、口腔、耳、肛門、又は膣空洞へのスラリー放出などの局所医療冷却に適合するコネクタ、腹腔内又は胸腔内スペースへのスラリー放出などに適合するコネクタ、又はその他の生理的なスペース又は領域への放出に適合するコネクタ、などがある。
【0089】
いくつかの様態では、ここに記載され例示されるようなスラリー生成システムは4つの容積部を含む。第一容積部は、低濃度塩水を含み、冷却されて氷が塩水中に形成される。いくつかの好ましい様態では、スラリーは約10から約90%の氷を含むが、それより高い又は低いパーセンテージのものも生成でき、とりわけ研究者の特定ニーズによる。さらに好ましくは、スラリーは約20から約80%の氷を含み、さらに好ましくは約30から約70%の氷を含み、さらに好ましくは約40から約60%の氷を含み、そしてさらに好ましくは約50から約60%の氷を含む。
【0090】
第二容積部は、第一容積部を囲み、熱交換器の構造によって分離されている。この第二容積部は冷却剤が再循環される部分である。好ましくは、冷却剤と塩水は流れの方向が逆で対向流熱交換器を創りだす。冷却剤を相変化冷凍ユニットに循環させ、そこで熱が除去されるようにすることができる。冷凍ユニットは非電気的であることが好ましいが、電気的なユニットであってもよい。
【0091】
第三容積部は、熱交換器から生成された氷スラリーが加熱される、又は高濃度塩水と混合されるところである。氷粒子の制御加熱又は追加の塩との混合は、氷粒子をなめらかにし、スラリーをポンプで配送できるようにする。混合ブレードが第三容積部にあってもよい。
【0092】
第四容積部は第三容積部を囲み、高濃度塩水が組立体に導入されるところである。この容積部は高濃度塩水が混合容器のすべての表面へ自由に流れることが可能になるように構成される。これは均一な混合を助け、氷スラリーが容器を通って流れるときの抵抗を減らす。完成された氷スラリーは容器の端から出てゆく。いくつかの様態では、スラリーは組立体の一つ以上の構成要素へポンプで送られ、且つ/又は患者に投与するために管を介してポンプで送られる。
【0093】
対向流熱交換器の形態では、冷却剤流量と塩水流量が、氷の望ましい空隙率に基づいて物理的に関係がつけられてよい。熱交換器の壁の温度を装置との距離の関数として変化させることにより熱伝達方程式はさらに複雑になる。さらに、冷却剤液体をポンプで送るためにエネルギーが必要になる。スラリー生成システムの形態及び動作を最適なものにするために、環状のヒートパイプをシステムの熱交換器として用いることができることが発見された。したがって、いくつかの好ましい様態では、熱交換器はヒートパイプ、好ましくは環状ヒートパイプである。
【0094】
代表的な実施形態では、ヒートパイプは本質的に自己完結的な表面張力駆動のヒートパイプである。温度勾配がヒートパイプを横切っている場合、熱はヒートパイプを横切って伝導と対流によって移動し、伝導だけの場合と比べると100倍も大きな熱伝達が可能になる。ヒートパイプ・テクノロジーの別の利点は、製造時の内部圧力をコントロールすることによってヒートパイプは所望の蒸発温度又は凝結温度を持つように調整できることである。これによって、他のコントロールやフィードバックなしで設定された一定温度の表面を得ることができる。したがって、ヒートパイプは冷却剤をポンプする必要を減らす又はなくす別の利点があり、さらに一定の壁温度の熱交換器表面が得られる利点もある。これによって、もっと小型で移動可能なスラリー生成システム及び装置並びに必要なポンプが少なく、したがって運転に必要な電力の少ないシステム及び装置を製造できる。
【0095】
ヒートパイプ熱交換器形態の一例が図15に示されている。これは断面図である。ヒートパイプは好ましくは環状であり、この図では中心軸に沿って半分に切断さられている。図示形態では、ヒートパイプ中の液体は冷却剤の側で凝結し、塩水側の方へ運ばれ、そこでは冷却剤が蒸発できる。蒸発温度は約0℃から約-20℃の間に保たれる。冷却剤は液体窒素などの圧縮気体であっても、ドライアイスを混合したアルコールであってもよい。ヒートパイプは、冷却剤側に温度勾配があっても、塩水側では均一な温度を与える。冷却剤は、ヒートパイプを収納する第二の大きな環状体に収容できる。
【0096】
図16は図2に示されたシステムの変形を示す。図16に示されたシステムの断面図では、ヒートパイプは中心軸に沿って半分に切断された環状体を含む。この形態では、ヒートパイプ400の蒸発側はヒーター402に近くなる。ヒートパイプの凝結側はスラリーの側に近くなる。凝結する液体はスラリーを熱して氷を融かす。上述した測定方法を用いることができる。凝結温度は約0℃から約60℃の範囲になる。
【0097】
氷スラリーを生成するシステム及び装置は、好ましくは、処理と分析をリアルタイムで又は運転後に完了して故障モードを確認できるモニター計器を備え、種々の故障モードに対応する適当なメカニズムを備えることが好ましい。このシステム及び装置は、計算並びに実験的な校正から定められた性能基準を有し、この基準からのずれを利用して装置の動作を変更又は制御することができる。
【0098】
例えば、熱流の非特徴的な変化があると、それがこのシステムに、温度、回転速度、及びトルク、を系統的に個別且つ/又は次に組合わせで評価させ、システム故障の原因を確認させる。次に、選択的に、この原因が翻訳されてユーザーに注意が喚起され、故障に対処できるようにする。
【0099】
温度測定装置は、熱電対であってよいが、それだけに限定されず、その非限定例は、K, J, T及びEタイプの熱抵抗装置(RTDs)又は赤外計器である。回転トルクは種々の方法を用いて、例えばモーメントアーム、スリップリング、及び回転トランスなどを用いて測定できる。回転速度センサ、又は角変位センサ等種々の感知方法を利用でき、且つ種々の範囲で使用できる。回転速度と回転トルクを測定する計器は単一センサの形であっても、種々のセンサ範囲を備えたものであってもよい。そのような計器は当分野で既知である。すべての測定結果は、データ取得と分析のためにコンピュータに送ることができる。
【0100】
氷スラリー生成システム及び装置は、好ましくは目標の熱伝達係数を有し、システムの質量流量を変えることによってそれを変えることができる。すなわち、最適の氷スラリー生成には目標の熱伝達係数があり、それに合致しない場合、それはシステムの故障を示す。
【0101】
入口、出口、又はその両方、又は他の場所で測定される冷却剤と氷スラリー(生成物)の温度の分析によってシステムをモニターすることが可能になり、冷却剤又は生成物の温度が装置の動作範囲又は最適範囲よりも高く上昇、又は低く低下した場合、このモニタリングによって故障モードが開始される。この故障モードは、冷却剤と生成物の温度を適当な範囲に運ぶシステムの運転の調整を含む。
【0102】
温度変化率は故障モードの指標として役立つ。冷却剤と氷スラリーの温度の変化は熱伝達係数に変化を生ずる。
【0103】
スラリー生成システムの運転を最適化するためにモニターされる他のデータ点は、交換器から出てくる付着氷である。氷除去の動作の変化は、熱伝達係数の変化をもたらす。さらに、発生するスラリーは、少なくとも三つの性質に基づいて、個別に又は組合わせで、モニターすることができる、すなわち(1)氷質量濃度;(2)氷粒子サイズ;及び(3)氷粒子の形、である。この三つの性質はスラリーのレオロジー的性質、溶融温度範囲、及び必要なポンプの動力、を決定できる。これらの性質が、受容できる最適範囲外に変動したときに、スラリーのこれらの性質を受容できる範囲に引き戻すように設計された一連の調整を開始できる。
【0104】
本発明は、また、ここに記載し例示される氷スラリー生成システムを用いて氷スラリーを生成する方法を提供する。いくつかの詳細な様態で、この方法は、低濃度塩水などの流体を熱交換器と、流体の一部が凍結して氷スラリーを形成するのに十分な時間、接触させること、及びその後、高濃度塩水をこの氷スラリーに混合することを含む。熱交換器は二つの同心管を含み、環状ヒートパイプなどのヒートパイプであってよい。高濃度塩水は形成された氷の結晶をなめらかにしてスラリーをポンプで送ることができるようにする。別のある様態では、この方法は、低濃度塩水などの流体を熱交換器と流体の一部が凍結して氷スラリーを形成するのに十分な時間接触させること、及びその後、この氷スラリーを、スラリー中の氷結晶をなめらかにするのに十分な時間、熱源と接触させることを含む。これらの方法を用いて、氷スラリーを任意の規模、小規模又は大規模で、例えば患者に投与するために、又は火災の制圧のため、又は群衆の規制のために、生成することができる。
【0105】
本発明はまた、本発明の氷スラリー生成システム及び装置によって生成された氷スラリーなどの二相冷却剤を使用する方法を提供する。氷スラリーは、低温又は温度の維持が望まれる任意の用途で、冷却するために又はある特定温度を維持するために使用できる。
【0106】
非常に好ましい様態で、本発明は、被験体に低体温状態を誘発又は維持する方法であって、ここに記載され例示された本発明の氷スラリー生成システム及び方法によって生成される氷スラリーなどの医薬的に受容される氷スラリーを必要とする被験体に投与することを含む方法を提供する。この氷スラリーは低体温状態を誘発又は維持するのに有効量で被験体に投与される。有効量は種々の因子に依存するであろう。そのような因子の非限定例として、被験体の種、身長、体重、年齢、治療しようとする症状などがある。投与は冷却剤を使用する特定の用途に適した任意の手段によって進めることができる。例えば、冷却剤は、静脈内、筋肉内、局所的に、経口で、鼻腔内、肛門、膣、腹腔又は胸腔スペース内に、その他の生理的スペース又は領域内などに投与できる。静脈内投与がきわめて好ましい。
【0107】
これらの方法はどんな被験体にも用いることができる。好ましくは、これらの方法は、ウマ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、ハムスター、及びマウスなどの哺乳類に用いられる。これらの方法は、好ましくは人間に有益に用いられる。
【0108】
低体温状態は組織的であってよい、すなわち低体温状態は被験体の全身にわたって誘発且つ/又は維持することができる。あるいはまた、低体温状態は体の特定箇所(単数又は複数)に、例えば特定の器官、付属器、空洞、スペース、又は領域に向けることもできる。
【0109】
傷みやすい物品を急速に冷却する又は低温を維持する方法も提供される。そのような方法は、一般に、本明細書に記載され例示された氷スラリー生成システム、装置、及び方法を用いて氷スラリーを生成すること、及び傷みやすい物品をその氷スラリーに曝露することを含む。傷みやすい物品の非限定例として、肉、魚、農産物、ミルク及び乳製品、菓子、飲料などの食品;医薬品;ビタミン;ミネラル;揮発性化学物質;放射性核種;核酸、ポリペプチド、及び脂質などの生体分子、細胞、組織、器官、及び血液、血清、尿、唾液、汗、乳などの生物学的流体などがある。
【0110】
武器などの熱を発生する装置を急速に冷却する方法も提供される。この方法は、本明細書に記載され例示された氷スラリー生成システム、装置、及び方法を用いて氷スラリーを生成すること、及び武器又はその構成要素をその氷スラリーに曝露することを含む。武器又は武器の一部、例えば弾倉、を本発明の方法を用いて冷却することができる。適当な武器の非限定的な例としては、銃、大砲、及び電磁パルス発生器などがある。レーザー兵器も本発明の方法にしたがって冷却することができる。武器は、手で持つものであっても、飛行機、ヘリコプター、又は車両などの設備に取り付けられるものであってよい。
【0111】
次の実施例は本発明の代表的な様態を詳しく説明するためである。それらは例示して説明することを目的とし、本発明を限定することを意図していない。
【実施例1】
【0112】
塩水の氷スラリーのオンデマンド生成
【0113】
予言的机上の実施例において、微粒子状二相(固体と流体)冷却剤のオンデマンド生成のための装置が用意される。この装置は、二つの流体容器を含むが、それらは分離しているか、又は同心であってもよい。一方の容器は加圧され、他方は加圧されない。この装置は均一且つ均質化された塩水氷スラリーを生成するために用いられる。
【0114】
容器には水が満たされ、水は異なる濃度の塩、界面活性剤、及び/又は乳化剤を含むことができる。容器は、容器から放出されたときに液体の瞬時的膨張を誘発する十分に高いレベルまで加圧される。加圧された容器は流体全体的に充満たされず、約50%程度の大きな容積が気相のために残される。加圧された容器とその中身は、その流体の大気圧での凍結点より低い温度に冷却される。
【0115】
加圧された容器の端に特殊なノズルを取り付けることができる。流体がその容器から押し出されるとき、ノズルは流体の細かいミストを発生させる。温度が大気圧凍結点よりも低く保たれているので、圧力が解放されると流体は自発的に固体相に変化する(例えば、凍結する)。形成された氷結晶はホモジナイザーで処理され、そこで第二タンクから放出されたキャリア流体と混合される。ホモジナイザーでの均質化は、回転可能氷粒子サイズ、及び化学的平滑さを確実にする。
【0116】
第二容器には、所望の氷スラリーを形成するために第一容器からの固化した流体に適合する流体が入れられる。例えば、第二容器は水、塩、界面活性剤、及びその他の乳化剤を含む。上述したように、第二容器とその中身は容器1からの流体の大気圧での凍結点よりも低い温度に冷却される。しかし、第二容器からの流体は圧力が加わっていないので低温でも流体相にとどまる。
【0117】
第二容器からの冷却された流体は次にポンプでホモジナイザーに送られ、第一容器から生成された氷粒子と混合される。この流体は、このように微粒子状の氷を所望の目的で所望の場所及び用途に配送するためのキャリア流体として用いられる。
【0118】
ホモジナイザー出口と第二容器の間に圧力のつながりがあるかもしれない。この場合、凝固点降下を生ずるために用いられた第一容器からの過剰な圧力は、第二容器からホモジナイザーへ流体をポンプ輸送するために、放出後にと使用される。概略図が図1に示されている。
【実施例2】
【0119】
大量又は少量のオンデマンド塩水氷スラリーの低電力生成
【0120】
机上の実施例において、大量又は少量の微粒子状二相(固体と流体)冷却剤のオンデマンド生成のための装置が用意される。この装置は前述した装置の大規模バージョン、並びに大量の一次冷却剤、すなわち圧縮気体又はドライアイスを含む。実施例1と実施例2間の主な相違は電力を必要としないでスラリーの提供である。
【0121】
電力が利用できないために前述した二相冷却剤の使用が制約される場合、ここに記載された装置及び方法を用いて電力の制約を克服することができる。図5に示されているこの実施例では、ここに記載されたスラリー生成装置の一つが特定冷却タスクに効果的なサイズにスケール変更されている。さらに、適当な量の一次冷却剤も利用できる。一次冷却剤は冷却剤熱交換器にポンプで送られ、そこで二次冷却剤が同様の又はわずかに暖かい温度に冷却される。二次冷却剤はスラリー生成装置へポンプで送られるか又は運ばれる。このスラリー生成装置では、二次冷却剤が塩水をその凍結点まで冷却する。氷は熱交換器の表面からかき取られ、氷が大量液体中で核を形成する。氷粒子のサイズは氷スクレイパー・ブレードと混合によってコントロールされる。塩水及びスラリーはポンプでスラリー生成装置を通して送られタスクに適した手段で配送される。
【実施例3】
【0122】
二相(固体−液体)冷却剤の品質
【0123】
机上この実施例においては、二相(固体-流体)冷却剤配送システムの質を、好ましくは冷却剤用途の現場の直前に、保証するインライン・システムが提案される。このシステムは、スラリーの生成から作用現場までの移動中に固相の溶融によって冷却剤の品質が変化する問題に対処するためのものである。
【0124】
この装置は、既知熱伝達特性を有する管から成り、管の長さに沿って所定位置に一連の熱流束センサと温度センサが埋め込まれる。管の外側の環境は既知温度に保たれる。水性の氷スラリーが所定の体積流量で管を通過し、熱流束と温度が、冷却剤が管の下へ移動する距離の関数として測定される。氷空隙率が、冷却剤スラリーへ侵入る熱の総量を測定することによって計算される。氷粒子サイズが、そのような大量の熱を伝達するのに要した時間に関係づけられる。これらの計算は、一連のセンサに結合したコンピュータで行われる。
【0125】
氷空隙率の計算は次のように行われる。管の内部で流体が管設計の関数として十分混合され、管内部の温度はすべての氷が融けるまで液体の凍結点の非常に近くにとどまる。したがって、熱流束は主として氷の溶融に費やされる。いったん氷が融けると、液体の温度が上がり始め、これは温度センサによって検出される。したがって、管の流体の最初の温度上昇の場所、管の長さの関数としての測定された熱流束、及び体積流量に基づいて、氷パーセンテージは式1の関係を用いて推定される:
△Qslurry = mslurryC△T + %icemslurryλice
ここで、△Qslurryはヒーターから得る熱エネルギー、mslurryはスラリーの質量、Cはスラリーの液体相の熱容量、△Tはスラリーの温度変化、%iceは氷パーセンテージ、そしてλiceは氷から液体への相変化の潜熱である。
【0126】
平均粒子サイズは経験的に誘導される相関から得られる。平均粒子サイズを測定する方法を説明する熱伝達方程式(式2)は次のようになる:
d
―Q=nAΔT
dt
d
ここで(―Q)はワット単位でのスラリーに侵入する熱(熱流)、hはW/m2K単位における
dt
対流熱伝達係数、そして△Tは内部管壁と大量流体の温度との間の温度差である。係数hは流体の体積流量と流体の物理的性質並びにスラリー中の氷粒子のサイズと分布の関数である。hの値は、氷パーセンテージが一定であるときに平均粒子サイズが減少するにつれて増加すると予期される。粒子サイズが減少するにつれて、粒子の数は増加し、体積が一定であると仮定した場合に固体から液体への相変化に利用できる界面面積と同様である。これらの条件の下で予期される測定値の差異の一例が図3に示されている。
実施例4
熱交換器の建造と氷スラリーの生成
【0127】
一般的装置特性:図6に示されているものと同様な対向流表面かき取り熱交換器が構築され、氷スラリーを生成するために用いられた。この装置は熱交換表面積が0.011m2、環状ギャップが4.94mm、スクレイパー・ブレードは8枚であった。
【0128】
一次冷却剤は70%又は46%蟻酸カリウムであった。一次冷却剤は銅コイルをドライアイス/プロパノール混合物に浸して構成される別の熱交換器ループで冷却された。ドライアイス/プロパノール混合物は均一な-70℃の槽を創出し、蟻酸カリウムがそこを通過する。蟻酸カリウムは生成物の凍結点より低い温度で対向流熱交換装置に侵入した。この事例において、生成物は、質量%で10% NaCl (10%食塩水)又は1% NaCl (1%食塩水)である。
【0129】
すべての露出管は断熱された。冷却剤及び生成物の質量流量の範囲は(それぞれ)次のようになった:0.011-0.002 [kg/sec] 及び 0.006-0.001 [kg/sec]。一般に、生成物は対向流熱交換器に室温で侵入した。中央推進シャフトは100 rpmという一定速度で回転した。
【0130】
氷が生成されていないとき、システムの熱流量は次の式(式3)を用いて計算された:
d d
熱流束=―Q=Cp―m(Tout-Tin
dt dt
d
ここで、Cpは比熱であり、(―m)は[kg/sec]における質量流量である。冷却剤の温度(T
dt
inとTout)と生成物の温度(TinとTout)はKタイプ熱電対で測定されてスパースペシフィック4チャンネル・データロギング・サーモカプル(Sper Scientific 4 Channel Datalogging)温度計で記録された。事例として氷の生成が含まれている場合、熱流束は次の式(式4)を用いて求められた:
d d d
熱流束・氷考慮=―Q=(Cp×―m(Tout-Tin)(100-70氷)+―mλ%氷
dt dt dt
ここで、λは氷から液体への相変化の潜熱である。
【0131】
氷スラリー生成:上述の表面かき取り熱交換器を用いて氷スラリーを生成した。冷却剤は70%蟻酸カリウムで、生成物は10% NaClであった。
【0132】
図17Aは、冷却剤と生成物の両方について式3と式4を用いて得られた熱流量データを示す。図17Bは、時間の関数としての温度プロファイルを示す。温度プロット(図17B)は、生成物が凍結点よりも低い温度に過冷却されていたことを示している:過冷却の度合が、部分的に、自発生成で生ずる氷の濃度を決定する。氷粒子の自発生成が起こり(図17A−Bで時間的に垂直な線で示される)出てゆく生成物の温度が上がり、氷を作るために融解熱が放出されたことを示す。図17Aは、生成される氷の濃度によって出てゆく生成物の熱流量が増加することによりこれを示している。出てゆく生成物の温度は生成物の凍結点にとどまり、自発生成事象の後に熱交換器の壁からの氷粒子のかき取りが行われた。
【0133】
故障モード確認:装置は処理と分析によって故障モードを確認できるモニタリング装置を有していた。物理装置にはこれは計算並びに実験的校正によって設定された性能基準があり、その基準からのずれを用いてユーザーに装置の運転を変更するように警告が発せられる。熱流の非特徴的な変化は、システム故障の原因を確認するために、温度、回転速度、及びトルクの(個別に及び組合わせで)系統的な評価を行うように促す。
【0134】
図18は、冷却剤ラインの凍結という形で発生する故障について、表面かき取り熱交換器からの代表的なデータセットを示す。冷却剤は46%蟻酸カリウムであり、生成物は1% NaClであった。
【0135】
図18Aのセクション1は、冷却剤と生成物の両方についてシステムの熱流量の大きな変化を示している。この変化に伴って、出てゆく生成物の温度、並びに冷却剤の温度に劇的な上昇が見られたが、冷却剤槽温度は一定にとどまっていた(これは槽が冷却剤と熱を交換していなかったことを示す)(図18)。次にセクション2で見られる冷却剤槽の温度上昇は冷却剤の温度の低下と相関し、冷却剤ラインからの凍結した栓の解放を示した。
【0136】
図19A−Cは熱交換器表面からの氷除去の方法の欠陥という形での故障の代表的なデータセットを示す。冷却剤は46%蟻酸カリウムであり、生成物は1% NaClであった。
【0137】
図19Aは図18A−Bと同様のシステムの熱流の変化を示す。しかし、それは入ってくる冷却剤の温度の大きな変化と相関しておらず、冷却剤槽の温度は変化し続けた(冷却剤と熱が交換されていたことを示す)。熱流の変化に伴って出てゆく生成物の温度の上昇(図19B)、並びに出てゆく冷却剤の温度の低下が見られた。図19Cは、図19Aに示されている熱流の低下時にスクレーパの回転速度に何が起こっているかを表す;時間における相関は、熱流量の変化はスクレーパの回転速度が変化した結果であったことを示している。
【0138】
本発明は、上に記載し例示された実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲及び同等物の範囲内で変形と変更が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二相冷却剤を生成するシステムであって、
第一容器、
第一容器から第一流体を受け取るように結合されたホモジナイザー、
第一容器から前記ホモジナイザーへの第一流体の流れをコントロールするように配置された弁、及び
前記ホモジナイザーへ第二流体を配送するように結合された第二容器を含み、
第一容器は第一流体の第一流体の大気圧での凍結点より低い温度に維持するように、そして第一流体が第一容器から放出されたとき第一流体の実質的に瞬時的な凍結を引き起こすに十分な高いレベルに加圧されるように構成され、
第二容器は第二流体を第一流体の大気圧凍結点より低い温度に維持するように構成され、且つ
前記ホモジナイザーは生成された冷却剤の流出のための開口を含む、
システム。
【請求項2】
前記ホモジナイザーの出口と第二容器との間に加圧器を更に含む請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
ポンプを更に含む請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
二相冷却剤を生成する方法であって、
大気圧凍結点より低い温度に冷却された第一流体を加圧容器から放出することによって生成される微粒子化された固体を第一流体の大気圧凍結点より低い温度に冷却されたキャリア流体と混合すること、及び
前記容器から放出されると第一流体の実質的に瞬時的な凍結を引き起こす十分に高い圧力に前記容器内の圧力を維持すること、
を含む方法。
【請求項5】
微粒子化された前記固体が氷である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
第一流体が水性である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記キャリア流体が水性である、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
水性の第一流体が生理的緩衝剤である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
水性の第一流体が塩を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
水性の第一流体が界面活性剤を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
水性の第一流体が乳化剤を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
水性の前記キャリア流体が生理的緩衝剤である、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
水性の前記キャリア流体が塩を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
水性の前記キャリア流体が界面活性剤を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項15】
水性の前記キャリア流体が乳化剤を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項16】
第一流体が非極性である、請求項4に記載の方法。
【請求項17】
前記キャリア流体が非極性である、請求項4に記載の方法。
【請求項18】
被験体に低体温状態を誘発する方法であって、被験体に請求項4に記載の方法によって生成された医薬的に受容される微粒子二相冷却剤を低体温状態を誘発するのに効果的な量で投与することを含む方法。
【請求項19】
被験体が人間である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記低体温状態が全身的である、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記低体温状態が特定の器官、組織、又は体の箇所に局所化される、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
傷みやすい物品を急速に冷却する方法であって、請求項4に記載の方法によって微粒子二相冷却剤を生成し、且つ傷みやすい物品を前記冷却剤に曝露することを含む方法。
【請求項23】
前記傷みやすい物品が食品又は飲料製品である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記傷みやすい物品が医薬化合物又は組成物である、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記傷みやすい物品が細胞、組織、生物学的流体、又は器官である、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
武器を急速に冷却する方法であって、請求項4に記載の方法によって微粒子二相冷却剤を生成し、且つ前記武器を前記冷却剤に曝露することを含む方法。
【請求項27】
前記武器が銃である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記武器が大砲である、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
部屋を冷却する方法であって、請求項4に記載の方法によって微粒子二相冷却剤を生成し、空気を前記冷却剤に曝露し、且つ冷却された空気を部屋全体に循環させることを含む方法。
【請求項30】
二相、固体−液体冷却剤の冷却能力を決定するシステムであって、
内部と外部を有し知られた熱伝達特性を有する導管であって、前記導管内部を介して所定の容積流量での二相、固体−液体冷却剤が流れるための入口と出口を有する導管、
前記導管の内部を通って流れる前記冷却剤に熱を供給するように配置された熱源、
を含み、
前記導管は、前記冷却剤が前記導管を移する距離の関数として前記冷却剤への熱伝達を検知するように配置された少なくとも一つの熱流束センサを有し、
前記導管はまた、前記冷却剤が前記導管を移する距離の関数として前記冷却剤の温度を検知するように配置された少なくとも一つの温度センサを有し、且つ
前記冷却剤の冷却能力を決定するために前記温度センサ及び前記熱流束センサに結合されたエレクトロニクス、
を含むシステム。
【請求項31】
前記冷却剤の冷却能力は前記冷却剤の熱伝達と温度変化を冷却剤の固体空隙率及び固体粒子サイズに関連づけることによって決定される、請求項30に記載のシステム。
【請求項32】
前記冷却剤が氷と水のスラリーを含む、請求項30に記載のシステム。
【請求項33】
前記導管外部は一定温度に維持されるように構成される、請求項30に記載のシステム。
【請求項34】
前記導管内部は、前記導管内部の断面内で前記冷却剤の固体相と液体相の実質的に均一な分布を維持する、請求項30に記載のシステム。
【請求項35】
前記熱流束センサ及び前記温度センサに結合されるエレクトロニクスは半導体装置を含む、請求項30に記載のシステム。
【請求項36】
二相、固体−液体冷却剤における固体空隙率と固体粒子サイズを検出するシステムであって、
内部と外部を有する知られた熱伝達特性の所定長の導管であって、前記導管内部を通る所定の体積流量の二相、固体−液体冷却剤の流れのための入口と出口を有する導管、
前記導管内部を通って流れる前記冷却剤に熱を伝達するように配置された熱源、
を含み、
前記導管は、前記冷却剤が前記導管を移する距離の関数として前記冷却剤への熱伝達を測定するように配置された少なくとも一つの熱流束センサを有し、
前記導管はまた、前記冷却剤が前記導管を移する距離の関数として前記導管内部における前記冷却剤の温度を測定するように配置された少なくとも一つの温度センサを有し、且つ
測定された熱伝達及び温度を用いて前記冷却剤の固体空隙率と固体粒子サイズを決定するために前記温度センサ及び前記熱流束センサに結合されたエレクトロニクス、
を含むシステム。
【請求項37】
二相、固体−液体冷却剤の冷却能力を決定する方法であって、
内部と外部を有し知られた熱伝達特性を有する所定長の導管を通る二相、固体−液体冷却剤の所定体積の流れに熱を伝達する工程、
前記導管における前記冷却剤の流れへの熱伝達を前記導管を通って前記冷却剤が移する距離の関数として測定する工程、
前記導管における前記冷却剤の温度を前記導管を通って前記冷却剤が移する距離の関数として測定する工程、及び
前記測定された熱伝達及び冷却剤温度を用いて前記冷却剤の冷却能力を計算する工程、
を含む方法。
【請求項38】
前記冷却剤が氷と水のスラリーを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記導管外部を一定の温度に維持することを更に含む請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記導管内部の断面内で前記冷却剤の固体相と液体相の実質的に均一な分布を維持することを更に含む請求項37に記載の方法。
【請求項41】
二相、固体−液体冷却剤における固体空隙率と固体粒子サイズを検出する方法であって、
内部と外部を有し知られた熱伝達特性を有する所定長の導管を通る二相、固体−液体冷却剤の所定体積の流れに熱を伝達する工程、
前記導管における前記冷却剤の流れへの前記熱伝達を前記導管を通って前記冷却剤が移する距離の関数として測定する工程、
前記導管における前記冷却剤の温度を前記導管を通って前記冷却剤が移する距離の関数として測定する工程、
前記測定された熱伝達と冷却剤温度を前記冷却剤の固体空隙率及び固体粒子サイズと関連づける工程、及び
前記冷却剤の固体空隙率及び固体粒子サイズを計算する工程、
を含む方法。
【請求項42】
流体から微粒子化された氷を生成するためのノズルであって、表面と流体通路と少なくとも一つの円錐形の開口を画定するノズルボディーを含み、前記開口の出口は前記開口の入口よりも狭く、前記ノズルは流体が前記流体通路又は開口で固化することを防止するに十分な流体圧力を維持する、ノズル。
【請求項43】
抵抗加熱要素を更に含む請求項42に記載のノズル。
【請求項44】
ニードルバルブを更に含む請求項42に記載のノズル。
【請求項45】
疎水性コーティングを更に含む請求項42に記載のノズル。
【請求項46】
氷スラリーを生成するためのキットであって、
低濃度塩水溶液源、
冷却剤、
前記低濃度塩水溶液の凍結温度をコントロールするように構成された熱交換器、及び
高濃度塩水溶液源、
を含むキット。
【請求項47】
前記低濃度塩水溶液が生理的食塩水溶液である、請求項46に記載のキット。
【請求項48】
前記生理的食塩水溶液が0.45%食塩水溶液である、請求項47に記載のキット。
【請求項49】
前記生理的食塩水溶液が3.0%食塩水溶液である、請求項47に記載のキット。
【請求項50】
前記冷却剤がドライアイス又は圧縮気体である、請求項46に記載のキット。
【請求項51】
前記圧縮気体は窒素である、請求項50に記載のキット。
【請求項52】
前記熱交換器は二つの同心管を含み、内部の管は前記低濃度塩水溶液が流れる管孔を含み、外部の管は、内側の管を含み前記冷却剤を含む管孔を含む、請求項46に記載のキット。
【請求項53】
前記低濃度塩水溶液の一部分は前記熱交換器内で凍結し、残りの前記低濃度塩水溶液は液体状態を維持する、請求項46に記載のキット。
【請求項54】
前記熱交換器はヒートパイプである、請求項46に記載のキット。
【請求項55】
前記ヒートパイプが環状ヒートパイプである、請求項54に記載のキット。
【請求項56】
前記氷スラリーは約30%から約70%までの氷を含む、請求項46に記載のキット。
【請求項57】
前記氷スラリーは約40%から約60%までの氷を含む、請求項46に記載のキット。
【請求項58】
前記氷スラリーは約50%から約50%までの氷を含む、請求項46に記載のキット。
【請求項59】
前記高濃度塩水溶液は7.5%塩水溶液である、請求項46に記載のキット。
【請求項60】
氷スラリーを生成するシステムであって、
低濃度塩水溶液源、
冷却剤源、
前記低濃度塩水溶液の凍結温度をコントロールするように構成された熱交換器、及び
前記氷スラリーに熱を供給するように配置された熱源を含み、
前記熱源は氷結晶をなめらかにするように構成される、
システム。
【請求項61】
前記低濃度塩水溶液が生理的食塩水溶液である、請求項60に記載のシステム。
【請求項62】
前記生理的食塩水溶液は0.45%食塩水溶液である、請求項61に記載のシステム。
【請求項63】
前記生理的食塩水溶液は3.0%食塩水溶液である、請求項61に記載のシステム。
【請求項64】
前記冷却剤がドライアイス又は圧縮気体である、請求項60に記載のシステム。
【請求項65】
前記圧縮気体は窒素である、請求項64に記載のシステム。
【請求項66】
前記熱交換器は二つの同心管を含み、内部の管は前記低濃度塩水溶液が流れる管孔を含み、外部の管は、内側の管を含み前記冷却剤を含む管孔を含む、請求項60に記載のシステム。
【請求項67】
前記低濃度塩水溶液の一部分は前記熱交換器内で凍結し、残りの前記低濃度塩水溶液は液体状態を維持する、請求項60に記載のシステム。
【請求項68】
前記熱交換器はヒートパイプである、請求項60に記載のシステム。
【請求項69】
前記ヒートパイプが環状ヒートパイプである、請求項68に記載のシステム。
【請求項70】
前記氷スラリーは約30%から約70%までの氷を含む、請求項60に記載のシステム。
【請求項71】
前記氷スラリーは約40%から約60%までの氷を含む、請求項60に記載のシステム。
【請求項72】
前記氷スラリーは約50%から約50%までの氷を含む、請求項60に記載のシステム。
【請求項73】
氷スラリーを生成する装置であって、
熱交換器を含むハウジング、
駆動シャフト、
前記駆動シャフトに結合された少なくとも一つのスクレイパー・ブレード、
前記熱交換器の遠位端に結合された内部ディスク、
前記熱交換器を含むハウジングに結合された混合容器ハウジング、及び
前記熱交換器から氷スラリーを受け取り、高濃度塩水溶液を受け取るように構成された混合容器、を含み
前記熱交換器は少なくとも一つの冷却剤を含み、流体の凍結温度をコントロールするように構成され、
前記ブレードは前記熱交換器の側壁から氷をかき取るように構成され、
前記内部ディスクは前記駆動シャフトの遠位端に配置されたベアリングを保持するように構成され、
前記混合容器ハウジングは混合容器を含み、且つ
前記混合容器は混合ブレードを含む、
装置。
【請求項74】
前記熱交換器が二つの同心管を含み、内部の管は流体が流れる管孔を含み、外部の管は、内側の管を含み且つ前記冷却剤を含む管孔を含む、請求項73に記載の装置。
【請求項75】
前記流体は生理的食塩水溶液である、請求項73に記載の装置。
【請求項76】
前記生理的食塩水溶液は0.45%食塩水溶液である、請求項75に記載の装置。
【請求項77】
前記生理的食塩水溶液は3.0%食塩水溶液である、請求項75に記載の装置。
【請求項78】
前記冷却剤がドライアイス又は圧縮気体である、請求項73に記載の装置。
【請求項79】
前記圧縮気体は窒素である、請求項78に記載の装置。
【請求項80】
前記熱交換器はヒートパイプである、請求項73に記載の装置。
【請求項81】
前記ヒートパイプが環状ヒートパイプである、請求項80に記載の装置。
【請求項82】
前記氷スラリーは約30%から約70%までの氷を含む、請求項73に記載の装置。
【請求項83】
前記氷スラリーは約40%から約60%までの氷を含む、請求項73に記載のシステム。
【請求項84】
前記氷スラリーは約50%から約50%までの氷を含む、請求項73に記載の装置。
【請求項85】
前記高濃度塩水溶液は7.5%塩水溶液である、請求項73に記載の装置。
【請求項86】
第一ポンプを更に含み、第一ポンプは前記氷スラリーを前記装置の一つ以上の構成要素を介して輸送するように構成されている、請求項73に記載の装置。
【請求項87】
第二ポンプを更に含み、第二ポンプは前記冷却剤を前記熱交換器を介してポンプ配送するように構成されている、請求項73に記載の装置。
【請求項88】
氷スラリーを生成する方法であって、低濃度塩水溶液を熱交換器と接触させる工程、及び
高濃度塩水溶液を前記氷スラリーと混合する工程を含み、
前記熱交換器は少なくとも一つの冷却剤を含み、前記塩水溶液の凍結温度をコントロールするように構成され、前記塩水溶液の一部は前記熱交換器内で凍結し、残りの塩水溶液は液体状態を維持して氷スラリーを形成する、方法。
【請求項89】
前記熱交換器が二つの同心管を含み、内部の管は前記低濃度塩水溶液が流れる管孔を含み、外部の管は、内側の管を含み且つ前記冷却剤を含む管孔を含む、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
前記熱交換器はヒートパイプである、請求項88に記載の方法。
【請求項91】
前記ヒートパイプが環状ヒートパイプである、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
前記低濃度塩水溶液が生理的食塩水溶液である、請求項88に記載の方法。
【請求項93】
前記氷スラリーは約30%から約70%までの氷を含む、請求項88に記載の方法。
【請求項94】
前記氷スラリーは約40%から約60%までの氷を含む、請求項88に記載の方法。
【請求項95】
前記氷スラリーは約50%から約50%までの氷を含む、請求項88に記載の方法。
【請求項96】
前記高濃度塩水溶液は7.5%塩水溶液である、請求項88に記載の方法。
【請求項97】
被験体に低体温状態を誘発する方法であって、前記被験体に請求項88に記載の方法によって生成された医薬的に受容される氷スラリーを、低体温状態を誘発するのに有効量で投与することを含む方法。
【請求項98】
前記被験体が人間である、請求項97に記載の方法。
【請求項99】
前記低体温状態が組織的である、請求項97に記載の方法。
【請求項100】
前記低体温状態が特定の器官、組織、又は体の部位に局所化される、請求項97に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17A】
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【図17B】
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【図18A】
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【図18B】
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【図19A】
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【図19B】
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【図19C】
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【公表番号】特表2011−502237(P2011−502237A)
【公表日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−530170(P2010−530170)
【出願日】平成20年10月20日(2008.10.20)
【国際出願番号】PCT/US2008/080435
【国際公開番号】WO2009/052470
【国際公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(500429103)ザ・トラスティーズ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・ペンシルバニア (102)
【Fターム(参考)】