説明

交番静電界を用いて繊維ウェブに粉末を含浸するための方法

本発明は、特にネットワークが密接する連続高剛性または可撓性マトリックスを備える複合材料を製造するために、繊維状、フィラメント状、および/または多孔性ネットワーク内に粉末を含浸するための新規の電気的粉末含浸方法であって、一方での粉末と、他方でのネットワークとが、下側電極と上側電極との間に配置され、これらの電極が、誘電体によって互いから電気的に絶縁され、AC発生器のそれぞれの極に接続されて、粉末と前記ネットワークに同時に電界を及ぼし、上側電極が少なくとも1つの電極管を備え、印加されるAC電界が0.10〜20kV/mmであることを特徴とする方法に関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にネットワークが密接する連続高剛性または可撓性マトリックスを備える複合材料を製造するために、繊維状、フィラメント状、および/または多孔性ネットワークに粉末を含浸するための新規の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性または熱硬化性マトリックス内に埋め込まれた繊維によって補強された複合材料は、非常に興味深い種類の材料であり、特に、金属の質量よりも実質的に小さい質量に関して優れた機械的性質を示す材料の製造を可能にする。さらに、これらの材料は、複合材料のマトリックスを形成するように意図された樹脂で補強繊維またはフィラメントを被覆した後に、簡単な成形によって得られる。当然、そのようにして得られる複合材料の機械的性質は、補強繊維またはフィラメントとマトリックスとの界面の質に依存する。
【0003】
したがって、これは、繊維またはフィラメントとマトリックスとの間の良好な粘着が存在することを仮定する。2つの因子がこの粘着を本質的に決定する。それらの因子は、一方で、樹脂と補強繊維またはフィラメントとの間の接着性質、すなわちマトリックスを形成するように意図された材料の選択であり、他方で、複合材料内部の空隙率である。この第2の因子は、当然、繊維塊の繊維およびフィラメント間に樹脂が浸透できることに起因する。これは、マトリックスで被覆されない各繊維またはフィラメント、あるいは各繊維またはフィラメント部分が、複合材料の機械的性質に寄与しない、または部分的にしか寄与しないためである。したがって、空隙量が高ければ高いほど、複合材料の機械的性質が低くなる。
【0004】
防音または断熱のために使用される繊維材料は、不織布を構成する繊維を、繊維間の交点で接着剤またはホットメルト接着剤を用いて結合することによって製造される。これらの材料は、接着剤の浴に不織布を通すことによって、またはホットメルト接着繊維または粉末を使用することによって製造することができる。ホットメルト接着粉末の場合の難点は、使用される粉末の量を制限しながら結合を最適化するために、繊維の交点に粉末を分散することができるようにする方法を使用する必要があることである。
【0005】
機能性織物材料は、ベース織物への活性(殺菌、耐火、高吸収など)成分の導入を必要とする。この活性成分は、溶液の形態であってよく、または乾燥粉末の形態であってよく、これを織物基質に含浸しなければならない。液体の形態での活性成分の場合は、溶液から溶媒を蒸発しながら活性成分を乾燥することができるようにするために、かなりのエネルギー消費を必要とするという欠点を有する。粉末は、この種の問題を有さないが、時としてベース織物内部で一様に、かつ決定的に分散することが困難である。
【0006】
国際公開公報WO99/22920には、繊維状またはフィラメント状ネットワーク内に粉末を含浸する方法であって、一方での粉末と、他方での繊維状またはフィラメント状の前記ネットワークとが電界内に配置され、電界のAC電圧が、少なくとも2秒の時間にわたって少なくとも5kVであることを特徴とする方法が開示されている。この文献には、電極として、発電機の2つのそれぞれの極に接続された2つの重ね合わされた平行な金属板であって、互いに面する金属板のそれぞれの面が、誘電体板、例えばガラスセラミック板で覆われた金属板を開示されている。
【0007】
この方法は、多くの利点を有するが、特に電極間で材料を走行させて連続処理が実施されるとき、大きな物品、例えば幅が0.80〜7.00mの物品の含浸処理には不適である。これは、電極の幾何的な歪みが電極間の距離のばらつきをもたらし、電界の一様性、したがって粉末含浸の質を劣化するためである。この幾何的な歪みを回避するために、下側金属板電極がスタンド上に配置されることがある。しかし、そのため、上側金属板電極、およびそれを覆う誘電体を、例えば横断棒によって補強しなければならず、これは電極の動作を減ずる場合がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、前述の欠点を有することなく、含浸対象の物品が走行する方向に垂直な方向で大きな物品、例えば少なくとも0.80m、特に1.20〜7.00mの物品を連続含浸するのに適した、AC電界を使用して繊維状、フィラメント状、および/または多孔性ネットワーク内に粉末を含浸する方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、頭記の特許請求の範囲によって画定される本発明によって実現される。
【0010】
本発明は、特にネットワークが密接する連続高剛性または可撓性マトリックスを備える結合または機能性複合材料を製造するために、繊維状、フィラメント状、および/または多孔性ネットワーク内に粉末を含浸するための電気的粉末含浸方法であって、一方での粉末と、他方での前記ネットワークとが、下側電極と上側電極との間に配置され、これらの電極が、誘電体によって互いから電気的に絶縁され、AC発生器のそれぞれの極に接続されて、粉末と前記ネットワークに同時に電界を及ぼし、上側電極が少なくとも1つの電極管を備え、印加されるAC電界が0.10〜20kV/mmであることを特徴とする方法に関する。
【0011】
特にAC発生器が高電圧発生器であるとき、AC発生器の極の一方が位相極であり、他方は、一般に安全のために接地された中性極である。
【0012】
この方法の適正な実施は、含浸対象の材料への0.10〜20kV/mmのAC電界の印加を必要とする。粉末粒子を移動させるために高い電界を必要とすることは、一般に、高電圧AC発生器を使用しなければならないことを意味する。この発生器は、主要可変電源によって送達される電圧を上昇することが可能な1つまたは複数の高電圧変換器からなる場合があり、主要可変電圧は、それ自体が単巻変圧器からなる場合がある。この主要可変電源の機能は、変換器によって上昇される電圧を調節して、可変電圧AC高電圧発生器を構成することである。また、1つの解決策は、この高電圧発生器の全体または一部を製造するために電子デバイスを使用することからなる。この高電圧発生器の周波数は、含浸する粉末の性質および粒子サイズに応じて含浸性能を最適化するように変えることができる。この周波数は、場合に応じて1ヘルツ〜100ヘルツの範囲内で変わる場合がある。また、電極に印加される電気信号の波形が、粉末含浸に対する影響を有する。正方形、正弦波、または長方形信号、およびより複雑な波形の信号を採用することができる。一般に、安価な高電圧発生器を使用するために、50または60Hzの正弦波信号電圧が使用される。
【0013】
電極は、その表面のあらゆる点で同値の電圧を保証し、熱損失を最小限に抑えるために、高導電性要素からなる。例えば銅、アルミニウム、銀、または金などの金属が、このために有利なものとして示される。
【0014】
誘電体システムとも呼ばれる絶縁システムは、通常、少なくとも1つの電極を覆って電気絶縁を形成して、電極間の電流を制限し、空気の誘電強度を超える電界が使用されるときに短絡を構成する電気アークの出現を防止する。電気機器の設計または製造では、絶縁材料の使用は、多くの問題の源である。実際、故障の主要な原因の1つは、絶縁の破壊である。これは、絶縁体が高い(電気的、熱的、または機械的)応力を受けたときに、表面上および/または体積内に局所的な非中性領域が生じ、これが材料の電気状態を変え、内部残留電界分布を誘発するためである。空間電荷の蓄積は、材料の劣化を生じ、絶縁体の破壊をもたらす場合がある。
【0015】
この方法で使用される絶縁体は、高い誘電強度を有し、良好なエージング挙動を示さなければならない。水晶、ガラス、またはセラミックなどの材料が、この誘電体を形成するのに有用な特性を示す。これらの材料は、それらが電界にさらされるときに、空間電荷をほとんど蓄積させない。水晶は、高い誘電強度および良好なエージング挙動を有するので、誘電絶縁体として特に価値がある。
【0016】
誘電体の厚さは、電極に印加される電界のレベルに依存する。1mm〜20mmの誘電体厚さが適切であり、2〜5mmの厚さが好ましい。
【0017】
材料に印加される電界のレベルに応じて、電極の単一の極または両方の極を絶縁することが可能である。最大絶縁は、電極の両方の極で誘電絶縁体を用いることにより得られる。空気の破壊電圧未満の電界を使用して含浸することができる材料では、金属電極間の絶縁体として空気を直接使用することが可能である。また、誘電体としてコンベアベルトを選択することもでき、電気アークの危険に関して十分な安全余裕を有する。
【0018】
金属粒子(例えば銀ラッカー)を十分に充填された樹脂の使用は、電極として働くコーティングを誘電絶縁体の表面上に直接製造することを可能にする。同様に、接着剤で覆われた金属薄膜の使用は、電極と誘電体との間に空気層を有さずに誘電絶縁体に電極を直接塗布することを可能にする。別の特に有利な解決策は、当技術分野でよく知られている様々な金属被覆技法(PVDまたはCVD真空金属被覆、化学的金属被覆など)の1つを使用して誘電絶縁体を直接金属被覆することからなる。ここでもやはり、2つの要素間の電気的なマイクロ放電を防止するために、電極と誘電絶縁体との間に空気層が存在しないことが好ましい。
【0019】
本発明によれば、上側電極は、少なくとも1つの電極管を備える。したがって、この電極の中央での変形が大幅に低減され、それにより、少なくとも0.80m、特に1.20〜7.00mの大きな幅にわたる処理を実施することが可能になる。従来の電極のレイアウトは、処理対象の生成物の移動の方向に垂直である。従来のレイアウトと比較して0〜90°に向けられた電極を有する他のレイアウトを使用することができる。移動の方向に垂直でないレイアウトの利点は、特に基質が大きな幅を有するときに、処理対象の基質の幅よりも短い電極を使用することができることである。
【0020】
1つまたは複数の電極管は、円形または長方形断面、あるいは一様な電界を印加できるようにする別の形状の1つを有することができる。その断面は、電界線を一点に集中させることを可能にするより複雑な形状を有していてもよく、それにより設備の含浸能力を向上させる。電極管は通常、誘電体および金属部分からなる。
【0021】
特に有利な電極管は、内側に金属被覆された中空誘電体管、特に内側に金属被覆された中空水晶管である。例えば銅、アルミニウム、銀、または金などの金属をこの金属被覆のために使用することができる。
【0022】
これらの管を構成するため、および含浸対象の生成物に電界を印加するために、様々な構成を使用することができる(以下に述べる図1〜4参照)。有利な電極構成では、
− 上側および下側電極が、管のオフセット構成(図1)で、または管が互いに面する構成(図2)で、金属被覆された中空円形誘電体管からなる。
− 上側および下側電極が、管が互いに面する構成(図3)で、金属被覆された中空長方形誘電体管からなる。
− 下側電極が長方形板であり、上側電極が、金属被覆された中空円形誘電体管からなる(図4)。
【0023】
材料、走行速度、および所望の含浸時間に応じて、同じ電位の管の間でより大きな、またはより小さな間隔を取ることができる。最大含浸速度は、同じ電位での管の間隔が非常に小さい場合に得られる。
【0024】
含浸効果を得るために、AC電界を十分な時間印加することが必要である。これは特に、繊維状、フィラメント状、および/または多孔性ネットワークの性質、および粉末の性質、ならびに方法の他のパラメータ、特にAC電界の強度および周波数、信号の波形、電極の形状および寸法に依存する。この十分な時間は、通常の実験によって当業者に簡単に求められる。一般に、少なくとも1s、しばしば少なくとも2s、特に少なくとも5sである。
【0025】
先行の粉末散布
この方法の先行のステップは、繊維状、フィラメント状、および/または多孔性基質の上面に含浸粉末を散布することからなる。そのようにして粉末で覆われた基質からなる材料をこの方法に導入して、粉末をその基質に浸透させることができる。いくつかの場合には、特に基質が非常に厚い、または非常に多くの孔を有するときには、材料を方法に導入するために使用される下側ベルトの全体または一部に粉末散布することによって、基質の上面と底面との両方または、上面または底面のどちらかで粉末散布を生成することができる。
【0026】
粉末散布は通常、含浸対象の基質の表面全体にわたって実施される。いくつかの場合には、基質の特定の領域のみに含浸するように、局所化された粉末散布を使用する、またはステンシルを使用することが可能である。この効果は、生成物の最終的な使用時に部分が切断されるときに望まれる場合がある。この場合、局所化された含浸が、材料スクラップ内での粉末の不必要な損失を回避し、すなわち粉末を再循環させることができる。また、この局所化含浸効果は、最終生成物の領域にわたって異なる特性を得るため(離散した点での補強、局所化処理など)に望まれる場合もある。
【0027】
コンベアベルト
この方法は、例えばポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、またはシリコンで覆われたガラスクロスまたはポリマーなどの絶縁材料からなる2つのコンベアベルトを使用することによって連続的に走行する生成物の含浸のために使用することができる。これら2つのコンベアベルトを使用して、含浸対象の生成物を挟み、粉末の散乱を防止し、電極の表面上への粉末の蓄積を防止する。また、2つのコンベアベルトを使用することは、電極間への生成物の進入中に粉末を繊維状ネットワークの上に閉じ込めて保つことを可能にする。他の場合には、粉末は電界によって外部に排出される。
【0028】
機械の端部でコンベアベルトを洗浄するための装置を使用して、ベルトの表面上に残っている場合がある粉末を回収することができる。これらの洗浄システムは、ブラシまたは吸引システムを採用することができる。すべての場合に、捕集器を使用して粉末を回収して、(繊維状、フィラメント状、および/または多孔性ネットワークに粉末散布するために)粉末を工程の上流に再導入することができる。
【0029】
本発明の他の特徴および利点は、4つの電極構成を使用する本発明の方法の実施を図式的に例として例示する添付図面と関連付けて与えられる以下の説明から明らかになろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
各図の装置において、繊維状、フィラメント状、および/または多孔性材料8の表面は、2つのコンベアベルト6および7によって含浸工程に連続的に導入される前に、粉末9でプレコートされる。高電圧発生器1が、上側および下側電極に接続される。粉末はAC電界の作用を受け、これが、粉末を繊維状、フィラメント状、および/または多孔性ネットワークに含浸させる、すなわちネットワーク内の利用可能な空間に浸透させる。アプリケータを出た後、含浸された材料は、その最終用途(複合材料の成形、絶縁材料の熱硬化など)のために使用することができる。
【0031】
図1の装置は、含浸対象の生成物にわたって比較的一様な電界を生成する。
【0032】
図2の装置は、対面する電極管の間で最大値を有し、電極管を離隔する空間の中央で最小値を有する電界を生成する。コンベアベルト間で生成物を進めることにより、最大値と最小値を有する可変最大振幅のAC電界に生成物がさらされる。これは、いくつかの材料に関して特に有利となる場合がある。
【0033】
図3の装置は、含浸対象の生成物にわたって、平坦電極で観察されるものと同様の特に一様な電界を生成し、これは、長方形電極管間の離隔距離が小さければ小さいほど、より一様である。
【0034】
図4の装置も、最大値と最小値を有する電界を生成する。
【0035】
本発明の方法を使用して、様々なタイプであり、様々な化学的、機能的、および幾何学的特性を有する粉末を、様々な繊維状、フィラメント状、および/または多孔性ネットワークまたは基質に含浸することができる。
【0036】
粉末
本発明の方法で様々なタイプの粉末を使用することができる。これらの粉末の性質は、所望の最終用途に従って異なる。絶縁性質の粉末は使用が最も簡単であり、ただし導電粉末は、帯電させることもでき、したがってAC電界の作用によって繊維状ネットワークに含浸することができることが実証されている。通例、有機ポリマーベースの粉末、および鉱物粉末が良好に働き、この方法でしばしば使用される。粉末の選択において、粒子サイズが重要なパラメータである。実施された試行では、粒子サイズが0.1〜500μmの粉末の含浸が可能であった。すべての場合において、粉末の粒子サイズは、ネットワークに含浸するように繊維状または多孔性ネットワークの多孔度に適合していなければならない。
【0037】
また、同時に含浸される複数の粉末のブレンドを使用することも可能であり、それらの化学的性質または幾何学的特性は、材料の最終的な使用の際に相補的なものである。
【0038】
含浸対象の基質
繊維状、フィラメント状、および/または多孔性ネットワークは、不織布、織布、ニット、紙、革、木繊維、鉱物繊維であってよく、とりわけセラミック繊維、ガラス繊維、または玄武岩繊維での不織布であり、さらに、発泡体、とりわけオープンフォーム(open foam)、例えば合成または非合成ポリマー(ポリスチレン、スチレンポリマー、PVC、ポリウレタン、フェノールポリマー、シリコーン、ポリオレフィン、他の熱可塑性および熱硬化性ポリマー、ゴム、およびエラストマー熱可塑性ポリマーなど)の発泡体、および鉱物フォーム(mineral foam)、またはAC電気力の作用による粉末拡散を可能にするのに十分な多孔度を有する任意の構造であってよい。
【0039】
機能性材料
この方法は、石鹸、高吸収材、および耐火粉末など機能性粉末の含浸に使用することができ、これらの粉末は、そのようにして含浸された基質を、様々な最終用途(衛生、化粧品、輸送車、建造物など)で機能性の生成物として使用することができるようにする。これらの様々な場合に、含浸する粉末の量は、所望の効果に応じて基質の質量の0.2%〜100%で変えることができる。いくつかの場合には、形成された生成物がその最終的な特性を保つことができるように、含浸された粉末を硬化するための後続の硬化技法が必要なことがある。
【0040】
結合(固結)材料
また、この方法は、繊維状または多孔性ネットワークに固着または結合粉末を含浸するために使用することもできる。この場合、粉末は、ネットワークを所望の幾何形状で硬化することができるように基質内部に分散される。これを行うために、粉末がネットワークに接着するように、かつ構造が所望の構成で維持されるように、後続の熱硬化ステップが必要となることがある。この種の用途で使用される固着または結合粉末の量は、所望の特性に応じて基質の質量の0.5%〜30%で変えることができる。これらの用途に使用される粉末の特質は、ポリウレタン類、コポリエステル類、コポリアミド類、および接着または結合特性を示す様々な熱可塑性材料および熱硬化性材料のものであってよい。
【0041】
繊維補強複合材料
また、この方法は、繊維状または多孔性ネットワークに接触する連続高剛性または可撓性マトリックスを備える補強材料を製造するために使用することもできる。この場合、粉末は、得られる含浸生成物を複合材料として使用することができるようにする非常に高い機械的性質を繊維状ネットワークに提供するマトリックスを構成する。使用される粉末は、この場合は例えばポリプロピレンまたはポリエチレンなどの熱可塑性特性を有することがあり、あるいは例えばフェノールまたはエポキシ粉末を用いて熱硬化性特性を有することがある。これらの含浸材料を製造するために必要とされる粉末の量は、基質の初期質量の5%〜200%で変わる。これらの含浸材料は、後続の形成ステップを必要とし、これは例えばホットプレスによって実施される場合がある。
【0042】
以下、様々な電極構成を備える装置を用いて実施される本発明の方法を使用して、様々な織布および不織布基質と様々な熱可塑性、熱硬化性、および機能性粉末とを用いて製造される材料のいくつかの実施例を考察する。
【実施例1】
【0043】
この実施例は、重量が1000g/mであり厚さが9mmの天然麻繊維からなる不織布と、100μm未満の粒子サイズを有するBakelite社整理番号6171TPの熱硬化性粉末とを用いて製造された。不織布の上面は、500g/mの粉末でプレコートされた。
【0044】
次いで、アセンブリ全体が、毎分2メートルの速度で2つのベルト間で含浸工程に導入された。使用された電極は、外径が30mmの管状電極であり、それらは互いに面して配置された。上側電極と下側電極とを離隔する空間は、誘電体間で10mmであった。同じ電位の2つの管状電極間の空間は15mmであり、すなわち1メートルの処理長さに関して各側に23個の電極であった。含浸対象の材料が存在する空間内で、ベルト間に3kV/mmの電界が印加された。機械の30秒の滞留時間が、不織布に粉末を一様に含浸することを可能にした。
【0045】
含浸後、得られた材料が、190℃で1分間、5バールの圧力でホットプレスされて、複合材料が得られた。プレス後の厚さが2mmのこの材料は、4000MPaの平均曲げ弾性係数を有していた。
【実施例2】
【0046】
この実施例は、重量が100g/mのビスコース/ポリエステルスパンレース不織布を用いて製造された。不織布の表面は、SNF社の整理番号JB882の高吸収性粉末でプレコートされ、粉末は100μm未満の粒子サイズを有していた。
【0047】
材料を含浸機械内に導入できるようにするベルトの速度は4m/分であった。したがって、不織布内に高吸収材を含浸するための含浸時間は15秒であった。使用された電極は、この場合は上側電極の外径30mmの管状電極と、この場合は下側電極の、4mm厚の誘電体で被覆された平坦電極とであった。誘電体間の、上側電極と下側電極とを離隔する空間は5mmであった。2つの上側管状電極間の空間は15mmであり、すなわち23個の電極であった。下側平坦電極の寸法は1m×1mであった。生成物に印加された電界は4kV/mmであった。
【0048】
含浸粉末が繊維間に位置し、それにより、粉末の多量の損失を観察することなく含浸材料を取り扱うことが可能であることが判明した。
【0049】
得られる生成物の最終的な吸収率は、0.9g/lのNaClを含有する食塩水を、前記溶液中に25分間浸漬した後に1500g/mを超える量吸収することを可能にした。
【実施例3】
【0050】
この実施例の目的は、カーディング後にポリエステル不織布を熱硬化して、取扱いおよび輸送に十分な機械的強度を不織布に与えることであった。不織布は、400g/mのポリエステルであり、カーディングされ、厚さ50mmのウェブにされた。使用された熱結合粉末は、Abiforから得られる80〜200μmの粒子サイズを有するコポリアミド粉末であった。
【0051】
不織布の表面に粉末散布する段階の後、材料は、ベルト間で30mmに圧縮されて、含浸機械内に導入された。使用された電極は、互い違いに配列された外径30mmの管状電極であった。同じ電位の2つの管状電極間の空間は15mmであり、すなわち1mの処理長さに関して各側に23個の電極であった。2m/分の速度が使用され、すなわち30秒の含浸時間であった。これは、すべての熱結合粉末を不織布の体積内部に分散することを可能にした。
【0052】
材料に印加された電界は2kV/mmであった。
【0053】
後続の熱硬化ステップが、140℃の温度で3分間、オーブン内で実施されて、断熱材として使用するのに良好な機械的強度および良好な靭性を示す材料が得られた。
【実施例4】
【0054】
防音材として働く材料が、再循環コットン繊維ベースの不織布にフェノール熱硬化性樹脂粉末を含浸することによって製造された。不織布は、500g/mの比重量を得るようにウェブにされた再循環コットン繊維から得られた。不織布の表面は、含浸機械内への導入前に、Bakelite社の整理番号6993TPのフェノール粉末を散布された。使用された電極は、外径が30mmの管状電極であり、それらは互いに面するように配置された。上側電極と下側電極とを離隔する空間は、誘電体間で15mmであった。同じ電位の2つの管状電極間の空間は15mmであり、すなわち1メートルの処理長さに関して各側に23個の電極であった。含浸対象の材料が位置する空間内で、ベルト間に2.5kV/mmの電界が印加された。機械の30秒の処理時間が、粉末を不織布に一様に含浸することを可能にした。
【0055】
含浸後、得られた材料が、180℃で2分間、10mmの間隔でホットプレスされて、良好な音響性質を示す材料が得られた。
【実施例5】
【0056】
この実施例は、エポキシ/ポリエステル粉末(Dakota−Coatings社の製品番号2000/09)を500g/mコットンニットに含浸することによって製造された。ニットは、アセンブリ全体が含浸機械内に導入される前に、100g/mの量のこの粉末を事前散布された。使用された電極は、この場合は上側電極の外径30mmの管状電極と、この場合は下側電極の、4mm厚の誘電体で覆われた平坦電極とであった。誘電体間の、上側電極と下側電極とを離隔する空間は5mmであった。2つの上側管状電極間の空間は15mmであり、すなわち1メートルの処理長さに関して23個の電極であった。平坦な下側電極の寸法は1m×1mであった。含浸対象の生成物に2.5kV/mmの電界が印加された。15秒の時間が、繊維間での一様な粉末含浸を可能にした。
【0057】
鋳型内で170℃まで加熱することによってニットを熱形成するための後続のステップが、ニットにその最終形状を与える。
【実施例6】
【0058】
中間多孔度であり厚さが11mmの330g/mポリウレタンポリマーのオープンフォームが調製された。上面は、最終質量と比較して40質量%で、オープンフォーム基質の多孔度よりも下の粒子サイズを有する鉱物粉末を粉末塗布された。使用された電極は、外径30mmの管状電極であり、それらは15mmの電極間隔で互いに面して配置された。
【0059】
次いで、本発明の含浸方法は、30kVのAC電圧で、異なる極性の電極間の距離を30mmとして30秒間実施される。
【0060】
そのようにして、鉱物粉末を均質に含浸されたオープンフォームポリウレタン材料が得られる。
【実施例7】
【0061】
多孔度57c、坪量40g/mの医療用紙が使用される。6〜9μmの粒子サイズの膨張性粉末(Akzo Nobel社、Expancel 461 DU20)が、最終質量と比較して10質量%の量で一様に散布される。使用された電極は、外径30mmの管状電極であり、それらは15mmの電極間隔で互いに面して配置された。
【0062】
次いで、本発明の含浸方法は、25kVのAC電圧で、異なる極性の電極間の距離を4mmとして30秒間実施される。
【0063】
そのようにして、膨張性粉末が紙体積内で一様に分散された材料が得られる。次いで、200℃での熱処理が行われ、これは、粉末粒子の効果的な膨張(50μmまで)、および紙構造内への粉末粒子の熱固定をもたらす。
【実施例8】
【0064】
高温に対する耐性があり、30mmの厚さを有する1700g/mの不織布針状セラミック(珪酸アルミニウム)繊維が使用される。
【0065】
熱結合高密度ポリエチレンHDPE粉末(Dakota Coatings社、HDPE T1、0〜80μm)が、最終質量と比較して20質量%の量で一様に散布される。
【0066】
使用された電極は、外径30mmの管状電極であり、それらは15mmの電極間隔で互いに面して配置された。
【0067】
次いで、本発明の含浸方法は、50kVのAC電圧で、異なる極性の電極間の距離を30mmとして45秒間実施される。
【0068】
次いで、不織布体積内に均質に分散されたHDPE粒子を熔解するために熱処理が行われる(オーブン温度:170℃)。そのようにして、熱結合セラミック繊維材料が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】上側および下側電極が、管のオフセット(互い違い)構成で、金属被覆された(12)中空円形水晶管13からなる装置を示す図である。
【図2】上側および下側電極が、管が互いに面する構成で、金属被覆された(12)中空円形水晶管13からなる装置を示す図である。
【図3】上側および下側電極が、管が互いに面する構成で、金属被覆された(15)中空長方形水晶管14からなる装置を示す図である。
【図4】下側電極が、誘電体で覆われていない(かつ図示していないスタンド上に配置された)長方形板16であり、上側電極が、金属被覆された(13)中空円形水晶管12からなる装置を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特にネットワークが密接する連続高剛性または可撓性マトリックスを備える結合または機能性複合材料を製造するために、繊維状、フィラメント状、および/または多孔性ネットワーク内に粉末を含浸するための電気的粉末含浸方法であって、一方での前記粉末と、他方での前記ネットワークとが、下側電極と上側電極との間に配置され、これらの電極が、誘電体によって互いから電気的に絶縁され、AC発生器のそれぞれの極に接続されて、前記粉末と前記ネットワークに同時に電界を及ぼし、前記上側電極が少なくとも1つの電極管を備え、印加されるAC電界が0.10〜20kV/mmであることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記1つまたは複数の電極管が、内側に金属被覆された中空誘電体管であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記誘電体が、水晶、ガラス、およびセラミックから選択され、特に水晶であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記1つまたは複数の電極管が、内側に金属被覆された中空水晶管であることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記電極管が円形断面を有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記電極管が長方形断面を有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記上側および下側電極が、管のオフセット構成で、金属被覆された(12)中空円形誘電体(13)管からなることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記上側および下側電極が、管が互いに面する構成で、金属被覆された(12)中空円形誘電体(13)管からなることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記上側および下側電極が、管が互いに面する構成で、金属被覆された(15)中空長方形誘電体(14)管からなることを特徴とする請求項1ないし4、および6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記下側電極が長方形板(16)であり、前記上側電極が、金属被覆された(12)中空円形誘電体(13)管からなることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−509250(P2007−509250A)
【公表日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−536205(P2006−536205)
【出願日】平成16年10月18日(2004.10.18)
【国際出願番号】PCT/IB2004/003427
【国際公開番号】WO2005/038123
【国際公開日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(506137321)マテリアルズ・テクニクス・ホールディング・ソシエテ・アノニム (1)
【Fターム(参考)】