説明

二重係止コネクタ

【課題】 コンタクト収容キャビティの狭ピッチ化を可能としつつ、リテーナの仮係止及び本係止の強度を強くすることができるとともに、リテーナの装着の作業性を向上させた二重係止コネクタを提供する。
【解決手段】二重係止コネクタ1のハウジング10には、上下2列のコンタクト収容キャビティ15間の第1空間41及び第1空間41に連通し上下2列のコンタクト収容キャビティ15に交差する第2空間42を有するとともにハウジング10の側面に開口したリテーナ装着孔40が設けられる。リテーナ30は、本係止突起36を有する本係止アーム35と、仮係止突起38を有する仮係止アーム37とを備えている。本係止アーム35と仮係止アーム37の撓む方向が90°異なっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンタクトを係止するリテーナがコネクタハウジングの側面から挿入されるサイドリテーナ型の二重係止コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のサイドリテーナ型の二重係止コネクタとして、例えば、図15乃至18に示すものが知られている(特許文献1参照)。図15は、従来の二重係止コネクタの一部を切断した断面図であり、リテーナが仮係止位置にある状態を示している。図16は、従来の二重係止コネクタの一部を切断した断面図であり、リテーナが本係止位置にある状態を示している。図17は、図15及び図16に示す二重係止コネクタに用いられるハウジングの背面図である。図18は、図15及び図16に示す二重係止コネクタに用いられるリテーナの背面図である。
【0003】
図15及び図16に示す二重係止コネクタ101は、ハウジング110と、ハウジング110に取り付けられる複数のコンタクト120と、これらコンタクト120を二次係止するためのリテーナ130とを具備している。
ハウジング110は、絶縁性の樹脂を成形することによって略箱形に形成され、その後方部(図15における下方部)には、複数のコンタクト収容キャビティ111が左右幅方向(図15における左右方向)に上下2列状に所定ピッチで設けられている。各コンタクト収容キャビティ111には、コンタクト120を一次係止するためのハウジングランス112が設けられている。また、ハウジング110の側面の後端側には、リテーナ装着凹部113が形成されている。図17に示すように、リテーナ装着凹部113から上下の各コンタクト収容キャビティ111に対して上方に交差するように一対のリテーナ装着孔114が設けられている。ここで、下側のリテーナ装着孔114の上面には、図17に示すように、開口側(装着凹部113側)に仮係止突起115が設けられるとともに、奥側に本係止突起116が設けられている。
【0004】
また、リテーナ130は、図18に示すように、一対の脚部131と、これら脚部131の端部を連結する連結部132とを備えている。リテーナ130の一対の脚部131は、上下のリテーナ装着孔114内に挿入される。一対の脚部131のうちの下側のリテーナ装着孔114内に挿入される脚部131の上面には、係止突起133が突出形成されている。リテーナ130は、係止突起133が仮係止突起115に係止されることにより、図15に示す仮係止位置に係止され、係止突起133が本係止突起116に係止されることにより、図16に示す本係止位置に係止される。リテーナ130の一対の脚部131のそれぞれの下面には、図18に示すように、複数の二次係止突起134がコンタクト収容キャビティ111と同一ピッチで設けられている。
【0005】
各コンタクト120は、リテーナ130が図15に示す仮係止位置にあるときに、ハウジング110の後方から各コンタクト収容キャビティ111内に挿入される。この際に、各コンタクト120は、ハウジングランス112により一次係止される。
そして、リテーナ130を更に押し込んで図16に示す本係止位置にすると、リテーナ130の二次係止突起134が各コンタクト120のスタビライザ部の後側に位置し、各コンタクト120を二次係止するようになっている。これにより、二重係止コネクタ101の組立が完成する。
【特許文献1】特開2001−185272号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図15乃至図18に示すサイドリテーナ型の二重係止コネクタ101は、自動車における電気接続部品として使用されるのが一般的であり、この分野において、近年、コンタクト収容キャビティの狭ピッチ化の要請が高まりつつある。
図15乃至図18に示す二重係止コネクタ101においては、リテーナ130をハウジング110内に収容し、一方の脚部131を上下2列状のコンタクト収容キャビティ111間に挿入し、仮係止突起115及び本係止突起116を上下2列状のコンタクト収容キャビティ111間に設けてあるため、コンタクト収容キャビティ111の狭ピッチ化に大きな支障となることはない。
【0007】
しかしながら、二重係止コネクタ101にあっては、リテーナ130に設けられた係止突起133が仮係止及び本係止の双方に用いられるようになっている。係止突起133は、仮係止時に仮係止突起115に係止されるようになっているが、その際に仮係止突起115によって変形してしまうこともあり、その変形したまま本係止に用いられると、本係止強度が弱くなり必要な本係止強度が得られないことがある。
【0008】
また、リテーナ130を仮係止させるときには、リテーナ130の一対の脚部131を上下のリテーナ装着孔114内に挿入し、下側の脚部131に設けられた係止突起133を仮係止突起115を乗り越えるようにして係止させる。この際に、下側の脚部131が下側のリテーナ装着孔114内に挿入されて容易に撓み変形できる構造になっていないため、係止突起133が仮係止突起115を容易に乗り越えることができず、係止突起133及び仮係止突起115を無理に変形させて係止を行う。このため、リテーナ130の装着作業が困難である。
【0009】
従って、本発明は上述の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、コンタクト収容キャビティの狭ピッチ化を可能としつつ、リテーナの仮係止及び本係止の強度を強くすることができるとともに、リテーナの装着の作業性を向上させた二重係止コネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明のうち請求項1に係る二重係止コネクタは、複数のコンタクトと、各々が前記複数のコンタクトの各々を収容し、左右幅方向に沿って上下2列状に配置された複数のコンタクト収容キャビティを有するハウジングとを備え、前記コンタクトの各々及び/又は前記コンタクト収容キャビティの各々に設けられた一次係止手段と、前記ハウジングに装着され、前記複数のコンタクトの二次係止手段としてのリテーナとを備えた二重係止コネクタにおいて、前記ハウジングには、前記上下2列のコンタクト収容キャビティ間の第1空間及び該第1空間に連通し前記上下2列のコンタクト収容キャビティに交差する第2空間を有するとともに前記ハウジングの側面に開口したリテーナ装着孔を設け、前記リテーナは、前記ハウジングの側面の開口から前記リテーナ装着孔内に挿入されるとともに、前記第1空間を画定する上下の壁のうちの一方の壁に係止される係止突起を有する弾性変形可能な第1係止アームと、前記第1空間を画定する壁のうちの前記第2空間がある側と反対側の壁に係止される係止突起を有する弾性変形可能な第2係止アームとを備え、前記第1係止アーム及び前記第2係止アームの一方が本係止アームであり且つ他方が仮係止アームであり、前記本係止アームと前記仮係止アームの撓む方向が90°異なっていることを特徴としている。
【0011】
また、本発明のうち請求項2に係る二重係止コネクタは、請求項1記載の二重係止コネクタにおいて、前記上下2列状のコンタクト収容キャビティは、前記左右幅方向に沿って千鳥配置されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明のうち請求項1に係る二重係止コネクタによれば、ハウジングには、上下2列のコンタクト収容キャビティ間の第1空間及び該第1空間に連通し上下2列のコンタクト収容キャビティに交差する第2空間を有するとともにハウジングの側面に開口したリテーナ装着孔を設け、リテーナは、ハウジングの側面の開口からリテーナ装着孔内に挿入されるので、上下2列のコンタクト収容キャビティ間にリテーナを配置できるため、コンタクト収容キャビティの狭ピッチ化を図ることができる。また、リテーナは、第1空間を画定する上下の壁のうちの一方の壁に係止される係止突起を有する第1係止アームと、第1空間を画定する壁のうち前記第2空間がある側と反対側の壁に係止される係止突起を有する第2係止アームとを備え、前記第1係止アーム及び前記第2係止アームの一方が本係止アームであり且つ他方が仮係止アームであるので、本係止アームと仮係止アームとを別個に備え、それぞれの係止アームを本係止専用と仮係止専用にすることでリテーナの仮係止及び本係止の強度を強くすることができる。さらに、仮係止アーム及び本係止アームは弾性変形が可能であるから、仮係止及び本係止の際にそれら係止アームが容易に変形するため、リテーナの装着作業を容易にすることができる。また、本係止アームと仮係止アームの撓む方向が90°異なっているので、リテーナ装着孔の第1空間内で本係止アームと仮係止アームとが撓み可能となり、共通の空間内で2つの本係止アームと仮係止アームとが使用でき、コンパクトな形状の二重係止コネクタとすることができる。
【0013】
また、本発明のうち請求項2に係る二重係止コネクタによれば、請求項1記載の二重係止コネクタにおいて、前記上下2列状のコンタクト収容キャビティは、前記左右幅方向に沿って千鳥配置されているので、コンタクト収容キャビティ内に収容されるコンタクトの左右幅方向の配列ピッチを更に狭ピッチにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は、本発明に係る二重係止コネクタの実施形態を示し、(A)は正面斜め上方側から見た斜視図、(B)は背面斜め上方側から見た斜視図である。図2は、二重係止コネクタからリテーナを分離した状態を示し、(A)は背面斜め上方側から見た斜視図、(B)は正面斜め下方側から見た斜視図である。図3は、リテーナが仮係止位置にあるときの二重係止コネクタを示し、(A)は正面図、(B)は左側面図、(C)は背面図である。図4は、図3(C)の4−4線に沿う断面図である。図5は、図3(B)の5−5線に沿う断面図である。図6は、図3(B)の6−6線に沿う断面図である。図7は、図3(C)の7−7線に沿う断面図である。図8は、リテーナが本係止位置にあるときの二重係止コネクタを示し、(A)は左側面図、(B)は背面図である。図9は、図8(B)の9−9線に沿う断面図である。図10は、図8(A)の10−10線に沿う断面図である。図11は、図8(A)の11−11線に沿う断面図である。図12は、図8(B)の12−12線に沿う断面図である。
【0015】
図1乃至図12において、二重係止コネクタ1は、ハウジング10と、ハウジング10に取り付けられた複数のコンタクト(図7及び図12参照)20と、リテーナ30とを備えている。
この二重係止コネクタ1は、図13及び図14に示すように、例えば燃料電池などの相手接続体50に対して接続されるようになっている。図13は、二重係止コネクタを相手接続体に対して接続する途中の状態の断面図である。図14は、二重係止コネクタを相手接続体に対して接続完了した状態の断面図である。図13及び図14において、相手接続体50には、二重係止コネクタ1を支持するためのコネクタ支持部51が設けられている。コネクタ支持部51は、相手接続体50の一端側から立ち上がる第1起立部52に形成されたロック部係止用凹部53と、相手接続体50の他端側から立ち上がる第2起立部55に形成された凸部係合用凹部56とからなる。
【0016】
ここで、ハウジング10は、図1に示すように、略直方体状の下段ハウジング部11と、この下段ハウジング部11の上側に位置する略直方体状の上段ハウジング部13とを備えている。下段ハウジング部11及び上段ハウジング部13は、絶縁性の樹脂を成形することによって一体的に形成される。
【0017】
また、下段ハウジング部11の後方部(図3(B)における左方部)には、図1(A)及び図3(C)に示すように、上段ハウジング部11の左右幅方向(図3(C)における左右方向)の一端部から突出する第1突出部12が設けられている。第1突出部12は、図1(A)に示すように、下段ハウジング部11の後端面から前方に向けて前後方向略中央部まで延びている。また、上段ハウジング部13には、図1(B)及び図3(C)に示すように、下段ハウジング部11の左右幅方向における第1突出部12がある端部と反対側の端部から突出する第2突出部14が設けられている。第2突出部14は、図1(B)に示すように、上段ハウジング部13の後端面から前方に向けて上段ハウジング部13の前端面に至るまで延びている。第2突出部14は、下段ハウジング部11の側面の前方の突出板部11aに連続している。このため、下段ハウジング部11の側面には、第2突出部14及び突出板部11aにより、第2突出部14及び突出板部11aに対して相対的に窪んでいる凹部11bが画定される。この凹部11bは、隣接するハウジング10の第1突出部12を隙間をもって受容できる寸法に設定されている。
【0018】
そして、下段ハウジング部11及び上段ハウジング部13のそれぞれには、図1(B)、図3(C)及び図12によく示すように、各コンタクト20を収容するコンタクト収容キャビティ15が複数設けられて上下2列状のコンタクト収容キャビティ15とされている。上下2列状のコンタクト収容キャビティ15は、ハウジング10の左右幅方向に沿って千鳥配置されている。
【0019】
このように、上下2列状のコンタクト収容キャビティ15を左右幅方向に沿って千鳥配置することにより、コンタクト収容キャビティ15内に収容されるコンタクト20の左右幅方向の配列ピッチを狭ピッチにすることができる。そして、下段ハウジング部11に、上段ハウジング部13の左右幅方向一端部から突出する第1突出部12が設けられ、上段ハウジング部13に、下段ハウジング部11の左右幅方向における第1突出部12がある端部と反対側の端部から突出する第2突出部14が設けられている。これにより、左右幅方向に千鳥配列した2列状のコンタクト収容キャビティ15をハウジング10に無駄なスペースを設けることなく設けることができる。
【0020】
また、下段ハウジング部11の後端面の下端部には、相手接続体(図13及び図14参照)50のコネクタ支持部51の凸部係合用凹部56に係合して回転軸となる凸部18が後方に向けて突出形成されている。凸部18は、図1(B)に示すように、下段ハウジング部11の左右幅方向の全域にわたって延びている。その一方、下段ハウジング部11の前端面の下端部には、図1(A)に示すように、該下端部から前方に延び、そして湾曲部を介して上方に延びるロック部16が設けられている。ロック部16には、相手接続体50のコネクタ支持部51のロック部係止用凹部53に係止されるロック突起17が設けられている。ロック部16の左右方向幅は、図1(A)に示すように、下段ハウジング部11の左右方向幅よりも小さく設定されている。ロック突起17の左右方向幅は、ロック部16の左右方向幅とほぼ同一である。下段ハウジング部11の前端面の両側部には、ロック部16の両側を覆うように延びる1対の保護壁16a,16bが設けられている。これら保護壁16a,16bは、ロック部16を外部から保護する。
【0021】
更に、下段ハウジング部11及び上段ハウジング部13には、図2(B)、図13及び図14に示すように、相手接続体50の板状の接触部材57を受容する複数のスリット19が下段ハウジング部11の下面から上方に向けて形成されている。隣接するスリット19のうち一方のスリット19は、図12に示すように、下段ハウジング部11の下面から上方に向けて下段ハウジング部11のコンタクト収容キャビティ15を貫通するように形成されている。また、隣接するスリット19のうち他方のスリット19は、下段ハウジング部11の下面から上方に向けて上段ハウジング部13のコンタクト収容キャビティ15を貫通するように形成されている。
【0022】
そして、ハウジング10を構成する下段ハウジング部11及び上段ハウジング部13には、図2に示すように、リテーナ30が装着されるリテーナ装着孔40が形成されている。このリテーナ装着孔40は、図2乃至図12に示すように、上下2列のコンタクト収容キャビティ15間の第1空間41及び第1空間41に連通し上下2列のコンタクト収容キャビティ15に交差する第2空間42を有する。また、リテーナ装着孔40は、図2に示すように、ハウジング10の左側面に開口している。第1空間41は、図2、図3、図4及び図5に示すように、ハウジング20の前後方向に細長く延びて上壁41a及び上壁41aに対向する下壁41bと、後壁41cとにより画定され、前側は第2空間42に連通している。第2空間42は、図2、図3及び図12に示すように、上下方向に細長く延びて上下両端でコンタクト収容キャビティ15に連通している。
【0023】
ここで、第1空間41を画定する壁のうちの上壁41aには、図5及び図10に示すように、リテーナ30を本係止するための本係止用突起44が設けられている。また、第1空間41を画定する壁のうちの後側壁41cには、図4に示すように、ハウジング10の後端面に向けて貫通する貫通孔45が形成されている。図4及び図9に示すように、第1空間41と貫通孔45とが交差する後側壁41cの角縁は、リテーナ30を仮係止するための仮係止用角縁46とされる。
【0024】
次に、各コンタクト20は、図7及び図12に示すように、電線Wを圧着接続するための電線接続部21と、電線接続部21の前側に設けられた、接触部材57が接触する接触部22とを備えている。各コンタクト20は、金属板を打ち抜き及び曲げ加工することによって形成される。電線接続部21の前側の両側壁には、コンタクト20がコンタクト収容キャビティ15内に収容されたときに、当該コンタクト20をコンタクト収容キャビティ15の両側壁に対して一次係止するための1対の一次係止突起(一次係止手段)24が設けられている。また、電線接続部21の後端縁は、二次係止用のスタビライザ部23とされている。また、接触部22は、下側から接触部材57を受容可能な1対の弾性接触板で構成されている。
【0025】
更に、リテーナ30は、ハウジング10の左側面の開口からリテーナ装着孔40内に挿入されてハウジング10に装着される。リテーナ30は、図3乃至図7に示す仮係止位置と図8乃至図12に示す本係止位置の双方でハウジング10に係止される。リテーナ30は、ハウジング10のコンタクト収容キャビティ15内に収容されたコンタクト20の二次係止手段として機能する。リテーナ30は、図2に示すように、板状の基部31を備えている。基部31は、図4及び図9に示すように、前後方向に延びる前後延設部分31aとこの前後延設部分31aの前端から直角に右方向に延びる右延設部分31bとを備えた平面視でL字形に形成されている。リテーナ30は、図2(B)に示すように、基部31の右延設部分31bから下方(図2(B)では上方)に向けて突出形成された複数の下側二次係止突起33と、右延設部分31bから上方(図2(B)では下方)に立ち上がる起立壁32と、起立壁32から上方に向けて突出形成された複数の上側二次係止突起34とを具備している。下側二次係止突起33は、下側のコンタクト収容キャビティ15と同一ピッチで配置され、リテーナ30が本係止位置にあるときに図12に示すように下側のコンタクト収容キャビティ15内に収容されたコンタクト20を二次的に係止する。上側二次係止部材34は、上側のコンタクト収容キャビティ15と同一ピッチで配置され、リテーナ30が本係止位置にあるときに図12に示すように上側のコンタクト収容キャビティ15内に収容されたコンタクト20を二次的に係止する。下側二次係止突起33及び上側二次係止突起34は、右延設部分31bの延びる方向に沿って千鳥配置されている。
【0026】
また、リテーナ30は、図2、図4、図5、図9及び図10に示すように、本係止アーム35と、仮係止アーム37とを備えている。本係止アーム35は、基部31の前後延設部分31aの前後方向略中央部から右方に延び、弾性変形可能に形成されている。本係止アーム35の先端には、第1空間41の上壁41aに設けられた本係止用突起44に係止される本係止突起36が設けられている。また、仮係止アーム37は、基部31の前後延設部分31aの後縁から右方に延び、弾性変形可能に形成されている。仮係止アーム37の先端には、第1空間41の後側壁41cの仮係止用角縁46に係止される仮係止突起38が設けられている。本係止アーム35の撓む方向は上下方向となるように設定されている。その一方、仮係止アーム37の撓む方向は前後方向となるように設定されている。従って、本係止アーム35と仮係止アーム37の撓む方向は90°異なっている。リテーナ30は、絶縁性の樹脂を成形することによって形成される。
【0027】
次に、二重係止コネクタ1の組立方法について説明する。
先ず、ハウジング10のリテーナ装着孔40にハウジング10の左側面の開口からリテーナ30を挿入し、リテーナ30を図3乃至図7に示す仮係止位置に位置させる。この際に、リテーナ30の基部31のうちの左右延設部分31b、起立壁32、下側二次係止突起33、及び上側二次係止突起34はリテーナ装着孔40の第2空間42内に挿入される。また、リテーナ30の基部31のうちの前後延設部分31a、本係止アーム35及び仮係止アーム37は第1空間41内に挿入される。そして、仮係止突起38が、図4に示すように、仮係止用角縁46に係止される。仮係止突起38の仮係止動作について説明すると、リテーナ30の挿入初期に仮係止突起38が先ずハウジング10の左側面に当接する。リテーナ30の挿入が進行すると、仮係止突起38が第1空間41の後側壁41cに沿いつつ仮係止アーム37が前方に向けて撓む。さらにリテーナ30の挿入が進行すると、仮係止突起38が貫通孔45内に突出して仮係止アーム37が元の状態に復元し、仮係止突起38が、仮係止用角縁46に係止されるのである。このとき、本係止突起36は、図5に示すように、第1空間41内を進行するが、本係止用突起44に当接したところでその進行が止まる。
【0028】
次いで、リテーナ30が仮係止位置にあるときに、電線Wを接続した各コンタクト20をハウジング10の後側から各コンタクト収容キャビティ15内に挿入する。この際に、リテーナ30の下側二次係止部33及び上側二次係止部34は、図6に示すように、各コンタクト収容キャビティ15を塞ぐ位置にはないので、各コンタクト20はスムーズに各コンタクト収容キャビティ15内に挿入される。すると、各コンタクト20に設けた1対の一次係止突起24が当該コンタクト収容キャビティ15の両側壁に対して圧入され、各コンタクト20がハウジング10に一次係止される。
【0029】
最後に、リテーナ30を押し込んで図8乃至図12に示す本係止位置に位置させる。この際に、本係止突起36が、図10に示すように、本係止用突起44に係止される。本係止突起36の本係止動作について説明すると、リテーナ30が仮係止位置のときには、本係止突起36は本係止用突起44に当接しているが、リテーナ30を押し込むと、本係止突起36が本係止用突起44に沿いつつ本係止アーム35が下方に向けて撓む。さらにリテーナ30の挿入が進行すると、本係止突起36が本係止用突起44を乗り越えて本係止アーム35が元の状態に復元し、本係止突起36が、本係止用突起44に係止されるのである。
【0030】
リテーナ30が本係止位置に位置すると、リテーナ30の下側二次係止部33及び上側二次係止部34は、図11に示すように、各コンタクト収容キャビティ15を塞ぐ位置に位置する。これにより、図12に示すように、リテーナ30の下側二次係止部33及び上側二次係止部34のそれぞれは、上下2列のコンタクト収容キャビティ15内に収容された各コンタクト20のスタビライザ部23の後側を二次的に係止する。これにより、二重係止コネクタ1が完成する。
【0031】
本実施形態に係る二重係止コネクタ1によれば、ハウジング10には、上下2列のコンタクト収容キャビティ15間の第1空間41及び第1空間41に連通し上下2列のコンタクト収容キャビティ15に交差する第2空間42を有するとともにハウジング10の左側面に開口したリテーナ装着孔40が設けられている。そして、リテーナ30は、ハウジング10の左側面の開口からリテーナ装着孔40内に挿入される。このため、上下2列のコンタクト収容キャビティ15間にリテーナ30を配置できるため、コンタクト収容キャビティ15の狭ピッチ化を図ることができる。
【0032】
また、リテーナ30は、第1空間41を画定する壁のうちの上壁41aに設けられた本係止用突起44に係止される本係止突起36を有する本係止アーム35と、第1空間41を画定する壁のうちの第2空間42が設けられる側と反対側の壁(後側壁)41cの仮係止用角縁46に係止される仮係止突起38を有する仮係止アーム37とを備えている。このため、本係止アーム35と仮係止アーム36とを別個に備え、それぞれの係止アームを本係止専用と仮係止専用にすることでリテーナ30の仮係止及び本係止の強度を強くすることができる。
【0033】
さらに、本係止アーム35及び仮係止アーム37は弾性変形が可能であるから、仮係止及び本係止の際に仮係止及び本係止の際にそれら係止アームが容易に変形するため、リテーナ30の装着作業を容易にすることができる。
また、本係止アーム35と仮係止アーム37の撓む方向が90°異なっているので、リテーナ装着孔40の第1空間41内で本係止アーム35と仮係止アーム37とが撓み可能となり、共通の空間内で2つの本係止アーム35と仮係止アーム37とを使用でき、コンパクトな形状の二重係止コネクタ1とすることができる。
【0034】
そして、二重係止コネクタ1は、図13及び図14に示すように、相手接続体50に接続される。
この接続に際しては、先ず、図13に示すように、二重係止コネクタ1を後端側を下にした斜めにしてスリット19に相手接続体50の接触部材57を挿入しつつ、ハウジング10の後端部に設けた凸部18を相手接続体50の凸部係合用凹部56に係合させる。
【0035】
次いで、図14に示すように、二重係止コネクタ1を回転軸となる凸部18をほぼ中心に前端側を下方に向けて回転させて、ロック部16に設けたロック突起17を相手接続体50の第1起立部52の上方からロック部係止用凹部53内に入れ込んで係止させる。これにより、二重係止コネクタ1は相手接続体50に対して接続されるのである。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されずに種々の変更、改良を行うことができる。
【0036】
例えば、一次係止手段として一次係止突起24を各コンタクト20に設けてあるが、各コンタクト収容キャビティ15側に各コンタクトを係止する手段、たとえばハウジングランスを設けてもよく、あるいは各コンタクト20と各コンタクト収容キャビティ15の双方に設けてもよい。
また、リテーナ装着孔40は、ハウジング10の左側面に開口するようにしてあるが、ハウジング10の右側面に開口するようにしてもよい。
【0037】
更に、本係止突起36は第1空間41を画定する壁のうちの上壁41aに設けられた本係止用突起44に係止するようにしてあるが、下壁41bに設けられた本係止突起に係止するようにしてもよいし、上壁41a又は下壁41bに設けられた凹部に係止するようにしてもよい。
また、仮係止突起38は第1空間41を画定する壁のうちの後側壁41cの仮係止用角縁46に係止するようにしてあるが、当該後側壁41cに設けられた突起に係止するようしてもよい。また、仮係止突起38は後側壁41cに限らず、第2空間42が設けられる側と反対側の壁に係止されればよい。
更に、本係止アーム35及び仮係止アーム37の配置を入れ替えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る二重係止コネクタの実施形態を示し、(A)は正面斜め上方側から見た斜視図、(B)は背面斜め上方側から見た斜視図である。
【図2】二重係止コネクタからリテーナを分離した状態を示し、(A)は正面斜め上方側から見た斜視図、(B)は正面斜め下方側から見た斜視図である。
【図3】リテーナが仮係止位置にあるときの二重係止コネクタを示し、(A)は正面図、(B)は左側面図、(C)は背面図である。
【図4】図3(C)の4−4線に沿う断面図である。
【図5】図3(B)の5−5線に沿う断面図である。
【図6】図3(B)の6−6線に沿う断面図である。
【図7】図3(C)の7−7線に沿う断面図である。
【図8】リテーナが本係止位置にあるときの二重係止コネクタを示し、(A)は左側面図、(B)は背面図である。
【図9】図8(B)の9−9線に沿う断面図である。
【図10】図8(A)の10−10線に沿う断面図である。
【図11】図8(A)の11−11線に沿う断面図である。
【図12】図8(B)の12−12線に沿う断面図である。
【図13】二重係止コネクタを相手接続体に対して接続する途中の状態の断面図である。
【図14】二重係止コネクタを相手接続体に対して接続完了した状態の断面図である。
【図15】従来の二重係止コネクタの一部を切断した断面図であり、リテーナが仮係止位置にある状態を示している。
【図16】従来の二重係止コネクタの一部を切断した断面図であり、リテーナが本係止位置にある状態を示している。
【図17】図15及び図16に示す二重係止コネクタに用いられるハウジングの背面図である。
【図18】図15及び図16に示す二重係止コネクタに用いられるリテーナの背面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 二重係止コネクタ
10 ハウジング
15 コンタクト収容キャビティ
20 コンタクト
24 一次係止突起(一次係止手段)
30 リテーナ
35 本係止アーム(第1係止アーム)
36 本係止突起(係止突起)
37 仮係止アーム(第2係止アーム)
38 仮係止突起(係止突起)
40 リテーナ装着孔
41 第1空間
41a 上壁
41c 後側壁(側壁)
42 第2空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコンタクトと、各々が前記複数のコンタクトの各々を収容し、左右幅方向に沿って上下2列状に配置された複数のコンタクト収容キャビティを有するハウジングとを備え、前記コンタクトの各々及び/又は前記コンタクト収容キャビティの各々に設けられた一次係止手段と、前記ハウジングに装着され、前記複数のコンタクトの二次係止手段としてのリテーナとを備えた二重係止コネクタにおいて、
前記ハウジングには、前記上下2列のコンタクト収容キャビティ間の第1空間及び該第1空間に連通し前記上下2列のコンタクト収容キャビティに交差する第2空間を有するとともに前記ハウジングの側面に開口したリテーナ装着孔を設け、
前記リテーナは、前記ハウジングの側面の開口から前記リテーナ装着孔内に挿入されるとともに、前記第1空間を画定する上下の壁のうちの一方の壁に係止される係止突起を有する弾性変形可能な第1係止アームと、前記第1空間を画定する壁のうちの前記第2空間がある側と反対側の壁に係止される係止突起を有する弾性変形可能な第2係止アームとを備え、
前記第1係止アーム及び前記第2係止アームの一方が本係止アームであり且つ他方が仮係止アームであり、
前記本係止アームと前記仮係止アームの撓む方向が90°異なっていることを特徴とする二重係止コネクタ。
【請求項2】
前記上下2列状のコンタクト収容キャビティは、前記左右幅方向に沿って千鳥配置されていることを特徴とする請求項1記載の二重係止コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−123488(P2010−123488A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−297903(P2008−297903)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【出願人】(000227995)タイコエレクトロニクスジャパン合同会社 (340)
【Fターム(参考)】