説明

交換レンズおよびカメラボディ

【課題】適切な露出の画像の取得に資する交換レンズ、およびカメラボディを提供する。
【解決手段】カメラボディに着脱可能に取り付けられる交換レンズであって、撮影光学系の開口絞りを駆動することにより開口絞りの大きさを変化させる絞り駆動部材と、絞り駆動部材の設定絞り値に対する開口絞りの実際の値の差を示す絞り誤差情報を記憶する情報記憶部と、情報記憶部が記憶した絞り誤差情報をカメラボディに送信する絞り誤差情報送信部とを備え、情報記憶部は、絞り誤差情報を、絞り駆動部材の設定絞り値に対する開口絞りの実際の値の差のうち、再現性のある差についてのオフセット誤差情報と、再現性のない差についてのばらつき誤差情報とに分けてそれぞれ記憶していることを特徴とする交換レンズ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交換レンズ、およびカメラボディに関する。
【背景技術】
【0002】
カメラボディに交換レンズを取り付けて撮影を行う際には、交換レンズの開口絞りは、カメラボディ側で算出された露出量に見合った設定絞り値に設定される。しかし、開口絞りを設定絞り値に設定する際に、実際の絞り値と設定絞り値とが一致しない場合がある。このため、実際の絞り値が設定絞り値より僅かに大きく設定されることで、撮像素子の露光量がオーバーになり被写体の画像が明るくなりすぎるおそれがある。また、実際の絞り値が設定絞り値より僅かに小さく設定されることで、撮像素子の露光量が不足するおそれがある。このため、適正な露出の画像を得ることができないおそれがあった。
【0003】
そこで、設定絞り値に対する開口絞りの実際の値の差を示す誤差情報を交換レンズから取得し、取得された誤差情報を用いて絞り駆動部材の駆動位置を補正するように構成された交換レンズおよびカメラボディが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−65592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
任意の設定絞り値に対する開口絞りの実際の値の差には、開口絞りを設定絞り値に設定する度に再現される再現性のある差と、開口絞りを設定絞り値に設定する度に異なる再現性のない差とが存在する。しかし、上述した特許文献に記載の交換レンズおよびカメラボディでは、設定絞り値に対する開口絞りの実際の値の差を示す誤差情報について再現性のある差と再現性にない差とを分けていない。そのため、誤差情報に基づく補正を行ったとしても、正しい露出の画像を得られないおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 請求項1の発明による交換レンズは、カメラボディに着脱可能に取り付けられる交換レンズであって、撮影光学系の開口絞りと、設定絞り値に応じて開口絞りを駆動することにより開口絞りの絞り値を変化させる絞り駆動部材と、設定絞り値と開口絞りの実際の絞り値との差を示す絞り誤差情報を、設定絞り値と開口絞りの実際の絞り値との差のうち、再現性のある差についてのオフセット誤差情報と、再現性のない差についてのばらつき誤差情報とを、それぞれ個別に記憶する情報記憶部と、情報記憶部が記憶した絞り誤差情報をカメラボディに送信する絞り誤差情報送信部とを備えることを特徴とする。
(2) 請求項4の発明によるカメラボディは、設定絞り値と撮影光学系の開口絞りの実際の絞り値との差として、再現性のある差についてのオフセット誤差情報と、再現性のない差についてのばらつき誤差情報とをそれぞれ含む絞り誤差情報を少なくとも有する交換レンズが着脱可能なカメラボディであって、絞り誤差情報を交換レンズから受信する絞り誤差情報受信部と、絞り誤差情報受信部で受信した絞り誤差情報のうち、オフセット誤差情報とばらつき誤差情報とを参照して被写体の明るさに応じた適正露光が得られるように露光演算を行う露光演算手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、適切な露出の画像の取得に資する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】カメラシステムの外観を示す図である。
【図2】カメラシステムの構成を示す断面図である。
【図3】交換レンズのROMに記憶されている絞り誤差情報テーブルである。
【図4】交換レンズのROMに記憶されている絞り誤差情報テーブルである。
【図5】交換レンズのROMに記憶されている絞り誤差情報テーブルである。
【図6】交換レンズのROMに記憶されている絞り誤差情報テーブルである。
【図7】交換レンズのROMに記憶されている絞り誤差情報テーブルである。
【図8】交換レンズのROMに記憶されている絞り誤差情報テーブルである。
【図9】繰り返しばらつき成分の値と係数kとの関係を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1〜9を参照して、本発明による交換レンズの一実施の形態を説明する。図1は、本実施の形態の交換レンズを含むカメラシステムの外観を示す図である。カメラシステム1は、カメラボディ100と、交換レンズ200とを含んで構成される。交換レンズ200はカメラボディ100に着脱可能に取り付けられる。交換レンズ200の取り付けは、カメラボディ100のボディ側レンズマウント101に、交換レンズ200のレンズ側レンズマウント201を嵌め込むことにより行われる。
【0010】
ボディ側レンズマウント101にはデータ通信および電源供給のための複数の接点102が存在する。レンズ側レンズマウント201上には複数の接点102の各々に対応する複数の接点202が存在する。交換レンズ200がカメラボディ100に取り付けられると、接点102と接点202が接続され、カメラボディ100から交換レンズ200に交換レンズ200を動作させるための電力が供給されると共に、カメラボディ100と交換レンズ200との間で後述するデータ通信を行うことができるようになる。
【0011】
カメラボディ100はボディCPU103を備える。ボディCPU103は所定の制御プログラムを実行することにより、カメラボディ100内の各部を制御する。交換レンズ200はレンズCPU203を備える。レンズCPU203は所定の制御プログラムを実行することにより、交換レンズ200内の各部を制御する。
【0012】
撮像素子104は被写体像を撮像し、撮像信号を出力する。カメラボディ100に設けられたレリーズスイッチ107が押下されると、ボディCPU103はこの撮像信号に各種の画像処理を行い、画像データを作成する。作成された画像データは、記憶媒体挿入口105内の可搬記憶媒体106に記憶される。
【0013】
図2は、本実施の形態に係るカメラシステム1の構成を示す断面図である。交換レンズ200は、複数の光学部材から構成される撮影光学系210を内蔵する。撮影光学系210を構成する光学部材は、複数のレンズ210a〜210eおよび虹彩絞り211である。これら複数のレンズには、撮影光学系210の焦点調節を行うフォーカスレンズ210cと、被写体像の像ぶれを補正するぶれ補正レンズ210dとが含まれている。
【0014】
なお、本発明において光学部材とは、レンズ210a〜210eのみならず、撮影光路上に存在し被写体からの光束を通過させたり遮ったりする部材をも含む。たとえば、撮影光学系210を通過する被写体光の光量を調節する虹彩絞り211も光学部材の1つである。また、これら光学部材のうち、駆動されることにより被駆動状態が変化するものを特に被駆動部材と呼ぶ。
【0015】
交換レンズ200内には、フォーカスレンズ210c、ぶれ補正レンズ210d、および虹彩絞り211をそれぞれ駆動するための駆動系が設置されている。たとえば、フォーカスレンズ210cは不図示の超音波モータによって駆動される。また、ぶれ補正レンズ210dは不図示の2つのボイスコイルモータによって駆動され、虹彩絞り211はステッピングモータ211aによって駆動される。レンズCPU203はこれらの駆動系を制御し、各々の光学部材の被駆動状態を変化させる。つまり、本実施形態ではフォーカスレンズ210cとぶれ補正レンズ210dと虹彩絞り211が被駆動部材である。
【0016】
レンズCPU203には、レンズ側第1通信回路212と、レンズ側第2通信回路213と、ROM215と、RAM216とが接続されている。レンズ側第1通信回路212およびレンズ側第2通信回路213については後に詳述する。ROM215は不揮発性の記憶媒体であり、レンズCPU203が実行する所定の制御プログラムや、後述する絞り誤差情報テーブル等があらかじめ記憶される。RAM216は揮発性の記憶媒体であり、レンズCPU203により各種データの記憶領域として利用される。
【0017】
撮像素子104の前面には、光学的ローパスフィルターと赤外線カットフィルターを合わせたフィルター111が設置されている。交換レンズ200内の撮影光学系210を通過した被写体光は、光軸Rを中心に、フィルター111を介して撮像素子104に入射する。ボディCPU103は、撮像素子104が出力する撮像信号から表示用画像を作成し、カメラボディ100の背面に設置されているLCDモジュール110に表示する。
【0018】
ボディCPU103には、ボディ側第1通信回路112と、ボディ側第2通信回路113と、ROM118と、RAM119とが接続されている。ボディ側第1通信回路112およびボディ側第2通信回路113については後に詳述する。ROM118は不揮発性の記憶媒体であり、ボディCPU103が実行する所定の制御プログラム等があらかじめ記憶される。RAM119は揮発性の記憶媒体であり、ボディCPU103により各種データの記憶領域として利用される。
【0019】
ボディCPU103とレンズCPU203との間、すなわちカメラボディ100と交換レンズ200との間には、図1に示す接点102と接点202とを介した2系統の伝送路が設けられている。これら2系統の伝送路は互いに独立しているので、一方の伝送路においてデータが伝送されている場合であっても、他方の伝送路によりデータを伝送することが可能である。以下の説明では、2系統の伝送路をそれぞれ第1伝送路301、第2伝送路302と称する。また、第1伝送路301を用いて行われる通信をホットライン通信、第2伝送路302を用いて行われる通信をコマンドデータ通信と呼ぶ。第1伝送路301および第2伝送路302を構成する信号線、ならびに、コマンドデータ通信およびホットライン通信の具体的な通信内容については後に詳述する。
【0020】
カメラボディ100内には、ホットライン通信を行うボディ側第1通信回路112と、コマンドデータ通信を行うボディ側第2通信回路113が設置される。これらの回路はそれぞれボディCPU103に接続される。同様に交換レンズ200内には、ホットライン通信を行うレンズ側第1通信回路212と、コマンドデータ通信を行うレンズ側第2通信回路213が設置される。これらの回路はそれぞれレンズCPU203に接続される。
【0021】
ボディ側第1通信回路112とレンズ側第1通信回路212とは、第1伝送路301により互いに接続される。同様に、ボディ側第2通信回路113とレンズ側第2通信回路213とは、第2伝送路302により互いに接続される。
【0022】
これらの各部材に加えて、カメラボディ100内には、撮影光学系210の自動焦点調節を行う自動焦点調節装置(不図示)が設置されている。この自動焦点調節装置は、ボディCPU103を介してレンズCPU203にフォーカスレンズ210cの駆動指示を送信することにより、撮影光学系210の焦点調節を自動で行う。
【0023】
(コマンドデータ通信の説明)
コマンドデータ通信は第2伝送路302を用いて行われる双方向の通信である。コマンドデータ通信では、カメラボディ100から送信されるデータと、交換レンズ200から送信されるデータと、が同一のクロック信号に同期する。すなわち、カメラボディ100から送信されるデータと、交換レンズ200から送信されるデータと、が第2伝送路302により同時に伝送される。
【0024】
コマンドデータ通信は、ボディCPU103により開始される。ボディCPU103はコマンドデータ通信の開始時、まずレンズCPU203への各種指示を表す所定のデータを送信する。レンズCPU203は受信したデータを解釈し、当該データがどのような指示を表しているのかを検知する。その後レンズCPU203は、指示に応じた処理を実行する。たとえば、虹彩絞り211を特定の大きさ(特定の絞り値)とする指示、すなわち設定絞り値の情報を受信した場合、レンズCPU203はステッピングモータ211aを制御し、設定絞り値に対応する大きさとなるように虹彩絞り211を絞り込み方向または開放方向に駆動する。なお、このとき、レンズCPU203は、受信した設定絞り値の情報と、虹彩絞り211を絞り込み方向に駆動したのか、または開放方向に駆動したのかを表す情報(絞り駆動方向情報)とをRAM216に記憶させる。
【0025】
また、レンズCPU203の動作状態に関する情報を要求する指示を受信した場合、レンズCPU203は当該情報をボディCPU103に第2伝送路302を介して送信する。すなわち、ボディCPU103が交換レンズ200に関する情報をコマンドデータ通信により取得する場合には、まずボディCPU103から交換レンズ200へ当該情報を要求する指示を表すデータを送信しなければならない。
【0026】
コマンドデータ通信によりボディCPU103から送信される指示には、上述した指示以外に、フォーカスレンズ210cを駆動させる指示、ぶれ補正レンズ210dを用いた像ぶれ補正のオンオフを設定する指示、撮影光学系210の現在の焦点距離を表す信号を要求する指示、虹彩絞り211の現在の絞り値を表す信号を要求する指示、撮影光学系210の光学特性に関する情報を表す信号を要求する指示、後述する絞り誤差情報を表す信号を要求する指示などが含まれる。
【0027】
(ホットライン通信の説明)
ホットライン通信は第1伝送路301を用いて行われる単方向の通信である。ホットライン通信はコマンドデータ通信と同様に、ボディCPU103により開始される。ボディCPU103が第1伝送路301を構成する信号線のうち、通信開始用の信号線の信号レベルを変化させると、レンズCPU203がこれを検知する。レンズCPU203はこの検知に応じて、被駆動情報の検出処理(たとえば不図示のレンズ位置検出部にフォーカスレンズ210cの位置を検出させる処理)と被駆動情報の送信処理(たとえばフォーカスレンズ210cの位置を表す信号をカメラボディ100側へ出力する処理)とを順に実行する。
【0028】
ボディCPU103は、ホットライン通信を所定周期(例えば1ミリ秒)毎に実行する。ホットライン通信はコマンドデータ通信とは異なり、ボディCPU103がレンズCPU203から交換レンズ200に関するデータをわずかな処理で受信することができる。これは、コマンドデータ通信によりデータを受信する場合にはまずレンズCPU203に対する指示を表すデータを送信する必要があるのに対し、ホットライン通信は特定の信号線の信号レベルを変化させるだけで即座にレンズCPU203からのデータの送信が開始されるためである。
【0029】
−−−絞り誤差情報テーブルについて−−−
虹彩絞り211では、目標とする絞り値(設定絞り値)と虹彩絞り211の実際の絞り値とで差が生じ、露出オーバーになったり露出アンダーになったりするなど、適正な露出の画像を得ることができないおそれがある。しかし、設定絞り値と実際の絞り値との差があらかじめ分かっていれば、設定絞り値と実際の絞り値との差の情報に基づいて、たとえば露光演算時に補正を行うことで、適正な露出の画像を得ることができる。
【0030】
ここで、任意の設定絞り値と、当該任意の設定絞り値に対する実際の絞り値との差(誤差)には、再現性のある誤差の成分と、再現性のない誤差の成分とが含まれている。すなわち、任意の設定絞り値と、当該任意の設定絞り値に対する実際の絞り値との差には、虹彩絞り211の絞り値を当該任意の設定絞り値に設定する度に同じ値として現れる(すなわち再現性のある)誤差の成分と、虹彩絞り211の絞り値を当該任意の設定絞り値に設定する度に異なる値として現れる(すなわち再現性のない)誤差の成分とが含まれている。また、これらの誤差は、虹彩絞り211を開放側から絞り込み側に制御した場合と、絞り込み側から開放側に制御した場合とで異なる値となる。
【0031】
そこで、本実施の形態では、図3〜8に示すように、再現性のある誤差成分と再現性のない誤差成分に分けたそれぞれの誤差成分について、虹彩絞り211を開放側から絞り込み側に制御した場合と、絞り込み側から開放側に制御した場合とでさらに分けて、それぞれ焦点距離と設定絞り値をパラメータとするマトリクス状のデータとしてROM215に記憶させている。図3は、虹彩絞り211を開放側から絞り込み側に制御した際の、再現性のある誤差成分(オフセット成分)についての絞り誤差情報テーブル510を示している。図4は、虹彩絞り211を開放側から絞り込み側に制御した際の、再現性のない誤差成分(繰り返しばらつき成分)のうち、絞り不足となる方向で生じるものについての絞り誤差情報テーブル520を示している。図5は、虹彩絞り211を開放側から絞り込み側に制御した際の、再現性のない誤差成分(繰り返しばらつき成分)のうち、過絞りとなる方向で生じるものについての絞り誤差情報テーブル530を示している。
【0032】
図6は、虹彩絞り211を絞り込み側から開放側に制御した際の、再現性のある誤差成分(オフセット成分)についての絞り誤差情報テーブル540を示している。図7は、虹彩絞り211を絞り込み側から開放側に制御した際の、再現性のない誤差成分(繰り返しばらつき成分)のうち、絞り不足となる方向で生じるものについての絞り誤差情報テーブル550を示している。図8は、虹彩絞り211を絞り込み側から開放側に制御した際の、再現性のない誤差成分(繰り返しばらつき成分)のうち、過絞りとなる方向で生じるものについての絞り誤差情報テーブル560を示している。
【0033】
なお、図3〜8に示した絞り誤差情報テーブル510〜560では、図示の便宜上、各マスを空欄としている。しかし、実際には、図3,6に示したオフセット成分についての絞り誤差情報テーブル510,540では、任意の焦点距離および設定絞り値における、設定絞り値との差の値が各欄に入力されている。なお、設定絞り値との差の値でなく、実際の絞り値が各欄に入力されていてもよい。また、図4,5,7,8に示した繰り返しばらつき成分についての絞り誤差情報テーブル520,530,550,560では、任意の焦点距離および設定絞り値における、たとえば繰り返しばらつき成分の最大値が各欄に入力されている。なお、繰り返しばらつき成分の最大値でなく、たとえば繰り返しばらつき成分の標準偏差が各欄に入力されていてもよい。
【0034】
−−−絞り誤差情報の送信について−−−
上述したように、コマンドデータ通信により絞り誤差情報を表す信号を要求する指示を受信すると、レンズCPU203は、要求された絞り誤差情報をカメラボディ100へ送信する。具体的には、レンズCPU203は、次のようにして絞り誤差情報カメラボディ100へ送信する。
【0035】
レンズCPU203は、第2伝送路302を介したコマンドデータ通信により絞り誤差情報を表す信号を要求する指示を受信すると、不図示の焦点距離検出部から出力される焦点距離信号に基づいて、撮影光学系210の現在の焦点距離を算出する。また、レンズCPU203は、RAM216に記憶させている設定絞り値の情報と、絞り駆動方向情報(上述したように、虹彩絞り211の絞り値を当該設定絞り値とするために虹彩絞り211を絞り込み方向に駆動したのか、または開放方向に駆動したのかを表す情報)とを読み込む。
【0036】
そして、レンズCPU203は、算出した現在の焦点距離と、読み込んだ設定絞り値および絞り駆動方向情報に基づいて、再現性のある誤差成分(オフセット成分)を絞り誤差情報テーブル510,540から取得し、再現性のない誤差成分(繰り返しばらつき成分)を絞り誤差情報テーブル520,530,550,560から取得する。なお、算出した現在の焦点距離が絞り誤差情報テーブル510〜560における離散的な焦点距離と一致しない場合、レンズCPU203は、絞り誤差情報テーブル510〜560を参照して適宜線形補間によって現在の焦点距離における絞り誤差情報を取得する。
【0037】
その後、レンズCPU203は、取得した絞り誤差情報を第2伝送路302を介して送信するよう、レンズ側第2通信回路213を制御する。これにより、絞り誤差情報がカメラボディ100へ送信される。
【0038】
−−−絞り誤差の補正処理について−−−
上述した絞り誤差情報を第2伝送路302を介してボディ側第2通信回路113で受信すると、ボディCPU103は、受信した絞り誤差情報をRAM119に記憶させる。
【0039】
ボディCPU103は、RAM119に記憶されている絞り誤差情報に基づいて、測光演算時の補正値を算出する。具体的には、次の(1)式のようにして測光演算時の補正値を算出する。
測光演算時の補正値 = 受信したオフセット成分 × 係数k ・・・(1)
【0040】
ここで、係数kは、絞り不足となる方向で生じる繰り返しばらつき成分および過絞りとなる方向で生じる繰り返しばらつき成分のうち、値(絶対値)の大きい方の繰り返しばらつき成分に基づいて、図9を参照して求める。すなわち、繰り返しばらつき成分の値が大きくなるにつれてオフセット成分に基づいて補正をする意義が薄れるため、繰り返しばらつき成分の値の大きさに基づいて、測光演算時の補正値におけるオフセット成分の寄与率を変更している。図9では、係数kの求め方の一例として、たとえば、繰り返しばらつき成分の値が閾値a1以下であれば係数k=1とし、繰り返しばらつき成分の値が閾値a1以上a2以下であれば繰り返しばらつき成分の値が大きくなるにつれて係数kを1から漸減させ、繰り返しばらつき成分の値が閾値a2以上であれば係数k=0としている。
【0041】
そして、ボディCPU103は、上述のようにして求めた補正値に基づいて公知の露出補正を行うことで、被写体の明るさに応じた適正露光が得られるように露光演算を行う。すなわち、適切な露出の画像が得られるように、ボディCPU103は、上述のようにして求めた補正値に基づいてシャッタスピードやISO感度を調節する。
【0042】
上述した実施の形態では、次の作用効果を奏する。
(1) 絞り誤差情報として、オフセット成分と、繰り返しばらつき成分とを分けて交換レンズ200のROM215に記憶させるように構成した。これにより、オフセット成分および繰り返しばらつき成分に応じた、補正値算出の適切化に資する。したがって、適切な露出の画像の取得に資する。
【0043】
(2) 絞り誤差情報として、虹彩絞り211を開放側から絞り込み側に制御した場合と、絞り込み側から開放側に制御した場合とで分けて、それぞれROM215に記憶させるように構成した。これにより、絞り開放時に測光し、その後測光結果に基づいて虹彩絞り211を絞り込み方向に制御する場合だけでなく、ある程度虹彩絞り211を絞り込んだ状態で測光し、その後測光結果に基づいて虹彩絞り211を開放方向に制御する場合にも、補正値算出の適切化に資する。したがって、適切な露出の画像の取得に資する。
【0044】
(3) 算出した現在の焦点距離が絞り誤差情報テーブル510〜560における離散的な焦点距離と一致しない場合、レンズCPU203が、絞り誤差情報テーブル510〜560を参照して適宜線形補間によって現在の焦点距離における絞り誤差情報を取得するように構成した。これにより、必要とするROM215の記憶容量を抑制できる。
【0045】
(4) フォーカスレンズ210cの位置を表す信号を、第1伝送路301を介してカメラボディ100に繰り返し送信するように構成した。また、絞り誤差情報を表す信号を第1伝送路301とは異なる第2伝送路302を介してカメラボディ100に送信するように構成した。これにより、フォーカスレンズ210cの位置を表す信号の送信が絞り誤差情報を表す信号等の送信により妨げられることがない。
【0046】
(5) ボディCPU103が第1伝送路301を構成する信号線のうち、通信開始用の信号線の信号レベルを変化させることにより、フォーカスレンズ210cの位置を表す信号の送信を要求するように構成した。これにより、フォーカスレンズ210cの位置を表す信号の送信要求が余計な通信を発生させることがない。
【0047】
(6) 繰り返しばらつき成分の値の大きさに基づいて、測光演算時の補正値におけるオフセット成分の寄与率を変更するように構成した。これにより、適切な補正値を算出できるので、適切な露出の画像を取得できる。
【0048】
−−−変形例−−−
(1) 上述の説明では、絞り誤差情報を図3〜8に示すような絞り誤差情報テーブル510〜560としてROM215に記憶させるように構成したが、本発明はこれに限定されない。たとえば、再現性のある誤差成分と再現性のない誤差成分に分けたそれぞれの誤差成分について、虹彩絞り211を開放側から絞り込み側に制御した場合と、絞り込み側から開放側に制御した場合とでさらに分けて、それぞれ焦点距離と設定絞り値をパラメータとする計算式としてROM215に記憶させるように構成してもよい。そして、当該計算式に現在の焦点距離および設定絞り値を入力することで絞り誤差の各値を算出するように構成してもよい。
【0049】
(2) 上述の説明では、繰り返しばらつき成分の値と図9に示すグラフに基づいて係数kを求めているが、本発明はこれに限定されない。上述したように、繰り返しばらつき成分の値が大きくなるにつれてオフセット成分に基づいて補正をする意義が薄れる。そのため、繰り返しばらつき成分の値が大きくなるにつれて測光演算時の補正値におけるオフセット成分の寄与率を適宜低減させるのであれば、上述した係数kの求め方に限定されない。なお、繰り返しばらつき成分の値について、絞り不足となる方向で生じるものと、過絞りとなる方向で生じるものとが略同じ分布を示すような場合であれば、繰り返しばらつき成分の値が大きさに関わらず、オフセット成分に基づいて補正をするようにしてもよい。また、測光演算時の補正に関しては、繰り返しばらつき成分の値に関わらず、オフセット成分のみに基づいて補正をしてもよい。なお、繰り返しばらつき成分に関する絞り誤差情報を絞り値の制御以外の制御で用いてもよい。
【0050】
(3) 上述の説明では、コマンドデータ通信により絞り誤差情報を表す信号を要求する指示を受信すると、レンズCPU203が、要求された絞り誤差情報をカメラボディ100へ送信するように各部を制御するよう構成しているが、本発明はこれに限定されない。たとえば、コマンドデータ通信により絞り誤差情報を表す信号を要求する指示を受信しなくても、定期的に現在の焦点距離および設定絞り値に対応する絞り誤差情報をカメラボディ100へ送信するようにしてもよい。また、カメラボディ100の電源投入時など、所定のタイミングで絞り誤差情報テーブル510〜560の情報を全てカメラボディ100に送信するようにしてもよい。なお、上述の説明では、レンズ位置情報を第1の伝送路301を用い、誤差情報を第2の伝送路302を用いて送信したが、例えば、レンズ位置情報を第2の伝送路302、誤差情報を第1の伝送路301を用いて送信してもよい。また、レンズ位置情報と、誤差位置情報との双方を、第1伝送路301及び第2伝送路302のいずれか一方を用いて送信してもよい。
(4) 上述した各実施の形態および変形例は、それぞれ組み合わせてもよい。
【0051】
なお、本発明は、上述した実施の形態のものに何ら限定されず、カメラボディに着脱可能に取り付けられる交換レンズであって、撮影光学系の開口絞りと、設定絞り値に応じて開口絞りを駆動することにより開口絞りの絞り値を変化させる絞り駆動部材と、設定絞り値と開口絞りの実際の絞り値との差を示す絞り誤差情報を、設定絞り値と開口絞りの実際の絞り値との差のうち、再現性のある差についてのオフセット誤差情報と、再現性のない差についてのばらつき誤差情報とを、それぞれ個別に記憶する情報記憶部と、情報記憶部が記憶した絞り誤差情報をカメラボディに送信する絞り誤差情報送信部とを備えることを特徴とする各種構造の交換レンズを含むものである。
また、本発明は、上述した実施の形態のものに何ら限定されず、設定絞り値と撮影光学系の開口絞りの実際の絞り値との差として、再現性のある差についてのオフセット誤差情報と、再現性のない差についてのばらつき誤差情報とをそれぞれ含む絞り誤差情報を少なくとも有する交換レンズが着脱可能なカメラボディであって、絞り誤差情報を交換レンズから受信する絞り誤差情報受信部と、絞り誤差情報受信部で受信した絞り誤差情報のうち、オフセット誤差情報とばらつき誤差情報とを参照して被写体の明るさに応じた適正露光が得られるように露光演算を行う露光演算手段とを備えることを特徴とする各種構造のカメラボディを含むものである。
【符号の説明】
【0052】
1…カメラシステム、100…カメラボディ、103…ボディCPU、200…交換レンズ、203…レンズCPU、210…撮影光学系、210c…フォーカスレンズ、211…虹彩絞り、510〜560…絞り誤差情報テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラボディに着脱可能に取り付けられる交換レンズであって、
撮影光学系の開口絞りと、
設定絞り値に応じて前記開口絞りを駆動することにより前記開口絞りの絞り値を変化させる絞り駆動部材と、
前記設定絞り値と前記開口絞りの実際の絞り値との差を示す絞り誤差情報を、前記設定絞り値と前記開口絞りの実際の絞り値との差のうち、再現性のある差についてのオフセット誤差情報と、再現性のない差についてのばらつき誤差情報とを、それぞれ個別に記憶する情報記憶部と、
前記情報記憶部が記憶した前記絞り誤差情報を前記カメラボディに送信する絞り誤差情報送信部とを備えることを特徴とする交換レンズ。
【請求項2】
請求項1に記載の交換レンズにおいて、
前記オフセット誤差情報は、前記開口絞りが絞り込まれる方向に駆動された際の誤差の情報と、前記開口絞りが開放方向に駆動された際の誤差の情報とを含み、
前記ばらつき誤差情報は、前記開口絞りが絞り込まれる方向に駆動された際の誤差の情報と、前記開口絞りが開放方向に駆動された際の誤差の情報とを含むことを特徴とする交換レンズ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の交換レンズにおいて、
フォーカシングレンズを有する結像光学系と、
前記フォーカシングレンズの位置を検出し、レンズ位置信号を出力するレンズ位置検出部と、
前記レンズ位置検出部から出力された前記レンズ位置信号を前記カメラボディに送信するレンズ位置信号送信部とをさらに備え、
前記レンズ位置信号送信部は、前記レンズ位置検出部から出力された前記レンズ位置信号を、第1伝送路を介して前記カメラボディに送信し、
前記絞り誤差情報送信部は、前記第1伝送路とは異なる第2伝送路を介して前記絞り誤差情報を前記カメラボディに送信することを特徴とする交換レンズ。
【請求項4】
設定絞り値と撮影光学系の開口絞りの実際の絞り値との差として、再現性のある差についてのオフセット誤差情報と、再現性のない差についてのばらつき誤差情報とをそれぞれ含む絞り誤差情報を少なくとも有する交換レンズが着脱可能なカメラボディであって、
前記絞り誤差情報を前記交換レンズから受信する絞り誤差情報受信部と、
前記絞り誤差情報受信部で受信した前記絞り誤差情報のうち、前記オフセット誤差情報と前記ばらつき誤差情報とを参照して被写体の明るさに応じた適正露光が得られるように露光演算を行う露光演算手段とを備えることを特徴とするカメラボディ。
【請求項5】
請求項4に記載のカメラボディにおいて、
前記交換レンズが有するフォーカシングレンズの位置に関する信号である、レンズ位置信号を前記交換レンズから受信するレンズ位置信号受信部をさらに備え、
前記レンズ位置信号受信部は、前記交換レンズから出力された前記レンズ位置信号を、第1伝送路を介して受信し、
前記絞り誤差情報受信部は、前記第1伝送路とは異なる第2伝送路を介して前記絞り誤差情報を受信することを特徴とするカメラボディ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−215643(P2012−215643A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79452(P2011−79452)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】