説明

交通事故情報処理装置

【課題】事故の規模や緊急度にあわせて救助を依頼する交通事故情報処理装置を提供する。
【解決手段】車両に搭載したドライブレコーダ20から送信される事故発生時の前後の映像又は音声に基づいて事故状況を解析する解析部64と、解析部64の解析結果を緊急救助センタ70に送信する送信部65とを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に事故が発生した際に、事故前後の車両の走行状況を解析して救助を依頼する交通事故情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に事故が発生した際に、事故後の検証に役立てるために、事故発生時の走行状況や走行環境等の証拠情報を記録するドライブレコーダが知られている(例えば、特許文献1参照)。この種のドライブレコーダにおいては、大事故によって車両が焼損した場合等においても、証拠データが消失するリスクを軽減するために、事故発生が検知された場合には、データ容量の小さい静止画像データが無線ネットワークを介して外部の記憶媒体に送信される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−32143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、事故発生時の車両の走行状況を示す、静止画像情報を証拠として保全することはできても、自ら救助を依頼できない状況に陥ってしまった場合、周りに救助者がいない状況においては、人命救助が即座に受けられない可能性があるという問題がある。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、事故の規模や緊急度にあわせて救助を依頼する交通事故情報処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、車両に搭載したドライブレコーダから送信される事故発生時の前後の映像又は音声に基づいて事故状況を解析する解析部と、前記解析部の解析結果を緊急救助センタに送信する送信部とを備えたことを特徴とする。
【0006】
この構成において、前記解析部は、事故発生前の映像又は音声と、事故発生後の映像又は音声とを比較し、この比較結果に基づいて、事故状況を解析する構成としてもよい。また、前記解析部は、事故の重大性の指標となるレベルを判定する機能を備え、前記事故のレベルを前記解析結果に含めて緊急救助センタに送信する構成としてもよい。また、前記解析部は、映像に基づく画像の色変化、物体の移動量、或いは音声に基づく音圧変化に従い、事故状況を解析する構成としても良い。また、前記解析部は、事故発生の前後の映像又は音声を比較する場合に、前記画像の色変化、物体の移動量、或いは音声に基づく音圧変化のそれぞれのしきい値を設定し、前記しきい値に応じて事故のレベルを判定する構成としてもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、車両に搭載したドライブレコーダから送信される事故発生時の前後の映像又は音声に基づいて事故状況を解析する解析部と、前記解析部の解析結果を緊急救助センタに送信する送信部とを備えたため、車両から送信される画像又は、音声情報を、車両外部の解析部でリアルタイムに解析し、即時に緊急救助センタに、事故及び車両の詳細な状況の情報の通知と共に救助依頼をすることができ、迅速かつ適切な救助を受けることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態に係る車両走行状況解析システム構成図である。
【図2】情報解析部の機能ブロック図である。
【図3】RGB検出ブロックの解析手順を示した図である。
【図4】移動量検出ブロックの解析手順を示した図である。
【図5】周囲音検出ブロックの解析手順を示した図である。
【図6】しきい値判定ブロックを示した図である。
【図7】重大レベル判定ブロックを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
本発明の実施形態に係る交通事故情報処理装置60は、図1に示されるように、映像音声検出装置(ドライブレコーダ)20と、ナビゲーション装置(送信手段)40とともに、車両走行状況解析システム1を構築している。
映像音声検出装置20は、カメラ21と、マイクロフォン22と、映像/音声処理部23と、制御部24と、操作部25と、表示部26と、記憶部27と、電源部28と、有線通信部29とを備えて構成されている。
カメラ21は、走行中の車室内の状態、及び、車両の周辺環境を動画像、及び、静止画像で撮像可能に、例えば、車室内の前後、及び、左右等に複数台設けられている。マイクロフォン22は、動画像に含まれる音声情報の元となる音声信号を収集するために備えられている。カメラ21、及び、マイクロフォン22は、映像/音声処理部23に接続されている。映像/音声処理部23は、カメラ21、及び、マイクロフォン22から出力された映像信号、及び、音声信号を処理するために備えられ、アナログ信号をデジタル信号へと変換処理を行う不図示のアナログ/デジタル変換部、画像処理部、圧縮処理部等を有している。
【0010】
記憶部27は、映像/音声処理部23から出力された映像又は音声情報を記憶する。記憶部27は、ハードディスク、CD−ROM、DVD−ROM、或いは、メモリーカード等の書き込み可能な記録媒体を備えて構成されている。
制御部24は、CPU(Central Processing Unit)と、このCPUに実行される制御プログラムや、この制御プログラムに係るデータ等を不揮発的に記憶するROM(Read Only Memory)と、CPUに実行されるプログラムや、このプログラムに係るデータ等を一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)等を備えて構成され、映像音声検出装置20の各部を制御する。
操作部25は、ユーザが映像音声検出装置20のオン/オフを始めとする各種操作、及び、記憶部27に備えられた記録媒体の取り出し等の操作をするため操作子(不図示)を備えている。表示部26には、映像/音声処理部23で処理された映像又は音声情報の記憶部27への書き込み状況、交通事故情報処理装置60との通信動作等の映像音声検出装置20の動作状況が表示される。
【0011】
電源部28は、ナビゲーション装置40の電源部41に接続され、電源部41は、不図示の車両電源に接続されて車両から電源の供給を受ける。電源部28は、電源部41を介して、電源の供給を受け、映像音声検出装置20の各部に電源の供給を行っている。また、電源部28は、不図示の充電池を備え、この充電池は、電源部41を介して、車両電源から電源の供給を受けて充電され、車両電源からの電源の供給を受けられない場合においても、映像又は音声情報の収集ができる構成となっている。
また、映像音声検出装置20は、ナビゲーション装置40と、有線通信部29を介して電気的に接続され、ナビゲーション装置40からの制御信号に基づいて、映像又は音声情報をナビゲーション装置40の有線通信部42に入力する。
【0012】
ナビゲーション装置40は、ドライブレコーダ20から解析部60に画像又は音声を送信する送信手段であり、電源部41と、有線通信部42と、制御部43と、GPS(Global Positioning System)ユニット44と、RTC(Real Time Clock)45と、運転操作情報収集部46と、車速情報収集部47と、衝突検知部48と、無線通信部49とを備えて構成されている。また、ナビゲーション装置40は、不図示の、ユーザから指示の入力を受ける操作部と、各種情報を表示する表示部と、各種地理情報(地図情報等)を記録する地図情報記録部等を備えて構成されていても良い。
【0013】
電源部41は、不図示の車両電源に接続されて、車両電源から電源の供給をうけ、ナビゲーション装置の各部に電源の供給を行う。また、電源部41には、不図示の充電池が備えられ、充電池は車両電源から電源の供給を受けて充電され、車両電源から電源の供給を受けられない場合においても、ナビゲーション装置40の各部が作動する構成となっている。
有線通信部42は、制御部43と、映像音声検出装置20の有線通信部29に接続され、制御部24を介して映像音声検出装置20から出力される映像又は音声情報の入力を受ける。
【0014】
制御部43は、CPUと、このCPUに実行される制御プログラムや、この制御プログラムに係るデータ等を不揮発的に記憶するROMと、CPUに実行されるプログラムや、このプログラムに係るデータ等を一時的に記憶するRAM等を備えて構成され、ナビゲーション装置40の各部を制御する。
【0015】
GPSユニット44は、車両に備えられた不図示のGPSアンテナを介して複数のGPS衛星からのGPS電波信号を受信する。受信されたGPS電波信号は、制御部43で演算され、発信と受信の時間差からそれぞれのGPS衛星から車両までの相対的な距離が算出され、その結果から車両の現在地が特定される。
RTC45は、車両の現在地における日時情報(年、月、日、時、分、秒のそれぞれ)をデータとして制御部43に入力する。制御部43は、RTC45から入力されるこれらの情報に基づいて、現在地の特定を含む各種演算処理を行う。
運転操作情報収集部46は、方向指示器の示している方向、及び、ハンドルの蛇角から車両の運転操作に関する情報を収集し、制御部43に入力する。
車速情報収集部47は、不図示の加速度センサを備え、この加速度センサは多軸加速度センサであり、車両の加速度、角速度、及び、車両が後進状態にあるか否かを検出し、これらの検出結果は、制御部43に入力される。
【0016】
これらの構成によれば、ナビゲーション装置40に記録されている不図示の道路地図情報と共に、GPSユニット44を用いて特定された現在地情報と、運転操作情報収集部46、及び、車速情報収集部47とで測位された車両の位置、移動方向、及び、速度情報から、例えば、トンネルや地下道を走行している場合においても、車両の自車位置を正確に特定することができる。
また、ナビゲーション装置40は衝突検知部48を備えて構成されている。衝突検知部48は、例えばエアバッグが使用されるような衝撃を検出した場合には、車両が衝突事故にあった可能性があると検出し、衝突検知信号を制御部43に対して出力する。衝撃の検出は、上述の車速情報収集部47に備えられた加速度センサから制御部43に出力された加速度の測定値と、制御部43に事前に備えられたしきい値、或いは、衝撃のレベルと加速度の関係を示すテーブルから判断する構成としても良い。或いは、車両に備えられた加速度センサ、及び、この加速度センサからの指示を受けて、エアバックの展開を制御する制御ユニットからの信号を検出して、衝突の検出を行う構成としても良い。
【0017】
無線通信部49は、制御部43の制御信号に基づいて、無線ネットワーク10を介して、状況検出センタ60の無線通信部61と通信する。
無線ネットワーク10は、例えば、モバイルWiMAX等の、常時接続による大容量データの高速ダウンロード、及び、アップロードが可能な高速無線通信網であり、無線通信部49には、この高速無線通信用の通信アンテナ50が備えられている。また、不図示の通信モジュールが、ナビゲーション装置40に内蔵されて備えられている。通信モジュールは、或いは、USB端子で着脱自在にナビゲーション装置40に接続されて備えられている構成としても良い。
【0018】
交通事故情報処理装置(事故状況検出センタ)60は、無線通信部61と、サーバ(ストレージ)63と、情報解析部64とを備えて構成される。無線通信部61は、ナビゲーション装置40の通信アンテナ50と無線信号の送受信を行うためのアンテナ62を有し、アンテナ62は、走行中の車両と交通事故情報処理装置60の通信が途絶えないように所定間隔に多数設けられている。
映像音声検出装置20で収集された車両走行中の車両内外の映像又は音声情報はナビゲーション装置40を介して、常時、無線ネットワーク10を用いて、事故状況検出センタ60のサーバ63にアップロードされている。また、この映像又は音声情報には、ナビゲーション装置で収集された車両の位置情報、時間情報、方向指示器情報、ハンドル蛇角情報、加速度情報、及び、角速度情報が付加されサーバ63に記録される。
これらの構成によれば、大容量の動画像、及び、音声情報と、各種車両情報と、を外部サーバ63に記録することができ、また、記録媒体が外部サーバ63のため事故により、これらの大容量データが失われることがない。
【0019】
サーバ63に記録された、これらの各種車両情報(データ)は、各車両から蓄積できる所定量の上限に達した場合には、時系列で最も古いデータから消去され、最新のデータが記録される構成としても良い。
【0020】
ナビゲーション装置40の衝突検知部48で検出された衝突検知信号は、制御部43及び無線通信部49を介して、事故状況検出センタ60の無線通信部61に送信され、これを受けて、無線通信部61は、情報解析部64に解析開始の信号を送信する。
また、ナビゲーション装置40と常時無線接続されている事故状況検出センタ60に対して、ナビゲーション装置40からデータ通信の停止信号の送信がなく、一定時間以上通信がない場合(ドライブレコーダからの映像又は音声情報の送信がない場合)にも、無線通信部61は、車両に何らかの問題が発生し、車両が通信不能な状態になっている可能性があると検出し、情報解析部64に解析開始の信号を送信する。
【0021】
解析開始の信号を受けた情報解析部64は、サーバ63に記録されている車両走行中の車両内外の映像又は音声情報から、事故が発生したと思われる時刻の前後の所定時間(例えば、20秒間程度)の動画像又は音声情報を切り出し、解析を行う。情報解析部64の解析結果は、情報解析部64に備えられた救助依頼部(送信部)65から緊急救助センタ70に送信される構成となっている。
【0022】
この構成によれば、無線通信部61は、ナビゲーション装置40から衝突検知信号を受信した時、又は、ナビゲーション装置40からのデータ通信が一定時間以上ない場合に、即時に車両走行状況の解析が行われ、救助依頼が行われるため、迅速かつ適切な救助を受けることができる。
また、ナビゲーション装置40は、衝突検知信号の送信後も、ドライブレコーダからの映像又は音声情報の交通事故情報処理装置60への送信を継続し、これらの情報はサーバ63に記録される構成となっている。
【0023】
情報解析部64は、図2で示されるように、RGB検出ブロックD1と、移動量検出ブロックD2と、周囲音検出ブロックD3と、しきい値判定ブロックD4と、重大レベル判定ブロックD5とを有している。各検出ブロックD1、D2、D3は、色彩、移動量及び音量の検出を並行して実行し、それぞれ、事故発生時刻の前後数十秒(例えば、20秒間程度)の動画像、及び、音声情報等の車両走行情報を用いて状況解析が行われる。
この構成によれば、事故発生時刻の前後数十秒間の車両内外の状況を示す動画像、及び、音声を用いて状況解析が行われるため、事故の発生要因から発生後の状況までの一部始終を解析することができ、この解析結果が、車両の位置情報などのその他の車両情報と共に緊急救助センタに送られるため、救助活動計画を即時適切に立てることができる。
【0024】
RGB検出ブロックD1は、図3に示すように、サーバ63から情報解析部64に入力された、事故発生時刻の前後20秒程度の動画像を用いて、まず、動画像の各フレーム画像から色成分を抽出し、RGBのヒストグラムを算出する(ステップS1)。次に、ステップS1で算出されたRGBのヒストグラムから、画像全体の画素値に占めるR(赤色)成分の割合を算出する(ステップS2)。ステップS2に並行して、ステップS1で算出されたRGBのヒストグラムと、実験等から得られる車両が炎上した場合の炎のRGBヒストグラムとを比較し、その近似率を算出する(ステップS3)。ステップS2、及び、ステップS3で出力された結果はしきい値判定ブロックD4に入力される。
この構成によれば、RGBのヒストグラムは動画像の各フレーム画像から算出されるため、R成分を時系列で解析することができ、色成分のみではなく、炎特有の揺らぎの周波数分布とも比較することができるため、より正確に近似率を算出することができ、さらに、赤い背景等によりR(赤色)成分の割合が高い場合には、事故の誤判定が行われることがない。
【0025】
移動量検出ブロックD2は、図4に示すように、サーバ63から情報解析部64に入力された、事故発生時刻の前後20秒程度の動画像を用いて、まず、自車から見た固定物(例えば、ダッシュボード、内装パネル、フロントグラス等)を特定し(ステップS4)、それとともに、自車から見た背景(移動物)を検出する(ステップS5)。次に、ステップS4で検出された、自車から見た固定物の、動画像の各フレーム間での移動量を検出し、1秒間当たりの移動量を算出する(ステップS6)。ステップS6で算出された移動量の結果は、しきい値判定ブロックD4に入力される。
この構成によれば、自車から見た固定物の移動量が解析されるため、事故発生後即時に車両の破損の程度を正確に検出して、緊急救助センタに通知することができる。
【0026】
周囲音検出ブロックD3は、図5に示すように、サーバ63から情報解析部64に入力された、事故発生時刻の前後20秒程度の周囲音を用いて、まず、周波数ごとの音圧データ(パワースペクトル)に変換され解析される(ステップS7)。ステップS7と並行して、ステップS7で得られたパワースペクトルは時系列データに変換され、実験等から得られる車両が爆発した場合の爆発音のサンプルとの相互相関解析が行われる(ステップS8)。ステップS7、S8で出力された解析結果はしきい値判定ブロックD4に入力される。
この構成によれば、時系列のパワースペクトルデータを用いて音声信号の解析をすることができ、音圧レベル(例えば、デシベル単位で測定される値)だけではなく、爆発音のサンプル等との相互相関解析ができるため、より正確に相関係数を算出することができ、外部の騒音、或いは、自車のクラクションの音によって事故の誤判定が行われることがない。
【0027】
各検出ブロックD1、D2、D3から出力され、しきい値判定ブロックD4に入力された解析結果は、図6に示すように、しきい値判定ブロックD4において、それぞれのしきい値と比較され、比較された結果は、重大レベル判定ブロックD5において、発生した事故の重大さをレベル分けするために用いられる。
しきい値判定S9において、RGB検出ブロックD1からの出力結果が、ステップS2で算出された画像全体の画素値に占めるR(赤色)成分の割合が、事前に設定されているしきい値(例えば、50%)を超え、かつ、ステップS3で算出された車両のRGBヒストグラムと炎のRGBヒストグラムとの近似率が事前に設定されているしきい値(例えば、70%)を超えている場合、しきい値超過と判定される。
一方、ステップS2で算出された画像全体の画素値に占めるR成分の割合が、事前に設定されているしきい値を超え、しかし、ステップS3で算出された車両のRGBヒストグラムと炎のRGBヒストグラムとの近似率が事前に設定されているしきい値以下の場合は、背景が赤いということも考えられ、しきい値超過とは判定されない。
【0028】
しきい値判定S10において、移動量検出ブロックD2からの出力結果は、ステップS6で算出された一秒間当たりの物体(自車から見た固定物)の移動量が事前に設定されているしきい値(例えば、画面サイズの1/3)を超えている場合、しきい値超過と判定される。
【0029】
しきい値判定S11において、周囲音検出ブロックD3からの出力結果は、ステップS7で解析された音圧データ(デシベル)が事前に設定されているしきい値(例えば、80dB)を超え、かつ、ステップS8で解析された爆発音のサンプルとの相関係数が事前に設定されているしきい値(例えば、0.7)を超えている場合、しきい値超過と判定される。
一方、ステップS7で解析された音圧データが事前に設定されているしきい値を超え、しかし、ステップS8で解析された爆発音のサンプルとの相関係数が事前に設定されているしきい値以内の場合は、車両外部の騒音がひどい、或いは、自車のクラクションが発報した等の要因も考えられ、しきい値超過とは判定されない。
【0030】
しきい値判定ブロックD4でのしきい値判定の結果、しきい値超過と判定された検出処理D1、D2、D3の出力結果の数から、図7に示されるように、重大レベル判定ブロックD5の処理が行わる。例えば、全ての出力結果がしきい値超過と判定された場合には、事故は、重大レベルA(大規模、死亡の可能性あり)の状況にあると判定され、同様に重大レベルB(重体の可能性あり)等の判定が行われ、車両に発生した状況の緊急度を総合的に判断する構成となっている。
情報解析部64に備えられた、救助依頼部(送信部)65(図1参照)は、重大レベル判定ブロックD5の判定結果を契機に、緊急救助センタ70に状況検出通知72を即時に自動配信し、レスキューや救急車の出動が依頼される構成となっている。緊急救助センタ70には、サーバ71が備えられ、状況検出通知72の送付と共に、車両から状況検出センタ60に入力された映像、音声、車両の位置情報、時間情報、方向指示器情報、ハンドル蛇角情報、加速度情報、及び、角速度情報などの各種車両情報と、情報解析部64の各種解析結果が伝送される。
【0031】
また、重大レベル判定ブロックD5において、各検出ブロックD1、D2、D3の出力結果が全てしきい値以下と判定された場合には、事故発生の検出が誤ってなされたものと判定され、緊急救助センタ70への状況検出通知72の配信は行われない構成となっている。
【0032】
事故発生の検出から救助依頼までが数分以内(例えば、5分以内)で行われる構成とすることが望ましく、これらの構成によれば、状況の緊急度、及び、各種車両情報がレスキューや救急車に伝えられ、山間部や、深夜の道路等の周りに救助者がいない状況においても、迅速に人命救助を受けることができる。また、映像又は音声解析の結果から、事故の規模、車両の詳細な状況、及び、緊急度などの重大レベルが各種車両情報と共にレスキューや救急車に伝えられるため、救助に必要となる、例えば、炎上の場合には消防車、転落の場合にはクレーン車等の要請を即時に行うことができる。また、緊急度、及び、事故現場の状況等から、ヘリコプターでの救助が必要か等も救助依頼と共に判断することができ、迅速、かつ、適切な救助を受けることができる。
【0033】
以上、実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本実施形態では、RGB検出において、車両のRGBヒストグラムから画像全体の画素値に占めるR(赤色)成分の割合を算出し、かつ、車両のRGBヒストグラムと炎のRGBヒストグラムとを比較して重大レベル解析を行う構成としたが、これに限らず、車両の水没事故を想定して、水中のRGBヒストグラムに適応するRGB成分の抽出を行い、解析を行う構成としてもよい。
【0034】
また、本実施形態においては、衝突等の走行中の事故を想定して、走行中の車両内外の状況を映像又は音声で検出し、外部のサーバに記録する構成としたがこれに限らず、停止中の車両内外の状況も継続して常時外部のサーバに記録される構成とし、車上荒らし、或いは、車両盗難等の被害にあった場合にも、盗難防止アラームの発報等を契機に即時に状況の解析が行われる構成としても良い。
また、本実施形態における車両は、自動車に限らず、自動二輪車等も含む、広義の意味での車両であることは勿論である。
【符号の説明】
【0035】
1 車両走行状況解析システム
10 無線ネットワーク
20 映像音声検出装置(ドライブレコーダ)
21 カメラ
22 マイクロフォン
40 ナビゲーション装置(送信手段)
49 無線通信部
50 通信モジュール
60 交通事故情報処理装置(事故状況検出センタ、解析部)
61 無線通信部
62 アンテナ
63 サーバ
64 状況検出処理部
65 救助依頼部(送信部)
70 緊急救助センタ
71 サーバ
72 状況検出通知
D1 RGB検出ブロック
D2 移動量検出ブロック
D3 周囲音検出ブロック
D4 しきい値判定ブロック
D5 重大レベル判定ブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載したドライブレコーダから送信される事故発生時の前後の映像又は音声に基づいて事故状況を解析する解析部と、前記解析部の解析結果を緊急救助センタに送信する送信部とを備えたことを特徴とする交通事故情報処理装置。
【請求項2】
前記解析部は、事故発生前の映像又は音声と、事故発生後の映像又は音声とを比較し、この比較結果に基づいて、事故状況を解析することを特徴とする請求項1に記載の交通事故情報処理装置。
【請求項3】
前記解析部は、事故の重大性の指標となるレベルを判定する機能を備え、前記事故のレベルを前記解析結果に含めて緊急救助センタに送信することを特徴とする請求項1又は2に記載の交通事故情報処理装置。
【請求項4】
前記解析部は、映像に基づく画像の色変化、物体の移動量、或いは音声に基づく音圧変化に従い、事故状況を解析することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の交通事故情報処理装置。
【請求項5】
前記解析部は、事故発生の前後の映像又は音声を比較する場合に、前記画像の色変化、物体の移動量、或いは音声に基づく音圧変化のそれぞれのしきい値を設定し、前記しきい値に応じて事故のレベルを判定することを特徴とする請求項3又は4に記載の交通事故情報処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−123814(P2011−123814A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−283004(P2009−283004)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【出願人】(000001487)クラリオン株式会社 (1,722)
【Fターム(参考)】