説明

二重管式熱交換器

【課題】従来の二重管式熱交換器の構成では、熱交換ユニット中央部に管が密集するため、ロウ付け等、溶接を行うスペースが狭く、バーナーの炎が二重管の外管に接触するため、二重管の外管に融点の低い樹脂を用いるのは困難であった。
【解決手段】内部に冷媒用流路が形成された内管と、前記内管の外側に設けられ、前記内管との間に水用流路が形成された外管とを有する二重管6(6a、6b)および二重管7を、渦巻状に曲成して構成されている熱交換ユニット2、3、4、5を積層している二重管式熱交換器1において、中間ヘッダ16を、各熱交換ユニットの外側に配置し、かつ二重管6aと中間ヘッダ16の接続部を装置水平方向に並設することで、溶接箇所を外管が樹脂製である二重管7から遠ざけ、溶接時のバーナーの炎との接触を防ぎ、安価で軽い樹脂を使用可能とし、熱交換器のコスト削減および軽量化を達成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に流体の流路をもつ内管と、内管の外側に設けられ、内管との間に流体の流路がある外管を有する二重管で、内管内部と、内管外部と外管内部との間を流れる流体間で熱交換を行う二重管式熱交換器において、外管の一部に樹脂を用いたものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の二重管式熱交換器は、一本の二重管を渦巻状に形成した熱交換ユニットが複数段積層されて製作されており、巻き方が内巻き、外巻きに関係なく、熱交換ユニット中央部において、他の熱交換ユニットあるいは装置本体と連結するのにヘッダ等の接続部品を必要とする。二重管の外管の材質を樹脂ホースとする熱交換ユニットでも、その仕様は変わっていない(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−68764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、図1のように上記の二重管式熱交換器の構成では、熱交換ユニット中央部に管が密集するため、ヘッダをロウ付け等で溶接を行うスペースが狭いという欠点があった。
【0005】
従来、外管には銅などの金属管が使用されていたため、ヘッダの溶接を行うスペースが狭くても、金属管の融点は非常に高く、バーナーの炎が外管に多少接触しようと、金属管が融解や破損することはなく問題視されなかった。しかし、樹脂を外管の一部に使用する場合、樹脂は融点が低いため、バーナーの炎が接触してしまうと溶けてしまう。
【0006】
また、樹脂にバーナーの炎が接触しないようロウ付けを行っても、作業に時間がかかってしまい、熱交換器の生産性が悪くなってしまうという課題を有していた。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するため、熱交換器が給湯装置内に設置される場所によって、中間ヘッダおよび中間ヘッダと各熱交換ユニットの接続部の配置場所を従来の熱交換器中央部から変更し、外管の一部に樹脂を用いるというものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、内部に冷媒用流路が形成された内管と、前記内管の外側に設けられ、前記内管との間に水用流路が形成された外管とを有する二重管を、渦巻状に曲成して構成される熱交換ユニットが、複数段以上積層している二重管式熱交換器において、前記外管の材質の一部を樹脂とし、前記熱交換ユニット同士をロウ付け等により溶接する中間ヘッダを設け、前期中間ヘッダを前記熱交換ユニット外側に配置するというものである。
【0009】
これによって、前記中間ヘッダと前記熱交換ユニットの接続を、ロウ付け等によって溶接するスペースを確保できると同時に、溶接箇所を樹脂から遠ざけることができ、バーナーの炎との接触を防ぐことができる。また、前記二重管式熱交換器が給湯装置内の底面に設置される場合は前記中間ヘッダを複数段以上積層されている前記熱交換ユニットの最上段よりも上方に、前記給湯装置内の上面に設置される場合は、複数段以上積層されている
前記熱交換ユニットの最下段よりも下方に配置するのが望ましい。
【0010】
また、前記中間ヘッダと前記熱交換ユニットの接続部を、前記熱交換ユニット水平方向に並設して配置すること、また各段の前記熱交換ユニットの全長が等しくなるよう、渦巻状に曲成された前記熱交換ユニットの中心部において、前記中間ヘッダとの接続部における前記熱交換ユニットの直線部を、前記熱交換ユニットの管端部としたとき、上面から見て、下段の前記熱交換ユニットの管端部と、上段の前記熱交換ユニットと管端部が重ならないように、曲げ部分を調整して配置する。
【0011】
これによって、前記二重管内を流れる冷媒および水、それぞれの管内圧力損失差を減少させ、複数段以上積層されている前記熱交換ユニットにおいて、前記二重管内を流れる冷媒および水の偏流を減少させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ロウ付け時にバーナーの炎が熱交換ユニットに接触するのを防ぐことができ、信頼性の向上と熱交換器のコスト削減および軽量化を達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】従来の二重管式熱交換器を示す平面図
【図2】本発明の実施の形態に係わる二重管式熱交換器を示す正面図
【図3】本発明の実施の形態に係わる二重管式熱交換器を示す平面図
【図4】本発明の実施の形態に係わる二重管式熱交換器を図3のA方向から見た断面図
【図5】本発明の実態の形態に係わる二重管の詳細を示す断面図
【図6】本発明の実施の形態に係わる中間ヘッダの詳細を示す断面図
【図7】本発明の実施の形態に係わるヘッダを示す断面図
【図8】本発明の実施の形態に係わる給湯装置内の詳細を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
第1の発明は、内部に冷媒用流路が形成された内管と、前記内管の外側に設けられ、前記内管との間に水用流路が形成された外管とを有する二重管を、渦巻状に曲成して構成される熱交換ユニットが複数段以上積層している二重管式熱交換器において、前記外管の材質を樹脂とし、前記熱交換ユニット同士をロウ付け等により溶接する中間ヘッダを設け、前記中間ヘッダを渦巻状に曲成された前記熱交換ユニットの外部に配置するというものである。これにより、前記中間ヘッダと前記熱交換ユニットの溶接箇所を樹脂製の外管から遠ざけることで、外管に安価で軽い樹脂を用いることを可能とし、熱交換器のコスト削減および軽量化を達成できる。
【0015】
第2の発明は、第1の発明における前記中間ヘッダと、複数段以上積層されている前記熱交換ユニットの接続部を、前記熱交換ユニット水平方向に並設して配置し、かつ各段の前記熱交換ユニットの全長が等しくなるように、渦巻状に曲成された前記熱交換ユニットの中心部において、前記中間ヘッダとの接続部における前記熱交換ユニットの直線部を、前記熱交換ユニットの管端部としたとき、上面から見て、下段の前記熱交換ユニットの管端部と、上段の前記熱交換ユニットと管端部が重ならないように、曲げ部分を変更して配置する。
【0016】
以上のように、前記中間ヘッダと前記熱交換ユニットの接続部を装置水平方向に並設し、複数段以上積層されている前期熱交換ユニットのそれぞれの全長を等しくすることで、前記二重管内を流れる冷媒および水の管内圧力損失差を小さくし、偏流を減少させることができる。
【0017】
(実施の形態1)
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0018】
二重管式熱交換器1は、図2、図3に示されているように、渦巻状に形成された4つの熱交換ユニット2、3、4、5を積層して構成されている。また、熱交換ユニット2、3、4、5は、それぞれ二重管6(6a , 6b)および二重管7によって形成されている。
【0019】
図4に示すように、熱交換ユニット2、3、4、5を中間ヘッダ16に接続する際、それぞれの二重管6aを水平方向に並設するよう、各熱交換ユニットの二重管6aを上方に曲げる角度を揃え、他の熱交換ユニットの二重管6aに接触しないよう、図3のように上面から見て、上段の二重管6aを上方に曲げる箇所が、下段の二重管6aを上方に曲げる箇所と重ならないようにし、最上段である熱交換ユニット5よりも上方で、それぞれの二重管6aが水平になるよう曲げて中間ヘッダ16に接続する。
【0020】
図5に示すように、二重管6(6a , 6b)と二重管7は、外管の材質が異なるだけで、銅製の内管8を共有しており、二重管6(6a , 6b)は内管8の外側に銅製の外管9が設けられ、二重管7は内管8の外側に樹脂製の外管10が設けられている。内管8内には冷媒用流路11が形成され、内管8と外管9および外管10の間には水用流路12が形成されている。
【0021】
そして、冷媒用流路11を流通する冷媒と水用流路12を流通する水はお互いに対向して流れるようになっており、この結果、冷媒と水との間の熱交換効率を高めることができる。
【0022】
また、内管8は、銅製の冷媒管13と、冷媒管13の外周に設けられた銅製の漏洩検知管14とから構成され、2本の内管8が縦方向に並設されている。漏洩検知管14の内面には、配管方向に沿って多数の漏洩検知溝15が形成されており、漏洩検知溝15内には空気層が形成されている。漏洩検知溝15を設けることで、内管8又は外管9、外管10から漏洩した冷媒又は水は混入することなく漏洩検知溝15を介して外部に漏出する。
【0023】
図2、図3に示されているように、熱交換器1の中央部には、熱交換ユニット2、3、4、5同士をつなげるための銅製の中間ヘッダ16が、熱交換器1の外周には装置本体と熱交換ユニット2、3と4、5をつなぐ銅製のヘッダ17、18がある。
【0024】
図2、図3に示されているように、二重管6aは中間ヘッダ16と、二重管6bはヘッダ17、18とに接続され、二重管7は二重管6(6a , 6b)に挟まれる形で接続継ぎ手19によって、それぞれに接続されている。以上のように、熱交換ユニットの両端に二重管6(6a , 6b)を使用するのは、各熱交換ユニットを熱交換器1中央部で中間ヘッダ16、外部でヘッダ17、18をロウ付け等で溶接するため、熱交換ユニットの両端に二重管7を用いると樹脂製の外管10がバーナーの炎に接触した際に溶けてしまうからである。
【0025】
また、溶接時に二重管6(6a , 6b)および漏洩検知管14から熱が伝わって、外管10が溶けてしまう可能性があるため、本実施例では、溶接時の二重管6(6a ,
6b)、漏洩検知管14の温度分布を測定し、二重管6(6a , 6b)と二重管7の接続部が外管10に用いる樹脂の軟化温度以下となる距離で接続し、可能な限り樹脂を用いることで、熱交換器1のコスト削減および軽量化を行っている。
【0026】
図6に示されているように、熱交換器1の中央部において、熱交換ユニット2、3、4、5を連結する中間ヘッダ16は、筒状のパイプ20と、パイプ20の両端部を閉塞する蓋部材21から成り、外管9はパイプ20に穿設された穴を介して中間ヘッダ16にロウ付け等により溶接され、冷媒管13は中間ヘッダ16を貫通して、ヘッダ貫通部はロウ付け等により溶接される。
【0027】
そして中間ヘッダ16を貫通した冷媒管13の先端には、それぞれ銅製のU字管22が取り付けられ、冷媒が漏れないようにロウ付け等により溶接される。
【0028】
図7に示すように、熱交換器1の外側において、熱交換ユニット2と3を、熱交換ユニット4と5をそれぞれ連結するヘッダ17、18は、中間ヘッダ16と同様に筒状のパイプ23と、パイプ23の両端部を閉塞する蓋部材24から成り、外管9はパイプ23に穿設された穴を介してヘッダ17、18にロウ付け等により溶接され、冷媒管13はヘッダ17、18を貫通して、ヘッダ貫通部はロウ付け等により溶接される。そして、ヘッダ17、18を貫通した冷媒管13はブロック状のヘッダ25を先端に取り付けられる。このヘッダ25には、縦孔が形成され、縦孔の開口端部はキャップ26により閉塞されており、各内管は縦孔に連通するようにヘッダ25に接続され、ヘッダ接続部はロウ付け等により溶接されるようになっている。
【0029】
図8に示しているように、給湯装置27内において、それぞれの熱交換ユニットの二重管6aと中間ヘッダ16の接続部は、風路28内のファン29およびベルマウス30、防音板31に接しないように、二重管6aを上方に曲げて配置する。また、図示しないが、防音板31の右側には圧縮機や膨張弁などの機器が配置されている。
【0030】
本形態では、水および冷媒の偏流を極力減少させるため、熱交換ユニット2、3、4、5において、二重管6(6a、6b)、二重管7のそれぞれの長さを等しくしている。二重管6(6a、6b)、二重管7のそれぞれの長さが等しい場合、図2、3に示しているように、最下段である熱交換ユニット2の二重管6aを、他の熱交換ユニットよりも奥行長さを一番短くし、熱交換ユニット3、4、5の順に二重管6aの奥行長さを長くすると、二重管7の外管10が溶接時の熱が伝って溶けないよう、二重管6aの長さを十分確保することができる。
【0031】
また、最下段である熱交換ユニット2の二重管6aを、他の熱交換ユニットよりも奥行長さを一番長くし、熱交換ユニット3、4、5の順に二重管6aの奥行長さを短くすることも可能だが、その場合、二重管6aを上方に曲げる角度が大きくなるため、ベルマウス30に接触しないよう配置するには十分注意する必要がある。
【0032】
また、熱交換ユニット2、3、4、5の二重管6(6a、6b)、二重管7のそれぞれの長さが等しくない場合は、二重管6aを上方に曲げる角度が揃っており、各熱交換ユニットの二重管6a同士が接触せず、上面から見て、上段の二重管6aを上方に曲げる部分が下段の二重管6aを上方に曲げる部分と重なっていなければ、二重管6aを各熱交換ユニット中央部でどのように曲げようと構わない。ただし、二重管7の外管10が溶接時の熱で溶けないよう、二重管6(6a、6b)の長さは十分確保することが必要である。
【0033】
また、上記実施の形態は、熱交換ユニットの積層段数は4段に限定されるものではなく、最低2段以上の熱交換ユニットをもつ熱交換器に適用可能である。
【0034】
上記形態では、中間ヘッダ16と二重管6aの接続部を、ヘッダ17、18と同じ方向に揃えているが、配置するスペースがあるのならば、逆方向あるいは二重管式熱交換器1
の手前方向や奥行方向に配置しても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0035】
以上のように、本発明にかかる熱交換器は、ロウ付け時にバーナーの炎が熱交換ユニットに接触するのを防ぐことができ、信頼性の向上と熱交換器のコスト削減および軽量化を達成できるので、あらゆる冷凍空調機器に適用することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 二重管式熱交換器
2 熱交換器ユニット
3 熱交換ユニット
4 熱交換ユニット
5 熱交換中ニット
6(6a 、6b) 二重管
7 二重管
8 内管
9 外管
10 外管
16 中間ヘッダ
27 給湯装置
28 風路
29 ファン
30 ベルマウス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に冷媒用流路が形成された内管と、前記内管の外側に設けられ、前記内管との間に水用流路が形成された外管とを有する二重管を、渦巻状に曲成して構成される熱交換ユニットが、複数段以上積層している二重管式熱交換器において、前記外管の材質を樹脂とし、前記熱交換ユニット同士をロウ付け等により溶接する中間ヘッダを設け、前記中間ヘッダが渦巻状に曲成された前記熱交換ユニットの外部に配置されることを特徴とする二重管式熱交換器。
【請求項2】
前記中間ヘッダと前記熱交換ユニットの接続部が、前記熱交換ユニット水平方向に並設して配置すること、また複数段積層されている前記熱交換ユニットのそれぞれの全長が等しくなるよう、渦巻状に曲成された前記熱交換ユニットの中心部において、前記中間ヘッダとの接続部における前記熱交換ユニットの直線部を前記熱交換ユニットの管端部としたとき、上面から見て、下段の前記熱交換ユニットの管端部と、上段の前記熱交換ユニットの管端部が重ならないように曲げ部分を調整して配置することを特徴とする第1項に記載の二重管式熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−11389(P2013−11389A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144015(P2011−144015)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】