説明

二重床の端部構造

【課題】集合住宅やオフィス、遊戯室等に使用される二重床に関し、施工品質の安定化、施工性の向上及び遮音性能の一層の向上を図る二重床の端部構造を提供する。
【解決手段】床下地材(1)及び仕上げ材(3)を有し、基盤(10)上に支持脚(4)を介して設置する二重床の端部と、基盤(10)より立ち上がる垂直部材(20)とを固定するための構造であって、床下地材(1)の縁部に先端片5aを下向きにした第1固定具(5)を固定し、垂直部材(20)には前記第1固定具に対向し、隙間を保って係止片6aを備えた第2固定具(6)を固定し、前記第1固定具(5)の先端片5aと第2固定具(6)の係止片6aとを嵌め合わせた二重床の端部構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二重床の端部と基盤の垂直部材とを固定する構造に関するものであり、特に言えば、集合住宅やオフィス及び遊戯室等に用いられる二重床端部の連結構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の連結構造は、垂直部材に際ネダを設置し、床部材を固定することで二重床の弾力性による床の沈み防止、これによる端部同士のこすれによる床なりの防止、更には木質床材の乾燥収縮による垂直部村との隙間発生の防止を図っていた。
【0003】
即ち、図10に示すように、二重床は、支持脚4が取り付けられた床下地材1の上に捨て板2及び仕上げ材3が積層された構造となっているが、基盤10上の垂直部材20に隣接する端部においては床下地材1が存在せず、際ネダ30の上に捨て板2及び仕上げ材3が積層され、捨て板2と際ネダ30との間が釘等で固定される(特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】特開2000−303665号公報
【0005】
しかしながら、際ネダを使用した端部構造では、際ネダ材料であるムク材の収縮によって際ネダが変形したりヤセたりすることがあり、二重床の設置後半年程で捨て板や仕上げ材と際ネダとの取り合い部間に問題が生ずる場合があった。即ち、二重床の沈み込み、これによる二重床と垂直部材との擦れによる床鳴り、二重床と垂直部材との隙間の発生等の問題が懸念されるのである。
【0006】
また、際ネダは生材を建築現場合わせで取り付けるため、取り付け精度が悪い場合や垂直部材との一体化の度合いにばらつきが多い場合があり、二重床の施工時に際ネダの取り付けをやり直すこともある。更に、際ネダの使用によって床衝撃音遮断性能に悪影響を与えることもある。
【0007】
そして、このような問題は、捨て板のない二重床でも存在する。即ち、図11に示すように、捨て板のない二重床の場合、支持脚4の上に受け材8が取り付けられ、この受け材8の上に床下地材1が配置されるが、端部では、床下地材1と際ネダ30との間が釘等で固定される。したがって、際ネダを使用する限り、上記の問題が発生するのである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、主に集合住宅やオフィス、遊戯室等に使用される二重床に関し、施工品質の安定化、施工性の向上及び遮音性能の一層の向上を図ることができる二重床の端部構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の要旨は、床下地材(1)及び仕上げ材(3)を有し、基盤(10)上に支持脚(4)を介して設置する二重床の端部と、基盤(10)より立ち上がる垂直部材(20)とを固定するための構造であって、床下地材(1)の縁部に隙間を保って先端片を下向きにした第1固定具(5)を固定し、垂直部材(20)には前記第1固定具(5)に対向し、隙間を保って先端片を上向きにした第2固定具(6)を固定し、前記第1固定具(5)の先端片と第2固定具(6)の先端片とを、好ましくは防振材(9)を挟んで嵌め合わせた二重床の端部構造に係るものである。
【0010】
そして、通常は床下地材(1)と仕上げ材(3)との間に捨て板(2)を介在させた二重床であり、これには、第1固定具(5)を取り付けるための切り欠き部を設けるのがよい。
【0011】
尚、防振材(9)を用いる場合には、第1固定具(5)の先端片の両面に介在させるのが最も好ましい構造である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の二重床の端部構造は、床下地材及び仕上げ材を有し、基盤上に支持脚を介して設置する二重床の端部と、基盤より立ち上がる垂直部材とを固定するための構造であり、先端片が下向きの第1固定具と、係止片を備えた第2固定具との先端片と係止片とを嵌め合わせる際に、好ましくは防振材を介して嵌め合わせた端部構造としたので、主に集合住宅やオフィス、遊戯室等に使用される二重床に関し、施工品質の安定化、施工性の向上及び遮音性能の一層の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は居住時に発生する床の振動を、床と垂直部材との防振構造により絶縁し遮音性能を向上させるものである。更に床の収縮による隙間の防止、床の端部の沈み防止及び床鳴りの防止機能を付加するものであって、具体的には、本発明の二重床は、床下地材及び仕上げ材を有し、基盤上に支持脚を介して設置されるものである。そして、この二重床の端部は、基盤より立ち上がる垂直部材に固定される端部構造に関するもので、第1固定具と第2固定具とを夫々床下地材と垂直部材との間をビス等で固定する。
【0014】
特に第1固定具における下向きの先端片と、第2固定具の係止片とを、好ましくは防振材を介して嵌め合わせる構造である。このように、本発明の二重床の端部構造は、従来の構造のような際ネダを使用しない構造であって、従って、木質生材である際ネダのような変形(狂い)がなく、位置決めが容易で、大工技能による品質のばらつきが少なく、しかも、施工後に床鳴り等の問題が発生することもないのである。
【0015】
第1及び第2固定具は金属製であっても樹脂製であってもよく、特に限定するものではない。場合によっては、これ自身が防振性を備えた性状のゴム製や樹脂製のものであってもよい。更には、固定具全体として一体型のものであってもよいが、部分的に別の材料にて構成される場合もあり、例えば、取り付け部は金属製或いは硬質の樹脂製であり、先端片は防振性を備えた比較的弾性のある樹脂材であってもよい。
【0016】
第1及び第2固定具の長さは、二重床の端部の全長と同一にすることもできるが、床下地材と垂直部材とを全面的に固定すると、床衝撃音遮断性能に悪影響を及ぼすことが懸念される。そこで、これらを二重床の端部に間隔をもって取り付け、部分的な設置にすることが好ましい。勿論、部分設置のほうが施工性もよく、防振効果上からも好ましい。
【0017】
第1及び第2固定具に挟まれて用いられる防振材はゴム弾性体や軟質樹脂材や樹脂発泡材が好んで用いられ、場合によっては織布或いは不織布も用いられる。勿論、これらの複合体であってもよく、例えば、内部に繊維層が埋設されたゴム弾性体であってもよい。尚、材質的には両者の先端片と係止片とに挟まれて使用に供された際、水平方向には硬く、垂直方向に柔らかな性状のものが望まれる。これらは、通常は予め第1或いは第2固定具の先端片或いは係止片に接着させておくのがよいが、非接着で嵌め込み式のものであってもよい。
【0018】
尚、床下地材と仕上げ材との間には、通常、捨て板を介在させるが、床下地材の上面に第1固定具を取り付けると、この部分には捨て板が配置できなくなる。従って、この場合には、床下地材の上面部分位置する第1固定具の取り付け部の厚さは、床下地材と仕上げ材との間に介在する捨て板の厚さ以下になるようにすることが好ましい。
【0019】
本発明の二重床の端部構造は捨て板がない床工法にも適用できるものであり、その場合は、床下地材に直接仕上げ材が固定されることとなるが、この場合にも、第1固定具が床の表面に露出しないようにすべきである。この場合、床下地材に、第1固定具の取り付け部に対して切欠きを設けるのが望ましい。
【0020】
床下地材の縁部に第1固定具が固定されるが、この固定部位は床下地材の縁部を切り欠き、この切り欠いた部位に固定する場合もあり、その固定される位置は特に限定されるものではない。
【実施例1】
【0021】
以下、本発明の好ましい実施の形態の具体例を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の二重床の端部構造の実施例1を示す主要部の縦断面図、図2はその斜視図、図3はその平面図である。図1に示すように、コンクリートの基盤10には木質材からなる垂直部材20が設置されている。そして、垂直部材20に沿って支持脚4が取り付けられた床下地材1が配置され、床下地材1の上に捨て板2及び仕上げ材3が順に積層されて二重床を構成している。
【0022】
このような二重床の端部は、垂直部材20に固定されることとなるが、図1及び図2に示す実施例1では、図4に示す金属製の断面L字形のアングル材(第1固定具)5が、床下地材1の上面にビス7にて固定される。かかる固定に際し、第1固定具5の下向きの先端片5aは床下地材1の縁部よりも間隔をもって固定される。この第1固定具5は図2に示すように床下地材1の縁部に一定のピッチで点設置された例であるが、これが床下地材1の縁部を全て覆うような長尺体としてもよいことは勿論である。そして、床下地材1の上面部分の第1固定具5の厚さは、捨て板2の厚さよりも薄くなっている。
【0023】
一方、垂直部材20には上記第1固定具5に対応して図4に示す金属製の断面Z字形のアングル材(第2固定具)6がビス7にて固定される。勿論、係止片6aは垂直部材20よりも間隔をもって立ち上がるようにされる。この第2固定具6の長さも第1固定具5にて説明したように長尺とされたものであってもよい。そして、両者の先端片5a、6aを嵌め合わせてなるものであり、この例では先端片5a、6a間に防振材9としてゴム弾性体9a、9bを挟んだ状態で嵌め合わせたものである。尚、ゴム弾性体9a、9bの形状は任意であり、この例では二枚のプレ−トをもって示した。
【0024】
本発明の二重床の端部構造の施工手順の一例を説明する。最初に、ビス7を用いて垂直部材20に第2固定具6を取り付けておく。次に、床下地材1に第1固定具5をビス7にて固定する。この例では、第1固定具5の先端片5aの両面にゴム弾性体9a、9bを接着させておき、第2固定具6の係止片6aと第1固定具5の下向きの先端片5aとの嵌め合わせて固定が完成するものである。その後、床下地材1の上に捨て板2を積層し、仕上げ材3を配置して二重床となる。符号2aは第1固定具5の取り付け部5aとの干渉を避けるために構成された切り欠き部である。
【0025】
尚、符号11は第1固定具5の浮き上がりを防止するために備えられた浮き抑えアングル材であり、この例では先端片5aの上部に好ましくは緩衝材11aを介してビス7にて垂直部材20に固定されたものである。これによって床の縁部の浮き上がりが阻止されることになる。
【実施例2】
【0026】
図5は、本発明の二重床の端部構造の実施例2を示す断面図であり、図6は各固定具の斜視図である。即ち、実施例2は前記した実施例1に対し第2固定部6を垂直方向にチャンネル構造としたものであり、溝部6bをなす部位が係止片6aを構成する。このように、第2固定部6は第1固定部5の先端片5aに対して溝部6bをなしていてもよく、この溝部6b内に嵌め合わされるものであってもよい。この例における第2固定部6は、その左右に伸びる翼片6c、6cをもって垂直部材20に固定することになる。
【0027】
図にあって、防振材9は第1固定具5の先端片5aの周囲を囲んだゴム弾性体よりなっており、図示しない型内に先端片5aをセットし、型内に充填した未加硫ゴムの加硫時の接着性を利用して一体化してある例である。
【0028】
この例でも分かるように、第1固定具5と第2固定具6とはその形状は多くの変形形状があり、例えば、この例で示した第2固定具6を第1固定具5として床下地材1の縁部に固定し、第1固定具5をその先端片5aを上向きとして第2固定具6として垂直部材20に固定するものであってもよい。
【実施例3】
【0029】
図7は、本発明の二重床の端部構造の実施例3を示す断面図である。即ち、この例では第1固定具5及び第2固定具6は前例のものを使用するが、第1固定具5の先端片5aには前例にて説明したように防振材9が加硫接着されており、防振材9の上部にテ−パ−部9Cを形成し、垂直部材20にビス等で固定している。即ち、垂直部材20に固定された防振材9C部が固定部材5の上方方向へ動きを抑制し、ここに床の浮き上がりを防止することができたものである。
【0030】
尚、防振材9は第1固定具5と加硫接着されていなくともよく、嵌め合わせた構造であってもよい。図8はこの防振材9の例を示したものであり、長尺の防振材9を例えば押出成形によって製造し、これを任意の長さに切断したものを用いることができる。
【0031】
この防振材9について更に説明すれば、9sは第1固定具5の先端片5aが横方向よりスライド挿入される隙間であり、9tは第2固定具6の係止片6aが差し込まれる隙間である。隙間9sに第1固定具5の先端片5aが挿入され、隙間9tに第2固定具6の係止片6aが差し込まれることにより防振材の機能が発揮されることになる。
【0032】
第3実施例における二重床の端部構造の施工手順の一例を説明する。先ず、所定位置にビス7を用いて垂直部材20に第2固定具6を取り付ける。次に、床下地材1に第1固定具5をビス7にて固定する。そして、第1固定具5の先端片5aを図8にて示した防振材9の隙間9s内にスライド装着した後、第2固定具6の溝部6b内にこれを嵌め込んでなるものである、そして、防振材9の頂部に垂直部材20に向けてビス7を打ち込んで固定する。その後、床下地材1の上に捨て板2を積層し、その縁部のテ−パ−部2bを接触させて仕上げ材3を配置して二重床としたものである。
【実施例4】
【0033】
以上の例にあって、場合によっては、第1固定具と防振材とは一体のものであってもよく、例えば、緩衝能を備えた硬質のゴム材にて製造されたものであってもよい。この場合には、特に防振材の使用は必要がなくなるというメリットがある。図9は第2実施例における第1固定具5と防振材9とを一体とした例である。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の二重床の端部構造は、第1及び第2の固定具5、6を嵌め込んで床下地材1と垂直部材20との間を固定するようにしたものであり、二重床の端部と、基盤の垂直部材20とを固定する構造に等幅広く利用することができる。特に、框との取り合い部、洋室・洗面所・トイレとの出入り口、キッチン・リビングとの出入り口、和室とリビングの出入り口、サッシュ前の取り合い部に優れた効果を発揮することになる。
【0035】
本発明の代表的な効果を例記する。
1)作業性の向上(木質生材のような変形(狂い)がない固定材のため、位置決めが容易で、大工技能による品質ばらつきが少ない)
2)施エ品質向上(木のヤセや狂いがないため、施工後の床鳴り等の問題発生がない) 3)床衝撃音性能の向上(防振材を介して連結されることにより、完全に絶縁されているため、従来の全長際ネダに比べ、約10dBの改善効果が得られる)
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は本発明の実施例1を示す主要部の縦断面図である。
【図2】図2は図1の斜視図である。
【図3】図3は図1の平面図である。
【図4】図4は実施例1の第1及び第2固定具の斜視図である。
【図5】図5は本発明の実施例2を示す断面図である。
【図6】図6は各固定具の斜視図である。
【図7】図7は本発明の実施例3を示す断面図である。
【図8】図8は防振材の一例を示す斜視図である。
【図9】図9は第2実施例における第1固定具と防振材との一体例である。
【図10】図10は従来の二重床構造を示す縦断面図である。
【図11】図11は従来の二重床構造を示す別例の縦断面図である。
【符号の説明】
【0037】
1‥‥床下地材、
2‥‥捨て板、
2a‥捨て板の切り欠き部、
2b‥捨て板のテ−パ−部、
3‥‥仕上げ材、
4‥‥支持脚、
5‥‥第1固定部、
5a‥第1固定部の先端片、
6‥‥第2固定部、
6a‥第2固定部の係止片、
6b‥溝、
6c‥翼部、
7‥‥固定ビス、
9、9a、9b‥防振材、
9s、9t‥防振材の隙間、
9c‥防振材のテ−パ−部、
11‥抑えアングル、
10‥基盤、
20‥垂直部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床下地材(1)及び仕上げ材(3)を有し、基盤(10)上に支持脚(4)を介して設置する二重床の端部と、基盤(10)より立ち上がる垂直部材(20)とを固定するための構造であって、床下地材(1)の縁部に先端片5aを下向きにした第1固定具(5)を固定し、垂直部材(20)には前記第1固定具に対向し、隙間を保って係止片6aを備えた第2固定具(6)を固定し、前記第1固定具(5)の先端片5aと第2固定具(6)の係止片6aとを嵌め合わせたことを特徴とする二重床の端部構造。
【請求項2】
前記第1固定具(5)の先端片5aと第2固定具(6)の係止片6aとは防振材(9)を挟んで嵌め合わせた請求項1記載の二重床の端部構造。
【請求項3】
床下地材(1)と仕上げ材(3)との間に捨て板(2)を介在させた請求項1又は2記載の二重床の端部構造。
【請求項4】
捨て板(2)に第1固定具(5)を取り付けるための切り欠き部を設けた請求項2乃至3いずれか1項に記載の二重床の端部構造。
【請求項5】
防振材(00)が第1固定具(5)の先端片5aの両面に介在する請求項1乃至4いずれか1項に記載の二重床の端部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−90035(P2006−90035A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−277700(P2004−277700)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】