説明

二軸延伸ポリアミドフィルムの製造方法

【課題】表面欠点が少なく、厚みの均一性に優れた二軸延伸ポリアミドフィルムを効率的に製造できる方法を提供する。
【解決手段】未延伸ポリアミドフィルムを逐次二軸延伸する二軸延伸ポリアミドフィルムの製造方法において、ロール方式縦延伸機の最上流側の低速回転ロールの上流側3m以内の範囲で該未延伸ポリアミドフィルムを加熱して表面温度を30〜60℃にしてロール方式縦延伸機の最上流側の低速回転ロールに導いて縦方向に延伸した後、該一軸延伸ポリアミドフィルムをテンターに導いて横方向に延伸した後、熱固定することを特徴とする二軸延伸ポリアミドフィルムの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二軸延伸ポリアミドフィルムの製造方法に関するものである。更に詳細には、表面欠点が少なく、厚みの均一性に優れ、かつ生産性に優れた二軸延伸ポリアミドフィルムの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、低速回転ロールと高速回転ロールの周速度差を利用してフィルムを縦延伸する場合、ロール周速とフィルムの速度が一致せず、ロール上でフィルムが滑ってフィルム表面に擦り傷が発生しやすいという問題があった。
【0003】
かかる問題を回避するため、ロール方式縦延伸機の高速ロール上のニップロールを使用せず、縦延伸機と横延伸機の間にダンサーロールを配置して張力調整を行う方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−38801号公報
【0004】
しかしながら、この方法では、高速回転ロールのニップロール付近で発生するフィルムの滑りに起因した擦り傷は解消されるが、ダイスから吐出されたポリアミド溶融樹脂膜から発生した低分子量物が冷却ロールで固化され、次いで、この固化物が未延伸ポリアミドフィルムに転写された状態で縦延伸機に供給され、固化物が縦延伸機のロール(特に、低速回転ロール)に堆積し、この堆積物上を未延伸ポリアミドフィルムが滑って発生する擦り傷を解消できないという問題があった。さらに、この方法は、横延伸機への通膜時、又は、横延伸工程での破断時に生じる急激な張力変動により、ダンサーロールの軸受部が損傷しやすいという問題があった。
【0005】
かかる問題を回避するため、クリップ間隔がパンタグラフ方式で広がるテンターを用いて縦延伸する方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献2】特開2001−64408号公報
【0006】
しかしながら、この方法では、擦り傷は解消されるが、製膜速度が遅く生産性が悪いという問題があり、二軸延伸ポリアミドフィルムの製造方法として未だ満足されるものではなかった。
【0007】
また、ダイスから吐出されたポリアミド溶融樹脂膜から発生した低分子量物が冷却ロールで固化することを抑制する方法として、紫外線を照射して清浄化した冷却ロールに0.1〜10μmの水膜を均一に形成させた後、溶融樹脂膜を冷却固化する方法が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献3】特開2004−9597号公報
【0008】
しかしながら、この方法では、ポリアミド溶融樹脂膜の静電密着方法として好適なストリーマーコロナ放電(直流高電圧を印加させて発生させた放電)を用いた場合、スパークが発生しやすく、その結果、未延伸ポリアミドフィルムが破断するため、二軸延伸ポリアミドフィルムの製造方法として未だ満足されるものではなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来技術の課題を背景になされたものであって、縦延伸機のロールに低分子量物が堆積した場合においても、ポリアミドフィルム表面に擦り傷の発生しにくいため、表面欠点が少なく、厚みの均一性に優れた二軸延伸ポリアミドフィルムを効率的に製造できる方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、ポリアミド溶融樹脂フィルムを回転式冷却ロール上にキャストして冷却固化して得た未延伸ポリアミドフィルムを逐次二軸延伸する二軸延伸ポリアミドフィルムの製造方法において、ロール方式縦延伸機の最上流側の低速回転ロールの上流側3m以内の範囲で該未延伸ポリアミドフィルムを加熱して表面温度を30〜60℃にしてロール方式縦延伸機の最上流側の低速回転ロールに導いて縦方向に延伸した後、該一軸延伸ポリアミドフィルムをテンターに導いて横方向に延伸した後、熱固定することを特徴とする二軸延伸ポリアミドフィルムの製造方法である。
【0011】
また、本件は、上記未延伸ポリアミドフィルムを加熱する手段として、50〜120℃の空気を風速5〜20m/秒で吹付けて加熱する上記の二軸延伸ポリアミドフィルムの製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の製造方法では、縦延伸機のロール上に堆積した低分子量物上でフィルムが滑ってフィルム表面に発生する擦り傷を抑制できるため、表面欠点が少なく、厚みの均一性に優れた二軸延伸ポリアミドフィルムを安定して効率良く製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明について、実施の形態とともに詳細に説明する。
本発明の製造方法は、ポリアミドフィルム(ガラス転移温度が50℃以下で溶融樹脂膜から低分子量物が発生しやすいポリマーからなるフィルム)の製造方法として好適である。ポリエチレンテレフタレート等のガラス転移温度が50℃を超えるポリマーでは、縦延伸機のロールに粘着しない範囲で軟化させにくいため、本発明の効果があまり発現しない。
【0014】
本発明の製造方法は、縦延伸工程の最上流側の低速回転ロールの手前3m以内の範囲で未延伸ポリアミドフィルムを加熱しての表面温度を30〜60℃にして、未延伸ポリアミドフィルムを低速回転ロールに粘着しない範囲で軟化させ、未延伸ポリアミドフィルムが低速回転ロール上に堆積した低分子量の固化物上で滑ることを抑制することが必要である。
【0015】
フィルムの表面温度が30℃未満の場合、低速回転ロール上に堆積した低分子量の固化物上でのフィルムの滑りを抑制する効果が小さいため好ましくない。逆に、60℃を超える場合、フィルムが低速回転ロールへ粘着しやすく、その結果、粘着起因の傷が発生するため好ましくない。また、フィルムが低速回転ロールへ粘着しなくても、未延伸ポリアミドフィルムの結晶過度が高くなりすぎて延伸性が低下し、二軸延伸ポリアミドフィルムの厚みの均一性が低下するため好ましくない。
【0016】
最上流側の低速回転ロールの上流側3mを超える範囲で未延伸ポリアミドフィルムを加熱した場合、未延伸ポリアミドフィルムが低速回転ロールに達した時点で未延伸ポリアミドフィルムの表面温度が30℃未満になりやすいため好ましくない。
【0017】
本発明の製造方法は、上記未延伸ポリアミドフィルムを加熱する手段として、50〜120℃の空気を風速5〜20m/秒で吹付けて加熱することが未延伸ポリアミドフィルムの表面を均一加熱できるため好ましい。
【0018】
吹き付ける空気の温度が50℃未満の場合及び/又は風速5m/秒未満の場合、未延伸ポリアミドフィルムの表面温度を30℃以上に加熱するための装置が大きくなるため好ましくない。逆に、温度が120℃を超える場合及び/又は風速が20m/分を超える場合、未延伸ポリアミドフィルムの表面温度が60℃を超え、未延伸ポリアミドフィルムの結晶化が進行して延伸しにくくなるので好ましくない。
本発明の製造方法は、加熱空気の噴出し口と未延伸ポリアミドフィルムとの距離は5〜20cmにすることが均一加熱できるため好ましい。
【0019】
本発明の製造方法で使用するポリアミド樹脂は単一であっても、複数を混合したものであってもかまわない。
かかるポリアミド樹脂の具体例として、ε−カプロラクタム、エナントラクタム、ラウリルラクタム等のラクタム類からの開環重合により得られるポリアミド、ω−アミノヘプタン酸、ω−アミノウンデカン酸等のアミノカルボン酸類の重縮合により得られるポリアミド、ジアミンとジカルボン酸とのナイロン塩の重縮合により得られるポリアミド、更には、上記記載の各種ラクタム、アミノカルボン酸、ジアミンとジカルボン酸とのナイロン塩とを適宜混合したものを共重縮合して得られるポリアミド共重合体等が挙げられる。
【0020】
上記のジアミンの具体例として、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、ヘキサメチレンアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、シクロヘキサンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン等の脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン等が挙げられる。
【0021】
上記のジカルボン酸の具体例として、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸等の脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。
【0022】
本発明の製造方法で使用されるポリアミド樹脂は公知の方法で製造される。例えば、ラクタムを水溶媒の存在下に加圧下で昇温し、加えた水及び縮合水を除きながら重合させる方法により製造される。また、ジアミンとジカルボン酸からなるナイロン塩を水溶媒の存在下に加圧下で昇温し、加えた水及び縮合水を除きながら重合させる方法により製造される。更に、ジアミンを溶融状態のジカルボン酸に直接加えて常圧下で重縮合する方法によっても製造される。いずれも溶融重合後、更に固相重合により高分子量化した重合体も使用可能である。
【0023】
本発明の製造方法で使用するポリアミド樹脂として、ポリカプロラクタム(ナイロン6)、ポリメタキシリレンアジパミド(ナイロンMXD6)、ポリへキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、及びこれらの混合物が好適に用いられる。
ナイロン6は特に好適であるが、ナイロン6にナイロンMXD6を1〜15質量%配合した原料を用いると延伸性が良好となり、製造における破断回数が減るので特に好ましい。
【0024】
本発明の製造方法では、ポリアミド樹脂の相対粘度は1.5以上が好ましく、2.0〜3.0が更に好ましい。
ポリアミド樹脂の相対粘度が1.5未満の場合、ポリアミド樹脂の分子量が低く、縦延伸後に実施する横延伸において破断することがあり好ましくない。
【0025】
本発明の製造方法で使用されるポリアミド樹脂では、その溶融粘度を大幅には変えない範囲で、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、ブロッキング防止剤、安定剤、染料、顔料、無機質微粒子等の各種添加剤や、他の熱可塑性樹脂等を添加することができる。また、ポリアミド樹脂の溶融粘度を大幅には変えない範囲で、耐屈曲性等を改良するために変性ポリオレフィン、アイオノマー樹脂、エラストマー等を添加することもできる。
【0026】
本発明の製造方法では、必要に応じて、ポリアミド樹脂にリン化合物(例えば、燐酸、次亜燐酸、亜燐酸、又はそれらの金属塩や部分中和塩等)配合してもかまわない。この場合の金属塩の金属として、カリウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム等が挙げられる。
【0027】
本発明の製造方法では、ポリアミド溶融樹脂膜を冷却固化させる際の冷却ロールの温度
は、溶融樹脂膜を冷却できれば、特に限定しないが、冷却効率を高めることと冷却ロールへの水滴の結露を抑制することを両立させるため10〜40℃が好ましい。
【0028】
本発明の製造方法では、押出機で溶融したポリアミド樹脂フィルムを回転冷却ロール上にキャストする際、ストリーマコロナ放電の静電密着方法で回転冷却ロール上にキャストし未延伸ポリアミドフィルムを得ることが好ましい。
【0029】
上記静電密着方法で使用される電極としては、例えば、針状、鋸刃状のように、多数のコロナ放電可能な突起を有するものが挙げられる。また、突起先端の曲率半径は0.005〜0.09mmが好ましく、0.01〜0.07mmが更に好ましい。
【0030】
突起先端の曲率半径が0.005mmを未満の場合、電極を取り扱う際に先端部が損傷しやすく、その結果、損傷に起因した異常放電が発生しやすいため好ましくない。逆に、0.09mmを超える場合、ポリアミド溶融樹脂膜に十分、かつ、均一な電荷を付与し難い。即ち、鈍い先端形状の突起では、ストリーマコロナ放電を行なうのに電圧を高くする必要があり、火花放電が発生しやすくなるため(ストリーマコロナ放電を安定的に発生させることが困難になるため)好ましくない。
【0031】
また、突起の無いタングステン線等を電極として用いた場合は、均一な放電が得られず、ポリアミド溶融樹脂膜と冷却ロールの密着力が不十分となり冷却固化フィルムの結晶化度がばらつき、その結果、二軸延伸後の厚みの均一性が低下するため好ましくない。
【0032】
本発明の製造方法で使用される突起の材質として、真鍮、ステンレス鋼、チタン、タングステン、金、銀、銅、銀−タングステン、銀−ニッケル、銀−酸化カドニウム、銀−タングステンカーバイド、銀−グラファイト、銅−タングステン、銅−クロム、銅−ベリリウム等の高導電性素材(比抵抗が5μΩ・cm以下)が挙げられる。比抵抗が5μΩ・cmを越える場合、一時的に特定の突起に高電流が流れた場合に、その突起での発熱が大きく高温となり、その突起が溶融摩耗、又は、酸化摩耗しやすいため好ましくない。
【0033】
本発明の製造方法では、電極に直流高圧電源発生装置から正又は負で2〜30KVの直流高電圧を印加することが好ましい。印加電圧が2KV未満の場合、ストリーマコロナ放電が発生しにくいため好ましくない。逆に、30KVの場合、火花放電が発生しやすくなるため好ましくない。
【0034】
次いで、未延伸ポリアミドフィルム表面を前記の温度に加熱した後、50〜100℃に加熱した低速ロールに供給し、20〜40℃の高速ロールとの間で周速差を利用して2.5〜3.8倍縦方向に延伸して一軸延伸ポリアミドフィルムを得る。
【0035】
この際、延伸温度が60℃未満の場合、ネッキングが生じ、厚みの均一性が低下するため好ましくない。逆に、100℃を超える場合、熱結晶化が進みすぎて次工程の横方向の延伸で破断しやすくなるため好ましくない。また、2.5倍未満の場合、縦方向の配向が不十分となり、厚みの均一性が低下するため好ましくない。逆に、3.8倍を超える場合、配向結晶化が進みすぎて次工程の横方向の延伸で破断しやすくなるため好ましくない。
【0036】
本発明の製造方法において縦方向の延伸は、一段で行っても多段で行ってもかまわない。多段で行う場合、各段階の延伸を60〜110℃で1.1〜2.4倍で実施して合計倍率を2.5〜3.8倍にすることが次工程の横方向の延伸での破断を低減し、得られた二軸延伸ポリアミドフィルムの厚みを均一化できるため好ましい。
【0037】
次いで、必要に応じて一軸延伸ポリアミドフィルムの片面、若しくは両面に、樹脂塗布層を設ける。この樹脂塗布層の機能として、帯電防止性、易滑性、易接着性等を付与することが挙げられる。
上記樹脂塗布層を設ける方法の具体例として、リバースロール・コート法、グラビア・
コート法、キス・コート法、ロールフラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート
法、マイヤーバーコート法、パイプドクター法、含浸・コート法及びカーテン・コート
法等が挙げられ、これらの方法を単独、又は、組み合わせて行ってもよい。
【0038】
次いで、一軸延伸ポリアミドフィルムをテンターに導き、50℃〜220℃、好ましくは、60〜190℃で3.0倍以上、好ましくは3.5倍以上横方向に延伸した後、150〜220℃、好ましくは、180〜225℃で熱固定して二軸延伸ポリアミドフィルムを得る。この際、熱固定処理工程において、1〜10%緩和処理を行ってもかまわない。
【0039】
横方向の延伸温度が低すぎる場合、破断しやすいため好ましくない。逆に、温度が高すぎると得られたフィルムの厚みの均一性が低下するため好ましくない。また、延伸倍率が3.0倍未満の場合、得られたフィルムの厚みの均一性が低下するため好ましくない。
【0040】
本発明の製造方法では、二軸延伸ポリエステルフィルムの厚み又は層構成(単層又は多層)は特に限定されないが、厚みは5〜100μm、層構成としては単層又はA/B二種二層、A/B/A二種三層などの複層構成が好適に採用できる。複層構成を採用する場合は、共押出しによる複層手段が好適に採用できる。
【実施例】
【0041】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら制限されるものではない。
【0042】
〔評価方法〕
(1)未延伸ポリアミドフィルムの表面温度
赤外線温度計(OPTEX社製THERMO−HUNTER)を用いて、ロール方式縦延伸機の最上流側の低速回転ロールに未延伸ポリアミドフィルムが接する1cm上流側で未延伸ポリアミドフィルムの中央部と両端部から10cmの部分の3点の表面温度を測定し、その平均値を未延伸ポリアミドフィルムの表面温度とした。
【0043】
(2)二軸延伸ポリアミドフィルムの表面欠点
約48時間連続製膜後にフィルムワインダーで巻き上がったフィルムロールの中央部巾1m、長さ10mの二軸延伸ポリアミドフィルムサンプルを暗室内で垂直方向に垂らした。次いでフィルム背面の全面に光沢の無い黒色の布を配置し、二軸延伸ポリアミドフィルムを巻き出しつつ、前面(被覆層面)からブロムライト(LPL社製VIDEO LIGHT VGL301 100V 300W)を用いてフィルム面に対し約10°から45°の範囲で該ブロムライトの角度を変えながら、表面欠点を拡大率10倍のスケール付きルーペ(PEAK社製SCALE LUPE ×10)を用いて検出し、マーキングを行った。さらに、ハケ(コクヨ社製TZ−4021N)を用いて欠点部を軽く払い埃付着ではないことを確認し、樹脂塗布層を持つフィルムの場合はメチルエチルケトンを含浸させたキムワイプ(クレシア社製WIPRSS200)を用いて欠点部を3回軽く擦り、欠点部が消失しないことで樹脂塗布層由来の欠点でないことを確認した上で、長径1mm以上の表面欠点を評価した。欠点が5個以下を実用性ありと判断した。
【0044】
(3)二軸延伸ポリアミドフィルムの厚みの均一性(TV(%))
約48時間連続製膜後にフィルムワインダーで巻き上がったフィルムロールの中央部から縦方向に巾4cm×長さ3mのフィルム片を切り出し、これを1mの長さに3分割したものを測定サンプルとする。該測定サンプルをアンリツ電気社製の連続厚み計(マイクロメーター:K306C、レコーダー:K310C)を用いて下記の条件で測定する。測定サンプル1m内の(最大値−最小値)を求め,3個の平均値(ΔT平均)を算出する。次いで、平均厚み(T平均:連続厚み測定後のフィルム片を3枚重ねて一方の端部から5cmのところを基準とし、5cmピッチでダイアルゲージを用いて18点測定し、18点の厚みの合計値を54で除した値)を算出する。次いで、TV=(ΔT平均/T平均)×100(%)を算出し、TVが20%以下を実用性ありと評価する。
[連続厚みの測定条件]
フィルムの送り速度:1.5m/分
マイクロメーターのスケール:±5μm
レコーダーのハイカット:5Hz
レコーダーのスケール:±2μm
レコーダーのチャート速度:2.5mm/秒
レコーダーの測定レンジ:×1
【0045】
(4)末端基量
アミノ末端基量[AEG]はポリアミド樹脂をフェノール/エタノール溶媒(容積比:4/1)に溶解させ、0.02N塩酸を所定量加えた後、0.02N水酸化ナトリウム水溶液で逆滴定して求める。カルボキシル末端基量[CEG]はポリアミド樹脂を180℃のベンジルアルコールに溶解させ、フェノールフタレイン指示薬を加えて0.02Nの水酸化カリウムのエタノール溶液で滴定して求める。
【0046】
(5)ポリアミド樹脂の相対粘度(RV)
96質量%硫酸がオストワルド粘度計の一定区間を通過する時間(T1)と96質量%硫酸にポリアミド樹脂を1質量%になるように溶解調整した硫酸がオストワルド粘度計の一定区間を通過する時間(T2)を測定し、T2/T1より相対粘度を求める。
【0047】
[実施例1]
ナイロン6(AEG:45当量/トン、CEG:81当量/トン、RV:2.8、平均粒径2.5μmの微粉末合成非晶質シリカを4000ppm含有)を100℃で10時間減圧乾燥(133.3Pa)した後、押出機に供給し、フィード部250℃、コンプレッション部270℃、メータリング部290℃で溶融させ、275℃のTダイスからフィルム状に溶融押出した。これを表面温度20℃の冷却ロール(直径1.2m)で30m/分で引き取る際に、先端曲率半径が0.04mm、太さ2mmφ、長さ30mmのタングステン製の針(突起)を1mmピッチで真鍮製の板に埋め込み、ホルダーに固定した静電密着用電極を用い、−6KVの直流高電圧を印加して未延伸ポリアミドフィルムを得た。
【0048】
次いで、この未延伸ポリアミドフィルムに85℃の空気をフィルム下面10cm、縦延伸機の最初(最上流)の低速ロールから1mに設けた吹出口から風速15m/秒で吹付けて未延伸ポリアミドフィルムの表面温度を45℃として縦延伸機の最初(最上流)の低速ロールに導いた。縦延伸条件は最終(最下流)の低速ロールの温度を60℃、それ以外の低速ロールの温度を50℃とし、25℃の高速ロール群との周速差で長手方向に3.3倍延伸して一軸延伸ポリアミドフィルムを得た。
【0049】
次いで、一軸延伸フィルムを横延伸機に導き、端部をクリップで把持して予熱温度110℃、延伸温度110/120/190℃と下流のゾーンほど高温にして4.0倍延伸した。次にその延伸された巾を保ったまま、温度220℃の熱風ゾーンにて熱固定処理を行い、さらに温度150℃の熱風ゾーンにて巾方向に3%の緩和処理後、フィルム両端部をトリミングし、さらにワインダーで巻き取り、厚み15μmの二軸延伸ポリアミドフィルムを得た。
表1からわかるように、本実施例の方法は、表面欠点が少なく、厚みの均一性に優れた二軸延伸ポリアミドフィルムを安定して効率良く製造方法であるといえる。
【0050】
[実施例2]
空気の温度を100℃にして未延伸ポリアミドフィルムの表面温度を50℃として縦延伸機の最初(最上流)の低速ロールに導いた以外は実施例1と同様にして厚み15μmの二軸延伸ポリアミドフィルムを得た。
表1からわかるように、本実施例の方法は、表面欠点が少なく、厚みの均一性に優れた二軸延伸ポリアミドフィルムを安定して効率良く製造方法であるといえる。
【0051】
[実施例3]
空気の風速を7m/秒にして未延伸ポリアミドフィルムの表面温度を33℃として縦延伸機の最初(最上流)の低速ロールに導いた以外は実施例1と同様にして厚み15μmの二軸延伸ポリアミドフィルムを得た。
表1からわかるように、本実施例の方法は、表面欠点が少なく、厚みの均一性に優れた二軸延伸ポリアミドフィルムを安定して効率良く製造方法であるといえる。
【0052】
[比較例1]
空気の温度を40℃にして未延伸ポリアミドフィルムの表面温度を25℃として縦延伸機の最初(最上流)の低速ロールに導いた以外は実施例1と同様にして厚み15μmの二軸延伸ポリアミドフィルムを得た。
表1からわかるように、この方法は、表面欠点が多く、二軸延伸ポリアミドフィルムの製造方法として好ましくない。
【0053】
[比較例2]
空気の温度を125℃、風速を23m/分にして未延伸ポリアミドフィルムの表面温度を63℃として縦延伸機の最初(最上流)の低速ロールに導いた以外は実施例1と同様にして厚み15μmの二軸延伸ポリアミドフィルムを得た。
表1からわかるように、この方法は、厚みの均一性が悪く、二軸延伸ポリアミドフィルムの製造方法として好ましくない。
【0054】
[比較例3]
吹出口の位置を最初(最上流)の低速ロールから4mにした以外は実施例1と同様にして厚み15μmの二軸延伸ポリアミドフィルムを得た。
表1からわかるように、この方法は、表面欠点が多く、二軸延伸ポリアミドフィルムの製造方法として好ましくない。
【0055】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の二軸延伸ポリアミドフィルムの製造方法は、連続製膜時に冷却固化工程で溶融樹脂膜から発生した低分子量物が縦延伸機のロールに堆積しても、この堆積物上でフィルムの滑りによる擦り傷が発生しにくく、その結果、表面欠点が少なく、かつ厚みの均一性に優れた二軸延伸ポリアミドフィルムを効率的に製造できるため、二軸延伸ポリアミドフィルムの製造方法として極めて有用であるといえる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド溶融樹脂フィルムを回転式冷却ロール上にキャストして冷却固化して得た未延伸ポリアミドフィルムを逐次二軸延伸する二軸延伸ポリアミドフィルムの製造方法において、ロール方式縦延伸機の最上流側の低速回転ロールの上流側3m以内の範囲で該未延伸ポリアミドフィルムを加熱して表面温度を30〜60℃にしてロール方式縦延伸機の最上流側の低速回転ロールに導いて縦方向に延伸した後、該一軸延伸ポリアミドフィルムをテンターに導いて横方向に延伸した後、熱固定することを特徴とする二軸延伸ポリアミドフィルムの製造方法。
【請求項2】
未延伸ポリアミドフィルムに50〜120℃の空気を風速5〜20m/秒で吹付けて、未延伸ポリアミドフィルムを加熱して表面温度を30〜60℃にする請求項1に記載の二軸延伸ポリアミドフィルムの製造方法。

【公開番号】特開2009−126158(P2009−126158A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−306917(P2007−306917)
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】