説明

二軸延伸ポリエステルフィルム

【課題】同時二軸延伸方式によって得られるフィルムであって、フィルムの自重による変形を抑制するための充分な厚みを持ちながら、優れた透明性を有し、且つフィルムの幅方向において均一な透明性を有する二軸延伸ポリエステルフィルムを提供すること。
【解決手段】エチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位としてなるポリエステル(A)10〜90質量部と、エチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位としてなり、ポリエステル(A)より固有粘度が0.05dl/g以上高いポリエステル(B)90〜10質量部とを溶融混練して得られたポリエステル組成物からなる、同時二軸延伸方式によって延伸された厚みが100μm以上のフィルムであって、上記ポリエステル組成物の170℃における半結晶化時間が30秒以上である二軸延伸ポリエステルフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二軸延伸ポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
二軸延伸ポリエステルフィルムは、優れた機械特性や光学特性を持つため、包装用、ラベル用、農業用等の用途によく用いられ、また特に光学用フィルムとして、フラットパネルディスプレイの部材である拡散板や、プリズムシートのベースフィルムとして、またタッチパネルの基材として広く用いられている。
【0003】
二軸延伸フィルムをこれらの用途に用いるにあたっては、傷等の表面欠点が少ないことが好ましく、特に上記のような光学用途に用いられる二軸延伸ポリエステルフィルムは、極限まで表面欠点を減らすことが求められる。そのためには、ロールに接することが少ない同時二軸延伸方式が有効である。
【0004】
また、光学用途の中でも特に高い視認性が要求されるフラットパネルディスプレイの部材の用途では、フィルムには高い透明性、および黄色味等の着色がないことが要求されている。
【0005】
さらに、フィルムにある程度の剛性が要求される場合は、フィルム厚みの比較的厚いフィルムが用いられるが、例えば光学用途においても、ディスプレイの大型化に伴い、部材のフィルムには、自重による変形を防ぐためにある程度の厚みが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−192890号公報
【特許文献2】特開2007−2239号公報
【特許文献3】特開2007−138157号公報
【特許文献4】特開2007−138159号公報
【特許文献5】特開2007−138160号公報
【特許文献6】WO2005/100440号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような背景のもと、発明者らは、固有粘度の異なるポリエステルを溶融混練した樹脂組成物からなる、厚みの比較的厚い二軸延伸フィルムの検討を行なっているが、かかる二軸延伸フィルムを同時二軸延伸方式によって得ようとすると、フィルムの幅方向において透明性のバラツキが生じることを新たに見出した。
【0008】
そこで本発明は、同時二軸延伸方式によって得られるフィルムであって、フィルムの自重による変形を抑制するための充分な厚みを持ちながら、優れた透明性を有し、且つフィルムの幅方向において均一な透明性を有する二軸延伸ポリエステルフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために、以下の構成を採用するものである。
1.エチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位としてなるポリエステル(A)10〜90質量部と、エチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位としてなり、ポリエステル(A)より固有粘度が0.05dl/g以上高いポリエステル(B)90〜10質量部とを溶融混練して得られたポリエステル組成物からなる、同時二軸延伸方式によって延伸された厚みが100μm以上のフィルムであって、上記ポリエステル組成物の170℃における半結晶化時間が30秒以上である二軸延伸ポリエステルフィルム。
2.光学用途に用いられる上記1に記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、フィルムの自重による変形を抑制するための充分な厚みを持ちながら、優れた透明性を有し、且つフィルムの幅方向において均一な透明性を有する二軸延伸ポリエステルフィルムを提供することができる。また、特に光学用途に好適に用いられる二軸延伸ポリエステルフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
[ポリエステル]
本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムは、ポリエステル(A)10〜90質量部と、ポリエステル(A)より固有粘度が0.05dl/g以上高いポリエステル(B)90〜10質量部とを溶融混練して得られたポリエステル組成物からなる。ポリエステル(A)とポリエステル(B)との混合比率を上記数値範囲とすることによって、ポリマー濾過時の濾過圧の上昇による生産性の低下を招来することなく、優れた透明性を有するフィルムを得ることができる。このような観点から、混合比率は、好ましくはポリエステル(A)60〜80質量%、ポリエステル(B)40〜20質量%である。
【0012】
本発明におけるポリエステル(A)は、エチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位としてなるポリエステルである。ここで「主たる繰り返し単位」とは、ポリエステルを構成する全繰り返し単位の80モル%以上、好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上の繰り返し単位をいう。すなわち、かかるポリエステル(A)は共重合ポリエステルであってもよい。その場合、共重合成分としては、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の酸成分や、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール等のグリコール成分を例示することができる。
【0013】
本発明におけるポリエステル(B)は、エチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位としてなるポリエステルである。ここで「主たる繰り返し単位」とは、ポリエステルを構成する全繰り返し単位の80モル%以上、好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上の繰り返し単位をいう。すなわち、かかるポリエステル(B)は共重合ポリエステルであってもよい。その場合、共重合成分としては、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の酸成分や、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール等のグリコール成分を例示することができる。
【0014】
本発明におけるポリエステル(A)およびポリエステル(B)(以下、これらをまとめてポリエステルと呼称する場合がある。)は、アンチモン化合物を重合触媒として重合されたポリエステルであることが好ましく、ポリエステルの固有粘度を本発明における好ましい範囲とすることができ、それによりポリエステル(A)とポリエステル(B)との固有粘度差を本発明が規定する範囲にすることが容易となる。この場合、ポリエステルは、アンチモン元素を例えば0.1〜250ppm、好ましくは1〜245ppm、さらに好ましくは10〜240ppm含有する。この範囲で含有することで、さらに透明性の向上効果を高くすることができる。また本発明においては、ポリエステル(A)およびポリエステル(B)ともに重合触媒としてアンチモン化合物を用いた態様を、好ましい態様として挙げることができる。このような態様とした場合においては、フィルムを構成するポリエステル組成物に含まれるアンチモン元素は、好ましくは0.01〜250ppm、より好ましくは1〜210ppm、さらに好ましくは90〜200ppm、特に好ましくは100〜190ppmである。
【0015】
ここでアンチモン元素は、ポリエステルの重合触媒として用いたアンチモン化合物に由来する。かかるアンチモン化合物として、例えば三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酢酸アンチモン、酒石酸アンチモン等を例示することができる。
【0016】
本発明におけるポリエステルは、ゲルマニウム化合物を重合触媒として重合されたポリエステルであってもよい。この場合、ポリエステルは、ゲルマニウム元素を例えば0.1〜100ppm、好ましくは1〜70ppm、さらに好ましくは10〜50ppm含有することができる。ここでゲルマニウム元素は、ポリエステルの重合触媒として用いたゲルマニウム化合物に由来する。かかるゲルマニウム化合物として、例えば二酸化ゲルマニウム、四酸化ゲルマニウム、水酸化ゲルマニウム、蓚酸ゲルマニウム、塩化ゲルマニウム等を例示することができる。
【0017】
[固有粘度]
本発明においては、ポリエステル(B)の固有粘度は、ポリエステル(A)の固有粘度よりも0.05dl/g以上高い。このような態様とすることによって、溶融樹脂を濾過する際の濾過圧の上昇による生産性の低下を抑制しながら、透明性に優れたフィルムを得ることができる。また、黄色味等の着色を抑制することができる。このような観点から、ポリエステル(B)とポリエステル(A)の固有粘度差(ポリエステル(B)の固有粘度−ポリエステル(A)の固有粘度)は、好ましくは0.1dl/g以上、より好ましくは0.15dl/g以上、さらに好ましくは0.20dl/g以上、特に好ましくは0.24dl/g以上である。また、固有粘度差の上限は、透明性の観点からは特に限定されないが、溶融混練がしやすく、フィルムの厚み斑を抑制することができるという観点から、好ましくは0.5dl/g以下、さらに好ましくは0.4dl/g以下、特に好ましくは0.3dl/g以下である。
【0018】
本発明において、ポリエステル(A)の固有粘度は、好ましくは0.50〜0.75dl/g、より好ましくは0.52〜0.70dl/g、さらに好ましくは0.53〜0.68dl/g、特に好ましくは0.58〜0.64dl/gである。また、ポリエステル(B)の固有粘度は、好ましくは0.70〜0.90dl/g、より好ましくは0.71〜0.89dl/g、さらに好ましくは0.73〜0.88dl/g、特に好ましくは0.83〜0.88dl/gである。このような固有粘度とすることで、優れた強度を備えながら、均一な溶融混練を行なうことができ、厚み斑の少ないフィルムを得ることができる。ポリエステルの固有粘度は従来公知の方法で調整すればよく、例えば固相重合法を採用することにより固有粘度を高くすることができる。
【0019】
[半結晶化時間]
本発明においては、二軸延伸ポリエステルフィルムを構成するための、ポリエステル(A)とポリエステル(B)とを溶融混練して得られるポリエステル組成物は、170℃における半結晶化時間が30秒以上である必要がある。このような態様とすることによって、同時二軸延伸方式により厚みの厚いフィルムを製造した場合においても、フィルム幅方向におけるヘーズのバラツキを抑制することができる。これは、同時二軸延伸方式では延伸応力が均一にかかりにくいため、ポリエステル組成物の結晶化速度が速すぎると、同時二軸延伸機内においてフィルムを延伸する際に、フィルム幅方向において延伸、結晶化にバラツキが生じてしまうことが原因と推測される。このような観点から、ポリエステル組成物の170℃における半結晶化時間は、より好ましくは32秒以上、さらに好ましくは33秒以上である。
【0020】
ポリエステル組成物の半結晶化時間を上記のような態様とするためには、ポリエステル(A)の共重合成分および共重合量、固有粘度、ポリエステル(B)の共重合成分および共重合量、固有粘度、ポリエステル(A)とポリエステル(B)との混合比率、ポリエステル(A)とポリエステル(B)の固有粘度差等を適宜調整すれば良い。例えば、共重合量を増加させたり、各ポリエステルの固有粘度を高くしたり、各ポリエステルの固有粘度差を大きくしたりすることによって半結晶化時間は長くなる傾向にある。また、本発明においては、ポリエステル(A)またはポリエステル(B)の少なくともいずれか一方に、直接エステル化法で重合されたポリエステルを用いることも、上記の半結晶化時間を達成するために特に好ましい方法として挙げることができる。また、押出機内における樹脂の滞留時間が長すぎると上記半結晶化時間は短くなる傾向にあるため、適度な滞留時間とすることが好ましい。
【0021】
[フィルムの厚み]
本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムの厚みは100μm以上であり、このような厚みとすることによって優れた剛性を示し、例えば光学用途に用いる場合においては、自重による変形を抑制し、ハンドリング性に優れたものとすることができる。このような観点から、フィルムの厚みは、好ましくは125μm以上、より好ましくは150μm以上、さらに好ましくは175μm以上である。他方、フィルム厚みが厚すぎると優れた透明性を得ることが困難となる傾向にあり、好ましくは500μm以下、より好ましくは300μm以下、さらに好ましくは250μm以下である。
【0022】
[フィルムのヘーズ]
本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムは、フィルムのヘーズが好ましくは1.0%以下、より好ましくは0.9%以下、さらに好ましくは0.8%以下、特に好ましくは0.2〜0.5%である。ヘーズが1.0%を超えると透明性が低下し、光学用途に用いることが困難となる傾向にある。
【0023】
[ヘーズの幅方向差]
本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムは、幅1mのフィルムの幅方向において、フィルムのヘーズの最大値と最小値の差が0.34%以下、好ましくは0.3%以下、より好ましくは0.2%以下、さらに好ましくは0.1%以下、特に好ましくは0.05%以下である。ヘーズの幅方向差が0.34%を超えるとユーザーでの加工時に不具合が生じやすくなる。例えば、フィルムロールからの断裁フィルムの採り位置によって物性が異なるため、品質管理上の問題が生じる。ヘーズの幅方向差を上記のような態様とするためには、二軸延伸ポリエステルフィルムを構成するポリエステル組成物の170℃における半結晶化時間を本発明が規定する態様とすればよい。
【0024】
[製造方法]
本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムに用いられるポリエステル(A)およびポリエステル(B)は、本発明が規定する固有粘度の態様を満足すればよく、その製造方法は限定されず、公知の方法を用いて製造することができる。
【0025】
本発明におけるポリエステルは、例えば溶融重縮合により製造することができる。かかる溶融重縮合としては、例えばテレフタル酸とエチレングリコ−ルおよび必要により他の共重合成分を直接反応させて水を留去しエステル化した後、減圧下に重縮合を行なう直接エステル化法、または、テレフタル酸ジメチルとエチレングリコ−ルおよび必要により他の共重合成分を反応させてメチルアルコ−ルを留去しエステル交換させた後、減圧下に重縮合を行うエステル交換法により製造することができる。
【0026】
エステル交換法による場合は、エステル交換触媒としては、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、ストロンチウム、チタン、ジルコニウム、マンガン、コバルトのいずれか一種または二種以上の化合物を用いることが好ましい。また重縮合反応触媒としては、アンチモン化合物を用いることが好ましい。アンチモン化合物として、例えば三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酢酸アンチモン、酒石酸アンチモンを用いることができる。エステル交換反応を経由して重合を行なう場合には、重合反応前にエステル交換触媒を失活させる目的で、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリ−n−ブチルホスフェート、正リン酸といったリン化合物が通常は添加されるが、リン元素のポリエチレンテレフタレート中での含有量が20〜100ppmであることがポリエステルの熱安定性の点から好ましい。
【0027】
ポリエステルの固有粘度を特に高くする必要がある場合には固相重合を行なうことが好ましく、ポリエステル(A)とポリエステル(B)の固有粘度差をより大きくすることが容易となる。固相重合前に結晶化を促進するために、溶融重合ポリエステルのペレットに吸湿させたあと加熱結晶化させてもよく、水蒸気を直接ポリエステルのペレットに吹きつけて加熱結晶化させてもよい。溶融重縮合反応は、回分式反応装置で行ってもよく、連続式反応装置で行ってもよい。
【0028】
いずれの方式においても、エステル化反応またはエステル交換反応は、1段階で行ってもよく、多段階に分けて行ってもよい。溶融重縮合反応も1段階で行ってもよく、多段階に分けて行ってもよい。固相重合反応は、溶融重縮合反応と同様に、回分式装置や連続式装置で行うことができる。溶融重縮合と固相重合は連続で行ってもよく、分割して行ってもよい。固相重合に供するポリエステルのペレットの形状は、シリンダー型、角型、球状、扁平な板状のいずれでもよい。平均粒径は通常1.0〜5.0mmである。
【0029】
本発明に用いられるポリエステルのうち、固有粘度の高いもの、例えばポリエステル(B)は、好ましくは、溶融重合後これをペレット化し、さらに固相重合することによって得ることができる。固相重合は、従来公知の方法で行うことができる。例えば、次のように行うとよい。まず、固相重合に供する溶融重縮合で得たポリエステルを、不活性ガス下または減圧下、あるいは水蒸気または水蒸気含有不活性ガス雰囲気下において、100〜210℃の温度で、1〜5時間加熱して、予備結晶化する。次いで、不活性ガス雰囲気下または減圧下にて、190〜230℃の温度で1〜30時間の固相重合を行う。固相重合後、必要に応じて減圧下または不活性ガス雰囲気下において、約150℃の温度から50℃以下の温度に冷却する。
【0030】
本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムは、例えば次のようにして得ることができる。まず、ポリエステル(A)のペレット10〜90質量部と、ポリエステル(B)のペレット90〜10質量部とを混合する。ここで本発明においては、ポリエステル(A)およびポリエステル(B)のうち、少なくともいずれか一方が直接エステル化法で重合されたものであることが好ましく、ポリエステル組成物の170℃における半結晶化時間が長くなる傾向にある。次いで、混合したペレットを140〜180℃で2〜5時間乾燥後、押出機に投入し、溶融温度250〜300℃で、押出機内の樹脂の滞留時間を好ましくは15分以下、より好ましくは1〜10分、さらに好ましくは2〜8分として溶融混練してポリエステル組成物を得る。溶融混練の時間や押出機内における樹脂の滞留時間が長すぎると、エステル交換反応が進行して、得られるポリエステル組成物の170℃における半結晶化時間が短くなる傾向にある。また、透明性の向上効果が低くなる傾向にある。次いで、得られたポリエステル組成物をダイより押出し、キャスティングドラム上で急冷して未延伸フィルムとする。
【0031】
かかる未延伸フィルムを、長手方向および幅方向に一度に延伸する同時二軸延伸方式によって延伸する。このときの延伸温度は80〜120℃であることが好ましい。また、縦延伸倍率は2〜6倍、好ましくは3〜4倍、横延伸倍率は2〜6倍、好ましくは3〜4倍とすることが好ましく、強度に優れる。また、同時二軸延伸方式を採用することによって、フィルム表面のキズ等の欠点を抑制することができる。延伸後、180〜250℃の温度で5秒〜10分間熱固定して、100℃以下の温度に冷却する。かくして二軸延伸ポリエステルフィルムを得ることができる。
【0032】
[塗布層]
本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムは、その少なくとも片面に、高分子樹脂および微粒子からなる塗布層を有することが好ましい。塗布層を設け、塗布層に微細な滑剤を含有させることで、フィルムに適度な滑り性を付与することができる。
【0033】
かかる高分子樹脂としては、例えばポリエステル樹脂、アクリル樹脂を用いることができ、好ましくはポリエステル樹脂を用いる。微粒子としては、好ましくは平均粒子径20〜150nmの無機もしくは有機微粒子を用いる。
【0034】
塗布層はいずれの工程で設けても良いが、フィルムを製造する工程において、未延伸フィルムに塗布層を形成するための塗液を塗布して設けることが好ましい。また、かかる塗布方法としてはロールコーター法等、従来公知の方法を採用すれば良い。
【実施例】
【0035】
以下、実施例に基づき、本発明をさらに詳細に説明する。なお、物性の測定方法および評価方法は以下のとおりである。
【0036】
(1)ヘーズ
1m幅のフィルムサンプルについて、幅方向に両端部から1.5cmの位置、およびその間を等間隔に3点、合計5点の箇所について、JIS K7361に準じ、ヘーズ測定器(日本電色工業社製の商品名「NDH―2000」)を用いてヘーズを測定した。得られた5点の平均値をフィルムのヘーズ(単位:%)とした。また、5点のうち、最大値と最小値との差を、ヘーズの幅方向差(単位:%)とした。
【0037】
(2)固有粘度(dl/g)
o−クロロフェノールを溶媒として用い、35℃で測定した。
【0038】
(3)半結晶化時間
半結晶化時間はコタキ製作所社製の半結晶化測定機を用いて測定した。サンプルとしての二軸延伸ポリエステルフィルムを160℃で3時間乾燥し、スライドグラスに挟んで加熱プレス機で溶融した後、上記測定機にセットしてさらに280℃のエアバスで1分加熱し、実質的に延伸配向結晶化前のポリエステル組成物と同等なものとした。次いで、かかるポリエステル組成物を170℃のオイルバスに落下させ、光線透過率を測定した。透過率が半分になった時間を半結晶化時間とした。
【0039】
[参考例1]ポリエステル1の重合(エステル交換法 三酸化アンチモン触媒)
テレフタル酸ジメチル100質量部、エチレングリコール200質量部、酢酸マンガン四水塩0.03質量部を反応容器に仕込み、エステル交換反応を実施した。続いて、トリフェニルホスホノアセテート0.02質量部、三酸化アンチモン0.01質量部を添加し、その後、3時間減圧下で297℃まで昇温して、重縮合反応を行い、固有粘度が0.61dl/gであるポリエチレンテレフタレートのペレットを得た。このポリエチレンテレフタレートを実施例でポリエステル1と称する。
【0040】
[参考例2]ポリエステル2の重合(直接エステル化法 三酸化アンチモン触媒)
テレフタル酸100質量部、エチレングリコール200質量部、トリフェニルホスホノアセテート0.02質量部、三酸化アンチモン0.01質量部を反応容器に仕込み、その後、3時間減圧下で297℃まで昇温して、重縮合反応を行い、固有粘度が0.61dl/gであるポリエチレンテレフタレートのペレットを得た。得られたポリエチレンテレフタレートを、210℃で18時間固相重合を行い、固有粘度が0.86dl/gであるポリエチレンテレフタレートのペレットを得た。このポリエチレンテレフタレートを実施例でポリエステル2と称する。
【0041】
[参考例3]ポリエステル3の重合(直接エステル化法 二酸化ゲルマニウム触媒)
テレフタル酸100質量部とエチレングリコール65質量部とを常温でスラリー化し、加圧下でエステル化反応を行い、リン化合物0.02質量部、二酸化ゲルマニウム0.01質量部を添加した。次いで290℃まで昇温して、重縮合反応を行い、低分子量のポリエステルを得た。得られたポリエステルを、210℃で12時間固相重合を行い、固有粘度が0.77dl/gであるポリエチレンテレフタレートのペレットを得た。このポリエチレンテレフタレートを実施例でポリエステル3と称する。
【0042】
[実施例1]
上記のポリエステル1のペレットとポリエステル2のペレットとを質量比でポリエステル1:ポリエステル2=70:30の割合で混合し、この混合物を160℃で3時間乾燥後、押出機に投入し、溶融温度270℃で溶融混練し、溶融押出し、キャスティングドラム上で急冷して未延伸フィルムを得た。このとき、押出機内における樹脂の滞留時間は5分であった。
得られた未延伸フィルムを82〜84℃にて予熱し、テンターに供給し、同時二軸延伸機により縦方向に3.2倍、横方向に3.5倍に延伸して、得られた二軸延伸フィルムを242℃の温度で5秒間熱固定し、厚さ188μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。評価結果を表1にまとめる。
【0043】
[比較例1]
実施例1でポリエステル2の代わりにポリエステル3を用いて、実施例1と同様にして、厚さ188μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。評価結果を表1にまとめる。
【0044】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムは、フィルム幅方向におけるヘーズのバラツキが小さいため、とりわけタッチパネル用途などの光学用途に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位としてなるポリエステル(A)10〜90質量部と、エチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位としてなり、ポリエステル(A)より固有粘度が0.05dl/g以上高いポリエステル(B)90〜10質量部とを溶融混練して得られたポリエステル組成物からなる、同時二軸延伸方式によって延伸された厚みが100μm以上のフィルムであって、上記ポリエステル組成物の170℃における半結晶化時間が30秒以上である二軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項2】
光学用途に用いられる請求項1に記載の二軸延伸ポリエステルフィルム。

【公開番号】特開2011−235601(P2011−235601A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−111054(P2010−111054)
【出願日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【出願人】(301020226)帝人デュポンフィルム株式会社 (517)
【Fターム(参考)】