説明

二酸化炭素冷媒輸送用の継手金具付ホース

【課題】ホース本体全体を通じての二酸化炭素冷媒の透過を防ぐことができるのに加えて、継手金具とホース本体との締結部からの二酸化炭素冷媒の漏出を良好に防止することのできる二酸化炭素冷媒輸送用の継手金具付ホースを提供する。
【解決手段】二酸化炭素冷媒輸送用の継手金具付ホース10におけるホース本体12を、最内層28と、ポリビニルアルコールの樹脂膜にて構成したバリア層30と、内ゴム層32と、第1及び第2補強層34,38と、外ゴム層40との積層構造となすとともに、インサートパイプ16の外面とホース本体12の内面との界面に沿って耐冷媒透過性の遮断層42を軸方向に設け、またソケット金具18の鍔状部22の内面とホース本体12の端面との界面に沿って耐冷媒透過性の遮断層44を軸方向の遮断層42に連続して径方向に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は冷媒輸送用ホース、特に二酸化炭素冷媒輸送用の継手金具付ホースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ゴム層を主体として構成した冷媒輸送用ホースが広く使用されてきた。
冷媒輸送用としてこのようなゴムホースを用いる主たる目的の1つはホースにて振動吸収することにある。
例えば、自動車のエンジンルーム内に配設されるエアコンホース即ち冷媒輸送用ホースの場合、エンジン振動やエアコンのコンプレッサ振動、車両の走行に伴って発生する各種の振動をホース部分で吸収し、ホースを介して接続されている一方の部材から他方の部材へと振動が伝達されるのを抑制する役割を担っている。
【0003】
このゴム層を主体とした冷媒輸送用ホースはまた、自動車のエンジンルーム内に配管する場合、その高い可撓性に基づいて配管レイアウトに沿った取回しや組付性にも優れている。
【0004】
ところでエアコンホース等の冷媒輸送用ホースにあっては、近年、環境保全の観点から内部流体としての冷媒のガスに対する耐透過性(低透過性)の要求が高まっており、こうした要請に対して従来のゴムホースでは十分に対応することができない。
そこで、例えば下記特許文献1に開示されているようにポリアミド樹脂の層を最内層として形成し、その最内層にて内部流体のガスに対する耐透過性を持たせるようになしたものが提案されている。
【0005】
ところで、従来からエアコンの冷媒として用いられてきたフロンは大気中のオゾン層破壊に繋がることから既にその使用が禁止されており、またこれに代わるR134a等の代替フロンも使用が制限される方向であり、そこでこれに代わる冷媒として二酸化炭素(CO)冷媒が注目され、実用化に向って研究が進められている。
しかしながら二酸化炭素冷媒は、従来から用いられている冷媒に比べてホースに対する透過性が著しく高く、冷媒のガスに対して耐透過性を持たせた従来の低ガス透過性ホースではガス透過を十分に抑制することができない。
而して二酸化炭素冷媒がガス透過によって失われて行くと、もともとこの二酸化炭素冷媒は冷媒としての能力が従来からのものに比べて低いために、エアコンの冷房能力が低下してしまう。
【0006】
冷媒輸送用ホースにおいて、冷媒に対する耐透過性を高めるために金属箔のテープをゴム層にスパイラル状に巻き付けてバリア層としたものが、下記特許文献2に開示されているが、このようにホースの断面中間位置に金属層を形成してしまうとホースとしての柔軟性が失われ、また内圧の繰返し作用によるホースの変形等によって異質の金属層が長期の間に剥離を生じ易く、而してそうした剥離が生じると耐透過性を確保できなくなってしまう。
【0007】
こうした事情の下で、本発明者らはガス透過に対する耐透過性(低透過性)に高い能力を有するポリビニルアルコール(けん化度90%以上)の樹脂膜をホース断面の中間に積層して、これをガスのバリア層となしたホースを開発し、先の特許願(特願2006−151305:未公開)において提案している。
【0008】
ポリビニルアルコール(PVOH)は材料的に炭酸ガス,窒素ガス,酸素ガス等多くのガスを通し難く、優れたガスバリア性を有していることが従来知られており、そこで本発明者らはこのポリビニルアルコールの樹脂膜をホース断面の中間位置にガスのバリア層として積層したものを案出した。
そしてこのホースは、ポリビニルアルコールの樹脂膜(バリア層)によって、二酸化炭素冷媒に対しても優れた耐透過性を有していることを確認した。
このポリビニルアルコールの樹脂膜をバリア層として有する低ガス透過性ホースは、近い将来使用される二酸化炭素冷媒の輸送用ホースとして極めて有望なものである。
【0009】
ところで、二酸化炭素冷媒は従来の冷媒に比べて冷媒としての能力が低いことから、かかる二酸化炭素冷媒を用いたエアコンにおいては、必然的に二酸化炭素冷媒の流通する流路内圧、即ちホース内圧が従来に比べて格段と高くなる。
例えば従来、その内圧は常用圧力で1.5〜2MPa程度であったのが、二酸化炭素冷媒を用いる場合には常用圧力で15MPa程度となり、従来に比べて10倍に近い圧力増となる。
【0010】
この場合、継手金具付きの二酸化炭素冷媒輸送用ホースにあっては、その高いホース内圧によって継手金具とホース本体との締結部からの冷媒の漏れが大きな問題となる。
継手金具は、ホース本体と相手部材とを接続するためにホース本体の端部に装着されるもので、この継手金具は、ホース本体の端部に挿入されるインサートパイプと、ホース本体の端部に外嵌されるソケット金具とを有し、ソケット金具のスリーブとインサートパイプとの間の環状空間にホース本体を挿入させた状態で、ソケット金具のスリーブが縮径方向にかしめられることで、ソケット金具とインサートパイプとがともにホース本体の端部に締結され、固定される。
このとき、インサートパイプの外面とホース本体の内面との界面、更にはソケット金具の径方向内向きの鍔状部の内面とホース本体の端面との界面は、それぞれ冷媒の漏出路となり易い。
【0011】
而してこのような漏出路を通じて二酸化炭素冷媒が外部に漏出してしまうと、エアコンの冷房能力が低下してしまう。
従って二酸化炭素冷媒輸送用のホースとしては、継手金具とホース本体との間に生ずる漏出路からの二酸化炭素冷媒の漏出を防ぐことが重要な課題となる。
【0012】
【特許文献1】特許第3107404号公報
【特許文献2】特開2003−336774号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は以上のような事情を背景とし、ホース本体全体を通じての二酸化炭素冷媒の透過を防ぐことができるのに加えて、継手金具とホース本体との締結部からの二酸化炭素冷媒の漏出を良好に防止することのできる二酸化炭素冷媒輸送用の継手金具付ホースを提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
而して請求項1のものは、ホース本体の端部に挿入されるインサートパイプと、スリーブ及び該スリーブの軸端に径方向内向きに備えられた鍔状部を有し、該スリーブと該インサートパイプとの間の環状空間に前記ホース本体を挿入させた状態で縮径方向にかしめられて、該インサートパイプとともに該ホース本体に固定されるソケット金具と、を有する継手金具を該ホース本体の端部に装着して成る二酸化炭素冷媒輸送用の継手金具付ホースであって、前記ホース本体を、(イ)樹脂層からなる最内層と、(ロ)該最内層の外側に積層された、けん化度90%以上のポリビニルアルコールの樹脂膜にて構成された耐冷媒透過性を有するバリア層と、(ハ)該バリア層の外側に積層された内ゴム層と、(ニ)該内ゴム層の外側に積層された補強層と、(ホ)該補強層の外側に積層された外ゴム層との積層構造となすとともに、前記インサートパイプの外面と前記ホース本体の内面との界面に沿って生じる前記冷媒の軸方向の漏出路に、該漏出路を遮断する耐冷媒透過性の遮断層を該界面に沿って軸方向に設けるとともに、ホース軸方向に互いに対向する前記鍔状部の内面と前記ホース本体の端面との界面に沿って生じる冷媒の径方向の漏出路に、該漏出路を遮断する耐冷媒透過性の遮断層を該界面に沿って且つ前記軸方向の遮断層に連続して径方向に設けたことを特徴とする。
【0015】
請求項2のものは、請求項1における二酸化炭素冷媒輸送用の継手金具付ホースが、前記径方向の遮断層は、前記内ゴム層,外ゴム層の端面を含む前記ホース本体の端面全体に亘って形成してあることを特徴とする。
【0016】
請求項3のものは、請求項1,2の何れかにおける二酸化炭素冷媒輸送用の継手金具付ホースが、前記最内層がポリアミド樹脂を用いて構成してあることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0017】
以上のように本発明は、ホース本体を、樹脂層からなる最内層と、その外側のけん化度90%以上のポリビニルアルコールの樹脂膜にて構成した耐冷媒透過性のバリア層と、その外側の内ゴム層と、内ゴム層の外側の補強層と、補強層の外側の外ゴム層との積層構造となすとともに、インサートパイプの外面とホース本体の内面との界面に沿って生じる漏出路を遮断する耐冷媒透過性の遮断層を軸方向に設け、また併せてソケット金具における鍔状部の内面とホース本体の端面との界面に沿って生じる漏出路を遮断する径方向の遮断層を軸方向の遮断層に連続して設けたものである。
【0018】
かかる本発明によれば、ホース内部を流通する二酸化炭素冷媒が、インサートパイプの外面とホース本体の内面との間の界面に沿ってホース本体の先端側に漏出するのを、その界面に沿って設けた耐冷媒透過性の軸方向の遮断層にて良好に防止することができる。
【0019】
また、たとえ二酸化炭素冷媒がその軸方向の界面に沿ってホース先端側に漏出することがあったとしても、ホース本体の先端側には、耐冷媒透過性の径方向の遮断層が鍔状部の内面とホース本体の端面と界面に沿って且つ軸方向の遮断層に連続して設けてあるため、軸方向に漏出した二酸化炭素冷媒が鍔状部の内面とホース本体の端面との界面を通じて、更に外部へと漏出するのを良好に防止することができる。
【0020】
ここでインサートパイプの外面とホース本体の内面との界面を伝ってホース先端側に漏出した二酸化炭素冷媒は、その先、鍔状部の内面とホース本体の端面との界面を伝って、更にはソケット金具におけるスリーブの径方向の内面とホース本体の外面との界面を伝って外部へと漏出する場合と、そのような界面を経ないで、ホース本体のバリア層の外側部分を直接透過して外部へと漏出する場合とがあり得るが、この発明では何れの経路を通じての二酸化炭素冷媒の外部への漏出を有効に防止することができる。
【0021】
この場合において上記径方向の遮断層は、内ゴム層及び外ゴム層の端面を含むホース本体の端面全体に亘って形成しておくことが望ましい(請求項2)。
このようにすることで、径方向の遮断層により二酸化炭素冷媒の漏出をより有効に防止することができる。
【0022】
本発明においては、樹脂の最内層をポリアミド樹脂を用いて構成しておくことが望ましい(請求項3)。
このことによってホース全体の耐冷媒透過性をより一層高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1において、10は二酸化炭素冷媒(CO冷媒)輸送用の継手金具付ホース(以下単にホースとする)で、ホース本体12の端部に継手金具14が装着してある。
継手金具14は、ホース本体12の内部に挿入される金属製のインサートパイプ16と、ホース本体12の端部に外嵌されるソケット金具18とから成っている。
またソケット金具18は、円筒状をなすスリーブ20と、スリーブ20の軸端に径方向内向きに備えられた環状の鍔状部22とを有している。
【0024】
この継手金具14は、次のようにしてホース本体12の端部に装着される。
即ち、ソケット金具18のスリーブ20とインサートパイプ16との間の環状空間24に、ホース本体12の端部を挿入し、その状態でソケット金具18を図中P,P,P,Pのかしめ部で縮径方向にかしめることで、インサートパイプ16とスリーブ20とがホース本体12の端部を内外両側から挟圧する状態に、ホース本体12に締結され固定される。
【0025】
ソケット金具18の鍔状部22は、かしめ部Pでのかしめによって、内周端部がインサートパイプ16の外周面の係入溝26に塑性変形を伴って係入し、これによってソケット金具18とインサートパイプ16とが抜止状態に固定され一体化される。
図中Pのかしめ部はロックかしめ部と称されるもので、このロックかしめにより、鍔状部22の内周端部が係入溝26に塑性変形を伴って強く嵌り込むことで、ソケット金具18とインサートパイプ16とが固定されると同時に、鍔状部22の内周端部とインサートパイプ16との間が気密シール状態となる。
【0026】
ホース本体12は、図1及び図2に示しているように樹脂層からなる最内層28と、その外側のポリビニルアルコールの樹脂膜からなるバリア層30と、その外側の内ゴム層32と、その外側の第1補強層34及び第2補強層38と、最外層としての外ゴム層40との積層構造をなしている。
ここで第1補強層34と第2補強層38との間には中間ゴム層36が介装されている。
【0027】
最内層28の材料としては各種の樹脂材を用いることが可能であるが、ここではポリアミド樹脂を用いて最内層28を構成するのが望ましい。
ポリアミド樹脂としては、例えばポリアミド6(PA6),ポリアミド66(PA66),ポリアミド99(PA99),ポリアミド610(PA610),ポリアミド612(PA612),ポリアミド11(PA11),ポリアミド912(PA912),ポリアミド12(PA12),ポリアミド6とポリアミド66との共重合体(PA6/66),ポリアミド6とポリアミド12との共重合体(PA6/12)等を例示することができ、これらを単独或いは2種以上併せて用いることができる。
なかでも層間接着性に優れることと、冷媒に対する耐透過性(低透過性)に優れることからポリアミド6を好適に用いることができる。
【0028】
またポリアミド6と無水マレイン酸変性ポリオレフィンとをアロイ化したものは曲げ弾性率が小さく柔軟性に優れ、耐熱性にも優れるので好適に用いることができる。具体的にはデュポン社製のザイテルST801,ザイテルST811,ザイテルST811HS等のザイテルSTシリーズ(何れも商品名)等、ポリアミドと変性ポリオレフィンとのブレンドも好適に用いることができる。
またその厚みとしては0.02〜2.0mmの範囲内とすることができる。
【0029】
バリア層30は、上記のようにポリビニルアルコールの樹脂膜にて形成されるが、ここではけん化度90%以上のポリビニルアルコールを用いることが必要である。
ポリビニルアルコールは、工業的にはポリ酢酸ビニルをけん化(加水分解)することによって得られ、そのけん化度は以下の化学式(化1)におけるmとnとの値によって定まる。
詳しくはこれらmとnとの値を用いて下記式(数1)によって算出される。
このけん化度は、加水分解の程度を表わす数値で、完全加水分解されたものはけん化度が100%となる。
【0030】
【化1】

【0031】
【数1】

【0032】
けん化度の大きいものは高分子中の水酸基の量が多く、これに伴って耐ガス透過性能が高くなる。
本実施形態では、けん化度が90%以上のポリビニルアルコールを用いることが必要である。
けん化度が90%未満であると、二酸化炭素冷媒に対して所望のレベルでの耐透過性能(低透過性能)を得ることができなくなる。
【0033】
このバリア層30は、厚みとしては5〜100μmの範囲内としておく。
5μm未満であると耐透過性が不十分となり、またピンホールが発生し易くなる。一方100μm超では膜硬さが硬くなり、ホースとしての柔軟性に悪影響を及ぼすとともに、割れ(クラック)を発生する恐れも生ずる。
【0034】
尚、ポリビニルアルコールの樹脂膜からなるバリア層30は、一般に最内層28に対して直接的に接着することが難しいことから、それらの間に接着剤層を形成して、その接着剤層にて最内層28とバリア層30とを接着する。
この場合においてその接着剤としてはゴム糊系,ウレタン系,ポリエステル系,イソシアネート系,エポキシ系等の接着剤を例示することができ、これらを単独で或いは2種以上併せて用いることができる。なかでもゴム糊系接着剤が、最内層28とバリア層30との層間接着性に優れることから、特に好適である。
【0035】
一方内ゴム層32,外ゴム層40としては、例えばブチルゴム(IIR),塩素化ブチルゴム(Cl−IIR),臭素化ブチルゴム(BR−IIR)等のハロゲン化ブチルゴム,アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR),クロロプレンゴム(CR),エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM),エチレン−プロピレンゴム(EPM),フッ素ゴム(FKM),エピクロロヒドリンゴム(ECO),アクリルゴム,シリコンゴム,塩素化ポリエチレンゴム(CPE),ウレタンゴム等のゴム材料を好適に用い得るが、特に内ゴム内層32としてはブチルゴム(IIR),ハロゲン化ブチルゴムが、外からの水に対する耐水性に優れていることから、特に好適であり、また外ゴム層40としては耐候性の観点からEPDMが特に好適である。
ここで各ゴム材は、通常はカーボンブラック等の充填剤や加硫剤その他各種の配合剤を適宜に配合して用いることとなる。
尚、内ゴム層32についてはその厚みを0.5〜5.0mmの範囲内とすることが望ましく、また外ゴム層40についてはその厚みを0.5〜2.0mmの範囲内とすることが望ましい。
【0036】
上記第1補強層34,第2補強層38の材料としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET),ポリエチレンナフタレート(PEN),アラミド,ポリアミド,ビニロン,レーヨン,金属ワイヤ等の補強線材を用いることができ、これをスパイラル編組,ブレード編組,ニット編組等により編組してそれら第1補強層34,第2補強層38を構成することができる。
尚、第1補強層34と第2補強層38との間の中間ゴム層36については、内ゴム層32,外ゴム層40と同様の上記例示した材料を用いることができる。
この中間ゴム層36は、その厚みを0.1〜0.5mmの範囲内としておくことが望ましい。
【0037】
本実施形態のホース10は、例えば次にようにして製造することができる。
先ず、樹脂層からなる最内層28を押出成形にて成形し、その外面に接着剤層を塗布等にて形成する。
そしてポリビニルアルコールの粉末を温水に溶解してコーティング液を調製し、そこに最内層28を例えばディッピング(浸漬)することにより最内層28の外面(詳しくは接着剤層の外面)にコーティング液を塗布し、しかる後乾燥処理を行ってコーティング液の溶剤としての水を飛ばして除去し、これによりポリビニルアルコールの樹脂膜を最内層28の外面に接着剤層を介して形成する。
但し上記のディッピングによらないでスプレー,ロールコート,刷毛塗り等他の手法を適用することも可能である。
この1回のコーティングにより得られるポリビニルアルコールの樹脂膜の厚みは10μm程度である。
樹脂膜の厚みを更に厚くするには同様の処理を何回か繰り返す、或いはポリビニルアルコール水溶液濃度を上げる。
【0038】
以上のようにしてポリビニルアルコールの樹脂膜からなるバリア層30を最内層28の外面に積層形成した後、常法に従って内ゴム層32をバリア層30の外面に積層し、更に第1補強層34の編組、中間ゴム層36の押出成形、第2補強層38の編組、外ゴム層40の押出成形を行って長尺の押出成形体を得、これを加硫処理後に所定寸法ごとに切断することによって、図1に示すホース10を得ることができる。
尚ホース10の内径は5〜40mm程度である。
【0039】
以下はホース10の各層の構成の具体例である。
最内層28
材質:PA6,厚み:0.15mm
バリア層30
材質:けん化度99%のポリビニルアルコール樹脂,厚み:10μm
内ゴム層32
材質:臭素化ブチルゴム,厚み:1.6mm
第1補強層34
材質及び編組:アラミド糸のブレード編組,編組角度51°
中間ゴム層40
材質:EPDM,厚み:0.3mm
第2補強層38
材質及び編組:アラミド糸のブレード編組,編組角度57°
外ゴム層40
材質:EPDM,厚み:1.0mm
【0040】
図1に示しているように、この実施形態では二酸化炭素冷媒の漏出路となるインサートパイプ16の外面とホース本体12の内面との界面に、その漏出路を遮断する耐冷媒透過性の軸方向の遮断層42が、それらインサートパイプ16の外面とホース本体12の内面との界面に沿って円筒状に設けられている。
この軸方向の遮断層42は、インサートパイプ16のホース本体12への挿入部全長に亘って、詳しくはインサートパイプ16の挿入側の先端から、ソケット金具18の鍔状部22の内面に到る位置まで全長に亘り設けられている。
【0041】
この実施形態ではまた、冷媒の漏出路となるソケット金具18の鍔状部22の内面とホース本体12の端面との界面にも、その漏出路を遮断する耐冷媒透過性の径方向の遮断層44が設けられている。
この径方向の遮断層44は、ホース本体12の端面全体と対応する鍔状部22の内面全体に亘ってそれらの界面に、且つホース本体12の端面及び鍔状部22の内面に密着する状態で設けられている。
またこの径方向の遮断層44は内周側が軸方向の遮断層42に全周に亘り連続する状態で、更に外周端がソケット金具18におけるスリーブ20の内面に全周に亘り密着する状態で設けられている。
【0042】
本実施形態においては、軸方向の遮断層42としてポリアクリル酸,ポリメタクリル酸,クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM),フッ素ゴム(FKM),ポリビニルアルコール等の材料を用いることができる。
またその厚みは1〜9μmとすることができる。
【0043】
また軸方向の遮断層42は、例えば、インサートパイプ16の係入溝26にキャップをした上、所定の長さまでインサートパイプをコーティング液にディッピングした上、吊るして風乾させ、必要な熱処理を施しキャップを外すなどの方法で形成することができる。
【0044】
一方径方向の遮断層44の材料としては、ポリビニルアルコールの樹脂膜、或いは耐冷媒透過性の高いCSM(クロロスルホン化ポリエチレンゴム)やFKM(フッ素ゴム)等のフッ素系ゴム材料やポリアクリル酸,ポリメタクリル酸,その他を用いることができる。
【0045】
この径方向の遮断層44は、1〜9μmの厚みで設けておくことができ、またかかる径方向の遮断層44を設ける方法としては、例えば、ホース本体12の端面の内径穴にキャップをした上、ホース本体12の端面をディッピング後、吊るして風乾させ、次いで継手金具14の環状空間24にホース本体12の端部を装着し、ソケット金具18をかしめた後に熱処理を行う等の方法を用いることができる。
【0046】
尚、上記ゴム系の材料を径方向の遮断層44として設ける場合には、ゴム材をトルエン等の適当な溶剤に溶解してゴム糊とし、そのゴム糊をホース本体12の端面に塗るか又は場合によって鍔状部22の内面に塗ることによって、径方向の遮断層44を形成することができる。
【0047】
以上のような本実施形態によれば、ホース10内部を流通する二酸化炭素冷媒が、インサートパイプ16外面とホース本体12内面との間の界面に沿ってホース本体12の先端側に漏出するのを、軸方向の遮断層42にて良好に防止することができる。
【0048】
また、たとえ二酸化炭素冷媒がホース10先端側に軸方向に漏出することがあったとしても、ホース本体12先端側には耐冷媒透過性の径方向の遮断層44が設けてあるため、その径方向の遮断層44により、軸方向に漏出した二酸化炭素冷媒が外部へと漏出するのを良好に防止することができる。
【0049】
インサートパイプ16の外面とホース本体12の内面との間を軸方向に漏出した二酸化炭素冷媒は、その鍔状部22の内面とホース本体12の端面との間を伝って、更にはソケット金具18におけるスリーブ20の内面とホース本体12の外面との界面を伝って外部へと漏出する場合と、そのような界面を経ないで、ポリビニルアルコールの樹脂膜にて構成したバリア層30の外側において、ホース本体12を直接透過して外部へと漏れる場合もあり得るが、この実施形態では、ホース本体12の端面に耐冷媒透過性の遮断層44が設けてあるため、何れの経路を通じても二酸化炭素冷媒の外部への漏出を有効に防止することができる。
【0050】
特にこの実施形態では、径方向の遮断層44が内ゴム層32及び外ゴム層40の端面を含むホース本体12の端面全体に亘って形成してあるため、径方向の遮断層44による二酸化炭素冷媒の漏出をより有効に防止することができる。
【0051】
尚、図3に示しているように耐冷媒透過性を有する径方向の遮断層44を、予めホース本体12及びソケット金具18と別体に成形しておいて、継手金具14をホース本体12に装着するに際し、別体に成形した径方向の遮断層44を、ホース本体12とともにソケット金具14とインサートパイプ16との間に形成される環状空間24に挿入し(遮断層44が鍔状部22の内面とホース本体12の端面とに密着する状態に)、その状態でソケット金具18をかしめて継手金具14をホース本体12に締結固定する際に、同時にホース本体12の端面と鍔状部22の内面との界面に沿って径方向の遮断層44を設けるといったことも可能である。
【0052】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の一実施形態である継手金具付ホースの要部縦断面図である。
【図2】同実施形態の横断面図である。
【図3】本発明の他の実施形態の要部の図である。
【符号の説明】
【0054】
10 継手金具付ホース
12 ホース本体
14 継手金具
16 インサートパイプ
18 ソケット金具
20 スリーブ
22 鍔状部
24 環状空間
28 最内層
30 バリア層
32 内ゴム層
34 第1補強層
36 中間ゴム層
38 第2補強層
40 外ゴム層
42,44 遮断層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホース本体の端部に挿入されるインサートパイプと、スリーブ及び該スリーブの軸端に径方向内向きに備えられた鍔状部を有し、該スリーブと該インサートパイプとの間の環状空間に前記ホース本体を挿入させた状態で縮径方向にかしめられて、該インサートパイプとともに該ホース本体に固定されるソケット金具と、を有する継手金具を該ホース本体の端部に装着して成る二酸化炭素冷媒輸送用の継手金具付ホースであって
前記ホース本体を、(イ)樹脂層からなる最内層と、(ロ)該最内層の外側に積層された、けん化度90%以上のポリビニルアルコールの樹脂膜にて構成された耐冷媒透過性を有するバリア層と、(ハ)該バリア層の外側に積層された内ゴム層と、(ニ)該内ゴム層の外側に積層された補強層と、(ホ)該補強層の外側に積層された外ゴム層との積層構造となすとともに、
前記インサートパイプの外面と前記ホース本体の内面との界面に沿って生じる前記冷媒の軸方向の漏出路に、該漏出路を遮断する耐冷媒透過性の遮断層を該界面に沿って軸方向に設けるとともに、ホース軸方向に互いに対向する前記鍔状部の内面と前記ホース本体の端面との界面に沿って生じる冷媒の径方向の漏出路に、該漏出路を遮断する耐冷媒透過性の遮断層を該界面に沿って且つ前記軸方向の遮断層に連続して径方向に設けたことを特徴とする二酸化炭素冷媒輸送用の継手金具付ホース。
【請求項2】
前記径方向の遮断層は、前記内ゴム層,外ゴム層の端面を含む前記ホース本体の端面全体に亘って形成してあることを特徴とする請求項1に記載の二酸化炭素冷媒輸送用の継手金具付ホース。
【請求項3】
前記最内層がポリアミド樹脂を用いて構成してあることを特徴とする請求項1,2の何れかに記載の二酸化炭素冷媒輸送用の継手金具付ホース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−248996(P2008−248996A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−89647(P2007−89647)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】