説明

亜鉛めっき処理鋼構造物の塗装方法

【課題】複層塗膜の膜厚が200μm以下の場合であっても素地との付着性や防食性に非常に優れた複層塗膜を形成できる亜鉛めっき処理鋼構造物の塗装方法を提供する。
【解決手段】亜鉛めっき処理された鋼構造物表面に、(A)1分子中にエポキシ基を2個以上
有するエポキシ樹脂、(B)変性樹脂、(C)アミン系硬化剤、(D)リン酸系防錆顔料及び(E)体質顔料を含有する下塗り塗料(I)を硬化膜厚で80〜150μmになるように塗装し、ついで
フッ素樹脂系塗料、アクリルシリコン樹脂系塗料及びポリウレタン樹脂系塗料から選ばれる少なくとも1種の上塗り塗料(II)を硬化膜厚で15〜60μmとなるように塗装する亜鉛めっき処理鋼構造物の塗装方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送電用鉄塔、通信用鉄塔などの亜鉛めっき処理鋼構造物の塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
送電用鉄塔等の鋼構造物は、風雨に曝され錆の発生しやすい環境にあるため、その鉄鋼材表面には亜鉛めっき等の防食処理が施されている。
【0003】
溶融亜鉛めっき処理等の亜鉛めっき処理がされた鉄鋼材表面は、通常、鉄素地に近い方から鉄と亜鉛の合金層であるδ1層及びζ層が順次形成され、その上に亜鉛層であるη層が形成されてなるめっき皮膜の構造となっている。亜鉛めっき処理された鋼構造物は、従来、メンテナンスフリーと言われ、無塗装で使用されるか、又は航空標識等の識別が必要とされる場合、周辺環境との調和が必要とされる場合等に着色塗装され、使用されている。
【0004】
しかし、近年、酸性雨等の影響により予想以上に亜鉛層のη層の消耗が速くなり、η層が消失し鉄と亜鉛の合金層であるζ層が露出したり、さらにはη層及びζ層が消失し鉄素地に接する該合金層であるδ1層が露出した送電用鉄塔等の鋼構造物が数多く存在するのが実情である。ζ層又はδ1層が露出した鋼構造物では、徐々に赤錆が発生する。かかる赤錆は、外観の悪さのみならず、鋼構造物の強度の低下を招く要因ともなるため、防食塗装をすることが必要となる。
【0005】
特許文献1には、このような錆の出た鋼構造物に、防食塗装する方法として、鋼構造物の表面をケレン処理し、次いで下塗り塗装、上塗り塗装等を施す方法を提案されている。また特許文献2には、エポキシ樹脂、リン片状顔料、ケチミン化合物等を含有する一液型エポキシ樹脂塗料を下塗り塗料として用いた塗装方法を提案されている。これらの塗装方法によれば、亜鉛めっき処理が施された鋼構造物表面に付着性や防食性に優れた塗膜の形成が可能であるが、亜鉛めっき皮膜中の亜鉛層のη層が消耗して合金層のζ層やδ1層が露出している箇所においては、付着性が不十分となったり、長期の防食性を確保し難かった。
【0006】
これに対し特許文献3には、形成塗膜の収縮応力が制御された下塗り塗料を特定膜厚で塗装し、その上にリン片状顔料を含有する上塗り塗料を特定膜厚で塗装することによって、δ1層が露出した素地表面に対しても付着性や防食性が確保された塗膜が形成できる塗装方法が提案されている。しかしながら、このように厚膜仕様にするにはコスト高となりやすく、また上塗り塗料を高粘度で且つ厚膜であるため、塗装コストが高くなりやすい上に塗膜面の凹凸が大きく美粧性に欠ける場合があった。そこで膜厚を低減してこれらの問題を解消しようと検討したが、複層塗膜の膜厚が200μm程度以下の場合には屋外環境下において長期の付着性を確保し難かった。
【特許文献1】特開2000−140746号公報
【特許文献2】特開2001−198521号公報
【特許文献3】WO2007/23934パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、亜鉛めっき処理が施された送電用鉄塔等の鋼構造物に対し、複層塗膜の膜厚が200μm以下の場合であっても素地との付着性や防食性に非常に優れた複層塗
膜を形成できる鋼構造物の塗装方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下記の塗装方法を提供するものである。
1.亜鉛めっき処理された鋼構造物表面に、(A)1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂、(B)変性樹脂、(C)アミン系硬化剤、(D)リン酸系防錆顔料及び(E)体質顔料を含有し、該変性樹脂(B)の含有量が樹脂(A)の固形分100重量部に対して10〜150重量部であり、該アミン系硬化剤(C)の配合割合が、エポキシ樹脂(A)中のエポキシ基1当量に対して、アミン系硬化剤(C)中の活性水素当量が0.4〜1.2当量になる割合であって、且つ該リン酸系防錆顔料(D)の含有量が該樹脂(A)、樹脂(B)及び硬化剤(C)の合計固形分100重量部に対して10〜150重量部であり、形成される塗膜における顔料体積濃度が35〜60%の範囲にある下塗り塗料(I)を硬化膜厚で80〜150μmとなるように塗装し、ついでフッ素樹脂系塗料、アクリルシリコン樹脂系塗料及びポリウレタン樹脂系塗料から選ばれる少なくとも1種の上塗り塗料(II)を硬化膜厚で15〜60μmとなるように塗装する塗装方法であって、該塗料(I)及び(II)による複層塗膜の60℃熱水浸漬3000時間後の付着力が2.5MPa以上であることを特徴とする亜鉛めっき処理鋼構造物の塗装方法、
2.下塗り塗料(I)で使用する顔料が防錆顔料(D)、体質顔料(E)及び着色顔料(F)からなり、その体質顔料(E)全量中に珪酸アルミニウム系、珪酸マグネシウム系、珪酸アルミニウムカリウム系及びシリカ系から選ばれる少なくとも1種を50重量%以上含有するものであって、形成される塗膜における顔料体積濃度が40〜50%の範囲であり、なおかつ変性樹脂(B)の含有量が、樹脂(A)の固形分100重量部に対して30〜100重量部である1項記載の塗装方法、
3.下塗り塗料(I)におけるアミン系硬化剤(C)の配合割合が、エポキシ樹脂(A)中のエポキシ基1当量に対して、アミン系硬化剤(C)中の活性水素当量が0.4〜0.8当量になる割合である1又は2項記載の塗装方法、
4.下塗り塗料(I)におけるアミン系硬化剤(C)の配合割合が、エポキシ樹脂(A)中のエポキシ基1当量に対して、アミン系硬化剤(C)中の活性水素当量が0.5〜0.7当量になる割合で、体質顔料(E)がその全量中に珪酸アルミニウム系、珪酸マグネシウム系、珪酸アルミニウムカリウム系及びシリカ系から選ばれる少なくとも1種を70重量%以上含有する3項記載の塗装方法、
5.下塗り塗料(I)におけるアミン系硬化剤(C)が、ポリアミン化合物のケチミン化物に対してアミノシランをモル比2:1〜20:1の範囲で配合してなり、アミン系硬化剤(C)の配合割合が、エポキシ樹脂(A)中のエポキシ基1当量に対して、アミン系硬化剤(C)中の活性水素当量が0.7〜1.0当量になる割合である1又は2項記載の塗装方法、
6.該ケチミン化物の活性水素当量が60〜150であって、アミノシランの活性水素当量が60〜120である5項記載の塗装方法、
7.下塗り塗料(I)が、アミン系硬化剤(C)以外の成分を含有する主剤と、アミン系硬化剤(C)を含有する硬化剤との二液型塗料であって、主剤にグリシジル基含有シランカップリング剤を配合し、アミノシランを硬化剤中に配合してなる1〜6のいずれか1項に記載の塗装方法、
8.上塗り塗料(II)が、その単独塗膜の塩水噴霧1000時間後のフクレ発生面積率が5%以下となる塗料である1〜7のいずれか1項に記載の塗装方法、
9.亜鉛めっき処理が施された鋼構造物の表面が、鉄と亜鉛の合金層である、ζ層の露出面及び/又はδ1層の露出面である1〜8のいずれか1項に記載の塗装方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、亜鉛めっき処理が施された鋼構造物に対して、特定の下塗り塗料を特定膜厚で塗装し、その上に特定の上塗り塗料を特定膜厚で塗装してなる複層塗膜の60℃
熱水浸漬3000時間後の付着力が特定の値以上を確保することにより、複層塗膜の膜厚が200μm以下の場合であっても厳しい屋外環境下でも長期にわたって素地との付着性が確保され、また防食性、仕上り性、塗装作業性にも優れた複層塗膜を形成することができる。
【0010】
特に請求項3、4にかかる発明によれば、塗膜の架橋密度が低く、防食耐久性の高い塗膜を形成していると考えられ、このようなことにより上塗り塗料(II)との塗り重ねで形成された複層塗膜において、60℃熱水浸漬3000時間後の付着力が特定の値以上を確保できたと考えられる。また請求項5、6にかかる発明によれば塗膜の架橋密度が低く、可撓性、耐水性に優れた防食耐久性の高い塗膜を形成していると考えられ、このようなことにより上塗り塗料(II)との塗り重ねで形成された複層塗膜において、60℃熱水浸漬3000時間後の付着力が特定の値以上を確保できたと考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
下塗り塗料(I)
本発明方法に使用する下塗り塗料(I)は、1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂(A)、変性樹脂(B)、アミン系硬化剤(C)、リン酸系防錆顔料(D)及び体質顔料(E)を含有するものである。
【0012】
上記エポキシ樹脂(A)は、1分子中にエポキシ基を2個以上、好ましくは2〜5個有するエポキシ樹脂である。また、エポキシ樹脂(A)は、数平均分子量が約350〜3,000であるのが好ましく、約400〜1,500であるのがより好ましい。更に、エポキシ当量が約80〜1,000であるのが好ましく、約150〜700であるのがより好ましい。
【0013】
上記エポキシ樹脂(A)の例としては、多価アルコール、多価フェノールなどと過剰のエピクロルヒドリン又はアルキレンオキシドとを反応させて得られるエポキシ樹脂を挙げることができる。多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジグリセロール、ソルビトール等が挙げられる。また、多価フェノールとしては、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[ビスフェノールA]、ハロゲン化ビスフェノールA、4,4−ジヒドロキシフェニルメタン[ビスフェノールF]、トリス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、レゾルシン、テトラヒドロキシフェニルエタン、ノボラック型多価フェノール、クレゾール型多価フェノールなどが挙げられる。
【0014】
これら以外のエポキシ樹脂としては、例えば、1,2,3−トリス(2,3−エポキシプロポキシ)プロパン、フタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸グリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸グリシジルエステル、ダイマー酸グリシジルエステル、テトラグリシジルアミノジフェニルメタン、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチルカルボキシレート、トリグリシジルイソシアヌレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルカルボキシレート、ポリプロピレングリコールグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0015】
上記変性樹脂(B)は、形成塗膜の可撓性、耐水性向上の点から配合されるものであり、上記エポキシ樹脂(A)の固形分100重量部に対して10〜150重量部、好ましくは硬化性、防食性の観点から30〜100重量部配合されることが望ましい。
【0016】
変性樹脂(B)の具体例としては、C4系〜C12系石油樹脂又はこれらの混合物、ケ
トン系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、クロマン系樹脂、キシレン系樹脂、トルエン系樹脂、テルペン系樹脂、フェノール系樹脂、スチレン系樹脂、インデン系樹脂などが挙げられる。さらに変性樹脂(B)としてウレタン変性エポキシ樹脂も使用できる。変性樹脂(B)は、液状であっても固形のものであっても有効ではあるが、塗料の固形分を高く保つためには液状であるのほうが好ましい。
【0017】
上記アミン系硬化剤(C)は、前記エポキシ樹脂(A)の硬化剤であり、従来公知のものが特に制限なく使用できる。該アミン系硬化剤としては、例えば、ポリアミン化合物等が挙げられる。
【0018】
上記ポリアミン化合物は、脂肪族系、脂環族系及び芳香族系のいずれであってもよい。該ポリアミン化合物は、エポキシ樹脂と硬化反応を行う第1級アミノ基及び/又は第2級アミノ基を有することが必要であるが、一般に約2,000以下、好ましくは約30〜1,000の範囲内の活性水素当量を持つことが有利である。また、該ポリアミン化合物は、一般に約5,000以下、好ましくは約80〜3,000の範囲内の数平均分子量を有することが好適である。
【0019】
該ポリアミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ペンタエチレンヘキサミンなどの脂肪族ポリアミン類;メタキシレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、フェニレンジアミンなどの芳香族ポリアミン類;イソホロンジアミン、シクロヘキシルプロピルジアミン、ノルボルネンジアミンなどの脂環族ポリアミン類;これらポリアミン類のエポキシアダクト物などの変性ポリアミン類;分子末端に少なくとも1個の第1級アミノ基を有するポリアミド類等が挙げられる。さらにはこれらポリアミン化合物のケチミン化物を使用することができる。ケチミン化物は上記ポリアミン化合物をカルボニル化合物でブロックすることによって得られ、カルボニル化合物としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;アセトアルデヒド、ベンズアルデヒドなどのアルデヒド類などを挙げることができる。
【0020】
また亜鉛メッキ面への付着性の点から、上記ポリアミン化合物のケチミン化物にアミノシランを併用することができる。アミノシランとしては、例えばγ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシランなどが挙げられる。上記ポリアミン化合物のケチミン化物にアミノシランを併用する場合には、これらをモル比で2:1〜20:1、好ましくは4:1〜7:1の範囲で使用することが硬化性、付着性の点から望ましい。
【0021】
上記アミン系硬化剤(C)の配合割合は、前記エポキシ樹脂(A)中のエポキシ基1当量に対して、アミン系硬化剤(C)中の活性水素当量が0.4〜1.2当量程度、好ましくは0.4〜1.0当量程度になるような割合で用いることが塗膜の物性、硬化性、防食性の観点から望ましい。
【0022】
防錆顔料(D)としては、従来公知のものが特に制限なく使用でき、リン酸系防錆顔料、亜リン酸系防錆顔料、ポリリン酸系防錆顔料、リンモリブデン酸系防錆顔料などが挙げられる。これらの具体例としては、例えば、リン酸亜鉛、リン・ケイ酸亜鉛、リン酸アルミニウム亜鉛、リン酸カルシウム亜鉛、リン酸カルシウム、ピロリン酸アルミニウム、ピロリン酸カルシウム、トリポリリン酸二水素アルミニウム、メタリン酸アルミニウム、メタリン酸カルシウム、リンモリブデン酸亜鉛、リンモリブデン酸アルミニウムなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのうち、特に形成塗膜の防食性の点からトリポリリン酸二水素アルミニウム、リンモリブデン酸アルミニウムが好ましい。
【0023】
体質顔料(E)としては、従来公知のものが特に制限なく使用でき、例えばクレー、カオリンなどを代表とする珪酸アルミニウム系、タルクなどを代表とする珪酸マグネシウム系、マイカなどを代表とする珪酸アルミニウムカリウム系及び珪石粉,石英粉などを代表とするシリカ系などが特に好ましいが、これらに限定されるものではない。特に形成塗膜の耐久性の点から、体質顔料(E)全量中に珪酸アルミニウム系、珪酸マグネシウム系、珪酸アルミニウムカリウム系及びシリカ系から選ばれる少なくとも1種を50重量%以上、好ましくは70重量%含有することが好ましい。
【0024】
下塗り塗料(I)には、上記防錆顔料、体質顔料のほかに必要に応じて、従来公知の着色顔料(F)を配合することができる。
【0025】
着色顔料(F)としては、従来公知のものが特に制限なく使用でき、例えばチタン白、ベンガラ、カーボンブラック、フタロシアニンブルーなどが挙げられる。
【0026】
本発明では、内部応力緩和の点から、下塗り塗料(I)により形成される塗膜における顔料体積濃度が35〜60%、好ましくは塗料性状の安定性の観点から40〜50%の範囲にあることが望ましい。ここで「顔料体積濃度」は、塗料中の全樹脂分と全顔料との合計固形分に占めるその顔料分の体積割合である。本明細書において、顔料の体積を算出する際のもとになる顔料の比重は「塗料原料便覧第6版」(社団法人日本塗料工業会)によるものであり、また、樹脂固形分の比重は1と近似するものとする。
【0027】
上記記載のうち、顔料種を適切に選択及び顔料体積濃度の設定、さらには変性樹脂の併用と、エポキシ基1当量に対して活性水素当量が特に0.4〜0.8当量程度、さらに好ましくは0.5〜0.7である事との相乗効果により、本発明により得られる下塗り塗膜(I)は従来の技術により得られる塗膜より架橋密度が低く、防食耐久性の高い塗膜を形成していると考えられる。このようなことにより上塗り塗料(II)との塗り重ねで形成された複層塗膜において、60℃熱水浸漬3000時間後の付着力が2.5MPa以上、さらには3.5MPa以上を得ることができ、さらには塩水噴霧5000時間後のクロスカット部からの錆、フクレ幅が5mm以内とすることができたと考えられる。
【0028】
また上記、顔料体積濃度の設定及び変性樹脂の併用と、特にアミン系硬化剤としてケチミン化物とアミノシランを特定比で使用し且つエポキシ基1当量に対して活性水素当量が0.7〜1.0当量であることとの相乗効果により、塗膜の架橋密度が低めで可撓性、耐水性に優れた防食耐久性の高い塗膜を形成していると考えられる。このようなことにより上塗り塗料(II)との塗り重ねで形成された複層塗膜において、60℃熱水浸漬3000時間後の付着力が2.5MPa以上、さらには3.5MPa以上を得ることができ、さらには塩水噴霧5000時間後のクロスカット部からの錆、フクレ幅が5mm以内とすることができたと考えられる。
【0029】
上記の下塗り塗料(I)には、必要に応じて、付着性及び顔料分散性を向上させる観点から、シランカップリング剤を配合することができる。シランカップリング剤としては、前述のアミノシランを除く、例えばγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランなどのグリシジル基含有シランカップリング剤;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプト基含有シランカップリング剤などが挙げられる。その含有量は、塗料中の樹脂固形分100重量部に対して0.5〜20重量部、好ましくは1〜15重量部の範囲内が適当である。これらのうちグリシジル基含有シランカップリング剤を主剤に用いた場合には、塗料の安定性向上の点から、前述のアミノシランを硬化剤中に配合することが望ましい。この場合のアミノシランの配合量は塗料中の樹脂固形分100重量部に対して0.5〜20重量部、好ましくは1〜15重量部の範囲内が適当である。
【0030】
また、下塗り塗料(I)には、さらに必要に応じて、増粘剤、可塑剤、充填剤、タレ止め剤、顔料分散剤等の各種添加剤を配合することができる。
【0031】
下塗り塗料(I)は、通常、有機溶剤型塗料であり、その固形分含量は40〜80重量%程度であるのが好ましい。有機溶剤としては、樹脂成分製造時のものでもよく、又固形分調整等の目的で適宜追加してもよい。有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、芳香族ナフサ等の芳香族炭化水素系溶剤;n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−デカン、n−ドデカン、シクロペンタン、シクロヘキサン、ミネラルスピリット等の脂肪族炭化水素系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル等のエステル系溶剤;エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール等のアルコール系溶剤;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール等のグリコール系溶剤;これらグリコール系溶剤のメチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル、ブチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤等の従来公知の溶剤が使用できる。
【0032】
下塗り塗料(I)は、通常、アミン系硬化剤(C)以外の成分を含有する主剤と、アミン系硬化剤(C)を含有する硬化剤との二液型塗料であり、塗装時に、主剤と硬化剤とを混合して、使用される。混合後の可使時間は、20℃において、通常、1〜8時間程度である。
【0033】
上塗り塗料(II)
本発明方法における上塗り塗料(II)は、フッ素樹脂系塗料、アクリルシリコン樹脂系塗料及びポリウレタン樹脂系塗料から選ばれる少なくとも1種である。
【0034】
フッ素樹脂系塗料は、フッ素樹脂を主な被膜形成成分とする塗料であり、好適にはフッ素樹脂(i)、着色顔料(ii)及びイソシアネート系硬化剤(iii)を含有する塗料が使
用できる。
【0035】
フッ素樹脂(i)としては、フルオロオレフィン−ビニルエーテル系、フルオロオレフィン−ビニルエステル系等のフルオロオレフィン系フッ素樹脂、さらにはフッ化ビニリデン系フッ素樹脂が、形成塗膜の耐候性、塗装作業性等の点から好適に使用できる。
【0036】
フルオロオレフィンとしては、例えばテトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン等の炭素数2〜3のフルオロオレフィンが好適に使用できる。ビニルエーテルとしては、例えばエチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、フルオロアルキルビニルエーテル、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)等のアルキルビニルエーテルが好ましい。ビニルエステルとしては、例えば酪酸ビニル、酢酸ビニル、分岐状のアルキル基を有する脂肪酸ビニルエステル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステルが好ましい。また、アルキルアリルエーテル、アルキルアリルエステル、アルキルイソプロペニルエーテル、カルボン酸イソプロペニルエステル、アルキルメタリルエーテル、カルボン酸メタリルエステル、α−オレフィン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等から選ばれる少なくとも1種の単量体をフルオロオレフィンに対してさらに共重合してもよい。
【0037】
フッ素樹脂(i)は、フルオロオレフィンの共重合割合が30〜70モル%、好ましくは40〜60モル%であることが望ましく、水酸基価は30〜60mgKOH/gの範囲内が形成塗膜の耐候性等の点から望ましい。
【0038】
着色顔料(ii)としては、従来公知のものが特に制限なく使用でき、例えば二酸化チタン、カーボンブラック、酸化亜鉛、ベンガラ、ベンジジンイエロー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、カルバゾールバイオレットなどが挙げられる。これらは1種あるいは2種以上混合して使用することができる。上記着色顔料には必要に応じて、従来公知の光輝顔料、体質顔料などを適宜併用することができる。
イソシアネート系硬化剤(iii)としては、1分子中に2個以上のイソシアネート基を
含有する化合物を含むものであれば特に制限なく使用でき、例えばテトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート;4,4´−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネートなどの脂環式ジイソシアネート;キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ポリトリレンポリイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンジイソシアネート、ポリフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネートが挙げられる。また、この他に上記のポリイソシアネートのイソシアヌレート変性体、ウレタンポリマー(例えばポリオールと過剰のポリイソシアネートとの反応生成物であって、イソシアネート基を分子末端に持つもの)、ビュウレット体等の類似の化合物が挙げられ、これらは1種又は2種以上混合して使用できる。
【0039】
イソシアネート系硬化剤(iii)の配合割合は、フッ素樹脂(i)中の水酸基1当量に
対して、イソシアネート系硬化剤(iii)のイソシアネート基の当量が0.1〜1.5当
量程度、好ましくは0.7〜1.3当量程度になるような割合で用いることが塗膜の硬化性、耐候性の観点から望ましい。 アクリルシリコン樹脂系塗料は、加水分解性シリル基を有する重合性単量体とその他の重合性単量体を共重合したアクリルシリコン樹脂を主な被膜形成成分とし、さらに有機スズ化合物等の加水分解性シリル基の脱水縮合反応の触媒を配合してなる塗料であり、さらに上述の着色顔料(ii)及びイソシアネート系硬化剤(iii)を含有することができる。
【0040】
ポリウレタン樹脂系塗料としては、ポリウレタンラッカー系樹脂を用い、溶剤を揮散させることにより乾燥塗膜を得る1液型ポリウレタン樹脂塗料、あるいは主剤としてアクリルポリオールやポリエステルポリオール等のポリオールを用い、硬化剤に上述のようなポリイソシアネートを使用して、塗装直前に主剤、硬化剤を所定の割合にて混合して使用する2液型ポリウレタン 樹脂塗料などが挙げられ、特に形成塗膜の耐候性の点からは2液
型ポリウレタン樹脂塗料が好適に使用できる。
【0041】
上記のような上塗り塗料(II)には、さらに必要に応じて、硬化触媒、増粘剤、紫外線吸収剤、光安定剤、レベリング剤、タレ止め剤、顔料分散剤、脱水剤、消泡剤等の各種添加剤を配合することができる。
【0042】
上塗り塗料(II)は、通常、有機溶剤型塗料であり、その固形分含量は40〜80重量%程度であるのが好ましい。有機溶剤としては、樹脂成分製造時のものでもよく、又固形分調整等の目的で適宜追加してもよい。このような有機溶剤としては、前述の下塗り塗料(I)の説明で列記したものの中で、アルコール系溶剤、グリコール系溶剤、グリコールエーテル系溶剤を除いたものの中から適宜選択して使用できる。
【0043】
本発明においては、上塗り塗料(II)として、その単独塗膜の塩水噴霧1000時間後のフクレ発生面積率が5%以下、好ましくは3%以下となる塗料を選択することが、下塗
りと組み合わせて塗装をしたとき、複層塗膜としての防錆性を向上させる点から好適である。
【0044】
ここで単独塗膜の塩水噴霧は、酸洗鋼板の表面を脱脂した上に直接上塗り塗料を乾燥膜厚が60μmとなるように塗装してなる試験板を用いて、JIS K5600−7−1:1999の耐中性塩水噴霧試験を1,000時間実施するものである。
塗装工程
本発明の塗装方法は、溶融亜鉛めっき処理等の亜鉛めっき処理が施された送電用鉄塔、通信用鉄塔、橋脚、ガードレール等の鋼構造物の表面に、下塗り塗料(I)を塗装し、次いでその上に上塗り塗料(II)を塗装するものである。
【0045】
亜鉛めっき処理が施された送電用鉄塔等の鋼構造物としては、無塗装のものであっても、航空標識色等の塗装による旧塗膜があるものであってもよい。また、鋼構造物の表面は、亜鉛層であるη層が残存する面、η層が消失し、鉄と亜鉛の合金層であるζ層が露出した面、さらにはη層及びζ層が消失しδ1層が露出した面のいずれであってもよい。
【0046】
本発明では、塗装部位に錆が発生している場合には、ブラスト処理、動力工具処理、ワイヤーブラシなどによる手ケレンなどの下地処理を適宜行うことができる。劣化した旧塗膜がある場合には、同様の下地処理により旧塗膜を除去しておくことが好ましい。また、劣化していない旧塗膜がある場合には、下地処理に代えて、目粗し処理を行うのが好ましい。
【0047】
上記下塗り塗料(I)や上塗り塗料(II)の塗装方法としては、刷毛塗り、ローラー塗装、スプレー塗装などの一般的な塗装方法を用いることができる。その塗布量は、下塗り塗料(I)が、硬化膜厚で80〜150μm程度、好ましくは90〜120μm程度の範囲内、上塗り塗料(II)が、硬化膜厚で15〜60μm程度、好ましくは25〜50μm程度の範囲内となる量とする。これらの範囲外では、防食性低下や付着性低下、あるいは塗装作業性の低下などの不具合を生じる場合があるので好ましくない。
【0048】
下塗り塗料(I)塗装後は、通常、16時間〜7日間程度、常温で乾燥硬化させた後、上塗り塗料(II)を塗装するのが好ましい。
【0049】
本発明においては、上記下塗り塗料(I)及び上塗り塗料(II)による複層塗膜の60℃熱水浸漬3000時間後の付着力が2.5MPa以上、好ましくは3.5MPa以上であることが、屋外環境下において長期の付着性を確保する点から必須である。複層塗膜の60℃熱水浸漬3000時間後の付着力が2.5MPa未満では、屋外環境下において長期の付着性を確保することが困難になるので望ましくない。
【0050】
ここで複層塗膜の60℃熱水浸漬は、JIS K 5600−6−1:1999 塗料一般試験方法−第6部:塗膜の化学的性質−第1節:耐液体性(一般的方法)の7.方法1(浸せき法)において、試験液として純水を用い試験温度として60±2℃とした方法に従って行なわれ、複層塗膜の付着力はJIS K 5600−5−7:1999 塗料一般試験方法−第5部:塗膜の機械的性質−第7節:付着力(プルオフ法)によって測定される。なお、浸漬する純水液は500時間ごとに新しい純水液と交換する。
【実施例】
【0051】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。尚、「部」及び「%」は、別記しない限り「重量部」及び「重量%」を示す。
(1)下塗り塗料主剤の製造
製造例1 主剤X−1の製造
2リットル容器に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂液(注1)200部、変性樹脂B1(注2)100部、シランカップリング剤(注3)2部、分散剤(注4)2部、珪酸マグネシウム250部、トリポリリン酸二水素アルミニウム100部、二酸化チタン200部、タレ止め剤(注6)40部、消泡剤(注7)1部、キシレン55部、プロピレングリコールモノメチルエーテル50部を順次仕込み、アジテーターで混合し、サンドミルにて JIS K 5600-2-5 に規定の分散度にて50μm以下になるまで分散して、下塗り塗料の主剤X−1を得た。
【0052】
上記分散度は、グラインドゲージ(粒ゲージ)を用いて測定した。以下の製造例においても同様である。
【0053】
製造例2 主剤X−2の製造
2リットル容器に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂液(注1)200部、変性樹脂B2(注5)70部、シランカップリング剤(注3)2部、分散剤(注4)2部、珪酸アルミニウムカリウム250部、リンモリブデン酸アルミニウム100部、二酸化チタン200部、タレ止め剤(注6)40部、消泡剤(注7)1部、キシレン85部、プロピレングリコールモノメチルエーテル50部を順次仕込み、アジテーターで混合し、サンドミルにて JIS K 5600-2-5 に規定の分散度にて50μm以下になるまで分散して、下塗り塗料の主剤X−2を得た。
【0054】
製造例3 主剤X−3の製造
2リットル容器に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂液(注1)200部 変性樹脂B1(注2)25部、シランカップリング剤(注3)2部、分散剤(注4)2部、珪酸マグネシウム250部
、リンモリブデン酸アルミニウム100部、二酸化チタン200部、タレ止め剤(注6)40部、
消泡剤(注7)1部、キシレン105部、プロピレングリコールモノメチルエーテル75部を順
次仕込み、アジテーターで混合し、サンドミルにて JIS K 5600-2-5 に規定の分散度にて50μm以下になるまで分散して、下塗り塗料の主剤X−3を得た。
【0055】
製造例4 主剤X−4の製造
2リットル容器に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂液(注1)200部、変性樹脂B2(注5)160部、シランカップリング剤(注3)2部、分散剤(注4)2部、珪酸マグネシウム190部、トリポリリン酸二水素アルミニウム100部、二酸化チタン200部、タレ止め剤(注6)40部、消泡剤(注7)1部、キシレン55部、プロピレングリコールモノメチルエーテル50部を順次仕込み、アジテーターで混合し、サンドミルにて JIS K 5600-2-5 に規定の分散度にて50μm以下になるまで分散して、下塗り塗料の主剤X−4を得た。
【0056】
製造例5 主剤X−5の製造
2リットル容器に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂液(注1)200部、変性樹脂B1(注2)100部、シランカップリング剤(注3)2部、分散剤(注4)2部、硫酸バリウム355部、トリポリリン酸二水素アルミニウム100部、二酸化チタン200部、タレ止め剤(注6)40部、消泡剤(注7)1部を順次仕込み、アジテーターで混合し、サンドミルにて JIS K 5600-2-5 に規定の分散度にて50μm以下になるまで分散して、下塗り塗料の主剤X−5を得た。
【0057】
製造例6 主剤X−6の製造
2リットル容器に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂液(注8)130部、変性樹脂B3(注9)140部、シランカップリング剤(注3)5部、分散剤(注4)2部、タルク170部、硫酸バリウム80部、トリポリリン酸二水素アルミニウム100部、二酸化チタン150部、タレ止め剤(注10)5部、消泡剤(注7)1部、キシレン65部、メチルエチルケトン45部、プロピレングリコールモノメチルエーテル110部を順次仕込み、アジテーターで混合し、サンドミルにて JIS K 5600-2-5 に規定の分散度にて50μm以下になるまで分散して、下塗り塗料の主剤X−6を得た。
【0058】
製造例7 主剤X−7の製造
2リットル容器に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂液(注8)130部、変性樹脂B4(注11)140部、シランカップリング剤(注3)5部、分散剤(注4)2部、タルク170部、硫酸バ
リウム80部、トリポリリン酸二水素アルミニウム100部、二酸化チタン150部、タレ止め剤(注10)5部、消泡剤(注7)1部、キシレン65部、メチルエチルケトン45部、プロピレン
グリコールモノメチルエーテル110部を順次仕込み、アジテーターで混合し、サンドミル
にて JIS K 5600-2-5 に規定の分散度にて50μm以下になるまで分散して、下塗り塗料の主剤X−7を得た。
【0059】
製造例8 主剤X−8の製造
2リットル容器に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂液(注1)186部、変性樹脂B3(注9)140部、シランカップリング剤(注3)5部、分散剤(注4)2部、タルク170部、硫酸バリウム80部、トリポリリン酸二水素アルミニウム100部、二酸化チタン150部、タレ止め剤(注10)5部、消泡剤(注7)1部、キシレン45部、メチルエチルケトン30部、プロピレングリコールモノメチルエーテル75部を順次仕込み、アジテーターで混合し、サンドミルにてJIS K5600-2-5 に規定の分散度にて50μm以下になるまで分散して、下塗り塗料の主剤
X−8を得た。
【0060】
製造例9 主剤Y−1の製造
2リットル容器に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂液(注1)330部、シランカップリン
グ剤(注3)2部、分散剤(注4)2部、珪酸マグネシウム250部、トリポリリン酸二水素ア
ルミニウム100部、二酸化チタン200部、タレ止め剤(注6)40部、消泡剤(注7)1部、キ
シレン35部、プロピレングリコールモノメチルエーテル40部を順次仕込み、アジテーターで混合し、サンドミルにて JIS K 5600-2-5 に規定の分散度にて50μm以下になるまで分散して、下塗り塗料の主剤Y−1を得た。
【0061】
製造例10 主剤Y−2の製造
2リットル容器に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂液(注1)200部、変性樹脂B1(注2)180部、シランカップリング剤(注3)2部、分散剤(注4)2部、珪酸マグネシウム250部、トリポリリン酸二水素アルミニウム100部、二酸化チタン200部、タレ止め剤(注6)40部、消泡剤(注7)1部、キシレン15部、プロピレングリコールモノメチルエーテル10部を順次仕込み、アジテーターで混合し、サンドミルにて JIS K 5600-2-5 に規定の分散度にて50μm以下になるまで分散して、下塗り塗料の基剤Y−2を得た。
【0062】
製造例11 主剤Y−3の製造
2リットル容器に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂液(注1)200部、変性樹脂B1(注2)100部、シランカップリング剤(注3)2部、分散剤(注4)2部、珪酸マグネシウム350部、二酸化チタン200部、タレ止め剤(注6)40部、消泡剤(注7)1部、キシレン55部、プロピレングリコールモノメチルエーテル50部を順次仕込み、アジテーターで混合し、サンドミルにて JIS K 5600-2-5 に規定の分散度にて50μm以下になるまで分散して、下塗り塗料の主剤Y−3を得た。
【0063】
製造例12 主剤Y−4の製造
2リットル容器に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂液(注8)130部、変性樹脂B3(注9)140部、シランカップリング剤(注3)5部、分散剤(注4)2部、タルク230部、硫酸バリウム120部、二酸化チタン150部、タレ止め剤(注10)5部、消泡剤(注7)1部、キシレン65部、メチルエチルケトン45部、プロピレングリコールモノメチルエーテル110部を順次仕込み、アジテーターで混合し、サンドミルにて JIS K 5600-2-5 に規定の分散度にて50μm以下になるまで分散して、下塗り塗料の主剤Y−4を得た。
【0064】
製造例13 主剤Y−5の製造
2リットル容器に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂液(注8)130部、変性樹脂B3(注9)140部、シランカップリング剤(注3)5部、分散剤(注4)2部、タルク170部、硫酸バリウム80部、塩酸カルシウム100部、二酸化チタン150部、タレ止め剤(注10)5部、消泡剤(注7)1部、キシレン65部、メチルエチルケトン45部、プロピレングリコールモノメチルエーテル110部を順次仕込み、アジテーターで混合し、サンドミルにて JIS K 5600-2-5
に規定の分散度にて50μm以下になるまで分散して、下塗り塗料の主剤Y−5を得た。
【0065】
製造例14 主剤Y−6の製造
2リットル容器に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂液(注8)130部、変性樹脂B3(注9)30部、シランカップリング剤(注3)5部、分散剤(注4)2部、タルク130部、硫酸バリ
ウム70部、トリポリリン酸二水素アルミニウム80部、二酸化チタン120部、タレ止め剤(
注10)5部、消泡剤(注7)1部、キシレン69部、メチルエチルケトン46部、プロピレング
リコールモノメチルエーテル116部を順次仕込み、アジテーターで混合し、サンドミルに
て JIS K 5600-2-5 に規定の分散度にて50μm以下になるまで分散して、下塗り塗料の主剤Y−6を得た。
【0066】
製造例15 主剤Y−7の製造
2リットル容器に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂液(注8)210部、変性樹脂B3(注9)240部、シランカップリング剤(注3)5部、分散剤(注4)2部、タルク130部、硫酸バリウム70部、トリポリリン酸二水素アルミニウム100部、二酸化チタン120部、タレ止め剤(注10)5部、消泡剤(注7)1部、キシレン36部、メチルエチルケトン24部、プロピレングリコールモノメチルエーテル60部を順次仕込み、アジテーターで混合し、サンドミルにてJIS K5600-2-5 に規定の分散度にて50μm以下になるまで分散して、下塗り塗料の主剤
Y−7を得た。
【0067】
製造例16 主剤Y−8の製造
2リットル容器に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂液(注8)90部、変性樹脂B3(注9
)350部、シランカップリング剤(注3)5部、分散剤(注4)2部、タルク160部、硫酸バリウム80部、トリポリリン酸二水素アルミニウム100部、二酸化チタン150部、タレ止め剤(注10)5部、消泡剤(注7)1部、キシレン51部、メチルエチルケトン34部、プロピレングリコールモノメチルエーテル85部を順次仕込み、アジテーターで混合し、サンドミルにてJIS K5600-2-5 に規定の分散度にて50μm以下になるまで分散して、下塗り塗料の主剤
Y−8を得た。
(2)下塗り塗料硬化剤の製造
製造例17 硬化剤C1の製造
2リットルの容器に変性ポリアミン樹脂液(注12)400部、キシレン200部、イソブチルア
ルコール200部、プロピレングリコールモノメチルエーテル200部を仕込み、アジテーターで混合して硬化剤C1を得た。
【0068】
製造例18 硬化剤C2の製造
2リットルの容器に変性ポリアミドアミン樹脂液(注13)600部、キシレン200部、イソブ
チルアルコール100部、プロピレングリコールモノメチルエーテル100部を仕込み、アジテーターで混合して硬化剤C2を得た。
【0069】
製造例19 硬化剤C3の製造
2リットルの容器に変性ポリアミドアミン樹脂液(注13)600部、アミノシラン(注15)50部、キシレン150部、イソブチルアルコール100部、プロピレングリコールモノメチルエー
テル100部を仕込み、アジテーターで混合して硬化剤C3を得た。
【0070】
製造例20 硬化剤C4の製造
2リットルの容器にポリアミンのケチミン化物(注14)390部、アミノシラン(注15)60部、キシレン160部、メチルエチルケトン120部、プロピレングリコールモノメチルエーテル270部を仕込み、アジテーターで混合して硬化剤C4を得た。
【0071】
製造例21 硬化剤C5の製造
2リットルの容器にポリアミンのケチミン化物(注14)180部、アミノシラン(注15)30部、キシレン234部、メチルエチルケトン156部、プロピレングリコールモノメチルエーテル400部を仕込み、アジテーターで混合して硬化剤C5を得た。
【0072】
製造例22 硬化剤C6の製造
2リットルの容器にポリアミンのケチミン化物(注14)120部、アミノシラン(注15)60部、キシレン246部、メチルエチルケトン164部、プロピレングリコールモノメチルエーテル410部を仕込み、アジテーターで混合して硬化剤C6を得た。
【0073】
製造例23 硬化剤C7の製造
2リットルの容器にポリアミンのケチミン化物(注14)620部、アミノシラン(注15)80部、キシレン90部、メチルエチルケトン60部、プロピレングリコールモノメチルエーテル150部を仕込み、アジテーターで混合して硬化剤C7を得た。
【0074】
製造例24 硬化剤C8の製造
2リットルの容器にポリアミンのケチミン化物(注14)250部、アミノシラン(注15)50部、キシレン210部、メチルエチルケトン140部、プロピレングリコールモノメチルエーテル350部を仕込み、アジテーターで混合して硬化剤C8を得た。
【0075】
製造例25 硬化剤C9の製造
2リットルの容器にポリアミンのケチミン化物(注14)450部、キシレン160部、メチルエ
チルケトン120部、プロピレングリコールモノメチルエーテル270部を仕込み、アジテーターで混合して硬化剤C9を得た。
(注1) ビスフェノールA型樹脂液:商品名「JER1001X75」、ジャパンエポキシレジン(
株)製、固形分75%、当該エポキシ樹脂の数平均分子量約900、エポキシ当量475(中央値)
(注2) 変性樹脂B1:フェノール変性芳香族炭化水素系樹脂
(注3) シランカップリング剤:γ―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
(注4) 分散剤:商品名「レシチンDX」、日清製油(株)製
(注5) 変性樹脂B2:フェノール変性テルペン樹脂
(注6) タレ止め剤:商品名「ディスパロン6900−20X」、楠本化成(株)製
(注7) 消泡剤:商品名「ディスパロン1950」、楠本化成(株)製
(注8) ビスフェノールA型エポキシ樹脂液:固形分100%、当該エポキシ樹脂の数平均分子量約400、エポキシ当量190(中央値)
(注9) 変性樹脂B3:ウレタン変性エポキシ樹脂液(アミン付加エポキシ樹脂のジイソ
シアネート反応物)、固形分40%
(注10) タレ止め剤:商品名「ターレン7200−20」、共栄社化学(株)製、固形分20%、アマイドワックス系揺変剤
(注11) 変性樹脂B4:芳香族系石油樹脂(C8〜C10芳香族炭化水素留分重合物)、固形分40%
(注12) 変性ポリアミン樹脂液:固形分100%,活性水素当量110
(注13) 変性ポリアミドアミン樹脂液:固形分80%,活性水素当量170
(注14) ポリアミンのケチミン化物:固形分100%、変性脂環式ポリアミン化合物のケチミン化物、活性水素当量83
(注15) アミノシラン:固形分100%、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、活性水素当量74
(3)試験板の製造
市販の溶融亜鉛めっき鋼板(3.2mm×70mm×150mm)を、海浜地区で曝露することにより、鉄と亜鉛の合金層であるζ層が露出した表面になるまで消耗させたものをサンドペーパー(#240)で表面を研磨して、試験板(i)を得た。
また、別途、上記溶融亜鉛めっき鋼板を、ISO Sa1.0の素地調整グレードになるまでグリッドブラスト処理をして、試験板(ii)を得た。試験板(ii)の表面は、η層と判断できた。
(4)上塗塗料種
上塗り塗料P フッ素樹脂塗料:商品名「シントーフロン#100橋梁用」、神東塗料(株)製
上塗り塗料Q アクリルシリコン樹脂塗料:商品名「セラボーン上塗」、神東塗料(株)製
上塗り塗料R ポリウレタン樹脂塗料:商品名「NYポリンK上塗」、神東塗料(株)製上塗り塗料S フッ素樹脂塗料:商品名「セラテクトF上塗 白」、関西ペイント(株)製、単独塗膜の塩水噴霧1000時間後のフクレ発生面積率が約3%
上塗り塗料T アクリルシリコン樹脂塗料:商品名「シリコテクトAC上塗り白」、関西ペイント(株)製、単独塗膜の塩水噴霧1000時間後のフクレ発生面積率が約3%
上塗り塗料U ポリウレタン樹脂塗料:商品名「セラテクトU上塗り白」、関西ペイント(株)製、単独塗膜の塩水噴霧1000時間後のフクレ発生面積率が約3%
上塗り塗料V アルキド樹脂塗料:商品名「橋梁用SDマリン上塗 白」、関西ペイント(株)製、単独塗膜の塩水噴霧1000時間後のフクレ発生面積率が約30%

実施例1〜17及び比較例1〜14
上記の通り製造した主剤及び硬化剤を表1に示す混合比(部)で混合し、各下塗り塗料を作成した。得られた下塗り塗料及び上塗り塗料を、表1に示す組み合わせで、試験板(i)又は(ii)に塗装した。下塗り塗料と上塗り塗料との塗装間隔は24時間とし、上塗り塗
料塗装終了後、23℃で30日間乾燥硬化して、複層塗膜を形成した。各実施例、比較例の硬化膜厚は、表1に示した通りである。
【0076】
実施例及び比較例で得られた各塗装板について、熱水浸漬試験及び塩水噴霧試験に供した。試験方法は、下記の通りである。
【0077】
【表1】

【0078】
【表2】

【0079】
(試験方法)
(*1)熱水浸漬試験
・付着力:60℃熱水浸漬3000時間後の付着力(MPa)
・破壊箇所:60℃熱水浸漬3000時間後の付着力試験後の破壊箇所。破壊箇所が「下塗膜内」の場合は、素地と下塗り塗膜の付着及び下塗り塗膜と上塗り塗膜の付着が保持され、下塗り塗膜層が凝集破壊したことを示す。
(*2)塩水噴霧試験
・一般部外観:塩水噴霧試験5000時間後の塗膜外観
・膨れ幅:塩水噴霧試験5000時間後のクロスカットからの膨れ・さび幅(mm)
「―」表示は、カット部四方全面膨れを意味する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜鉛めっき処理された鋼構造物表面に、(A)1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂、(B)変性樹脂、(C)アミン系硬化剤、(D)リン酸系防錆顔料及び(E)体質顔料を含有し、該変性樹脂(B)の含有量が樹脂(A)の固形分100重量部に対して10〜150重量部であり、該アミン系硬化剤(C)の配合割合が、エポキシ樹脂(A)中のエポキシ基1当量に対して、アミン系硬化剤(C)中の活性水素当量が0.4〜1.2当量になる割合であって、且つ該リン酸系防錆顔料(D)の含有量が該樹脂(A)、樹脂(B)及び硬化剤(C)の合計固形分100重量部に対して10〜150重量部であり、形成される塗膜における顔料体積濃度が35〜60%の範囲にある下塗り塗料(I)を硬化膜厚で80〜150μmとなるように塗装し、ついでフッ素樹脂系塗料、アクリルシリコン樹脂系塗料及びポリウレタン樹脂系塗料から選ばれる少なくとも1種の上塗り塗料(II)を硬化膜厚で15〜60μmとなるように塗装する塗装方法であって、該塗料(I)及び(II)による複層塗膜の60℃熱水浸漬3000時間後の付着力が2.5MPa以上であることを特徴とする亜鉛めっき処理鋼構造物の塗装方法。
【請求項2】
下塗り塗料(I)で使用する顔料が防錆顔料(D)、体質顔料(E)及び着色顔料(F)からなり、その体質顔料(E)全量中に珪酸アルミニウム系、珪酸マグネシウム系、珪酸アルミニウムカリウム系及びシリカ系から選ばれる少なくとも1種を50重量%以上含有するものであって、形成される塗膜における顔料体積濃度が40〜50%の範囲であり、なおかつ変性樹脂(B)の含有量が、樹脂(A)の固形分100重量部に対して30〜100重量部である請求項1記載の塗装方法。
【請求項3】
下塗り塗料(I)におけるアミン系硬化剤(C)の配合割合が、エポキシ樹脂(A)中のエポキシ基1当量に対して、アミン系硬化剤(C)中の活性水素当量が0.4〜0.8当量になる割合である請求項1又は2記載の塗装方法。
【請求項4】
下塗り塗料(I)におけるアミン系硬化剤(C)の配合割合が、エポキシ樹脂(A)中のエポキシ基1当量に対して、アミン系硬化剤(C)中の活性水素当量が0.5〜0.7当量になる割合で、体質顔料(E)がその全量中に珪酸アルミニウム系、珪酸マグネシウム系、珪酸アルミニウムカリウム系及びシリカ系から選ばれる少なくとも1種を70重量%以上含有する請求項3記載の塗装方法。
【請求項5】
下塗り塗料(I)におけるアミン系硬化剤(C)が、ポリアミン化合物のケチミン化物に対してアミノシランをモル比2:1〜20:1の範囲で配合してなり、アミン系硬化剤(C)の配合割合が、エポキシ樹脂(A)中のエポキシ基1当量に対して、アミン系硬化剤(C)中の活性水素当量が0.7〜1.0当量になる割合である請求項1又は2記載の塗装方法。
【請求項6】
該ケチミン化物の活性水素当量が60〜150であって、アミノシランの活性水素当量が60〜120である請求項5記載の塗装方法。
【請求項7】
下塗り塗料(I)が、アミン系硬化剤(C)以外の成分を含有する主剤と、アミン系硬化剤(C)を含有する硬化剤との二液型塗料であって、主剤にグリシジル基含有シランカップリング剤を配合し、アミノシランを硬化剤中に配合してなる請求項1〜6のいずれか1項に記載の塗装方法。
【請求項8】
上塗り塗料(II)が、その単独塗膜の塩水噴霧1000時間後のフクレ発生面積率が5%以下となる塗料である請求項1〜7のいずれか1項に記載の塗装方法。
【請求項9】
亜鉛めっき処理が施された鋼構造物の表面が、鉄と亜鉛の合金層である、ζ層の露出面及び/又はδ1層の露出面である請求項1〜8のいずれか1項に記載の塗装方法。

【公開番号】特開2009−254939(P2009−254939A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−104929(P2008−104929)
【出願日】平成20年4月14日(2008.4.14)
【出願人】(000144991)株式会社四国総合研究所 (116)
【出願人】(000180368)四国電力株式会社 (95)
【出願人】(000192844)神東塗料株式会社 (48)
【出願人】(503293732)関西ペイント販売株式会社 (3)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】