説明

二軸配向積層フィルム

【課題】 実用上十分な可視光領域の反射性能を備え、高濃度に微粒子を添加しても安定して製膜でき、また積層フィルムの層間剥離力に優れた液晶ディスプレイや内照式電飾看板用の反射板用基材として好適なフィルムを提供することを目的とする。
【解決手段】 平均粒子径0.1〜10μmの微粒子45〜80重量%および極限粘度数0.45〜0.65のポリエステル20〜55重量%からなるポリエステル組成物の層A、この層と隣接し平均粒子径0.1〜10μmの微粒子0.1〜15重量%および極限粘度数0.45〜0.65のポリエステル85〜99.9重量%からなるポリエステル組成物の層Bを含む積層フィルムであり、層Aと層Bとの剥離強度が200g以上である、二軸配向積層フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二軸配向積層フィルムに関し、詳しくは、高い延伸性能と高反射率を有する、二軸配向積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイにおいて従来、ディスプレイの背面からライトを当てるバックライト方式が採用されていた。近年、特開昭63−62104号公報に示されるようなサイドライト方式が、薄型で均一に照明できるメリットから、広く用いられるようになっている。このサイドライト方式とはある厚みを持ったアクリル板などのエッジより冷陰極管などの照明を当てる方式で、網点印刷のために、照明光が均一に分散され、均一な明るさをもった画面が得られる。この方式では、画面の背面でなくエッジ部に照明を設置するためバックライト方式より薄型にできる。この場合、照明光の画面背面への逃げを防ぐために画面の背面に反射板を設置する。この反射板には光の高い反射性および高い拡散性が要求される。
【0003】
この目的に沿う液晶ディスプレイ反射板用に適したポリエステルフィルムを得る方法として、非相溶樹脂を含有せしめる方法が知られている。これは比較的安価にできる方法である。たとえば特公平8−16175号公報に記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開昭63−137927号公報
【特許文献2】特公平8−16175号公報
【特許文献3】特開平3−76727号公報
【特許文献4】特開平3−132331号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、非相溶樹脂を添加するだけでは反射率を向上させる点で不十分であり、できあがった液晶ディスプレイの画面の明るさも不十分であった。また、酸化チタンなどの微粒子を高濃度添加した場合には、反射効率の向上こそ期待できるが、たとえば45重量%程度にまで高濃度添加した場合、微粒子濃度が非常に高いため、破断が多発し製膜することが非常に困難である。また、層中に高濃度の微粒子が存在するとフィルムの層間剥離力に劣り、層間で剥がれるという問題も生じ易い。
【0006】
本発明は、かかる従来技術の問題点を解決することを課題とする。すなわち、本発明は、実用上十分な可視光領域の反射性能を備え、高濃度に微粒子を添加しても安定して製膜できる積層フィルムでありながら、高い層間剥離力を備える、液晶ディスプレイや内照式電飾看板用の反射板用に好適な、二軸配向積層フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、平均粒子径0.1〜10μmの微粒子45〜80重量%および極限粘度数0.45〜0.65のポリエステル20〜55重量%からなるポリエステル組成物の層A、この層と隣接し平均粒子径0.1〜10μmの微粒子0.1〜15重量%および極限粘度数0.45〜0.65のポリエステル85〜99.9重量%からなるポリエステル組成物の層Bを含む積層フィルムであり、層Aと層Bとの剥離強度が200g以上である、二軸配向積層フィルムである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、実用上十分な可視光領域の反射性能を備え、高濃度に微粒子を添加しても安定して製膜できる積層フィルムでありながら、高い層間剥離力を備える、液晶ディスプレイや内照式電飾看板用の反射板用基材として好適な、二軸配向積層フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
[ポリエステル]
ポリエステル組成物のポリエステルとしては、ジカルボン酸成分とジオール成分とからなるポリエステルを用いる。ジカルボン酸としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、2,6―ナフタレンジカルボン酸、4,4’―ジフェニルジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸を挙げることができる。ジオールとしては、例えばエチレングリコール、1,4―ブタンジオール、1,4―シクロヘキサンジメタノール、1,6―ヘキサンジオールを挙げることができる。これらのポリエステルの中で、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0010】
ポリエステルは、好ましくは共重合ポリエステル、特に好ましくは共重合ポリエチレンテレフタレートを用いる。共重合成分の割合は、全ジカルボン酸成分あたり、好ましくは4〜15モル%、さらに好ましくは5〜14モル%、さらに好ましくは3〜14モル%、特に好ましくは6〜13モル%である。共重合成分の割合が4モル%未満であると微粒子を含有する層、例えば45重量%以上の不活性粒子を含有する場合において、製膜できないことがあり好ましくない。共重合成分の割合が15モル%を超えると熱寸法安定性に欠けたフィルムになったり、製膜すらできない状況に陥る可能性があり好ましくない。
【0011】
ポリエステルが、ポリエチレンテレフレートである場合、共重合成分としては、例えば、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸を挙げることができる。イソフタル酸および/または2,6−ナフタレンジカルボン酸を用い、合計の共重合量を4〜15モル%とした共重合ポリエチレンテレフタレートは、好ましいポリエステルである。
ポリエステルには、添加剤、たとえば、酸化防止剤、帯電防止剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤が添加されていてもよい。
【0012】
[層構成]
本発明において層Aは、平均粒子径0.1〜10μmの微粒子45〜80重量%および極限粘度数0.45〜0.65のポリエステル20〜55重量%からなるポリエステル組成物の層である。このポリエステルの極限粘度数は、好ましくは0.47〜0.63、さらに好ましくは0.49〜0.61である。極限粘度数が0.45に満たないと延伸性が極めて損なわれフィルムとならない場合があり、0.65を越えると、押出し圧力が高い、また溶融ろ過の際の圧力が高くなり過ぎるといった製造上の問題が生ずる。
【0013】
層Aと隣接する層Bは、平均粒子径0.1〜10μmの微粒子0.1〜15重量%および極限粘度数0.45〜0.65のポリエステル85〜99.9重量%からなるポリエステル組成物の層である。このポリエステルの極限粘度数は、好ましくは0.46〜0.63、さらに好ましくは0.47〜0.61である。極限粘度が0.45に満たないと延伸性が極めて損なわれフィルムとならない場合があり、0.65を越えると、押出し圧力が高い、また溶融ろ過の際の圧力が高くなり過ぎるといった製造上の問題が生ずる。
本発明においては層Aと層Bは隣接するが、層Aの両面に層Bが配置された3層構成の積層フィルムである態様が好ましい形態である。
【0014】
[微粒子]
本発明において層Aは、平均粒子径0.1〜10μmの微粒子を45〜80重量%、好ましくは50〜70重量%、さらに好ましくは50〜60重量%含有する。45重量%未満であると反射率が低く、80重量%を超えると破断しやすく、フィルムとならない場合がある。
【0015】
層Bは、平均粒子径0.1〜10μmの微粒子を0.1〜15重量%、好ましくは0.5〜14重量、さらに好ましくは1.0〜13重量%含有する。0.1重量%未満であると最表層にも利用されることから滑り性が悪く、非常に扱い難いフィルムとなる。15重量%を超えると、延伸性が不安定になることがある。
【0016】
微粒子の平均粒子径は0.1〜10μmであるが、好ましくは0.1〜5μm、さらに好ましくは0.3〜3μmである。平均粒径が0.1μm未満であると分散性が極端に悪くなり、粒子の凝集が起こるため、生産工程上のトラブルが発生し易く、フィルムに粗大突起を形成し、光沢の劣ったフィルムになる可能性がある。10μmを超えるとフィルムの表面が粗くなったり、延伸性に劣ったフィルムになる。
【0017】
微粒子としては、反射性能を向上させる観点から、白色顔料を用いることが好ましい。微粒子としては、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、二酸化珪素を例示することができる。なお、酸化チタンは、ルチル型のものが好ましい。これはルチル型のものは、アナターゼ型のものよりも光線を長時間ポリエステルフィルムに照射した後の黄変が少なく、色差の変化を抑制するのに適しているからである。
【0018】
微粒子のなかでも反射率の向上の観点からは硫酸バリウムが特に好ましい。硫酸バリウムは板状、球状いずれの粒子形状でも良い。特にルチル型酸化チタンは、分散性を向上させるために、ステアリン酸等の脂肪酸およびその誘導体等を用いて処理して用いると、フィルムの光沢度を一層向上させることができるので好ましい。
【0019】
ルチル型酸化チタンを用いる場合には、ポリエステルに添加する前に、精製プロセスを用いて、粒径調整、粗大粒子除去を行うことが好ましい。精製プロセスの工業的手段としては、粉砕手段で例えばジェットミル、ボールミルを適用することができ、分級手段としては、例えば乾式もしくは湿式の遠心分離を適用することができる。これらの手段は2種以上を組み合わせ、段階的に精製しても良い。
【0020】
微粒子をポリエステルに含有させる方法としては各種の方法を用いることができる。その代表的な方法として、下記のような方法を挙げることができる。
(ア)ポリエステル合成時のエステル交換反応もしくはエステル化反応終了前に添加、もしくは重縮合反応開始前に添加する方法。
(イ)ポリエステルに添加し、溶融混練する方法。
(ウ)上記(ア)または(イ)の方法において不活性粒子を多量添加したマスターペレットを製造し、これらと添加剤を含有しないポリエステルとを混練して所定量の添加物を含有させる方法。
(エ)上記(ウ)のマスターペレットをそのまま使用する方法。
【0021】
上記(ウ)または(エ)の方法をとることが好ましい。なお、上記(ア)の方法を用いる場合には、酸化チタンにおいてはグリコールに分散したスラリーとして、反応系に添加することが好ましい。
【0022】
一般的に微粒子は、凝集して粗大凝集粒子となることが多い。本発明では、粗大凝集粒子の個数を減らすために、製膜時のフィルターとして線径15μm以下のステンレス鋼細線よりなる平均目開き10〜100μm、好ましくは平均目開き15〜50μmの不織布型フィルターを用い、溶融ポリマーを濾過することが好ましい。
【0023】
[添加剤]
ポリエステル組成物には、添加剤として、例えば酸化アルミニウム、酸化マグネシウムやアクリル樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂のような有機フィラー、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレンターポリマー、オレフィン系アイオノマーのような他の樹脂、酸化防止剤、紫外線吸収剤を本発明の範囲を逸脱しない範囲内で、必要に応じて配合してもよい。
【0024】
蛍光増白剤を用いる場合、ポリエステル組成物に対する濃度として、好ましくは0.005〜0.5重量%、さらに好ましくは0.01〜0.3重量%の範囲で配合するとよい。0.005重量%未満では350nm付近の波長域の反射率が十分でなく、反射板とした時に照度が十分なものとならないことから好ましくない。0.5重量%を越えると、蛍光増白剤の持つ特有の色が現れてしまうため好ましくない。
【0025】
蛍光増白剤としては、例えばOB−1(イーストマン社製)、Uvitex−MD(チバガイギー社製)、JP−Conc(日本化学工業所製)を用いることができる。
また、必要に応じて酸化防止剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤等を有する塗剤を本フィルムの少なくとも片面に塗布することもできる。
【0026】
[積層]
本発明の二軸配向積層フィルムは、A層/B層の2層構成を含む積層フィルムであり、例えば、A層/B層の2層構成であっても良く、B層/A層/B層の3層構成であってよい。特にB層/A層/B層の3層構成は、良好な反射特性が得られることから好ましい。
【0027】
A層とB層との間の層間剥離強度は、200g以上、好ましくは220g以上、さらに好ましくは240g以上、最も好ましくは250g以上である。200g未満であるとフィルムの傷などが起点となり、剥離し易い。層間剥離強度の上限は、特に定めはしないが例えば高々1000gであろう。1000gを越えるようなフィルムの作製は、層間の密着性から考慮すると極めて難しいからである。
【0028】
またフィルムの片面または両面に、他の機能を付与するために、他の層をさらに積層した積層体としても良い。ここでいう他の層として、透明なポリエステル樹脂層、金属薄膜やハードコート層、インク受容層を例示することができる。
【0029】
[製造方法]
本発明のフィルムを製造する方法の一例を説明する。ダイから溶融したポリマーをフィードブロックを用いた同時多層押出し法により、積層未延伸シートを製造する。すなわちA層を形成するポリマーの溶融物とB層を形成するポリマーの溶融物を、フィードブロックを用いて例えばB層/A層/B層となるように積層し、ダイに展開して押出しを実施する。この時、フィードブロックで積層されたポリマーは積層された形態を維持している。また、マルチマニホルールドダイでも製膜可能であるが、剥離強度を上げる点ではフィードブロックを用いる方がより好ましい。
【0030】
ダイより押出された未延伸シートは、キャスティングドラムで冷却固化され、未延伸フィルムとなる。この未延伸状フィルムをロール加熱、赤外線加熱等で加熱し、縦方向に延伸して縦延伸フィルムを得る。この延伸は2個以上のロールの周速差を利用して行うのが好ましい。延伸温度はポリエステルのガラス転移点(Tg)以上の温度、更にはTg〜70℃高い温度とするのが好ましい。延伸倍率は、用途の要求特性にもよるが、縦方向、縦方向と直交する方向(以降、横方向と呼ぶ)ともに、好ましくは2.5〜4.0倍、さらに好ましくは2.8〜3.9倍である。2.5倍未満とするとフィルムの厚み斑が悪くなり、4.0倍を超えると製膜中に破断が発生し易くなり好ましくない。
【0031】
縦延伸後のフィルムは、続いて、横延伸、熱固定、熱弛緩の処理を順次施して二軸配向フィルムとするが、これら処理はフィルムを走行させながら行う。横延伸の処理はポリエステルのガラス転移点(Tg)より高い温度から始める。そしてTgより(5〜70)℃高い温度まで昇温しながら行う。横延伸過程での昇温は連続的でも段階的(逐次的)でもよいが通常逐次的に昇温する。例えばテンターの横延伸ゾーンをフィルム走行方向に沿って複数に分け、ゾーン毎に所定温度の加熱媒体を流すことで昇温する。横延伸の倍率は、この用途の要求特性にもよるが、好ましくは2.5〜4.5倍、さらに好ましくは2.8〜3.9倍である。2.5倍未満であるとフィルムの厚み斑が悪くなり良好なフィルムが得られず、4.5倍を超えると製膜中に破断が発生し易くなる。
【0032】
横延伸後のフィルムは両端を把持したまま(Tm−10)〜(Tm−100)℃で定幅または10%以下の幅減少下で熱処理して熱収縮率を低下させるのがよい。これより高い温度であるとフィルムの平面性が悪くなり、厚み斑が大きくなり好ましくない。また、熱処理温度が(Tm−80)℃より低いと熱収縮率が大きくなることがある。また、熱固定後フィルム温度を常温に戻す過程で(Tm−10)〜(Tm−100)℃以下の領域の熱収縮量を調整するために、把持しているフィルムの両端を切り落し、フィルム縦方向の引き取り速度を調整し、縦方向に弛緩させることができる。弛緩させる手段としてはテンター出側のロール群の速度を調整する。弛緩させる割合として、テンターのフィルムライン速度に対してロール群の速度ダウンを行い、好ましくは0.1〜1.5%の速度ダウンすなわち弛緩(以降この値を弛緩率という)を実施する。より好ましくは0.2〜1.2%の弛緩率、さらに好ましくは0.3〜1.0%の弛緩率を実施し縦方向の熱収縮率を調整する。また、フィルム横方向は両端を切り落すまでの過程で幅減少させて、所望の熱収縮率を得ることもできる。
【0033】
このようにして得られる本発明の積層フィルムの85℃の熱収縮率は、直交する2方向ともに0.7%以下、さらに好ましくは0.6%以下、最も好ましくは0.5%以下の達成が可能である。2軸延伸後のフィルムの厚みは、好ましくは25〜250μm、さらに好ましくは30〜220μm、さらに好ましくは40〜200μmである。25μm以下であると、反射率が低下し、250μmを超えるとこれ以上厚くしても反射率の上昇が望めないことから好ましくない。
【0034】
本発明の積層白色ポリエステルフィルムの少なくとも一方の表面の反射率は波長400〜700nmの平均反射率で90%以上、さらに好ましくは92%以上、さらに好ましくは94%以上である。90%未満であると十分な画面の輝度を得ることができない。
【実施例】
【0035】
以下、実施例により本発明を詳述する。
なお、各特性値は以下の方法で測定した。
(1)フィルム厚み
フィルムサンプルをエレクトリックマイクロメーター(アンリツ製 K−402B)にて、10点厚みを測定し、平均値をフィルムの厚みとした。
【0036】
(2)各層の厚み
サンプルを三角形に切り出し、包埋カプセルに固定後、エポキシ樹脂にて包埋した。そして、包埋されたサンプルをミクロトーム(ULTRACUT−S)で縦方向に平行な断面を50nm厚の薄膜切片にした後、透過型電子顕微鏡を用いて、加速電圧100kvにて観察撮影し、写真から各層の厚みを測定し、平均厚みを求めた。
【0037】
(3)反射率
分光光度計(島津製作所製UV−3101PC)に積分球を取り付け、BaS0白板を100%とした時の反射率を400〜700nmにわたって測定した。得られたチャートより2nm間隔で反射率を読み取った。上記の範囲内で平均値を求めた。
【0038】
(4)延伸性
縦方向2.9〜3.4倍、横方向3.5〜3.7倍に延伸して製膜し、安定に製膜できるか観察した。下記基準で評価した。
○:1時間以上安定に製膜できる
△:10分間以上1時間未満の間に切断が生ずる。
×:10分間以内に切断が発生し、安定な製膜ができない。
【0039】
(5)熱収縮率
85℃に設定されたオーブン中でフィルムを無緊張状態で30分間保持し、加熱処理前後の標点間距離を測定し、下記式により熱収縮率(85℃熱収縮率)を算出した。
熱収縮率%=((L0−L)/L0)×100
L0:熱処理前の標点間距離
L :熱処理後の標点間距離
【0040】
(6)ガラス転移点(Tg)、融点(Tm)
示差走査熱量測定装置(TA Instruments 2100 DSC)を用い、昇温速度20m/分で測定を行った。
【0041】
(7)フィルムの層間剥離強度
長さ150mm、幅20mmの短冊状にフィルムを切り出し測定したい層と層とを予め50mm剥離しておき、引張り試験機のチャックにそれぞれ挟み込み、100mm/分で引張り、フラットな部分をチャートから読み取り、5回測定の平均値をその層間剥離強度とした。
【0042】
(8)極限粘度数測定
剥離させた各層を約0.1gずつ精秤し、オルトクロロフェノール25mlに加熱溶解させる。放冷後遠心分離機にて微粒子を分離し、粘度計にて測定した。その後、この得られた値Aを下記式にて補正を行った。
極限粘度数=A/{(100−微粒子濃度%)/100}
【0043】
(9)微粒子の平均粒子径
HORIBA製LA−750パーティクルサイズアナライザー(Particle Size Analyzer)を用いて測定した。50マスパーセントに相当する粒子径を読み取り、この値を平均粒子径とした。
【0044】
[実施例1〜4]
テレフタル酸ジメチル132重量部、イソフタル酸ジメチル18重量部(ポリエステルの酸成分に対して12mol%)、エチレングリコール96重量部、ジエチレングリコール3.0重量部、酢酸マンガン0.05重量部、酢酸リチウム0.012重量部を精留塔、留出コンデンサを備えたフラスコに仕込み、撹拌しながら150〜235℃に加熱しメタノールを留出させエステル交換反応を行った。メタノールが留出した後、リン酸トリメチル0.03重量部、二酸化ゲルマニウム0.04重量部を添加し、反応物を反応器に移した。ついで撹拌しながら反応器内を徐々に0.5mmHgまで減圧するとともに290℃まで昇温し重縮合反応を行った。得られた共重合ポリエステルの極限粘度数は表1に記す通りであり、融点は224℃、ジエチレングリコール成分量は2.5wt%であった。このポリエステル樹脂に表1に示す微粒子を添加し、それぞれ270℃に加熱された2台の押出機に供給し、A層ポリマー、B層ポリマーをA層とB層がB層/A層/B層となるような3層フィードブロック装置を使用して合流させ、その積層状態を保持したままダイスよりシート状に成形した。さらにこのシートを表面温度25℃の冷却ドラムで冷却固化した未延伸フィルムを表2に記載された温度にて加熱し長手方向(縦方向)に延伸し、25℃のロール群で冷却した。続いて、縦延伸したフィルムの両端をクリップで保持しながらテンターに導き120℃に加熱された雰囲気中で長手に直交する方向(横方向)に延伸した。その後テンター内で表2の温度で熱固定を行い、表2に示す温度領域にて記入された縦方向の弛緩、横方向の幅入れを行い、室温まで冷やして二軸延伸フィルムを得た。得られたフィルムの反射板基材としての物性は表2の通りであった。
【0045】
【表1】

【0046】
【表2】

【0047】
[実施例5〜6]
酢酸マンガンを0.05重量部を酢酸チタン0.02重量部に変更し、テレフタル酸ジメチル360重量部、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル62重量部とする以外は、実施例1に同様に実施し共重合ポリエステルを得た。得られた共重合ポリエステルの極限粘度数は表1に示す通りであり、融点は225℃、ジエチレングリコール成分量は2.5wt%であった。このポリエステル樹脂に表1に示す微粒子を添加し、実施例1と同様にして、表2に示すようにフィルムを作製した。
【0048】
[実施例7〜8]
イソフタル酸ジメチルをポリエステルの酸成分(ここではテレフタル酸ジメチルとイソフタル酸ジメチル)に対してそれぞれ4mol%、15mol%に変更した以外、実施例5同様に実施した。結果を表1に示す。
【0049】
[比較例1]
ジメチルテレフタレート85重量部、エチレングリコール60重量部とを酢酸カルシウム0.09重量部を触媒として常法に従い、エステル交換反応をせしめた後、リン化合物としてポリマーに対し0.18重量%となるようにトリメチルホスフェート10重量%含有するエチレングリコール溶液を添加し、次いで重合触媒として三酸化アンチモン0.03重量部を添加した。その後、高温減圧下にて常法に従い重縮合反応を行い極限粘度数は表1に示すポリエチレンテレフタレートを得た。融点は257℃、ジエチレングリコール成分量は1.2wt%であった。この樹脂に表1に示した微粒子を添加し、A、Bの層とした。表2に記載した条件にて作製した。
【0050】
[比較例2]
比較例1と同様にして、表1、2に示す条件にて実施した。
【0051】
[比較例3、4]
比較例1と同様にして、表1、2に示す条件で製膜した。延伸性能が極めて低く、製膜時の切断が多発した。
【0052】
[比較例5、6]
二酸化ゲルマニウム0.04重量部を三酸化アンチモン0.04重量部に変更する以外は実施例1と同様にして共重合ポリエステル樹脂を得た。この樹脂を用いて実施例1と同様にして表1、2に示す通り実施した。
【0053】
[比較例7]
比較例1の樹脂を用い、3層フィルムの表層(表面と裏面)として無機微粒子として炭酸カルシウムを14重量%添加し、芯層の樹脂としてポリエチレンテレフタレートに非相溶樹脂であるポリメチルペンテン樹脂を10重量%、ポリエチレングリコール1重量%混合し、比較例1と同様にしてフィルムを作製した。表1、2に示すが、反射率が劣った結果であった。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の二軸配向積層フィルムは、光線の反射率が高く、各種の反射板、中でも特に液晶ディスプレイの反射板や太陽電池のバックシート、内照式電飾看板の反射板用基材として最適に用いることができる。
【0055】
また、紙代替、すなわちカード、ラベル、シール、宅配伝票、ビデオプリンタ用受像紙、インクジェット、バーコードプリンタ用受像紙、ポスター、地図、無塵紙、表示板、白板、感熱転写、オフセット印刷、テレフォンカード、ICカードなどの各種印刷記録に用いられる受容シートの基材としても用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径0.1〜10μmの微粒子45〜80重量%および極限粘度数0.45〜0.65のポリエステル20〜55重量%からなるポリエステル組成物の層A、この層と隣接し平均粒子径0.1〜10μmの微粒子0.1〜15重量%および極限粘度数0.45〜0.65のポリエステル85〜99.9重量%からなるポリエステル組成物の層Bを含む積層フィルムであり、層Aと層Bとの剥離強度が200g以上である、二軸配向積層フィルム。
【請求項2】
平均粒子径0.1〜10μmの微粒子45〜80重量%および極限粘度数0.45〜0.65のポリエステル20〜55重量%からなるポリエステル組成物の層Aと、この層の両面に設けられた平均粒子径0.1〜10μmの微粒子0.1〜15重量%および極限粘度数0.45〜0.65のポリエステル85〜99.9重量%からなるポリエステル組成物の層Bとからなる積層フィルムであり、層Aと層Bとの剥離強度が200g以上である、二軸配向積層フィルム。
【請求項3】
A層および/またはB層のポリエステルが、4〜15モル%の共重合成分を含む共重合ポリエチレンテレフタレートである、請求項1または2に記載の二軸配向積層フィルム。
【請求項4】
反射率が90%以上である、請求項1〜3のいずれかに記載の二軸配向積層フィルム。

【公開番号】特開2006−187910(P2006−187910A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−538(P2005−538)
【出願日】平成17年1月5日(2005.1.5)
【出願人】(301020226)帝人デュポンフィルム株式会社 (517)
【Fターム(参考)】