説明

二部材の接合構造および接合方法、並びにガス容器およびその製造方法

【課題】 一対の樹脂部材の端部同士の位置ずれを簡易に抑制した状態で、その端部同士をレーザ溶着により適切に接合することができる二部材の接合構造および接合方法、並びにガス容器およびその製造方法を課題とする。
【解決手段】 樹脂部材1の略円筒状の端部12におねじ21を設け、樹脂部材の2の略円筒状の端部32にめねじ41を設ける。おねじ21をめねじ41に螺合した状態でレーザを照射して、端部12と端部32とをレーザ溶着により接合した二部材の接合構造である。また、この接合構造をガス容器101の樹脂ライナ111に適用して、ライナ構成部材121,122同士を螺合した状態でレーザ溶着により接合した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の樹脂部材の略円筒状の端部同士を接合する二部材の接合構造および接合方法に関するものである。また本発明は、樹脂ライナが複数のライナ構成部材を接合してなるガス容器に関し、特にライナ構成部材の接合される端部が略円筒状であるガス容器およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、軽量化等の観点から、配管などを構成するパイプ形状品や、ガス容器の内殻(ライナ)を樹脂化して樹脂成形品とすることが行われる。この種の樹脂成形品は、予め分割して成形された分割成形品を互いに接合することで構成されることが多く、その場合の接合方法としてレーザ溶着方法が利用されている。
【0003】
例えば特許文献1には、一対のパイプ成形品の端部同士をレーザ溶着により接合する構造が記載されている。この接合構造は、一方のパイプ成形品の端部外面に形成したテーパ状接合面を、他方のパイプ成形品の端部内面に形成した逆テーパ状接合面に当接させ、この接触状態でレーザを照射して接合面同士をレーザ溶着により接合したものである。
【特許文献1】特開2004−90630号公報(第1図および第2頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような従来の接合構造は、テーパ状・逆テーパ状の接合面としているため、例えば薄肉のパイプ成形品同士の接合であっても、その接合面積を増大させることができる点では有用である。しかしながら、レーザの照射は、両者の接合面を単に当接させた状態で行われるため、レーザ照射時に接合面同士の当接がずれる可能性があり、それにより接合不良となるおそれがあった。
もっとも、この接合不良の問題を解消するべく、端部同士の接触状態を維持するための加圧治具を用意することも考えられるが、コストがかかる上に煩雑となる。
【0005】
本発明は、一対の樹脂部材の端部同士の位置ずれを簡易に抑制した状態で、その端部同士をレーザ溶着により適切に接合することができる二部材の接合構造および接合方法を提供することをその目的としている。
【0006】
また本発明は、この二部材の接合構造をガス容器の樹脂ライナに適用して、ライナ構成部材の端部同士の位置ずれを抑制した状態で、その端部同士をレーザ溶着により適切に接合することができるガス容器およびその製造方法を提供することをその目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の二部材の接合構造は、少なくとも略円筒状の端部を有する一対の樹脂部材を、その端部同士を係合構造により係合してレーザ溶着により接合する二部材の接合構造であって、係合構造は、一方の樹脂部材の端部に設けられたおねじと、他方の樹脂部材の端部に設けられ、おねじに螺合されるめねじと、を有するものである。
【0008】
この構成によれば、各樹脂部材の接合部位となる略円筒状の端部におねじまたはめねじを設けているため、これらを螺合した状態でレーザを照射することができる。これにより、レーザ照射時に端部同士を密着するように保持することができるため、加圧治具などを用いずとも、端部同士の位置ずれを好適に抑制することができる。したがって、端部同士をレーザ溶着により良好に接合することができる。また、レーザ溶着後の接合部は、ねじ締結によっても接合された状態となるため、接合部の強度が向上し得る。さらに、略円筒状の端部同士を接合する際には、通常心合わせが煩雑となるところ、おねじとめねじとの螺合構造によって、簡単に心合わせをすることができる。
【0009】
ここで、「少なくとも略円筒状の端部を有する樹脂部材」には、樹脂部材が全体として円筒状、環状、お碗状、ドーム状等の形状を有することが含まれる。
【0010】
上記した本発明の接合構造の場合、めねじが設けられた端部の内周面は、傾斜した接合面を有し、おねじが設けられた端部の外周面は、接合面に整合し且つこれに当接する接合面を有し、この接合面同士がレーザ溶着により接合されていることが、好ましい。
【0011】
この構成によれば、接合面を傾斜した面で構成することで、接合面同士の接触面積(接合面積)を増大させることができると共に、接合面同士の心合わせに有用となり得る。
【0012】
この場合、螺合状態のおねじ及びめねじは、接合面同士と共にレーザ溶着により接合されていることが、好ましい。
【0013】
この構成によれば、接合面積をより一層増大させることができると共に、レーザ溶着後の接合部におけるシール性を高めることができる。
【0014】
これらの場合、めねじが設けられた端部は、レーザ透過性の樹脂で形成され、おねじが設けられた端部は、レーザ吸収性の樹脂で形成されていることが、好ましい。
【0015】
この構成によれば、レーザ透過性の端部側からレーザを照射すると、レーザ吸収性の端部が加熱溶融すると共に、その端部からの熱伝達によりレーザ透過性の端部が加熱溶融する。このように、レーザに対する透過性または吸収性の特性を端部に持たせておくことで、端部同士を適切に接合することができる。なお、この種のレーザに対する特性を端部のみに持たせてもよいが、端部を含む樹脂部材の全体に持たせる方が、樹脂部材を簡易に製造し得る。
【0016】
これらの場合、おねじ及びめねじは、金属材料で形成されていることが、好ましい。
【0017】
この構成によれば、おねじ及びめねじを樹脂で形成する場合に比べて、強固な締結力を得ることができる。なお、おねじ又はめねじは、樹脂部材の端部に接着等により設けてもよいし、樹脂部材にインサート成形されることで、樹脂部材の端部に設けられてもよい。
【0018】
これらの場合、おねじはテーパおねじからなり、めねじはテーパめねじからなることが、好ましい。
【0019】
この構成によれば、テーパねじ接続となるため、テーパおねじおよびテーパめねじの一方のねじ山が螺合時に圧潰される。これにより、ストレートねじ接続する場合に比べて、レーザ溶着後の接合部におけるシール性をより一層向上することができる。
【0020】
本発明の二部材の接合方法は、少なくとも略円筒状の端部を有する一対の樹脂部材を、その端部同士を接合する二部材の接合方法であって、その一方の樹脂部材の端部に設けたおねじと、その他方の樹脂部材の端部に設けためねじとを螺合した状態でレーザを照射して、この端部同士をレーザ溶着により接合するものである。
【0021】
この構成によれば、端部同士を螺合した状態でレーザを照射するため、加圧治具などを用いずとも、端部同士の位置ずれを好適に抑制した状態で、これをレーザ溶着により良好に接合することができる。また、レーザ溶着後における接合部の強度を向上し得る点や、端部同士を簡単に心合わせすることができる点も、上記と同様である。
【0022】
この場合、おねじが設けられた端部の接合面と、めねじが設けられた端部の接合面とが接触するまで、おねじおよびめねじを螺合した後、この接合面同士をレーザ溶着により接合することが、好ましい。
【0023】
この構成によれば、接合面同士が接触するまで螺進しているため、レーザ溶着の対象となる接合面同士を確実に密着させることができる。これにより、接合面同士のレーザ溶着を良好に且つ確実に行うことができる。
【0024】
この場合、接合面同士を周方向に亘ってレーザ溶着により接合することが、好ましい。
【0025】
この構成によれば、接合面同士の全周がレーザによりライン溶接される。
【0026】
これらの場合、螺合状態のおねじ及びめねじを接合面同士と共にレーザ溶着により接合することが、好ましい。また、一方の樹脂部材の端部をレーザ透過性の樹脂で形成し、且つ他方の樹脂部材の端部をレーザ吸収性の樹脂で形成しておき、このレーザ透過性の端部側からレーザ吸収性の端部に向けてレーザを照射して、接合面同士をレーザ溶着により接合することが、好ましい。さらに、おねじおよびめねじは、金属材料で形成されていることが、好ましい。また、おねじは、テーパおねじからなり、めねじは、テーパめねじからなることが、好ましい。
【0027】
本発明のガス容器は、一対の樹脂部材を一対のライナ構成部材として、上記した本発明の二部材の接合方法を用い、ライナ構成部材同士を接合して構成した樹脂ライナと、樹脂ライナの外周に配置された補強層と、を有するものである。
【0028】
この構成によれば、一対のライナ構成部材を一体的に接合するのに上記の接合方法を利用しているため、良好に接合された樹脂ライナを構成することができる。この樹脂ライナをガス容器が備えているため、ガス容器の気密性や生産性などを高めることができる。
【0029】
本発明の他のガス容器は、樹脂ライナを有するガス容器であって、樹脂ライナは、少なくとも略円筒状の端部を有する複数のライナ構成部材を接合してなり、且つライナ構成部材同士の接合部分には、この略円筒状の端部同士を係合する係合構造と、この略円筒状の端部同士をレーザ溶着により接合したレーザ溶着部と、が設けられ、係合構造は、端部同士の一方に設けられたおねじと、端部同士の他方に設けられ、おねじに螺合されるめねじと、を有するものである。
【0030】
この構成によれば、ライナ構成部材同士を接合する樹脂ライナの製造過程において、ライナ構成部材の端部同士を係合構造により係合して、この係合状態でレーザを照射することができる。これにより、加圧治具などを用いずとも、端部同士の位置ずれを好適に抑制することができ、端部同士をレーザ溶着により良好に接合することができる。特に、係合構造が螺合構造となるため、端部同士を密着するように保持することができると共に、接合の際の心合わせが容易となる。また、レーザ溶着後においても、その接合部は、レーザ溶着部に加えて、係合構造により係合されているため、接合部の強度が向上し得る。
ここで、レーザ溶着部とは、接合された一方のライナ構成部材の端部の一部と、他方のライナ構成部材の端部の一部とが溶融して形成された部位をいう。
【0031】
この場合、めねじが設けられた端部の内周面は、傾斜した接合面を有し、おねじが設けられた端部の外周面は、接合面に整合し且つこれに当接する接合面を有し、レーザ溶着部は、この接合面同士が溶融して形成されていることが、好ましい。
【0032】
この構成によれば、上記同様に、接合面同士の接触面積(接合面積)を増大させること等ができる。
【0033】
また上記本発明のガス容器においては、上記の二部材の接合構造と同様に、めねじが設けられた端部は、レーザ透過性の樹脂で形成され、おねじが設けられた端部は、レーザ吸収性の樹脂で形成されていることが、好ましい。また、おねじおよびめねじは、金属材料で形成されていることが、好ましい。さらに、おねじはテーパおねじからなり、めねじはテーパめねじからなることが、好ましい。
【0034】
本発明のガス容器の製造方法は、少なくとも略円筒状の端部を有するライナ構成部材を複数個接合してなる樹脂ライナを有するガス容器の製造方法であって、互いに接合されるべき一方のライナ構成部材の略円筒状の端部と、他方のライナ構成部材の略円筒状の端部とを係合する係合工程と、係合工程の後、レーザを照射してこの端部同士をレーザ溶着により接合する照射工程と、を有し、係合工程は、一方のライナ構成部材の略円筒状の端部に設けたおねじと、他方のライナ構成部材の略円筒状の端部に設けためねじとを螺合することにより行われるものである。
【0035】
この構成によれば、ライナ構成部材の端部同士を螺合した状態でレーザを照射するため、加圧治具などを用いずとも端部同士の位置ずれを好適に抑制しながら、レーザ溶着により端部同士を良好に接合することができる。また、レーザ溶着後においても、端部同士が螺合されている分、接合部の強度を向上し得る。
【0036】
また上記本発明のガス容器の製造方法においては、上記の二部材の接合方法と同様に、以下のようにすることが好ましい。
【0037】
係合工程は、おねじが設けられた端部の接合面とめねじが設けられた端部の接合面とが接触するまで、おねじとめねじとを螺合することで行われ、照射工程は、この接触状態の接合面同士をレーザ溶着により接合することで行われる。さらに好ましくは、この照射工程は、接合面同士を周方向に亘ってレーザ溶着により接合することで行われる。また好ましくは、照射工程は、螺合状態のおねじ及びめねじを接合面同士と共にレーザ溶着により接合することで行われる。
【0038】
また好ましくは、係合工程に先立ち、互いに接合されるべき一方のライナ構成部材の略円筒状の端部をレーザ透過性の樹脂で形成し、且つ他方のライナ構成部材の略円筒状の端部をレーザ吸収性の樹脂で形成する工程を更に備え、照射工程は、レーザ透過性の端部側からレーザ吸収性の端部に向けてレーザを照射して、接合面同士をレーザ溶着により接合することで行われる。さらに好ましくは、おねじはテーパおねじからなり、めねじはテーパめねじからなる。
【0039】
また好ましくは、係合工程に先立ち、互いに接合されるべき一方のライナ構成部材にインサート成形することにより金属材料からなるおねじを設け、且つ他方のライナ構成部材にインサート成形することにより金属材料からなるめねじを設ける工程を、更に備える。
【0040】
この構成によれば、上記同様におねじ及びめねじが金属材料からなるために強固な締結力を得ることができることに加え、インサート成形しているため、各樹脂部材の端部におねじまたはめねじを簡単に設けることができる。
【発明の効果】
【0041】
本発明の二部材の接合構造およびその接合方法によれば、一方の樹脂部材の端部と他方の樹脂部材の端部との位置ずれを簡易に抑制した状態で、その端部同士をレーザ溶着により適切に接合することができる。
【0042】
本発明のガス容器およびガス容器の製造方法によれば、同様に樹脂ライナの一のライナ構成部材と他のライナ構成部材とをレーザ溶着で接合する際に、その端部同士の位置ずれを抑制することができるため、端部同士を適切に接合することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。本実施形態の特徴部分は、略円筒状の端部を有する二つの樹脂部材を接合する際に、端部同士を係合してレーザ溶着するようにした点にある。以下では、第1および第2実施形態で、樹脂製パイプ材の接合構造およびその接合方法について説明する。また、第3および第4実施形態で、この接合構造を樹脂ライナに適用したガス容器について、その製造方法とともに説明する。
【0044】
<第1実施形態>
図1および図2に示すように、レーザ吸収性の樹脂からなるパイプ材1と、レーザ透過性の樹脂からなるパイプ材2とが接合されて、一つのパイプ状の樹脂成形品が形成される。これらの両パイプ材1,2は、全体として円筒状に且つ同じ外径で形成され、互いの軸方向を合致させて接合される。
【0045】
レーザ吸収性のパイプ材1は、その軸方向に所定の長さ延在する胴部11と、胴部11の開口した一端側に形成された略円筒状の接合端部12と、を有している。接合端部12の外周面は、先端側に形成されていて胴部11の外径よりも小径のおねじ21と、おねじ21の基端側から胴部11にかけて所定の角度傾斜した接合面22と、接合面22と胴部11の外周面との間に形成された段差面23と、を有している。
【0046】
おねじ21、接合面22および段差面23は、接合端部12の周方向に亘って形成されている。おねじ21は、例えば射出成形などの各種成形法を用いてパイプ材1を成形する際に、パイプ材1の全体形状と共に形成される。おねじ21は、軸方向に所定の長さ延在する平行おねじからなる。もっとも、おねじ21をテーパおねじで形成することで、パイプ材1,2同士を接合した際のねじ部における耐密性を高めることができる。
【0047】
接合面22は、おねじ21の基端に一体に連なっており、テーパ状に形成されている。段差面23は、軸方向に直交する方向に対しやや胴部11側に傾いた傾斜面からなる。もっとも、段差面23は、軸方向に直交する方向な面であってもよいし、軸方向に直交する方向に対しやや接合面22側に傾いた傾斜面であってもよい。
【0048】
レーザ透過性のパイプ材2は、その軸方向に所定の長さ延在する胴部31と、胴部31の開口した一端側に形成され、レーザ吸収性の接合端部12に接合される略円筒状の接合端部32と、を有している。接合端部32の外周面は、胴部31の外周面と面一に連なっており、面取りされた先端面40を有している。先端面40は、上記の段差面23に整合し且つこれに受け入れられるように、断差面23に周方向に亘って当接可能に構成されている。
【0049】
接合端部32の内周面は、胴部31側に形成されていて胴部31の内径よりも大径のめねじ41と、めねじ41の先端側から先端面40にかけて所定の角度傾斜した接合面42と、を有している。
【0050】
めねじ41は、例えば射出成形などの各種成形法を用いてパイプ材2を成形する際に、パイプ材2の全体形状と共に形成される。めねじ41は、平行おねじからなるおねじ21に対応して、軸方向に所定の長さ延在する平行めねじからなる。このおねじ21及びめねじ41の螺合構造(係合構造)により、接合端部12,32同士が係合する。なお、おねじ21をテーパおねじで形成した場合には、めねじ41もテーパめねじで形成される。
【0051】
接合面42は、めねじ41の先端に一体に連なっており、逆テーパ状に形成されている。接合面42は、接合面22に整合し且つこれに径方向の外側から周方向に亘って当接可能に構成されている。なお、接合面22,42同士が隙間無く接触するように、各接合面22,42の表面を平滑化しておくことが好ましい。また、各接合面22,42の角度は、任意であるが、後述するレーザ照射装置としてのレーザトーチ50からのレーザを透過または受光可能な角度であればよい。
【0052】
ここで、レーザ透過性およびレーザ吸収性の樹脂について説明する。パイプ材2を構成するレーザ透過性の樹脂は、熱可塑性を有している。このレーザ透過性の熱可塑性樹脂は、レーザ溶着に必要なエネルギーをレーザ吸収性側の接合面22に到達させる程度に、レーザに対する透過性を有していればよい。したがって、レーザ透過性の熱可塑性樹脂であっても、レーザ吸収性の特性を僅かに有していてもよい。
【0053】
レーザ透過性の熱可塑性樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン66などを挙げることができるが、これらにガラス繊維などの補強繊維や着色剤を添加したものであってもよい。例えば、レーザ透過性のパイプ材2は、白色、半透明または透明に形成される。
【0054】
同様に、パイプ材1を構成するレーザ吸収性の樹脂は、熱可塑性を有している。レーザ吸収性の熱可塑性樹脂は、レーザに対する吸収性を有していればよく、吸収したレーザにより発熱して溶融するものであればよい。
【0055】
レーザ吸収性の熱可塑性樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン66などを挙げることができるが、これらにガラス繊維などの補強繊維や着色剤を添加したものであってもよい。例えば、レーザ吸収性の熱可塑性樹脂は、レーザ透過性の熱可塑性樹脂と同一の樹脂で形成した場合には、レーザ透過性の熱可塑性樹脂よりもカーボンを多く添加することで形成される。したがって、レーザ吸収性のパイプ材1は、例えば黒色に形成される。
【0056】
なお、パイプ材2の全体をレーザ透過性、およびパイプ材1の全体をレーザ吸収性の樹脂とするのでなく、レーザ溶着の対象となる部位にこの種のレーザ透過性やレーザ吸収性の特性を持たせてもよい。例えば、一対のパイプ材1,2を両方ともレーザ透過性の樹脂で形成しておき、そのうちの一方のパイプ材の接合端部(あるいは接合面)に、レーザ吸収性を有する吸収剤を塗布したり、この種の吸収剤を練入したシートを貼付したりしてもよい。
【0057】
ここで、図3をも参照して、二つのパイプ材1,2の接合方法について説明する。先ず、パイプ材1の接合端部12をパイプ材2の接合端部32の内部に挿入して、おねじ21の一部をめねじ41の一部に螺合させる。さらに深く挿入するべく、二つのパイプ材1,2の少なくとも一方を回転させ、接合面22と接合面42とが接触するまで、おねじ21とめねじ41とを螺合させながら接合端部12を接合端部32にねじ込んでいく。
【0058】
接合面22,42同士が周方向に亘って当接した状態になると、おねじ21とめねじ41とが軸方向に所定の長さ螺合した状態になると共に、段差面23と先端面40とが周方向に亘って当接した状態になる。これにより、一対のパイプ材1,2同士が仮接合(暫定接合)した状態となる。なお、この状態では、接合端部12の外周面と接合端部32の外周面との境界は、隙間無く略面一になる。また、螺合させていく際の接合面22と接合面42との接触は、おねじ21およびめねじ41の長さを調整しておくことで、あるいは段差面23と先端面40とが接触することで確認され得る。
【0059】
次いで、この仮接合状態の一対のパイプ材1,2同士をレーザ溶着により接合する。レーザ溶着は、一対のパイプ材1,2の外側に配置したレーザトーチ50を駆動し、レーザトーチ50から出射されるレーザを、レーザ透過性の接合端部32側からレーザ吸収性の接合端部12に向けて照射することで行われる。照射されたレーザは、接合端部32の先端側を透過してレーザ吸収性の接合面22に達し、この接合面22の樹脂を加熱溶融する。また、接合面22からの熱伝達によりレーザ透過性の接合面42の樹脂が加熱溶融される。これらの溶融された樹脂が冷却固化することで、接合面22,42同士を互いに一体的に接合するレーザ溶着部60が形成される。
【0060】
レーザトーチ50を駆動している際には、図示省略した回転装置により、仮接合状態の一対のパイプ材1,2をその軸回りに回転させる。こうすることで、接合面22が周方向に順次加熱溶融されていくと共に、この熱伝達により接合面42が周方向に順次加熱溶融されていく。したがって、仮接合状態の一対のパイプ材1,2を少なくとも一回転させると、接合面22,42同士をその周方向に亘って一体的に接合したレーザ溶着部60が形成される。レーザ溶着の完了により、一対のパイプ材1,2は、仮接合状態から本接合状態(すなわち、完全に接合された状態。)となる。
【0061】
なお、回転装置は、例えば、ねじを締め付けるように一対のパイプ材1,2を回転させれば、接合面22,42同士の密着性をより一層高めることが可能となる。また、一対のパイプ材1,2は、レーザトーチ50に対して相対的に回転する構成であればよい。したがって、一対のパイプ材1,2を直接的に回転させるのではなく、レーザトーチ50を一対のパイプ材1,2の周囲で直接的に回転させるようにしてもよい。またこれに代えて、一対のパイプ材1,2およびレーザトーチ50をともに、互いに同方向にまたは逆方向に回転させるようにしてもよい。
【0062】
なおまた、レーザトーチ50が出射するレーザは、半導体レーザなどを用いることができるが、これに限定されるものではなく、レーザの種類は、レーザ透過性の接合端部32の樹脂の肉厚を含む性状などを考慮して適宜選択される。また、レーザの出力(照射量)や一対のパイプ材1,2等の回転速度などの諸条件は、各パイプ材1,2の性状に応じて適宜設定すればよい。
【0063】
以上のように、本実施形態によれば、一対のパイプ材1,2をレーザ溶着により接合する際に、おねじ21及びめねじ41の螺合構造によって、接合面22,42同士を密着するように保持させておくことができる。これにより、接合面22,42同士の位置ずれを好適に抑制しながら、レーザを照射することができる。
したがって、加圧治具などを用いずとも、接合面22,42同士をレーザ溶着により良好に接合することができる。また、レーザ溶着後の一対のパイプ材1,2の接合部分は、レーザ溶着部60のみならず、螺合構造によるねじ締結によっても接合されているため、この接合部分の接合強度および耐密性を向上することができる。
【0064】
なお、本実施形態の二部材の接合構造は、様々な変形例を適用することができる。例えば、螺合状態のおねじ21及びめねじ41に対してもレーザを照射して、おねじ21及びめねじ41の螺合部分もレーザ溶着により接合するようにしてもよい。また、接合面22をテーパ状とし、接合面42を逆テーパ状としたが、もちろんこれらが軸方向に直交する平坦面で構成してもよいし、段差を有する面で構成してもよい。
【0065】
さらに、樹脂部材としてパイプ材(1,2)を例に説明したが、自動車部品や配管部品などの各種の樹脂成形品に適用することができる。例えば、インテークマニホールドを複数の樹脂部材で構成する場合にも、上記のように螺合構造を設けて、樹脂部材同士を螺合した状態でレーザを照射して接合すればよい。
【0066】
<第2実施形態>
次に、図4を参照して、第2実施形態に係る二部材の接合構造およびその接合方法について相違点を中心に説明する。第1実施形態との相違点は、おねじ21及びめねじ41を金属材料で形成した点である。なお、第1実施形態と共通する部分については、同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0067】
おねじ21を外周面に有する金属スリーブ70は、接合端部12の先端側に形成された小径円筒部72の外周に設けられている。金属スリーブ70は、パイプ材1にインサート成形することにより形成されている。なお、小径円筒部72の外周に嵌合させることで設けることもできるし、この嵌合状態で接着してもよい
【0068】
めねじ41を内周面に有する金属スリーブ80は、接合端部32の奥部に形成された円筒部82の内周に設けられている。金属スリーブ80は、同様に、パイプ材2にインサート成形することにより形成されているが、もちろん円筒部82に嵌合させてもよいし、この状態で接着させてもよい。これらの金属スリーブ70,80の金属の種類としては、例えばスチールが挙げられるが、これに限定されるものではない。また、上記実施形態と同様に、おねじ21をテーパおねじで形成し、めねじ41をテーパめねじで形成してもよい。
【0069】
本実施形態によれば、おねじ21及びめねじ41が金属により形成されているため、これらを樹脂で形成する場合に比べて、強固な締結力を得ることができる。これにより、接合面22,42同士の位置ずれをより一層好適に抑制することができ、接合面22,42同士をレーザ溶着により良好に接合することができる。なお、本実施形態においても、第1実施形態で説明したような各種の変形例を適用することができる。
【0070】
なお、金属スリーブ70に代えて、パイプ材1の樹脂よりも硬質の樹脂を用いて、おねじ21を外周面に有する樹脂スリーブを構成してもよい。同様に、金属スリーブ80に代えて、パイプ材2の樹脂よりも硬質の樹脂を用いて、めねじ41を内周面に有する樹脂スリーブを構成してもよい。
【0071】
<第3実施形態>
次に、図5および図6を参照して、第3実施形態に係るガス容器およびその接合方法について説明する。本実施形態は、第1実施形態の二部材の接合構造をガス容器の樹脂ライナに適用して、樹脂ライナを構成するライナ構成部材の端部同士を接合したものである。以下では、先ずガス容器の構造について説明し、その後、ガス容器の製造方法について簡単に説明する。
【0072】
図5に示すように、ガス容器101は、全体として密閉円筒状の容器本体102と、容器本体102の長手方向の両端部に取り付けられた口金103,103と、を具備している。容器本体102の内部は、各種のガスを貯留する貯留空間105となっている。ガス容器101は、常圧のガスを充填することもできるし、常圧に比して圧力が高められたガスを充填することもできる。すなわち、本発明のガス容器101は、高圧ガス容器として機能することができる。
【0073】
例えば、燃料電池システムでは、高圧の状態で用意された燃料ガスを減圧して、燃料電池の発電に供している。本発明のガス容器101は、高圧の燃料ガスを貯留するのに適用することができ、燃料ガスとしての水素や、圧縮天然ガス(CNGガス)などを貯留することができる。ガス容器101に充填される水素の圧力としては、例えば35MPaあるいは70MPaであり、CNGガスの圧力としては、例えば20MPaである。以下は、高圧水素ガス容器101を例に説明する。
【0074】
容器本体102は、ガスバリア性を有する内側の樹脂ライナ111(内殻)と、樹脂ライナ111の外周に配置された補強層112(外殻)と、の二層構造を有している。補強層112は、例えば炭素繊維とエポキシ樹脂を含むFRPからなり、樹脂ライナ111の外表面を被覆するようにこれを巻きつけている。
【0075】
口金103は、例えばステンレスなどの金属で形成され、容器本体102の半球面状をした端壁部の中心に設けられている。口金103の開口部の内周面には、めねじが刻設されており、配管やバルブアッセンブリ114(バルブボデー)などの機能部品が、このめねじを介して口金103にねじ込み接続可能となっている。なお、図5では、口金103,103の一方にのみバルブアッセンブリ114を設けた例を二点鎖線で示した。
【0076】
例えば、燃料電池システムにおけるガス容器101は、バルブや継手等の配管要素を一体的に組み込んだバルブアッセンブリ114を介して、貯留空間105と図示省略した外部のガス流路との間が接続され、貯留空間105に水素が充填されると共に貯留空間105から水素が放出される。なお、ガス容器101の両端部に口金103,103を設けたが、もちろん片方の端部にのみ口金103を設けてもよい。
【0077】
樹脂ライナ111は、長手方向の中央で二分割された一対の略同形状からなるライナ構成部材121,122(割体)を、レーザ溶着により接合して構成されている。すなわち、半割り中空体のライナ構成部材121,122同士をレーザ溶着により接合することで、中空内部の樹脂ライナ111が構成されている。
【0078】
一対のライナ構成部材121,122のうち、ライナ構成部材121は、第1実施形態のパイプ材2と同様に例えばレーザ透過性の熱可塑性樹脂で形成され、ライナ構成部材122は、第1実施形態のパイプ材1と同様にレーザ吸収性の熱可塑性樹脂で形成されている。一対のライナ構成部材121,122は、樹脂ライナ111の軸方向に所定の長さ延在する胴部131,141をそれぞれ有している。各胴部131,141の軸方向の両端側は、開口している。
【0079】
一方のライナ構成部材121は、胴部131の一端側の縮径された端部に形成された返し部132と、返し部132の中央部に開口した連通部133と、胴部131の他端側の略円筒状の接合端部134と、を有している。返し部132は、ライナ構成部材121の強度を確保するのに機能する。返し部132の外周面と補強層112の端部との間に口金103が位置しており、口金103は、連通部133に嵌合している。
【0080】
接合端部134は、第1実施形態のパイプ材2の接合端部32と同様に形成されている。すなわち、図6に示すように、接合端部134は、外周面に面取りされた先端面151を有し且つ内周面にめねじ152及び接合面153を有している。
【0081】
これらの先端面151、めねじ152及び接合面153は、第1実施形態の先端面40、めねじ41及び接合面42と同様に構成されている。また、これらの先端面151、めねじ152及び接合面153は、第1実施形態と同様の変形例(例えばテーパめねじなど)を適用することができる。ここでは、その詳細な説明を省略する。
【0082】
他方のライナ構成部材122は、胴部141の一端側の縮径された端部に形成された返し部142と、返し部142の中央部に開口した連通部143と、胴部141の他端側の略円筒状の接合端部144と、を有している。
【0083】
返し部142は、ライナ構成部材122の強度を確保するのに機能し、連通部143に口金103が嵌合している。なお、口金103が樹脂ライナ111の片方の端部にのみ設けられる場合には、一対のライナ構成部材121,122の一方については、胴部131,141の一方の一端側が閉塞端で形成される。
【0084】
接合端部144は、第1実施形態のパイプ材1の接合端部12と同様に形成されている。すなわち、図6に示すように、接合端部144の外周面は、めねじ152に螺合するおねじ161と、接合面153に整合して且つこれに周方向に亘って当接する接合面162と、先端面151を受け入れ可能な段差面163と、を有している。
【0085】
これらのおねじ161、接合面162及び段差面163は、第1実施形態のおねじ21、接合面22及び段差面23と同様に構成されると共に、同様の変形例(例えばテーパおねじなど)を適用され得る。
【0086】
したがって、ガス容器101のライナ構成部材121,122同士が接合された状態では、おねじ161及びめねじ152の螺合構造により接合端部134,144同士が係合されている。またこの状態では、接合面153,162同士を一体的に接合するレーザ溶着部180が、接合面153と接合面162との界面に形成されている。
【0087】
なお、ライナ構成部材121の全体をレーザ透過性、およびライナ構成部材122の全体をレーザ吸収性の樹脂とするのでなく、レーザ溶着の対象となる部位にこの種のレーザ透過性やレーザ吸収性の特性を持たせてもよい。
【0088】
ここで、本明細書にいうライナ構成部材121,122とは、分割構造の樹脂ライナ111を構成する部材であって、上述のように、略円筒状の端部を有するものをいう。したがって、ライナ構成部材121,122は、少なくとも一端側が略円筒状の形状を有しいればよく、その形状には、全体の形状が円筒状、環状、お碗状、ドーム状等であることが含まれる。
【0089】
図3および図4を参照して、ガス容器1の製造方法について簡単に説明する。
先ず、一対のライナ構成部材121,122および二つの口金103,103を成形する。このとき例えば、予め成形した一の口金103を金型内に配置し、この金型内にレーザ透過性の熱可塑性樹脂を射出して、ライナ構成部材121および口金103を一体成形する(インサート成形する。)。
【0090】
また同様の手順により、レーザ吸収性の熱可塑性樹脂を射出して、ライナ構成部材122および口金103を一体成形する。このように、射出成形を用いることで各ライナ構成部材121,122を成形精度良く成形することができる。なお、射出成形に代えて、回転成形やブロー成形を用いてもよい。
【0091】
次に、口金103付きの各ライナ構成部材121,122を製造設備内に例えば横向き姿勢で配置して、ライナ構成部材121,122同士を対向させて、おねじ161の一部をめねじ152の一部に螺合させる。
【0092】
そして、二つのライナ構成部材121,122の少なくとも一方を回転させ、接合面153と接合面162とが接触するまで、おねじ161とめねじ152とを螺合させながら、接合端部144を接合端部134にねじ込んでいく。ねじ込みの完了により、接合面153,162同士を周方向に亘って当接させると共に、段差面163と先端面151とを周方向に亘って当接させて、ライナ構成部材121,122同士を仮接合(暫定接合)した状態の樹脂ライナ111とする。
【0093】
なお、この後で、各ライナ構成部材121,122の各口金103,103に図示省略した栓をねじ込み接続することなどにより、仮接合状態の樹脂ライナ111の内部を略密閉状態として、この密閉空間に不純物が入り込まないようにしてもよい。
【0094】
次いで、第1実施形態と同様に、レーザ溶着工程が実行される。すなわち、仮接合状態の樹脂ライナ111の外側にあるレーザトーチ170を駆動しつつ、これに同期して樹脂ライナ111を図示省略した回転装置により軸回りに回転させる。レーザがレーザ透過性の接合端部134側からレーザ吸収性の接合端部144に向けて照射され、接合面162の樹脂および接合面153の樹脂が周方向に順次加熱溶融される。
【0095】
なお、回転装置は、例えば、ねじを締め付けるように樹脂ライナ111を回転させれば、接合面153,162同士の密着性をより一層高めることが可能となる。また、レーザの照射時に、樹脂ライナ111がレーザトーチ170に対して相対的に回転する構成であればよい。さらに、レーザトーチ170が出射するレーザは、半導体レーザなどを用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0096】
樹脂ライナ111の少なくとも一回転により、接合面153,162同士を互いに一体的に接合するレーザ溶着部180が周方向に亘って形成される。これにより、樹脂ライナ111は、仮接合状態から本接合状態(すなわち、完全に接合された状態)となる。レーザ溶着完了後に、フィラメントワインディング法等により樹脂ライナ111の外表面に補強層112を形成することで、ガス容器101が製造される。
【0097】
以上のように、本実施形態によれば、ガス容器101の製造過程において、樹脂ライナ111のライナ構成部材121,122同士をレーザ溶着により接合する際に、おねじ161とめねじ152との螺合構造によって、接合面153,162同士を密着するように保持させておくことができる。
【0098】
したがって、接合面153,162同士の位置ずれを好適に抑制することができ、加圧治具などを用いずとも、接合面153,162同士をレーザ溶着により良好に接合することができる。また、レーザ溶着後の樹脂ライナ111は、レーザ溶着部180のみならず、螺合構造によるねじ締結によっても接合されているため、この接合部分の接合強度および耐密性を向上し得る。
【0099】
なお、本実施形態においても、第1実施形態で説明したような様々な変形例を適用することができる。例えば、螺合状態のおねじ161及びめねじ152に対してもレーザを照射して、おねじ161及びめねじ152の螺合部分もレーザ溶着により接合するようにしてもよい。
【0100】
また、本実施形態においても、おねじ161及びめねじ152を金属材料とする第2実施形態の構成を適用することができる。この場合には、例えば、ライナ構成部材121(および口金103)を成形する際に、めねじ152を有する金属スリーブ(80)をライナ構成部材121にインサート成形するようにすればよい。同様に、ライナ構成部材122(および口金103)を成形する際に、おねじ161を有する金属スリーブ(70)をライナ構成部材122にインサート成形するようにすればよい。
【0101】
<第4実施形態>
次に、図7を参照して、第4実施形態に係るガス容器およびその接合方法について相違点を中心に説明する。第3実施形態との相違点は、ガス容器101の樹脂ライナ111を三つのライナ構成部材201,202,203より構成したことである。なお、図7では、補強層112については省略している。
【0102】
樹脂ライナ111は、長手方向において三分割された三つのライナ構成部材201,202,203を、レーザ溶着により接合して構成されている。両端に位置する二つのライナ構成部材201,202は、全体の形状がお碗状に形成されている。中央に位置するライナ構成部材203は、全体の形状が円筒状または環状に形成されている。両端の二つのライナ構成部材201,202は、それぞれ、例えば射出成形により口金3と一体成形される。中央のライナ構成部材203は、例えば射出成形により形成される。
【0103】
両端の二つのライナ構成部材201,202の各々は、返し部211,221および連通部212,222のほか、各口金103,103と反対側に接合端部213,223を有している。接合端部213および接合端部223は、上記同様のめねじ152を有する接合端部(134)で構成され、レーザ透過性の特性を有している。
【0104】
中央のライナ構成部材203は、軸方向の開口した両端側にそれぞれ接合端部231,232を有している。接合端部231および接合端部232は、上記同様のおねじ161を有する接合端部(144)で構成され、レーザ吸収性の特性を有している。なおもちろん、接合端部213,223をレーザ吸収性で螺合構造のオス側とし、接合端部231,232をレーザ透過性で螺合構造のメス側としてもよい。樹脂ライナ111は、接合端部213,231同士が螺合状態でレーザ溶着により互いに接合され、且つ接合端部223,232同士が螺合状態でレーザ溶着により互いに接合されている。
【0105】
本実施形態のガス容器101の製造方法は、上記した各実施形態の製造方法を適用することができる。ここでは、三つのライナ構成部材201,202,203を同時にレーザ溶着で接合する場合について簡単に説明する。
【0106】
先ず、口金103付きのライナ構成部材(201,202)を含む三つのライナ構成部材201,202,203を成形する。次いで、接合端部213と接合端部231とを螺合し、これらの接合面同士を接触させると共に、接合端部223と接合端部232とを螺合し、これらの接合面同士を接触させる。これにより、全てのライナ構成部材201,202,203が仮接合(暫定接合)した状態の樹脂ライナ111となる。
【0107】
そして、二つのレーザトーチ170の駆動に同期して、仮接合状態の樹脂ライナ111をその軸回りに相対回転させながら、接合端部213,231同士および接合端部223,232同士をレーザ溶着により周方向に亘って接合する。これにより、樹脂ライナ111が本接合された状態となり、最終的に補強層112を設けることでガス容器101が製造される。
【0108】
したがって、本実施形態のように三つのライナ構成部材201,202,203で樹脂ライナ111を構成しても、上記実施形態と同様にガス容器101を製造することができる。
【0109】
なお、三つのライナ構成部材201,202,203について、仮接合やレーザ溶着等の処理を同時に行った例を説明したが、もちろんこれらの処理を別個に行ってもよい。また、ライナ構成部材が三つの場合について説明したが、四つ以上も同様である。すなわち、本発明は、軸方向に並ぶ複数のライナ構成部材を接合した樹脂ライナ111に適用することができる。
【0110】
なお、第3実施形態および第4実施形態のガス容器101は、レーザ溶着部180自体およびその近傍に、おねじ161及びめねじ152からなる螺合構造を有する構成であるが、この螺合構造以外の係合構造を用いてもよい。例えば第3実施形態の接合端部134,144同士を係合構造により密着させるように係合してもよい。この種の係合構造は、例えば、スナップフィットや圧入などで構成することができる。
【0111】
また、上記した全ての実施形態において、レーザ溶着を実行する際に、様々な製造設備を用いて行うことができる。ガス容器101に適用した例について説明するに、例えば、仮接合状態の樹脂ライナ111をチャンバー内に配置して、チャンバー内を不活性ガス雰囲気下または真空状態にして、螺合状態の接合部134,144同士をレーザ溶着するようにしてもよい。こうすることで、大気よりも低酸素雰囲気下とすることができ、各接合部134,144の酸化が防止されるため、接合精度をより一層を高めることができる。
【0112】
また、レーザ溶着時に樹脂ライナ111の内外に圧力差を付与して、接合面同士(22,42または153,162)の密着性を高めるようにしてもよい。圧力差の付与は、例えばポンプにより、樹脂ライナ111の口金103を介して樹脂ライナ111の内部を減圧または加圧することで行うことができる。こうすることで、接合面153,162同士の密着力を高めた状態で、これをレーザ溶着により接合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】第1実施形態に係る二部材の接合構造について、接合前の状態を示す断面図である。
【図2】第1実施形態に係る二部材の接合構造について、仮接合後の状態を示す断面図である。
【図3】第1実施形態に係る二部材の接合構造について、レーザ溶着後の状態を示す断面図である。
【図4】第2実施形態に係る二部材の接合構造について、接合前の状態を示す断面図である。
【図5】第3実施形態に係るガス容器の構成を示す断面図である。
【図6】第3実施形態に係るガス容器の接合部分を拡大して示す断面図である。
【図7】第4実施形態に係るガス容器の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0114】
1:パイプ材(樹脂部材)、2:パイプ材(樹脂部材)、12:接合端部、21:おねじ、32:接合端部、41:めねじ、60:レーザ溶着部、70:金属スリーブ、80:金属スリーブ、101:ガス容器、111:樹脂ライナ、112:補強層、121:ライナ構成部材、122:ライナ構成部材、134:接合端部、152:めねじ、144:接合端部、161:おねじ、180:レーザ溶着部、201:ライナ構成部材、202:ライナ構成部材、203:ライナ構成部材、213:接合端部、223:接合端部、231:接合端部、232:接合端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも略円筒状の端部を有する一対の樹脂部材を、その端部同士を係合構造により係合してレーザ溶着により接合する二部材の接合構造であって、
前記係合構造は、
一方の樹脂部材の端部に設けられたおねじと、
他方の樹脂部材の端部に設けられ、前記おねじに螺合されるめねじと、を有する二部材の接合構造。
【請求項2】
前記めねじが設けられた前記端部の内周面は、傾斜した接合面を有し、
前記おねじが設けられた前記端部の外周面は、前記接合面に整合し且つこれに当接する接合面を有し、
この接合面同士がレーザ溶着により接合されている請求項1に記載の二部材の接合構造。
【請求項3】
螺合状態の前記おねじ及び前記めねじは、前記接合面同士と共にレーザ溶着により接合されている請求項2に記載の二部材の接合構造。
【請求項4】
前記めねじが設けられた前記端部は、レーザ透過性の樹脂で形成され、
前記おねじが設けられた前記端部は、レーザ吸収性の樹脂で形成されている請求項2または3に記載の二部材の接合構造。
【請求項5】
前記おねじ及び前記めねじは、金属材料で形成されている請求項1ないし4のいずれか一項に記載の二部材の接合構造。
【請求項6】
前記おねじは、テーパおねじからなり、
前記めねじは、テーパめねじからなる請求項1ないし5のいずれか一項に記載の二部材の接合構造。
【請求項7】
少なくとも略円筒状の端部を有する一対の樹脂部材を、その端部同士を接合する二部材の接合方法であって、
その一方の樹脂部材の端部に設けたおねじと、その他方の樹脂部材の端部に設けためねじとを螺合した状態でレーザを照射して、この端部同士をレーザ溶着により接合する二部材の接合方法。
【請求項8】
前記おねじが設けられた端部の接合面と、前記めねじが設けられた端部の接合面とが接触するまで、前記おねじ及び前記めねじを螺合した後、この接合面同士をレーザ溶着により接合する請求項7に記載の二部材の接合方法。
【請求項9】
前記接合面同士を周方向に亘ってレーザ溶着により接合する請求項8に記載の二部材の接合方法。
【請求項10】
一方の樹脂部材の端部をレーザ透過性の樹脂で形成し、且つ他方の樹脂部材の端部をレーザ吸収性の樹脂で形成しておき、このレーザ透過性の端部側からレーザ吸収性の端部に向けてレーザを照射して、前記接合面同士をレーザ溶着により接合する請求項8または9に記載の二部材の接合方法。
【請求項11】
前記一対の樹脂部材を一対のライナ構成部材として、請求項7ないし10のいずれか一項に記載の二部材の接合方法を用い、ライナ構成部材同士を接合して構成した樹脂ライナと、
前記樹脂ライナの外周に配置された補強層と、を有するガス容器。
【請求項12】
樹脂ライナを有するガス容器であって、
前記樹脂ライナは、少なくとも略円筒状の端部を有する複数のライナ構成部材を接合してなり、且つライナ構成部材同士の接合部分には、この略円筒状の端部同士を係合する係合構造と、この略円筒状の端部同士をレーザ溶着により接合したレーザ溶着部と、が設けられ、
前記係合構造は、
前記端部同士の一方に設けられたおねじと、
前記端部同士の他方に設けられ、前記おねじに螺合されるめねじと、を有するガス容器。
【請求項13】
前記めねじが設けられた前記端部の内周面は、傾斜した接合面を有し、
前記おねじが設けられた前記端部の外周面は、前記接合面に整合し且つこれに当接する接合面を有し、
前記レーザ溶着部は、この接合面同士が溶融して形成されている請求項12に記載のガス容器。
【請求項14】
前記めねじが設けられた前記端部は、レーザ透過性の樹脂で形成され、
前記おねじが設けられた前記端部は、レーザ吸収性の樹脂で形成されている請求項12または13に記載のガス容器。
【請求項15】
前記おねじ及び前記めねじは、金属材料で形成されている請求項12ないし14のいずれか一項に記載のガス容器。
【請求項16】
少なくとも略円筒状の端部を有するライナ構成部材を複数個接合してなる樹脂ライナを有するガス容器の製造方法であって、
互いに接合されるべき一方のライナ構成部材の略円筒状の端部と、他方のライナ構成部材の略円筒状の端部とを係合する係合工程と、
前記係合工程の後、レーザを照射してこの端部同士をレーザ溶着により接合する照射工程と、を有し、
前記係合工程は、前記一方のライナ構成部材の略円筒状の端部に設けたおねじと、前記他方のライナ構成部材の略円筒状の端部に設けためねじとを螺合することにより行われるガス容器の製造方法。
【請求項17】
前記係合工程は、前記おねじが設けられた端部の接合面と前記めねじが設けられた端部の接合面とが接触するまで、前記おねじと前記めねじとを螺合することで行われ、
前記照射工程は、接触状態の接合面同士をレーザ溶着により接合することで行われる請求項16に記載のガス容器の製造方法。
【請求項18】
前記照射工程は、前記接合面同士を周方向に亘ってレーザ溶着により接合することで行われる請求項17に記載のガス容器の製造方法。
【請求項19】
前記係合工程に先立ち、互いに接合されるべき前記一方のライナ構成部材の略円筒状の端部をレーザ透過性の樹脂で形成し、且つ前記他方のライナ構成部材の略円筒状の端部をレーザ吸収性の樹脂で形成する工程を更に備え、
前記照射工程は、前記レーザ透過性の端部側から前記レーザ吸収性の端部に向けてレーザを照射して、前記接合面同士をレーザ溶着により接合することで行われる請求項17または18に記載のガス容器の製造方法。
【請求項20】
前記係合工程に先立ち、互いに接合されるべき前記一方のライナ構成部材にインサート成形することにより金属材料からなる前記おねじを設け、且つ前記他方のライナ構成部材にインサート成形することにより金属材料からなる前記めねじを設ける工程を、更に備えた請求項16ないし19のいずれか一項に記載のガス容器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−247892(P2006−247892A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−64196(P2005−64196)
【出願日】平成17年3月8日(2005.3.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】