説明

二酸化マンガンを含む触媒電極を有する電気化学電池を製造する方法

本発明は、少なくともその一方がマンガンを含む水溶性酸化剤及び還元剤の間の酸化還元反応を通じた溶液沈殿処理によって製造される触媒を含む触媒電極を有する電気化学電池を製造する方法である。反応は、65℃未満の温度で行われ、好ましくは殆ど又は全く加熱されない。酸化剤は、この反応において還元されるカチオンを持たず、還元剤は、この反応において還元されるアニオンを持たない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素を還元するための触媒を含む触媒電極を有する燃料電池又は金属空気電池のような電気化学電池を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学電池は、電子装置を作動させるための電気エネルギを提供するために使用することができる。電子装置を作動させるのに用いる時に、これらの電池は、活物質として電池外部からの酸素を用い、酸素を消費する電極(例えば、正極又はカソード)のサイズを縮小させ、電池内のより大きい容積を対極(例えば、負極又はアノード)及び電解質に利用可能にするので有利である。空気補助型電池とも称される混成型金属空気電池は、電池内部に含まれる活物質を有する正極及び負極と、1次正極を再充電する活物質としての電池外部からの酸素を還元するための補助触媒電極とを有する。燃料電池、金属空気電池、及び空気補助型電池の例は、以下の特許公開:US 5,079,106、US 5,229,223、US 5,308,711、US 5,378,562、US 5,567,538、US 6,383,674、US 6,461,761、US 6,602,629、US 6,911,278、US 7,001,689、US 2004/0197641、及びUS 2009/0214911、及び国際特許公開番号WO 00/36677に見出すことができる。
【0003】
燃料電池、金属空気電池、及び空気補助型電池は、電池外部からの酸素を還元するための触媒を含有する触媒電極を含み、酸素還元反応の生成物は、燃料電池及び金属空気電池の対極(例えば、燃料電池及び金属空気電池内の負極又は空気補助型電池内の1次正極)と反応する。触媒の特性は、電池の性能を左右する可能性がある。より大きい放電容量又はより良好な高速及び高電力放電機能のような改善した電池性能が望ましい。
【0004】
マンガン酸化物は、酸素還元触媒として公知であり、多くの種類のマンガン酸化物が、単独又は銀及び白金金属のような他の触媒との組合せの両方で金属空気電池において触媒として使用されている。マンガン酸化物は、主として単一の原子価又は複数の原子価のいずれかのある一定の範囲の原子価でのマンガンを含むことができる。触媒として使用されるマンガン酸化物を製造する様々な方法も公知である。マンガン酸化物は、それらが酸素の還元のための良好な触媒活性を有することができ、比較的廉価とすることができ、かつ製造するのに比較的廉価とすることができるので触媒として好ましい。しかし、金属空気電池に使用するマンガン酸化物を製造するための処理の多くは、短所を有する。
【0005】
JP 51−071,299 Aは、過マンガン酸カリウムと硝酸マンガンの酸溶液から活性化二酸化マンガン触媒を調製する方法を開示している。この方法は、反応が35℃から90℃で起こる溶液沈殿処理を含む。この処理では、硝酸塩カチオンが、酸化還元反応に介入する可能性があり、これは、安全及び環境の観点から好ましくない窒素酸化物を引き起こす。安全上の問題を与える可能性がある酸も必要とされる。
【0006】
US 2008/0176059 A1は、ミクロポーラス又はメソポーラスマトリックスと、このマトリックスの孔隙内部に形成された金属又は金属酸化物のナノ粒子とを含む複合材料を開示している。この処理は、マトリックスの孔隙内の前駆体溶液の放射線分解還元を含む。この材料は、いくつかの電池構造に適さない場合がある固体マトリックス材料を含み、複合材料は、触媒だけのものと比べて非常に嵩張り、放射線照射は、安全上及び環境上の懸念を呈する可能性があり、かつこの処理は、加熱及び真空を必要とする。
【0007】
US 6,632,557 B1は、酸素還元触媒として二酸化マンガンと銀の両方を含む金属空気電池のためのカソードを開示している。この触媒は、炭素粒子表面上の触媒を形成するために酸化剤としての過マンガン酸銀と還元剤としての炭素とを水又はイソプロパノール中で使用する溶液沈殿処理によって調製される。ヒドラジン又はヒドロキシルアミンのような付加的な還元剤を使用することができる。この触媒は、硝酸マンガン、硝酸銀と硝酸マンガンの組合せ、及び過マンガン酸カリウムの各々から製造された触媒と比較されている。過マンガン酸銀の比較的高いコストと、炭素の不溶解性による均一な混合物及び生成物を得る難しさと、過マンガン銀の制限された溶解度による必要な液体の大きい容積とが短所である可能性がある。
【0008】
US 6,780,347 B2は、金属空気電池で使用することができる触媒を製造する方法を開示している。この触媒は、過マンガン酸カリウムと有機又は無機還元剤(例えば、ギ酸ナトリウム、ギ酸、又はホルムアルデヒド)とを水溶液中で反応させてゾルを形成し、次に、ゾルを炭素スラリとテフロン(登録商標)分散剤と混合することにより、二酸化マンガンを含むマンガン酸化物を含有している。反応温度は、25℃から100℃の範囲とすることができる。カーボンと直接に混合されるゾル中の不純物と有害な反応生成物の存在とが短所である可能性があり、かつマンガン酸化物の種類が反応温度によって変化する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】US 5,079,106
【特許文献2】US 5,229,223
【特許文献3】US 5,308,711
【特許文献4】US 5,378,562
【特許文献5】US 5,567,538
【特許文献6】US 6,383,674
【特許文献7】US 6,461,761
【特許文献8】US 6,602,629
【特許文献9】US 6,911,278
【特許文献10】US 7,001,689
【特許文献11】US 2004/0197641
【特許文献12】US 2009/0214911
【特許文献13】WO 00/36677
【特許文献14】JP 51−071,299 A
【特許文献15】US 2008/0176059 A1
【特許文献16】US 6,632,557 B1
【特許文献17】US 6,780,347 B2
【特許文献18】米国特許公開第2008/0155813 A1号明細書
【特許文献19】米国特許出願番号第61/182,285号明細書
【特許文献20】米国特許公開第2008/0155813 A1号明細書
【特許文献21】米国特許出願公開第2008/0280190号明細書
【特許文献22】米国特許公開2007/0111095 A1号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Yang他「アルカリ性溶液中の酸素還元のための電極触媒としてのナノ多孔性アモルファスマンガン酸化物」、Electrochemical Communication 5(2003)306−311
【非特許文献2】クリプトメレン−M,JCPDS No.44−1386(粉末回折基準の共同委員会)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
製造が安全、容易、かつ経済的に行われ、燃料電池、金属空気電池、又は空気補助型電池のための触媒電極内に容易に組込むことができ、優れた電池性能を提供するマンガン酸化物が望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によって上述の目的が満たされ、従来技術の短所が克服される。従って、本発明の1つの態様は、電気化学電池を製造する方法であり、本方法は、
(a)水を含む溶媒と、そのカチオンが反応において還元されない酸化剤と、そのアニオンが反応において酸化又は還元されない還元剤との混合物中で65℃未満での酸化還元反応を通じて酸素還元触媒を調製する段階であって、酸化剤が、この溶媒に不溶な成分を含まず、還元剤が、この溶媒に不溶な成分を含まず、かつ酸化剤と還元剤とのうちの少なくとも1つが、マンガンを含む前記酸素還元触媒を調製する段階と、
(b)触媒を沈殿させる段階と、
(c)触媒を含有する触媒混合物を調製する段階と、
(d)触媒混合物を触媒層に形成する段階と、
(e)触媒層を含む触媒電極を調製する段階と、
(f)酸素流入ポートを有するハウジング内で触媒電極と対極及び電解質とを触媒電極の触媒層と対極の間にセパレータを有して組み合わせる段階であって、触媒電極が、空気流入ポートを通じて電池に流入する空気に対してアクセス可能である前記組み合わせる段階と、
を含む。
【0013】
本発明の実施形態は、以下の特徴のうちの1つ又はそれよりも多くを含むことができる。
・反応が45℃未満、好ましくは35℃未満、より好ましくは30℃未満の温度で行われる。
・反応が0℃よりも高く、好ましくは15℃よりも高い温度で行われる。
・反応が20℃から25℃で起こる。
・酸化剤が、水溶性過マンガン酸塩化合物、好ましくは、過マンガンカリウム及び過マンガン酸ナトリウムの少なくとも一方、より好ましくは、過マンガン酸カリウムを含む。
・還元剤が、水溶性マンガン(II)化合物、好ましくは、硫酸マンガン、塩化マンガン、及び酢酸マンガンのうちの少なくとも1つを含む。
・触媒混合物の生成の前に酸中和が行われる。
・触媒混合物の生成の前に酸中和が行われない。
・触媒を調製する段階が、反応混合物の加熱なしに行われる。
・触媒を調製する段階が、反応混合物の冷却を含む。
・触媒を調製する段階が、反応混合物の加熱を含む。
・触媒が、KxMnyzの分子式を有するマンガン酸化物を含み、式中、x:yが0:1よりも大きく1:4までであり、y:zが1:2から1:4である。
・マンガン酸化物が、水和マンガン酸化物である。
・触媒が、アモルファス構造でもなく基本的にクリプトメレン構造でもない構造を有するマンガン酸化物である。
・マンガン酸化物が、1つが約56の2シータ値を中心とし、1つが約107の2シータ値を中心とする2つの広いX線回折ピークを有する。
・触媒粒子の大部分が、約1:1から2:1のアスペクト比を有し、かつ20nm未満及び好ましくは10nm未満のX線回折から計算した結晶サイズを有する。
・触媒が、マンガン酸化物を含み、基本的に金属を含まない。
・触媒混合物を調製する段階が、触媒を導電材料と混合する段階を含む。
・導電材料が、好ましくは触媒炭素である炭素を含む。
・電気化学電池が、金属空気電池である。
・酸素が、触媒電極で還元される電気化学活物質であり、対極が、電気化学活物質として亜鉛を含む負極であり、電解質が、アルカリ水溶液電解質である。
・電気化学電池が、触媒電極で還元される電気化学活物質として酸素を使用し、対極のための電気化学活物質として別の気体を使用する燃料電池である。
・触媒電極が、酸素透過性かつ電解質不透過性の障壁層を更に含み、障壁層が、触媒層と酸素流入ポートの間に配置される。
【0014】
本発明のこれら及び他の特徴、利点、及び目的は、以下の明細書、特許請求の範囲、及び添付図面を参照することにより当業者によって更に理解かつ評価されるであろう。
【0015】
本明細書で別途定めない限り、全ての開示する特性及び範囲は室温(20−25℃)で測定されたものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】触媒電極を有する金属空気電池の断面立面図である。
【図2A】クリプトメレン型二酸化マンガンに関するX線回折パターンを示す図である。
【図2B】アモルファス二酸化マンガンに関するX線回折パターンを示す図である。
【図2C】高度に結晶性でなくアモルファスでもない二酸化マンガンに関するX線回折パターンを示す図である。
【図3】過酸化水素分解触媒活性試験に対する時間の関数としての実施例1、実施例2、実施例3A、実施例4、実施例5、実施例6、及び実施例7における二酸化マンガンによって生成した酸素の量のプロットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態は、低温で操作される酸化−還元溶液沈殿処理を用い、混合が容易であり、危険又は環境的に望ましくない物質を発生させず、除去することが困難な実質的な量の不純物を生成しない反応物を用いて触媒を調製する段階を含む電気化学電池を製造する方法である。本方法は、簡単で高価でなく容易に制御され、かつ優れた性能を有する電池を提供する触媒材料を製造する。
【0018】
本発明は、燃料電池、金属空気電池、及び空気補助型電池を含む各種の電池に使用することができる。この電池は、電池の種類及び電気化学的性質により、様々な材料を対極内の電気化学活物質として使用することができる。この電池は、薄い平坦電池、ボタンサイズ電池、並びにより大型の円筒形及び角形電池を含むサイズ及び形状の範囲に及ぶことができる。
【0019】
この電池は、電池外部から流入する酸素を還元する触媒電極を含む。触媒電極は、触媒を含有する触媒層を含む。一部の実施形態では、触媒電極は、触媒電極への酸素の流入を可能にするように酸素透過性であり、電池内部に含有された電解質を保持するように電解質に対して基本的に不透過性である材料を含む障壁層を含むことができる。触媒電極は、電池の正極とすることができ、又は低速放電又は無放電の期間に1次正極を再充電する補助電極とすることができる。一部の実施形態では、触媒電極は、電極の内部抵抗を低下させるために又は触媒電極と他の電池構成要素の間により良好な電気接触を提供するために導電性集電体を含むことができる。集電体を触媒層内に埋め込み又は触媒層上に被覆し又は堆積させることができ、触媒層を集電体上に被覆又は積層することができ、又は触媒層と集電体を別の方法で結合することができる。
【0020】
この電池は、電気化学活物質を含有する対極又は活物質として電池外部からの流体を使用する触媒対極も含む。
【0021】
イオン伝導性で非導電性のセパレータが、触媒電極を対極から隔離する。セパレータは、材料の単層又は複数の層とすることができる。電解質が液体を含む場合、セパレータの少なくとも1つの層が一部の電解質を一般的に保持することになり、電極の間のイオンの移動を容易にする。
【0022】
この電池は、その中に電極と電解質が収容される密封ハウジングを含む。ハウジングは、酸素が電池の外側から流入して触媒電極に到達することを可能にする1つ又はそれよりも多くの酸素流入ポートを含む。酸素流入ポートを通って電池に入る空気に対してアクセス可能である触媒電極の1つ又は複数の表面上に障壁層を配置することができる。障壁層は、ハウジングと協働して電解質が酸素流入ポートに到達することを防止する。
【0023】
本発明による電気化学電池の例が図1に示されている。電池110は、カソードケーシング112とアノードケーシング126とを含むことができる。少なくとも開口118が、カソードケーシング112に存在し、空気又は酸素の流入ポートとして機能する。触媒正極(空気電極のような)120が、カソードケーシング112内の開口118に接近して配置される。触媒電極120は、炭素、触媒、及び結合剤の混合物を含有する触媒層を含む。触媒電極120は、その上に積層された障壁層122を好ましくは含む。障壁層122は、開口118セルに最も近い触媒電極の側に積層することができる。触媒電極120は、好ましくは障壁層122と反対側の電極の側で電極内に埋め込まれた導電性集電体123を収容することができる。電池110は、開口118を収容するカソードケーシング112の中心領域114と第1の障壁層122の間に第2の障壁層137を任意的に含むことができる。障壁層122、137は、電解質による濡れに抵抗するのに十分低い表面張力を有し、更に、望ましい最大の電池反応速度をサポートするのに十分な速度で酸素を電極に流入可能にするように十分に多孔性である。セパレータ124の少なくとも1つの層が、アノード128に面する触媒電極120の側に配置される。セパレータ124は、イオン伝導性かつ非導電性である。セパレータ124の全厚みは、その容積を最小限にするためには薄いことが好ましいが、アノード128と触媒電極120の間の短絡を防止するのに十分厚くかつ強くなければならない。セパレータ124は、電極の間に良好なイオン移動を提供し、触媒電極120とセパレータ124の間の気体ポケットの形成を防止するために触媒電極120の表面に接着することができる。同様に、セパレータ124の隣接層を互いに接着することができる。電極120に酸素を均等に分配するために電極120とケーシング112の間に多孔性材料の層138を配置することができる。触媒電極120の一部をカソードケーシング112に接合するためにシーラント129を使用することができる。アノードケーシング120は、その開放端で外側に張り出したリム135を有することができる。代替的に、電池は、外側の張り出し又はリムが殆どないか又は有しない基本的に真っ直ぐな側壁を有することができ、側壁は、外側に側壁に沿って折り返されてケーシングの開放端に丸い縁部を有する実質的にU字形の側壁が形成される。アノードケーシング126は、アノード混合物128及び電解質と接触する内面136を有する。電池110は、例えば、弾性材料で製造されたガスケット130を含むことができ、カソードケーシング112とアノードケーシング126の間のシールを提供する。ガスケット130の下縁は、アノードケーシング126のリムに隣接する内側に向いたリップ132を生じるように形成することができる。任意的に、ガスケット130、カソードケーシング112、及び/又はアノードケーシング126の密封面にシーラントを適用することができる。使用前に空気が電池110に流入することを阻止するために、電池110が使用状態になるまで開口部118を覆って適切なタブ(図示せず)を置くことができる。
【0024】
対極は、電気化学活物質を含有する。空気補助型電池において、対極は、電池の1次正極であり、その電気化学活物質は、二酸化マンガン、オキシ水酸化ニッケル、又は酸化銀のような1つ又はそれよりも多くの金属酸化物とすることができる。活物質の放電反応生成物は、触媒電極からの反応生成物によって再酸化(再充電)される。他の種類の電池において、触媒電極は電池の正極であり、対極は電池の負極である。燃料電池の負極における電気化学活物質は、電池の放電中に酸化される気体とすることができ、例としては、水素、メタノール及びエタノールが挙げられる。金属空気電池において、負極内の電気化学活物質は、亜鉛、リチウム、アルミニウム、又はマグネシウムのような酸化することができる金属である。対極は、電解質、結合剤又はゲル化剤、有害な気体発生を低減する添加剤、及び電池性能を改善する添加剤のような他の成分を含むことができる。
【0025】
使用される電解質の種類は、電池の電気化学的性質及び対極内の活物質の種類によって変えることができる。例えば、アルカリ水溶液電解質(例えば、水酸化カリウム又は水酸化ナトリウムを含有する)を亜鉛空気電池で使用することができ、食塩水電解質をアルミニウム空気電池又はマグネシウム空気電池で使用することができ、アルカリ水溶液電解質又は非水電解質のいずれかをリチウム空気電池で使用することができる。電解質は、電池内の有害な気体発生を低減し又は電池放電性能を改善する添加剤を含むことができる。一部の種類の電池において、電解質は、ポリマー電解質又は固体電解質とすることができる。
【0026】
触媒電極は、以下でより詳細に説明するように、マンガン酸化物触媒を含む。触媒層は、触媒に加えて、触媒層内部に改善した導電性を提供するための好ましくは粒子状材料である1つ又はそれよりも多くの導電材料も含むことができる。導電材料の例としては、銀、白金、及びパラジウムのような金属、ポリアニリン又はポリピロールのような導電性ポリマー、及びカーボンブラック、活性炭、及びグラファイトのような炭素を含むことができる。一部の場合には、導電材料は、酸素の還元のための何らかの触媒活性を提供する触媒材料も含むことができる。活性炭のような触媒炭素が、好ましい導電材料である。触媒層は、結合剤を含むことができる。結合剤の例としては、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化エチレンプロピレン、及びフッ化ポリビニリデンのようなフルオロポリマーが挙げられる。電池において、触媒電極は、触媒による酸素の還元と生成したイオンの対極に向う移動とを可能にするのに十分な電解質を含有することができる。触媒層中の触媒の量は、それが触媒層にわたって触媒に到達する酸素を遮断しないことになるように一般的に制限される。
【0027】
マンガン酸化物触媒は、好ましい組成、構造、形態、粒径、比表面積、及び触媒活性を有するマンガン酸化物を生成させる目的で65℃未満の反応温度での溶液沈殿処理を用いて製造される。65℃以上では、クリプトメレン型二酸化マンガンが生成される。望ましい触媒が生成される限り、反応を容易にするために反応混合物を僅かに加熱することが有利な場合がある。好ましくは反応温度は約60℃未満であり、より好ましくは約45℃未満であり、より好ましくは約35℃未満であり、またより好ましくは約30℃未満である。望ましい触媒が生成されることを保証するためには、反応混合物を冷却することが有利な場合がある。反応温度は、反応混合物の氷結を防ぐため0℃より高いことが好ましく、15℃より高いことが更に好ましい。ほぼ室温(約20℃から約25℃)で触媒を製造することが望ましい場合がある。一部の実施形態では、触媒は、反応混合物を実質的に加熱又は冷却することなしに製造される。反応時間を短縮するために、超音波を使用することができる。望ましい二酸化マンガンを取得するためには、30分以内に反応温度を保つのが望ましい。
【0028】
触媒の調製のための出発原料は、水性溶媒中での酸化還元反応において反応することになる酸化剤と還元剤を含む。酸化剤及び還元剤の両方は、1つ又はそれよりも多くの成分を含むことができ、酸化剤及び還元剤の全ての成分は、この溶媒に可溶でなければならない。可溶性の酸化剤及び還元剤のみを使用することにより、未使用反応剤は、例えば、濾過によって触媒から容易に除去することができる。酸化剤及び還元剤はまた、反応中に酸化剤のカチオンが還元されず、かつ還元剤のアニオンが酸化又は還元されないようにも選択される。これは、安全上又は環境上の理由で有害なことがあり、又は触媒を希釈し又は電池において他の点で有害である可能性がある触媒中の不純物になることがある望ましくない反応生成物を回避する。酸化剤、還元剤、又は酸化剤と還元剤の両方のうちの少なくとも1つの成分は、マンガンを含む。好ましくは、反応剤の全てがマンガンを含む。適切な酸化剤成分の例は、過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウムのような水溶性過マンガン酸塩化合物、及び過硫酸カリウム(K228)である。過マンガン酸カリウムが好ましい。適切な還元剤成分の例は、硫酸マンガン、塩化マンガン、及び酢酸マンガンのような水溶性マンガン(II)化合物及びスクロースである。
【0029】
溶媒は、好ましくは水性溶媒である。溶媒は、水のみから構成することができ、又は溶媒は、酸、塩基、及びアルコールのような1つ又はそれよりも多くの水溶性又は水混和性物質を含む水溶液とすることができる。アルコール(例えば、エタノール)を含有する溶媒のような非水溶媒を使用することができる。
【0030】
反応剤は、溶媒と混合され、望ましいマンガン酸化物触媒を生成するのに十分低い温度で反応する。触媒は、溶液から沈殿し、例えば、濾過又は溶媒蒸発によって分離される。可溶性物質が溶媒と共に除去されるので濾過が有利とすることができ、触媒を更に精製するために更に別の洗浄及び濾過を行うことができる。次に、触媒は、好ましくは室温から約110℃の範囲の温度、好ましくは約50℃を超えない温度で乾燥することができる。過度の加熱は、触媒粒子の過剰の凝集又は更に触媒の構造の変化を引き起こす場合がある。望ましくない高温を回避するために、真空乾燥を使用することができる。乾燥させた触媒は、凝集粒子をより小さい粒子に砕くために摩砕又は粉砕することができる。
【0031】
望ましい二酸化マンガン触媒は、好ましくは公称的に二酸化マンガンである。反応剤からの少量のカチオンも存在する場合がある。過マンガン酸カリウムのようなカリウムを含有する反応剤が使用される時に、存在することができる望ましいカチオンはカリウムである。触媒のための好ましい分子式は、KxMnyzであり、式中、y:zの比は、約2:1から約4:1、好ましくは少なくとも約3:1であり、x:yの比は0:1より大きいが約1:4を超えず、好ましくは少なくとも約1:16から約1:8ある。触媒は、KxMnyz・1.2H2Oのような水和マンガン酸化物とすることができる。少量の他のマンガン酸化物も存在することができる。
【0032】
望ましい触媒の構造は、高度に結晶性でなく完全にアモルファスでもない。好ましくは、触媒は、1重量パーセント未満のクリプトメレン型二酸化マンガンを含み、好ましくはクリプトメレン型二酸化マンガンを基本的に含まない。望ましい触媒のX線回折パターンは、1つが約56の2シータ値を中心とし、1つが約107の2シータ値を中心とする2つの広いピークを有する。
【0033】
1次(未凝集)粒子は、SEM/TEM顕微鏡法(走査電子顕微鏡法と透過電子顕微鏡法の組合せ)によって測定される時にほぼ球状の形状である(すなわち、1次粒子の大部分が約1:1から2:1のアスペクト比を有する)。SEM/TEM顕微鏡法によって測定される時に、1次粒子の大部分は、好ましくは100nm未満、より好ましくは50nmよりも大きくない、最も好ましくは約20nmよりも大きくない最大寸法を有する。約107°の2θでのピークに関する半値全幅(FWHM)の測定とシェラーの式:t=(0.9λ)/(βcosθ)を使用する計算とに基づいてX線回折から計算された時に、好ましくは結晶は、約20nm未満、より好ましくは約10nm未満であり、式中、tは、このピークを生じる結晶面に垂直なnmでの結晶サイズであり、λは、X線のnmでの波長であり、βは、装置起因広がりを補正したピークのラジアンでのFWHMであり、θは、ピーク位置2θの半分である。補正したピーク幅βは、式β=[(B−b)*(B2−b21/21/2から計算することができ、式中、Bは、ラジアンでのピークのFWHMであり、bは、未補正測定ピークに近いピーク位置を有するNISTアルミナ標準からの装置起因広がりピークのラジアンでのFWHMである。
【0034】
好ましくは、触媒のBET比表面積は、約120m2/gから約300m2/gである(窒素吸着を使用するBrunauer、Emmett、Teller比表面積)。より好ましくは、BET比表面積は、少なくとも約150m2/gである。一部の場合には、約200m2/gであることが、BET比表面積に対して好ましい場合がある。触媒粒子の小さいサイズ及び広い表面積は、高い触媒活性と触媒混合物内部及び電極の触媒層内の触媒の均一な分布とを達成するのに有利とすることができる。
【0035】
触媒は、触媒混合物を形成するために導電性材料と混合することができる。代替的に、触媒を集電体上に配置することにより又は形成された触媒本体内に集電体を埋め込むことにより、触媒を集電体と共に使用することができる。結合剤を使用することができる。必要に応じて、添加剤を含むことができる。一実施形態では、触媒の導電材料に対する比率は、約1から40重量パーセント、好ましくは約1から15重量パーセント、より好ましくは約1から約10重量パーセント、最も好ましくは約1から5重量パーセントである。触媒混合物の構成要素を混合するために、あらゆる適切な処理を使用することができる。構成要素は、乾式で混合することすることができ、又は乾物の構成要素を液体と混合することができる。混合処理の例は、米国特許公開第2008/0155813 A1号明細書に開示されている。
【0036】
触媒層の形状及び寸法は、電池の種類及びサイズによって変えることができる。例えば、触媒層は、平坦なシート又はベルト、又は忠実又は中空の円筒形又は角形の形態とすることができる。触媒混合物は、あらゆる適切な処理を用いて触媒層に形成することができる。
【0037】
触媒電極は、触媒層を含む。触媒層は、障壁シート又は障壁コーティングのような障壁層を含むことができる。障壁層は、加圧又は接着積層化、コーティング、圧延コーティング又は共押出しのようなあらゆる適切な方式で触媒層と結合させることができる。触媒電極は、集電体を含むことができる。触媒層と集電体は、集電体の表面の周り又はその上に触媒層を形成すること、触媒層内に集電体を埋め込むこと、触媒層の表面上に集電体を被覆すること、又は触媒層と集電体を互いに積層することのようなあらゆる適切な方式で結合することができる。集電体は、2009年5月29日出願の米国特許出願出願番号第61/182,285号明細書に開示されているように調製することができる。
【0038】
触媒電極は、あらゆる適切な方式で対極と組み合わせることができ、電極の間にセパレータが配置される。セパレータの種類は、電極の形状及びサイズ、対極が固体電極であるか又はゲル電極であるか、対極内の活物質及び使用される電解質の種類に依存するとすることができる。
【0039】
電極及び電解質は、適切なハウジング内に密封される。ハウジングの種類は制限されない。例えば、ハウジングは、周囲縁部の周りを密封した可撓性ポーチ、缶とカバーの間に圧縮シールを形成する弾性ガスケット又はシールを有する金属の缶及びカバー、及び超音波又は接着剤を用いて密封されたプラスチックケーシングとすることができる。
【0040】
本発明に関連して使用することができる亜鉛空気電池の構成要素、材料、及び電池製造方法の例は、米国特許公開第2008/0155813 A1号明細書に開示されている。
【実施例1】
【0041】
Mn23とMn34の混合物を含む従来型マンガン酸化物(MnOx)触媒が提供された。
【実施例2】
【0042】
米国特許出願公開第2008/0280190号明細書に開示するようなナノ−マンガン酸化物(QSI−NANO(登録商標)マンガン二酸化マンガン粉末)が、米国カリフォルニア州サンタアナ所在のQuatumSphere,Inc.(QSI)から入手された。
【実施例3】
【0043】
クリプトメレン型二酸化マンガンが、米国特許公開2007/0111095 A1号明細書に開示された還流法に類似した処理で、硫酸マンガン(実施例3A)と過マンガン酸カリウムとの酸水溶液中での還流によって製造された。MnSO4・H2O(13.52g)が脱イオン水(80cc)中に溶解され、KMnO4(8.8g)が脱イオン水(300cc)中に溶解された。MnSO4溶液のpHが、硝酸を用いて約1.0に調整され、pHを約1.0に維持しながらKMnO4溶液が徐々に添加され、複合溶液は、約100℃で24時間還流され、得られた沈殿は、濾過され、洗浄され、室温で乾燥させた。クリプトメレン型二酸化マンガンは、酢酸マンガン(Mn(C2322・4H20)を硫酸マンガンの代わりに使用したことを除いては同じ手順を用いても製造された(実施例3B)。
【実施例4】
【0044】
アモルファス二酸化マンガンが、フマール酸二ナトリウムと過マンガン酸ナトリウム一水和物から、「アルカリ性溶液中の酸素還元のための電極触媒としてのナノ多孔性アモルファスマンガン酸化物」、Electrochemical Communication 5(2003)306−311でYang他によって開示されたものと類似の処理を用いて製造された。フマール酸二ナトリウムの0.3M溶液が、0.25M過マンガン酸ナトリウム一水和物に徐々に添加されて(3:10モル比)1時間撹拌され、硫酸が添加されてMn(IV)からMn(III)に変換する不均化反応が開始されてコロイド二酸化マンガンと可溶性Mn(II)イオンが形成され、不純物イオンが透析によって除去され、沈殿が濾別されて凍結乾燥させ、次に、300℃を超えて加熱された。
【実施例5】
【0045】
中間相二酸化マンガンが、水中の過マンガン酸カリウムと酢酸マンガンとを加熱なしで用いる溶液沈殿処理を使用して製造された。(Mn(C2322・4H20)(13.52g)が脱イオン水(80cc)中に溶解され、KMnO4(8.8g)が脱イオン水(300cc)中に溶解された。得られた酢酸マンガン溶液のpHが、硝酸を用いて約1.0に調整され、pHを約1.0に維持しながらKMnO4溶液が徐々に添加され、複合溶液を撹拌して24時間までの様々な時間量で反応させ、得られた沈殿は、濾過され、洗浄され、室温で乾燥させた。
【実施例6】
【0046】
中間相二酸化マンガンが、pHを調製するための酸が添加されなかったことを除いては、実施例4における溶液沈殿処理を用いて製造された。
【実施例7】
【0047】
中間相二酸化マンガンが、酢酸マンガンの代わりに硫酸マンガン(MnSO4・H2O)が使用されたことを除いては、実施例5における溶液沈殿処理を用いて製造された。
【実施例8】
【0048】
実施例1−実施例6からの乾燥反応生成物が分析された。
【0049】
組成は、エネルギ分散型X線分光法(EDS)によって測定された。実施例3A、実施例3B、実施例4、及び実施例7(24時間の反応時間)に関する結果が表1に示されている。実施例7に関しては、5分から24時間の反応時間に関する比較的短い時間量によって組成が変化し、カリウムの重量パーセントは、1.74から1.93まで変動して平均1.83であり、マンガンの重量パーセントは、47.4から52.8まで変動して平均50.3である。
【0050】
構造は、GADDS検出器を有するBruker D8 Discover回折計を用いるX線回折法(XRD)によって判断された。X線管は、35kV及び50mAで作動して、CrKα(λ=0.229nm)放射線を発生し、放射線は、500μmの直径を有するコリメータに入る前にモノクロメータを通過した。ゴニオメータの中心からの検出器の距離は10cmであった。回折パターンは、15度から115度の2θ範囲にわたって、各々が15分の長さである3フレームで収集された。材料試料は、フレーム収集の間x−y平面内で±1mm振動した。実施例2Aに関する結果は、表1に要約されている。実施例2、実施例3A、及び実施例7(24時間の反応時間)に関するX線回折パターンは、それぞれ図2A、図2B、及び図2Cに示されている。8図2Aにおける垂直バーは、クリプトメレン−M,JCPDS No.44−1386(粉末回折基準の共同委員会)に関するパターンを表している。
【0051】
1次マンガン酸化物粒子の形態及びサイズは、20,000から2,000,000倍でのSEM及びTEM写真の目視観察及び測定によって判断された。実施例3A、実施例3B、実施例4、及び実施例7(反応時間24時間)に関する結果は、表1に要約されている。実施例7に対して、1次粒子の形態及びサイズは、全ての反応時間に対して類似していた。実施例7は、5分の反応時間に関して実施例5と類似したが、24時間の反応時間での試料では約200nmまでのロッドが観察され、いくらかのより多い結晶材料も形成されていたことが示された。
【0052】
表面積は、窒素吸着を用いるBET比表面積であった。実施例3A、実施例3B、実施例4、及び実施例7(反応時間24時間)に関する結果は表1に要約されている。実施例4、実施例5、及び実施例6に対して、反応時間と表面積の間に明白な関係はなく、表面積はかなり変動した。
【0053】
触媒活性は、過酸化水素分解試験を用いて測定され、その試験では、一定量の試料にH22を添加した後の酸素気体発生速度が測定された。気体発生速度が高ければ、触媒はより有効である。各試験に対して以下の手順が用いられた。
(a)0.1グラムの試料を2口フラスコ内に入れ、引き続き1mlのイソプロピルアルコール、次に、1mlの33重量パーセントKOH水溶液、次に、60mlの蒸留水を入れた。
(b)フラスコの1つの口がセプタムで密封され、他の口が、フラスコからの気体によって置換されたオイルの量を測定するためのオイルを収容した目盛付き容器の上部に接続するチューブを取付けた栓で閉止された。
(c)200μlのH22が、シリンジを用いてセプタムを通じてフラスコ内に分注された。
(d)置換されたオイルの容積が、置換されたオイル容積での更に別の変化がなくなるまで間隔的に記録された。過酸化水素分解試験の結果は、実施例3A、実施例3B、実施例4、及び実施例7(反応時間24時間)に対して表1に要約されている。実施例1、実施例2、実施例3A(反応時間24時間)、実施例4、実施例5(反応時間24時間)、実施例6(反応時間24時間)、及び実施例7(反応時間24時間)に関する結果は図3に示されており、この図は、秒での時間の関数としての生成酸素のcm3での容積のプロットである。
【0054】
(表1)

【0055】
この結果は、実施例5、実施例6、及び実施例7(各々が、そのカチオンが還元されない水溶性酸化剤とそのアニオンが還元されない水溶性還元剤からの溶液沈殿処理を用いて製造された)からの触媒が、実施例1、実施例2、及び実施例4からの触媒よりも良好であり、実施例3Aからの触媒とほぼ同じ触媒活性を有することを示している。触媒活性は、実施例5及び実施例6に対して反応時間と共に僅かに改善する傾向があったが、実施例6においては24時間の反応時間では僅かな低下が観測された。実施例7は、反応時間と触媒活性の間の関連をほぼ示さなかったが、ある試験において24時間の反応時間では低下した触媒活性が観測された。追加の調査において、実施例4に説明した方法が使用されたが反応が65℃で行われた時に、得られた二酸化マンガンは、クリプトメレン構造を有していたことも観測された。一般的には、短い反応時間及び低い反応温度が好ましい。
【実施例9】
【0056】
触媒電極が、実施例1、実施例2、実施例3A、実施例3B、及び実施例7からの触媒材料を用いて製造された。触媒混合物は、触媒、活性炭、PTFE分散剤、及び水を均一に混合し、その混合物を乾燥することによって製造され、2.5重量パーセントの触媒、7重量パーセントのPTFE、及び90.5重量パーセントの活性炭を含有する乾燥混合物が提供された。
【0057】
触媒電極シートが、触媒混合物の各々を使用して製造された。各触媒混合物がローラの間で圧縮され、触媒層シートが形成された。ポリテトラフルオロエチレンフィルムのシートが、フィルムと隣接加圧ローラの間に織られたシルク間紙を使用して触媒層の1つの表面上に加圧積層された。触媒層の反対側表面内には、エキスパンドニッケル集電体が埋め込まれた。
【実施例10】
【0058】
実施例1、実施例2、実施例3A、実施例3B、及び実施例7からの触媒を用いて、実施例9からの電極が、白金対電極と亜鉛基準電極を有して33重量パーセントKOH電解質で浸された半電池固定具において試験された。各電極は、開路電流に関する試験、それに続く65kHzから0.1Hzの周波数範囲にわたる10mVのピーク・トゥ・ピーク電位振幅でのACインピーダンスに関する試験、それに続く開路電圧を0.25Vだけ超えて開始されて基準電極に対して0.7Vまでの1mV/秒で走査するカソード方向への電位動的走査の試験により調整された。調整の後、電極は、開路電圧のままに30分間置かれ、ACインピーダンス試験及び電位動的走査試験が行われた。分極曲線(ターフェル曲線に類似しているが、電流密度に対しては対数目盛でなく直線目盛を用いた)がプロットされた。結果は、表2に要約されている。
【0059】
(表2)

【0060】
この試験は、実施例7からの触媒で製造された電極が最大の限界電流を有することを示している。実施例3A及び実施例3Bからの触媒でのこの結果は、触媒の触媒活性(実施例8)から予想されたよりも非常に低く、そのために実施例3A及び実施例7からの触媒を用いて追加の触媒混合物及び電極が製造されて半電池試験が反復された。半電池試験は、制限ファクタとしての空気電極の近くでの空気中酸素の減少を排除するために強制空気対流が使用された以外は同一であった。表3に要約されたこれらの結果は、実施例8での触媒活性試験結果と適合し、実施例3Aからの触媒がロット2からの触媒よりも良好な限界電流を提供することができることを示している。実施例7からの触媒の比較的小さい粒子サイズは、高い限界電流を有する電極を提供するファクタとすることができる。
【0061】
(表3)

【0062】
開示した概念の精神から逸脱することなく様々な修正及び改良を行うことができることは、本発明の実施者、並びに当業者によって理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学電池を製造する方法であって、
(a)水を含む溶媒と、そのカチオンが反応において還元されない酸化剤と、そのアニオンが反応において酸化又は還元されない還元剤とを有する反応混合物中で65℃未満での酸化還元反応を通じて酸素還元触媒を調製する段階であって、該酸化剤が、該溶媒に不溶な成分を含まず、該還元剤が、該溶媒に不溶な成分を含まず、かつ該酸化剤と該還元剤の少なくとも一方がマンガンを含む前記酸素還元触媒を調製する段階、
(b)前記触媒を沈殿させる段階、
(c)前記触媒から触媒混合物を調製する段階、
(d)前記触媒混合物を触媒層に形成する段階、
(e)前記触媒層を含む触媒電極を調製する段階、及び
(f)酸素流入ポートを含むハウジング内で前記触媒電極の前記触媒層と対極との間にセパレータを備えて該触媒電極を該対極及び電解質と組み合わせる段階であって、該触媒電極が、該空気流入ポートを通って電池に流入する空気に対してアクセス可能である前記組み合わせる段階、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記反応は、45℃未満で、好ましくは35℃未満で、より好ましくは30℃未満で起こることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記反応は、0℃よりも高く、好ましくは15℃よりも高い温度で起こることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記反応は、20℃から25℃で起こることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記酸化剤は、水溶性過マンガン酸塩化合物を含むことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記酸化剤は、過マンガン酸カリウムを含むことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記還元剤は、水溶性マンガン(II)化合物、好ましくは、硫酸マンガン、塩化マンガン、又は酢酸マンガンを含むことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記還元剤は、酢酸マンガンを含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記還元剤は、硫酸マンガンを含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項10】
酸中和が、前記触媒混合物を形成する前に行われることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
どの酸中和も、前記触媒混合物を形成する前に行われないことを特徴とする請求項1から請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記触媒を調製する前記段階は、前記反応混合物の加熱なしに行われることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記触媒を調製する前記段階は、前記反応混合物を冷却する段階を含むことを特徴とする請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記触媒を調製する前記段階は、前記反応混合物を加熱する段階を含むことを特徴とする請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記触媒は、KxMnyzの分子式を構成するマンガン酸化物を含み、式中、x:yが、0:1よりも大きく1:4までであり、y:zが、1:2から1:4までであることを特徴とする請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記マンガン酸化物は、水和マンガン酸化物であることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記触媒は、アモルファス構造でもなく基本的にクリプトメレン構造でもない構造を有するマンガン酸化物であることを特徴とする請求項1から請求項16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記マンガン酸化物は、1つが約56の2シータ値を中心とし、1つが約107の2シータ値を中心とする2つの広いX線回折ピークを含むことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記触媒粒子の大部分が、約1:1から2:1のアスペクト比を有し、かつX線回折から計算した時に20nm未満、好ましくは、10nm未満の結晶サイズを有することを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記触媒は、マンガン酸化物を含み、かつ実質的に金属を含まないことを特徴とする請求項1から請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記触媒混合物を調製する前記段階は、前記触媒を炭素を含む導電材料と混合する段階を含むことを特徴とする請求項1から請求項20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記炭素は、触媒炭素を含むことを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記電気化学電池は、金属空気電池であることを特徴とする請求項1から請求項22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
酸素が、前記触媒電極において還元される電気化学活物質であり、前記対極は、電気化学活物質として亜鉛を含む負極であり、前記電解質は、アルカリ水溶液電解質であることを特徴とする請求項23に記載の方法
【請求項25】
前記電気化学電池は、前記触媒電極において還元される電気化学活物質として酸素及び前記対極のための電気化学活物質として別の気体を使用する燃料電池であることを特徴とする請求項1から請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記触媒電極は、酸素透過性かつ前記電解質に対して不透過性である障壁層を更に含み、該障壁層は、前記触媒層と前記酸素流入ポートの間に配置されることを特徴とする請求項1から請求項25のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−518395(P2013−518395A)
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−551260(P2012−551260)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【国際出願番号】PCT/US2011/022555
【国際公開番号】WO2011/094295
【国際公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(397043422)エバレデイ バツテリ カンパニー インコーポレーテツド (123)
【Fターム(参考)】