二重管掘削装置およびその工法
【課題】 この発明は、ダウンザホールドリルと拡縮式ドリルビットを組み合わせた二重管を、ロータリーテーブルマシンを用いて掘削に使用する掘削装置およびその工法に関する。
【解決手段】 ドリルストリングスの先端にはケーシングを連行する拡縮型のドリルビットが取付けられており、ケーシングにケリーロッドを取付け、該ケリーロッドを介して係合するロータリーテーブルマシンによりケーシングの回転を規制すると共に、ケーシングの上部にケーシングの軸線方向に摺動可能に略筒状のソケットを外嵌し、該ソケットに側方で開口する開口部を設け、ソケットの上端はドリルヘッドに連結していることを特徴とする。
【解決手段】 ドリルストリングスの先端にはケーシングを連行する拡縮型のドリルビットが取付けられており、ケーシングにケリーロッドを取付け、該ケリーロッドを介して係合するロータリーテーブルマシンによりケーシングの回転を規制すると共に、ケーシングの上部にケーシングの軸線方向に摺動可能に略筒状のソケットを外嵌し、該ソケットに側方で開口する開口部を設け、ソケットの上端はドリルヘッドに連結していることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ダウンザホールドリルと拡縮式ドリルビットを組み合わせた二重管連行式掘削工法を、ロータリーテーブルマシンで行えるようにした二重管掘削装置およびその工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、斜面に土留杭や地滑り抑止杭用の下孔を掘削するに際し、掘削に伴う孔壁の崩壊を防止するために、ドリルストリングスの先端に設けた拡縮型ハンマービットにより保護ケーシングを連行しながら、該保護ケーシングよりも大径の孔を掘削し、保護ケーシングによって孔壁崩壊を防止する二重管掘削工法が用いられている。しかしながら、二重管掘削工法では大型のボーリングマシンが必要とされていた。
一方、ケリーロッドのケリーバーをロータリーテーブルマシンのケリーブッシュに掛け止めて、ケリーロッドを回転させながら掘削を行うシングル掘削工法が知られており、軽量小型ですむ。
そこで両者を組み合わせる掘削工法が考えられるが、二重管掘削工法は、所定深度まで掘削した後、拡縮型ビットを逆転させて縮径し、保護ケーシングを孔中に残してドリルストリングスを引き上げる工法であるため、例えば、保護ケーシングを介してドリルストリングスに回転伝達して掘削したとしても、ドリルストリングスの引き上げに際してはロータリーテーブルマシンの機構上、ドリルストリングスのみを回転させることができない。
これに対して、特開平14−256788号公報では、外周がロータリーテーブルマシンの回転テーブルの内周に係合して回転するドライブブッシュと、外周が前記ドライブブッシュの内周に係合して、その回転駆動力が伝達されるケーシングと、先端に拡縮自在なリトラクトビットが設けられ、前記ケーシングの内部に収容されて該ケーシングを掘進方向に連行するケリーロッドと、下端部が前記ケーシングの上端部に、内周が前記ケリーロッドの外周にそれぞれ係合して、前記ケーシングから伝達される回転駆動力を前記ケリーロッドに伝達する孫ブッシュであって、掘進により前記ドライブブッシュ位置に到達したとき、上端部が該ドライブブッシュに係合することにより、前記ケーシングの上端部との係合が解除するとともに、外周が該ドライブブッシュの内周に係合して、該ドライブブッシュから伝達される回転駆動力を前記ケリーロッドに伝達する孫ブッシュとを備えてなるロータリーテーブルマシン用二重管掘削装置が開示されている。
しかし、上記構成では、回転駆動がロータリーテーブルマシンの駆動力に基づくものであって、掘削速度が遅くなり、効率的に掘進することができない。
【特許文献1】特開平14−256788号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この発明は上記実情に鑑みてなされたもので、その主たる課題は、ケーシングをロータリーテーブルマシンで拘束し、ドリルストリングスを回転駆動させて効率のよい掘削を行うと共に、フラッシング時に、スライムの激しい飛散を抑えることのできる二重管掘削装置およびその工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、請求項1の発明では、
ケーシング内にドリルヘッドに連結したドリルストリングスを収納し、該ドリルストリングスを回転させて掘進を行う二重管掘削装置において、
ドリルストリングスの先端にはケーシングを連行する拡縮型のドリルビットが取付けられており、
ケーシングにケリーロッドを取付け、該ケリーロッドを介して係合するロータリーテーブルマシンによりケーシングの回転を規制すると共に、
ケーシングの上部にケーシングの軸線方向に摺動可能に略筒状のソケットを外嵌し、該ソケットに側方で開口する開口部を設け、ソケットの上端はドリルヘッドに連結していることを特徴とする。
また、請求項2の発明では、
前記ドリルストリングスの先端に設けられたドリルビットがリトラクトビットからなっており、該リトラクトビットに連結されるダウンザホールドリルと、該ダウンザホールドリルにロッドサブを介して連結される継ぎ足し可能なドリルロッドと、該ドリルロッドに連結されるエクステンションロッドとを有し、該エクステンションロッドの先端がドリルヘッドの回転軸に連結されていることを特徴とする。
更に、請求項3の発明では、
前記ソケットが、ケーシングに外嵌可能な略筒体からなっており、ソケットをケーシングに外嵌した際にケーシングのケリーバーを嵌め込むための下端側が開放されたスリットと、ソケットの中途位置の内周面で軸線側に向かって突出するショルダー部と、ソケットの側面で開口する開口部と、該開口部から外方へ突出してスライム飛散を防ぐためのシューターとを有していることを特徴とする。
また、請求項4の発明では、
請求項1から3のいずれかに記載の二重管掘削装置を用いた掘削工法において、
ドリルストリングスが、ドリルヘッドによって回転されて掘削を行い、
ケーシングはケーシングに固着されたケリーバーとロータリーテーブルマシンとが係合してケーシングの回転を規制して、前記ドリルヘッドの回転力の反力を受けており、
掘さく時のドリルビットを孔底から引き離して打撃動作を停止させて、ダウンザホールドリルに送り込まれている圧気でスライムを吹き上げる際に、前記ソケットが蓋となってスライムをソケットに設けた開口部から飛散させるようになっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
この発明は上記のように、ドリルヘッドの回転力をドリルストリングスに伝えてドリルビットを回転させて掘削を行うことができる。
ケーシングはロータリーテーブルマシンと係合してケーシングの回転を規制しているので、前記ドリルヘッドの回転力の反力をロータリーテーブルマシンで受けることができ、安定した状態で掘削を行うことができる。
また、フラッシング時には、ソケットを設けることで、スライムの激しい飛散を抑えることができ、環境の汚染を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
この発明の二重管掘削装置は、ドリルストリングスをドリルヘッドで回転させて掘進を行うと共に、ケーシングの上端にはドリルヘッドに取り付けられたソケットを摺動可能に嵌合しておき、ケーシングはケリーバーを介してロータリーテーブルマシンで回転しないように保持して、スライムの激しい飛散を抑えることを実現した。
【実施例1】
【0007】
[二重管掘削装置]
以下に、この発明の二重管掘削装置の実施例を図面を参照しながら以下に説明する。
二重管掘削装置1は、図1に示すように、二重管の内管となるドリルストリングスとして、拡縮可能なリトラクトビット2と、該リトラクトビット2に連結されるダウンザホールドリル3と、該ダウンザホールドリル3にロッドサブ4を介して連結される継ぎ足し可能なドリルロッドとしてのスクリューロッド5と、該スクリューロッド5に連結されるエクステンションロッド6とを有し、該エクステンションロッド6の先端がドリルヘッド7の回転駆動軸7aに連結されている。
また、図中、P1は連結用のジョイントピン、P2はシール用のパッキンである。
【0008】
ここでドリルヘッド7は、中途位置に一対のふれ止め部材71を突設し、上部にエアスイベル72を設けている。
エアスイベル72には、エアコンプレッサ100からラインオイラー110を経由し、エアーホース120が接続されており、圧気が供給される(図2参照)。
【0009】
次ぎに、二重管の外管として、前記ドリルストリングスを収納する継ぎ足し可能なケーシング8と、前記ドリルヘッド7に上端が取り付けられて、前記ケーシング8の上部に外嵌するソケット9とが設けられている(図1参照)。
更に、図2に示すように、前記ケーシング8と係合するロータリーテーブルマシン10を備えている。
該ロータリーテーブルマシン10は、後述のフラットバーからなるケリーバー81と係合してする凹部を有するケリーブッシュ(図示せず)を内蔵している。
【0010】
そして、上記ドリルヘッド7とロータリーテーブルマシン10には、図示例の場合にベースクレーン150の動力取り出し口160からコントロールユニット170を経由して圧油が、油圧ホース180によってそれぞれに供給されている(図2参照)。
【0011】
この二重管掘削装置1は、前記ドリルストリングスヘの回転力が、ロータリーテーブルマシン10ではなく、ドリルヘッド7により与えられる。
即ち、ドリルヘッド7による回転力はリトラクトビット2等に伝えられ、リトラクトビット2ヘの荷重は、ドリルヘッド7を含んだドリルストリングスの質量により与えられ、掘削が行われる。
【0012】
この際、ドリルヘッド7により発生した回転力の反力は、ソケット9やケーシング8を経てロータリーテーブルマシン10が受け、最終的にロータリーテーブルマシン10を支持する足場架台等が受ける。
従って、この発明では、掘削作業におけるロータリーテーブルマシン10は回転しないようにロックしており、反力受けとなるように機能させている。
【0013】
ドリルヘッド7には、中途位置で外方へ突出する一対のふれ止め部材71が装備されている。
ふれ止め部材71は、略水平に延びるアーム72の先端で直交方向に延びる幅広の掛止部73が設けられている。
【0014】
そして、ふれ止め部材71の掛止部73は、ロータリーテーブルマシン10に装着された一対のマストからなるガイド200と衝合して、ドリルストリングス全体の芯だしができるようになっており、またクレーンによるドリルストリングスのつり込み時の作業性も容易にしている。
【0015】
前記ケーシング8は、ソケット9を介して伝えられるドリルストリングスの質量により、掘削が進むにつれて一緒に孔内に挿入される。
または、一般的にダウンザホールドリルと拡縮式リトラクトビットを組み合わせた二重管連行式掘削工法の場合に行われるように、ケーシング8の先端部にやや肉厚のシュー(ビットリング)部材82を取り付け、このシュー部材82をリトラクトビット2に形成されているショルダー部23により打撃することで、引き込む事も可能である(図4参照)。
【0016】
また、地質条件等により、ケーシング8の挿入(連行)がスムーズに行かない場合には、反力受けとして不回転としていたロータリーテーブルマシン10を、ドリルヘッド7駆動のために接続している油圧ホース等が損傷しない範囲で、左右に揺動させてケーシング8の挿入(連行)を容易に行わせることができる。
【0017】
掘削ズリ(スライム)は、ダウンザホールドリル3を駆動するために送られ、ダウンザホールドリル3の駆動の役目を終えてビットから外部へ排気された圧気により、ケーシング8内径とダウンザホールドリル3、その上に接合されるスクリューロッド5の外径により形成される冠状の空隙を地上方向へ搬送される。
【0018】
本実施例では、ドリルロッドとしてスクリューロッドを使用して、少ない圧気量でも効率よくスライムの搬送ができるようにしている。
この場合、最終的にソケット9の側面の開口部93を経て、スライムはケーシング8から外に排除される。
【0019】
ダウンザホールドリル3は、リトラクトビット2を孔底から約10cm程度ストロークして引き離すと、打撃作動が停止し、送り込まれている圧気はダウンザホールドリル3の内部およびリトラクトビット2を通過できる最大量を以ってスライムを吹き上げるために利用できるようになる(この操作をフラッシングという)。
【0020】
この場合、ケーシング8の上端部は、ソケット9が蓋となって塞いでいるので、スライム飛散を抑制することができる。
さらに、ソケット9は、ケーシング8に対して嵌合しているだけなので、掘削軸に沿って上下に摺動できるため、掘削のためにドリルヘッド7を回転させているときでも、回転を止めることなく、前記フラッシングの操作を行うことができる。
【0021】
[掘削準備]
以下に、二重管掘削装置1の使用方法について説明する。
ケーシング8には、その外周にフラットバーからなるケリーバー81が取り付けられている(図1、図3参照)。
本実施例でケリーバー81は、ケーシング8の長さ方向で3つに分断されており、ケーシング8の軸線を中心にした周方向に等間隔に4箇所設けられている。
【0022】
このケーシング8は、ロータリーテーブルマシン10に先端側を挿入してセットされる。
ロータリーテーブルマシン10には前記ケーシング8のケリーバー81と係合する凹部を有するケリーブッシュ(図示省略)が組み込まれており、ケーシング8にロータリーテーブルマシン10が発生する回転力を伝達したり、ドリルヘッド7が発生する回転力の反力をロータリーテーブルマシン10に受けさせることができる。
【0023】
ケーシング8の上端部には、上端がドリルヘッド7に取り付けられたソケット9が外嵌している。
ソケット9には、ケーシング8に外嵌した際に、ケーシング8のケリーバー81を嵌め込むための下端側が開放されたスリット91が設けられている(図3参照)。
【0024】
ソケット9は、ケーシング8の上部に被せて使用に供される。
このソケット9の中途位置の内周面には軸線側に向かって突出するショルダー部92が設けられている。
このショルダー部92がケーシング8の上端部にかかることで、ドリルストリングス、即ち、ドリルヘッド7、エクステンションロッド6、スクリューロッド5、ロッドサブ4、ダウンザホールドリル3、およびリトラクトビット2の合計重量がほぼ給進荷重としてケーシング8に伝達される。
【0025】
[掘削]
掘削に際しては、図3に示すように、ベースクレーン100のウィンチ190を下げて、ソケット9および前記ドリルストリングスの重量をケーシング8にあずける。
そして、ダウンザホールドリル3を駆動するためのエアーをエアスイベル72から送り、ドリルストリングスの回転はソケット9上部に取り付けたドリルヘッド7により与える。
本実施例では右回転によりリトラクトビット2が拡径して、掘削をする。
【0026】
この際、ドリルヘッド7が発生する回転力の反力は、ソケット9からソケット9に設けたスリット91を介してケーシング8に設けたケリーバー81に伝わり、該ケリーバー81からケリーブッシュを介してロータリーテーブルマシン10の順に伝達される。
そこで、ロータリーテーブル10の回転機構をロックすることで、前記ドリルヘッド7の回転力の反力はロータリーテーブルマシン10が受け、さらにロータリーテーブルマシン10を固定した足場架台210等の支持構造が受けることになる。
【0027】
従って、掘削時には、基本的にロータリーテーブルマシン10は回転させない。
ただし、必要に応じて、ドリルヘッド7等に接続されたホース類120、170に負荷がかからない角度範囲で揺動程度を行ってもよい。
【0028】
また、掘削により発生したスライムは、ダウンザホールドリル3から排気されたエアーによって孔底から排除され、リトラクトビット2のデバイス部21に設けたスリット22を通ってケーシング8の内部に入り、ダウンザホールドリル3およびロッドサブ4までは、ケーシング8との隙間をそのまま排気の流れに乗って上部に吹き上げられ、ロッドサブ4より上部はスクリューロッド5に乗り運搬される。
【0029】
また、排気の一部は、スクリューロッド5とケーシング8の内壁との間隙を排気の流れに乗って上部に吹き上げられる。
スクリューロッド5の上端部位置は、ケーシング8から外れ、ソケット9にかかっている。
【0030】
ソケット9でのスクリューロッド5の上端部位置には、大きな開口部93があり、スクリューロッド5によってケーシング8内を運搬されてきたスライムは、この開口部93からソケット9の外部に排出される。
そして、ソケット9の開口部93には、スライム飛散を防ぐためのシューター94が外方へ突出して取り付けられている。
【0031】
[フラッシング]
図5に示すように、ドリルヘッド7を掘進用に駆動(右回転)させたまま、クレーンのウインチ190をやや巻き上げ、リトラクトビット2を孔底より上げると、ドリルヘッド7(ハンマー)は打撃を停止し、送気されているエアーの全量をもって孔底および孔内(ケーシング8内)のスライムを排除するためのフラッシングモードに切り替わる。
【0032】
本実施例のように、リトラクトビット2のような拡縮型ハンマービットを用いてケーシング8を連行しながら掘削する場合、特にケーシング8の最先端部とリトラクトビット2のデバイス部21の間の隙間S1にスライムが詰まりやすい。
そこで、本発明では前述のように、ソケット9を用いることで、ケーシング8とドリルストリングスを嵌合させながら、なお、掘削軸方向にある程度相対的にストロークできるようにして、スライムの詰まりを解消している。
【0033】
[ドリルストリングス・ケーシングの引き上げ]
ドリルヘッド7を右回転させたまま、図6に示すように、クレーンを巻き上げると、リトラクトビット2の肩部にケーシング8の下端部が1部拡大で示すように乗る形となるので、ドリルストリングスとケーシング8を同時に孔内から引き上げることができる。
【0034】
この際に、引き上げ抵抗が大きい場合には、回転反力を受けているロータリーテーブルマシン10を、ドリルヘッド7等に接続されたホース類120、180に負荷がかからない範囲で、揺動させる。
この操作は、何らかのトラブルにより掘削を中断したり、地質条件によりケーシング8を含めた全体を上下させて孔を形成させる必要が生じた場合等に行われる。
【0035】
[ケーシングの追加接続]
孔を深く掘進する場合には、図7に示すように、ケーシング8等を追加する必要があり、以下の手順によって行われる。
(1)1つのケーシング(説明の便宜上8Aとする)を用いた1ストロークの掘削終了する(図7(a)参照)。
【0036】
(2)ドリルヘッド7を吊り上げて、ソケット9を前記ケーシング8Aから取り外し、また、エクステンションロッド6を前記ケーシング8A内のスクリューロッド5Aから取り外す(図7(b)参照)。
【0037】
(3)公知の吊り治具により、追加用のケーシング8Bとスクリューロッド5Bを同時に吊り下げる。
次いで、追加用のスクリューロッド5Bを、ケーシング8A内のスクリューロッド5Aと図示省略のジョイントピンを用いて同軸に接続する(図7(c)参照)。
(4)次いで、ケーシング8Bの下端とケーシング8Aの上端とを突き合わせて接続し、ケリーバー81と同サイズのフラットバー81’をアーク溶接等でケーシング8Aと8Bの間を跨ぐように仮付けする(図7(d)参照)。
【0038】
(5)次いで、仮付けしたフラットバー81’を、ケーシング8Bにアーク溶接等で本付けする。これにより、ケーシング8Aとケーシング8Bとは一連のケーシングとなる(図7(e)参照)。
【0039】
(6)次いで、前記(2)で外したドリルヘッド7に連結されたソケット9およびエクステンションロッド6を吊り下げて、前記スクリューロッド5Bの上端をエクステンションロッド6に連結し、ソケット9をケーシング8Bの上方に外嵌して接続する(図7(f)参照)。
【0040】
(7)これにより、ケーシングとスクリューロッドの追加接続が完了する(図7(g)参照)。
以後、この繰り返しにより、さらにケーシングとスクリューロッドの追加接続を行うことができる。
また、これらと逆の手順によりケーシングやスクリューロッドを切り離すことができる。
前記アーク溶接等で固着した個所は、ガス溶断等で分離すればよい。
【0041】
[ドリルストリングスの回収]
掘削完了後、ドリルヘッド7を逆転(左回転)しながら、クレーンのウィンチ190を巻き上げることで、リトラクトビット2は、ケーシング8の内径以下に縮径する。
この状態でドリルヘッド7の回転を停止し、さらにクレーンのウィンチ190を巻き上げることで、ケーシング8のみを孔内に残したまま、ドリルストリングスを回収することができる(図8参照)。
ケーシング8がドリルストリングスに引っかかるなどして共上がりしそうな場合には、図示しないケーシング共上がり防止装置を使用することもできる。
さらに、ロータリーテーブルマシン10を、油圧オーガーヘッド等に接続されたホース類120、180に負荷がかからない範囲で揺動させる場合もある。
【0042】
[杭等の建て込み]
ドリルストリングスの回収が終了すると、次ぎに、ベースクレーン150のウインチ190を使用してH鋼や鋼管などの杭や井戸パイプなどの杭等Kを吊り下げて、ケーシング8内に挿入し、孔内に建て込む(図9参照)。
【0043】
[ケーシングの回収]
杭等Kを建て込んだ後に、前記ウインチ190を使用してケーシング8を引き上げて回収を行う。
地質条件等の影響で、クレーン150の吊り上げ力のみではケーシング8の回収が困難な場合には、ロータリテーブル10を用いてケリーバー81を介してケーシング8を回転させ、あるいは揺動させることで、ケーシング8の回収を容易に行うことができる(図10参照)。
なお、複数のケーシング8を継ぎ足して使用し掘削した場合には、前述のように接合個所を外し、または適宜切り離しを行えばよい。
【0044】
上記実施例はこの発明の一例を示すもので、ドリルストリングスの構成は、実施例に限定されず、公知の構成に置き換えることができる。
例えばスクリューロッドに変えてその他のオーガロッドを用いてもよい。
その他、要するにこの発明の要旨を変更しない範囲で種々設計変更しうること勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】二重管の取付状態を示す分解側面図である。
【図2】掘削作業を示す全体の側面図である。
【図3】二重管掘削装置の側断面図である。
【図4】ケーシングに設けたシュー部材とリトラクトビットとの関係を示す拡大断面図である。
【図5】ケーシングの最先端部とリトラクトビットの間の隙間を示す側断面図である。
【図6】リトラクトビットの肩部にケーシングの下端部が乗った状態を示す側断面図である。
【図7(a)】1ストロークの掘削終了状態を示す断面図である。
【図7(b)】ソケットをケーシングから取り外す状態の断面図である。
【図7(c)】追加用のケーシングとスクリューロッドを接続する状態の断面図である。
【図7(d)】フラットバーをケーシングに仮付けする状態の断面図である。
【図7(e)】同本付けした状態の断面図である。
【図7(f)】ドリルヘッドに連結されたソケットを吊り下げてケーシングに取り付ける状態の断面図である。
【図7(g)】ケーシングとスクリューロッドの追加接続が完了した状態の断面図である。
【図8】ドリルストリングスを吊り上げて回収する側断面図である。
【図9】杭を吊り下げて、ケーシング内に挿入し孔内に建て込む状態の側断面図である。
【図10】ケーシングを吊り上げて回収を行う状態の側断面図である。
【符号の説明】
【0046】
1 二重管掘削装置
2 リトラクトビット
3 ダウンザホールドリル
4 ロッドサブ
5 スクリューロッド
6 エクステンションロッド
7 ドリルヘッド
8 ケーシング
9 ソケット
10 ロータリーテーブルマシン
22 スリット
71 ふれ止め部材
81 ケリーバー
91 スリット
93 開口部
94 シューター
K 杭等
【技術分野】
【0001】
この発明は、ダウンザホールドリルと拡縮式ドリルビットを組み合わせた二重管連行式掘削工法を、ロータリーテーブルマシンで行えるようにした二重管掘削装置およびその工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、斜面に土留杭や地滑り抑止杭用の下孔を掘削するに際し、掘削に伴う孔壁の崩壊を防止するために、ドリルストリングスの先端に設けた拡縮型ハンマービットにより保護ケーシングを連行しながら、該保護ケーシングよりも大径の孔を掘削し、保護ケーシングによって孔壁崩壊を防止する二重管掘削工法が用いられている。しかしながら、二重管掘削工法では大型のボーリングマシンが必要とされていた。
一方、ケリーロッドのケリーバーをロータリーテーブルマシンのケリーブッシュに掛け止めて、ケリーロッドを回転させながら掘削を行うシングル掘削工法が知られており、軽量小型ですむ。
そこで両者を組み合わせる掘削工法が考えられるが、二重管掘削工法は、所定深度まで掘削した後、拡縮型ビットを逆転させて縮径し、保護ケーシングを孔中に残してドリルストリングスを引き上げる工法であるため、例えば、保護ケーシングを介してドリルストリングスに回転伝達して掘削したとしても、ドリルストリングスの引き上げに際してはロータリーテーブルマシンの機構上、ドリルストリングスのみを回転させることができない。
これに対して、特開平14−256788号公報では、外周がロータリーテーブルマシンの回転テーブルの内周に係合して回転するドライブブッシュと、外周が前記ドライブブッシュの内周に係合して、その回転駆動力が伝達されるケーシングと、先端に拡縮自在なリトラクトビットが設けられ、前記ケーシングの内部に収容されて該ケーシングを掘進方向に連行するケリーロッドと、下端部が前記ケーシングの上端部に、内周が前記ケリーロッドの外周にそれぞれ係合して、前記ケーシングから伝達される回転駆動力を前記ケリーロッドに伝達する孫ブッシュであって、掘進により前記ドライブブッシュ位置に到達したとき、上端部が該ドライブブッシュに係合することにより、前記ケーシングの上端部との係合が解除するとともに、外周が該ドライブブッシュの内周に係合して、該ドライブブッシュから伝達される回転駆動力を前記ケリーロッドに伝達する孫ブッシュとを備えてなるロータリーテーブルマシン用二重管掘削装置が開示されている。
しかし、上記構成では、回転駆動がロータリーテーブルマシンの駆動力に基づくものであって、掘削速度が遅くなり、効率的に掘進することができない。
【特許文献1】特開平14−256788号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この発明は上記実情に鑑みてなされたもので、その主たる課題は、ケーシングをロータリーテーブルマシンで拘束し、ドリルストリングスを回転駆動させて効率のよい掘削を行うと共に、フラッシング時に、スライムの激しい飛散を抑えることのできる二重管掘削装置およびその工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、請求項1の発明では、
ケーシング内にドリルヘッドに連結したドリルストリングスを収納し、該ドリルストリングスを回転させて掘進を行う二重管掘削装置において、
ドリルストリングスの先端にはケーシングを連行する拡縮型のドリルビットが取付けられており、
ケーシングにケリーロッドを取付け、該ケリーロッドを介して係合するロータリーテーブルマシンによりケーシングの回転を規制すると共に、
ケーシングの上部にケーシングの軸線方向に摺動可能に略筒状のソケットを外嵌し、該ソケットに側方で開口する開口部を設け、ソケットの上端はドリルヘッドに連結していることを特徴とする。
また、請求項2の発明では、
前記ドリルストリングスの先端に設けられたドリルビットがリトラクトビットからなっており、該リトラクトビットに連結されるダウンザホールドリルと、該ダウンザホールドリルにロッドサブを介して連結される継ぎ足し可能なドリルロッドと、該ドリルロッドに連結されるエクステンションロッドとを有し、該エクステンションロッドの先端がドリルヘッドの回転軸に連結されていることを特徴とする。
更に、請求項3の発明では、
前記ソケットが、ケーシングに外嵌可能な略筒体からなっており、ソケットをケーシングに外嵌した際にケーシングのケリーバーを嵌め込むための下端側が開放されたスリットと、ソケットの中途位置の内周面で軸線側に向かって突出するショルダー部と、ソケットの側面で開口する開口部と、該開口部から外方へ突出してスライム飛散を防ぐためのシューターとを有していることを特徴とする。
また、請求項4の発明では、
請求項1から3のいずれかに記載の二重管掘削装置を用いた掘削工法において、
ドリルストリングスが、ドリルヘッドによって回転されて掘削を行い、
ケーシングはケーシングに固着されたケリーバーとロータリーテーブルマシンとが係合してケーシングの回転を規制して、前記ドリルヘッドの回転力の反力を受けており、
掘さく時のドリルビットを孔底から引き離して打撃動作を停止させて、ダウンザホールドリルに送り込まれている圧気でスライムを吹き上げる際に、前記ソケットが蓋となってスライムをソケットに設けた開口部から飛散させるようになっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
この発明は上記のように、ドリルヘッドの回転力をドリルストリングスに伝えてドリルビットを回転させて掘削を行うことができる。
ケーシングはロータリーテーブルマシンと係合してケーシングの回転を規制しているので、前記ドリルヘッドの回転力の反力をロータリーテーブルマシンで受けることができ、安定した状態で掘削を行うことができる。
また、フラッシング時には、ソケットを設けることで、スライムの激しい飛散を抑えることができ、環境の汚染を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
この発明の二重管掘削装置は、ドリルストリングスをドリルヘッドで回転させて掘進を行うと共に、ケーシングの上端にはドリルヘッドに取り付けられたソケットを摺動可能に嵌合しておき、ケーシングはケリーバーを介してロータリーテーブルマシンで回転しないように保持して、スライムの激しい飛散を抑えることを実現した。
【実施例1】
【0007】
[二重管掘削装置]
以下に、この発明の二重管掘削装置の実施例を図面を参照しながら以下に説明する。
二重管掘削装置1は、図1に示すように、二重管の内管となるドリルストリングスとして、拡縮可能なリトラクトビット2と、該リトラクトビット2に連結されるダウンザホールドリル3と、該ダウンザホールドリル3にロッドサブ4を介して連結される継ぎ足し可能なドリルロッドとしてのスクリューロッド5と、該スクリューロッド5に連結されるエクステンションロッド6とを有し、該エクステンションロッド6の先端がドリルヘッド7の回転駆動軸7aに連結されている。
また、図中、P1は連結用のジョイントピン、P2はシール用のパッキンである。
【0008】
ここでドリルヘッド7は、中途位置に一対のふれ止め部材71を突設し、上部にエアスイベル72を設けている。
エアスイベル72には、エアコンプレッサ100からラインオイラー110を経由し、エアーホース120が接続されており、圧気が供給される(図2参照)。
【0009】
次ぎに、二重管の外管として、前記ドリルストリングスを収納する継ぎ足し可能なケーシング8と、前記ドリルヘッド7に上端が取り付けられて、前記ケーシング8の上部に外嵌するソケット9とが設けられている(図1参照)。
更に、図2に示すように、前記ケーシング8と係合するロータリーテーブルマシン10を備えている。
該ロータリーテーブルマシン10は、後述のフラットバーからなるケリーバー81と係合してする凹部を有するケリーブッシュ(図示せず)を内蔵している。
【0010】
そして、上記ドリルヘッド7とロータリーテーブルマシン10には、図示例の場合にベースクレーン150の動力取り出し口160からコントロールユニット170を経由して圧油が、油圧ホース180によってそれぞれに供給されている(図2参照)。
【0011】
この二重管掘削装置1は、前記ドリルストリングスヘの回転力が、ロータリーテーブルマシン10ではなく、ドリルヘッド7により与えられる。
即ち、ドリルヘッド7による回転力はリトラクトビット2等に伝えられ、リトラクトビット2ヘの荷重は、ドリルヘッド7を含んだドリルストリングスの質量により与えられ、掘削が行われる。
【0012】
この際、ドリルヘッド7により発生した回転力の反力は、ソケット9やケーシング8を経てロータリーテーブルマシン10が受け、最終的にロータリーテーブルマシン10を支持する足場架台等が受ける。
従って、この発明では、掘削作業におけるロータリーテーブルマシン10は回転しないようにロックしており、反力受けとなるように機能させている。
【0013】
ドリルヘッド7には、中途位置で外方へ突出する一対のふれ止め部材71が装備されている。
ふれ止め部材71は、略水平に延びるアーム72の先端で直交方向に延びる幅広の掛止部73が設けられている。
【0014】
そして、ふれ止め部材71の掛止部73は、ロータリーテーブルマシン10に装着された一対のマストからなるガイド200と衝合して、ドリルストリングス全体の芯だしができるようになっており、またクレーンによるドリルストリングスのつり込み時の作業性も容易にしている。
【0015】
前記ケーシング8は、ソケット9を介して伝えられるドリルストリングスの質量により、掘削が進むにつれて一緒に孔内に挿入される。
または、一般的にダウンザホールドリルと拡縮式リトラクトビットを組み合わせた二重管連行式掘削工法の場合に行われるように、ケーシング8の先端部にやや肉厚のシュー(ビットリング)部材82を取り付け、このシュー部材82をリトラクトビット2に形成されているショルダー部23により打撃することで、引き込む事も可能である(図4参照)。
【0016】
また、地質条件等により、ケーシング8の挿入(連行)がスムーズに行かない場合には、反力受けとして不回転としていたロータリーテーブルマシン10を、ドリルヘッド7駆動のために接続している油圧ホース等が損傷しない範囲で、左右に揺動させてケーシング8の挿入(連行)を容易に行わせることができる。
【0017】
掘削ズリ(スライム)は、ダウンザホールドリル3を駆動するために送られ、ダウンザホールドリル3の駆動の役目を終えてビットから外部へ排気された圧気により、ケーシング8内径とダウンザホールドリル3、その上に接合されるスクリューロッド5の外径により形成される冠状の空隙を地上方向へ搬送される。
【0018】
本実施例では、ドリルロッドとしてスクリューロッドを使用して、少ない圧気量でも効率よくスライムの搬送ができるようにしている。
この場合、最終的にソケット9の側面の開口部93を経て、スライムはケーシング8から外に排除される。
【0019】
ダウンザホールドリル3は、リトラクトビット2を孔底から約10cm程度ストロークして引き離すと、打撃作動が停止し、送り込まれている圧気はダウンザホールドリル3の内部およびリトラクトビット2を通過できる最大量を以ってスライムを吹き上げるために利用できるようになる(この操作をフラッシングという)。
【0020】
この場合、ケーシング8の上端部は、ソケット9が蓋となって塞いでいるので、スライム飛散を抑制することができる。
さらに、ソケット9は、ケーシング8に対して嵌合しているだけなので、掘削軸に沿って上下に摺動できるため、掘削のためにドリルヘッド7を回転させているときでも、回転を止めることなく、前記フラッシングの操作を行うことができる。
【0021】
[掘削準備]
以下に、二重管掘削装置1の使用方法について説明する。
ケーシング8には、その外周にフラットバーからなるケリーバー81が取り付けられている(図1、図3参照)。
本実施例でケリーバー81は、ケーシング8の長さ方向で3つに分断されており、ケーシング8の軸線を中心にした周方向に等間隔に4箇所設けられている。
【0022】
このケーシング8は、ロータリーテーブルマシン10に先端側を挿入してセットされる。
ロータリーテーブルマシン10には前記ケーシング8のケリーバー81と係合する凹部を有するケリーブッシュ(図示省略)が組み込まれており、ケーシング8にロータリーテーブルマシン10が発生する回転力を伝達したり、ドリルヘッド7が発生する回転力の反力をロータリーテーブルマシン10に受けさせることができる。
【0023】
ケーシング8の上端部には、上端がドリルヘッド7に取り付けられたソケット9が外嵌している。
ソケット9には、ケーシング8に外嵌した際に、ケーシング8のケリーバー81を嵌め込むための下端側が開放されたスリット91が設けられている(図3参照)。
【0024】
ソケット9は、ケーシング8の上部に被せて使用に供される。
このソケット9の中途位置の内周面には軸線側に向かって突出するショルダー部92が設けられている。
このショルダー部92がケーシング8の上端部にかかることで、ドリルストリングス、即ち、ドリルヘッド7、エクステンションロッド6、スクリューロッド5、ロッドサブ4、ダウンザホールドリル3、およびリトラクトビット2の合計重量がほぼ給進荷重としてケーシング8に伝達される。
【0025】
[掘削]
掘削に際しては、図3に示すように、ベースクレーン100のウィンチ190を下げて、ソケット9および前記ドリルストリングスの重量をケーシング8にあずける。
そして、ダウンザホールドリル3を駆動するためのエアーをエアスイベル72から送り、ドリルストリングスの回転はソケット9上部に取り付けたドリルヘッド7により与える。
本実施例では右回転によりリトラクトビット2が拡径して、掘削をする。
【0026】
この際、ドリルヘッド7が発生する回転力の反力は、ソケット9からソケット9に設けたスリット91を介してケーシング8に設けたケリーバー81に伝わり、該ケリーバー81からケリーブッシュを介してロータリーテーブルマシン10の順に伝達される。
そこで、ロータリーテーブル10の回転機構をロックすることで、前記ドリルヘッド7の回転力の反力はロータリーテーブルマシン10が受け、さらにロータリーテーブルマシン10を固定した足場架台210等の支持構造が受けることになる。
【0027】
従って、掘削時には、基本的にロータリーテーブルマシン10は回転させない。
ただし、必要に応じて、ドリルヘッド7等に接続されたホース類120、170に負荷がかからない角度範囲で揺動程度を行ってもよい。
【0028】
また、掘削により発生したスライムは、ダウンザホールドリル3から排気されたエアーによって孔底から排除され、リトラクトビット2のデバイス部21に設けたスリット22を通ってケーシング8の内部に入り、ダウンザホールドリル3およびロッドサブ4までは、ケーシング8との隙間をそのまま排気の流れに乗って上部に吹き上げられ、ロッドサブ4より上部はスクリューロッド5に乗り運搬される。
【0029】
また、排気の一部は、スクリューロッド5とケーシング8の内壁との間隙を排気の流れに乗って上部に吹き上げられる。
スクリューロッド5の上端部位置は、ケーシング8から外れ、ソケット9にかかっている。
【0030】
ソケット9でのスクリューロッド5の上端部位置には、大きな開口部93があり、スクリューロッド5によってケーシング8内を運搬されてきたスライムは、この開口部93からソケット9の外部に排出される。
そして、ソケット9の開口部93には、スライム飛散を防ぐためのシューター94が外方へ突出して取り付けられている。
【0031】
[フラッシング]
図5に示すように、ドリルヘッド7を掘進用に駆動(右回転)させたまま、クレーンのウインチ190をやや巻き上げ、リトラクトビット2を孔底より上げると、ドリルヘッド7(ハンマー)は打撃を停止し、送気されているエアーの全量をもって孔底および孔内(ケーシング8内)のスライムを排除するためのフラッシングモードに切り替わる。
【0032】
本実施例のように、リトラクトビット2のような拡縮型ハンマービットを用いてケーシング8を連行しながら掘削する場合、特にケーシング8の最先端部とリトラクトビット2のデバイス部21の間の隙間S1にスライムが詰まりやすい。
そこで、本発明では前述のように、ソケット9を用いることで、ケーシング8とドリルストリングスを嵌合させながら、なお、掘削軸方向にある程度相対的にストロークできるようにして、スライムの詰まりを解消している。
【0033】
[ドリルストリングス・ケーシングの引き上げ]
ドリルヘッド7を右回転させたまま、図6に示すように、クレーンを巻き上げると、リトラクトビット2の肩部にケーシング8の下端部が1部拡大で示すように乗る形となるので、ドリルストリングスとケーシング8を同時に孔内から引き上げることができる。
【0034】
この際に、引き上げ抵抗が大きい場合には、回転反力を受けているロータリーテーブルマシン10を、ドリルヘッド7等に接続されたホース類120、180に負荷がかからない範囲で、揺動させる。
この操作は、何らかのトラブルにより掘削を中断したり、地質条件によりケーシング8を含めた全体を上下させて孔を形成させる必要が生じた場合等に行われる。
【0035】
[ケーシングの追加接続]
孔を深く掘進する場合には、図7に示すように、ケーシング8等を追加する必要があり、以下の手順によって行われる。
(1)1つのケーシング(説明の便宜上8Aとする)を用いた1ストロークの掘削終了する(図7(a)参照)。
【0036】
(2)ドリルヘッド7を吊り上げて、ソケット9を前記ケーシング8Aから取り外し、また、エクステンションロッド6を前記ケーシング8A内のスクリューロッド5Aから取り外す(図7(b)参照)。
【0037】
(3)公知の吊り治具により、追加用のケーシング8Bとスクリューロッド5Bを同時に吊り下げる。
次いで、追加用のスクリューロッド5Bを、ケーシング8A内のスクリューロッド5Aと図示省略のジョイントピンを用いて同軸に接続する(図7(c)参照)。
(4)次いで、ケーシング8Bの下端とケーシング8Aの上端とを突き合わせて接続し、ケリーバー81と同サイズのフラットバー81’をアーク溶接等でケーシング8Aと8Bの間を跨ぐように仮付けする(図7(d)参照)。
【0038】
(5)次いで、仮付けしたフラットバー81’を、ケーシング8Bにアーク溶接等で本付けする。これにより、ケーシング8Aとケーシング8Bとは一連のケーシングとなる(図7(e)参照)。
【0039】
(6)次いで、前記(2)で外したドリルヘッド7に連結されたソケット9およびエクステンションロッド6を吊り下げて、前記スクリューロッド5Bの上端をエクステンションロッド6に連結し、ソケット9をケーシング8Bの上方に外嵌して接続する(図7(f)参照)。
【0040】
(7)これにより、ケーシングとスクリューロッドの追加接続が完了する(図7(g)参照)。
以後、この繰り返しにより、さらにケーシングとスクリューロッドの追加接続を行うことができる。
また、これらと逆の手順によりケーシングやスクリューロッドを切り離すことができる。
前記アーク溶接等で固着した個所は、ガス溶断等で分離すればよい。
【0041】
[ドリルストリングスの回収]
掘削完了後、ドリルヘッド7を逆転(左回転)しながら、クレーンのウィンチ190を巻き上げることで、リトラクトビット2は、ケーシング8の内径以下に縮径する。
この状態でドリルヘッド7の回転を停止し、さらにクレーンのウィンチ190を巻き上げることで、ケーシング8のみを孔内に残したまま、ドリルストリングスを回収することができる(図8参照)。
ケーシング8がドリルストリングスに引っかかるなどして共上がりしそうな場合には、図示しないケーシング共上がり防止装置を使用することもできる。
さらに、ロータリーテーブルマシン10を、油圧オーガーヘッド等に接続されたホース類120、180に負荷がかからない範囲で揺動させる場合もある。
【0042】
[杭等の建て込み]
ドリルストリングスの回収が終了すると、次ぎに、ベースクレーン150のウインチ190を使用してH鋼や鋼管などの杭や井戸パイプなどの杭等Kを吊り下げて、ケーシング8内に挿入し、孔内に建て込む(図9参照)。
【0043】
[ケーシングの回収]
杭等Kを建て込んだ後に、前記ウインチ190を使用してケーシング8を引き上げて回収を行う。
地質条件等の影響で、クレーン150の吊り上げ力のみではケーシング8の回収が困難な場合には、ロータリテーブル10を用いてケリーバー81を介してケーシング8を回転させ、あるいは揺動させることで、ケーシング8の回収を容易に行うことができる(図10参照)。
なお、複数のケーシング8を継ぎ足して使用し掘削した場合には、前述のように接合個所を外し、または適宜切り離しを行えばよい。
【0044】
上記実施例はこの発明の一例を示すもので、ドリルストリングスの構成は、実施例に限定されず、公知の構成に置き換えることができる。
例えばスクリューロッドに変えてその他のオーガロッドを用いてもよい。
その他、要するにこの発明の要旨を変更しない範囲で種々設計変更しうること勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】二重管の取付状態を示す分解側面図である。
【図2】掘削作業を示す全体の側面図である。
【図3】二重管掘削装置の側断面図である。
【図4】ケーシングに設けたシュー部材とリトラクトビットとの関係を示す拡大断面図である。
【図5】ケーシングの最先端部とリトラクトビットの間の隙間を示す側断面図である。
【図6】リトラクトビットの肩部にケーシングの下端部が乗った状態を示す側断面図である。
【図7(a)】1ストロークの掘削終了状態を示す断面図である。
【図7(b)】ソケットをケーシングから取り外す状態の断面図である。
【図7(c)】追加用のケーシングとスクリューロッドを接続する状態の断面図である。
【図7(d)】フラットバーをケーシングに仮付けする状態の断面図である。
【図7(e)】同本付けした状態の断面図である。
【図7(f)】ドリルヘッドに連結されたソケットを吊り下げてケーシングに取り付ける状態の断面図である。
【図7(g)】ケーシングとスクリューロッドの追加接続が完了した状態の断面図である。
【図8】ドリルストリングスを吊り上げて回収する側断面図である。
【図9】杭を吊り下げて、ケーシング内に挿入し孔内に建て込む状態の側断面図である。
【図10】ケーシングを吊り上げて回収を行う状態の側断面図である。
【符号の説明】
【0046】
1 二重管掘削装置
2 リトラクトビット
3 ダウンザホールドリル
4 ロッドサブ
5 スクリューロッド
6 エクステンションロッド
7 ドリルヘッド
8 ケーシング
9 ソケット
10 ロータリーテーブルマシン
22 スリット
71 ふれ止め部材
81 ケリーバー
91 スリット
93 開口部
94 シューター
K 杭等
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング内にドリルヘッドに連結したドリルストリングスを収納し、該ドリルストリングスを回転させて掘進を行う二重管掘削装置において、
ドリルストリングスの先端にはケーシングを連行する拡縮型のドリルビットが取付けられており、
ケーシングにケリーロッドを取付け、該ケリーロッドを介して係合するロータリーテーブルマシンによりケーシングの回転を規制すると共に、
ケーシングの上部にケーシングの軸線方向に摺動可能に略筒状のソケットを外嵌し、該ソケットに側方で開口する開口部を設け、ソケットの上端はドリルヘッドに連結していることを特徴とする二重管掘削装置。
【請求項2】
ドリルストリングスの先端に設けられたドリルビットがリトラクトビットからなっており、該リトラクトビットに連結されるダウンザホールドリルと、該ダウンザホールドリルにロッドサブを介して連結される継ぎ足し可能なドリルロッドと、該ドリルロッドに連結されるエクステンションロッドとを有し、該エクステンションロッドの先端がドリルヘッドの回転軸に連結されていることを特徴とする請求項1に記載の二重管掘削装置。
【請求項3】
ソケットが、ケーシングに外嵌可能な略筒体からなっており、ソケットをケーシングに外嵌した際にケーシングのケリーバーを嵌め込むための下端側が開放されたスリットと、ソケットの中途位置の内周面で軸線側に向かって突出するショルダー部と、ソケットの側面で開口する開口部と、該開口部から外方へ突出してスライム飛散を防ぐためのシューターとを有していることを特徴とする請求項1に記載の二重管掘削装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の二重管掘削装置を用いた掘削工法において、
ドリルストリングスが、ドリルヘッドによって回転されて掘削を行い、
ケーシングはケーシングに固着されたケリーバーとロータリーテーブルマシンとが係合してケーシングの回転を規制して、前記ドリルヘッドの回転力の反力を受けており、
掘さく時のドリルビットを孔底から引き離して打撃動作を停止させて、ダウンザホールドリルに送り込まれている圧気でスライムを吹き上げる際に、前記ソケットが蓋となってスライムをソケットに設けた開口部から飛散させるようになっていることを特徴とする二重管掘削装置を用いた掘削工法。
【請求項1】
ケーシング内にドリルヘッドに連結したドリルストリングスを収納し、該ドリルストリングスを回転させて掘進を行う二重管掘削装置において、
ドリルストリングスの先端にはケーシングを連行する拡縮型のドリルビットが取付けられており、
ケーシングにケリーロッドを取付け、該ケリーロッドを介して係合するロータリーテーブルマシンによりケーシングの回転を規制すると共に、
ケーシングの上部にケーシングの軸線方向に摺動可能に略筒状のソケットを外嵌し、該ソケットに側方で開口する開口部を設け、ソケットの上端はドリルヘッドに連結していることを特徴とする二重管掘削装置。
【請求項2】
ドリルストリングスの先端に設けられたドリルビットがリトラクトビットからなっており、該リトラクトビットに連結されるダウンザホールドリルと、該ダウンザホールドリルにロッドサブを介して連結される継ぎ足し可能なドリルロッドと、該ドリルロッドに連結されるエクステンションロッドとを有し、該エクステンションロッドの先端がドリルヘッドの回転軸に連結されていることを特徴とする請求項1に記載の二重管掘削装置。
【請求項3】
ソケットが、ケーシングに外嵌可能な略筒体からなっており、ソケットをケーシングに外嵌した際にケーシングのケリーバーを嵌め込むための下端側が開放されたスリットと、ソケットの中途位置の内周面で軸線側に向かって突出するショルダー部と、ソケットの側面で開口する開口部と、該開口部から外方へ突出してスライム飛散を防ぐためのシューターとを有していることを特徴とする請求項1に記載の二重管掘削装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の二重管掘削装置を用いた掘削工法において、
ドリルストリングスが、ドリルヘッドによって回転されて掘削を行い、
ケーシングはケーシングに固着されたケリーバーとロータリーテーブルマシンとが係合してケーシングの回転を規制して、前記ドリルヘッドの回転力の反力を受けており、
掘さく時のドリルビットを孔底から引き離して打撃動作を停止させて、ダウンザホールドリルに送り込まれている圧気でスライムを吹き上げる際に、前記ソケットが蓋となってスライムをソケットに設けた開口部から飛散させるようになっていることを特徴とする二重管掘削装置を用いた掘削工法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7(a)】
【図7(b)】
【図7(c)】
【図7(d)】
【図7(e)】
【図7(f)】
【図7(g)】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7(a)】
【図7(b)】
【図7(c)】
【図7(d)】
【図7(e)】
【図7(f)】
【図7(g)】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2008−19688(P2008−19688A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−194959(P2006−194959)
【出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【出願人】(502270051)株式会社タニガキ建工 (9)
【出願人】(000168506)鉱研工業株式会社 (43)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【出願人】(502270051)株式会社タニガキ建工 (9)
【出願人】(000168506)鉱研工業株式会社 (43)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]