説明

二重管式掘削装置およびその施工方法

【課題】軟弱地盤を掘削する場合であっても、ダウンザホールドリルのピストンの往復運動を確実に継続させることができる二重管式掘削装置およびその施工方法を提供する。
【解決手段】二重管式掘削装置1は、支柱47に案内されて昇降する掘削機本体(昇降ブロック60、傾動ブロック70、掘削駆動ブロック80)と、上端が掘削駆動ブロック80に連結され、下端にダウンザホールドリル100を介して二重掘削ビット3のインナービット10に設置された掘削管5と、上端がケーシング引き戻し機構200を介して掘削駆動ブロック80に連結され、下端がケーシングシュー6を介して二重掘削ビット3のアウタービット20に設置されたケーシング7とを有している。二重掘削ビット3が下降すると、ケーシング7はケーシング引き戻し機構200によって上方に引き戻されるから、ダウンザホールドリル100の打撃が継続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二重管式掘削装置およびその施工方法、特に、ダウンザホールドリルを具備する二重管式掘削装置およびその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、小石が混在する地層や、硬い地層等の難地層を掘削する際、掘削管(ドリルロッドに同じ)の先端にダウンザホールドリルを設置し、これによって掘削ドリルに打撃力を付与するものが知られている。また、掘削孔の壁が崩壊し易い場合や、コンクリート充填杭を設置する場合等、二重管式掘削装置による掘削が実施されていた。
そして、簡単な構造で掘進速度を高めることができる二重管式掘削装置として、アウタービット(リングビットに同じ)が接続されたケーシングと、ケーシング内に挿入され、インナービットおよびダウンザホールドリルが接続された掘削管と、から構成され、インナービットに付与された打撃力をアウタービットに伝達する打撃力伝達手段を備えたものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平8−312278号公報(第3−4頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1に開示された発明が有するダウンザホールドリルは、その内部に軸方向に進退(昇降)自在に配置されたピストンを有し、該ピストンの位置に応じて、前部チャンバー(フロントチャンバー)または後部チャンバー(リアチャンバー)に圧縮空気が流入し、以下の動作をするものであるため、以下の問題があった。
【0005】
(あ)すなわち、ピストンが前進限近くにまで前進(下降)しているとき、圧縮空気はピストンの後方(後部チャンバーが形成される前の空間)に流入し、ピストンの貫通孔(軸方向に形成されている)を通過して掘削ビットの通孔から削孔内に噴出する。
(い)そして、ピストンが僅かに後退(上昇)すると、圧縮空気が前部チャンバーに流入し、その圧力によってピストンは後退(上昇)する。
(う)そして、ピストンが所定位置まで後退(上昇)すると、圧縮空気の前部チャンバーへの流入は停止するものの、既に流入している圧縮空気の膨張やピストンの慣性によって、ピストンは後退(上昇)を続ける。
【0006】
(え)そして、ピストンの後方に後部チャンバーが形成されると、後部チャンバーに圧縮空気が流入すると共に、流入した圧縮空気はピストンの上昇によって、さらに高圧に圧縮されエネルギが蓄えられる。この間、前部チャンバーの圧縮空気は掘削ビットの通孔から削孔内に噴出する。
(お)やがて、後部チャンバー内の圧縮空気(高圧になっている)に押されて、ピストンの後退(上昇)が止まると同時に、今度は、ピストンは後部チャンバー内の圧縮空気の膨張によって急速に前進(下降)する。すなわち、ピストンは、大きなエネルギでもってインナービットを打撃し、前進限近くにまで前進(下降)する。
(か)そして、ピストンは、インナービットを打撃(地盤を打撃に同じ)することによって地盤を掘削するから、通常は、打撃の際の地盤反力によって、跳ね返されるため、該跳ね返りによって、前記(い)が実現して、ピストンは往復運動を継続するものである。
【0007】
ところが、該ダウンザホールドリルでは、以下の理由により前記(い)が実行されないため、掘削容易な軟弱地盤を掘削することができないという問題や、掘削中に軟弱地層に到達した場合、掘削を継続することができないという問題があった。
すなわち、軟弱地盤においては、ピストンがインナービットを打撃(地盤を打撃に同じ)しても、打撃の際の地盤反力が小さいから、ピストンの後退(上昇)量が不足する。このため、圧縮空気はピストンの後方に流入してピストンの貫通孔を通過して掘削ビットの通孔から削孔内に噴出するだけ(前記(あ)に同じ)であって、圧縮空気が前部チャンバーに流入することがない(前記(い)が実行されない)。特に、かかる現象は、ケーシングの外面と掘削孔の内面あるいは掘削孔に崩壊した土砂との摩擦が大きい場合に顕著になっていた。
【0008】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、軟弱地盤を掘削する場合であっても、ダウンザホールドリルのピストンの往復運動を確実に継続させることができる二重管式掘削装置およびその施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明に係る二重管式掘削装置の施工方法は、
掘削刃を具備するインナービットと、
前記インナービットに、掘削方向に向けた打撃力を付与するダウンザホールドリルと、
該ダウンザホールドリルに連結された掘削管と、
掘削刃を具備し、前記インナービットに付与された打撃力が伝達されるアウタービットと、
該アウタービットに連結されたケーシングと、
を有する二重管式掘削装置において、
前記ダウンザホールドリルに圧縮空気を供給して、前記インナビットおよびアウタービットに掘削方向に向けた打撃力を付与する工程と、
前記アウタービットに掘削方向とは反対方向の引き戻し力を付与する工程と、
を有することを特徴とする。
【0010】
(2)また、本発明に係る二重管式掘削装置は、
掘削刃を具備するインナービットと、
前記インナービットに、掘削方向に向けた打撃力を付与するダウンザホールドリルと、
該ダウンザホールドリルに下端部が連結された掘削管と、
掘削刃を具備し、前記インナービットに付与された打撃力が伝達されるアウタービットと、
該アウタービットに下端部が連結されたケーシングと、
前記掘削管の上端部と前記ケーシングの上端部とを連結する弾性部材と、
を有することを特徴とする。
【0011】
(3)また、掘削刃を具備するインナービットと、
前記インナービットに、掘削方向に向けた打撃力を付与するダウンザホールドリルと、
該ダウンザホールドリルに下端部が連結され掘削管と、
該掘削管に接続され、該掘削管を経由して前記ダウンザホールドリルに圧縮空気を供給する掘削機本体と、
掘削刃を具備し、前記インナービットに付与された打撃力が伝達されるアウタービットと、
該アウタービットに下端部が連結されたケーシングと、
前記掘削機本体と前記ケーシングの上端部とを連結する弾性部材と、
を有することを特徴とする。
【0012】
(4)さらに、前記(2)または(3)において、前記弾性部材が、前記ケーシングを掘削方向とは反対方向に付勢することを特徴とする。
(5)さらに、前記(3)または(4)において、前記掘削機本体が、前記圧縮空気の供給と共に、前記掘削管を経由して前記インナービットを回転するものであって、
前記アウタービットに、前記打撃力と共に前記インナービットの回転が伝達され、
前記ケーシングが前記アウタービットに周方向で回転自在に連結されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
(i)本発明に係る二重管式掘削装置の施工方法は、アウタービットに掘削方向とは反対方向の引き戻し力を付与する工程を有するから、アウタービットの引き戻しによってインナービットが引き戻され、これによって、ダウンザホールドリルのピストンが確実に後退(上昇)するため、ピストンの往復運動が継続し、軟弱地盤の掘削が可能になる。
(ii)また、本発明に係る二重管式掘削装置は、掘削管の上端部とケーシングの上端部とを連結する弾性部材を有するから、ダウンザホールドリルのピストンがインナービットを打撃した際は、弾性部材が伸びるから、インナービットおよびアウタービットによる掘削が実行され、さらに、打撃後は、弾性部材が元に戻るため、ケーシング(アウタービットに同じ)の後退(前進)によって、インナービットが引き戻され、これによって、ダウンザホールドリルのピストンが確実に後退(上昇)するため、ピストンの往復運動が継続し、軟弱地盤の掘削が可能になる。
【0014】
(iii)また、掘削機本体とケーシングの上端部とを連結する弾性部材を有するから、前記(ii)と同じ効果を奏する。
【0015】
(iv)さらに、弾性部材がケーシングを掘削方向とは反対方向に付勢するから、打撃後のダウンザホールドリルのピストンの後退(上昇)が、さらに確実になるため、ピストンの往復運動が継続し、軟弱地盤の掘削が可能になる。
(v)さらに、インナービットおよびアウタービットに、それぞれ打撃力および回転が伝達されるから、掘削能率が向上し、施工が迅速になる。このとき、ケーシングは回転しないから、掘削機本体は、インナービットおよびアウタービットを回転させるだけの動力を供給すればよく、それ以上の余計な動力を必要としない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(二重管式掘削装置)
図1は本発明の実施形態に係る二重管式掘削装置を模式的に示すものであって、(a)は正面図、(b)が側面図である。図1において、二重管式掘削装置1は、地面2に載置される基板ブロック30と、基板ブロック30に着脱自在に立設される支柱ブロック40と、支柱ブロック40に立設された支柱47の先端に設置されるシーブブロック50と、支柱ブロック40に立設された支柱47に案内されて昇降する昇降ブロック60と、昇降ブロック60に傾動自在に設置された傾動ブロック70と、支柱ブロック40に着脱自在に設置されたウインチブロック90と、を有している(以下、これらをまとめて「装置部材」と称する場合がある)。
【0017】
そして、傾動ブロック70には掘削駆動ブロック80が設置され、掘削駆動ブロック80を構成する掘削用油圧モータ84が掘削管5を回転すると共に、掘削駆動ブロック80を構成する圧空受入部86が掘削管5内に圧縮空気を供給している。
また、二重掘削ビット3は掘削管5に直接連結されたインナービット10と、インナービット10に着脱自在に設置されたアウタービット20とから構成されている。そして、アウタービット20にはケーシングシュー6が周方向には回転自在で、軸方向には拘束された状態で設置され、ケーシングシュー6にはケーシング7が連結されている。さらに、ケーシング7は、ケーシング引き戻し機構200によって上方向に引き戻されている(これについては別途詳細に説明する)。
なお、本発明は、傾動ブロック70の昇降機構を限定するものではなく、傾動ブロック70が直接支柱47に案内されるもの、すなわち、昇降ブロック60と一体になったものでもよく、支柱47は公知の掘削機のガイドシェルマストであってもよい。
【0018】
(掘削管)
図2は本発明の実施形態に係る二重管式掘削装置における掘削管を模式的に示す側面視の断面図である。図2において、掘削管5(ドリルロッドに同じ)の先端にダウンザホールドリル100および二重掘削ビット3が設置されている。
二重掘削ビット3は、ダウンザホールドリル100に連結されたインナービット10と、インナービット10に着脱自在に接合されたアウタービット20とから構成され、アウタービット20には、ケーシングシュー6を介してケーシング7が周方向で回転自在に連結されている。
【0019】
(ダウンザホールドリル)
ダウンザホールドリル100は公知のものであって、掘削管5に連結されたケース101と、ケース101内に配置され軸方向に往復運動をするピストン102と、同様に往復運動をするハンマー103と、所定の圧縮空気の流れを形成する各部材(図示しない)とを有している。ハンマー103はケース101から抜け出し不能であって、先端部(下端部)に二重掘削ビット3を構成するインナービット10が設置されている。
また、ハンマー103の外周にはスプラインが形成され、該スプラインがケース101の内周に形成されたスプラインと噛み合っているから、ケース101に付与された回転は、ハンマー103に伝達されることになる。なお、インナービット10を回転しないで掘削する場合には、前記スプラインの形成を省力して、ハンマー103がケース101に対して回転自在にしてもよい。
【0020】
(インナービット)
二重掘削ビット3を構成するインナービット10は、外周部11の前面(図中、下面)に近い範囲に外周側に突出した略円環状の打撃付与部12が設置され、打撃付与部12の前面(下側の斜面)が打撃付与面12aを形成し、打撃付与部12の後方(図中、上側)に軸方向の段差を有する回転付与部15(外周側に突出している)が設置され、回転付与部15の掘削時の回転方向側の側面が回転付与面15aを形成している。また、外周部11および打撃付与部12は、軸方向に設けられた4条の切欠溝14によって分断されている。
【0021】
(アウタービット)
一方、二重掘削ビット3を構成するアウタービット20は、前面に近い範囲に内周側に突出した略円環状の打撃受け部22が設置され、打撃受け部22の内周側の後面(上側の斜面)が打撃受け面22aを形成している。また、打撃受け部22の後方に軸方向の段差からなる回転受け部25(内周側に突出している)が設置され、回転受け部25の掘削時の回転方向とは反対の側面が回転受け面25aを形成している。さらに、アウタービット20外周面に円環状の外周溝24が形成されている。
【0022】
(二重掘削ビット)
したがって、インナービット10をアウタービット20に装着すると、インナービット10に付与された軸方向の打撃力(ダウンザホールドリル100のピストン102の下降によってハンマー103を経由して付与される)は、当接する打撃付与面12aおよび打撃受け面22aを介してアウタービット20に伝達される。
また、インナービット10に付与された円周方向の回転(掘削駆動ブロック80によって掘削管5を経由して付与される)は、当接する回転付与面15aおよび回転受け面22aを介してアウタービット20に伝達される。
【0023】
なお、インナービット10は、掘削孔の底に押し付けながら(上方向に持ち上がる力を受けながら)、掘削時の回転方向とは反対の方向に回転すると、インナービット10の切欠溝14にアウタービット20の回転受け部25が侵入するようになっている。したがって、該侵入状態で、インナービット10を引き戻せば(掘削管5の引き戻しに同じ)、インナービット10はアウタービット20とから分離し、インナービット10を地上に回収することができるものである(詳細は、特願2003−387381号公報参照)。
【0024】
(ケーシングシュー)
ケーシングシュー6の内面には円環状の内周溝6aが形成され、内周溝6aとアウタービット20の外周溝24とが形成する円環状の空間に、C字状の弾性部材6bが配置されている。すなわち、弾性部材6bによって、ケーシングシュー6はアウタービット20に対して、軸方向には拘束され、円周方向には回転自在に連結されている。
【0025】
(掘削駆動ブロック)
図3は本発明の実施形態に係る二重管式掘削装置における掘削駆動ブロックを模式的に示すものであって、(a)は側面図、(b)は正面図、(c)は裏面図である。図3において、掘削駆動ブロック80は傾動ブロック70に設置され、傾動ブロック70は昇降ブロック60に傾動自在に設置されるものである(これについては別途詳細に説明する)。また、傾動ブロック70にはケーシング引き戻し機構200が設置されている(掘削駆動ブロック80に設置されているに同じ)。
なお、本発明において、掘削駆動ブロック80と傾動ブロック70とを一体にしたものが「掘削機本体」に相当している。また、傾動ブロック70と昇降ブロック60とが一体化している場合(傾動ブロック70が昇降ブロック60に対して傾動しない場合)には、掘削駆動ブロック80と傾動ブロック70と昇降ブロック60とを一体にしたものが、「掘削機本体」に相当する。
【0026】
掘削駆動ブロック80は、掘削管5を接続するための掘削管接続部81と、掘削管接続部81を回転駆動する掘削用油圧モータ84と、掘削管5に供給する圧縮空気(正確には、ダウンザホールドリル100に供給して、インナービット10に形成された通孔から掘削孔中に噴出する圧縮空気)を受け入れる圧空受入部86と、を有している。
掘削管接続部81は断面6角形の止まり孔であって、抜け防止ピン(図示しない)が打ち込まれる抜け防止孔82が形成されている。なお、掘削管5の端部が断面6角形の柱状に形成されていない場合、たとえば、断面4角形の場合には、掘削管接続部81の止まり孔もまた、断面6角形でなく、断面4角形に形成されることになる。
【0027】
圧空受入部86は、圧縮空気を受け入れて回転する掘削管接続部81に圧縮空気を送りこむ筒状であって、外面には圧空ホース(図示しない)を接続するため圧空継手87が突出している。
掘削用油圧モータ84は公知の型式であって、外面には油圧ホース(図示しない)を接続するため油圧継手85が突出している。なお、掘削管5を回転しないで掘削する場合には、掘削用油圧モータ84は撤去されるものである。
ケーシング引き戻し機構200は、傾動ブロック70のフランジ76に設置される引き戻し棒210と、引き戻し棒210に案内されて移動(昇降)する引き戻し体220と、引き戻し体220をケーシング7に連結する引き戻しボルト230とを有している。
【0028】
(ケーシング引き戻し機構)
図4〜図7は本発明の実施形態に係る二重管式掘削装置におけるケーシング引き戻し機構を模式的に示す、図4は第1形式(傾動ブロック・半円筒・ねじ設置式)の一部断面の側面図、図5は第2形式(傾動ブロック・半円筒・ピン設置式)の一部断面の側面図等、図6は第3形式(傾動ブロック・棒・挿入式)の一部断面の側面図、図7は第4形式(掘削管・棒・挿入式)の斜視図である。
【0029】
(第1形式:傾動ブロック・半円筒・ねじ設置式)
図4および図3において、引き戻し棒210の後端にフランジ211が設置され、フランジ211が傾動ブロック70のフランジ76に固定(溶接接合)されている。なお、かかる固定の要領は限定するものではなく、フランジ211および傾動ブロック70のフランジ76にそれぞれ貫通孔を形成してボルト/ナットによって機械的に接合してもよいし、フランジ211が傾動ブロック70のフランジ76に係合(把持)するようにしてもよい。
【0030】
引き戻し棒210は上コイルスプリング212と下コイルスプリング213とを貫通し、引き戻し棒210の先端には引き戻しねじ215が形成されている。したがって、引き戻しねじ215に引き戻しナット214を螺合して、これを締め込むことによって、上コイルスプリング212と下コイルスプリング213とは所定の圧縮力で挟圧される。なお、引き戻し棒210には所定の段差が形成され、該段差および上コイルスプリング212に当接する座金と、下コイルスプリング213およびナット214に当接する座金が配置されている。なお、後記するように、下コイルスプリング213の設置を省略して、上コイルスプリング212のみを設置してもよい。
【0031】
引き戻し体220は、半円筒部221と、半円筒部221の平面視で対角位置から側面視で軸方向の上側に突出した引き戻しアーム222と、引き戻しアーム222の平面視で外側(半円筒部221の半径方向に同じ)に突出した一対の引き戻しフランジ223と、を有している。
引き戻しフランジ223には引き戻し貫通孔224が形成され、引き戻し貫通孔224に引き戻し棒210が貫通している。このとき、引き戻しフランジ223の両側(上下)に、上コイルスプリング212と下コイルスプリング213とが配置されているから、両者によって引き戻しフランジ223は所定の力で挟圧されている。なお、引き戻しフランジ223の両面に、上コイルスプリング212および下コイルスプリング213に当接する座金を配置してもよい。
【0032】
また、引き戻し体220の半円筒部221には、平面視における対角位置に引き戻しねじ孔225が形成され、引き戻しねじ孔225には引き戻しボルト230が螺合している。
引き戻しボルト230は、引き戻しねじ孔225に螺合するボルトねじ部232と、ケーシング7に形成されているケーシング孔7aに侵入するケーシング孔侵入部233とを有している。なお、引き戻しボルト230として、六角柱状のボルト頭部231を図示しているが、かかる六角ボルトに替えて、六角穴付きボルトであってもよい。
【0033】
(第2形式:傾動ブロック・半円筒・ピン設置式)
図5の(a)は一部断面の側面図、(b)は一部断面の平面図、(c)は抜け止めクリップを示す正面図である。図5において、ケーシング引き戻し機構200bは、ネジ機構(引き戻し機構200)に替えて、ピン機構によってケーシング7に接続されるものである。
すなわち、半円筒部221bの平面視における対角位置に引き戻しピン孔226が形成され、半円筒部221bの外面には、引き戻しピン孔226に連通する円筒突起ピン孔241を具備する円筒突起240が設置されている。また、円筒突起240には、円筒突起240の中心軸に垂直で中心軸を通過する円筒突起横孔242が形成されている。
【0034】
引き戻しピン250は、ケーシング孔7aと引き戻しピン孔226と円筒突起ピン孔241とに侵入自在な外径を具備するピン円筒部251と、ピン円筒部251の中心軸に垂直で中心軸を通過するピン横孔252と、ピン円筒部251の一方の端部に設けられたリング状のピン掴み部253とを具備している。
抜け防止クリップ260は、直線状の挿入部261と、半円状に曲げられた把持部262と、挿入部の先端に対して略V字状に開いた呼び込み部263とを具備している(図5の(c)参照)。
【0035】
したがって、ケーシング孔7aと、引き戻しピン孔226(円筒突起ピン孔241に同じ)との位相を合わせて、引き戻しピン250を、円筒突起ピン孔241と、引き戻しピン孔226と、ケーシング孔7aと、を貫通するように設置すれば、ケーシング7とケーシング引き戻し機構200bとを連結することができる。
さらに、引き戻しピン250のピン横孔251と円筒突起240の円筒突起横孔242との位相を合わせ、ここに抜け防止クリップ260の挿入部261を挿入すれば、引き戻しピン250が抜け出すことがない。
【0036】
すなわち、抜け防止クリップ260の挿入部261の先端を円筒突起横孔242に挿入して、呼び込み部263を円筒突起240の外面に押し当てて押し込めば、呼び込み部263は弾性変形をして広がり、挿入部261はピン横孔251と円筒突起横孔242とを貫通する。このとき、呼び込み部263は一旦広がった後、元の形状に復元するから、把持部262が円筒突起240の外面を把持することになる。
そして、呼び込み部263を再度広げない限り、抜け防止クリップ260は抜け出すことがないから、引き戻しピン250も、抜け出すことがない。
【0037】
(第3形式:傾動ブロック・棒・挿入式)
図6において、ケーシング引き戻し機構200cでは、傾動ブロック70のフランジ76に貫通穴76aが形成されている。そして、引き戻し棒310は、下コイルスプリング213と、フランジ76に貫通穴76aと、上コイルスプリング212とを貫通し、引き戻し棒310の先端には引き戻しねじ315が形成されている。したがって、引き戻しねじ315に引き戻しナット314を螺合して、これを締め込むことによって、傾動ブロック70のフランジ76は、上コイルスプリング212と下コイルスプリング213とによって所定の圧縮力で挟圧される。なお、後記するように、下コイルスプリング213の設置を省略して、上コイルスプリング212のみを設置してもよい。
【0038】
さらに、引き戻し棒310の下端部には、引き戻し棒310の軸方向に対して垂直に屈曲したケーシング孔侵入部330が形成され、ケーシング孔侵入部330がケーシング7の上端部に形成されたがケーシング孔7aに侵入している。
なお、引き戻し棒310は2本に限定するものではなく、3本以上であってもよい。また、複数の引き戻し棒310同士の間隔が広がらないよう、広がり防止のリングを装着したり、相互に縛着したりしてもよい。
さらに、図6は、ケーシング孔侵入部330がケーシング7の外側から侵入しているが、本発明はこれに限定するものではなく、ケーシング7の内側から外側に向けてケーシング孔7aに侵入してもよい。このとき、引き戻し棒310は、掘削駆動ブロック80の掘削管接続部81と干渉しないよう、屈曲(キンク)させることになる。
【0039】
(第4形式:掘削管・棒・挿入式)
図7において、ケーシング引き戻し機構200、200b、200c(第1、2、3形式)では引き戻し棒210が傾動ブロック70に設置されているのに対し、ケーシング引き戻し機構200d(第4形式)では、引き戻し棒430が掘削管5に設置されている。すなわち、掘削管5の上端部に、貫通穴502が形成された掘削管フランジ501が固定され、引き戻し棒430が貫通穴502を貫通している。
【0040】
すなわち、引き戻し棒310は上コイルスプリング212と、掘削管フランジ501の貫通穴502と、下コイルスプリング213とを貫通し、引き戻し棒310の先端には引き戻しねじ315が形成されている。したがって、引き戻しねじ315に引き戻しナット314を螺合して、これを締め込むことによって、掘削管フランジ501は、上コイルスプリング212と下コイルスプリング213とによって所定の圧縮力で挟圧される。なお、後記するように、下コイルスプリング213の設置を省略して、上コイルスプリング212のみを設置してもよい。
【0041】
さらに、引き戻し棒310の下端部には、引き戻し棒310の軸方向に対して垂直に屈曲したケーシング孔侵入部330が形成され、ケーシング孔侵入部330がケーシング7の上端部に形成されたケーシング孔7aに侵入している。
なお、図7において、ケーシング孔侵入部330がケーシング7の内側から外側に向けてケーシング孔7aに侵入しているため、掘削管フランジ501の外径がケーシング7の外径程度に小さくなっているが、本発明はこれに限定するものはなく、外側から内側に向けてケーシング孔7aに侵入してもよい。さらに、前記第1形式に準じ、引き戻し棒310の下端部に引き戻しねじ孔225を形成して、引き戻しねじ孔225に螺合する引き戻しボルト230によって、引き戻し棒310とケーシング7とを連結してもよい。さらに、引き戻し棒310は2本に限定するものではなく、3本以上であってもよい。また、複数の引き戻し棒310同士の間隔が変わらないよう、前記挿入後に相互の位置を拘束する拘束手段を設けてもよい。
【0042】
(施工方法)
二重管式掘削装置1は、以上の構成であるから、公知のダウンザホールドリルを用いた施工方法と同様の要領で地盤に掘削孔を形成することができる。
[工程1]すなわち、インナービット10およびダウンザホールドリル100が設置された掘削管5とアウタービット20がケーシングシュー6を介して設置されたケーシング7とを、インナービット10とアウタービット20とを着脱自在に連結することによって一体にする。
[工程2]そして、掘削管5を掘削駆動ブロック80の掘削管接続部81に接続する。
[工程3]また、ケーシング7をケーシング引き戻し機構200を介し傾動ブロック70(掘削駆動ブロック80に同じ)に連結する。すなわち、ケーシング7は傾動ブロック70(掘削駆動ブロック80に同じ)に弾性的に移動自在に連結されたことになるから、ケーシング7に軸方向の荷重が付与された際には、上コイルスプリング212および下コイルスプリング213の伸縮によって軸方向に移動し、反対に、ケーシング7に付与された軸方向の荷重が除去された際には、上コイルスプリング212および下コイルスプリング213の復元によって元の位置に戻ることになる。
【0043】
[工程4]そして、かかる一体になった掘削管5とケーシング7とを、掘削孔を形成する位置に、鉛直または所定の傾斜した角度に配置する。
[工程5]そして、通常の掘削と同様に、ダウンザホールドリル100に圧縮空気を送ると共に、掘削管5を回転する。そうすると、ダウンザホールドリル100のピストン102は、インナービット10に連結されたハンマー103を打撃する。また、掘削管5の回転はダウンザホールドリル100のケース101を経由してインナービット10に伝達される。そして、アウタービット20とインナービット10とは一体的に組み合わせているから、かかる両者(二重掘削ビット3に同じ)の打撃と回転によって掘削が実行されることになる。
【0044】
このとき、ケーシング7はケーシング引き戻し機構200を介し傾動ブロック70(掘削駆動ブロック80に同じ)に連結されているから、二重掘削ビット3は、掘削方向(たとえば、下方)に向けて打撃された後、上コイルスプリング212および下コイルスプリング213が元の位置に戻ろうとする復元力によって、掘削方向とは反対の方向(たとえば、上方)に引き戻されることになる。すなわち、ケーシング7の引き戻しによって、ケーシング7が設置されている二重掘削ビット3を介して、ダウンザホールドリル100のハンマー103およびピストン102も又、引き戻されることになる。
【0045】
したがって、掘削地盤が軟弱であって、地盤を打撃した際の反発力が小さいため、該反発力だけでは、ピストン102が所定の位置に戻らない場合であっても、上コイルスプリング212および下コイルスプリング213の前記復元力によって、ピストン102が所定の位置に戻るから、ピストン102の往復運動の条件が形成され、ハンマー103の繰り返し打撃が継続実行されることになる。
【0046】
すなわち、硬質層の間に軟弱層が介在するような地盤を掘削する場合であっても、軟弱層を二重掘削ビット3の打撃と回転の両方でもって掘削することができるから、高い掘削能率が維持され、施工の迅速化が図られる。さらに、従来はダウンザホールドリル100を用いることが困難であった軟弱地盤に対しても、本発明によるとダウンザホールドリル100を用いることが可能になるから、前記理由により施工の迅速化を図ることができる。
また、地盤を打撃した際に相当の反発力があるものの、掘削孔の壁面とケーシング7の外面との間に相当大きさの摺動抵抗がある場合であっても、前記同様に、ピストン102が前記復元力によって所定の位置に戻るから、ハンマー103の繰り返し打撃が継続実行されることになる。すなわち、掘削孔の壁面が崩壊し易い地盤においても、ダウンザホールドリル100を用いることが可能になるから、前記理由により施工の迅速化が図られる。
【0047】
なお、前記復元力の大きさは、主に上コイルスプリング212の弾性係数によって決定されるものであるから、下コイルスプリング213の設置を省略して、上コイルスプリング212のみを設置しても前記効果を得ることができる。また、前記復元力を発生する機構は、コイルスプリングに限定するものはなく、その他の弾性体(たとえば、アコーディオン状の板バネ、ウレタン等の合成樹脂等)を設置してもよく、また、引き戻し棒210自体を弾性構造(たとえば、コイルバネその物、略く字状に曲げた板材、ウレタン棒等)にしてもよい。
【0048】
さらに、以上は、二重掘削ビット3に打撃と回転の両方を付与するものについて説明しているが、本発明はこれに限定するものではなく、ダウンザホールドリル100によって打撃のみを付与し、二重掘削ビット3を回転しないものであってもよい。このとき、掘削駆動ブロック80の掘削用油圧モータ84は不要になると共に、ダウンザホールドリル100のケース101およびハンマー103に形成されたスプラインも不要になるから、掘削用油圧モータ84を停止したりあるいは撤去したり、また、前記スプラインを撤去したりしてもよい。また、二重掘削ビットは、アウタービットがインナービットに対して周方向で回転不能であってもよい。
【0049】
[工程6]そして、通常の深さの掘削孔が形成されたところで掘削を終了する。すなわち、前記圧縮空気の供給と回転の付与を停止する。そして、掘削管5を掘削時とは反対の方向に回転して、インナービット10とアウタービット20との連結(組み合わせ)を解除して、両者を分離し、さらに、掘削管5(インナービット10およびダウンザホールドリル100が設置されている)を地上に回収する。
[工程7]さらに、ケーシング7については、施工の目的に応じて、たとえば、そのまま地盤内に残置されたり、内部にモルタルが注入されたまま地盤内に残置されたり、あるいは、内部にモルタルが注入された後、地上に回収されたりする。
【0050】
以下、再び、図1の(b)を参照して、二重管式掘削装置1を構成するその他の部材について簡単に説明する。
【0051】
(基板ブロック)
再び、図1の(b)において、基板ブロック30は、下面が平面を形成する枠体31と、枠体31に設置され、支柱ブロックを着脱自在に設置するため支柱ブロック設置部32と、基板ブロック30が地面2に載置された際、その移動や浮き上がりを防止するためのペグ(図示しない)が貫通する貫通孔(図示しない)と、を有している。
【0052】
(支柱ブロック)
支柱ブロック40は基板ブロック30に着脱自在に設置されるものであって、支柱ブロックベース41と、支柱ブロックベース41の上面に固定された支柱立設部42と、ケーシング7を軸方向に移動自在で、軸方向と垂直方向には拘束するケーシング案内部43と、を有している。
支柱立設部42は支柱47を支柱ブロックベース41に対して垂直または所定の角度に保持するものであって、たとえば、支柱47が複数の鋼管によって形成される場合には、支柱立設部42は、該複数の鋼管が挿入自在な鋼管になる。
また、ケーシング案内部43はケーシング7が貫通自在な円筒状である。なお、ケーシング7の貫通を容易にするため、一対の断面半円状の部材から構成し、一方を支柱ブロックベース41に固定し、該固定したものに他方を開閉自在に取り付けてもよい。
【0053】
(シーブブロック)
シーブブロック50は、シーブ51と、シーブ51を回転自在に支持するシーブ軸52と、シーブカバー53と、支柱47の先端に設置するためのシーブブロック設置部(図示しない)と、を有している。
シーブブロック設置部は、たとえば、支柱47が鋼管によって形成されている場合には、該鋼管が挿入自在な止まり穴である。
【0054】
(ウインチ)
ウインチブロック90は、支柱ブロック40に着脱自在に設置されるものであって、支持板91と、支持板91に設置された昇降用油圧モータ92と、昇降用油圧モータ92によって回転される巻き取りドラム93、巻き取りドラム93に巻き取られる昇降用ワイヤ(図示しない)と、を有している。
【0055】
(昇降ブロック)
昇降ブロック60は、それぞれ中央に貫通孔(以下「傾動孔」と称す)61が形成された一対の昇降板62と、一対の昇降板62を繋ぐ案内部63と、を具備している。一対の傾動孔61は同軸であって、傾動ブロック70に設置された傾動軸71が回動自在に侵入するものである。
なお、傾動ブロック70に、傾動軸71に替えて貫通孔が形成された場合には、昇降ブロック60には、傾動孔61に替えて前記貫通孔に摺動自在に侵入する軸が設置されることになる。
【0056】
案内部63は支柱47に係止するものであって、たとえば、支柱47が1本の鋼管によって形成される場合には、該鋼管が貫通する円筒ないし断面C字状体であり、支柱47が複数の鋼管によって形成される場合には、該複数の鋼管の何れかに係止する複数の円筒ないし断面C字状体である。さらに、昇降ブロック60には、ハンドリングのため、および支柱47の立設作業を容易にするための把手66が設置されている。
【0057】
(傾動ブロック)
傾動ブロック70は傾動軸71および傾動板74を有し、傾動軸71を介して昇降ブロック60に着脱自在かつ傾動自在に取り付けられ、傾動板74に掘削駆動ブロック80が固定されるものである。
傾動軸71は先端に抜け防止孔72が形成された円柱であって、昇降ブロック60に設けられた傾動孔61に挿入されるものである。すなわち、傾動軸71が傾動孔61を貫通した状態で、抜け防止孔72に抜け防止ピン73が打ち込まれることによって、傾動軸71は昇降ブロック60の傾動孔61から抜け出し不能になり、傾動ブロック70は昇降ブロック60に対して傾動(回動に同じ)自在になる。
【0058】
なお、傾動軸71は傾動孔61に摺動するものであるから、傾動軸71の外周に油溝を設けたり、軸受を設置したりしてもよい。また、円柱(丸棒)に替えて鋼管によって形成してもよい。また、昇降ブロック60に、傾動孔61に替えて貫通軸が形成された場合には、傾動ブロック70には、傾動軸71に替えて前記貫通軸が摺動自在に侵入する孔が設置されることになる。そして、傾動板74は矩形板であって、昇降用ワイヤ(図示しない)を接続するためのワイヤ設置用孔75が形成されている。
【0059】
さらに、傾動板74の両側縁に沿って一対のフランジ76が固定され、一対のフランジ76にはカウンタウエイト用アーム78を取り付けるためのアーム取り付け板77が固定され、アーム取り付け板77に、掘削駆動ブロック80の掘削管接続部81とは反対の方向に伸びる略コ字状のカウンタウエイト用アーム78が設置されている。さらに、カウンタウエイト用アーム78には掘削管接続部81とは反対の方向に伸びるカウンタウエイト用ネジ棒79が固定されている。
【0060】
したがって、カウンタウエイト用ネジ棒79にカウンタウエイト89を串刺し状に設置して、ナットによって固定することができるから、掘削中の掘削管の浮き上がり防止を図ることができる。また、掘削駆動ブロック80に掘削管が設置された際、傾動ブロック70はカウンタウエイト(図示しない)によって重量バランスがとれるから、昇降ブロック60を引き上げる際、掘削管の先端(掘削ビットが設置されている)が地面2を押し付ける力が弱まるため、引き上げが容易になる。
【0061】
(掘削位置への配置方法)
図8は本発明の実施形態に係る二重管式掘削装置を掘削位置に配置する配置方法の例を模式的に示す側面図であって、複数の工程を1図にまとめて示している。すなわち、前記工程4を詳細に説明するものである。すなわち、掘削管(図示しない)およびケーシング7の先端に二重掘削ビット3が設置され、掘削孔中にケーシング7を残置する場合について説明する。なお、一部(油圧ホース、圧空ホース、昇降用ワイヤ等)の記載を省略している。
【0062】
[工程4の1]まず、掘削孔を形成(ケーシング7を設置に同じ)する予定位置に基板ブロック30を載置して、ペグ(図示しない)によって地盤に固定する。
[工程4の2]基板ブロック30に支柱ブロック40を設置する。
[工程4の3]支柱ブロック40にウインチブロック90を設置する。すなわち、ウインチブロック90を支柱ブロック40を介して基板ブロック30に着脱自在に設置する。
[工程4の4]昇降ブロック60を案内した状態で、支柱47を支柱立設部42に設置する。このとき、あらかじめ支柱47の先端にシーブブロック50(昇降用ワイヤがシーブ51に係止した状態で、シーブカバー53が設置されている)が設置されている。
【0063】
[工程4の5]昇降ブロック60(支柱47に案内されている)に傾動ブロック70(掘削駆動ブロック80に同じ)を傾動自在に設置する。すなわち、昇降ブロック60の傾動孔61に、傾動ブロック70の傾動軸71を挿入し、昇降板62を貫通した状態で、抜け防止孔72に抜け防止ピン73を打ち込む。このとき、掘削駆動ブロック80が略水平になるようにする。そして、傾動板74のワイヤ設置用孔75に昇降用ワイヤ(図示しない)を接続する。
【0064】
[工程4の6]そこで、掘削管5を掘削駆動ブロック80に連結する。該連結は、掘削管5の端部を掘削管接続部81に挿入し、抜け防止孔82に抜け防止ピン(図示しない)を打ち込むものであって、掘削駆動ブロック80(傾動ブロック70に同じ)が地上に近い位置において略水平になっているから、地上において実行することができ、容易かつ迅速に実行される。このとき、掘削管5とダウンザホールドリル100とインナービット10との一体物が、ケーシング7とケーシングシュー6とアウタービット20との一体物の内部にあらかじめ挿入され、インナービット10とアウタービット20とが結合し(組み合わされ)、二重掘削ビット3が組み立てられている。
【0065】
[工程4の7]さらに、ケーシング7の上端部と掘削駆動ブロック80とを、ケーシング引き戻し機構200を介して連結する。このとき、掘削駆動ブロック80(傾動ブロック70に同じ)が地上に近い位置において略水平になっているから、該連結作業を地上において実行することができるから、作業は容易かつ迅速になる。
【0066】
[工程4の8]油圧ホースおよび圧空ホースをそれぞれ接続する。
[工程4の9]昇降用ワイヤを巻き上げることによって、掘削機本体(昇降ブロック60と傾動ブロック70と掘削駆動ブロック80とから形成されている)を引き上げる。このとき、当初、略水平であったケーシング7は後端部が引き上げられて、除々に起立し、やがて、支柱47と平行になる(たとえば、鉛直になる)。
[工程4の10]ケーシング7が支柱47と平行になったところで、昇降用ワイヤの巻き上げを停止し、ケーシング7の下端部を、支柱ブロック40に設置されているケーシング案内部43内に挿入する。
【0067】
以上は、支柱47がそれぞれ施工現場において組み立てられ、掘削機本体が複数のブロックによって形成されているから、装置全体が簡素であって、施工現場への搬送が容易である。したがって、たとえば、傾斜地の上部における施工に好適である。
なお、本発明の二重管式掘削装置は、前記のような組み立て式の支柱に設置されるものに限定するものではなく、公知の掘削機のガイドシェルマストに設置されてもよい。
また、掘削駆動ブロック80は、支柱に対して傾動するものに限定するものではなく、傾動しないもの、すなわち、支柱(あるいは、公知の掘削機のガイドシェルマスト)に平行の姿勢を維持したまま昇降するものであってもよい。このとき、掘削管5と掘削機本体(掘削駆動ブロック80に同じ)との連結、およびケーシング7とケーシング引き戻し機構200との連結は、掘削管5およびケーシング7を立設した後で、高い位置(たとえば、地上から所定の高さだけ高い位置に設置されたスタンド上)で実行されることになる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、掘削地盤の性質に関わらずダウンザホールドリルのピストンの往復運動を確実に継続させることができるから、たとえば、硬質地盤、掘削孔の壁面が崩壊し易い地盤、軟質層が介在する硬質地盤、あるいは、軟質地盤等、各種地盤に掘削孔を形成する二重管式掘削装置およびその施工方法として広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の実施形態に係る二重管式掘削装置を模式的に示すものであって、(a)は正面図、(b)が側面図。
【図2】図1に示す二重管式掘削装置における掘削管を模式的に示す側面視の断面図。
【図3】図1に示す二重管式掘削装置における掘削駆動ブロックを模式的に示すものであって、(a)は側面図、(b)は正面図、(c)は裏面図。
【図4】図1に示す二重管式掘削装置におけるケーシング引き戻し機構(第1型式、傾動ブロック・半円筒・ねじ設置式)を模式的に示す一部断面の側面図。
【図5】図1に示す二重管式掘削装置におけるケーシング引き戻し機構(第2型式、傾動ブロック・半円筒・ピン設置式)を模式的に示す一部断面の側面図等。
【図6】図1に示す二重管式掘削装置におけるケーシング引き戻し機構(第3型式、傾動ブロック・棒・挿入式)を模式的に示す一部断面の側面図。
【図7】図1に示す二重管式掘削装置におけるケーシング引き戻し機構(第4型式、掘削管・棒・挿入式)を模式的に示す斜視図。
【図8】図1に示す二重管式掘削装置を掘削位置に配置する配置方法の例を模式的に示す側面図。
【符号の説明】
【0070】
1 二重管式掘削装置
2 地面
3 二重掘削ビット
5 掘削管
6 ケーシングシュー
6a 内周溝
6b 弾性部材
7 ケーシング
7a ケーシング孔
10 インナービット
11 外周部
12 打撃付与部
12a 打撃付与面
14 切欠溝
15 回転付与部
15a 回転付与面
20 アウタービット
22 打撃受け部部
22a 打撃受け部面
24 外周溝
25 回転受け部
25a 回転受け面
30 基板ブロック
31 枠体
32 支柱ブロック設置部
40 支柱ブロック
41 支柱ブロックベース
42 支柱立設部
43 ケーシング案内部
47 支柱
50 シーブブロック
51 シーブ
52 シーブ軸
53 シーブカバー
60 昇降ブロック
61 傾動孔
62 昇降板
63 案内部
66 把手
70 傾動ブロック
71 傾動軸
72 抜け防止孔
73 抜け防止ピン
74 傾動板
75 ワイヤ設置用孔
76 フランジ
76a 貫通穴
77 アーム取り付け板
78 カウンタウエイト用アーム
79 カウンタウエイト用ネジ棒
80 掘削駆動ブロック
81 掘削管接続部
82 抜け防止孔
84 掘削用油圧モータ
85 油圧継手
86 圧空受入部
87 圧空継手
89 カウンタウエイト
90 ウインチブロック
91 支持板
92 昇降用油圧モータ
93 ドラム
100 ダウンザホールドリル
101 ケース
102 ピストン
103 ハンマー
200 ケーシング引き戻し機構
200b ケーシング引き戻し機構
200c ケーシング引き戻し機構
200d ケーシング引き戻し機構
210 引き戻し棒
211 フランジ
212 上コイルスプリング
213 下コイルスプリング
214 引き戻しナット
220 引き戻し体
221 半円筒部
223 引き戻しフランジ
224 引き戻し貫通孔
225 引き戻しねじ孔
226 引き戻しピン孔
230 引き戻しボルト
231 ボルト頭部
232 ボルトねじ部
233 ケーシング孔侵入部
240 円筒突起
241 円筒突起ピン孔
242 円筒突起横孔
250 引き戻しピン
251 ピン円筒部
252 ピン横孔
253 ピン掴み部
260 抜け防止クリップ
261 挿入部
262 把持部
263 呼び込み部
310 引き戻し棒
314 引き戻しナット
330 ケーシング孔侵入部
430 引き戻し棒
501 掘削管フランジ
502 貫通穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削刃を具備するインナービットと、
前記インナービットに、掘削方向に向けた打撃力を付与するダウンザホールドリルと、
該ダウンザホールドリルに連結された掘削管と、
掘削刃を具備し、前記インナービットに付与された打撃力が伝達されるアウタービットと、
該アウタービットに連結されたケーシングと、
を有する二重管式掘削装置において、
前記ダウンザホールドリルに圧縮空気を供給して、前記インナビットおよびアウタービットに掘削方向に向けた打撃力を付与する工程と、
前記アウタービットに掘削方向とは反対方向の引き戻し力を付与する工程と、
を有することを特徴とする二重管式掘削装置の施工方法。
【請求項2】
掘削刃を具備するインナービットと、
前記インナービットに、掘削方向に向けた打撃力を付与するダウンザホールドリルと、
該ダウンザホールドリルに下端部が連結された掘削管と、
掘削刃を具備し、前記インナービットに付与された打撃力が伝達されるアウタービットと、
該アウタービットに下端部が連結されたケーシングと、
前記掘削管の上端部と前記ケーシングの上端部とを連結する弾性部材と、
を有することを特徴とする二重管式掘削装置。
【請求項3】
掘削刃を具備するインナービットと、
前記インナービットに、掘削方向に向けた打撃力を付与するダウンザホールドリルと、
該ダウンザホールドリルに下端部が連結され掘削管と、
該掘削管に接続され、該掘削管を経由して前記ダウンザホールドリルに圧縮空気を供給する掘削機本体と、
掘削刃を具備し、前記インナービットに付与された打撃力が伝達されるアウタービットと、
該アウタービットに下端部が連結されたケーシングと、
前記掘削機本体と前記ケーシングの上端部とを連結する弾性部材と、
を有することを特徴とする二重管式掘削装置。
【請求項4】
前記弾性部材が、前記ケーシングを掘削方向とは反対方向に付勢することを特徴とする請求項2または3記載の二重管式掘削装置。
【請求項5】
前記掘削機本体が、前記圧縮空気の供給と共に、前記掘削管を経由して前記インナービットを回転するものであって、
前記アウタービットに、前記打撃力と共に前記インナービットの回転が伝達され、
前記ケーシングが前記アウタービットに周方向で回転自在に連結されることを特徴とする請求項3または4記載の二重管式掘削装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−57293(P2008−57293A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−238969(P2006−238969)
【出願日】平成18年9月4日(2006.9.4)
【出願人】(596147367)株式会社ティーエフティー (11)
【出願人】(506300176)有限会社伸陽機械 (2)
【出願人】(506300154)有限会社ジオ技研 (2)
【Fターム(参考)】