説明

二酸化炭素回収システムおよび二酸化炭素回収方法

【課題】吸収液に溶解している酸素を除去し、二酸化炭素を安定して回収することができる二酸化炭素回収システムおよび二酸化炭素回収方法を提供すること目的とする。
【解決手段】排ガス103と吸収液150とを気液接触させて吸収液150に排ガス103中の二酸化炭素を吸収させる吸収塔100と、二酸化炭素を吸収した吸収液150から二酸化炭素を放出させて吸収液150を再生する再生塔110と、吸収塔100から排出される吸収液150を再生塔110に導く吸収液ライン130a、130bと、吸収液ライン130a、130bに介在し、吸収液150に溶解している酸素を除去する酸素除去装置120と、再生塔110から排出される吸収液150を吸収塔100に導く吸収液ライン131とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火力発電所のボイラ、ごみ焼却炉などの排ガスに含まれている二酸化炭素などを回収する二酸化炭素回収システムおよび二酸化炭素回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、化石燃料の燃焼生成物である二酸化炭素の温室効果による地球温暖化の問題が大きくなっている。気候変動に関する国際連合枠組条約の京都議定書において、我が国の温室効果ガス排出削減の目標は、1990年の比率マイナス6%を2008〜2012年の間に達成することである。
【0003】
このような背景の中、火力発電所、都市ごみ焼却場などから排出される二酸化炭素を、例えば、アルカリ物質であるアミン化合物の水溶液を吸収液として用いることにより、二酸化炭素を回収するシステムが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
ここで、図3は、吸収液としてアミン水溶液を用い、二酸化炭素を回収する従来の二酸化炭素回収システム200の概要を示している。
【0005】
図3に示された従来の二酸化炭素回収システム200では、化石燃料を燃焼して排出された排ガス201は、ガスブロワ202によって吸収塔203に導かれる。吸収塔203の上部には、温度が50℃程度の吸収液204が供給され、この供給された吸収液204は、導入された排ガス201と接触して、排ガス201中の二酸化炭素を吸収する。一方、吸収液204に二酸化炭素を吸収された残りの排ガス201は、吸収塔203の上部から大気へ放出される。
【0006】
二酸化炭素を吸収した吸収液204は、吸収塔203の下部から抜出しポンプ205によって熱交換器206に導かれ、さらに再生塔207に導かれる。
【0007】
再生塔207に導かれた吸収液204は、加熱器208のスチーム209によって120℃程度の温度に加熱されて、撹乱される。そして、二酸化炭素が吸収液204から放散され、再び二酸化炭素を吸収できる吸収液204に再生される。再生された吸収液204は、循環ポンプ210により、熱交換器206およびクーラ211を介して吸収塔203の上部へ戻される。一方、吸収液204から放散された二酸化炭素は、クーラ212を介して分離器213に導かれ、分離器213よって水分が取り除かれた後に回収される。
【0008】
このように構成された従来の二酸化炭素回収システム200では、吸収塔203において排ガス201に含まれている酸素の一部が吸収液204に吸収される。
【特許文献1】特開2002−126439号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した従来の二酸化炭素回収システムでは、吸収塔において排ガスに含まれている酸素の一部が吸収液に吸収されるため、吸収された酸素が吸収液を劣化させて二酸化炭素の吸収を阻害するという問題があった。
【0010】
そこで、本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、吸収液に溶解している酸素を除去し、二酸化炭素を安定して回収することができる二酸化炭素回収システムおよび二酸化炭素回収方法を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の二酸化炭素回収システムは、ガス導入口、吸収用吸収液導入口、残りガス排出口および吸収液排出口を備え、前記ガス導入口から導入されたガスと前記吸収用吸収液導入口から導入された吸収液とを気液接触させて前記吸収液に前記ガス中の二酸化炭素を吸収させる吸収装置と、再生用吸収液導入口、再生吸収液排出口および二酸化炭素取出口を備え、前記二酸化炭素を吸収した吸収液から二酸化炭素を放出させて前記吸収液を再生する再生装置と、前記吸収装置の吸収液排出口から排出される吸収液を前記再生装置の再生用吸収液導入口に導く第1の吸収液ラインと、前記第1の吸収液ラインに介在し、吸収液に溶解している酸素を除去する酸素除去装置と、前記再生装置の再生吸収液排出口から排出される吸収液を前記吸収装置の吸収用吸収液導入口に導く第2の吸収液ラインとを具備することを特徴とする。
【0012】
この二酸化炭素回収システムによれば、吸収装置にガスと吸収液を導いて互いを気液接触させ、ガス中に含まれる二酸化炭素を吸収液に吸収させ、二酸化炭素を吸収した吸収液を再生装置に導いて吸収液から二酸化炭素を放出させ、吸収液を再生することができる。さらに、第1の吸収液ラインに酸素除去装置を介在させ、吸収装置でガス中の酸素を溶解した吸収液から酸素を除去することができる。
【0013】
本発明の二酸化炭素回収方法は、ガスと吸収液とを吸収装置に導き、前記ガスと前記吸収液とを気液接触させて前記吸収液に前記ガス中の二酸化炭素を吸収させる吸収工程と、前記二酸化炭素を吸収した吸収液を減圧された酸素除去装置内に噴出して微粒化し、前記吸収液に溶解した酸素を前記吸収液から放出させて除去する酸素放出除去工程と、前記酸素が除去された吸収液を再生装置に導き、前記吸収液から前記二酸化炭素を放出させて前記吸収液を再生する再生工程とを具備することを特徴とする。
【0014】
この二酸化炭素回収方法によれば、吸収工程において、吸収装置にガスと吸収液を導いて互いを気液接触させ、ガス中に含まれる二酸化炭素を吸収液に吸収させ、再生工程において、吸収液から二酸化炭素を放出させて回収すると共に、吸収液を再生させることができる。さらに、酸素放出除去工程において、二酸化炭素を吸収した吸収液を減圧された酸素除去装置内に噴出して微粒化することで、吸収液から酸素を放出させて除去することができる。
【0015】
また、本発明の二酸化炭素回収方法は、ガスと吸収液とを吸収装置に導き、前記ガスと前記吸収液とを気液接触させて前記吸収液に前記ガス中の二酸化炭素を吸収させる吸収工程と、前記二酸化炭素を吸収した吸収液を、前記吸収液の流れを利用して流引される前記酸素除去装置内の還元性ガスと混合して酸素除去装置内に噴出し、前記還元性ガスと混合された吸収液と前記酸素除去装置内に充填された還元性ガスとを気液接触させて、前記吸収液に溶解している酸素を前記吸収液から除去する酸素除去工程と、前記酸素が除去された吸収液を再生装置に導き、前記吸収液から前記二酸化炭素を放出させて前記吸収液を再生する再生工程とを具備することを特徴とする。
【0016】
この二酸化炭素回収方法によれば、吸収工程において、吸収装置にガスと吸収液を導いて互いを気液接触させ、ガス中に含まれる二酸化炭素を吸収液に吸収させ、再生工程において、吸収液から二酸化炭素を放出させて回収すると共に、吸収液を再生させることができる。さらに、酸素放出除去工程において、二酸化炭素を吸収した吸収液を、その吸収液の流れを利用して流引される酸素除去装置内の還元性ガスと混合して酸素除去装置内に噴出し、還元性ガスと混合された吸収液と酸素除去装置内に充填された還元性ガスとを気液接触させることで、還元性ガスが酸素を奪い、吸収液から酸素を除去することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の二酸化炭素回収システムおよび二酸化炭素回収方法によれば、吸収液に溶解している酸素を除去し、二酸化炭素を安定して回収することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
【0019】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態の二酸化炭素回収システム10の概要を示したものである。
【0020】
この二酸化炭素回収システム10は、導入された排ガス103と吸収液150を気液接触させる吸収塔100と、二酸化炭素を吸収した吸収液150から二酸化炭素を放出させて吸収液150を再生する再生塔110と、導入された排ガス103に含まれる二酸化炭素を吸収するとともに酸素を吸収した吸収液150から酸素を放出させて除去する酸素除去装置120と、この酸素除去装置120を介在し、吸収塔100の吸収液排出口101から排出される吸収液150を再生塔110の吸収液導入口111に導く吸収液ライン130a、130bと、再生塔110の吸収液排出口112から排出される吸収液150を吸収塔100の吸収液導入口102に導く吸収液ライン131と、各ポンプ、各機器などを制御する制御部140とから主に構成されている。なお、図1において、制御部140は、後述する各ポンプ、各構成機器などと電気的に接続されているが、図の明記のため接続線の記載は省略する。
【0021】
まず、吸収塔100と再生塔110とに吸収液150を還流させる還流経路について説明する。
【0022】
吸収塔100の下部には、火力発電所のボイラや都市ごみ焼却場などから排出された二酸化炭素を含む排ガス103を吸収塔100内に導くための排ガス導入口104が設けられている。なお、排ガス導入口104に導入されるガスは、火力発電所のボイラや都市ごみ焼却場などから排出された排ガス103に限らず、例えば、天然ガス採掘場で採掘された二酸化炭素を含む天然ガスでもよい。
【0023】
また、この排ガス導入口104には、排ガス103を吸収塔100内に送気するためのガスブロワ105が連結されている。吸収塔100の上部には、再生塔110の吸収液排出口112から排出される吸収液150を導入する吸収液導入口102が設けられている。この吸収液導入口102には、吸収液150を噴出する吸収液噴出部106が設けられている。さらに、吸収塔100の内部には、この吸収液噴出部106から噴出された吸収液150と吸収塔100に導入された排ガス103とを主として気液接触させる充填材107が設置されている。また、吸収塔100の上端部には、残りガス排出口として機能し、充填材107を通過することで、二酸化炭素が吸収された排ガス103を大気中に排気するための排気口108が設けられている。ここで、吸収液噴出部106から噴出される吸収液150は、微粒化されて均一に噴出されることが好ましい。
【0024】
充填材107は、例えば、多孔構造、ハニカム構造などを有するもので構成され、充填材107を通過する吸収液150を撹乱する作用を有するものであればよい。また、充填材107は、吸収塔100内に多段に設置されてもよい。この充填材107を多段に設置した場合、例えば、各段に対応して吸収液150を噴出する吸収液噴出部106を設けてもよい。なお、吸収塔100内において、排ガス103と吸収液150との気液接触を効率よく行えるならば、充填材107を設置せずに吸収塔100を構成することも可能である。
【0025】
さらに、吸収塔100の底部には、二酸化炭素を吸収した吸収液150を排出するための吸収液排出口101が設けられている。この吸収液排出口101は、送液ポンプ160が備えられた吸収液ライン130aの一端と接続されている。吸収液ライン130aの他端は、酸素除去装置120の上端部の吸収液導入口でもあるノズル121に接続されている。
【0026】
酸素除去装置120は、減圧タンクで構成され、具体的にはフラッシングタンクなどで構成される。また、ノズル121は、吸収液ライン130aによって導かれた吸収液150を酸素除去装置120内に噴出するものである。吸収液150は、例えば、ノズル121から酸素除去装置120内に微粒化されて噴出されることが好ましい。
【0027】
酸素除去装置120の底部には、酸素が除去された吸収液150を排出するための吸収液排出口122が設けられている。この吸収液排出口122は、送液ポンプ162が備えられた吸収液ライン130bの一端と接続されている。吸収液ライン130bの他端は、再生塔110の吸収液導入口111に接続されている。また、酸素除去装置120の上部には、吸収液150から放出された酸素を排出するための酸素排出口123が設けられている。
【0028】
再生塔110の上部には、酸素が除去された吸収液150を導入する吸収液導入口111が設けられている。ここで、例えば、再生塔110の上部に、吸収液導入口111に連通させて、吸収液150を微粒化して再生塔110に噴出する吸収液噴出部118を設けてもよい。
【0029】
再生塔110の底部には、二酸化炭素を放出して再生された吸収液150を排出するための吸収液排出口112が設けられている。この吸収液排出口112は、送液ポンプ161および冷却器170が備えられた吸収液ライン131の一端と接続されている。吸収液ライン131の他端は、吸収塔100の吸収液導入口102に接続されている。冷却器170は、吸収液ライン131を還流する吸収液150を冷却する熱交換器などで構成される。この冷却器170において、吸収液150から熱を回収する冷却媒体として、例えば海水などを用いてもよい。
【0030】
また、再生塔110には、例えば吸収塔100と同様に、充填材117が設置される。この充填材117は、吸収塔100における充填材107と同様のものが使用される。また、再生塔110においても、例えば吸収液噴出部118を設けることで、吸収液150からの二酸化炭素の放出が十分に促進できる場合には、充填材117を設置せずに再生塔110を構成することも可能である。また、放出された二酸化炭素は、再生塔110の上端部に設けられた二酸化炭素排出口113から排出され、例えば、図示しない二酸化炭素回収手段によって回収される。さらに、再生塔110には、底部に溜まった吸収液150を、例えば、排ガス103の熱などを利用して加熱する加熱器171が設けられている。
【0031】
上記したように、吸収塔100、吸収液ライン130a、130b、再生塔110、吸収液ライン131、吸収塔100の順に吸収液150を還流させる還流経路が形成される。なお、送液ポンプ160、161、162は、制御部140からの信号に基づいて作動し、吸収液ライン130a、130b、131に流れる吸収液150の流量などを調整している。
【0032】
第1の実施の形態で用いられる吸収液150は、水100g当たりに10〜28gの炭酸ナトリウムを溶かして、重量濃度を9〜22%に調整された炭酸ナトリウム水溶液である。炭酸ナトリウム水溶液の濃度をこの範囲に設定したのは、重量濃度が9%より低い場合には、二酸化炭素の吸収量が不十分になるためであり、重量濃度が22%より高い場合には、二酸化炭素の吸収速度が十分に高くならないからである。
【0033】
また、吸収塔100および酸素除去装置120における吸収液150の温度は、40〜65℃に設定されている。また、再生塔110における吸収液150の温度は、65〜90℃に設定されている。
【0034】
ここで、吸収塔100および酸素除去装置120における吸収液150の温度を40〜65℃の範囲に設定したのは、炭酸ナトリウムを主な溶質とする吸収液150の温度が40℃未満であると、吸収液150への二酸化炭素の吸収が遅く、65℃を超えると、吸収液150に吸収された二酸化炭素が吸収塔100内や酸素除去装置120内で放散し始めるからである。
【0035】
また、再生塔110における吸収液150の温度を65〜90℃の範囲に設定したのは、炭酸ナトリウムを主な溶質とする吸収液150の温度が65℃未満であると、二酸化炭素の放出が遅く、90℃を超えると、吸収液150から多量の水分が消失するからである。
【0036】
次に、二酸化炭素回収システム10の作用について説明する。
【0037】
火力発電所のボイラや都市ごみ焼却場などから排出された排ガス103は、ガスブロワ105によって吸収塔100内に供給される。排ガス103が吸収塔100内に供給されると、吸収液150は、吸収液ライン131を介して吸収塔100の上部の吸収液噴出部106から噴出される。吸収塔100内では、吸収液150と排ガス103とが気液接触し、吸収液150は、排ガス103に含まれる二酸化炭素および微量の酸素を吸収する。また、気液接触後の排ガスは、吸収塔100の排気口108から大気中に放出される。
【0038】
二酸化炭素および微量の酸素を吸収した吸収液150は、送液ポンプ160によって、吸収液ライン130aを介して、酸素除去装置120のノズル121から酸素除去装置120内に噴出される。酸素除去装置120内は、絶対圧力20〜80kPaの減圧状態になっており、吸収液150は、水蒸気、吸収した酸素および一部の二酸化炭素を放出する。酸素除去装置120の上部の酸素排出口123における温度は、30〜40℃であるため、水蒸気の大部分は、凝縮して水となり、酸素除去装置120内の下方に流れ落ちる。そのため、酸素排出口123からは、主に酸素および一部の二酸化炭素が排出される。また、水蒸気の大部分は、外部に放出されずに再び水となって酸素除去装置120の底部に溜まった吸収液150に混ざるので、吸収液150における溶質の濃度をほぼ一定に維持することができる。
【0039】
酸素が除去された吸収液150は、送液ポンプ162によって、吸収液ライン130bを介して、再生塔110の吸収液導入口111から再生塔110内に導かれる。再生塔110の底部に貯留された吸収液150が加熱器171によって加熱され、その一部が水蒸気となって、再生塔110内に存在するため、再生塔110内の雰囲気温度が65〜90℃となる。また、再生塔110内は、絶対圧力20〜80kPaの減圧状態になっている。この再生塔110内において、吸収液150は、吸収した二酸化炭素を放出する。ここで、加熱器171によって加熱され、発生した水蒸気は、再生塔110の下部から上部へ流れ、上部からの吸収液150と気液接触する。この接触により、吸収液150に吸収されていた二酸化炭素が水蒸気中に放出され、吸収液150が再生される。なお、水蒸気との接触により吸収液150から二酸化炭素が放出されるが、これ以外にも、再生塔110内が減圧されていることによっても、吸収液150からの二酸化炭素の放出を促進する。
【0040】
ここで、吸収液ライン130bを介して、再生塔110の吸収液導入口111に導かれる吸収液150の温度は、40〜65℃の範囲であるが、例えば、吸収液噴出部118によって、吸収液150が再生塔110内に噴出されると短時間に、吸収液150は加熱され、65〜90℃の温度となる。なお、この吸収液150に熱を奪われた水蒸気は、凝縮し、水となって再び再生塔110の底部に流れ落ちる。このように、水蒸気の大部分は、外部に放出されずに再び水となって再生塔110の底部に溜まった吸収液150に混ざるので、吸収液150における溶質の濃度をほぼ一定に維持することができる。
【0041】
再生塔110の底部に貯留された、再生された吸収液150は、送液ポンプ161によって、吸収液ライン131を介して、吸収塔100の吸収液導入口102から吸収塔100内に導かれ、上記した二酸化炭素の吸収工程を再び行う。なお、吸収液ライン131を流れる吸収液150の温度が高い場合には、吸収液ライン131に介在した冷却器170によって、吸収液150を冷却する。また、冷却器170における冷媒の流量などは、例えば、制御部140からの信号に基づいて調整される。
【0042】
一方、再生塔110内に放出された二酸化炭素および一部の水蒸気は、再生塔110上端部の二酸化炭素排出口113から回収される。なお、二酸化炭素排出口113に、排出されるガスを冷却する熱交換器を設けて、排出される水蒸気を冷却して凝縮させ、水として再生塔110内に戻すようにしてもよい。
【0043】
上記したように、第1の実施の形態の二酸化炭素回収システム10では、酸素除去装置120によって、吸収液150に溶解した酸素を吸収液150から放出して除去することができるので、吸収液150の劣化や、吸収液150における二酸化炭素の吸収量の低下を抑制することができる。
【0044】
(第2の実施の形態)
図2は、本発明の第2の実施の形態の二酸化炭素回収システム20の概要を示したものである。
【0045】
この二酸化炭素回収システム20は、酸素除去装置180を除き、上述した第1の実施の形態の二酸化炭素回収システム10の構成と同じである。また、二酸化炭素回収システム20を構成する各装置における吸収液150の濃度や温度、各装置内の温度や圧力などの各運転条件も、上述した第1の実施の形態の二酸化炭素回収システム10の運転条件と同じである。そこで、第1の実施の形態の二酸化炭素回収システム10の構成と同一部分には同一符号を付して、重複する説明を簡略または省略し、構成の異なる酸素除去装置180について主に説明する。
【0046】
第2の実施の形態の二酸化炭素回収システム20で用いられる酸素除去装置180内は、絶対圧力50〜150kPaの範囲で設定され、減圧状態に設定する場合には、例えば、第1の実施の形態の酸素除去装置120と同様に、フラッシングタンクなどの減圧タンクで構成される。
【0047】
酸素除去装置180の上端部には、吸収液ライン130aの他端と接続された、吸収液導入口でもある流引混合噴出装置181が配置されている。また、この流引混合噴出装置181の吸気孔181aは、酸素除去装置180の上部に設けられた還元性ガスを酸素除去装置180から導出する還元性ガス導出口182と還元性ガス導出ライン183を介して接続されている。また、酸素除去装置180の上部には、酸素除去装置180内に還元性ガスを導入するための還元性ガス導入口184が設けられている。さらに、酸素除去装置180の底部には、酸素が除去された吸収液150を排出するための吸収液排出口185が設けられ、この吸収液排出口185は、吸収液ライン130bの一端と接続されている。
【0048】
ここで、流引混合噴出装置181は、吸収液ライン130aからの吸収液150の流れを利用して還元性ガス導出ライン183を介して吸気孔181aから流引した酸素除去装置180内の還元性ガスと、吸収液150とを混合して酸素除去装置180内に噴出するものである。具体的には、流引混合噴出装置181は、アスピレータ(水流ポンプ)などで構成される。
【0049】
また、酸素除去装置180内に充填される還元性ガスとして、例えば二酸化硫黄、一酸化炭素などが挙げられる。これらの還元性ガスを利用するのは、これらの還元性ガスと酸素とが反応すると、安定な物質である、硫酸ナトリウム、二酸化炭素などが得られるからである。
【0050】
次に、酸素除去装置180における作用について説明する。
【0051】
まず、二酸化炭素回収システム20の運転開始前に、還元性ガス導入口184から酸素除去装置180内に還元性ガスを導入する。
【0052】
運転を開始すると、送液ポンプ160によって、二酸化炭素および微量の酸素を吸収した吸収液150が吸収塔100から酸素除去装置180の流引混合噴出装置181に導かれる。吸収液150が流引混合噴出装置181を通過することにより、酸素除去装置180内の還元性ガスが還元性ガス導出ライン183を介して吸気孔181aから流引される。そして、流引混合噴出装置181において、吸収液150を、その吸収液150の流れを利用して流引される酸素除去装置180内の還元性ガスと混合して酸素除去装置180内に噴出する。噴出された、還元性ガスと混合された吸収液150は、酸素除去装置180内に充填された還元性ガスとさらに気液接触する。そして、吸収液150と還元性ガスとが交わることにより、吸収液150に溶解している酸素と還元性ガスが反応して安定な物質、例えば、硫酸ナトリウム、二酸化炭素などになる。この反応によって、吸収液150から酸素が除去される。
【0053】
続いて、酸素が除去された吸収液150は、送液ポンプ162によって、吸収液ライン130bを介して、再生塔110の吸収液導入口111から再生塔110内に導かれる。
【0054】
上記したように、第2の実施の形態の二酸化炭素回収システム20では、酸素除去装置180によって、吸収液150に溶解した酸素を吸収液150から除去することができるので、吸収液150の劣化や、吸収液150における二酸化炭素の吸収量の低下を抑制することができる。さらに、酸素除去装置180において、吸収液150に溶解している酸素を還元性ガスと反応させることで、安定な物質とすることができる。
【0055】
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態の二酸化炭素回収システムでは、上述した第1の実施の形態の二酸化炭素回収システム10を用い、吸収液150として炭酸カリウム水溶液を用いた場合について説明する。したがって、第3の実施の形態の二酸化炭素回収システムの基本構成や動作は、第1の実施の形態の二酸化炭素回収システム10と同じであるので、図1を参照して第3の実施の形態の二酸化炭素回収システムを説明し、第1の実施の形態の二酸化炭素回収システム10における説明と重複する説明は省略する。
【0056】
第3の実施の形態の二酸化炭素回収システムで用いられる吸収液150は、水100g当たりに10〜43gの炭酸カリウムを溶かして、重量濃度を9〜30%に調整された炭酸カリウム水溶液である。吸収塔100および酸素除去装置120における吸収液150の温度は、40〜65℃程度に設定されている。また、再生塔110における吸収液150の温度は、65〜90℃程度に設定されている。
【0057】
ここで、吸収塔100および酸素除去装置120における吸収液150の温度を40〜65℃に設定したのは、炭酸カリウムを主な溶質とする吸収液150の温度が40℃を下回ると、吸収液150への二酸化炭素の吸収が遅くなり、65℃を上回ると吸収液150に吸収された二酸化炭素が吸収塔100内や酸素除去装置180内で放散し始めるからである。また、再生塔110における吸収液150の温度を65〜90℃に設定したのは、炭酸カリウムを主な溶質とする吸収液150の温度が65℃を下回ると、二酸化炭素の放出が遅くなり、90℃を上回ると、吸収液150から水蒸気が多量に発生するからである。
【0058】
上記した第3の実施の形態の二酸化炭素回収システムでは、第1の実施の形態の二酸化炭素回収システムと同様に、酸素除去装置120によって、吸収液150に溶解した酸素を吸収液150から放出して除去することができるので、吸収液150の劣化や、吸収液150における二酸化炭素の吸収量の低下を抑制することができる。
【0059】
なお、上記した第1、第2および第3の実施の形態の二酸化炭素回収システムでは、主に、ボイラを備える火力発電所や都市ごみ焼却場などに、本発明の二酸化炭素回収システムを採用する一例を示したが、本発明の二酸化炭素回収システムの用途は、これらに限られるものではない。例えば、前述したように、例えば、天然ガス採掘場に採用することもできるし、さらに、船舶動力システムに採用することもできる。
【0060】
また、本発明の二酸化炭素回収システムでは、例えば、火力発電所や都市ごみ焼却場などから排出される大量の二酸化炭素を安定して回収することができるので、地球温暖化防止に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の第1の実施の形態の二酸化炭素回収システムを示す概要図。
【図2】本発明の第2の実施の形態の二酸化炭素回収システムを示す概要図。
【図3】従来の二酸化炭素回収システムを示す概要図。
【符号の説明】
【0062】
10…二酸化炭素回収システム、100…吸収塔、103…排ガス、105…ガスブロワ、107,117…充填材、110…再生塔、120…酸素除去装置、121…ノズル、130a,130b,131…吸収液ライン、140…制御部、150…吸収液、160,161,162…送液ポンプ、170…冷却器、171…加熱器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス導入口、吸収用吸収液導入口、残りガス排出口および吸収液排出口を備え、前記ガス導入口から導入されたガスと前記吸収用吸収液導入口から導入された吸収液とを気液接触させて前記吸収液に前記ガス中の二酸化炭素を吸収させる吸収装置と、
再生用吸収液導入口、再生吸収液排出口および二酸化炭素取出口を備え、前記二酸化炭素を吸収した吸収液から二酸化炭素を放出させて前記吸収液を再生する再生装置と、
前記吸収装置の吸収液排出口から排出される吸収液を前記再生装置の再生用吸収液導入口に導く第1の吸収液ラインと、
前記第1の吸収液ラインに介在し、吸収液に溶解している酸素を除去する酸素除去装置と、
前記再生装置の再生吸収液排出口から排出される吸収液を前記吸収装置の吸収用吸収液導入口に導く第2の吸収液ラインと
を具備することを特徴とする二酸化炭素回収システム。
【請求項2】
前記酸素除去装置が、前記吸収装置からの吸収液を導入する吸収液導入口、溶解している酸素が除去された吸収液を排出する酸素除去吸収液排出口、および吸収液から放出された酸素を外部に排出する酸素排出口を備える減圧タンクで構成されていることを特徴とする請求項1記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項3】
前記吸収液導入口が、前記吸収装置からの吸収液を微粒化して前記酸素除去装置内に噴出する微粒化ノズルで構成されていることを特徴とする請求項2記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項4】
前記酸素除去装置が、前記吸収装置からの吸収液を導入する吸収液導入口、前記酸素除去装置内に還元性ガスを供給する還元性ガス供給口、前記酸素除去装置内の還元性ガスを導出する還元性ガス導出口、および前記還元性ガス導出口と前記吸収液導入口とを連通させる還元性ガス導出ラインを備える減圧タンクで構成されていることを特徴とする請求項1記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項5】
前記吸収液導入口が、前記吸収装置からの吸収液の流れを利用して前記還元性ガス導入ラインを介して前記酸素除去装置内の還元性ガスを流引し、前記吸収液に前記流引した還元性ガスを混合して前記吸収装置内に噴出する流引混合噴出装置で構成されていることを特徴とする請求項4記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項6】
前記吸収液の主な溶質が、炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウムであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項7】
前記ガスが、ボイラ、焼却炉からの排ガス、または採掘された二酸化炭素を含有する天然ガスであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項8】
ガスと吸収液とを吸収装置に導き、前記ガスと前記吸収液とを気液接触させて前記吸収液に前記ガス中の二酸化炭素を吸収させる吸収工程と、
前記二酸化炭素を吸収した吸収液を減圧された酸素除去装置内に噴出して微粒化し、前記吸収液に溶解した酸素を前記吸収液から放出させて除去する酸素放出除去工程と、
前記酸素が除去された吸収液を再生装置に導き、前記吸収液から前記二酸化炭素を放出させて前記吸収液を再生する再生工程と
を具備することを特徴とする二酸化炭素回収方法。
【請求項9】
ガスと吸収液とを吸収装置に導き、前記ガスと前記吸収液とを気液接触させて前記吸収液に前記ガス中の二酸化炭素を吸収させる吸収工程と、
前記二酸化炭素を吸収した吸収液を、前記吸収液の流れを利用して流引される前記酸素除去装置内の還元性ガスと混合して酸素除去装置内に噴出し、前記還元性ガスと混合された吸収液と前記酸素除去装置内に充填された還元性ガスとを気液接触させて、前記吸収液に溶解している酸素を前記吸収液から除去する酸素除去工程と、
前記酸素が除去された吸収液を再生装置に導き、前記吸収液から前記二酸化炭素を放出させて前記吸収液を再生する再生工程と
を具備することを特徴とする二酸化炭素回収方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−137725(P2007−137725A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−334679(P2005−334679)
【出願日】平成17年11月18日(2005.11.18)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】