説明

二軸連続混練機、及びそれを用いた電池の製造方法

【課題】良質なペーストを作成可能な二軸連続混練機、及び短時間で電池を製造可能な電池の製造方法を提供する。
【解決手段】中空のバレル10と、バレル10の内部に形成された混練室11に互いに所定の間隔を空けて平行に設けられる二つの回転軸20・30を具備する混練機1であって、混練室11において、粉体が供給される粉体投入部Aよりも、粉体の搬送方向における下流側に、結着剤が供給される結着剤投入部Cが配置され、粉体投入部Aと結着剤投入部Cとの間には、回転軸20・30に設けられ、粉体を圧縮するスペーサ200・300を具備する粉体処理部Bが配置される。そして、電池の製造工程S1は、混練機1を用いて、電極合剤を作成する混練工程S10を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二軸連続混練機、及びそれを用いた電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シート状に形成された正極と負極とをセパレータを介して積層し、捲回してなる電極体を容器内に収納して電解液を含浸させた電池が広く知られている。
このような電池に用いられる正極及び負極は、以下のような工程を経て製造される。
(1)活物質、結着剤、及び希釈剤等を混練して、電極合剤を作成する(混練工程)。
(2)電極合剤をアルミニウム箔や銅箔等の集電体の表面に塗工し、乾燥させる(塗工工程)。
(3)集電体に塗工された電極合剤をプレス加工する(プレス工程)。
【0003】
上記の混練工程において、活物質及び導電助剤等の粉体と、当該粉体を結着する結着剤とを含む複数の材料を混練して所定のペースト(電極合剤等)を作成するために、二軸連続混練機が用いられている。
【0004】
上記の二軸連続混練機は、外装をなす中空のバレル、及び当該バレルの内部に互いに平行に設けられた二つの回転軸等から構成される。当該二つの回転軸は、上記の複数の材料を軸方向に搬送するスクリューと、上記の材料を混練する複数のパドルとを具備している。
このように構成された二つの回転軸が互いに同一方向に回転することで、バレルの内部に供給された上記の材料がスクリューによって軸方向に搬送されると共に、複数のパドルによって混練されて、ペーストが作成される。
【0005】
特許文献1には、二つの回転軸にそれぞれ大径部と小径部とを有する段付きの円板状のスペーサを設けて、一方の回転軸におけるスペーサの小径部及び大径部と、他方の回転軸におけるスペーサの大径部及び小径部とをそれぞれ互いに軸方向の位置を合わせて重ねるように配置した二軸連続混練機が開示されている。
当該二軸連続混練機によれば、バレルの内周面とスペーサの大径部の外周面との隙間、及びスペーサ同士の隙間を微細なものとして、前記複数のパドルによって充分に剪断されなかった材料を良好に剪断しつつ、混練することができる。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の二軸連続混練機では、ペーストの材料である粉体をバレルの内部へ供給する際に生じる脈動(重量ばらつき)により、粉体の定量供給が困難となり、作成されるペーストの固形分率にばらつきが生じる。
また、当該二軸連続混練機にかさ密度が比較的低い粉体を所定量供給した場合には、かさ密度が比較的高い粉体を所定量供給した場合と比較して、粉体の体積が大きくなるため、バレル内の限られた空間を有効に活用することができず、二軸連続混練機の処理量の低下を招く。更に、粉体に含まれる空気によって、材料の混練時に充分な剪断力を付与することができないばかりか、作成されるペーストに細かい気泡が残存することとなる。
【0007】
以上のように、特許文献1に記載の二軸連続混練機では、良質なペーストを作成することが困難である。また、ペーストの品質を担保するために、ペーストから気泡を除去する工程を付加的に行う必要があり、電池の製造に要する時間が長くなる点で不利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実公昭63−25127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、良質なペーストを作成可能な二軸連続混練機、及び短時間で電池を製造可能な電池の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の二軸連続混練機は、中空の外装と、前記外装の内部に互いに所定の間隔を空けて平行に設けられる二つの軸と、前記二つの軸に設けられ、前記外装の内部に供給される粉体及び結着剤を搬送する搬送手段と、前記二つの軸に設けられ、前記粉体と前記結着剤とが混合されてなる混合体を混練する混練手段と、を具備し、前記外装の内部で前記粉体及び前記結着剤を前記搬送手段によって搬送しつつ、前記混合体を前記混練手段によって混練する二軸連続混練機であって、前記外装の内部における前記粉体が供給される部分よりも、前記粉体の搬送方向における下流側の部分に前記結着剤が供給され、前記外装の内部における前記粉体が供給される部分と、前記外装の内部における前記結着剤が供給される部分との間には、前記粉体を圧縮する粉体圧縮手段が設けられる。
【0011】
本発明の二軸連続混練機において、前記粉体圧縮手段は、前記二つの軸にそれぞれ設けられるスペーサであり、前記スペーサは、前記外装の内周面との間に微細な隙間を有するように形成される大円板部と、前記大円板部よりも小さい外径を有する小円板部と、からなり、前記一方のスペーサの大円板部と、前記他方のスペーサの小円板部とがそれらの間に微細な隙間を有するように軸方向における位置を合わせて対向し、前記一方のスペーサの小円板部と、前記他方のスペーサの大円板部とがそれらの間に微細な隙間を有するように軸方向における位置を合わせて対向するように配置されることが好ましい。
【0012】
本発明の二軸連続混練機において、前記スペーサの前記大円板部の外周面には、前記大円板部の回転方向に応じて、前記粉体に搬送方向とは逆向きの力が加わるように、前記大円板部の軸心に対して傾斜している溝が設けられることが好ましい。
【0013】
本発明の電池の製造方法は、中空の外装と、前記外装の内部に互いに所定の間隔を空けて平行に設けられる二つの軸と、前記二つの軸に設けられ、前記外装の内部に供給される粉体及び結着剤を搬送する搬送手段と、前記二つの軸に設けられ、前記粉体と前記結着剤とが混合されてなる混合体を混練する混練手段と、を具備し、前記外装の内部で前記粉体及び前記結着剤を前記搬送手段によって搬送しつつ、前記混合体を前記混練手段によって混練する二軸連続混練機であって、前記外装の内部における前記粉体が供給される部分よりも、前記粉体の搬送方向における下流側の部分に前記結着剤が供給され、前記外装の内部における前記粉体が供給される部分と、前記外装の内部における前記結着剤が供給される部分との間には、前記粉体を圧縮する粉体圧縮手段が設けられる二軸連続混練機、を用いて電極合剤を作成する混練工程を具備する。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る二軸連続混練機によれば、良質なペーストを作成できる。
また、本発明に係る二軸連続混練機を用いた電池の製造方法によれば、電池を製造する時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る二軸連続混練機を示す断面図。
【図2】回転軸の軸方向から見た、ねじれパドル、回転軸冷却路、及びバレル冷却路を示す断面図。
【図3】送りスクリューを示す断面図。
【図4】スペーサを示す図。
【図5】電池の製造方法を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、本発明に係る二軸連続混練機により混練して作成された正極合剤及び負極合剤を用いた電池(以下、「本電池」と記す。)について説明する。
本電池は、電極体と、当該電極体を内部に収納する容器とを具備する。本電池は、前記容器に電解液を充填して、前記電極体に前記電解液を含浸させて充放電可能に構成されたリチウムイオン二次電池やニッケル・水素蓄電池等の電池である。
【0017】
前記電極体は、正極と負極とをセパレータを介して積層し、複数回捲回することで所定の形状に成形された捲回体であり、電解液を含浸させることで発電要素となる。
【0018】
前記正極は、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼等の金属箔からなる正極集電体の表面に、ペースト状の正極合剤を塗布し、乾燥させた後、ロールプレス等の所定の処理を経て作成された電極である。
前記正極合剤は、二軸連続混練機である後述の混練機1を用いて、正極活物質、導電助剤、及び結着剤等を混練してペーストを作成し、当該ペーストを適宜の混練機で希釈剤等と共に混練することで作成された合剤である。
【0019】
前記負極は、銅、ニッケル、ステンレス鋼等の金属箔からなる負極集電体の表面に、ペースト状の負極合剤を塗布し、乾燥させた後、ロールプレス等の所定の処理を経て作成された電極である。
前記負極合剤は、二軸連続混練機である後述の混練機1を用いて、負極活物質、導電助剤、及び結着剤等を混練してペーストを作成し、当該ペーストを適宜の混練機で希釈剤等と共に混練することで作成された合剤である。
【0020】
前記セパレータは、ポリエチレン、ポリプロピレンといったポリオレフィン樹脂等からなる絶縁体であり、前記正極と前記負極との間に介装される。
【0021】
前記容器は、アルミニウムや、ステンレス鋼等からなる金属缶であって、その内部に前記電極体と前記電解液とを収納し、本電池の外装となる部材である。
【0022】
以下では、図1〜図3を参照して、本電池の前記正極合剤、及び前記負極合剤(以下、「電極合剤」と記す)を作成する際に用いられる、本発明に係る二軸連続混練機の一実施形態である混練機1について説明する。
【0023】
混練機1は、その内部において、被混練物である複数の材料(以下、「混合体」と記す)を搬送しつつ混練することで、本電池に用いられる電極合剤の材料となるペースト(以下、単に「ペースト」と記す)を作成する二軸連続混練機である。
ここで、混合体は、活物質(正極活物質又は負極活物質)及び導電助剤等の粉体(以下、単に「粉体」と記す)と、当該粉体を結着する結着剤(以下、単に「結着剤」と記す)とが混合されたものであり、混練されることでペーストとなる。
なお、以下では、図1においてバレル10の上方に記載されている矢印の方向を粉体又は混合体の「搬送方向」とし、その搬送方向における上流側(図1における右側)を単に「上流側」、搬送方向における下流側(図1における左側)を単に「下流側」と記す。
【0024】
図1に示すように、混練機1は、その外装をなす中空のバレル10と、バレル10の内部に互いに平行に設けられた回転軸20・30とを具備する。
【0025】
バレル10は、混練機1の外装をなす中空の部材であり、耐久性に優れ、かつ熱伝導率の高い鋼材等からなる。バレル10の内部には、混練室11が形成されている。
図2に示すように、混練室11は、回転軸20・30の軸方向から見て、二つの真円が部分的に重なり合った断面形状を有し、当該断面形状を保ったまま回転軸20・30の軸方向に沿って延在している。混練室11における一方の円状部分(図2における上側部分)の曲率中心には、回転軸20が設けられ、他方の円状部分(図2における下側部分)の曲率中心には、回転軸30が設けられている。
【0026】
図1に示すように、回転軸20・30は、耐久性に優れ、かつ熱伝導率の高い鋼材等からなる軸部材である。回転軸20・30は、混合体の搬送方向に沿うように、混練室11の両端に亘って回転可能に設けられ、互いに所定間隔を空けて平行に配置されている。回転軸20・30は、適宜の駆動装置(不図示)と接続されており、当該駆動装置が駆動することでそれぞれ所定の方向(図1において回転軸20・30の右端部に記載されている矢印の方向)に回転駆動される。
【0027】
回転軸20は、送りスクリュー21、23と、複数のねじれパドル22・22・・・、24・24・・・、26・26・・・と、スペーサ200と、複数のパドル25・25・・・と、戻しスクリュー27とを具備する。
回転軸30は、送りスクリュー31、33と、複数のねじれパドル32・32・・・、34・34・・・、36・36・・・と、スペーサ300と、複数のパドル35・35・・・と、戻しスクリュー37とを具備する。
【0028】
回転軸20・30に設けられた上記の複数の部材によって、混練室11には、粉体投入部A、粉体処理部B、結着剤投入部C、混練部D、及び戻し部Eが構成される。
【0029】
粉体投入部Aは、混練室11の上流側端部に配置されており、バレル10の上流側端部に開口された粉体投入口12に粉体を投入することで、粉体投入部Aに粉体が供給される。
粉体投入部Aは、回転軸20に設けられた送りスクリュー21、及び回転軸30に設けられた送りスクリュー31等から構成されている。
【0030】
送りスクリュー21は、軸心回りに回転することにより、粉体投入口12から粉体投入部Aに供給された粉体を混練室11の下流側に向けて搬送する搬送手段として機能する。送りスクリュー21は、回転軸20の外周を覆うように回転軸20と同心的に固定され、混練室11の上流側端部から中途部にかけて配置されている。
【0031】
図3に示すように、送りスクリュー21は、円筒状の本体部21aと、本体部21aの外周面に形成された螺旋状の羽根部21bと、から構成されている。
送りスクリュー21において、羽根部21bは、本体部21aの軸心、つまり粉体の搬送方向に対して略垂直となるように設けられている。
これにより、送りスクリュー21の軸方向に沿って粉体が移動することを羽根部21bが制限することとなって、粉体が搬送方向とは逆方向に移動すること(バックフロー)を抑制できる。
【0032】
図1に示すように、送りスクリュー31は、送りスクリュー21と同様に、円筒状の本体部と、当該本体部の外周面に形成された螺旋状の羽根部と、から構成された、粉体の搬送手段である。送りスクリュー31は、送りスクリュー21と軸方向(粉体の搬送方向)の位置を合わせて対向するように配置され、回転軸30の外周を覆うように回転軸30と同心的に固定されている。送りスクリュー31は、回転時に送りスクリュー21と接触することがないような構成、及び配置となっている。
【0033】
粉体投入部Aにおいては、前記駆動装置によって回転軸20・30が所定の方向(図1において回転軸20・30の右端部に記載されている矢印の方向)に回転駆動されるに伴って、回転軸20・30に設けられた送りスクリュー21・31が回転する。
粉体が粉体投入口12から粉体投入部Aに供給されると、送りスクリュー21・31によって粉体が混練室11の下流側に向けて搬送される。
【0034】
粉体処理部Bは、混練室11の中途部であって、粉体投入部Aよりも下流側に連続して配置されている。
粉体処理部Bは、回転軸20に設けられた複数のねじれパドル22・22・・・、及びスペーサ200、並びに回転軸30に設けられた複数のねじれパドル32・32・・・、及びスペーサ300等から構成されている。
【0035】
ねじれパドル22は、軸心回りに回転することにより、粉体を下流側へ搬送しつつ微粒化する部材である。
回転軸20には、複数のねじれパドル22・22・・・が設けられており、ねじれパドル22・22・・・は、徐々に位相を変化させつつ互いに一定の間隔を置いて配置されている。本実施形態においては、三つのねじれパドル22が回転軸20に設けられている。
【0036】
図2に示すように、ねじれパドル22は、回転軸20の軸方向から見て、略三角形の断面形状を有し、当該断面形状が粉体の搬送方向に行くに従って、徐々に軸心回りに回転するように(回転方向への位相が連続的に変化するように)形成されている。こうして、ねじれパドル22の外周面は、回転軸20の回転方向に応じて粉体に搬送方向への力が加わるようにねじられている。本実施形態においては、ねじれパドル22は、軸方向における一端部から他端部にかけて、その断面形状の位相が20度変化するように形成されている。
ねじれパドル22は、その中心部に回転軸20が貫通可能な開口部が形成されており、係る開口部に回転軸20が貫装されて固定されることで、回転軸20の回転に伴って回転可能となっている。ねじれパドル22は、その回動軌跡の外周と、混練室11の内側面(バレル10の内周面)との間に、粉体を微粒化できる程度の微細な隙間が形成されるような大きさに設定されている。
【0037】
ねじれパドル32は、ねじれパドル22と同様に構成された部材である。ねじれパドル32は、その中心部に回転軸30が貫通可能な開口部が形成されており、係る開口部に回転軸30が貫装されて固定されることで、回転軸30の回転に伴って回転可能となっている。
図1に示すように、回転軸30には、回転軸20のねじれパドル22・22・・・と同数のねじれパドル32・32・・・が設けられており、ねじれパドル32・32・・・は、回転軸20のねじれパドル22・22・・・と軸方向(粉体の搬送方向)の位置を合わせて対向するように配置され、対向するもの同士が同位相となるように設定されている。
【0038】
こうして、回転軸20のねじれパドル22・22・・・、及び回転軸30のねじれパドル32・32・・・は、軸方向の同一位置において対向するねじれパドル22とねじれパドル32とが同位相に設定され、当該ねじれパドル22とねじれパドル32とが最接近する部分においては、粉体を微粒化できる程度の微細な隙間が形成されるような大きさに設定され、回転時においても互いに接触することがない。
【0039】
スペーサ200は、耐久性に優れた鋼材等からなる略円板状の部材である。スペーサ200は、その中心部に回転軸20が貫通可能な開口部が形成されており、係る開口部に回転軸20が貫装されて固定されることで、回転軸20の回転に伴って回転可能となっている。スペーサ200は、軸心回りに回転することにより、スペーサ300と共に粉体を圧縮する粉体圧縮手段として機能する。
ここで、粉体を『圧縮する』とは、粉体のかさ密度をできる限り均一に大きくし、粉体の体積をできる限り小さくすることで、粉体に含まれる空気を除去する処理である。粉体を圧縮することによって、粉体の脈動(重量ばらつき)を防止し、粉体の定量供給が可能となる。
【0040】
スペーサ200は、比較的大きい外径を有する大円板部210と、比較的小さい外径を有する小円板部220と、から構成されている。
【0041】
大円板部210は、所定の厚み(軸方向における長さ)を有する円板状に形成されている。大円板部210は、混練室11の内側面(バレル10の内周面)との間に粉体を圧縮できる程度の微細な隙間が形成されるような外径に設定されている。
【0042】
小円板部220は、大円板部210と同程度の厚みを有し、大円板部210よりも小さい外径を有する円板状に形成されている。小円板部220は、大円板部210と同心的に連続するように形成され、大円板部210よりも下流側に配置されている。
【0043】
スペーサ300は、スペーサ200と略同様に構成された部材である。スペーサ300は、その中心部に回転軸30が貫通可能な開口部が形成されており、係る開口部に回転軸30が貫装されて固定されることで、回転軸30の回転に伴って回転可能となっている。スペーサ300は、軸心回りに回転することにより、スペーサ200と共に粉体を圧縮する粉体圧縮手段として機能する。
【0044】
スペーサ300は、比較的小さい外径を有する小円板部310と、比較的大きい外径を有する大円板部320と、から構成されている。
【0045】
小円板部310は、小円板部220と同様に構成され、大円板部210と軸方向(粉体の搬送方向)の位置を合わせて対向するように配置されている。小円板部310は、小円板部220と同程度の外径であって、大円板部210との間に粉体を圧縮できる程度の微細な隙間が形成されるような外径に設定されている。
【0046】
大円板部320は、大円板部210と同様に構成され、小円板部310と同心的に連続するように形成されている。大円板部320は、小円板部220と軸方向(粉体の搬送方向)の位置を合わせて対向し、かつ大円板部210との間に粉体を圧縮できる程度の微細な隙間が形成されるように小円板部310よりも下流側に配置されている。大円板部320は、小円板部310よりも大きい外径であって、混練室11の内側面(バレル10の内周面)との間、及び小円板部220との間に粉体を圧縮できる程度の微細な隙間が形成されるような外径に設定されている。
【0047】
こうして、スペーサ200は、大円板部210、及び小円板部220が上流側から順に一体的に形成された段付きの円板状に構成され、スペーサ300は、小円板部310、及び大円板部320が上流側から順に一体的に形成された段付きの円板状に構成される。
スペーサ200・300は、大円板部210と小円板部310とが対向し、小円板部220と大円板部320とが対向するように配置される。
【0048】
粉体処理部Bにおいては、前記駆動装置によって回転軸20・30が所定の方向(図1において回転軸20・30の右端部に記載されている矢印の方向)に回転駆動されるに伴って、回転軸20のねじれパドル22・22・・・及びスペーサ200、並びに回転軸30のねじれパドル32・32・・・及びスペーサ300が回転する。
送りスクリュー21・31によって搬送された粉体は、ねじれパドル22・22・・・及びねじれパドル32・32・・・によって下流側へ搬送されつつ微粒化され、スペーサ200・300によって圧縮される。
【0049】
詳細には、ねじれパドル22・22・・・及びねじれパドル32・32・・・によって微粒化された粉体は、スペーサ200の外周面とスペーサ300の外周面との間、スペーサ200の外周面と混練室11の内側面(バレル10の内周面)との間、及びスペーサ300の外周面と混練室11の内側面(バレル10の内周面)との間を通過する際に、剪断力が付与されつつ圧縮される。
これにより、粉体の脈動(重量ばらつき)を防止し、粉体の定量供給(結着剤投入部Cへの単位時間あたりの粉体の供給量を一定にすること)が可能となる。したがって、ペーストの固形分率のばらつきを防止することができる。
また、粉体のかさ密度が大きく、粉体の体積が小さくなるため、バレル10内(混練室11)の限られた空間を有効に活用することが可能となる。したがって、混練機1の処理量を向上させることができる。
また、粉体に含まれる空気が除去されるため、ペーストに気泡が残存することを防止できる。
【0050】
結着剤投入部Cは、混練室11の中途部であって、粉体処理部Bよりも下流側に連続して配置されている。バレル10の中途部に開口された結着剤投入口13に結着剤を投入することで、結着剤投入部Cに結着剤が供給される。結着剤投入部Cに供給された結着剤は、粉体投入部Aに供給されて粉体処理部Bを経た粉体と混合されて混合体となる。
結着剤投入部Cは、回転軸20に設けられた送りスクリュー23、及び回転軸30に設けられた送りスクリュー33等から構成されている。
【0051】
送りスクリュー23は、送りスクリュー21と同様に、円筒状の本体部と、当該本体部の外周面に形成された螺旋状の羽根部と、から構成された部材である。送りスクリュー23は、軸心回りに回転することにより、結着剤投入口13から結着剤投入部Cに供給された結着剤と、粉体投入部Aに供給されて粉体処理部Bを経た粉体とが混合されてなる混合体を混練室11の下流側に向けて搬送する搬送手段として機能する。送りスクリュー23は、回転軸20の外周を覆うように回転軸20と同心的に固定されている。
【0052】
送りスクリュー33は、送りスクリュー23と同様に、円筒状の本体部と、当該本体部の外周面に形成された螺旋状の羽根部と、から構成された、混合体の搬送手段である。送りスクリュー33は、送りスクリュー23と軸方向(混合体の搬送方向)の位置を合わせて対向するように配置され、回転軸30の外周を覆うように回転軸30と同心的に固定されている。送りスクリュー33は、回転時に送りスクリュー23と接触することがないような構成、及び配置となっている。
【0053】
結着剤投入部Cにおいては、前記駆動装置によって回転軸20・30が所定の方向(図1において回転軸20・30の右端部に記載されている矢印の方向)に回転駆動されるに伴って、回転軸20・30に設けられた送りスクリュー23・33が回転する。
結着剤が結着剤投入口13から結着剤投入部Cに供給されると、粉体投入部Aに供給されて粉体処理部Bを経た粉体と混合されて混合体となり、送りスクリュー23・33によって混合体が混練室11の下流側に向けて搬送される。
【0054】
混練部Dは、混練室11の中途部であって、結着剤投入部Cよりも下流側に連続して配置されている。
混練部Dは、回転軸20に設けられた複数のねじれパドル24・24・・・、複数のパドル25・25・・・、及び複数のねじれパドル26・26・・・、並びに回転軸30に設けられた複数のねじれパドル34・34・・・、複数のパドル35・35・・・、及び複数のねじれパドル36・36・・・等から構成されている。
【0055】
ねじれパドル24は、ねじれパドル22と同様に構成された部材であり、軸心回りに回転することにより、混合体を下流側へ搬送しつつ混練する混練手段として機能する。ねじれパドル24は、その中心部に回転軸20が貫通可能な開口部が形成されており、係る開口部に回転軸20が貫装されて固定されることで、回転軸20の回転に伴って回転可能となっている。
回転軸20には、複数のねじれパドル24・24・・・が設けられており、ねじれパドル24・24・・・は、徐々に位相を変化させつつ互いに一定の間隔を置いて配置されている。本実施形態においては、三つのねじれパドル24が回転軸20に設けられている。
【0056】
ねじれパドル34は、ねじれパドル24と同様に構成された、混合体の混練手段である。ねじれパドル34は、その中心部に回転軸30が貫通可能な開口部が形成されており、係る開口部に回転軸30が貫装されて固定されることで、回転軸30の回転に伴って回転可能となっている。
回転軸30には、回転軸20のねじれパドル24・24・・・と同数のねじれパドル34・34・・・が設けられており、ねじれパドル34・34・・・は、回転軸20のねじれパドル24・24・・・と軸方向(混合体の搬送方向)の位置を合わせて対向するように配置され、対向するもの同士が同位相となるように設定されている。
【0057】
こうして、回転軸20のねじれパドル24・24・・・、及び回転軸30のねじれパドル34・34・・・は、軸方向の同一位置において対向するねじれパドル24とねじれパドル34とが同位相に設定され、当該ねじれパドル24とねじれパドル34とが最接近する部分においては、混合体を混練できる程度の微細な隙間が形成されるような大きさに設定され、回転時においても互いに接触することがない。
【0058】
パドル25は、軸心回りに回転することにより、混合体を混練する混練手段として機能する。パドル25は、回転軸20の軸方向から見て、略三角形の断面形状を有し、ねじれパドル22等と略同様の形状を有するが、軸方向における一端部から他端部にかけて位相が変化していない(ねじられていない)点でねじれパドル22等と異なる。パドル25は、その中心部に回転軸20が貫通可能な開口部が形成されており、係る開口部に回転軸20が貫装されて固定されることで、回転軸20の回転に伴って回転可能となっている。パドル25は、その回動軌跡の外周と、混練室11の内側面(バレル10の内周面)との間に、混合体を混練できる程度の微細な隙間が形成されるような大きさに設定されている。
回転軸20には、複数のパドル25・25・・・が設けられており、パドル25・25・・・は、徐々に位相を変化させつつ互いに一定の間隔を置いて配置されている。
【0059】
パドル35は、パドル25と同様に構成された、混合体の混練手段である。パドル35は、その中心部に回転軸30が貫通可能な開口部が形成されており、係る開口部に回転軸30が貫装されて固定されることで、回転軸30の回転に伴って回転可能となっている。
回転軸30には、回転軸20のパドル25・25・・・と同数のパドル35・35・・・が設けられており、パドル35・35・・・は、回転軸20のパドル25・25・・・と軸方向(混合体の搬送方向)の位置を合わせて対向するように配置され、対向するもの同士が同位相となるように設定されている。
【0060】
こうして、回転軸20のパドル25・25・・・、及び回転軸30のパドル35・35・・・は、軸方向の同一位置において対向するパドル25とパドル35とが同位相に設定され、当該パドル25とパドル35とが最接近する部分においては、混合体を混練できる程度の微細な隙間が形成されるような大きさに設定され、回転時においても互いに接触することがない。
【0061】
ねじれパドル26は、ねじれパドル24と同様に構成された部材であり、軸心回りに回転することにより、混合体を下流側へ搬送しつつ混練する混練手段として機能する。ねじれパドル26は、その中心部に回転軸20が貫通可能な開口部が形成されており、係る開口部に回転軸20が貫装されて固定されることで、回転軸20の回転に伴って回転可能となっている。
回転軸20には、複数のねじれパドル26・26・・・が設けられており、ねじれパドル26・26・・・は、徐々に位相を変化させつつ互いに一定の間隔を置いて配置されている。本実施形態においては、三つのねじれパドル26が回転軸20に設けられている。
【0062】
ねじれパドル36は、ねじれパドル26と同様に構成された、混合体の混練手段である。ねじれパドル36は、その中心部に回転軸30が貫通可能な開口部が形成されており、係る開口部に回転軸30が貫装されて固定されることで、回転軸30の回転に伴って回転可能となっている。
回転軸30には、回転軸20のねじれパドル26・26・・・と同数のねじれパドル36・36・・・が設けられており、ねじれパドル36・36・・・は、回転軸20のねじれパドル26・26・・・と軸方向(混合体の搬送方向)の位置を合わせて対向するように配置され、対向するもの同士が同位相となるように設定されている。
【0063】
こうして、回転軸20のねじれパドル26・26・・・、及び回転軸30のねじれパドル36・36・・・は、軸方向の同一位置において対向するねじれパドル26とねじれパドル36とが同位相に設定され、当該ねじれパドル26とねじれパドル36とが最接近する部分においては、混合体を混練できる程度の微細な隙間が形成されるような大きさに設定され、回転時においても互いに接触することがない。
【0064】
混練部Dにおいては、前記駆動装置によって回転軸20・30が所定の方向(図1において回転軸20・30の右端部に記載されている矢印の方向)に回転駆動されるに伴って、回転軸20のねじれパドル24・24・・・、パドル25・25・・・、及びねじれパドル26・26・・・、並びに回転軸30のねじれパドル34・34・・・、パドル35・35・・・、及びねじれパドル36・36・・・が回転する。
送りスクリュー23・33によって搬送された混合体は、ねじれパドル24・24・・・、パドル25・25・・・、及びねじれパドル26・26・・・、並びにねじれパドル34・34・・・、パドル35・35・・・、及びねじれパドル36・36・・・によって下流側へ搬送されつつ、剪断力が付与されて混練されることでペーストとなる。作成されたペーストは、混練部Dの下流側端部に位置を合わせてバレル10に開口された排出口14からバレル10の外部に排出される。
【0065】
戻し部Eは、回転軸20に設けられた戻しスクリュー27、及び回転軸30に設けられた戻しスクリュー37等から構成されている。戻し部Eは、混練室11における混練部Dよりも下流側に連続して配置されている。つまり、戻し部Eは、混練室11の下流側端部に配置されている。
【0066】
戻しスクリュー27は、送りスクリュー23と同様に、円筒状の本体部と、当該本体部の外周面に形成された螺旋状の羽根部と、から構成された部材である。戻しスクリュー27は、回転軸20の外周を覆うように回転軸20と同心的に固定されている。戻しスクリュー27は、軸心回りに回転することにより、混練部Dを経た混合体、つまりペーストを搬送方向とは逆方向(上流側)に押し戻す。つまり、戻しスクリュー27は、送りスクリュー23とは逆向きに回転軸20に設けられている。
【0067】
戻しスクリュー37は、戻しスクリュー27と同様に、円筒状の本体部と、当該本体部の外周面に形成された螺旋状の羽根部と、から構成された部材である。戻しスクリュー37は、戻しスクリュー27と軸方向(混合体の搬送方向)の位置を合わせて対向するように配置され、回転軸30の外周を覆うように回転軸30と同心的に固定されている。戻しスクリュー37は、回転時に戻しスクリュー27と接触することがないような構成、及び配置となっている。
【0068】
戻し部Eにおいては、前記駆動装置によって回転軸20・30が所定の方向(図1における矢印方向)に回転駆動されるに伴って、回転軸20・30に設けられた戻しスクリュー27・37が回転する。
ペーストは、戻しスクリュー27・37によって搬送方向とは逆方向(上流側)に押し戻され、戻しスクリュー27・37よりも下流側に搬送されることなく、排出口14からバレル10の外部に排出される。
【0069】
以上のように、混練機1の外装をなすバレル10の内部には、混練室11が形成されており、混練室11には、その上流側端部から下流側端部にかけて、回転軸20・30に設けられた複数の部材を構成要素とする、粉体投入部A、粉体処理部B、結着剤投入部C、混練部D、及び戻し部Eが順番に連続して形成されている。
粉体投入口12から粉体投入部Aに供給されて粉体処理部Bを経た粉体と、結着剤投入口13から結着剤投入部Cに供給された結着剤とが混合されることで混合体となり、当該混合体が混練部Dを経ることでペーストとなって、当該ペーストが戻し部Eを経つつ排出口14から排出される。
つまり、混練機1においては、粉体投入部Aと結着剤投入部Cとの間に粉体処理部Bが配置され、粉体と結着剤とが混合されて混合体となる前に、粉体処理部Bにてスペーサ200・300によって粉体が圧縮され、当該圧縮された粉体と結着剤とからなる混合体が混練部Dにて混練されることでペーストが作成される。
【0070】
混練機1によって作成されたペーストは、適宜の混練機で希釈剤等と共に混練されることで電極合剤となる。
【0071】
また、図2に示すように、混練機1は、冷却機構として機能する、複数のバレル冷却路10a・10a・・・、及び回転軸冷却路20a・30aを具備する。
【0072】
バレル冷却路10aは、バレル10の内部に形成された通路であり、冷却水の流動経路となる。バレル冷却路10aは、回転軸20・30の軸方向に沿って、混練室11の位置に合わせて延在し、バレル10の内部における混練室11の外周近傍に混練室11を囲むように複数配置されている。
【0073】
回転軸冷却路20a・30aは、それぞれ回転軸20・30の内部に形成された通路であり、冷却水の流動経路となる。回転軸冷却路20a・30aは、それぞれ回転軸20・30の両端に亘って形成されている。
【0074】
複数のバレル冷却路10a・10a・・・、及び回転軸冷却路20a・30aに冷却水が流動されることで、バレル10、及び回転軸20・30が冷却され、延いては粉体又は混合体が冷却される。
これにより、粉体の圧縮時、及び混合体の混練時等の発熱を抑制し、ペーストの品質の悪化を防止することができる。
【0075】
以下では、図4を参照して、スペーサ200・300について更に詳細に説明する。
【0076】
図4に示すように、スペーサ200の大円板部210の外周面には、複数の斜溝211・211・・・が形成されている。
【0077】
斜溝211は、大円板部210の外周面に形成された溝であり、大円板部210の上流側端面(図4における右側面)から下流側端面にかけて、一定の形状で連続的に形成されている。斜溝211は、大円板部210の回転方向に応じて、粉体が上流側へ押し戻されることがない程度に、粉体に搬送方向とは逆向きの力が加わるように、大円板部210の軸心に対して傾斜している。詳細には、斜溝211は、大円板部210の外周面において、大円板部210の上流側端面を始点とし、大円板部210の下流側端面を終点として、上流側から下流側へ向かうに従って大円板部210の回転方向へ傾斜した状態で連続的に形成されている。
斜溝211は、大円板部210の外周面に複数形成されており、隣接するもの同士が所定の間隔で大円板部210の外周面全域に亘って配置されている。
【0078】
スペーサ200の小円板部220の外周面には、複数の平行溝221・221・・・が形成されている。
【0079】
平行溝221は、小円板部220の外周面に形成された溝であり、小円板部220の軸心に対して平行となるように、小円板部220の上流側端部(図4における右端部)の近傍から下流側端部にかけて一定の形状で連続的に形成されている。
平行溝221は、小円板部220の外周面に複数形成されており、隣接するもの同士が所定の間隔で小円板部220の外周面全域に亘って配置されている。
なお、平行溝221は、小円板部220の軸心に対して平行でなくともよく、小円板部220の外周面と大円板部320の外周面との間において、粉体が上流側へ押し戻されることがない程度に、粉体に搬送方向とは逆向きの力を加えることができれば、その形状等は限定しない。
【0080】
スペーサ300の小円板部310の外周面には、複数の平行溝311・311・・・が形成されている。
【0081】
平行溝311は、小円板部310の外周面に形成された溝であり、小円板部310の軸心に対して平行となるように、小円板部310の上流側端部(図4における右端部)から下流側端部の近傍にかけて一定の形状で連続的に形成されている。
平行溝311は、小円板部310の外周面に複数形成されており、隣接するもの同士が所定の間隔で小円板部310の外周面全域に亘って配置されている。
なお、平行溝311は、小円板部310の軸心に対して平行でなくともよく、小円板部310の外周面と大円板部210の外周面との間において、粉体が上流側へ押し戻されることがない程度に、粉体に搬送方向とは逆向きの力を加えることができれば、その形状等は限定しない。
【0082】
スペーサ300の大円板部320の外周面には、複数の斜溝321・321・・・が形成されている。
【0083】
斜溝321は、大円板部320の外周面に形成された溝であり、大円板部320の上流側端面(図4における右側面)から下流側端面にかけて、一定の形状で連続的に形成されている。斜溝321は、大円板部320の回転方向に応じて、粉体が上流側へ押し戻されることがない程度に、粉体に搬送方向とは逆向きの力が加わるように、大円板部320の軸心に対して傾斜している。詳細には、斜溝321は、大円板部320の外周面において、大円板部320の上流側端面を始点とし、大円板部320の下流側端面を終点として、上流側から下流側へ向かうに従って大円板部320の回転方向へ傾斜した状態で連続的に形成されている。
斜溝321は、大円板部320の外周面に複数形成されており、隣接するもの同士が所定の間隔で大円板部320の外周面全域に亘って配置されている。
【0084】
以上のように、混練機1に設けられたスペーサ200の大円板部210、及び小円板部220の外周面には、それぞれ斜溝211、及び平行溝221が形成され、スペーサ300の小円板部310、及び大円板部320の外周面には、それぞれ平行溝311、及び斜溝321が形成されている。
これにより、スペーサ200の外周面とスペーサ300の外周面との間、スペーサ200の外周面と混練室11の内側面(バレル10の内周面)との間、及びスペーサ300の外周面と混練室11の内側面(バレル10の内周面)との間を通過する際(図4における矢印参照)、混合体が搬送される力よりも弱い力で押し戻されつつ搬送されるため、より長時間、粉体に剪断力を加えつつ粉体を良好に圧縮することができる。
【0085】
なお、本実施形態においては、混練機1にパドルと、ねじれパドルとを設けたが、パドルのみ、又はねじれパドルのみを設ける構成としてもよい。
【0086】
以下では、図5を参照して、混練機1を用いた本電池を製造する工程である製造工程S1について説明する。
図5に示すように、製造工程S1は、混練工程S10、塗工工程S20、及びプレス工程S30を具備する。
【0087】
混練工程S10は、混合体を混練させて、電極合剤を作成する工程である。
混練工程S10においては、前述のように混練機1を用いて、活物質、導電助剤、及び結着剤等を混練してペーストを作成し、当該ペーストを適宜の混練機で希釈剤等と共に混練する。こうして、電極合剤である前記正極合剤、及び前記負極合剤を作成する。
【0088】
塗工工程S20は、電極合剤を集電体に塗工する工程である。
塗工工程S20においては、ダイコータ等の公知の塗工装置を用いて、混練工程S10で作成した前記正極合剤、及び前記負極合剤をそれぞれ前記正極集電体、及び前記負極集電体の表面に塗工した後、乾燥させる。
【0089】
プレス工程S30は、集電体に塗工された電極合剤をプレス加工する工程である。
プレス工程S30においては、塗工工程S20で前記正極集電体、及び前記負極集電体の表面に塗工した前記正極合剤、及び前記負極合剤をロールプレス等の公知の技術によりプレス加工し、前記正極、及び前記負極を作成する。
【0090】
プレス工程S30の後は、前記正極、前記負極、及び前記セパレータを用いて前記電極体を作成し、当該電極体を前記容器に収納する。更に、公知の所定の工程(注液工程、初期充電工程、及びエージング工程等)を行うことで本電池を製造する。
【0091】
一般的に、電池の製造工程においては、ペーストの固形分率を上げることで、ペーストから作成される電極合剤を集電体に塗工した後の電極合剤の乾燥時間を短縮することができる。しかし、ペーストの固形分率の増加によって、ペーストの粘度も増加してしまい、電極合剤の集電体への塗工が困難となる。つまり、塗工された電極合剤の乾燥時間を短縮するために、ペーストの固形分率を上げることが望ましいが、ペーストの固形分率の増加に伴って、ペーストの粘度も増加し、電極合剤の塗工が困難となる。
本電池を製造する工程である製造工程S1の混練工程S10にて、本発明に係る混練機1を用いて、粉体投入部Aと結着剤投入部Cとの間にされた粉体処理部Bにてスペーサ200・300によって粉体を圧縮することにより、粉体のかさ密度を増加させて、比較的固形分率の高いペーストを作成すると共に、粉体に含まれる空気を除去して、混練部Dにて混合体に充分な剪断力を付与し、比較的粘度の低いペーストを作成することが可能となる。したがって、混練工程S10にて、混練機1によって作成されたペーストを用いて電極合剤を作成することにより、塗工工程S20にて、当該電極合剤を良好に集電体に塗工できると共に、塗工された電極合剤の乾燥時間を短縮することができる。
また、ペーストに気泡が残存することを防止できるため、ペーストから気泡を除去する工程を付加的に行う必要がなくなり、製造工程S1に要する時間の短縮、及びコストの低減を図ることができる。
【0092】
なお、本発明に係る混練機1は、本実施形態に記載の電極合剤の他、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、セラミックス、及び磁性材料等の作成に用いることが可能である。
【符号の説明】
【0093】
1 混練機
10 バレル
10a バレル冷却路
11 混練室
12 粉体投入口
13 結着剤投入口
14 排出口
20、30 回転軸
20a、30a 回転軸冷却路
21、31 送りスクリュー
21a 本体部
21b 羽根部
22、32 ねじれパドル
23、33 送りスクリュー
24、34 ねじれパドル
25、35 パドル
26、36 ねじれパドル
27、37 戻しスクリュー
200、300 スペーサ
210、320 大円板部
220、310 小円板部
211、321 斜溝
221、311 平行溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空の外装と、
前記外装の内部に互いに所定の間隔を空けて平行に設けられる二つの軸と、
前記二つの軸に設けられ、前記外装の内部に供給される粉体及び結着剤を搬送する搬送手段と、
前記二つの軸に設けられ、前記粉体と前記結着剤とが混合されてなる混合体を混練する混練手段と、を具備し、
前記外装の内部で前記粉体及び前記結着剤を前記搬送手段によって搬送しつつ、前記混合体を前記混練手段によって混練する二軸連続混練機であって、
前記外装の内部における前記粉体が供給される部分よりも、前記粉体の搬送方向における下流側の部分に前記結着剤が供給され、
前記外装の内部における前記粉体が供給される部分と、前記外装の内部における前記結着剤が供給される部分との間には、前記粉体を圧縮する粉体圧縮手段が設けられる二軸連続混練機。
【請求項2】
前記粉体圧縮手段は、前記二つの軸にそれぞれ設けられるスペーサであり、
前記スペーサは、
前記外装の内周面との間に微細な隙間を有するように形成される大円板部と、
前記大円板部よりも小さい外径を有する小円板部と、からなり、
前記一方のスペーサの大円板部と、前記他方のスペーサの小円板部とがそれらの間に微細な隙間を有するように軸方向における位置を合わせて対向し、前記一方のスペーサの小円板部と、前記他方のスペーサの大円板部とがそれらの間に微細な隙間を有するように軸方向における位置を合わせて対向するように配置される請求項1に記載の二軸連続混練機。
【請求項3】
前記スペーサの前記大円板部の外周面には、前記大円板部の回転方向に応じて、前記粉体に搬送方向とは逆向きの力が加わるように、前記大円板部の軸心に対して傾斜している溝が設けられる請求項2に記載の二軸連続混練機。
【請求項4】
中空の外装と、
前記外装の内部に互いに所定の間隔を空けて平行に設けられる二つの軸と、
前記二つの軸に設けられ、前記外装の内部に供給される粉体及び結着剤を搬送する搬送手段と、
前記二つの軸に設けられ、前記粉体と前記結着剤とが混合されてなる混合体を混練する混練手段と、を具備し、
前記外装の内部で前記粉体及び前記結着剤を前記搬送手段によって搬送しつつ、前記混合体を前記混練手段によって混練する二軸連続混練機であって、
前記外装の内部における前記粉体が供給される部分よりも、前記粉体の搬送方向における下流側の部分に前記結着剤が供給され、
前記外装の内部における前記粉体が供給される部分と、前記外装の内部における前記結着剤が供給される部分との間には、前記粉体を圧縮する粉体圧縮手段が設けられる二軸連続混練機、
を用いて電極合剤を作成する混練工程を具備する電池の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−224435(P2011−224435A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−94438(P2010−94438)
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】